JP2018073273A - 加齢分析方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】被験者の個々人の加齢状況をより客観的に分析する技術を提供する。【解決手段】年齢と相関のある複数の形状的特徴種に関する特徴量を被験者の顔から取得し(S10)、被験者の顔の加齢変化の傾向を示す加齢変化ルートを上記の特徴量に基づいて複数通りから選択して決定する。加齢変化ルートには、頬・下顎因子群に含まれる加齢共通因子のみが発現してから、目元因子群に含まれる加齢共通因子および頬・下顎因子群に含まれる加齢共通因子の両方が発現するルートと、目元因子群に含まれる加齢共通因子のみが発現してから、目元因子群に含まれる加齢共通因子および頬・下顎因子群に含まれる加齢共通因子の両方が発現するルートとが含まれる。【選択図】図2

Description

本発明は、加齢分析方法および加齢分析装置に関する。
美容カウンセリングの一手法として、年代別の平均的な顔と被験者の顔との比較検討結果を指標として、エイジング(加齢)に伴う被験者の顔立ちの変化を定性的に把握することが行われている。
特許文献1には、年齢と相関のある形状的特徴種の特徴量を被験者の顔から多数取得して因子分析することで加齢共通因子を見出し、この加齢共通因子の発現状況を示す因子発現パターンを被験者ごとに決定する方法が記載されている。形状的特徴種とは、鼻下の長さや頬幅に対する目の相対的な大きさなど、顔の特定部位の形状を示す情報であり、特徴量とはその計測値である。また、因子発現パターンとは、いずれの加齢共通因子が被験者の顔に発現しているか、というパターンである。この因子発現パターンでは被験者各個人の生来の形状的特徴からの影響が排除されているため、被験者の加齢状況を客観的に分析することができる。また、特許文献1では、顕著に発現している加齢共通因子の数とまったく発現していない加齢共通因子の数との大小関係に基づいて被験者の顔を4つのタイプ(S群、N群、X群、Y群)に分類したり、有意に発現している加齢共通因子数に基づいて被験者の顔を3つのグループ(領域1、領域2、領域3)に分類したりすることが記載されている。そして特許文献1では、このように被験者の顔を複数のタイプやグループに分類したうえで見掛け年齢を推定している。さらに特許文献1では、被験者の実年齢や推定された見掛け年齢に基づいて、または上記のように分類されたグループごとに、対応する美容施術情報を被験者に提供することでエイジングケアのカウンセリングが可能であることが記載されている。
特許第5897745号公報
特許文献1の方法では、多数の被験者の母集団から取得した形状的特徴種の特徴量を重回帰分析して加齢共通因子を見出すものであるため、ある程度の統計精度をもって被験者の見掛け年齢を推定することができる。しかしながら、昨今は被験者の個々人の加齢状況に応じたきめ細かいカウンセリングが求められるなど、より高い精度で被験者の加齢状況を分析してカウンセリングを行うことが要望されている。
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、被験者の個々人の加齢状況をより客観的に分析する技術に関する。
本発明は、年齢と相関のある複数の形状的特徴種に関する特徴量を被験者の顔から取得して行う加齢分析方法に関するものであり、被験者の顔の加齢変化の傾向を示す加齢変化ルートを特徴量に基づいて複数通りから選択して決定することを特徴とする。
また本発明によれば、年齢と相関のある複数の形状的特徴種に関する特徴量を被験者の顔から取得する取得手段と、前記被験者の顔の加齢変化の傾向を示す加齢変化ルートと前記特徴量との関係を示すルート情報を記憶する記憶手段と、前記記憶手段を参照して前記加齢変化ルートを前記特徴量に基づいて複数通りから選択して決定するルート決定手段と、を備える加齢分析装置が提供される。
本発明によれば、被験者の顔が加齢変化する傾向を示す加齢変化ルートが決定されるため、当該被験者の顔が将来的にどのように加齢変化していくかという観点を考慮して各種の美容カウンセリングを行うことが可能になる。これにより、特徴量を取得したその時点における被験者の見掛け年齢を推定することに比べて、被験者の個々人の加齢状況をより客観的に分析することができる。
本発明の実施形態の加齢分析方法の工程を示す図である。 加齢変化ルートを示す図である。 加齢分析装置のハードウェア構成例を概念的に示す図である。 加齢分析装置の処理構成例を概念的に示す図である。 (a)各被験者から一つの時点で取得した特徴量群の因子分析結果である。(b)同一被験者の過去と現在の二つの時点で取得した特徴量群の因子分析結果である。 タイプ0(発現なし)の被験者の加齢変化を示す図である。 タイプ1(下顎および/または口元に発現)の被験者の加齢変化を示す図である。 タイプ2(目元に発現)の被験者の加齢変化を示す図である。 タイプ3(目元および下顎に発現)の被験者の加齢変化を示す図である。 タイプ4(目元および口元に発現)の被験者の加齢変化を示す図である。 タイプ5(目元、下顎および口元に発現)の被験者の加齢変化を示す図である。
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。なお、各図面において同様の構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。また、以下の説明において複数の工程を用いて本発明にかかる加齢分析方法を説明が、その記載の順番は複数の工程を実行する順番やタイミングを限定するものではない。このため、本発明にかかる加齢分析方法を実施するときには、その複数の工程の順番は技術的に支障のない範囲で変更することができ、また複数の工程の実行タイミングの一部または全部が互いに重複していてもよい。
図1は、本発明の実施形態にかかる加齢分析方法の工程を示す図である。図1に示されるように、本実施形態の加齢分析方法は、年齢と相関のある複数の形状的特徴種に関する特徴量を被験者の顔から取得し(図1:S10)、被験者の顔の加齢変化の傾向を示す加齢変化ルートを上記の特徴量に基づいて複数通りから選択して決定する(図1:S30)ことを含む。
