JP2018076551A - 黒色Zn−Mg系めっき鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】黒色化処理された蒸着Zn−Mg系めっき層を有する黒色めっき鋼板であって、耐食性のさらなる向上と表面における黒色化のムラのさらなる抑制とを両立させた黒色Zn−Mg系めっき鋼板を提供すること。【解決手段】本発明は、基材鋼板と、表面から深さ方向に1μm以内の表面領域におけるMgの含有量が0.1質量%以上35.0質量%以下である蒸着Mg含有Znめっき層と、を有する黒色Zn−Mg系めっき鋼板に関する。前記黒色Zn−Mg系めっき鋼板において、前記蒸着Mg含有Znめっき層は、前記表面領域に黒色酸化物を含有しており、前記蒸着Mg含有Znめっき層の表面から任意に選択した10か所の明度(Lab色空間におけるL*値)の平均値は60以下であり、かつ、前記蒸着Mg含有Znめっき層の表面から任意に選択した10か所の明度の標準偏差は1.2以下である。【選択図】なし
Description
本発明は、黒色Zn−Mg系めっき鋼板およびその製造方法に関する。
建築物の屋根材や外装材、家電製品、自動車などの分野では、意匠性などの観点から黒色の外観を有する鋼板のニーズが高い。黒色の外観を有する鋼板は、従来、黒色塗料を鋼板の表面に塗布して黒色塗膜を形成して、製造されていた。これに対し、黒色塗料を塗布する工程を省略して、コストを削減するため、めっき層そのものを黒色化処理する技術も開発されている。
上記の分野では、耐食性を高めるため、Zn−Mg系めっき層を有するめっき鋼板が使用されることが多い。Zn−Mg系めっき層を黒色化処理する方法として、硝酸イオン、硫酸イオン、リン酸イオンなどを含む水溶液に特定の組成を有するめっき鋼板を浸漬して、これらのイオンを含む黒色の皮膜をめっき層の表面に形成する方法(たとえば特許文献1など)や、めっき層を水蒸気に接触させて黒色の酸化物をめっき層の内部に形成する方法(たとえば特許文献2など)などが知られている(以下、めっき層を黒色化するためにめっき層と水蒸気とを接触させる処理を、単に「水蒸気処理」ともいう。)。
特許文献1には、蒸着Zn−Mg系めっき層を有するめっき鋼板において、上記めっき層の内部にはMg量が少ない層を、表面側にはMg量がより多い層を形成した、めっき鋼板が記載されている。特許文献1によれば、このめっき鋼板は、めっき層の表面側に反応性が高いMgが多量に含まれているため、Niイオン含有リン酸亜鉛処理液への短時間の接触でも、めっき層の表面にNiを含有する黒色の皮膜を形成できるとされている。また、特許文献1によれば、このめっき鋼板は、めっき層の内部はMgがより少なく軟質で延性に富むため、プレス成型や曲げ加工等の際にパウダリングが発生しにくいとされている。
特許文献2には、蒸着Zn−Mg系めっき層を有するめっき鋼板を、温度70〜95℃、相対湿度50〜90%の雰囲気で水蒸気に接触させて、上記めっき層のうち表面に近い領域に黒色の酸化物系皮膜を形成する方法が記載されている。特許文献2によれば、この方法によって得られる、Zn、ZnOおよびMg(OH)2からなる強固な酸化物系皮膜によって黒色化されためっき層は、耐食性に優れているとされている。
特許文献1および特許文献2に開示の方法によれば、蒸着Zn−Mg系めっき層を黒色化処理して、黒色めっき鋼板を得ることができる。しかし、このような黒色めっき鋼板をより多様な用途に用いる観点から、黒色めっき鋼板の性能のさらなる向上に対する要求は常に存在する。
本発明者らの検討によると、特許文献1に記載のようにNiイオンを含有する黒色皮膜を形成すると、イオン化傾向の高い(卑な)金属であるZnとイオン化傾向の低い(貴な)金属であるNiとの電位差によってZnが溶出しやすい。そのため、特許文献1に記載の方法では、耐食性のさらなる向上が図りにくい。
一方で、特許文献2に記載のようにめっき鋼板を水蒸気に接触させる方法によれば、強固な酸化物系皮膜によってめっき層の外観が黒色化されるため、耐食性はより高めやすい。しかし、特許文献2に記載の方法は、格子欠陥をもつ(酸素欠乏型の)ZnOまたはMg(OH)2の形成によって上記酸化物系皮膜を黒色化するものだが、水蒸気と接触させる際の雰囲気に含まれる酸素によって上記格子欠陥が埋められると、上記酸化物系皮膜が十分に黒色化されない可能性がある。そのため、特許文献2に記載の方法では、表面における黒色化のムラのさらなる抑制が図りにくい。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、黒色化処理された蒸着Zn−Mg系めっき層を有する黒色めっき鋼板であって、耐食性のさらなる向上と表面における黒色化のムラのさらなる抑制とを両立させた黒色Zn−Mg系めっき鋼板、およびそのような黒色めっき鋼板の製造方法を提供することをその目的とする。
本発明者らは、鋭意研究の結果、特定の組成を有する蒸着Zn−Mg系めっき層を有するめっき鋼板を、酸素濃度を低くした密閉容器中で水蒸気処理することで、上記耐食性のさらなる向上と黒色化のムラのさらなる抑制とを両立させることができることを見出した。
つまり、本発明の一態様は、基材鋼板と、表面から深さ方向に1μm以内の表面領域におけるMgの含有量が0.1質量%以上35.0質量%以下である蒸着Mg含有Znめっき層と、を有する黒色Zn−Mg系めっき鋼板に関する。前記黒色Zn−Mg系めっき鋼板において、前記蒸着Mg含有Znめっき層は、前記表面領域に黒色酸化物を含有しており、前記蒸着Mg含有Znめっき層の表面から任意に選択した10か所の明度(Lab色空間におけるL*値)の平均値は60以下であり、かつ、前記蒸着Mg含有Znめっき層の表面から任意に選択した10か所の明度の標準偏差は1.2以下である。
また、本発明の別の態様は、基材鋼板と、表面から深さ方向に1μm以内の表面領域におけるMgの含有量が0.1質量%以上35.0質量%以下である蒸着Mg含有Znめっき層と、を有する蒸着Zn−Mg系めっき鋼板を準備するステップと、前記蒸着Zn−Mg系めっき鋼板を、酸素濃度を13%以下にした密閉容器中で水蒸気に接触させるステップと、を含む、黒色Zn−Mg系めっき鋼板の製造方法に関する。
本発明によれば、黒色化処理された蒸着Zn−Mg系めっき層を有する黒色めっき鋼板であって、耐食性のさらなる向上と表面における黒色化のムラのさらなる抑制とを両立させた黒色Zn−Mg系めっき鋼板、およびそのような黒色めっき鋼板の製造方法が提供される。
1.黒色Zn−Mg系めっき鋼板
本発明の一態様に係る黒色Zn−Mg系めっき鋼板(以下、単に「黒色めっき鋼板」ともいう)は、基材鋼板と、蒸着Zn−Mg系めっき層(以下「めっき層」ともいう)とを有する。上記黒色めっき鋼板は、さらに、クロメートフリー皮膜を有していてもよい。
