JP2018074828A - 電力系統安定化装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】電力系統における各発電機の電制に関する指標を算出すること。
【解決手段】実施形態の電力系統安定化装置は、複数の発電機を有する電力系統を安定化する電力系統安定化装置であって、前記発電機ごとに、電制を実行した場合に前記電力系統の安定化に寄与する度合いを示す電制効果を算出する電制効果算出部と、前記算出された電制効果に基づいて、前記発電機ごとに、優先して電制することに対するインセンティブを算出するインセンティブ算出部と、前記インセンティブに基づいて選択された前記発電機を前記電力系統に事故が発生した場合に優先して前記電力系統から切り離す電制の制御を行う制御部と、を備える。
【選択図】図1
【解決手段】実施形態の電力系統安定化装置は、複数の発電機を有する電力系統を安定化する電力系統安定化装置であって、前記発電機ごとに、電制を実行した場合に前記電力系統の安定化に寄与する度合いを示す電制効果を算出する電制効果算出部と、前記算出された電制効果に基づいて、前記発電機ごとに、優先して電制することに対するインセンティブを算出するインセンティブ算出部と、前記インセンティブに基づいて選択された前記発電機を前記電力系統に事故が発生した場合に優先して前記電力系統から切り離す電制の制御を行う制御部と、を備える。
【選択図】図1
Description
本発明の実施形態は、電力系統安定化装置に関する。
電力系統(以下、「系統」ともいう。)における複数の発電機は、平常時、同じ速度で運転(同期運転)されている。そして、落雷、断線等の系統事故が発生した際に、脱調(同期状態から外れること)した発電機や脱調しそうな発電機があれば、系統の過渡安定度を維持するために、その発電機を電制(電源制限)する(つまり、系統から切り離す)必要がある。なお、過渡安定度とは、系統内の同期運転している各発電機が落雷や断線などの大きな外乱に対して脱調を起こさずに運転を継続できる度合いである。
また、日本では、発電事業と送電事業を分離するいわゆる発送電分離を2020年に開始することが決定している。発送電分離を開始するまでは、電力会社は、発電事業と送電事業の両方を行っているため、系統現象に合わせて過渡安定度を維持するためにどの発電機を電制するかをある程度任意に決定できる。
発送電分離が実現すると、1つの電力系統に対して、送電事業者とは異なる複数の発電事業者が存在することになると予想される。また、各発電事業者は、自己の所有する発電機が電制されると、発電機会を損なって経済的損失を受けてしまう。したがって、電力系統における各発電機の電制に関する指標があることが望ましい。
実施形態の電力系統安定化装置は、複数の発電機を有する電力系統を安定化する電力系統安定化装置であって、前記発電機ごとに、電制を実行した場合に前記電力系統の安定化に寄与する度合いを示す電制効果を算出する電制効果算出部と、前記算出された電制効果に基づいて、前記発電機ごとに、優先して電制することに対するインセンティブを算出するインセンティブ算出部と、前記インセンティブに基づいて選択された前記発電機を前記電力系統に事故が発生した場合に優先して前記電力系統から切り離す電制の制御を行う制御部と、を備える。
以下、実施形態の電力システムについて説明する。なお、以下の実施形態では、発送電分離が開始された後で、1つの電力系統に対して、送電事業者と、その送電事業者とは異なる複数の発電事業者と、が存在していることを前提とする。
また、一般に、電力系統の安定化方式は、事前演算型方式と事後演算型方式に大別できる。事前演算型方式では、予め事故発生時に電力系統内で起きる現象を想定して安定化に必要な制御量(電制量)を演算し、制御テーブルに設定する。そして、実際に事故が発生した際には対応する制御テーブルを参照して、速やかに制御を実施する。さらに、事前演算型方式にはオンライン型とオフライン型が存在する。
一方、事後演算型方式では、事故中および事故後に、電力系統の情報をオンラインで入手して電力系統内で起きる現象の予測演算を行い、その予測結果に基づいて安定化に必要な制御量(電制量)を演算する。本実施形態では、事前演算型方式のオンライン型の電力系統安定化装置1を含む電力システムSについて説明する。