ここで、「形状的特徴種」は、人間の顔(頭部)における特定部位の形状を示し、被験者ごとに共通に設定される情報であり、例えば、鼻下の長さ、頬幅に対する目の相対的な大きさ、上下方向の目の傾き(角度)などが挙げられる。「形状的特徴種」には、人間の頭部の形状が含まれる限り、例えば首や手の甲など頭部以外の形状を含めてもよい。「形状的特徴種」としては、年齢と相関することが事前に統計的に確認されたものを採用する。ここで年齢とは、見掛け年齢または実年齢である。
本実施形態で用いられる形状的特徴種は、目尻の傾き、眉の傾き、および目の大きさ、からなる目元因子群;または、下顎の膨れ、鼻下の長さ、および唇の薄さ、からなる頬・下顎因子群よりそれぞれ選ばれる少なくとも各一つの因子である。好ましくは、上記の目元因子群および頬・下顎因子群の全因子を形状的特徴種として用いることが好ましい。
目元因子群について詳細に説明する。目元因子群とは、目または目の周囲の形態に関する、年齢と相関する複数の因子(加齢共通因子)の集合である。
「目尻の傾き」としては「つり目度」および「見掛けつり目度」を用いることができる。「つり目度」は、内眼角(目頭)と外眼角(目尻)とを結ぶ直線と、内眼角から地面に対して水平に延ばした直線とのなす角度である。「見掛けつり目度」は、見掛け目尻点と内眼角(目頭)とを結ぶ直線と、内眼角から地面に対して水平に延ばした直線とのなす角度である。見掛け目尻点とは、見た目上の目尻点を意味し、例えば、外眼角よりも下垂した上瞼の外眼角側の端が該当する。
「眉の傾き」としては、「(眉尻−眉山)y」および「(眉尻−眉頭)y」を用いることができる。「(眉尻−眉山)y」は、眉尻から眉山への上下方向の落差(垂直距離)を示し、頬幅で除したうえで、例えば特定倍にするなどして無次元化した値とすることができる。図5では特定倍の一例として1000倍を採用している。「(眉尻−眉頭)y」は、眉尻から眉頭への上下方向の落差(垂直距離)を示し、頬幅で除したうえで上記と同様に無次元化した値とすることができる。ここで、頬幅は、頬弓幅とは異なり、正面視状態の人の左右の外眼角を通る地面と垂直な平面と、その被験者の顔の表面との交線上における、外眼角より下方の頬骨位置の幅である。
「目の大きさ」としては、「目の面積」、「目の縦幅y」および「魚目度」を用いることができる。「目の面積」は、目の粘膜部の露出面積である。「目の縦幅y」は、目の上下方向の最長部の長さを示し、頬幅で除したうえで上記と同様に無次元化した値とすることができる。「魚目度」は、内眼角と外眼角とを結ぶ直線の前後方向の傾きを示す。魚目度は、目尻の後退度合いとも言える。
頬・下顎因子群について詳細に説明する。頬・下顎因子群とは、頬や口元などの顔下半分の形態に関する、年齢と相関する複数の加齢共通因子の集合である。
「下顎の膨れ」としては、「下顎角点幅」および「耳珠点−下顎角点/下顎角点−顎先点」を用いることができる。「下顎角点幅」は、左右の下顎角点付近の再突出部間の幅である。「耳珠点−下顎角点/下顎角点−顎先点」は、耳珠点から下顎角点までの距離を、下顎角点から顎先点までの距離で除した値である。
「鼻下の長さ」としては、「(鼻下点−唇上端[右左]/鼻下点−顎下)y」を用いることができる。「(鼻下点−唇上端[左右]/鼻下点−顎下)y」は、鼻の下の長さを示し、具体的には、鼻下点から唇の上端への上下方向の落差長を鼻下点から顎下への上下方向の落差長で除した値を示す。
「唇の薄さ」としては、「(唇上端[左右]−下端)y/口裂幅」を用いることができる。「(唇上端[左右]−下端)y/口裂幅」は、唇の縦横比を示し、具体的には、唇の上端から唇の下端への上下方向の落差(垂直距離)を口裂幅で除した値を示す。
頬・下顎因子群のうち、「下顎の膨れ」を下顎因子と呼称し、「鼻下の長さ」および「唇の薄さ」を口元因子と呼称する場合がある。なお、上記の目元因子群および頬・下顎因子群は一例であり、上記に代えて、または上記に加えて、上眼瞼の陥凹(凹み)具合や下眼瞼(目袋)の膨隆(膨らみ)具合を表す特徴量や、鼻唇溝(ホウレイ線)もしくはマリオネットラインの深さなどの口元を表す特徴量を適宜用いることもできる。さらに、目元因子群および頬・下顎因子群として、頬の角度などの他の因子を採用してもよい。以下、目元因子群の加齢共通因子が発現していることを、目元因子が発現していると表現する場合がある。同様に、頬・下顎因子群の加齢共通因子が発現していることを、頬・下顎因子が発現していると表現する場合がある。
ただし、加齢共通因子の数および形状的特徴種は上記に制限されない。例えば、見掛け年齢と相関のある複数の形状的特徴種に関する特徴量群は、(ア)鼻下の長さ及び唇のうすさを示す複数の特徴量、(イ)頬幅に対する目の相対的な大きさを示す複数の特徴量、(ウ)上下方向および前後方向の目の傾きを示す複数の特徴量、(エ)頬幅に対する眉の下垂状態を示す複数の特徴量、(オ)頬幅に対する下顎角幅の大きさおよび顎先と耳と下顎角との位置関係を示す複数の特徴量、などを採用してもよい。
「特徴量」は、その形状的特徴種における各個人の特徴を反映した物理量であり、例えば、長さや角度などの有次元、または比率などの無次元の値として計測される値である。複数の形状的特徴種のそれぞれに関する特徴量(以下、当該複数の特徴量を特徴量群と呼称する場合がある)は、被験者の年齢と相関のある体の特定部位の形状に関する情報である。
以下、本実施形態の加齢分析方法(以下、本方法と略記する場合がある)を詳細に説明する。
ステップ(S10)では、被験者から特定部位を接触式で実測して特徴量群を取得してもよく、被験者を撮像した二次元画像上で特徴量群を取得してもよい。または、異なる複数方向から被験者をそれぞれ撮影した複数枚の二次元画像に基づいて三次元顔形状モデルを作成し、この三次元顔形状モデル上で特徴量群を取得してもよい。この三次元顔形状モデルは、複数人の母集団の顔表面の三次元形状を表す母集団顔情報(三次元顔形状データ群)であり、互いにデータ点数およびトポロジーが統一された相同モデルを用いて各被験者の頭部形状を表すことができる。ステップ(S10)では被験者の実年齢の情報も取得しておく。
ステップ(S10)で被験者の顔から特徴量群を取得した後、当該被験者の特徴量群と、多数人の母集団に関する特徴量群の集合を因子分析して抽出された複数の共通因子と、を用いて、被験者における共通因子の発現状況を示す因子発現パターンを決定する(図1:S20)。この共通因子を加齢共通因子と呼称する。母集団に関する特徴量群の集合と各被験者から取得する特徴量群とは共通である。