本発明の一態様に係る黒色Zn−Mg系めっき鋼板(以下、単に「黒色めっき鋼板」ともいう)は、基材鋼板と、蒸着Zn−Mg系めっき層(以下「めっき層」ともいう)とを有する。上記黒色めっき鋼板は、さらに、クロメートフリー皮膜を有していてもよい。
上記黒色めっき鋼板は、1)蒸着Mg含有Znめっき層中の表面から深さ方向に1μm以内の領域(以下、単に「表面領域」ともいう。)におけるMgの含有量が0.1質量%以上35.0質量%以下であること、2)表面領域中に黒色酸化物が分布していること、および3)めっき層の表面から任意に選択した10か所の明度(Lab色空間におけるL*値)の平均値が60以下で有り、かつ、めっき層の表面から任意に選択した10か所の明度の標準偏差は1.2以下であること、を一つの特徴とする。めっき層表面の明度(L*値)は、分光型色差計を用いて、JIS K 5600に準拠した分光反射測定法で測定される。めっき層表面にクロメートフリー皮膜などの皮膜が形成されているときは、これらの皮膜が十分に透明である限りにおいて、これらの皮膜の上からめっき層表面の明度を測定してもよい。
[基材鋼板]
基材鋼板の種類は、特に限定されない。たとえば、基材鋼板としては、低炭素鋼や中炭素鋼、高炭素鋼、合金鋼などから選択される鋼板を使用することができる。良好なプレス成形性が必要とされる場合は、低炭素Ti添加鋼、低炭素Nb添加鋼などからなる深絞り用鋼板が基材鋼板として好ましい。また、P、Si、Mnなどを添加した高強度鋼板を用いてもよい。
基材鋼板の種類は、特に限定されない。たとえば、基材鋼板としては、低炭素鋼や中炭素鋼、高炭素鋼、合金鋼などから選択される鋼板を使用することができる。良好なプレス成形性が必要とされる場合は、低炭素Ti添加鋼、低炭素Nb添加鋼などからなる深絞り用鋼板が基材鋼板として好ましい。また、P、Si、Mnなどを添加した高強度鋼板を用いてもよい。
[蒸着Zn−Mg系めっき層]
上記黒色めっき鋼板の原板としては、表面から深さ方向に1μm以内の領域におけるMgの含有量が0.1質量%以上35.0質量%以下である蒸着Zn−Mg系めっき層を有する蒸着Zn−Mg系めっき鋼板が使用される。
上記黒色めっき鋼板の原板としては、表面から深さ方向に1μm以内の領域におけるMgの含有量が0.1質量%以上35.0質量%以下である蒸着Zn−Mg系めっき層を有する蒸着Zn−Mg系めっき鋼板が使用される。
上記表面領域におけるMgの含有量が0.1質量%以上35.0質量%以下である蒸着Znめっき層(以下、単に「蒸着Mg含有Znめっき層」ともいう。)を水蒸気処理することで、めっき層の表面領域がより十分に黒色化し、かつ、表面における黒色化のムラが少ない黒色めっき鋼板を作製できる。なお、本願明細書において、黒色化が十分であるとは、たとえば、めっき層の表面から任意に選択した10か所の明度(Lab色空間におけるL*値)の平均値が60以下で有り、かつ、めっき層の表面から任意に選択した10か所の明度の標準偏差が1.2以下であることを意味する。本発明者らは、これは以下の理由によるものと考えている。
上記蒸着Mg含有Znめっき層を密閉容器中で水蒸気処理すると、まずめっき層表面の酸化皮膜がH2Oと反応して水和酸化物に変化するとともに、この酸化物層を通過したH2Oがめっき層の表面領域に含有するZnと反応する。水蒸気雰囲気で酸素ポテンシャルが低下しているため、Zn酸化物の近傍に存在する、酸素との反応性が高いMgは、Zn酸化物から酸素を奪ってMg酸化物となる。このため、表面領域に形成されたZnの酸化物は、非化学量論組成で酸素欠乏型の酸化物(例えば、ZnO1−x)に変化するものと考えられる。このように酸素欠乏型の酸化物が生成すると、その欠陥準位に光がトラップされるため、酸化物が黒色外観を呈することになる。結果として、本発明により得られる黒色めっき鋼板のめっき層は、Znの黒色酸化物が表面領域に分布する金属組織となる。
蒸着Mg含有Znめっき層の表面領域が含有するMgの量が0.1質量%以上であると、上述した作用によって酸素欠乏型の酸化物が十分に生成するため、めっき層が十分に黒色化されると考えられる。一方で、上記表面領域が含有するMgの量が35.0質量%よりも多いと、脆い金属間化合物の相が多く形成されやすくなる。この脆い金属間化合物の相が多く形成されると、水蒸気処理によってめっき層の表面がパウダー状に変性して、黒色化しためっき鋼板を工業製品として使用できなくなることがある。また、上記脆い金属間化合物の相が多く形成されると、めっき層が粗密になり、かつ、めっき層の厚みも一様になりにくい。
蒸着Mg含有Znめっき層は、MgがZn中に均一に分布したMg−Zn合金相を主要相とする単一の層であってもよいし、Mgの含有量(MgとZnとの組成比)がめっき層中で連続的に変化した単一の層であってもよい。一方で、蒸着Mg含有Znめっき層は、Mgの含有量(MgとZnとの組成比)が断続的に変化した複数の層を含んでもよい。蒸着Mg含有Znめっき層が複数の層を含むとき、それぞれの層は、MgがZn中に均一に分布していてもよいし、Mgの含有量(MgとZnとの組成比)がめっき層中で連続的に変化していてもよい。
なお、蒸着Mg含有Znめっき層中の組成分布は、上記めっき層の断面を、エネルギー分散型X線分光法(EDX)が可能な走査型電子顕微鏡(SEM)で撮像し、EDXによって各元素の濃度を定量化して、測定することができる。
なお、Mgの含有量がめっき層中で変化するとき、めっき層のうち基材鋼板に最も近い領域のMgの含有量をより少なくすることが好ましい。このとき、めっき層の深さ方向にかけてMgの含有量を連続的に減少させてもよいし、Mgの含有量が異なる複数の層を形成して、そのうち基材鋼板に最も近い層におけるMgの含有量を少なくしてもよい。このとき、基材鋼板とめっき層との界面から表面方向に1μm以内の領域(以下、単に「最深層」ともいう。)におけるMgの含有量は4質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以下であることがさらに好ましい。最深層のMgの含有量を上記範囲にすることで、基材鋼板と最深層との延性の差を小さくして基材鋼板とめっき層との密着性をより向上させ、形成加工時の応力によるめっき層の剥離を抑制することができる。
めっき層は、複数の層を含むとき、たとえば、Mgの含有量が7質量%以上35質量%以下である表面領域を含む層と、Mgの含有量が0.5質量%以下の最深層と、の2層からなってもよいし、上記表面領域を含む層と最深層との間にMgの含有量が2質量%7質量%以下である中間層を含んでいてもよい。
基材鋼板とめっき層との密着性をより向上させる観点から、めっき層は、基材鋼板とめっき層との界面におけるFe−Zn合金層またはFe−Zn−Mg合金層を有していてもよい。上記Fe−Zn合金層またはFe−Zn−Mg合金層の厚みは、密着性をより高める観点から0.01μm以上であることが好ましく、プレス成形時にめっき層がパウダー状に変性することを抑制する観点から0.5μm以下であることが好ましい。また、上記Fe−Zn合金層またはFe−Zn−Mg合金層のFe濃度は、6質量%以上100質量%未満であることが好ましい。
