JP2020096415A - 電力系統安定化システム - Google Patents

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Abstract

【課題】電力系統の系統事故に対する好適な安定化制御を行うこと。【解決手段】実施形態の電力系統安定化システムは、事故検出装置と、中央演算装置と、演算装置とを持つ。事故検出装置は、電力系統における事故状態および潮流状態を収集し、前記電力系統における事故の発生を検出する。中央演算装置は、前記電力系統の系統情報を解析して前記電力系統の安定度判定を行い、安定度判定結果に基づいて前記電力系統の制御対象機器を設定した第1の制御テーブルを生成する。演算装置は、前記第1の制御テーブルとは制御度合が異なる第2の制御テーブルを生成し、前記事故検出装置により前記事故の発生が検出された場合、前記事故の種別に基づいて、前記第1の制御テーブルまたは前記第2の制御テーブルのいずれかを選択して、選択したテーブルに基づいて前記制御対象機器を決定する。【選択図】図1

Description

本発明の実施形態は、電力系統安定化システムに関する。
従来、電力系統に落雷などの事故が発生した場合、電力系統への影響を最小限に抑えるため、高速かつ最小範囲での事故除去を行う事故除去リレーシステムの技術が開示されている。しかし、事故除去リレーシステムが正常に動作しても、遮断器不動作などによる事故除去時間の遅延、広範囲な事故遮断、ルート断事故などの重大事故の発生することがある。その際、重大事故に起因して事故除去後の系統構成が大幅に変化する可能性があり、潮流急変、大幅な需給アンバランスなどを引き起こし、系統の異常現象(例えば、脱調現象、周波数異常、電圧異常、過負荷など)が発生する場合がある。これを放置すると、発生した異常現象が電力系統全体へ波及して大停電に拡大する恐れがあるため、このような異常現象の発生を未然に防止したり、系統全体への波及拡大を防止したりする、電力系統安定化システム(事故波及防止リレーシステム)が開示されている。
電力系統安定化システムは、制御内容の演算方式に基づいて事前演算型と事後演算型の2つに分類することができる。事後演算型は、事故中および事故後の系統情報からオンラインで将来の現象について予測計算を行い、その結果に基づき制御対象発電機などの制御量を演算し、即座に制御を実施する。一方、事前演算型は、事故および系統現象を想定して、事故前の系統情報から制御量を予め演算して、設定しておき、実際に事故が発生した場合、予め演算した設定を参照し、即座に制御を実施する方式である。
しかしながら、従来の事前演算型の電力系統安定化システムでは、系統情報を取得してから制御量の演算を終えるまでに一定時間を要するため、系統情報取得直後に再生可能エネルギー等に起因する系統状態急変(一定時間内での潮流増加)が発生した場合などに、系統事故に対する好適な安定化制御が行われない可能性があった。
電気学会技術報告 第801号「系統脱調・事故波及防止リレー技術」、一般社団法人電気学会、2000年10月、p5〜6、p52、p54〜55、p57、p74、p84〜85、p87
本発明が解決しようとする課題は、電力系統の系統事故に対する好適な安定化制御を行うことができる電力系統安定化システムを提供することである。
実施形態の電力系統安定化システムは、事故検出装置と、中央演算装置と、演算装置とを持つ。事故検出装置は、電力系統における事故状態および潮流状態を収集し、前記電力系統における事故の発生を検出する。中央演算装置は、前記電力系統の系統情報を解析して前記電力系統の安定度判定を行い、安定度判定結果に基づいて前記電力系統の制御対象機器を設定した第1の制御テーブルを生成する。演算装置は、前記第1の制御テーブルとは制御度合が異なる第2の制御テーブルを生成し、前記事故検出装置により前記事故の発生が検出された場合、前記事故の種別に基づいて、前記第1の制御テーブルまたは前記第2の制御テーブルのいずれかを選択して、選択したテーブルに基づいて前記制御対象機器を決定する。
第1の実施形態の電力系統安定化システム1の構成図。 電力系統安定化システム1の構成要素の配置例を示す図。 暫定制御テーブル342に格納される情報の一例を示す図。 バックアップ用制御テーブル344に格納される情報の一例を示す図。 バックアップ用制御テーブル344を生成する際に参照する潮流量と電制量との関係を説明するための図。 制御テーブル切替部350により参照される閾値について説明するための図。 制御テーブル切替部350を模式的に示す図。 制御テーブル切替部350により出力される確定制御テーブルに格納される情報の一例を示す図。 電力系統安定化システム1の暫定制御テーブル生成処理の流れの一例を示すフローチャート。 電力系統安定化システム1のバックアップ用制御テーブル生成処理の流れの一例を示すフローチャート。 電力系統安定化システム1の潮流急変時の処理の流れの一例を示すフローチャート。 電力系統安定化システム1の事故検出時の処理の流れの一例を示すフローチャート。 比較例の電力系統安定化システム1Zの構成図。 比較例の制御テーブル切替部350Zを模式的に示す図。 第2の実施形態の電力系統安定化システム1Aの構成図。 確定制御テーブル更新部370を模式的に示す図。 確定制御テーブル346に格納される情報の一例を示す図。 電力系統安定化システム1Aの潮流急変時の処理の流れの一例を示すフローチャート。