ステップ(S20)では、複数人の被験者から取得した三次元顔形状データ群における多数の形状的特徴種の中から、該多数の特徴量群を説明変数群とし、被験者の実年齢を目的変数とする多変量解析(重回帰分析)により、形状的特徴種を重相関係数に基づいて選別することができる。例えば、形状的特徴種毎の重相関係数が、その重回帰分析の母集団の標本数に対する有意水準の限界値よりも高い場合に、当該形状的特徴種が選別される。
多変量解析に用いられる三次元顔形状データ群を提供する母集団は、総て異なる被験者であってもよいが、同一の被験者から取得した複数の三次元顔形状モデルを含んでもよい。後述するように本方法では、過去時点における被験者の特徴量と、同一の被験者に関する現在の特徴量と、の両方を用いて加齢状態を決定するとよい。このため、本方法で多変量解析に用いられる三次元顔形状データ群は、同一の被験者から異なる時点でそれぞれ取得した三次元顔形状データを含むことを特徴とする。
そして本方法においては、同一被験者の現在と過去の特徴量群を含む三次元顔形状データ群を多変量解析して形状的特徴種を選別しただけでなく、多数の被験者の加齢変化を個別に追跡することで、加齢状態のタイプが所定のパターンで遷移することを明らかにしたものである。また、実施例にて後述するように、ある一時点において幅広い年齢層の多数の被験者から取得した特徴量群の因子分析結果と、被験者の過去と現在の特徴量を因子分析して実際の加齢変化を考慮した結果と、の間で極めて傾向が一致することが明らかとなった。このことにより、幅広い年齢層から構成される多数の母集団の因子分析結果によって、個人の加齢変化の傾向を予測することが裏付けられた。本発明は、かかる分析結果に基づき、多数の母集団から取得した特徴量群の因子分析結果から被験者個人の顔の加齢変化の傾向をパターン化して決定することが可能であるとの知見により為されたものである。
ステップ(S20)では、ステップ(S10)で得られた被験者の特徴量群を用いて因子発現パターンおよび見掛け年齢を決定する。具体的には、上記にて予め選別された形状的特徴種に関して被験者の頭部から取得された特徴量群を、加齢共通因子ごとの重回帰式に適用することで、被験者の加齢共通因子ごとの因子得点を算出することができる。かかる因子得点が統計的有意水準を超えている場合に、当該被験者は当該加齢共通因子が発現していると判定することができる。因子発現パターンは、各加齢共通因子の発現の有無または発現の程度によって被験者の加齢状態を複数通りに分類したものである。見掛け年齢は、因子発現パターン毎に予め割り当てられており、被験者ごとに決定された因子発現パターンに基づいて算出される。見掛け年齢と因子発現パターンとはテーブルによって対応づけられていてもよい。そしてカウンセラーなどの人が、当該テーブルを参照して、被験者の因子発現パターンに基づいて見掛け年齢を取得してもよい。
ステップ(S30)では、被験者の顔の加齢変化の傾向を示す加齢変化ルートを決定する。加齢変化ルートは、被験者から取得した特徴量群に基づいて、複数通りから選択して決定する。図2は加齢変化ルートを示す図である。
はじめに、多数の因子発現パターンの組み合わせにより、被験者の加齢状態を大きく6つにタイプ分類する。
タイプ0は、目元因子も頬・下顎因子も発現していない被験者の群であり、後述する実施例においては実年齢が20代から60代の日本人女性497人の母集団のうち11%が該当した。
タイプ1は、下顎因子および/または口元因子のみ発現し目元因子が発現していない被験者の群であり、上記母集団のうち14%が該当した。タイプ1は、更にタイプ1a、タイプ1b、タイプ1abの3つに細別される。タイプ1aは下顎因子が発現し口元因子が発現していないタイプであり、上記母集団のうち5%が該当した。タイプ1bは口元因子が発現し下顎因子が発現していないタイプであり、上記母集団のうち3%が該当した。タイプ1abは下顎因子と口元因子の両方が発現しているタイプであり、上記母集団のうち6%が該当した。
タイプ2は、目元因子のみが発現し、頬・下顎因子が発現していない被験者の群であり、上記母集団のうち17%が該当した。
タイプ3は、目元因子および下顎因子の両方が発現し、口元因子が発現していない被験者の群であり、上記母集団のうち16%が該当した。
タイプ4は、目元因子および口元因子の両方が発現し、下顎因子が発現していない被験者の群であり、上記母集団のうち22%が該当した。
タイプ5は、目元因子、下顎因子および口元因子の総てが発現している被験者の群であり、上記母集団のうち20%が該当した。
そして本発明者らの検討によれば、多数の被験者の顔形状の経時変化を追跡することにより、ひとたび発現した下顎因子および口元因子は、被験者の加齢(実年齢の経過)により消失しないことが明らかとなった。したがって、下顎因子が発現し口元因子が発現していないタイプ1aと、逆に口元因子が発現し下顎因子が発現していないタイプ1bとの間では、同一被験者が加齢によって相互に行き来することが無いことが明らかとなったといえる。同様に、口元因子が発現せず目元因子と下顎因子が発現しているタイプ3と、下顎因子が発現せず目元因子と口元因子が発現しているタイプ4との間でも、同一被験者が加齢によって相互に行き来することが無いことが明らかとなったといえる。このように、タイプ間の行き来が観察されなかったことで、例えばタイプ0に属していた被験者が、加齢により下顎因子のみが発現してタイプ1aに遷移した場合、その後の加齢変化のパターンとしては、(1)下顎因子に加えて口元因子が更に発現してタイプ1abに移行したうえで全因子が発現するタイプ5に移行するか、または(2)下顎因子に加えて目元因子が更に発現してタイプ3に移行したうえで全因子が発現するタイプ5に移行するか、のいずれかとなる。
人は長期間の加齢により最終的には下顎因子、口元因子および目元因子の全部が発現してタイプ5に移行する。その進行速度は人により異なり、また美容施術の適用などによって進行を遅延させることも可能であるものの、被験者の加齢変化のパターンについては当該被験者の顔に発現している加齢共通因子から特定することができる。
上記の知見に基づき、図2に示す加齢変化ルートは、第一変化ルートR1と第二変化ルートR2の少なくとも二つで構成されている。すなわち加齢変化ルートは、第一変化ルートR1と第二変化ルートR2とに大別される。図2に示す例では、第一変化ルートR1が更にルートR1AとルートR1Bの2つに細別されている。