めっき層の厚みは、特に限定されないが、1.0μm以上20μm以下の範囲内が好ましい。めっき層の厚みを1.0μm以上とすることで、取り扱い時に生じるキズが基材鋼板に到達しにくくなるため、耐食性が低下しにくい。一方、めっき層の厚みを20μm以下とすることで、圧縮を受けた際のめっき層と基材鋼板の延性が異なることによる、加工の際のめっき層と基材鋼板との剥離が生じにくい。
[黒色酸化物]
上記黒色めっき鋼板は、上記蒸着Mg含有Znめっき層の上記表面領域に黒色酸化物を含有する。
上記黒色めっき鋼板は、上記蒸着Mg含有Znめっき層の上記表面領域に黒色酸化物を含有する。
なお、本願明細書では、酸化物と水和酸化物とを総称して酸化物と称する。また、本願明細書において、めっき層中の各成分の含有量の値は、めっき層に含まれる各金属成分の質量をめっき層に含まれる全金属の質量で除したものを百分率で表したものである。すなわち、酸化物に含まれる酸素および水の質量は、めっき層中の成分として含まれない。したがって、水蒸気処理の際に金属成分の溶出が起こらない場合、水蒸気処理の前後においてめっき層中の各成分の含有量の値は変化しない。
黒色酸化物は、たとえば、上述した作用によって生成する、ZnまたはMgの酸化物または水酸化物を主成分とする、酸素欠乏型の化合物である。
黒色酸化物によって、上記表面領域は黒色の外観を呈する。上記黒色めっき鋼板は、測定位置による測定値の変動を防ぐため、任意に設定した10箇所で測定したL*値の平均値を、上記めっき層表面の明度とする。上記黒色めっき鋼板の明度(L*値)は、60以下、好ましくは40以下、より好ましくは30以下となる。
上記黒色めっき鋼板は、酸素濃度を13%以下にした密閉容器中で蒸着Mg含有Znめっき層を水蒸気処理して得られるものである。蒸着Mg含有Znめっき層では、MgとZnとが互いに略均一に分散しているため、上述した作用も上記表面領域の全面で一様に生じ、上記黒色酸化物も表面領域に略均一に分布するように形成される。また、酸素濃度を13%以下にした密閉容器中で水蒸気処理することで、上述した格子欠陥が雰囲気中の酸素で埋められにくくなるため、酸素欠乏型の酸化物が一様に生成する。そのため、上記黒色めっき鋼板は、表面における黒色のムラが少ないという特長を有する。上記黒色めっき鋼板において、蒸着Mg含有Znめっき層の表面から任意に選択した10か所の明度(L*値)を測定したとき、標準偏差が1.2以下となる。
なお、上記めっき層表面の明度の平均値と、上記めっき層表面の明度の標準偏差とは、同じ10箇所から測定してもよいし、別の10箇所から測定してもよい。
一方で、上記黒色めっき鋼板は、Niイオンなどの貴な金属を含む皮膜を形成せずに表面を黒色化することができる。そのため、金属間のイオン化傾向の違いによるZnの溶出は生じにくく、Niイオンなどを含む皮膜による黒色めっき鋼板よりも耐食性を高めることができる。
[クロメートフリー皮膜]
上記黒色めっき鋼板のめっき層の表面には、クロメートフリー皮膜が形成されていてもよい。クロメートフリー皮膜は、黒色めっき鋼板の耐食性や耐カジリ性(黒色外観の保持性)などを向上させる。クロメートフリー皮膜は、無機系皮膜でもよいし有機系樹脂皮膜でもよい。
上記黒色めっき鋼板のめっき層の表面には、クロメートフリー皮膜が形成されていてもよい。クロメートフリー皮膜は、黒色めっき鋼板の耐食性や耐カジリ性(黒色外観の保持性)などを向上させる。クロメートフリー皮膜は、無機系皮膜でもよいし有機系樹脂皮膜でもよい。
「クロメートフリー」とは、上記無機系皮膜または有機系樹脂皮膜が6価クロムを実質的に含有しないことを意味する。上記めっき層が「クロメートフリー」であることは、黒色めっき鋼板から50mm×50mmの試験片4枚を切り出し、沸騰している純水100mLに10分間浸漬した後、当該純水中に溶出した6価クロムを、JIS H8625付属書の2.4.1の「ジフェニルカルバジッド比色法」に準拠する濃度の分析方法で定量したときに、検出限界以下であること、によって確認することが可能である。上記黒色めっき鋼板は、実使用において環境へ6価クロムを溶出せず、かつ、平坦部で十分な耐食性を発現する。なお、「平坦部」とは、上記黒色めっき鋼板の上記クロメートフリー皮膜で覆われている部分であって、曲げ加工、絞り加工、張り出し加工、エンボス加工、ロール成型等により変形していない部分を意味する。
(無機系皮膜)
無機系皮膜は、バルブメタルの酸化物、バルブメタルの酸素酸塩、バルブメタルの水酸化物、バルブメタルのリン酸塩およびバルブメタルのフッ化物からなる群から選ばれる1種類または2種類以上の化合物(以下「バルブメタル化合物」ともいう)を含むものが好ましい。バルブメタル化合物を含ませることで、環境負荷を小さくしつつ、優れたバリア作用を付与することができる。バルブメタルとは、その酸化物が高い絶縁抵抗を示す元素をいう。バルブメタルとしては、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、W、SiおよびAlからなる群から選ばれる1種類または2種類以上の金属が挙げられる。バルブメタル化合物としては公知のものを用いてよい。
無機系皮膜は、バルブメタルの酸化物、バルブメタルの酸素酸塩、バルブメタルの水酸化物、バルブメタルのリン酸塩およびバルブメタルのフッ化物からなる群から選ばれる1種類または2種類以上の化合物(以下「バルブメタル化合物」ともいう)を含むものが好ましい。バルブメタル化合物を含ませることで、環境負荷を小さくしつつ、優れたバリア作用を付与することができる。バルブメタルとは、その酸化物が高い絶縁抵抗を示す元素をいう。バルブメタルとしては、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、W、SiおよびAlからなる群から選ばれる1種類または2種類以上の金属が挙げられる。バルブメタル化合物としては公知のものを用いてよい。
また、バルブメタルの可溶性フッ化物を無機系皮膜に含ませることで、無機系皮膜に自己修復作用を付与することができる。バルブメタルのフッ化物は、雰囲気中の水分に溶け出した後、皮膜欠陥部から露出しているめっき鋼板の表面に難溶性の酸化物または水酸化物となって再析出し、皮膜欠陥部を埋める。無機系皮膜にバルブメタルの可溶性フッ化物を含ませるには、無機系塗料にバルブメタルの可溶性フッ化物を添加してもよいし、バルブメタル化合物とは別に(NH4)Fなどの可溶性フッ化物を添加してもよい。