以下、実施形態の電力系統安定化システムを、図面を参照して説明する。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態の電力系統安定化システム1の構成図である。電力系統安定化システム1は、オンライン事前演算型の系統安定化システムである。電力系統安定化システム1は、例えば、中央演算装置100と、事故検出装置200と、演算装置300と、制御端末400とを備える。
中央演算装置100は、例えば、系統情報収集部110と、系統モデル生成部120と、解析条件設定部130と、安定度判定部140とを備える。これらの構成要素は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。また、これらの構成要素のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)等のハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。プログラムは、予めHDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリ等の記憶装置(非一過性の記憶媒体を備える記憶装置)に格納されていてもよいし、DVDやCD−ROM等の着脱可能な記憶媒体(非一過性の記憶媒体)に格納されており、記憶媒体がドライブ装置に装着されることで記憶装置にインストールされてもよい。
系統情報収集部110は、給電情報網Nを介して電力系統Eから入力された系統情報(給電用オンラインデータ)を収集する。系統情報とは、例えば、電力系統Eの制御対象機器の接続状態や、電力の需給状態、潮流状態に関する情報である。電力系統Eは、一定の周期または系統情報の更新周期で、系統情報を出力する。系統情報収集部110は、収集した系統情報を系統モデル生成部120に出力する。
系統モデル生成部120は、例えば、系統情報収集部110から入力された系統情報と、予め記録されている制御対象機器の情報とに基づいて、現在の系統情報を表す解析用系統モデルを作成する。制御対象機器の情報とは、例えば、電力系統安定化システム1によって制御対象機器(例えば、後述する遮断器G)の情報と、制御対象機器のそれぞれの電力系統Eに対する状態(例えば、接続状態であるか、遮断状態であるか)の情報である。以下の説明において、制御対象機器を指して「遮断対象機」と称する場合がある。系統情報とは、例えば、送電線のインピーダンスなどである。系統モデル生成部120は、作成した解析用系統モデルを、解析条件設定部130に出力する。
解析条件設定部130は、系統モデル生成部120から入力された解析用系統モデルと、想定される事故種別のデータとに基づいて、解析条件を設定する。解析条件には、例えば、想定事故種別に対しての発生時に制御を行う制御対象機器の組合せが含まれる。以下、想定される事故種別のデータのそれぞれを「想定事故種別」と称する。想定事故種別には、例えば、送電線等の事故監視点と、その事故様相とを示す情報が含まれる。解析条件設定部130は、設定した解析条件を、安定度判定部140に出力する。
安定度判定部140は、解析条件設定部130から入力された解析条件に基づいて、過渡安定度演算を行う。過渡安定度演算とは、例えば、想定される系統事故について安定度計算を繰り返して実施することで、電力系統Eの安定度の向上を図るシミュレーション演算である。安定度判定部140は、解析条件ごとの電力系統Eの安定度を判定して、想定事故種別ごとに、その想定事故種別に係る事故が発生した際に電力系統Eの安定度維持に必要な制御対象機器情報を選択する。以下、想定事故種別ごとに選択された制御対象機器情報の一覧を、「暫定制御テーブル」と称する。暫定制御テーブルは、「第1の制御テーブル」の一例である。
なお、上述した中央演算装置100の一連の処理は、所定の周期で行われる。所定の周期とは、例えば、系統情報の更新周期(例えば、15〜45秒程度)である。また、所定の周期は、電力系統安定化システム1が扱う系統の規模や想定事故の種別の数、中央演算装置100の処理能力に基づいて設定されてもよい。
安定度判定部140は、例えば、解析条件取得部142と、過渡安定度導出部144と、制御対象決定部146と、暫定制御テーブル生成部148とを備える。