また、上述したように、発送電分離が実施されると、発電機を電制された発電事業者は発電機会を損なって経済的損失を受けてしまう。したがって、送電事業者には、電制に関して透明性・公平性を明らかにする義務が生じ、電制する発電機の選択に関する妥当性を各発電事業者に対して説明する責任が発生する。そのために、本実施形態では、電力系統における電制に関する指標として、発電機ごとに電制コスト(電制することにより発生するコスト(経済的損失))やインセンティブを算出する。インセンティブとは、発電機の優先的な電制を許可した発電事業者に対する報奨(例えば金銭)である。つまり、発送電分離後の電力系統において、電制した際に生じる電制コストや、過渡安定度(以下、単に「安定度」ともいう。)への寄与度などを勘案して、発電事業者に支払うインセンティブを発電機ごとに算出する。送電事業者は発電事業者にそのインセンティブを開示(提案)する。そして、発電事業者は、インセンティブを受領することを条件に自己の発電機を優先的に電制することを許可するか否かを判断し、その判断結果を送電事業者に伝える。これにより、系統事故発生時に、優先的な電制を許可された発電機から電制することで、円滑な安定化制御を行うことができる。
以下、第1実施形態〜第3実施形態について詳述する。なお、第1実施形態では、発電機の電制に関する指標としてのインセンティブを、系統事故が発生する前に予め算出しておくことを前提とする。また、第2実施形態では、発電機の電制に関する指標としてのインセンティブを、系統事故が発生した後に算出することを前提とする。また、第3実施形態では、発電機の電制に関する指標としての電制コストを、系統事故が発生した後に算出することを前提とする。
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の電力システムの構成の例を示す図である。電力システムSは、電力系統安定化装置1、電力系統2を備え、送電事業者によって運用される。電力系統2は、発電事業者が管理する複数の発電機21(以下、符号無しで単に「発電機」ともいう。)と、発電機21を制御する端末装置22と、電力系統2に関する各種情報を収集する系統情報収集装置23と、を備える。端末装置22は、系統事故発生時に、電力系統安定化装置1から受信した制御テーブルにしたがって、発電機21を電制する(系統から切り離す)。
図1は、第1実施形態の電力システムの構成の例を示す図である。電力システムSは、電力系統安定化装置1、電力系統2を備え、送電事業者によって運用される。電力系統2は、発電事業者が管理する複数の発電機21(以下、符号無しで単に「発電機」ともいう。)と、発電機21を制御する端末装置22と、電力系統2に関する各種情報を収集する系統情報収集装置23と、を備える。端末装置22は、系統事故発生時に、電力系統安定化装置1から受信した制御テーブルにしたがって、発電機21を電制する(系統から切り離す)。
系統情報収集装置23は、電力系統に関する情報(系統情報)として、電力系統2に含まれる各所の電圧、位相、潮流や、変圧器、発電機等の各種電力系統設備の状態等の情報を収集し、電力系統安定化装置1へ送信する。なお、潮流とは、電気の流れを意味し、例えば、有効電力、無効電力などの大きさによって表すことができる。
電力系統安定化装置1は、電力系統2に事故が発生した場合に、必要に応じて1つ以上の発電機21を電力系統2から切り離す電制の制御を行うことで、電力系統を安定化するコンピュータ装置であって、処理部11、記憶部12、入力部13、表示部14、および、通信部15を備える。
処理部11は、潮流断面情報作成部111、電制効果算出部112、インセンティブ算出部113、優先電制発電機情報作成部114、安定度算出部115、制御テーブル作成部116、および、送受信制御部117を備える。
また、記憶部12は、図1に図示する系統情報、解析条件情報、潮流断面情報、電制効果情報、インセンティブ情報、優先電制発電機情報、安定度情報、制御テーブルや、処理部11の動作プログラムなどの各種情報を記憶する。
潮流断面情報作成部111は、インセンティブを算出するための解析用の潮流断面情報を作成する。例えば、潮流断面情報作成部111は、記憶部12に蓄積された系統情報を用いた統計処理もしくはデータマイニング処理(機械学習等)に基づいて、または、ユーザが任意に設定した解析条件情報に基づいて、潮流断面情報を作成する。作成された潮流断面情報は記憶部12に記憶される。なお、解析用の潮流断面情報は1つに限定されず、複数であってもよい。
