JP2018069987A - 空気入りタイヤ - Google Patents

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Abstract

【課題】耐久性能の低下の抑制と、氷上及び雪上における制動性能の低下の抑制とを両立できる空気入りタイヤを提供する。【解決手段】空気入りタイヤは、サイプが設けられたトレッドゴムを備える。サイプは、サイプ開口と接続される狭隘部と、狭隘部よりもタイヤ径方向内側に配置される底部と、を有する。狭隘部は、タイヤ周方向においてサイプ開口の一方の端部と接続される第1内面と、サイプ開口の他方の端部と接続され第1内面と間隙を介して対向する第2内面と、を含む。底部は、第1内面と接続されタイヤ周方向において一方側に凹む第1凹面と、第2内面と接続されタイヤ周方向において他方側に凹む第2凹面と、を含む。第1凹面及び第2凹面はそれぞれ円弧状である。断面における第1凹面の曲率半径と第2凹面の曲率半径とは異なる。第2凹面は、第1凹面よりもブロック端に近い位置に配置される。【選択図】図6

Description

本発明は、空気入りタイヤに関する。
特許文献1及び特許文献2に開示されているように、トレッドゴムにサイプが設けられた空気入りタイヤが知られている。
特許第3208417号公報 特許第4980656号公報
サイプがトレッドゴムに設けられることによって、エッジ効果が向上し、氷上における空気入りタイヤの制動性能が向上する。一方、サイプに起因して空気入りタイヤの耐久性能が低下する可能性がある。
また、空気入りタイヤが雪上を走行した場合、サイプに雪が入り込む可能性がある。サイプに雪が詰まった状態が維持されると、雪上における空気入りタイヤの制動性能が低下する可能性がある。近年においては、サイプに雪が詰まることに起因する空気入りタイヤの制動性能の低下を抑制できる技術の案出が要望されている。
本発明の態様は、耐久性能の低下の抑制と、氷上及び雪上における制動性能の低下の抑制とを両立できる空気入りタイヤを提供することを目的とする。
本発明の態様に従えば、車両に装着された状態で回転軸を中心に回転する空気入りタイヤであって、トレッド部を有するトレッドゴムと、前記トレッドゴムに設けられたサイプと、を備え、前記トレッド部において、タイヤ幅方向両側にトレッド接地端が規定され、タイヤ幅方向中心にタイヤ赤道線が規定され、一方の前記トレッド接地端と他方の前記トレッド接地端との距離を示すトレッド接地幅をTWとしたとき、前記サイプは、一方の前記トレッド接地端と一方の前記トレッド接地端から前記タイヤ赤道線側に0.3×TWの距離の部位との間の前記トレッドゴムのブロックと、他方の前記トレッド接地端と他方の前記トレッド接地端から前記タイヤ赤道線側に0.3×TWの距離の部位との間の前記トレッドゴムのブロックとのそれぞれに設けられ、前記ブロックにおいて、タイヤ周方向両側にブロック端が規定され、一方の前記ブロック端と他方の前記ブロック端との距離を示すブロック長をBLとしたとき、前記サイプは、一方の前記ブロック端と一方の前記ブロック端から前記ブロックの中心側に0.4×BLの距離の部位との間の前記ブロックの第1部位と、他方の前記ブロック端と他方の前記ブロック端から前記ブロックの中心側に0.4×BLの距離の部位との間の前記ブロックの第2部位とのそれぞれに設けられ、前記サイプは、サイプ開口と接続される狭隘部と、前記狭隘部よりもタイヤ径方向内側に配置される底部と、を有し、前記狭隘部は、タイヤ周方向において前記サイプ開口の一方の端部と接続される第1内面と、前記サイプ開口の他方の端部と接続され前記第1内面と間隙を介して対向する第2内面と、を含み、前記底部は、前記第1内面と接続されタイヤ周方向において一方側に凹む第1凹面と、前記第2内面と接続されタイヤ周方向において他方側に凹む第2凹面と、を含み、前記回転軸と直交する前記サイプの断面において、前記第1凹面及び前記第2凹面のそれぞれは少なくとも一部が円弧状であり、前記断面における前記第1凹面の曲率半径と前記第2凹面の曲率半径とは異なり、前記断面における前記第1凹面の曲率半径をr、前記第2凹面の曲率半径をR、前記タイヤ周方向の前記サイプ開口の第1寸法をLとしたとき、