解析条件取得部142は、解析条件設定部130により設定された各解析条件を取得する。過渡安定度導出部144は、解析条件取得部142により取得された解析条件に対して、系統事故等のような急激な擾乱に際しても同期を保って送電できる度合を示す過渡安定度を導出する。制御対象決定部146は、過渡安定度導出部144により導出された各解析条件に対する過渡安定度に基づいて、各想定事故種別が発生した際に電力系統Eの安定度維持に必要な制御対象機器(例えば、電制発電機など)を決定する。暫定制御テーブル生成部148は、制御対象決定部146の決定結果を集約して、暫定制御テーブルを生成して、演算装置300に出力して暫定制御テーブル342として記憶させる。
事故検出装置200は、例えば、事故種別検出部210と、潮流検出部220とを備える。これらの構成要素は、例えば、CPU等のハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。また、これらの構成要素のうち一部または全部は、LSIやASIC、FPGA、GPU等のハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。プログラムは、予めHDDやフラッシュメモリ等の記憶装置(非一過性の記憶媒体を備える記憶装置)に格納されていてもよいし、DVDやCD−ROM等の着脱可能な記憶媒体(非一過性の記憶媒体)に格納されており、記憶媒体がドライブ装置に装着されることで記憶装置にインストールされてもよい。
事故種別検出部210は、電力系統Eで事故が発生したことを検出し、演算装置300にその事故種別を通知する。事故種別検出部210により通知される事故種別には、最新の電力系統Eの制御対象機器情報および系統要素の構成の情報が含まれてもよい。潮流検出部220は、例えば、所定の周期で事故種別検出対象の幹線潮流を検出して、演算装置300に通知する。また、潮流検出部220は、電力系統Eの潮流急変が発生したことを検出して演算装置300に通知する。
演算装置300は、例えば、潮流量記憶部310と、バックアップ用制御テーブル生成部320と、潮流急変判定部330と、テーブル記憶部340と、制御テーブル切替部350と、制御対象機器決定部360とを備える。潮流量記憶部310およびテーブル記憶部340を除くこれらの構成要素は、例えば、CPU等のハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。また、これらの構成要素のうち一部または全部は、LSIやASIC、FPGA、GPU等のハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。プログラムは、予めHDDやフラッシュメモリ等の記憶装置(非一過性の記憶媒体を備える記憶装置)に格納されていてもよいし、DVDやCD−ROM等の着脱可能な記憶媒体(非一過性の記憶媒体)に格納されており、記憶媒体がドライブ装置に装着されることで記憶装置にインストールされてもよい。
潮流量記憶部310およびテーブル記憶部340は、例えば、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)、SDカード、MRAM(Magnetoresistive Random Access Memory)等の不揮発性の記憶媒体と、RAM(Random Access Memory)、レジスタ等の揮発性の記憶媒体とのうち一部または全部によって実現されてよい。
潮流量記憶部310は、潮流検出部220により検出された電力系統Eの潮流を記憶する。バックアップ用制御テーブル生成部320は、例えば、所定間隔毎(例えば100[ミリ秒])に、潮流量記憶部310に記憶された所定期間の潮流の変化量を参照して、想定事故種別が発生した際に電力系統Eの安定度維持に必要な制御対象機器を決定し、その決定結果を集約したバックアップ用制御テーブルを生成する。バックアップ用制御テーブル生成部320は、生成したバックアップ用制御テーブルをテーブル記憶部340に出力し、バックアップ用制御テーブル344として記憶させる。バックアップ用制御テーブルは344、「第2の制御テーブル」の一例である。
潮流急変判定部330は、潮流検出部220により検出された電力系統Eの潮流状態の急変が発生したか否かを判定し、潮流状態の急変が発生したと判定した場合に潮流急変信号を制御テーブル切替部350に送信する。潮流急変判定部330は、中央演算装置100の演算周期に応じた一定時間(例えば、30秒程度)、潮流検出部220により検出された潮流量を保持し、予め設定した閾値に基づいて、潮流状態が急変したかを判定する。潮流急変判定部330により参照される閾値については後述する。
テーブル記憶部340には、例えば、前述した暫定制御テーブル生成部148により生成された暫定制御テーブル342と、バックアップ用制御テーブル生成部320により生成されたバックアップ用制御テーブル344とが記憶される。テーブル記憶部340には、上述のテーブル以外の情報が記憶されてもよい。