ここで、図2を参照して、潮流断面情報について説明する。図2は、潮流断面情報の例を示す図である。潮流断面情報では、例えば、ノード(ノードa〜d)、ブランチ(ブランチA〜C)、発電機(G)、および、負荷の情報が表される。電制効果算出部112等は、この潮流断面情報と、後述する図3の解析条件情報に基づいて、潮流計算を行い、系統各所の潮流を求めることができる。なお、潮流断面情報は、上述したものに限定されず、任意に設定してよく、例えば、これまでの系統運用実績に基づく経験則や想定できる最も過酷な潮流状態等であってもよい。
図3を参照して、解析条件情報について説明する。図3は、解析条件情報の例を示す図である。図3(a)は解析条件情報におけるノードデータの例を示す図である。図3(a)のノードデータでは、ノード(名称、種別)、電圧、発電機(有効電力出力、無効電力出力)、負荷(有効電力負荷、無効電力負荷)、および、調相設備の情報が対応付けられている。
また、図3(b)は解析条件情報におけるブランチデータの例を示す図である。図3(b)のブランチデータでは、ブランチ名、送電端ノード、受電端ノード、抵抗、リアクタンス、および、キャパシタンスの情報が対応付けられている。
図1に戻って、電制効果算出部112は、発電機21ごとに、電制を実行した場合に電力系統2の安定化に寄与する度合いを示す電制効果を算出する。例えば、電制効果算出部112は、様々な想定事故に関して、潮流断面情報に基づいて過渡安定度の計算を行い、計算の結果に基づいて発電機21ごとに電制効果を算出する。そのほかに、例えば、電制効果算出部112は、潮流断面情報に基づいて過渡安定度の計算を行い、発電機21ごとに、「当該計算での複数の想定事故において電制対象に選ばれた回数」、「当該計算で脱調順位法を用いたときの脱調順位」、「容量」、「出力値」の少なくともいずれかを用いて電制効果を算出する(詳細は後述)。算出された電制効果(電制効果情報)は記憶部12に記憶される。
インセンティブ算出部113は、電制効果算出部112によって算出された電制効果に基づいて、発電機21ごとに、優先して電制することに対するインセンティブを算出する。例えば、インセンティブ算出部113は、発電機21ごとに、電制効果算出部112によって算出された電制効果と、電制する場合の電制コストと、電制が実行される確率と、に基づいて、インセンティブを算出する(詳細は後述)。算出されたインセンティブ(インセンティブ情報)は記憶部12に記憶される。
優先電制発電機情報作成部114は、インセンティブの開示を受けた発電事業者から優先電制許可(優先的に電制してよい旨の許可)が得られた発電機の情報を集約した優先電制発電機情報を作成する。作成された優先電制発電機情報は、記憶部12に記憶される。
安定度算出部115は、記憶部12に記憶された系統情報を用いて、各種の想定事故が発生した場合ごとの系統の安定度を算出する。算出された安定度(安定度情報)は記憶部12に記憶される。
制御テーブル作成部116は、想定事故ごとに電制対象となる発電機21を定めた制御テーブルを作成する際に、優先電制発電機情報にある発電機21を優先的に選択する。例えば、制御テーブル作成部116は、記憶部12に記憶された安定度情報に基づいて、想定事故ごとに、系統が不安定となるかを判定し、不安定となる場合は安定化に必要な制御量(電制量)を算出し、制御テーブルを作成する。このとき、制御テーブル作成部116は、制御量(電制量)を算出する際に、記憶部12の優先電制発電機情報を参照し、その優先電制発電機情報にある発電機を優先的に電制対象として選択する。作成された制御テーブルは記憶部12に記憶される。なお、換言すれば、制御テーブル作成部116は、インセンティブに基づいて選択された発電機を電力系統2に事故が発生した場合に優先して電力系統2から切り離す電制の制御を行う制御部として機能する。
ここで、図4を参照して、制御テーブルについて説明する。図4は、制御テーブルの例を示す図である。図4の制御テーブルでは、制御の識別番号、想定事故における事故点、事故様相、および、電制対象の発電機21の情報が対応付けられている。
図1に戻って、送受信制御部117は、外部装置との情報の送受信制御を行う。例えば、送受信制御部117は、系統情報収集装置23から受信した系統情報を記憶部12に蓄積する。また、例えば、送受信制御部117は、記憶部12に記憶された制御テーブルを端末装置22に送信する。制御テーブルを受信した端末装置22は、系統事故を検出すると制御テーブルにしたがって速やかに発電機21の電制を行う。
入力部13は、電力系統安定化装置1のユーザが情報を入力する手段であり、例えば、キーボードやマウスである。表示部14は、情報の表示手段であり、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)である。通信部15は、外部装置との通信を行う通信インタフェースである。なお、以下では、説明を簡潔にするために、通信部15の動作の説明を省略する。