無機系皮膜は、さらに可溶性または難溶性の金属リン酸塩または複合リン酸塩を含んでいてもよい。可溶性のリン酸塩は、無機系皮膜から皮膜欠陥部に溶出し、めっき鋼板の金属と反応して不溶性リン酸塩となることで、バルブメタルの可溶性フッ化物による自己修復作用を補完する。また、難溶性のリン酸塩は、無機系皮膜中に分散して皮膜強度を向上させる。可溶性の金属リン酸塩または複合リン酸塩に含まれる金属の例には、アルカリ金属、アルカリ土類金属、Mnが含まれる。難溶性の金属リン酸塩または複合リン酸塩に含まれる金属の例には、Al、Ti、Zr、Hf、Znが含まれる。
(有機系樹脂皮膜)
有機系樹脂皮膜を構成する有機樹脂は、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、フッ素系樹脂、もしくはこれらの樹脂の共重合体または変性物、またはこれらの樹脂の組み合わせなどとすることができる。これらの柔軟性のある有機樹脂を用いることで、黒色めっき鋼板を成形加工する際のクラックの発生を抑制することができ、耐食性を向上させることができる。また、有機系樹脂皮膜にバルブメタル化合物を含ませる場合に、バルブメタル化合物を有機系樹脂皮膜(有機樹脂マトリックス)中に分散させることができる(後述)。
有機系樹脂皮膜を構成する有機樹脂は、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、フッ素系樹脂、もしくはこれらの樹脂の共重合体または変性物、またはこれらの樹脂の組み合わせなどとすることができる。これらの柔軟性のある有機樹脂を用いることで、黒色めっき鋼板を成形加工する際のクラックの発生を抑制することができ、耐食性を向上させることができる。また、有機系樹脂皮膜にバルブメタル化合物を含ませる場合に、バルブメタル化合物を有機系樹脂皮膜(有機樹脂マトリックス)中に分散させることができる(後述)。
有機系樹脂皮膜は、潤滑剤を含むものが好ましい。潤滑剤を含ませることで、プレス加工などの加工の際、金型とめっき鋼板表面の摩擦を軽減でき、めっき鋼板表面のカジリを抑制することができる(耐カジリ性の向上)。潤滑剤の種類は、特に限定されず、公知のものから選択すればよい。潤滑剤の例には、フッ素系やポリエチレン系、スチレン系などの有機ワックス、二硫化モリブデンやタルクなどの無機潤滑剤が含まれる。
有機系樹脂皮膜は、無機系皮膜と同様に、前述のバルブメタル化合物を含むものが好ましい。バルブメタル化合物を含ませることで、環境負荷を小さくしつつ、優れたバリア作用を付与することができる。
また、有機系樹脂皮膜は、無機系皮膜と同様に、さらに可溶性または難溶性の金属リン酸塩または複合リン酸塩を含んでいてもよい。可溶性のリン酸塩は、有機系樹脂皮膜から皮膜欠陥部に溶出し、めっき鋼板の金属と反応して不溶性リン酸塩となることで、バルブメタルの可溶性フッ化物による自己修復作用を補完する。また、難溶性のリン酸塩は、有機系樹脂皮膜中に分散して皮膜強度を向上させる。
有機系樹脂皮膜がバルブメタル化合物やリン酸塩を含む場合、通常は、めっき鋼板と有機系樹脂皮膜との間に界面反応層が形成される。界面反応層は、有機系塗料に含まれるフッ化物またはリン酸塩とめっき鋼板に含まれる金属またはバルブメタルとの反応生成物であるフッ化亜鉛、リン酸亜鉛、ならびにバルブメタルのフッ化物およびリン酸塩などからなる緻密層である。界面反応層は、優れた環境遮蔽能を有し、雰囲気中の腐食性成分がめっき鋼板に到達することを妨げる。一方、有機系樹脂皮膜では、バルブメタルの酸化物、バルブメタルの水酸化物、バルブメタルのフッ化物、リン酸塩などの粒子が有機樹脂マトリックス中に分散している。バルブメタルの酸化物などの粒子は、有機樹脂マトリックス中に三次元的に分散しているため、有機樹脂マトリックスを浸透してきた水分などの腐食性成分を捕捉することができる。その結果、有機系樹脂皮膜は、界面反応層に到達する腐食性成分を大幅に減少することができる。これら有機系樹脂皮膜および界面反応層により、優れた防食効果が発揮される。
たとえば、有機系樹脂皮膜は、柔軟性に優れるウレタン系樹脂を含むウレタン系樹脂皮膜である。ウレタン系樹脂皮膜を構成するウレタン系樹脂は、たとえば、ポリオールに由来する構成単位とポリイソシアネートに由来する構成単位とを有する。
ウレタン系樹脂皮膜を形成した後に、黒色の色調を付与するために水蒸気処理を行う場合、上記ポリオールに由来する構成単位は、エーテル系ポリオール(エーテル結合を含むポリオール)に由来する構成単位およびエステル系ポリオール(エステル結合を含むポリオール)に由来する構成単位を所定の割合で有することが好ましい。
上記エステル系ポリオールに由来する構成単位の割合を所定の範囲にすることで、ウレタン系樹脂中のエステル結合が水蒸気によって加水分解されにくくなるため、耐食性をより十分に向上させることができる。一方、上記エーテル系ポリオールに由来する構成単位の割合を所定の範囲にすることで、めっき鋼板との密着性をより高め、耐食性を十分に向上させることができる。そのため、エーテル系ポリオールに由来する構成単位およびエステル系ポリオールに由来する構成単位を所定の割合で含むウレタン系樹脂によれば、めっき鋼板の耐食性を顕著に向上させうる。このようなウレタン系樹脂皮膜を形成した後に、黒色の色調を付与するために水蒸気処理を行うと(後述)、ウレタン系樹脂皮膜による耐食性の向上効果が十分に発揮され、黒色の色調を有し、かつ耐食性に優れた黒色めっき鋼板となる。
上記エーテル系ポリオールの種類は、特に限定されず、公知のものから適宜選択すればよい。上記エーテル系ポリオールの例には、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリンのエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイド付加物のような直鎖状ポリアルキレンポリオールなどが含まれる。
上記エステル系ポリオールの種類も、特に限定されず、公知のものから適宜選択すればよい。たとえば、上記エステル系ポリオールとしては、二塩基酸および低分子ポリオールを反応させて得られる、分子鎖中にヒドロキシ基を有する線状ポリエステルを使用できる。二塩基酸の例には、アジピン酸、アゼライン酸、ドデカン二酸、ダイマー酸、イソフタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テレフタル酸、ジメチルテレフタレート、イタコン酸、フマル酸、無水マレイン酸、または前記各酸のエステル類が含まれる。
上記エーテル系ポリオールに由来する構成単位の割合は、5〜30質量%であることが好ましい。エーテル系ポリオールに由来する構成単位の割合を5質量%以上にすることで、エステル系ポリオールに由来する構成単位の比率が過剰に高まらないため、ウレタン系樹脂皮膜が加水分解されにくくなり、耐食性を十分に向上させることができる。一方、エーテル系ポリオールに由来する構成単位の割合を30質量%未満にすることで、エーテル系ポリオールに由来する構成単位の比率が過剰に高まらないため、めっき鋼板との密着性が低下せず、耐食性を十分に向上させることができる。