制御テーブル切替部350は、潮流急変判定部330による判定結果に応じて、後述する制御対象機器決定部360が参照する制御テーブルを、テーブル記憶部340に記憶された暫定制御テーブル342またはバックアップ用制御テーブル344のうち、好適なテーブルを選択して切り替える。以下、制御テーブル切替部350が制御対象機器決定部360に参照させる制御テーブルを、「確定制御テーブル」と称する。
制御テーブル切替部350は、例えば、暫定制御テーブル生成部148より暫定制御テーブルが出力され暫定制御テーブル342が更新されたタイミングで、確定制御テーブルとして暫定制御テーブル342を選択する。制御テーブル切替部350は、例えば、潮流急変判定部330により潮流急変信号を受信した場合、中央演算装置100での安定度計算等が所定の時間内に終了しない演算不良を検出した場合、または中央演算装置100から演算装置300に対する暫定制御テーブルの送信が正常に終了しない伝送不良を検出した場合に、バックアップ用制御テーブル344を確定制御テーブルに切り替える。なお、制御テーブル切替部350は、潮流急変判定部330により潮流急変信号を受信した後、所定サイクルの間は確定制御テーブルをバックアップ用制御テーブル344に固定的に選択するようにしてもよい。
制御対象機器決定部360は、確定制御テーブルを参照して、事故種別検出部210により検出された電力系統Eの事故種別における制御対象機器を決定し、制御端末400に決定結果である制御対象機器の情報を出力する。
制御端末400は、例えば、制御部410を備える。制御部410は、例えば、CPU等のハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。また、これらの構成要素のうち一部または全部は、LSIやASIC、FPGA、GPU等のハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。プログラムは、予めHDDやフラッシュメモリ等の記憶装置(非一過性の記憶媒体を備える記憶装置)に格納されていてもよいし、DVDやCD−ROM等の着脱可能な記憶媒体(非一過性の記憶媒体)に格納されており、記憶媒体がドライブ装置に装着されることで記憶装置にインストールされてもよい。
制御部410は、制御対象機器決定部360により決定された制御対象機器の情報に応じて、制御対象機器に遮断指令を送信する。
図2は、電力系統安定化システム1の構成要素の配置例を示す図である。
電力系統安定化システム1の構成要素は、例えば、変電所Aと、発電所Bと、給電指令所Cとにそれぞれ設置される。
変電所Aは、発電所Bから電力系統Eへの送電線3(変圧器を含んでもよい)の間に設置され、例えば、母線2Aと、遮断器(CB)4Aと、電流計測器(CT)5Aと、電圧計測器(VT)6Aと、事故除去リレーシステム7Aとを備える。
発電所Bは、複数の発電機G1〜Gnと、母線2Bと、母線2Bおよび各発電機G1〜Gnを接続する送電線3(G1)〜3(Gn)と、遮断器4(G1)〜4(Gn)と、電流計測器(CT)5(G1)〜5(Gn)と、電圧計測器(VT)6Bとを備える。
事故検出装置200は、例えば、変電所Aに設置され、中央演算装置100および演算装置300とは専用線8などのネットワークを介して通信が可能である。また、制御端末400は、例えば、発電所Bに設置され、中央演算装置100および演算装置300とは専用線8などのネットワークを介して通信が可能である。中央演算装置100は、例えば、給電指令所Cなど給電情報網Eと接続可能な個所に設置される。なお、中央演算装置100、事故検出装置200、演算装置300および制御端末400は一体型の装置として構成されてもよい。
以下、図3〜図5を用いて、制御テーブル切替部350による一連の処理について、より詳細に説明する。
図3は、暫定制御テーブル342の内容の一例を示す図である。暫定制御テーブル342には、例えば、想定事故種別に、制御対象となる遮断対象機の情報が対応付けられている。図3の例において、「電制」とは、例えば、電源制限(遮断)の制御対象であることを示す。例えば、制御テーブル切替部350が確定制御テーブルとして暫定制御テーブル342を設定しており、且つ事故種別検出部210により事故種別1の事故が検出された場合、遮断対象機G2が制御対象として制御対象機器決定部360により決定される。
図4は、バックアップ用制御テーブル344の内容の一例を示す図である。バックアップ用制御テーブル344に格納される情報には、想定事故種別ごとに最過酷断面を想定したうえで遮断対象機が設定されるため、暫定制御テーブル342と比較して、より多くの制御対象機器を制御することを規定したものであったり、より制御度合が高いものであったりする。制御度合とは、例えば、遮断対象機の種類の多さや制御対象となり機器の数の多さ、遮断されることにより実現される電制量の高さなどにより定義されるものである。