電力系統安定化装置1には、発電事業者端末3が通信接続されている。発電事業者端末3は、発電事業者の担当者が使用するコンピュータ装置であって、表示部31を有する。
次に、図5を参照して、電力系統安定化装置1の処理部11におけるインセンティブ算出処理の例について説明する。図5は、第1実施形態におけるインセンティブ算出処理の例を示すフローチャートである。
潮流断面情報作成部111は、記憶部12から系統情報と解析条件情報(図3)を取得し(ステップS1)、それらに基づいて、電制効果の解析用の潮流断面情報(図2)を作成する(ステップS2)。
次に、電制効果算出部112は、潮流断面情報(図2)に基づいて、各発電機21の電制効果を算出する(ステップS3)。
次に、インセンティブ算出部113は、ステップS3で算出された電制効果に基づいて、各発電機21のインセンティブを算出する(ステップS4)。
このようにして、電力系統安定化装置1によれば、発電機21ごとのインセンティブを算出することができる(詳細は後述)。
次に、図6を参照して、電力系統安定化装置1の処理部11における優先電制発電機情報作成処理の例について説明する。図6は、第1実施形態における優先電制発電機情報作成処理の例を示すフローチャートである。
送受信制御部117は、ユーザによる入力部13の操作に基づいて、記憶部12に記憶されたインセンティブ情報を発電事業者端末3に送信する(ステップS11)。発電事業者の担当者は、発電事業者端末3の表示部31に表示されたインセンティブ情報を見て、自社が所有する発電機21について系統事故発生時に優先的な電制を許可するか否かを判断し、その判断結果である発電機21の優先電制可否情報を発電事業者端末3から電力系統安定化装置1に送信する。
送受信制御部117は、発電事業者端末3から優先電制可否情報を受信する(ステップS12)。次に、優先電制発電機情報作成部114は、ステップS2で受信した優先電制可否情報に基づいて、発電事業者から優先電制許可が得られた発電機21の情報を集約した優先電制発電機情報を作成する(ステップS13)。
このようにして、電力系統安定化装置1によれば、優先電制発電機情報を作成することができる。なお、発電事業者端末3から優先電制可否情報を得た場合に、電力系統安定化装置1を所有する送電事業者は、優先電制許可が得られた発電機21について自由に電制する旨の電制契約を発電事業者と締結しておくとよい。そうすれば、送電事業者は、その後、系統事故発生時に、当該発電機を自由に電制できる。
次に、図7を参照して、電力系統安定化装置1の処理部11における制御テーブルの作成、送信の処理について説明する。図7は、第1実施形態における制御テーブルの作成、送信の処理の例を示すフローチャートである。なお、ステップS21〜S26のうち、従来技術と異なるのはステップS24である。
まず、安定度算出部115は、記憶部12に記憶された系統情報を取得し(ステップS21)、各種の想定事故が発生した場合ごとの系統の安定度を算出する(ステップS22)。
次に、制御テーブル作成部116は、想定事故ごとに安定度を判定し(ステップS23)、安定化に必要な電制対象の発電機21を選択するが、その際、記憶部12に記憶された優先電制発電機情報にある発電機21を優先的に選択する(ステップS24)。そして、制御テーブル作成部116は、その選択した発電機21に基づいて、制御テーブルを作成する(ステップS25)。
次に、送受信制御部117は、ステップS25で作成した制御テーブルを端末装置22に送信する(ステップS26)。制御テーブルを受信した端末装置22は、系統事故を検出すると制御テーブルにしたがって速やかに発電機21の電制を行う。
このようにして、電力系統安定化装置1によれば、優先電制発電機情報にある発電機21を優先的に選択して制御テーブルを作成することができる。
次に、図8を参照して、電力系統安定化装置1の処理部11における電制効果算出処理(図5のステップS3の処理)について説明する。図8は、第1実施形態における電制効果算出処理の例を示すフローチャートである。
まず、電制効果算出部112は、全ての潮流断面情報を用いて解析が完了したか(つまり、全ての潮流断面情報についてステップS32〜S39の処理が完了したか)否かを判定し、Yesの場合はステップS40に進み、Noの場合はステップS32に進む。