上記ポリイソシアネートの種類は、特に限定されず、公知のものから適宜選択すればよい。たとえば、上記ポリイソシアネートとして、芳香族環を有するポリイソシアネート化合物を使用することができる。芳香族環を有するポリイソシアネート化合物の例には、ヘキサメチレンジイソシアネート、o−、m−またはp−フェニレンジイソシアネート、2,4−または2,6−トリレンジイソシアネート、芳香族環が水素添加された2,4−または2,6−トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジメチルー4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、ω,ω’−ジイソシアネート−1,4−ジメチルベンゼン、ω,ω’−ジイソシアネート−1,3−ジメチルベンゼンなどが含まれる。これらは、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
上記のウレタン系樹脂皮膜は、多価フェノールをさらに含んでいることが好ましい。ウレタン系樹脂皮膜が多価フェノールを含む場合、めっき鋼板とウレタン系樹脂皮膜との界面に、これらを強固に密着させる多価フェノールの濃化層が形成される。したがって、ウレタン系樹脂皮膜に多価フェノールを配合することで、ウレタン系樹脂皮膜の耐食性をさらに向上させることができる。
多価フェノールの種類は、特に限定されず、公知のものから適宜選択すればよい。多価フェノールの例には、タンニン酸、没食子酸、ハイドロキノン、カテコール、フロログルシノールが含まれる。また、ウレタン系樹脂皮膜中の多価フェノールの配合量は、0.2〜30質量%の範囲内が好ましい。多価フェノールの配合量が0.2質量%未満である場合、多価フェノールの効果を十分に発揮させることができない。一方、多価フェノールの配合量が30質量%超である場合、塗料の安定性が低下するおそれがある。
有機系樹脂皮膜は、塗布層であってもよいし、ラミネート層であってもよい。黒色めっき鋼板の黒色外観を生かす観点からは、有機系樹脂皮膜はクリア塗膜であることが好ましい。
上記黒色めっき鋼板は、めっき層表面の黒色のムラが少ないため、より意匠性の高い黒色外観を有する黒色めっき鋼板とすることが可能である。
2.黒色Zn−Mg系めっき鋼板の製造方法
本発明の別の態様に係る黒色Zn−Mg系めっき鋼板の製造方法は特に限定されないが、例えば以下の方法により製造されうる。
本発明の別の態様に係る黒色Zn−Mg系めっき鋼板の製造方法は特に限定されないが、例えば以下の方法により製造されうる。
上記黒色めっき鋼板の製造方法は、1)基材鋼板と、表面領域におけるMgの含有量が0.1質量%以上35.0質量%以下である蒸着Mg含有Znめっき層と、を有する蒸着Zn−Mg系めっき鋼板を準備する第1のステップと、2)蒸着Zn−Mg系めっき鋼板を密閉容器中で水蒸気に接触させる第2のステップとを有する。さらに、任意のステップとして、第2のステップの前または後に3)蒸着Zn−Mg系めっき鋼板の表面に有機系または無機系のクロメートフリー皮膜を形成するステップを有していてもよい。
[第1のステップ]
第1のステップでは、前述の蒸着Zn−Mg系めっき鋼板を準備する。
第1のステップでは、前述の蒸着Zn−Mg系めっき鋼板を準備する。
蒸着Zn−Mg系めっき鋼板は、たとえば、基材鋼板の表面を活性化した後、それぞれ別個のるつぼに充填したZnおよびMgを同時に蒸発させ、上記活性化された基材鋼板の表面に蒸着させて、製造することができる。蒸着は、減圧雰囲気中で行うことが好ましい。このとき、ZnおよびMgの蒸発量などの蒸着条件を制御して、蒸着Zn−Mg系めっき層の組成を調整して、表面領域におけるMgの含有量を0.1質量%以上35.0質量%以下にすることができる。蒸着中の鋼板の温度は、160℃以上190℃以下とすることが好ましい。
このとき、蒸着中に蒸発量などの蒸着条件を変更することで、蒸着Zn−Mg系めっき層の組成を層内で連続的または断続的に変化させてもよい。また、蒸着終了時点の鋼板内部の温度を270℃以上390℃以下に高めたり、蒸着後の鋼板を150℃以上250℃で1時間程度加熱したりして、蒸着したMgおよびZnを拡散させて、蒸着Zn−Mg系めっき層の組成を層内で連続的または断続的に変化させることもできる。これらの方法により、Mgの含有量が好ましくは6質量%以下、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以下である、上述した最深層を形成してもよい。また、同様の制御によって、上述したFe−Zn合金層またはFe−Zn−Mg合金層を形成してもよい。
めっき層の厚みは、3〜100μmの範囲内が好ましい。めっき層の厚みも、ZnおよびMgの蒸発量などの蒸着条件を制御して、上記範囲に調整することができる。
[第2のステップ]
第2のステップでは、第1のステップで準備しためっき鋼板を、酸素濃度を13%以下にした密閉容器中で水蒸気に接触させて、めっき層を黒色化する。この工程により、めっき層表面の明度(L*値)を60以下、好ましくは40以下、より好ましくは30以下にまで低下させることができる。めっき層表面の明度(L*値)は、分光型色差計を用いて測定される。
第2のステップでは、第1のステップで準備しためっき鋼板を、酸素濃度を13%以下にした密閉容器中で水蒸気に接触させて、めっき層を黒色化する。この工程により、めっき層表面の明度(L*値)を60以下、好ましくは40以下、より好ましくは30以下にまで低下させることができる。めっき層表面の明度(L*値)は、分光型色差計を用いて測定される。
密閉容器とは、空気を導入または排出したり、液体を排出したりする配管の開口を閉じることで、その外部から内部への気体の流入またはその内部から外部への気体の排出が実質的に不可能な密閉状態をとることが可能となるように構成された容器である。外部との気体の流通を止めることで、外部の空気とは独立に密閉容器の内部の空気組成を調整して、酸素濃度を13%以下に制御することができる。
密閉容器内の酸素濃度を13%以下にすることで、上述した格子欠陥が雰囲気中の酸素で埋められにくくなるため、酸素欠乏型の酸化物が十分に生成し、めっき層の表面が十分に黒色化される。密閉容器内の酸素濃度は、8%以下であることが好ましく、3%以下であることがより好ましい。密閉容器内の酸素濃度を下げる方法は、特に限定されない。たとえば、水蒸気の濃度(相対湿度)を上げてもよいし、容器内の空気を不活性ガスで置換してもよいし、容器内の空気を真空ポンプなどで除去してもよい。いずれの場合であっても、水蒸気処理は密閉容器内で行うことが必要である。
水蒸気をめっき層の表面全体に同程度に接触させ、黒色めっき層をより一様に黒色化するためには、水蒸気を吹き付けないことが好ましく、めっき層を静置した密閉容器中で水蒸気を循環させることがより好ましい。