例えば、制御テーブル切替部350が確定制御テーブルを暫定制御テーブル342としており、且つ事故種別検出部210により事故種別1の事故が検出された場合、遮断対象機G2が制御対象となる。また、例えば、制御テーブル切替部350が確定制御テーブルをバックアップ用制御テーブル344に切り替えており、且つ事故種別検出部210により事故種別1の事故が検出された場合、遮断対象機G1、G2、G4およびG5が制御対象となる。
図5は、バックアップ用制御テーブル344を生成する際に参照する潮流量と電制量との関係を説明するための図である。図5の例では、潮流量の増加に伴い、一定間隔で段階的に電制量が増加している。バックアップ用制御テーブル生成部320は、中央演算装置100での演算不良や伝送不良等により、暫定制御テーブル生成部148により正常な暫定制御テーブル342が生成されず、且つ系統事故が発生した場合であっても、遮断対象機を決定できるようバックアップ用制御テーブル344を生成する。したがって、バックアップ用制御テーブル生成部320は、想定される最過酷断面に対応できるよう、想定事故種別毎に予め定められた潮流量に対する必要制御量を図5に示すグラフを参照して制御量を決定し、さらにその制御量を実現するために制御する遮断対象機を決定する。
図6は、制御テーブル切替部350により参照される閾値について説明するための図である。制御テーブル切替部350により参照される閾値は、想定される事故種別毎に電制量の閾値が設定される。例えば、事故種別1の事故に対しては、電制量の閾値としてX1[MW]が格納される。
図7は、制御テーブル切替部350における切り替えロジックを模式的に表した図である。制御テーブル切替部350は、少なくとも「中央演算装置100での演算不良が発生したことを検知した場合」、「伝送不良が発生したと検知した場合」、または「潮流急変信号を受信した場合」のうちいずれか1つに該当する場合に、切替条件が成立したものと判定してテーブル記憶部340の記憶する切替条件フラグ(不図示)を1に更新する等の処理を行うことにより、制御テーブルを切り替える。
図8は、制御テーブル切替部350により出力される確定制御テーブルに格納される情報の一例を示す図である。制御対象機器決定部360は、制御テーブル切替部350によりバックアップ用制御テーブル344に切り替えがされなかった場合、図8(1)に示す確定制御テーブルを参照する。この確定制御テーブルは、図3に示した暫定制御テーブル342と同一のものである。
制御対象機器決定部360は、制御テーブル切替部350によりバックアップ用制御テーブル344に切り替えられた場合、図8(2)に示す確定制御テーブルを参照する。この確定制御テーブルは、図4に示したバックアップ用制御テーブル344と同一のものである。
図9は、実施形態に係る電力系統安定化システム1の暫定制御テーブル生成処理の流れの一例を示すフローチャートである。本フローチャートの処理は、例えば、所定の周期(系統情報の更新周期等)で行われる。
まず、系統情報収集部110は、電力系統Eの系統情報を収集する(ステップS100)。次に、系統モデル生成部120は、電力系統Eの系統情報に基づいて解析用系統モデルを生成する(ステップS102)。次に、解析条件設定部130は、解析条件を設定する(ステップS104)。
次に、安定度判定部140は、安定度判定を行う(ステップS106)。次に、安定度判定部140は、安定度判定結果を反映した暫定制御テーブルを生成し(ステップS108)、テーブル記憶部340に出力する(ステップS110)。なお、ステップS110の処理が実行されるタイミングで確定制御テーブルがバックアップ用制御テーブル344であり、且つ潮流急変判定部330により潮流急変の発生が所定時間以上検出されていない場合、確定制御テーブルを暫定制御テーブルとする処理が行われてもよい。以上、本フローチャートの処理の説明を終了する。
図10は、実施形態に係る電力系統安定化システム1のバックアップ用制御テーブル生成処理の流れの一例を示すフローチャートである。本フローチャートの処理は、例えば、所定間隔(例えば100[ミリ秒])で行われる。
まず、潮流検出部220は、電力系統Eの潮流検出処理を実行する(ステップS200)。次に、バックアップ用制御テーブル生成部320は、潮流量記憶部310を参照してバックアップ用制御テーブルを生成し(ステップS202)、テーブル記憶部340に出力する(ステップS204)。以上、本フローチャートの処理の説明を終了する。
図11は、実施形態に係る電力系統安定化システム1の潮流急変時の処理の流れの一例を示すフローチャートである。なお、図11のステップS300の処理は、図10に示すフローチャートのステップS200に対応する処理である。