第一変化ルートR1は、頬・下顎因子群に含まれる加齢共通因子のみが発現(タイプ1)してから、目元因子群に含まれる加齢共通因子および頬・下顎因子群に含まれる加齢共通因子の両方が発現(タイプ3、4、5)するルートである。より詳細には、ルートR1Aは、頬・下顎因子群の加齢共通因子の発現数が1個(タイプ1aまたは1b)から複数個に増大(タイプ1ab)してから目元因子群の加齢共通因子が発現し、結果として全因子が発現(タイプ5)する加齢変化ルートである。ルートR1Bは、頬・下顎因子群の加齢共通因子が1個発現(タイプ1aまたは1b)した後に目元因子群の加齢共通因子が発現(タイプ3または4)し、そのうえで頬・下顎因子群の加齢共通因子の発現数が増大して、結果として全因子が発現(タイプ5)する加齢変化ルートである。
第二変化ルートR2は、目元因子群に含まれる加齢共通因子のみが発現(タイプ2)してから、目元因子群に含まれる加齢共通因子および頬・下顎因子群に含まれる加齢共通因子の1つが発現(タイプ3または4)するルートである。第二変化ルートR2は、最終的には頬・下顎因子群に含まれる複数の加齢共通因子が発現し、結果として全因子が発現(タイプ5)する加齢変化ルートである。
すなわち、例えば被験者の現在の顔から取得された形状的特徴種の特徴量に基づいて当該被験者がタイプ1aに現在属していると判定された場合、当該被験者の顔は加齢によりタイプ1abまたはタイプ3に移行することが分かる。したがって、当該被験者の加齢変化ルートは第一変化ルートR1(ルートR1AまたはルートR1B)であることが決定される。また、別の被験者がタイプ2に現在属していると判定された場合、当該被験者の顔は加齢によりタイプ3またはタイプ4に移行することが分かる。したがって、当該別の被験者の加齢変化ルートは第二変化ルートR2であることが決定される。
なお、目元因子も原則として加齢により消失するものではないが、特徴量群の計測時の体調や表情の影響を受けやすいため、本来発現している目元因子が観察されない場合がある。したがって、被験者が加齢により、例えばタイプ2からタイプ0に移行したり、タイプ3からタイプ1aに移行したりしたと判断された場合は、改めて当該被験者から特徴量群を取得し直してもよい。
また本方法では、被験者の過去時点における特徴量と現在の特徴量とに基づいて当該被験者の加齢変化の進行度を算出する。加齢変化の進行度としては、過去時点において発現しておらず現時点で新たに発現している加齢共通因子の有無および種類のほか、過去時点における加齢状態のタイプ(0〜5)および現在の加齢状態のタイプ(0〜5)の情報、または過去時点で発現していた加齢共通因子に関する因子得点の変化量(増大量)などを挙げることができる。
このように、同一被験者に関する過去時点の特徴量と現在の特徴量とを用いて加齢変化の進行度を算出することで、当該被験者の加齢変化ルートをより詳細に決定することができる。例えば過去時点において当該被験者がタイプ1aに属しており、そして現在はタイプ1abに属していると判定された場合には、当該被験者の加齢変化ルートはルートR1Aであると特定される。また、過去時点において当該被験者が同じくタイプ1aに属しており、そして現在はタイプ3に属していると判定された場合には、当該被験者の加齢変化ルートはルートR1Bであると特定される。
被験者の過去時点における特徴量に基づいて因子発現パターンを決定するにあたっては、過去時点において当該被験者を撮影した二次元顔画像を当該被験者に持参してもらって特徴量群を取得してもよい。このとき、過去時点において当該被験者を複数方向から撮影した二次元画像があれば、これらの二次元画像に基づいて三次元顔形状モデルを作成し、この三次元顔形状モデル上で特徴量群を取得してもよい。または、ある時点で被験者の頭部を接触式などの方法で実測して三次元顔形状モデルを作成するとともに特徴量群を取得して記憶手段に記録しておき、所定期間(年数)の経過後に、この記録されている特徴量群(これが過去時点における特徴量となる)と、その時点で新たに取得された特徴量群(現在の特徴量群)と、を用いて因子発現パターンを決定してもよい。
本方法においては、被験者の因子発現パターンを決定し(図1:S20)、当該因子発現パターンに基づいて加齢変化ルートを決定(図1:S30)して出力する(図1:S32)とともに、現在の被験者が属している加齢状態のタイプ(0〜5)を併せて出力してもよい。
また本方法においては、被験者の顔画像を、加齢変化ルートに対応付けられた加齢共通因子の発現量を増大させることによって加齢変化させた加齢顔画像を生成して提示する(図1:S34)。加齢顔画像は、当該被験者の将来的な加齢変化後の顔を予測した画像である。ここで、加齢顔画像を生成するための被験者の顔画像は、三次元顔形状モデル(相同モデル)でもよい。この場合、多数の母集団の三次元顔形状モデルの共分散行列の固有ベクトル解析により基底ベクトルと各次数の重み係数を求めたうえ、被験者の三次元顔形状モデルにおいて、加齢共通因子に対応する基底次数の重み係数を変化させて基底ベクトルと重み係数との積和演算を行うとよい。これにより、加齢共通因子の発現量を増大させた場合の被験者の三次元顔形状モデルである加齢顔画像を生成することができる。
生成された加齢顔画像は、そのまま被験者に提示してもよいが、以下に説明する美容情報を適用した場合の顔画像(後述する予測顔画像)として被験者に提示してもよい。
本方法においては、決定された加齢変化ルートと予め対応付けられた美容情報を抽出する(図1:S40)。美容情報としては、美容製品情報と美容施術情報とに大別することができる。
本方法により加齢変化ルートおよび現在の加齢状態のタイプが決定された被験者に対し、既に発現している加齢共通因子に対しては、対症的手法、すなわちその進行を遅らせたり化粧により隠したりする方法を提案することが推奨される。一方、被験者の加齢変化ルートにおいて示される、現在の加齢状態のタイプの次段階で発現すると推定される加齢共通因子に対しては、予防的手法、すなわちその発現を予防する方法を提案することが推奨される。
本方法で提示される美容情報は、加齢変化に対する対症的手法および予防的手法の情報を含むものである。そして、被験者に対して提示される選択肢となる複数通りの加齢変化ルートに対して、対症的手法または予防的手法の少なくとも一方が対応付けられている。
より詳細な美容製品情報および美容施術情報の一例を下記に挙げる。