5.0L ≧ R > r ≧ 0.5L …(1)
5.0r ≧ R ≧ 1.1r …(2)
の条件を満足し、前記サイプは、前記第1部位において、前記第2凹面が前記第1凹面よりも一方の前記ブロック端に近い位置に配置されるように設けられ、前記第2部位において、前記第2凹面が前記第1凹面よりも他方の前記ブロック端に近い位置に配置されるように設けられる、空気入りタイヤが提供される。
本発明の態様によれば、トレッドゴムにサイプが設けられることにより、サイプのエッジ効果によって、氷上における空気入りタイヤの制動性能の低下が抑制される。また、曲率半径が異なる第1凹面と第2凹面とによってサイプの底部が形成されるので、サイプの底部においてトレッドゴムに作用する応力が分散される。応力が分散されることにより、トレッドゴムにクラックが発生することが抑制される。そのため、空気入りタイヤの耐久性能の低下が抑制される。
また、曲率半径が異なる第1凹面と第2凹面とによってサイプの底部が形成されるので、タイヤ周方向においてサイプの一方側に配置されるトレッドゴムの第1部分の振動モードと他方側に配置されるトレッドゴムの第2部分の振動モードとに差異が発生する。サイプを挟んだトレッドゴムの第1部分の振動モードと第2部分の振動モードとが異なるので、サイプに雪が入り込んだ場合、そのサイプに入り込んだ雪は、異なる振動モードで振動するトレッドゴムの第1部分と第2部分との相対的な動きにより、サイプから円滑に排出される。サイプからの雪の排出性能が向上するので、サイプに雪が入り込んでも、サイプに雪が詰まった状態が維持されることが抑制される。そのため、雪上における空気入りタイヤの制動性能の低下が抑制される。
また、(1)式の条件を満足することにより、空気入りタイヤの耐久性能の低下及び制動性能の低下が抑制される。第2凹面の曲率半径Rが第1凹面の曲率半径rよりも大きい場合[R>rである場合]において、[5.0L ≧ R]の条件を満足しない場合、すなわちサイプ開口の寸法Lに対して曲率半径Rが大き過ぎる場合、トレッドゴムの剛性(ブロック剛性)が低下する。その結果、空気入りタイヤの耐久性能及び制動性能が低下する。また、[r ≧ 0.5L]の条件を満足しない場合、すなわちサイプ開口の寸法Lに対して曲率半径rが小さ過ぎる場合、第1凹面は第1内面に対して十分に凹んだ状態とならず、サイプの底部においてトレッドゴムにクラックが発生する可能性が高くなる。また、第1凹面が第1内面に対して十分に凹んでいないと、サイプを挟んだトレッドゴムの第1部分及び第2部分のうち第1凹面を含む第1部分が十分に動かなくなる可能性がある。その結果、サイプからの雪の排出性能が低下し、雪上における空気入りタイヤの制動性能が低下する。(1)式の条件を満足することにより、空気入りタイヤの耐久性能及び制動性能の低下が抑制される。
また、(2)式の条件を満足することにより、空気入りタイヤの耐久性能及び制動性能はより向上する。[5.0r ≧ R]の条件を満足しない場合、すなわち曲率半径rに対して曲率半径Rが大き過ぎる場合又は曲率半径Rに対して曲率半径rが小さ過ぎる場合、応力が作用する部位が第1凹面及び第2凹面のいずれか一方に偏り過ぎてしまい、適切な応力分散効果を得ることが困難となる。その結果、空気入りタイヤの耐久性能が低下する。また、[R ≧ 1.1r]の条件を満足しない場合、すなわち曲率半径Rと曲率半径rとが近似する場合、サイプを挟んだトレッドゴムの第1部分の振動モードと第2部分の振動モードとが近似することとなる。その結果、サイプからの雪の排出性能が低下し、雪上における空気入りタイヤの制動性能が低下する。(2)式の条件を満足することにより、空気入りタイヤの耐久性能及び制動性能はより向上する。