まず、潮流検出部220は、電力系統Eの潮流量を検出し、潮流量記憶部310に出力する(ステップS300)。次に、潮流急変判定部330は、潮流急変が発生したか否かを判定する(ステップS302)。潮流急変が発生したと判定した場合、潮流急変判定部330は、制御テーブル切替部350に潮流急変信号を送信し、バックアップ用制御テーブル344が確定制御テーブルとなるよう切り替えさせる(ステップS304)。なお、制御テーブル切替部350は、ステップS304によりバックアップ用制御テーブル344が確定制御テーブルとなるように切り替えた場合、少なくとも所定時間(例えば、暫定制御テーブル342の更新周期の1サイクル程度)はバックアップ用制御テーブル344が確定制御テーブルとなるようにしてもよい。ステップS302において潮流急変が発生したと判定されなかった場合、本フローチャートの処理を終了する。
図12は、実施形態に係る電力系統安定化システム1の事故検出時の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
まず、事故種別検出部210は、電力系統Eの系統情報を収集する(ステップS400)。次に、事故種別検出部210は、電力系統Eにおける事故の発生が検出されたか否かを判定する(ステップS402)。事故の発生が検出されなかったと判定した場合、事故種別検出部210は、ステップS400に処理を戻す。事故の発生が検出されたと判定した場合、事故種別検出部210は、その事故種別を示す信号を制御対象機器決定部360に送信する(ステップS404)。次に、制御対象機器決定部360は、事故種別検出部210より受信した事故種別信号と確定制御テーブルとに基づいて制御対象機器を決定する(ステップS406)。次に、制御部410は、制御対象機器決定部360により決定された制御対象機器に遮断指令を送信する(ステップS408)。以上、本フローチャートの処理の説明を終了する。
図13は、比較例の電力系統安定化システム1Zの構成図である。電力系統安定化システム1Zは、図1に示した電力系統安定化システム1と比較して、潮流急変判定部330を備えていない点と、制御テーブル切替部350が制御テーブル切替部350Zに置き換わっている点で相違する。以下では、主に上述した相違点を中心として説明する。
電力系統安定化システム1Zは、潮流急変判定部330を備えていないため、解析条件設定部130で設定した解析条件に基づいて、安定度判定部140が各想定事故種別の制御対象機器を決定し、その結果を暫定制御テーブル342として設定する。そのため、テーブル設定までに一定時間(例えば30秒)を要するとともに、暫定制御テーブル342の更新にも同程度の時間を要するため、潮流の急変直後に系統事故が発生した場合に、十分に対応できない可能性がある。
図14は、比較例の制御テーブル切替部350Zを模式的に示す図である。制御テーブル切替部350Zは、中央演算装置100での演算不良が発生したことを検知した場合、または伝送不良が発生した場合に、切替条件が成立したものと判定して、確定制御テーブルをバックアップ用制御テーブル344に切り替えるものである。
これに比べて、電力系統安定化システム1は、潮流急変判定部330の判定結果に応じて制御テーブル切替部350が確定制御テーブルを切り替えるため、暫定制御テーブル342が潮流急変を考慮していないものである段階で系統事故を検出した場合であっても、制御テーブル切替部350によりバックアップ用制御テーブル344が確定制御テーブルとして制御対象機器決定部360に出力され、最過酷断面が想定された好適な制御が行われる。
以上説明した第1の実施形態の電力系統安定化システム1によれば、潮流急変判定部330により電力系統Eの潮流急変が検出された場合、制御テーブル切替部350により最過酷断面が考慮されたバックアップ用制御テーブル344を確定制御テーブルに切り替えられることで、潮流急変時に制御対象機器決定部360が確定制御テーブルを参照して制御対象機器を決定する場合であっても、電力系統の系統事故に対する好適な安定化制御を行うことができる。
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態の電力系統安定化システム1Aについて説明する。以下の説明において、第1の実施形態で説明した内容と同様の機能を有する部分については、同様の名称および符号を付するものとし、その機能に関する具体的な説明は省略する。また、第1の実施形態と同じ名称であるが構成または機能が異なるものについては、符号の末尾に「A」を付すものとする。
図15は、第2の実施形態の電力系統安定化システム1Aの構成図である。電力系統安定化システム1Aは、第1の実施形態の電力系統安定化システム1と比較して、制御テーブル切替部350が、確定制御テーブル更新部370となっている点が異なる。
潮流急変判定部330Aは、事故種別検出部210より受信した事故種別信号と、潮流検出部220より受信した潮流の急変が発生したことの検出結果とに基づいて、想定される事故種別の情報を含む潮流急変信号を確定制御テーブル更新部370に送信する。