水蒸気処理の処理時間は、水蒸気処理の条件(温度や相対湿度、圧力など)や表面領域中のMgの量、必要とする明度などに応じて適宜設定されうる。
(処理温度)
水蒸気処理の雰囲気温度は、50℃以上350℃以下の範囲内が好ましい。水蒸気処理の雰囲気温度を50℃以上にすることで、黒色化速度を速め、生産性をより向上させることができる。また、密閉容器の中で水を100℃以上に加熱すると、容器内の圧力が1気圧以上となり、密閉容器内の酸素濃度を容易に下げることができるため、水蒸気処理の温度は100℃以上であることがより好ましい。一方、水蒸気処理の温度が350℃超の場合、黒色化速度が非常に速くなり、制御することが困難となる。また、水蒸気処理の温度が350℃超の場合、処理装置を大型にする必要があり、また、昇温および降温に要する時間を含む合計処理時間も長くなってしまうため、実用的でない。したがって、雰囲気中の酸素の除去および黒色化速度の制御の観点から、水蒸気処理の温度は、105℃以上200℃以下の範囲内が特に好ましい。
水蒸気処理の雰囲気温度は、50℃以上350℃以下の範囲内が好ましい。水蒸気処理の雰囲気温度を50℃以上にすることで、黒色化速度を速め、生産性をより向上させることができる。また、密閉容器の中で水を100℃以上に加熱すると、容器内の圧力が1気圧以上となり、密閉容器内の酸素濃度を容易に下げることができるため、水蒸気処理の温度は100℃以上であることがより好ましい。一方、水蒸気処理の温度が350℃超の場合、黒色化速度が非常に速くなり、制御することが困難となる。また、水蒸気処理の温度が350℃超の場合、処理装置を大型にする必要があり、また、昇温および降温に要する時間を含む合計処理時間も長くなってしまうため、実用的でない。したがって、雰囲気中の酸素の除去および黒色化速度の制御の観点から、水蒸気処理の温度は、105℃以上200℃以下の範囲内が特に好ましい。
容器内の圧力を大気圧以上として酸素の混入を抑制するために、不活性ガスを容器内に入れてもよい。不活性ガスの種類は、黒色化反応に無関係なものであれば特に限定されない。不活性ガスの例には、Ar、N2、He、Ne、Kr、Xeなどが含まれる。これらの中では、安価に入手可能なAr、N2、Heが好ましい。また、真空ポンプなどで容器内の空気を除去してから水蒸気処理を行ってもよい。
(相対湿度)
水蒸気処理中の水蒸気の相対湿度は、30%以上100%以下の範囲内が好ましく、80%以上100%未満の範囲がより好ましく、90%超100%未満の範囲がさらに好ましい。水蒸気の相対湿度を30%以上にすることで、黒色化速度を速めて、生産性をより向上させることができる。水蒸気の相対湿度を80%以上にすることで、黒色化速度をより速めて、生産性をさらに向上させることができる。
水蒸気処理中の水蒸気の相対湿度は、30%以上100%以下の範囲内が好ましく、80%以上100%未満の範囲がより好ましく、90%超100%未満の範囲がさらに好ましい。水蒸気の相対湿度を30%以上にすることで、黒色化速度を速めて、生産性をより向上させることができる。水蒸気の相対湿度を80%以上にすることで、黒色化速度をより速めて、生産性をさらに向上させることができる。
水蒸気処理の処理時間は、水蒸気処理の条件(温度や相対湿度、圧力など)やめっき層中のMgの量、必要とする明度などに応じて適宜設定されうる。
(事前加熱)
また、水蒸気処理を行う前にめっき鋼板を加熱して、めっき層中のZn2Mgをより黒色化しやすいZn11Mg2とすることで、めっき層が黒色外観になるまでの水蒸気処理の時間を短縮することができる。このときのめっき鋼板の加熱温度は、150℃以上350℃以下の範囲内が好ましい。事前加熱の処理時間は、処理温度やめっき層中のMgの量などに応じて適宜設定すればよい。通常は、250℃で2時間程度加熱すればよい。
また、水蒸気処理を行う前にめっき鋼板を加熱して、めっき層中のZn2Mgをより黒色化しやすいZn11Mg2とすることで、めっき層が黒色外観になるまでの水蒸気処理の時間を短縮することができる。このときのめっき鋼板の加熱温度は、150℃以上350℃以下の範囲内が好ましい。事前加熱の処理時間は、処理温度やめっき層中のMgの量などに応じて適宜設定すればよい。通常は、250℃で2時間程度加熱すればよい。
水蒸気処理は、コイル状に巻かれためっき鋼板、成形加工前の平板状のめっき鋼板、成形加工や溶接などを行った後のめっき鋼板のいずれに対して行ってもよい。
[任意のステップ]
第2のステップの前または後に任意に行われる任意のステップでは、蒸着Zn−Mg系めっき鋼板の表面にクロメートフリー皮膜を形成する。クロメートフリー皮膜は、無機系皮膜でもよいし、有機系樹脂皮膜でもよい。
第2のステップの前または後に任意に行われる任意のステップでは、蒸着Zn−Mg系めっき鋼板の表面にクロメートフリー皮膜を形成する。クロメートフリー皮膜は、無機系皮膜でもよいし、有機系樹脂皮膜でもよい。
無機系皮膜は、公知の方法で形成されうる。たとえば、バルブメタル化合物などを含む無機系塗料を、水蒸気に接触させる前または接触させた後の蒸着Zn−Mg系めっき鋼板の表面に塗布し、水洗せずに乾燥させればよい。塗布方法の例には、ロールコート法、スピンコート法、スプレー法などが含まれる。無機系塗料にバルブメタル化合物を添加する場合は、無機系塗料中においてバルブメタル化合物が安定して存在できるように、キレート作用のある有機酸を無機系塗料に添加してもよい。有機酸の例には、タンニン酸、酒石酸、クエン酸、シュウ酸、マロン酸、乳酸および酢酸が含まれる。
有機系樹脂皮膜も、公知の方法で形成されうる。たとえば、有機系樹脂皮膜が塗布層である場合は、有機樹脂やバルブメタル化合物などを含む有機系塗料を、水蒸気に接触させる前または接触させた後の蒸着Zn−Mg系めっき鋼板の表面に塗布し、水洗せずに乾燥させればよい。塗布方法の例には、ロールコート法、スピンコート法、スプレー法などが含まれる。有機系塗料にバルブメタル化合物を添加する場合は、有機系塗料中においてバルブメタル化合物が安定して存在できるように、キレート作用のある有機酸を有機系塗料に添加してもよい。有機樹脂やバルブメタル化合物、フッ化物、リン酸塩などを含む有機系塗料をめっき鋼板の表面に塗布した場合、フッ素イオンやリン酸イオンなどの無機陰イオンとめっき鋼板に含まれる金属またはバルブメタルとの反応生成物からなる皮膜(界面反応層)がめっき鋼板の表面に優先的にかつ緻密に形成され、その上にバルブメタルの酸化物、バルブメタルの水酸化物、バルブメタルのフッ化物、リン酸塩などの粒子が分散した有機系樹脂皮膜が形成される。一方、有機系樹脂皮膜がラミネート層である場合は、めっき鋼板の表面にバルブメタル化合物などを含む有機樹脂フィルムを積層すればよい。