また、ショルダー部に設けられるトレッドゴムのブロックにおいて、応力集中はブロック端に近い部位に発生することが多い。第2凹面が第1凹面よりもブロック端に近い位置に配置されることにより、応力集中が効果的に低減され、空気入りタイヤの耐久性能は向上する。また、第1部位及び第2部位よりも広い範囲にサイプが設けられると、ブロック剛性が低下する可能性がある。第1部位及び第2部位の範囲にサイプが設けられることにより、ブロック剛性の低下が抑制され、空気入りタイヤの氷上制動性能及び耐久性能の低下が抑制される。
本発明の態様において、前記第1部位において、前記タイヤ周方向に複数のサイプが設けられ、前記第2部位において、前記タイヤ周方向に複数のサイプが設けられ、前記第1部位及び前記第2部位のそれぞれにおいて、隣り合う前記サイプの深さが異なることが好ましい。
これにより、応力が分散され、トレッドゴムにクラックが発生することが抑制される。また、隣り合うサイプの深さが異なることにより、隣り合う一方のサイプの底部にクラックが発生しても、他方のサイプに伝播することが抑制され、クラックの成長が抑制される。
本発明の態様において、前記断面において、前記第1凹面と前記第2凹面との境界は、前記第1内面と前記第2内面との中央を通りタイヤ径方向に延在する中心線に設けられ、前記断面における前記底部の形状は、実質的に楕円形状であることが好ましい。
これにより、底部には、タイヤ周方向において一方側と他方側とのそれぞれに大きい空間が形成されるので、空気入りタイヤが氷上を走行した場合、サイプは氷の水分を十分に吸い上げることができる。そのため、氷上における空気入りタイヤの制動性能は向上する。
本発明の態様において、前記第1凹面のタイヤ径方向内側の端部と前記第2凹面のタイヤ径方向内側の端部との間において前記サイプのタイヤ幅方向の一部に設けられ、タイヤ径方向外側に突出する底上げ部を備え、前記第2内面と前記第2凹面との境界は、前記第1内面と前記第1凹面との境界よりもタイヤ径方向外側に配置され、タイヤ径方向の最も外側の前記底上げ部の外端部は、タイヤ径方向において、前記第2内面と前記第2凹面との境界と、前記サイプ開口との間に配置されることが好ましい。
サイプの一部に底上げ部が設けられることにより、底上げ部が設けられた溝浅部分においてはサイプの深さが浅くなり、底上げ部が設けられていない溝深部分においてはサイプの深さが溝浅部分よりも深くなる。1つのサイプにおいて深さが異なる溝浅部分及び溝深部分が設けられることにより、サイプの底部においてトレッドゴムに作用する応力が分散される。応力が分散されることにより、トレッドゴムにクラックが発生することが抑制される。そのため、空気入りタイヤの耐久性能の低下が抑制される。
本発明の態様によれば、耐久性能の低下の抑制と、氷上及び雪上における制動性能の低下の抑制とを両立できる空気入りタイヤが提供される。
図1は、第1実施形態に係る空気入りタイヤが装着される車両の一例を示す側面図である。 図2は、第1実施形態に係る空気入りタイヤが装着される車両の一例を後方から見た図である。 図3は、第1実施形態に係るタイヤの一部を示す断面図である。 図4は、第1実施形態に係るトレッド部の一部を示す平面図である。 図5は、第1実施形態に係るサイプが設けられた陸部を模式的に示す斜視図である。 図6は、第1実施形態に係るサイプが設けられた陸部を模式的に示す断面図である。 図7は、第1実施形態に係るサイプが設けられたブロックを模式的に示す断面図である。 図8は、第2実施形態に係るサイプが設けられたブロックを模式的に示す断面図である。 図9は、第3実施形態に係るサイプが設けられた陸部を模式的に示す斜視図である。 図10は、第3実施形態に係るサイプが設けられた陸部を模式的に示す断面図である。 図11は、本実施形態に係るタイヤの評価試験結果を示す図である。
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されない。以下で説明する実施形態の構成要素は、適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。
第1実施形態.