テーブル記憶部340Aは、確定制御テーブル346を更に記憶する。確定制御テーブル346は、「第3の制御テーブル」の一例である。確定制御テーブル346は、例えば、暫定制御テーブル342とバックアップ用制御テーブル344のうち一方または双方の一部または全部を取得することにより実現される。
確定制御テーブル更新部370は、潮流急変判定部330Aより潮流急変信号を受信していない場合、確定制御テーブル346に暫定制御テーブル342の内容をそのままコピーさせる。確定制御テーブル更新部370は、潮流急変判定部330Aより潮流急変信号を受信した場合、その潮流急変信号に含まれる事故種別の情報を識別し、バックアップ用制御テーブル344のうち潮流急変に応じて発生する可能性のある事故種別に対応付けられた制御対象機器の情報を確定制御テーブル346に反映する。確定制御テーブル更新部370は、演算不良または伝送不良の場合には、確定制御テーブル346にバックアップ用制御テーブル344の内容をそのままコピーさせる。
図16は、確定制御テーブル更新部370における切り替えロジックを模式的に示す図である。確定制御テーブル更新部370は、図7に示す第1の実施形態の制御テーブル切替部350と比較して、想定事故種別毎に切替条件の成立を判定して、確定制御テーブル346に反映する点が異なる。
確定制御テーブル更新部370は、例えば、潮流急変判定部330Aにより想定される事故種別が事故種別1である潮流急変信号を受信した場合、確定制御テーブル346に、暫定制御テーブル342の事故種別1に対応付いた遮断対象機の情報を上書きする処理を行う。また、確定制御テーブル更新部370は、例えば、潮流急変判定部330Aにより想定される事故種別が事故種別1および2である潮流急変信号を受信した場合、確定制御テーブル346の暫定制御テーブル342の事故種別1および2に対応付けられた遮断対象機の情報を上書きする処理を行う。
また、確定制御テーブル更新部370は、例えば、演算不良または伝送不良を検出した場合には、全ての事故種別の切替条件が成立したものとして、バックアップ用制御テーブル344の全てを確定制御テーブル346にコピーする処理を行う。
図17は、確定制御テーブル346に格納される情報の一例を示す図である。
確定制御テーブル更新部370は、平常時(潮流急変、伝送不良、演算不良のいずれも検出されていないタイミング)には、確定制御テーブル346に暫定制御テーブル342の情報を反映させる。以下の説明では、確定制御テーブル更新部370が、潮流急変判定部330Aにより想定される事故種別が事故種別3および4である潮流急変信号を受信したとする。
確定制御テーブル更新部370は、図17の左下図に示すように、確定制御テーブル346の事故種別3および4に対応付いた遮断対象機の情報を抽出する。さらに確定制御テーブル更新部370は、図17の右図に示すように、確定制御テーブル346に抽出した
確定制御テーブル346の事故種別3および4に対応付いた遮断対象機の情報を反映する。なお、確定制御テーブル346の事故種別1、2、および5に対応付いた遮断対象機の情報は、図17の左上図に示すように、暫定制御テーブル342の情報が反映されるものである。
確定制御テーブル更新部370は、図17に示すように確定制御テーブル346を更新することで、潮流急変に関連する想定事故種別の制御対象機器の情報は、最過酷断面を想定したものとなり、且つ潮流急変に関連しない想定事故種別の制御対象機器の情報は、暫定制御テーブル342に応じたものとなることから、潮流急変に関連しない事故種別の系統事故が発生した場合に、過度な遮断が発生しないようにすることができる。
図18は、電力系統安定化システム1Aの潮流急変時の処理の流れの一例を示すフローチャートである。図18のフローチャートのステップS500およびS502は、図11のフローチャートのステップS300と302に対応するものである。
まず、潮流検出部220は、電力系統Eの潮流量を検出し、潮流量記憶部310に出力する(ステップS500)。次に、潮流急変判定部330は、潮流急変が発生したか否かを判定する(ステップS502)。潮流急変が発生したと判定した場合、潮流急変判定部330は、確定制御テーブル更新部370に想定事故種別の情報を含む潮流急変信号を送信する(ステップS504)。次に、確定制御テーブル更新部370は、受信した潮流急変信号に含まれる想定事故種別に係る遮断対象機の情報を、バックアップ用制御テーブル344から抽出して、確定制御テーブル346に反映する(ステップS506)。以上、本フローチャートの処理の説明を終了する。
以上説明した第2の実施形態の電力系統安定化システム1Aによれば、潮流急変判定部330Aにより電力系統Eの潮流急変が検出された場合、確定制御テーブル更新部370が潮流急変信号に含まれる想定事故種別に係るバックアップ用制御テーブル344の情報を抽出して確定制御テーブル346に反映することで、潮流急変に関連する事故種別の系統事故が発生した場合には最過酷断面を想定した遮断を行い、潮流急変に関連しない事故種別の系統事故が発生した場合に、安定度判定部140による演算結果に応じて制御対象機器が決定されるため過度な遮断が行われることを抑制でき、さらに好適な安定化制御を行うことができる。