ステップS32において、電制効果算出部112は、まだ解析を行っていない潮流断面情報を設定する。次に、ステップS33において、電制効果算出部112は、潮流計算を実行し、過渡安定度計算に用いる初期値を決定する。潮流計算に用いる代表的な手法としては、ニュートンラフソン法やガウスザイデル法などがある。
次に、ステップS34において、電制効果算出部112は、過渡安定度計算に用いる想定事故条件を設定する。事故条件としては、事故点(事故発生箇所)や事故様相(事故種別(6LG−O等)等)が含まれる。
次に、電制効果算出部112は、ステップS34で設定した想定事故条件で過渡安定度計算を実行し(ステップS35)、安定か否かを判定して(ステップS36)、Yesの場合はステップS38に進み、Noの場合はステップS37に進む。
ステップS37において、電制効果算出部112は、安定化に必要な電制対象の発電機21を選択する。ここでの電制対象の発電機21の選択方法の一例としては脱調順位法が考えらえる。脱調順位法とは発電機21が脱調する順番によって電制対象を選択する方法であり、最も速く脱調する発電機1台を電制対象として選択する。そして、ステップS35、S36を再度実施し、まだ不安定ならば(ステップS36でNo)、次に速く脱調する発電機21を電制対象として1台追加する。この処理を繰り返し行い、過渡安定度が安定となる(ステップS36でYesとなる)まで電制対象の発電機21を追加していく。なお、脱調順位法を用いる場合を例として説明したが、電制対象の発電機21を選択する手法は脱調順位法に限定されず、他の手法を用いてもよい。
ステップS38において、電制効果算出部112は、過渡安定度を安定化するために必要となった電制内容を記録する。
次に、ステップS39において、電制効果算出部112は、全想定事故条件での計算が完了したか否かを判定し、Yesの場合はステップS31に戻り、Noの場合はステップS34に戻る。
ステップS40において、電制効果算出部112は、電制効果を算出する。例えば、電制効果算出部112は、ステップS38で記録された電制内容を参照し、発電機21ごとに、「当該計算での複数の想定事故において電制対象に選ばれた回数」、「当該計算で脱調順位法を用いたときの脱調順位」、「容量」、「出力値」の少なくともいずれかを用いて電制効果を算出する。
例えば、電制対象に選ばれた回数が多ければ、それだけ様々な潮流断面の状態や想定事故ケースにおいて、安定度を改善するために有効な電制対象といえる。また、脱調順位が速いのであれば、対応する想定事故ケースにおいて安定化に寄与する度合いが大きい電制対象と考えられる。また、発電機21の容量や出力値が大きければ、安定化に寄与する度合いがその分大きいと考えられるので、電制効果をその分増加させるのがよい。なお、その他の要素を用いて電制効果を算出してもよい。
このようにして、電力系統安定化装置1によれば、電制効果を高精度で算出するとともに、電制効果の大きい発電機21を電制対象として選択することができる。
次に、図9を参照して、電力系統安定化装置1の処理部11におけるインセンティブ算出処理(図5のステップS4の処理)について説明する。図9は、第1実施形態におけるインセンティブ算出処理の詳細な例を示すフローチャートである。なお、以下では、発電機21のうち電制効果が所定値以上高いものについてインセンティブを算出するものとするが、これに限定されず、全ての発電機21についてインセンティブを算出してもよい。
ステップS41において、インセンティブ算出部113は、電制効果が所定値以上高い全ての発電機21について処理を完了したか(つまり、全ての電制候補の発電機21についてステップS42、S43の処理が完了したか)否かを判定し、Yesの場合は処理を終了し、Noの場合はステップS42に進む。
ステップS42において、インセンティブ算出部113は、インセンティブを算出する前段階として、発電機21を電制する際に生じる電制コストを算出する。電制コストの算出式の一例は、以下の式(1)である。
Ci=ki・Pi・mi ・・・式(1)
Ci=ki・Pi・mi ・・・式(1)
ここで、Ciはi番目の発電機の電制コストである。kiはi番目の発電機の発電種別数(石油、LNG(Liquefied Natural Gas)、石炭、原子力、水力等の形式ごとに設定)である。Piはi番目の発電機の代表出力値である。miはi番目の発電機の取引価格推定係数である。なお、代表出力値Piは任意であり、例えば、発電機21の定格出力値としてもよいし、あるいは、過去実績や潮流断面情報を用いた統計処理によって算出してもよい。