蒸着Zn−Mg系めっき鋼板を水蒸気に接触させる前に、蒸着Zn−Mg系めっき鋼板の表面に有機系樹脂皮膜を形成する場合、有機系樹脂皮膜は、前述のウレタン系樹脂皮膜であることが好ましい。ポリオールとして、エーテル系ポリオールおよびエステル系ポリオールを所定の割合で組み合わせて使用したウレタン系樹脂皮膜は、水蒸気処理を行っても耐食性の向上効果を維持することができる。したがって、任意のステップの後に第2のステップを行っても、黒色の色調を有し、かつ耐食性に優れた黒色めっき鋼板を製造することができる。
以上の手順により、めっき層を黒色化して、黒色外観の保持性および加工性に優れる黒色めっき鋼板を製造することができる。
上記製造方法は、水蒸気を用いて黒色化するため、環境に負荷をかけずに黒色めっき鋼板を製造することができる。また、上記製造方法は、酸素濃度を低くして黒色化するため、黒色化のムラが少ない黒色めっき鋼板を作製することができる。
以下、本発明について実施例を参照して詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されない。
[実施例1]
真空蒸着法でZn−Mg系めっきを鋼板に施した。めっき原板としては、C:0.02重量%,Si:0.02重量%,Mn:0.22重量%,P:0.010重量%,S:0.009重量%,Al:0.05重量%,残部Feおよび不可避的不純物の組成を有する、板厚0.8mmのAlキルド鋼板から切り出された、寸法200mm×200mmの試験片を使用した。めっき原板を有機溶剤中に浸漬して超音波洗浄によって表面を清浄化した後、真空蒸着装置にセットした。真空槽内を5×10−5torrに排気し、Arグロー放電によるスパッタエッチングで鋼板表面の酸化膜を除去し、かつ鋼板表面を活性化した。それぞれ別のるつぼに充填したZnおよびMgを同時に蒸発させ、活性化されためっき原板の表面に同時に蒸着させた。このとき、ZnおよびMgの蒸着条件を制御することにより、Mg濃度が異なる蒸着Zn−Mg系めっき層を形成した。
真空蒸着法でZn−Mg系めっきを鋼板に施した。めっき原板としては、C:0.02重量%,Si:0.02重量%,Mn:0.22重量%,P:0.010重量%,S:0.009重量%,Al:0.05重量%,残部Feおよび不可避的不純物の組成を有する、板厚0.8mmのAlキルド鋼板から切り出された、寸法200mm×200mmの試験片を使用した。めっき原板を有機溶剤中に浸漬して超音波洗浄によって表面を清浄化した後、真空蒸着装置にセットした。真空槽内を5×10−5torrに排気し、Arグロー放電によるスパッタエッチングで鋼板表面の酸化膜を除去し、かつ鋼板表面を活性化した。それぞれ別のるつぼに充填したZnおよびMgを同時に蒸発させ、活性化されためっき原板の表面に同時に蒸着させた。このとき、ZnおよびMgの蒸着条件を制御することにより、Mg濃度が異なる蒸着Zn−Mg系めっき層を形成した。
蒸着中の鋼板温度は、160℃以上190℃以下の範囲で維持されるように、加熱ヒータで調節した。また、ZnおよびMgの濃度がめっき原板の面内方向に均一になるように、めっき原板を回転させながら蒸着を行った。作製した蒸着Zn−Mg系めっき鋼板のめっき層中のMg濃度とめっき層の厚みを表1に示す。
めっき鋼板No.10およびNo.11はMg濃度が高いため粗密なめっき層となった。また、めっき鋼板No.10および11はめっき層の厚みも測定場所により大きく異なっていた。
作製しためっき鋼板No.1〜No.11を高温高圧湿熱処理装置(株式会社日阪製作所)内に置いた。処理装置内を密閉状態にして、表2に示す条件でめっき層を水蒸気に接触させた。
水蒸気処理後の各めっき鋼板(実施例1〜13、比較例1〜4)について、めっき層表面の明度(L*値)を、分光型色差計(有限会社東京電色製、TC−1800)を用いて、JIS K 5600に準拠した分光反射測定法で測定した。測定条件を以下に示す。
光学条件:d/8°法(ダブルビーム光学系)
視野:2度視野
測定方法:反射光測定
標準光:C
表色系:CIELAB
測定波長:380〜780nm
測定波長間隔:5nm
分光器:回折格子 1200/mm
照明:ハロゲンランプ(電圧12V、電力50W、定格寿命2000時間)
測定面積:7.25mmφ
検出素子:光電子増倍管(浜松ホトニクス株式会社製、R928)
反射率:0−150%
測定温度:23℃
標準板:白色
光学条件:d/8°法(ダブルビーム光学系)
視野:2度視野
測定方法:反射光測定
標準光:C
表色系:CIELAB
測定波長:380〜780nm
測定波長間隔:5nm
分光器:回折格子 1200/mm
照明:ハロゲンランプ(電圧12V、電力50W、定格寿命2000時間)
測定面積:7.25mmφ
検出素子:光電子増倍管(浜松ホトニクス株式会社製、R928)
反射率:0−150%
測定温度:23℃
標準板:白色
めっき層表面の明度(L*値)は、任意に10箇所測定したL*値の平均値が40以下の場合は「◎」、40超かつ60以下の場合は「○」、60超の場合は「×」と評価した。L*値が60以下のものを合格とした。
また、めっき層の表面から任意に選択した別の10か所の明度(L*値)を測定して、上記L*値の標準偏差を求めた。標準偏差が0.8以下の場合は「◎」、0.8超かつ1.2以下の場合は、「○」、1.2超の場合は「×」とした。
上記測定した10箇所におけるL*値、その平均値および標準偏差、ならびに評価の結果を、表2に示す。
基材鋼板と、Mgの含有量が0.1質量%以上35.0質量%以下である蒸着Mg含有Znめっき層と、を有する蒸着Zn−Mg系めっき鋼板を、酸素濃度を13%以下とした密閉容器中で水蒸気に接触させて製造した黒色Zn−Mg系めっき鋼板は、L*値の平均値が60以下であり、かつ、L*値の標準偏差は1.2以下であった(実施例1〜13)。
一方で、Mgを含まない蒸着Znめっき層を有する蒸着Zn系めっき鋼板を同じ条件で黒色化しても、L*値の平均値が60以下にならず、十分に黒色化した外観が得られなかった(比較例1)。また、蒸着Mg含有Znめっき層中のMgの含有量が35.0質量%より多い蒸着Zn−Mg系めっき鋼板を同じ条件で黒色化した黒色Zn−Mg系めっき鋼板は、L*値が平均値が60以下であり、かつ、L*値の標準偏差は1.0以下であったが、めっき層表面がパウダー化したため、工業製品として製品化は困難であった(比較例2、3)。また、基材鋼板と、Mgの含有量が0.1質量%以上35.0質量%以下である蒸着Mg含有Znめっき層と、を有する蒸着Zn−Mg系めっき鋼板を、酸素濃度が13%より高い密閉容器中で水蒸気に接触させて製造した黒色Zn−Mg系めっき鋼板は、L*値の平均値が60以下であったが、L*値の標準偏差は1.2超であり、めっき鋼板表面の明度のムラが大きかった(比較例4)。
[実施例2]
表1に示しためっき鋼板No.5の表面に表3に示すクロメートフリー処理液を塗布し、水洗することなく電機オーブンに入れて、到達板温140℃となる条件で加熱乾燥して、黒色Zn−Mg系めっき鋼板の表面に無機系および有機系のクロメートフリー皮膜を形成した。その後、上記クロメートフリー皮膜を形成した黒色Zn−Mg系めっき鋼板を高温高圧湿熱処理装置(株式会社日阪製作所)内に置いて、容器内を密閉状態にして、温度120℃、相対湿度90%、酸素濃度3%、処理時間1hの条件で水蒸気と接触させて、蒸着Mg含有Znめっき層を黒色化させた。