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、電力系統Eにおける事故状態および潮流状態を収集し、電力系統Eにおける系統事故の発生を検出する事故検出装置200と、電力系統Eの系統情報を解析して電力系統Eの安定度判定を行い、過渡安定度導出部144による安定度導出結果に基づいて制御対象決定部146に制御対象機器を決定させ、暫定制御テーブル生成部148に電力系統Eの制御対象機器を設定した暫定制御テーブル342を生成させる中央演算装置100と、バックアップ用制御テーブル生成部320が電力系統Eの潮流量に基づいてバックアップ用制御テーブル344を生成し、事故検出装置200により系統事故の発生が検出された場合、検出された系統事故の種別に基づいて、制御対象機器決定部360が、制御テーブル切替部350により設定された確定制御テーブルを参照して制御対象機器を決定する、演算装置300とを持つことにより、電力系統の系統事故に対する好適な安定化制御を行うことができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
1、1A…電力系統安定化システム、100…中央演算装置、110…系統情報収集部、120…系統モデル生成部、130…解析条件設定部、140…安定度判定部、142…解析条件取得部、144…過渡安定度導出部、146…制御対象決定部、148…暫定制御テーブル生成部、200…事故検出装置、210…事故種別検出部、220…潮流検出部、300…演算装置、310…潮流量記憶部、320…バックアップ用制御テーブル生成部、330、330A…潮流急変判定部、350…制御テーブル切替部、360…制御対象機器決定部、370…確定制御テーブル更新部、400…制御端末、410…制御部、E…電力系統、N…給電情報網

Claims (6)

  1. 電力系統における事故状態および潮流状態を収集し、前記電力系統における事故の発生を検出する事故検出装置と、
    前記電力系統の系統情報を解析して前記電力系統の安定度判定を行い、安定度判定結果に基づいて前記電力系統の制御対象機器を設定した第1の制御テーブルを生成する中央演算装置と、
    前記第1の制御テーブルとは制御度合が異なる第2の制御テーブルを生成し、前記事故検出装置により前記事故の発生が検出された場合、前記事故の種別に基づいて、前記第1の制御テーブルまたは前記第2の制御テーブルのいずれかを選択して、選択したテーブルに基づいて前記制御対象機器を決定する、演算装置と、
    を備える電力系統安定化システム。
  2. 前記第2の制御テーブルは、前記第1の制御テーブルと比較して、より多くの前記制御対象機器を制御することを規定したものである、
    請求項1に記載の電力系統安定化システム。
  3. 前記第2の制御テーブルは、前記電力系統における最過酷断面を想定したテーブルである、
    請求項1または2に記載の電力系統安定化システム。
  4. 前記事故検出装置は、
    前記電力系統における前記事故の発生を検出した場合、前記演算装置に前記事故の種別を出力し、
    前記電力系統における前記潮流状態の急変を検出した場合、前記演算装置に想定される前記事故の種別と、前記潮流状態の急変を通知する情報とを出力する、
    請求項1から3のうちいずれか1項に記載の電力系統安定化システム。
  5. 前記演算装置は、前記事故検出装置により前記潮流状態の急変が検出された場合、前記第2の制御テーブルを選択して、前記事故検出装置により通知された前記事故の種別と前記第2の制御テーブルとに基づいて前記制御対象機器を決定する、
    請求項4に記載の電力系統安定化システム。
  6. 電力系統における事故状態および潮流状態を収集し、前記電力系統における事故の発生を検出する事故検出装置と、
    前記電力系統の系統情報を解析して前記電力系統の安定度判定を行い、安定度判定結果に基づいて前記電力系統の制御対象機器を設定した第1の制御テーブルを生成する中央演算装置と、
    前記第1の制御テーブルとは制御度合が異なる第2の制御テーブルを生成し、前記事故検出装置により前記潮流状態の急変が検出された場合に、検出された前記潮流状態の急変に関連する事故種別の情報のみを前記第2の制御テーブルより抽出して前記第1の制御テーブルに反映させた第3の制御テーブルを生成し、前記第3の制御テーブルに基づいて前記制御対象機器を決定する、演算装置と、
    を備える、電力系統安定化システム。
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