次に、ステップS43において、インセンティブ算出部113は、電制効果と電制コストに基づいて、発電機21ごとに対応したインセンティブを算出し、ステップS41に戻る。インセンティブの算出式の一例は、以下の式(2)である。
Ii=Ei・Ci・Ri・α ・・・式(2)
Ii=Ei・Ci・Ri・α ・・・式(2)
ここで、Iiはi番目の発電機の年間インセンティブである。Eiはi番目の発電機の電制効果である。Riはi番目の発電機が電制される確率(例えば、年間リスクとして、各種系統事故の発生確率や電制が必要な潮流断面となる確率等から計算される電制の確率等)である。αは任意のインセンティブ補正係数である。すなわち、上記の式(2)は、電制効果が高く、電制コストが高く、系統事故発生時に電制が必要となる確率が高い、といった条件を満たす発電機ほど高いインセンティブとなることを意味する。
このようにして、電力系統安定化装置1によれば、電力系統における発電機21の電制に関する指標としてのインセンティブを高精度で算出することができる。
そして、上述したように、送電事業者は、発電事業者との間で、インセンティブを支払う代わりに発電機を自由に電制する旨の電制契約を締結することができる。これにより、系統事故発生時に、円滑に(つまり、送電事業者と発電事業者との間で支障なく)、優先的な電制を許可された発電機21を電制することができる。また、発電事業者にとっては、電制が実施されるリスクは低いにもかかわらず、電制契約を結ぶだけでインセンティブを得られるというメリットもある。
(第2実施形態)
次に、第2実施形態の電力系統安定化装置1について説明する。上述したように、第2実施形態では、発電機の電制に関する指標としてのインセンティブを、系統事故が発生した後に算出する。つまり、前提として、送電事業者と発電事業者の間で事前に電制契約が結ばれているが、インセンティブは安定化制御実施時の潮流状態に応じて算出するものとし、電制を実施した発電機に対して電制後にインセンティブを支払うものとする。以下、第1実施形態と同様の事項については、説明を適宜省略する。
次に、第2実施形態の電力系統安定化装置1について説明する。上述したように、第2実施形態では、発電機の電制に関する指標としてのインセンティブを、系統事故が発生した後に算出する。つまり、前提として、送電事業者と発電事業者の間で事前に電制契約が結ばれているが、インセンティブは安定化制御実施時の潮流状態に応じて算出するものとし、電制を実施した発電機に対して電制後にインセンティブを支払うものとする。以下、第1実施形態と同様の事項については、説明を適宜省略する。
図1の電力系統安定化装置1の処理部11における制御テーブル作成部116は、制御テーブルを作成する際に、優先電制発電機情報にある発電機21を優先的に選択するとともに、インセンティブの総和が最小となるような発電機21の組合せを選択する。
電力系統安定化装置1における処理の例について、図10を参照して説明する。図10は、第2実施形態における制御テーブルの作成、送信の処理の例を示すフローチャートである。系統事故が発生した後に、図10の処理が実行される。
ステップS21〜S23は、図7の場合と同様である。ステップS3、S4は、図5の場合と同様である。ステップS4の後、ステップS51において、制御テーブル作成部116は、安定化に必要な電制効果があり、かつ、インセンティブの総和が最小となるような発電機21の組合せ(電制対象)を選択する。ステップS51の後に実行されるステップS25、S26は、図7の場合と同様である。
このようにして、第2実施形態の電力系統安定化装置1によれば、系統事故の発生後に、インセンティブの総和が最小となるような発電機の組合せを選択することにより、インセンティブの総和を小さく抑えることができる。
(第3実施形態)
次に、第3実施形態の電力系統安定化装置1について説明する。上述したように、第3実施形態では、発電機の電制に関する指標としての電制コストを、系統事故が発生した後に算出する。以下、第1実施形態、第2実施形態の少なくともいずれかと同様の事項については、説明を適宜省略する。
次に、第3実施形態の電力系統安定化装置1について説明する。上述したように、第3実施形態では、発電機の電制に関する指標としての電制コストを、系統事故が発生した後に算出する。以下、第1実施形態、第2実施形態の少なくともいずれかと同様の事項については、説明を適宜省略する。
図1の電力系統安定化装置1の処理部11における制御テーブル作成部116は、制御テーブルを作成する際に、優先電制発電機情報にある発電機21を優先的に選択するとともに、電制した場合の発電事業者間の電制コストの差が最小となるような発電機21の組合せを選択する。