<下顎因子>
(1)対症的手法
美容製品情報:たるみ引き締め剤
美容施術情報:温熱刺激
(2)予防的手法
美容製品情報:温熱シート
美容施術情報:頬のマッサージ
<口元因子>
(1)対症的手法
美容製品情報:リップライナー、グロス
美容施術情報:唇マッサージ
(2)予防的手法
美容製品情報:パック用リップクリーム
美容施術情報:舌回し運動
<目元因子>
(1)対症的手法
美容製品情報:目元を明るく見せるアイメイク、コンシーラー
美容施術情報:目尻のリフトアップマッサージ
(2)予防的手法
美容製品情報:アイマスク型の温熱シート
美容施術情報:表情筋の運動
これらの美容製品情報および美容施術情報は加齢共通因子に対応付けてリストやテーブルに記憶されていることが好ましい。ステップ(S40)においては、被験者の顔に現時点で有意に発現している因子に対し、これらのリストやテーブルを参照して、対症的手法としてリストされている美容製品情報または美容施術情報を抽出して提示するとよい。かかる参照および抽出作業は人が行ってもよい。また、加齢変化ルートにおける次段階で発現すると推定される因子に対しては、同じく予防的手法としてリストされている美容製品情報または美容施術情報を抽出して提示するとよい。
本方法においては予測顔画像を生成(図1:S42)して、これを出力する。予測顔画像は、被験者の顔画像または加齢顔画像に、加齢変化に対する対症的手法または予防的手法を施した場合に予測される顔の画像である。本方法では、被験者の現在の顔画像と対比して、この予測顔画像を提示する。二つの画像を対比して提示するとは、同一のディスプレイ装置に当該二つの画像を表示することや、近接する二つのディスプレイ装置において当該二つの画像をそれぞれ表示することのほか、これら二つの画像を重ね合わせてディスプレイ装置に表示すること、またはこれらの表示に代えて紙印刷物として出力することなどを含む。
本方法は、以下に説明する加齢分析装置のような少なくとも1つのコンピュータにおいて実行され得る。図3は、本方法を実現する加齢分析装置10のハードウェア構成例を概念的に示す図である。加齢分析装置10は、いわゆるコンピュータであり、例えば、バスで相互に接続される、CPU(Central Processing Unit)11、メモリ12、送受信インタフェース(IF)13、入出力インタフェース(IF)14等を有する。メモリ12は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、ハードディスク等である。送受信IF13は、他のコンピュータや機器と信号のやりとりを行う手段であり、可搬型記録媒体等も接続され得る。
入出力IF14は、入力装置15や表示装置16等のユーザインタフェース装置と接続される。入力装置15は、キーボード、マウス等のようなユーザ操作の入力を受け付ける装置である。表示装置16はディスプレイ装置であり、CPU11やGPU(Graphics Processing Unit)(図示せず)等により処理された描画データに対応する画面を表示する装置である。ただし、上記のハードウェア構成は加齢分析装置10の一例である。
図4は、本実施形態の加齢分析装置10の処理構成例を概念的に示す図である。図4に示されるように、加齢分析装置10は、取得部21、ルート決定部22および記憶部50を備えている。
取得部21は、年齢と相関のある複数の形状的特徴種に関する特徴量を被験者の顔から取得する情報処理手段である。記憶部50は、被験者の顔の加齢変化の傾向を示す加齢変化ルートと特徴量との関係を示すルート情報を記憶する記憶手段である。そしてルート決定部22は、記憶部50を参照して加齢変化ルートを特徴量に基づいて複数通り(本方法ではタイプ0から5の6通り)から選択して決定する情報処理手段である。これら各処理部は、例えば、図3に示すCPU11により、メモリ12に格納されるプログラムが実行されることにより実現される。また、当該プログラムは、可搬型記録媒体やネットワーク上の他のコンピュータから送受信IF13を介してインストールされてメモリ12に格納されてもよい。記憶部50は単一の装置であることに限られず、複数の記憶装置の集合でもよい。また、図4では記憶部50が加齢分析装置10の内部に配置されている態様を例示したが、これに限られず、記憶部50は加齢分析装置10の外部に配置されてネットワーク経由で加齢分析装置10と接続されていてもよい。
取得部21は、接触式計測部または非接触式計測部であってもよく、被験者が写る二次元画像から三次元座標情報を算出して被験者の特徴量群を算出する情報処理手段でもよい。
規格化部52は、被験者から取得した特徴量に対し、相同モデルに基づく規格化を行う。
顔成分解析部54は、規格化された三次元顔形状データ群を多変量解析(重回帰分析)し、重相関係数を閾値判定して形状的特徴種を選別する。
算出部56は、図1に示す本方法のステップ(S30)以下を実行する演算処理部である。算出部56は、顔成分解析部54による解析結果を取得して、加齢変化ルートの決定(S30)、加齢顔画像の生成(S34)、美容情報の抽出(S40)および予測顔画像の生成(S42)を行う。
加齢分析装置10は加齢進行度算出部40を備えている。加齢進行度算出部40は、被験者の過去時点における特徴量と現在の特徴量とに基づいて被験者の加齢変化の進行度を算出する情報処理手段である。加齢進行度算出部40は、被験者の過去の顔画像から過去時点における特徴量を取得する。
加齢分析装置10は、取得部21が被験者から取得した顔画像における加齢共通因子の発現量を増大させる加齢顔画像を生成する加齢顔画像生成部25を更に備えている。加齢顔画像生成部25は本方法のステップ(S34)を実行する。加齢顔画像生成部25は、決定された加齢変化ルートに対応付けられた加齢共通因子の発現量を増大させて加齢顔画像を生成する。顔画像としては、被験者の二次元画像のほか、三次元顔形状モデル(相同モデル)でもよい。元になる被験者の顔画像、および加齢顔画像生成部25が生成した加齢顔画像は記憶部50に記憶される。
記憶部50は、美容情報を加齢変化ルートと対応付けて記憶している。また、加齢分析装置10は美容情報選択部23を備えている。美容情報選択部23は、記憶部50を参照し、決定された加齢変化ルートに基づいて美容情報を取得して提示する情報処理手段である。美容情報選択部23は、本方法のステップ(S40)を行う。