[車両及び空気入りタイヤ]
第1実施形態について説明する。図1は、本実施形態に係るタイヤ1が装着される車両500の一例を示す側面図である。図2は、本実施形態に係るタイヤ1が装着される車両500の一例を後方から見た図である。
タイヤ1は、空気入りタイヤである。本実施形態において、タイヤ1は、乗用車用タイヤである。乗用車用タイヤとは「JATMA YEAR BOOK 2015(日本自動車タイヤ協会規格)」のA章に定められるタイヤをいう。なお、タイヤ1はB章に定められる小型トラック用タイヤでもよいし、C章に定められるトラック及びバス用タイヤでもよい。
図1及び図2に示すように、車両500は、タイヤ1を含む走行装置501と、走行装置501に支持される車体502と、走行装置501を駆動するためのエンジン503とを備える。
走行装置501は、タイヤ1を支持するホイール504と、ホイール504を支持する車軸505と、走行装置501の進行方向を変えるための操舵装置506と、走行装置501を減速又は停止させるためのブレーキ装置507とを有する。
車体502は、運転者が搭乗する運転室を有する。運転室に、エンジン503の出力を調整するためのアクセルペダルと、ブレーキ装置507を作動するためのブレーキペダルと、操舵装置506を操作するためのステアリングホイールとが配置される。運転者は、アクセルペダル、ブレーキペダル、及びステアリングホイールを操作する。運転者の操作により、車両500は走行する。
タイヤ1は、車両500のホイール504のリムに装着される。タイヤ1は、車両500に装着された状態で、回転軸AXを中心に回転して、路面RSを走行する。
以下の説明においては、タイヤ1の回転軸AXと平行な方向を適宜、タイヤ幅方向、と称し、タイヤ1の回転軸AXに対する放射方向を適宜、タイヤ径方向、と称し、タイヤ1の回転軸AXを中心とする回転方向を適宜、タイヤ周方向、と称する。
また、以下の説明においては、タイヤ幅方向におけるタイヤ1の中心を適宜、タイヤ赤道面CF、と称する。タイヤ赤道面CFは、タイヤ幅方向におけるタイヤ1の中心を通り、回転軸AXと直交する平面である。また、タイヤ幅方向におけるタイヤ1のトレッド部6の表面の中心を適宜、タイヤ赤道線CL、と称する。タイヤ赤道線CLは、トレッド部6の表面においてタイヤ赤道面CFとタイヤ1のトレッド部6の表面とが交差するセンターラインである。
また、以下の説明においては、タイヤ幅方向においてタイヤ赤道面CFから遠い位置又は離れる方向を適宜、タイヤ幅方向外側、と称し、タイヤ幅方向においてタイヤ赤道面CFに近い位置又は近付く方向を適宜、タイヤ幅方向内側、と称し、タイヤ径方向において回転軸AXから遠い位置又は離れる方向を適宜、タイヤ径方向外側、と称し、タイヤ径方向において回転軸AXに近い位置又は近付く方向を適宜、タイヤ径方向内側、と称し、タイヤ周方向において指定された一つの方向を適宜、タイヤ周方向一方側、と称し、タイヤ周方向において指定された方向の逆方向を適宜、タイヤ周方向他方側、と称する。
また、以下の説明においては、車両500の車幅方向内側を適宜、車両内側、と称し、車両500の車幅方向外側を適宜、車両外側、と称する。車両内側とは、車両500の車幅方向において車両500の中心に近い位置又は近付く方向をいう。車両外側とは、車両500の車幅方向において車両500の中心から遠い位置又は離れる方向をいう。
車両500は、4輪車両である。走行装置501は、車体502の左側に設けられる左前輪及び左後輪と、車体502の右側に設けられる右前輪及び右後輪とを有する。タイヤ1は、車体502の左側に装着される左タイヤ1Lと、車体502の右側に装着される右タイヤ1Rとを含む。
タイヤ1は、トレッドパターンが形成されたトレッド部6と、トレッド部6のタイヤ幅方向両側に設けられるサイド部7とを備える。タイヤ1の走行において、トレッド部6が路面RSと接触する。