電力系統安定化装置1における処理の例について、図11を参照して説明する。図11は、第3実施形態における制御テーブルの作成、送信の処理の例を示すフローチャートである。系統事故が発生した後に、図11の処理が実行される。
ステップS21〜S23は、図7の場合と同様である。ステップS3、S4は、図5の場合と同様である。ステップS4の後、ステップS61において、制御テーブル作成部116は、安定化に必要な電制効果があり、かつ、電制した場合の発電事業者間の電制コストの差が最小となるような発電機の組合せ(電制対象)を選択する。ステップS61の後に実行されるステップS25、S26は、図7の場合と同様である。
このようにして、第3実施形態の電力系統安定化装置1によれば、系統事故の発生後に、電制した場合の発電事業者間の電制コストの差が最小となるような発電機の組合せを選択することで、発電事業者間の不公平を回避することができる。そして、このような発電機の組合せとすることで、送電事業者は、安定化に必要な電制効果を得つつ、公平性・透明性を確保した電制を実施できる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
なお、本実施形態の電力系統安定化装置1で実行されるプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD−ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD−R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータ装置で読み取り可能な記録媒体に記録して提供することができる。また、当該プログラムを、インターネット等のネットワーク経由で提供または配布するようにしてもよい。
また、上述の実施形態では、電力系統安定化装置1は、事前演算型方式のオンライン型であるものとしたが、事前演算型方式のオフライン型や事後演算型方式であってもよいし、また、それらの3タイプのうちの2つ以上を組合せたものであってもよい。
また、電制効果、電制コスト、インセンティブなどを発電機ごとに独立して算出するのではなく、お互いの相互作用を考慮して算出してもよい。例えば、安定化に必要な電制量等を制約条件とし、インセンティブの最小化等を目的関数として、電制契約計画に関する最適化問題を定式化すれば、その最適化問題を解くことで、電制対象として選択する発電機や各発電機のインセンティブを最適化することができる。
また、電力系統安定化装置1のうち、一部の機能を別のコンピュータ装置によって行うようにしてもよい。例えば、インセンティブの算出は必ずしも常時実行しなければならないわけではなく、例えば数日〜数年単位で実行すればよいので、そのための機能(インセンティブ算出部113など)を別のコンピュータ装置によって実現し、その算出結果を電力系統安定化装置1に送信するようにしてもよい。
S 電力システム
1 電力系統安定化装置
11 処理部
111 潮流断面情報作成部
112 電制効果算出部
113 インセンティブ算出部
114 優先電制発電機情報作成部
115 安定度算出部
116 制御テーブル作成部
117 送受信制御部
12 記憶部
13 入力部
14 表示部
15 通信部
2 電力系統
21 発電機
22 端末装置
23 系統情報収集装置
3 発電事業者端末
31 表示部
1 電力系統安定化装置
11 処理部
111 潮流断面情報作成部
112 電制効果算出部
113 インセンティブ算出部
114 優先電制発電機情報作成部
115 安定度算出部
116 制御テーブル作成部
117 送受信制御部
12 記憶部
13 入力部
14 表示部
15 通信部
2 電力系統
21 発電機
22 端末装置
23 系統情報収集装置
3 発電事業者端末
31 表示部
Claims (8)
- 複数の発電機を有する電力系統を安定化する電力系統安定化装置であって、
前記発電機ごとに、電制を実行した場合に前記電力系統の安定化に寄与する度合いを示す電制効果を算出する電制効果算出部と、
前記算出された電制効果に基づいて、前記発電機ごとに、優先して電制することに対するインセンティブを算出するインセンティブ算出部と、
前記インセンティブに基づいて選択された前記発電機を前記電力系統に事故が発生した場合に優先して前記電力系統から切り離す電制の制御を行う制御部と、を備える電力系統安定化装置。 - 前記電力系統安定化装置は、さらに、