表1に示しためっき鋼板No.5の表面に表3に示すクロメートフリー処理液を塗布し、水洗することなく電機オーブンに入れて、到達板温140℃となる条件で加熱乾燥して、黒色Zn−Mg系めっき鋼板の表面に無機系および有機系のクロメートフリー皮膜を形成した。その後、上記クロメートフリー皮膜を形成した黒色Zn−Mg系めっき鋼板を高温高圧湿熱処理装置(株式会社日阪製作所)内に置いて、容器内を密閉状態にして、温度120℃、相対湿度90%、酸素濃度3%、処理時間1hの条件で水蒸気と接触させて、蒸着Mg含有Znめっき層を黒色化させた。
なお、本実施例において、ウレタン樹脂は、HUX320(株式会社ADEKA)を使用した。フッ素樹脂は、オブリガード(AGCコーティック株式会社)を使用した。アクリル樹脂は、ボンコート40−418EF(DIC株式会社)を使用した。
上記各処理液でクロメートフリー処理を行い、水蒸気処理をした後のめっき鋼板(実施例14〜19)について、めっき層表面の明度(L*値)の平均値および明度(L*値)の標準偏差を実施例1と同様の方法で測定した。
また、表1に記載のめっき鋼板No.5をNiイオン含有リン酸塩処理液と接触させて、めっき層表面にNiを3%以上含有した黒色リン酸塩皮膜を形成した。
その後、各めっき鋼板(実施例14〜19、比較例5)について、JIS Z2371に準拠して35℃のNaCl水溶液を試験片に8時間噴霧して、耐食性試験を行った。噴霧後の白錆発生面積率が10%以下の場合は「◎」、10%超かつ20%未満の場合は「○」、20%以上かつ50%未満の場合は「△」、50%超の場合は「×」と評価した。
水蒸気処理後の各めっき鋼板のめっき層表面の明度(L*値)の平均値および標準偏差、ならびに耐食性試験の結果を表4に示す。
クロメートフリー皮膜を形成した黒色Zn−Mg系めっき鋼板(実施例15〜19)は、クロメートフリー皮膜を形成しなかった黒色Zn−Mg系めっき鋼板(実施例14)よりも耐食性が高くなった。また、めっき表面にNiを含有した黒色皮膜を形成して黒色化した比較例5は、実施例14と比較して耐食性が劣っていた。
[実施例3]
実施例1と同様の方法で蒸着Zn−Mg系めっきを行った鋼板に、再度同様の方法で蒸着Zn−Mg系めっきを行い、Mg濃度の異なる2層構造の蒸着Zn−Mg系めっき鋼板を作製した。このとき、最初に行った蒸着Zn−Mg系めっきの時間を変えた複数の蒸着Zn−Mg系めっき鋼板を作製した。さらに、最初の蒸着Zn−Mg系めっきを行わない1層構造の蒸着Zn−Mg系めっき鋼板も作製した。
実施例1と同様の方法で蒸着Zn−Mg系めっきを行った鋼板に、再度同様の方法で蒸着Zn−Mg系めっきを行い、Mg濃度の異なる2層構造の蒸着Zn−Mg系めっき鋼板を作製した。このとき、最初に行った蒸着Zn−Mg系めっきの時間を変えた複数の蒸着Zn−Mg系めっき鋼板を作製した。さらに、最初の蒸着Zn−Mg系めっきを行わない1層構造の蒸着Zn−Mg系めっき鋼板も作製した。
その後、エネルギー分散型X線分光法(EDX)が可能な走査型電子顕微鏡(SEM)で形成しためっき層の断面を撮像して、最初に形成した下層側のめっき層、および後から形成した表層側のめっき層のMg濃度および膜厚を測定した。なお、それぞれの層内において、Mgは均一の濃度で分布していた。
その後、作製した蒸着Zn−Mg系めっき鋼板を高温高圧湿熱処理装置(株式会社日阪製作所)内に置いて、容器内を密閉状態にして、温度120℃、相対湿度95%、酸素濃度3%、処理時間1hの条件で水蒸気と接触させて、蒸着Mg含有Znめっき層を黒色化させた。水蒸気処理後の各めっき鋼板について、めっき層表面の明度(L*値)の平均値および標準偏差を測定した。
さらに、水蒸気処理後の各めっき鋼板の加工性を、2t折り曲げ試験により評価した。2t折り曲げ試験は、板厚0.8mmの鋼板を2枚挟んで180度に折り曲げておこなった。その後、折り曲げ部におけるめっき層の断面を走査型電子顕微鏡で撮影して、鋼板表面に到達する折り曲げ方向に対する幅が6μm以上のクラックがない場合に「◎」、上記幅が6μm以上のクラックが1本以上5本以下あった場合に「○」、上記幅が6μm以上のクラックが6本以上12本以下あった場合を「△」、上記幅が6μm以上のクラックが13本以上あった場合を「×」と評価した。
表面側のめっき層および下層側のめっき層のMg濃度および膜厚、水蒸気処理後の各めっき鋼板のめっき層表面の明度(L*値)の平均値および標準偏差、ならびに加工性の評価結果を表5に示す。
めっき層のうち基材鋼板に最も近い領域のMgの含有量が4.0%以下である黒色Zn−Mg系めっき鋼板(実施例21〜23)は、加工性が良好だった。
一方、単一層で構成されている黒色Zn−Mg系めっき鋼板(実施例20)では、良好な加工性が得られなかった。また、めっき層のうち基材鋼板に最も近い領域のMgの含有量が4.0%より多い黒色Zn−Mg系めっき鋼板(実施例24)では、良好な加工性が得られなかった。
本発明の黒色Zn−Mg系めっき鋼板は、黒色のムラが少ないため意匠性に優れ、かつ、耐食性も高いため、例えば建築物の屋根材や外装材、家電製品、自動車などに使用されるめっき鋼板として有用である。
Claims (4)
- 基材鋼板と、表面から深さ方向に1μm以内の表面領域におけるMgの含有量が0.1質量%以上35.0質量%以下である蒸着Mg含有Znめっき層と、を有し、
前記蒸着Mg含有Znめっき層は、前記表面領域に黒色酸化物を含有しており、
前記蒸着Mg含有Znめっき層の表面から任意に選択した10か所の明度(Lab色空間におけるL*値)の平均値は60以下であり、かつ、前記蒸着Mg含有Znめっき層の表面から任意に選択した10か所の明度の標準偏差は1.2以下である、
黒色Zn−Mg系めっき鋼板。 - 前記黒色酸化物は、ZnまたはMgの酸化物または水酸化物を主成分とする、酸素欠乏型の化合物である、
請求項1に記載の黒色Zn−Mg系めっき鋼板。 - クロメートフリー皮膜をさらに有し、
前記基材鋼板、前記蒸着Mg含有Znめっき層および前記クロメートフリー皮膜はこの順に配置される、
請求項1または2に記載の黒色Zn−Mg系めっき鋼板。 - 基材鋼板と、表面から深さ方向に1μm以内の表面領域におけるMgの含有量が0.1質量%以上35.0質量%以下である蒸着Mg含有Znめっき層と、を有する蒸着Zn−Mg系めっき鋼板を準備するステップと、
前記蒸着Zn−Mg系めっき鋼板を、酸素濃度を13%以下にした密閉容器中で水蒸気に接触させるステップと、を含む、
黒色Zn−Mg系めっき鋼板の製造方法。
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