記憶部50に記憶される美容情報は、加齢変化に対する対症的手法および予防的手法の情報を含んでいる。そして美容情報選択部23は、加齢変化ルートに対応付けられた対症的手法または予防的手法の少なくとも一方を取得して提示する。
加齢分析装置10は予測顔画像生成部30を更に備えている。予測顔画像生成部30は、被験者の顔画像または加齢顔画像に、加齢変化に対する対症的手法または予防的手法を施した場合の予測顔画像を生成する画像処理手段であり、本方法のステップ(S42)を実行する。
出力処理部58は、加齢変化ルート、加齢顔画像、美容情報および予測顔画像の出力を行う。出力処理部58は、これらの情報または画像を示す出力データを生成し、入出力IF14を介して表示装置16または印刷装置などの他の出力装置に、その出力データを出力する。出力処理部58は、その出力データを、送受信IF13を介して他の装置に送信してもよく、可搬型記録媒体にその出力データを記録してもよい。
なお、本実施形態の加齢分析装置10の各種の構成要素は個々に独立した存在である必要はない。複数の構成要素が一個の部材として形成されていること、一つの構成要素が複数の部材で形成されていること、ある構成要素が他の構成要素の一部であること、ある構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複していること、等を許容する。
以下、本発明を実施例に基づいて説明する。被験者の顔から取得した形状的特徴種に関する特徴量から当該被験者の加齢変化ルートを決定できることが以下の実施例から明らかになる。
図5(a)は、多数の母集団の被験者から一つの時点で取得した特徴量群の因子分析結果である。図5(b)は、多数の母集団を構成する同一被験者から過去と現在の二つの時点で取得した特徴量群の因子分析結果である。
より詳細には、図5(a)は、実年齢が20代から60代の日本人女性497人の母集団における11個の形状的特徴種の特徴量に対する因子分析により5つの共通因子が抽出された例である。図5(b)は、図5(a)にかかる特徴量の取得から8年後に、上記母集団のうち111名に対して再び、上記と同じ11個の形状的特徴種の特徴量に対して因子分析を行った結果である。図5(a)および図5(b)では、5つの共通因子が因子1から因子5で表記されている。
11個の形状的特徴種としては、「(眉尻−眉山)y」、「(眉尻−眉頭)y」、「目の面積」、「目の縦幅y」、「魚目度」、「下顎角点幅」、「耳珠点−下顎角点/下顎角点−顎先点」、「見掛けつり目度」、「つり目度」、「(鼻下点−唇上端[右左]/鼻下点−顎下)y」、「(唇上端[左右]−下端)y/口裂幅」を用いた。それぞれの説明は上述を参照。
本発明者らは、このような11個の形状的特徴種を次のように抽出した。まず本発明者らは相同モデルにおける4000以上のデータ点(特徴点)を用いて、見掛け年齢に関連すると推測される60個の特徴点間の関係(形状的特徴種)を導き出した。そして本発明者らは、60個の形状的特徴種に関する特徴量群を説明変数群とし見掛け年齢を目的変数とする重回帰分析を行い、見掛け年齢と相関の高い(具体的には、重相関係数が0.200より大きい)上述の11個の形状的特徴種を抽出した。
図5(a)に示されるように、11個の形状的特徴種を、強い影響を受ける加齢共通因子により分類することができる。具体的には、眉の傾きに関する形状的特徴種(「(眉尻−眉山)y」および「(眉尻−眉頭)y」)は因子1に大きく依存する。目の大きさ、下顎の膨れ、目尻の傾き、鼻下の長さ、唇の薄さの各形状的特徴種に関しても、図5(a)に網掛で示す因子に大きく依存している。
図5(a)に示す総て異なる母集団から取得した特徴量の因子分析結果と、図5(b)に示す各被験者の過去と現在の特徴量の因子分析結果とを対比すると、両者において形状的特徴種が依存する因子の傾向である因子発現パターンが良く一致した。また、図5(a)の最下段には5つの加齢共通因子と被験者の見掛け年齢との相関係数を示す。同じく図5(b)の最下段には5つの加齢共通因子と被験者の実年齢との相関係数を示す。これらの結果より、図5(a)の因子分析結果にて抽出された上位5つの加齢共通因子は、見掛け年齢と1%有意の相関があった。そして当該5つの加齢共通因子が、図5(b)の因子分析結果においても総て1%有意の相関を維持していることが分かった。
図5(a)と図5(b)とを対比すると、ある時点において幅広い年齢層の多数の被験者から各1回だけ取得した特徴量群を母集団として多変量解析した図5(a)の因子分析結果と、各被験者の実際の加齢変化を考慮して過去と現在の2回に亘って各被験者から取得した特徴量群を母集団として多変量解析した図5(b)の因子分析結果と、の間で、極めて傾向が一致することが明らかとなった。このことにより、幅広い年齢層から構成される多数の母集団を因子分析することを通じて、その一時点における若年から老年までの顔と年齢の相関が分析されるだけでなく、一個人の加齢変化の傾向をも予測できることが裏付けられた。
図6から図11は、図5(b)に示した111人の被験者の加齢変化を、それぞれタイプ0からタイプ5に分けて示す図である。
図6に示すように、タイプ0の被験者は2007年時点で111人中15人であった。当該15人の被験者を、目元因子の因子得点を横軸、頬・下顎因子の因子得点を縦軸にとって二次元プロットした(図中、◆で示す)。横軸の右方は目元因子の発現量が多いことを意味し、縦軸の上方は頬・下顎因子の発現量が多いことを意味する。当該15人のプロット位置を包含する領域を同図に一点鎖線の楕円で囲んで示す。
同じ15人の被験者から2015年に加齢共通因子の特徴量群を取得して目元因子と頬・下顎因子の因子得点を算出し、同様に二次元プロットした(図中、黒塗りの□で示す)。2015年時点における当該15人のプロット位置を包含する領域を同図に破線の楕円で囲んで示す。
図6に示すように、タイプ0に属していた被験者15人は、目元因子および頬・下顎因子の両方の発現量が増大する方向に加齢変化したことが分かった。具体的には、タイプ0の15人の被験者のうち、2007年から2015年までの8年の経過によってもタイプ0を維持していた者が9名で、次に多かったのはタイプ1に移行した3名であった。したがって、タイプ0の人が加齢変化する場合、目元因子および頬・下顎因子の両方の発現量が増大し、特に頬・下顎因子が発現してまずタイプ1に移行する場合が多いことが分かった。