前記インセンティブを算出するための解析用の潮流断面情報を作成する潮流断面情報作成部を備え、
前記電制効果算出部は、前記潮流断面情報に基づいて過渡安定度の計算を行い、前記計算の結果に基づいて前記発電機ごとに前記電制効果を算出する、請求項1に記載の電力系統安定化装置。 - 前記潮流断面情報作成部は、前記電力系統について蓄積された情報である系統情報を用いた統計処理もしくはデータマイニング処理に基づいて、または、ユーザが任意に設定した解析条件情報に基づいて、前記潮流断面情報を作成する、請求項2に記載の電力系統安定化装置。
- 前記電制効果算出部は、前記潮流断面情報に基づいて過渡安定度の計算を行い、前記発電機ごとに、当該計算での複数の想定事故において電制対象に選ばれた回数、当該計算で脱調順位法を用いたときの脱調順位、容量、出力値の少なくともいずれかを用いて前記電制効果を算出する、請求項2に記載の電力系統安定化装置。
- 前記インセンティブ算出部は、前記発電機ごとに、前記電制効果算出部によって算出された電制効果と、前記電制する場合の電制コストと、前記電制が実行される確率と、に基づいて、前記インセンティブを算出する、請求項1に記載の電力系統安定化装置。
- 前記電力系統安定化装置は、さらに、
前記インセンティブの開示を受けた発電事業者から優先電制許可が得られた前記発電機の情報を集約した優先電制発電機情報を作成する優先電制発電機情報作成部と、
想定事故ごとに電制対象となる前記発電機を定めた制御テーブルを作成する際に、前記優先電制発電機情報にある前記発電機を優先的に選択する制御テーブル作成部と、を備える請求項1に記載の電力系統安定化装置。 - 前記制御テーブル作成部は、前記制御テーブルを作成する際に、前記優先電制発電機情報にある前記発電機を優先的に選択するとともに、前記インセンティブの総和が最小となるような前記発電機の組合せを選択する、請求項6に記載の電力系統安定化装置。
- 前記制御テーブル作成部は、前記制御テーブルを作成する際に、前記優先電制発電機情報にある前記発電機を優先的に選択するとともに、電制した場合の発電事業者間の電制コストの差が最小となるような前記発電機の組合せを選択する、請求項6に記載の電力系統安定化装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2016214287A JP2018074828A (ja) | 2016-11-01 | 2016-11-01 | 電力系統安定化装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2016214287A JP2018074828A (ja) | 2016-11-01 | 2016-11-01 | 電力系統安定化装置 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2018074828A true JP2018074828A (ja) | 2018-05-10 |
Family
ID=62116001
Family Applications (1)
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JP2016214287A Pending JP2018074828A (ja) | 2016-11-01 | 2016-11-01 | 電力系統安定化装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2018074828A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2020096415A (ja) * | 2018-12-10 | 2020-06-18 | 株式会社東芝 | 電力系統安定化システム |
-
2016
- 2016-11-01 JP JP2016214287A patent/JP2018074828A/ja active Pending
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2020096415A (ja) * | 2018-12-10 | 2020-06-18 | 株式会社東芝 | 電力系統安定化システム |
JP7163163B2 (ja) | 2018-12-10 | 2022-10-31 | 株式会社東芝 | 電力系統安定化システム |
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