図7に示すように、タイプ1の被験者は2007年時点で111人中14人であった。図6と同様に二次元プロットし、これら14人の被験者の加齢状況を一点鎖線の楕円で囲んで示す。そして同じ14人の被験者から2015年に加齢共通因子の特徴量群を取得して加齢状況を二次元プロットし、破線の楕円で囲んで示す。
タイプ1に属していた被験者14人のうち、8年間の経過によってもタイプ1を維持していた者が9人で、次に多かったのはタイプ4に移行した3名であった。これが加齢変化ルートのルートR1B(図2参照)にあたる。
また、タイプ1からタイプ2に移行した者は居なかった。また、図7には詳細を図示していないが、タイプ1aとタイプ1bとの間で一方から他方に移行した者も居なかった。このことから、ひとたび発現した下顎因子および口元因子が消失することはないことが分かった。また、タイプ1の被験者の集合は全体的な傾向として図7の右方にシフトすること、すなわち下顎因子または口元因子の発現の次に目元因子が発現しやすいことが分かった。
タイプ1を詳細に分析すると、2007年にタイプ1aであった者(7人)のうち、2015年にタイプ1abに移行した者が4人と最多であった。これが加齢変化ルートのルートR1Aにあたる。
図8に示すように、タイプ2の被験者は2007年時点で111人中31人であった。図6と同様に二次元プロットし、これら31人の被験者の加齢状況を一点鎖線の楕円で囲んで示す。そして同じ31人の被験者から2015年に加齢共通因子の特徴量群を取得して加齢状況を二次元プロットし、破線の楕円で囲んで示す。
タイプ2に属していた被験者31人のうち、8年間の経過によってもタイプ2を維持していた者が18人で最多で、次に多かったのはタイプ4に移行した7名であった。また、タイプ2からタイプ1に移行した者は居なかった。このことから、ひとたび発現した目元因子が消失して他の因子が発現することはないことが分かった。また、タイプ2の被験者の集合は全体的な傾向として図8の上方にシフトすること、すなわち目元因子に続けて下顎因子または口元因子が発現することが分かった。これが加齢変化ルートの第二変化ルートR2にあたる。
図9に示すように、タイプ3の被験者は2007年時点で111人中22人であった。図6と同様に二次元プロットし、これら22人の被験者の加齢状況を一点鎖線の楕円で囲んで示す。そして同じ22人の被験者から2015年に加齢共通因子の特徴量群を取得して加齢状況を二次元プロットし、破線の楕円で囲んで示す。
タイプ3に属していた被験者22人のうち、8年間の経過によってもタイプ3を維持していた者が14人で最多で、次に多かったのはタイプ5に移行した6名であった。また、タイプ3からタイプ4に移行した者は居なかった。このことからも、ひとたび発現した下顎因子が消失することはないことが分かった。また、タイプ3の被験者の集合は全体的な傾向として図9の上方にシフトすること、すなわち目元因子と下顎因子が発現していた被験者は次に口元因子が発現することが分かった。これが加齢変化ルートのルートR1Bおよび第二変化ルートR2にあたる。
図10に示すように、タイプ4の被験者は2007年時点で111人中13人であった。図6と同様に二次元プロットし、これら13人の被験者の加齢状況を一点鎖線の楕円で囲んで示す。そして同じ13人の被験者から2015年に加齢共通因子の特徴量群を取得して加齢状況を二次元プロットし、破線の楕円で囲んで示す。
タイプ4に属していた被験者13人のうち、8年間の経過によってもタイプ4を維持していた者が12人で最多であった。残る1人は目元因子が消失してタイプ1bに移行したが、これは特徴量群の計測時の体調や表情の影響を受けたものと考えられる。また、タイプ4からタイプ3に移行した者は居なかった。このことからも、ひとたび発現した口元因子が消失することはないことが分かった。また、タイプ4の被験者の集合は全体的な傾向として図10の右方にシフトすること、すなわちタイプ4の被験者は元のタイプ4を維持しつつ目元因子の発現量が増大する傾向にあることが分かった。したがって、タイプ4の被験者に対しては目元因子の対症的手法を提示することが有効であるといえる。
図11に示すように、タイプ5の被験者は2007年時点で111人中16人であった。図6と同様に二次元プロットし、これら16人の被験者の加齢状況を一点鎖線の楕円で囲んで示す。そして同じ16人の被験者から2015年に加齢共通因子の特徴量群を取得して加齢状況を二次元プロットし、破線の楕円で囲んで示す。
タイプ5に属していた被験者16人は8年間の加齢変化によって発現因子が消失することは原則としてなく、タイプ5を維持していた。また、タイプ5の被験者の集合は全体的な傾向として、図11の右上方に更にシフトすること、すなわちタイプ5の被験者は目元因子および頬・下顎因子の発現量が更に増大する傾向にあることが分かった。したがって、タイプ5の被験者に対しては、下顎因子、口元因子、目元因子の対症的手法を提示することが特に有効であるといえる。
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。また、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的が達成される限りにおける種々の変形、改良等の態様も含む。
本発明は、上述した実施形態および実施例に関し、以下の加齢分析方法および加齢分析装置を開示する。
<1>年齢と相関のある複数の形状的特徴種に関する特徴量を被験者の顔から取得し、前記被験者の顔の加齢変化の傾向を示す加齢変化ルートを前記特徴量に基づいて複数通りから選択して決定する加齢分析方法。
<2>決定された前記加齢変化ルートと予め対応付けられた美容情報を提示する上記<1>に記載の加齢分析方法。
<3>前記美容情報は、加齢変化に対する対症的手法および予防的手法の情報を含み、複数通りの前記加齢変化ルートに前記対症的手法または前記予防的手法の少なくとも一方が対応付けられている上記<2>に記載の加齢分析方法。
<4>前記被験者の顔画像を、前記加齢変化ルートに対応付けられた加齢共通因子の発現量を増大させることによって加齢変化させた加齢顔画像を生成して提示する上記<1>から<3>のいずれか一つに記載の加齢分析方法。
<5>前記被験者の前記顔画像または前記加齢顔画像に、加齢変化に対する対症的手法または予防的手法を施した場合の予測顔画像を生成し、前記顔画像と対比して提示する上記<4>に記載の加齢分析方法。
<6>前記被験者の過去時点における前記特徴量と現在の前記特徴量とに基づいて前記被験者の加齢変化の進行度を算出する上記<1>から<5>のいずれか一つに記載の加齢分析方法。
<7>前記被験者の過去の顔画像から過去時点における前記特徴量を取得する上記<6>に記載の加齢分析方法。
<8>年齢と相関のある複数の形状的特徴種に関する特徴量を被験者の顔から取得する取得手段と、前記被験者の顔の加齢変化の傾向を示す加齢変化ルートと前記特徴量との関係を示すルート情報を記憶する記憶手段と、前記記憶手段を参照して前記加齢変化ルートを前記特徴量に基づいて複数通りから選択して決定するルート決定手段と、を備える加齢分析装置。
<9>前記形状的特徴種が、複数人の被験者から取得した三次元顔形状データ群における多数の形状的特徴種の中から、該多数の形状的特徴種に関する前記特徴量の群を説明変数群とし前記被験者の実年齢を目的変数とする重回帰分析により得られた形状的特徴種ごとの重相関係数に基づいて選別されたものであり、かつ前記三次元顔形状データ群が、同一の被験者から異なる時点でそれぞれ取得した三次元顔形状データを含むことを特徴とする上記<1>から<8>のいずれか一つに記載の加齢分析方法。
<10>前記形状的特徴種が、目尻の傾き、眉の傾き、および目の大きさ、からなる目元因子群;または、下顎の膨れ、鼻下の長さ、および唇の薄さ、からなる頬・下顎因子群よりそれぞれ選ばれる少なくとも各一つの因子である上記<1>から<9>のいずれか1つに記載の加齢分析方法。
<11>前記加齢変化ルートが、前記頬・下顎因子群に含まれる加齢共通因子のみが発現してから、前記目元因子群に含まれる加齢共通因子および前記頬・下顎因子群に含まれる加齢共通因子の両方が発現する第一変化ルートと、前記目元因子群に含まれる加齢共通因子のみが発現してから、前記目元因子群に含まれる加齢共通因子および前記頬・下顎因子群に含まれる加齢共通因子の両方が発現する第二変化ルートと、の少なくとも二つで構成されていることを特徴とする上記<10>に記載の加齢分析方法。
<12>前記記憶手段が、美容情報を前記加齢変化ルートと対応付けて記憶しており、前記記憶手段を参照し、決定された前記加齢変化ルートに基づいて前記美容情報を取得する美容情報選択手段を更に備える上記<8>に記載の加齢分析装置。
<13>前記記憶手段に記憶される前記美容情報は、加齢変化に対する対症的手法および予防的手法の情報を含み、前記美容情報選択手段は、前記加齢変化ルートに対応付けられた前記対症的手法または前記予防的手法の少なくとも一方を取得して提示する上記<12>に記載の加齢分析装置。
<14>前記取得手段が前記被験者から取得した顔画像における加齢共通因子の発現量を増大させる加齢顔画像を生成する加齢顔画像生成手段を更に備え、前記加齢顔画像生成手段は、決定された前記加齢変化ルートに対応付けられた加齢共通因子の発現量を増大させて前記加齢顔画像を生成する上記<11>から<13>のいずれか一つに記載の加齢分析装置。
<15>前記被験者の前記顔画像または前記加齢顔画像に、加齢変化に対する対症的手法または予防的手法を施した場合の予測顔画像を生成する予測顔画像生成手段を更に備える上記<14>に記載の加齢分析装置。
<16>前記被験者の過去時点における前記特徴量と現在の前記特徴量とに基づいて前記被験者の加齢変化の進行度を算出する加齢進行度算出手段を更に備える上記<11>から<15>のいずれか一つに記載の加齢分析装置。
<17>前記加齢進行度算出手段が、前記被験者の過去の顔画像から過去時点における前記特徴量を取得する上記<16>に記載の加齢分析装置。
<18>前記加齢変化ルートには、被験者の前記顔に既に発現している加齢共通因子および将来フェーズで発現する可能性の高い他の加齢共通因子が対応付けられており、前記対症的手法または前記予防的手法は前記加齢共通因子または前記他の加齢共通因子と対応付けられており、決定された前記加齢変化ルートにかかる前記加齢共通因子または前記他の加齢共通因子に対応する前記対症的手法または前記予防的手法の情報を提示する上記<13>に記載の加齢分析方法。
10 加齢分析装置
11 CPU
12 メモリ
13 送受信IF
14 入出力IF
15 入力装置
16 表示装置
21 取得部
22 ルート決定部
23 美容情報選択部
25 加齢顔画像生成部
30 予測顔画像生成部
40 加齢進行度算出部
50 記憶部
52 規格化部
54 顔成分解析部
56 算出部
58 出力処理部

Claims (8)

  1. 年齢と相関のある複数の形状的特徴種に関する特徴量を被験者の顔から取得し、前記被験者の顔の加齢変化の傾向を示す加齢変化ルートを前記特徴量に基づいて複数通りから選択して決定する加齢分析方法。
  2. 決定された前記加齢変化ルートと予め対応付けられた美容情報を提示する請求項1に記載の加齢分析方法。
  3. 前記美容情報は、加齢変化に対する対症的手法および予防的手法の情報を含み、
    複数通りの前記加齢変化ルートに前記対症的手法または前記予防的手法の少なくとも一方が対応付けられている請求項2に記載の加齢分析方法。
  4. 前記被験者の顔画像を、前記加齢変化ルートに対応付けられた加齢共通因子の発現量を増大させることによって加齢変化させた加齢顔画像を生成して提示する請求項1から3のいずれか一項に記載の加齢分析方法。
  5. 前記被験者の前記顔画像または前記加齢顔画像に、加齢変化に対する対症的手法または予防的手法を施した場合の予測顔画像を生成し、前記顔画像と対比して提示する請求項4に記載の加齢分析方法。
  6. 前記被験者の過去時点における前記特徴量と現在の前記特徴量とに基づいて前記被験者の加齢変化の進行度を算出する請求項1から5のいずれか一項に記載の加齢分析方法。
  7. 前記被験者の過去の顔画像から過去時点における前記特徴量を取得する請求項6に記載の加齢分析方法。
  8. 年齢と相関のある複数の形状的特徴種に関する特徴量を被験者の顔から取得する取得手段と、前記被験者の顔の加齢変化の傾向を示す加齢変化ルートと前記特徴量との関係を示すルート情報を記憶する記憶手段と、前記記憶手段を参照して前記加齢変化ルートを前記特徴量に基づいて複数通りから選択して決定するルート決定手段と、を備える加齢分析装置。
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