回転軸AXを中心とするタイヤ1の回転方向が指定される場合がある。回転方向が指定されているタイヤ1の場合、車両500の前進時において回転軸AXを中心に指定された回転方向に回転するように、タイヤ1が車両500に装着される。左タイヤ1Lは、車両500の左側に装着された状態で、車両500の前進時において指定された回転方向に回転する。右タイヤ1Rは、車両500の右側に装着された状態で、車両500の前進時において指定された回転方向に回転する。
また、車両500に対するタイヤ1の装着方向が指定される場合がある。例えばトレッド部6のトレッドパターンが非対称パターンである場合、車両500に対するタイヤ1の装着方向が指定される。左タイヤ1Lは、2つのサイド部7のうち指定された一方のサイド部7が車両内側を向き、他方のサイド部7が車両外側を向くように、車両500の左側に装着される。右タイヤ1Rは、2つのサイド部7のうち指定された一方のサイド部7が車両内側を向き、他方のサイド部7が車両外側を向くように、車両500の右側に装着される。
回転方向又は車両500に対する装着方向が指定されている場合、そのタイヤ1には、指定された回転方向又は車両500に対する装着方向を示す表示部600が設けられる。表示部600は、2つのサイド部7のうち少なくとも一方のサイド部7に設けられる。表示部600は、回転方向又は車両500に対する装着方向を示すセリアル記号を含む。表示部600は、マーク、文字、符号、及び模様の少なくとも一つを含む。タイヤ1の回転方向を示す表示部600の例として、例えば回転方向を示す矢印又は「ROTATION」のような文字が挙げられる。車両500に対するタイヤ1の装着方向を示す表示部600の例として、例えば「OUTSIDE」又は「INSIDE」のような文字が挙げられる。ユーザは、サイド部7に設けられている表示部600に基づいて、タイヤ1の回転方向又は車両500に対するタイヤ1の装着方向を認識することができる。表示部600に基づいて、車両500の前進時において回転軸AXを中心に指定された回転方向に回転するようにタイヤ1が車両500に装着されたり、左タイヤ1Lが車両500の左側に装着され右タイヤ1Rが車両500の右側に装着されたりする。
なお、タイヤ1の回転方向及び車両500に対するタイヤ1の装着方向が指定されない場合もある。その場合、タイヤ1に表示部600は設けられなくてもよい。
[空気入りタイヤ]
次に、本実施形態に係るタイヤ1について説明する。図3は、本実施形態に係るタイヤ1の一部を示す断面図である。図3は、タイヤ1の回転軸AXを通る子午断面を示す。
タイヤ1は、カーカス2と、ベルト層3と、ベルトカバー4と、ビード部5と、トレッド部6を有するトレッドゴム8と、サイド部7を有するサイドゴム9とを備える。
カーカス2は、タイヤ1の骨格を形成する強度部材である。カーカス2は、カーカスコードを含み、タイヤ1に空気が充填されたときの圧力容器として機能する。カーカス2は、有機繊維のカーカスコードと、そのカーカスコードを覆うゴムとを含む。なお、カーカス2は、ポリエステルのカーカスコードを含んでもよいし、ナイロンのカーカスコードを含んでもよいし、アラミドのカーカスコードを含んでもよいし、レーヨンのカーカスコードを含んでもよい。
ビード部5は、カーカス2を支持する強度部材である。ビード部5は、タイヤ1をリムに固定させる。ビード部5は、ビードコア5Aと、ビードフィラー5Bとを有する。ビード部5は、タイヤ幅方向においてカーカス2の両側に配置され、カーカス2の両端部を支持する。カーカス2は、ビード部5のビードコア5Aにおいて折り返される。
ベルト層3は、タイヤ1の形状を保持する強度部材である。ベルト層3は、ベルトコードを含み、カーカス2とトレッドゴム8との間に配置される。ベルト層3は、金属繊維のベルトコードと、そのベルトコードを覆うゴムとを含む。なお、ベルト層3は、有機繊維のベルトコードを含んでもよい。ベルト層3は、第1ベルトプライ3Aと、第2ベルトプライ3Bとを含む。第1ベルトプライ3Aと第2ベルトプライ3Bとは、第1ベルトプライ3Aのベルトコードと第2ベルトプライ3Bのベルトコードとが交差するように積層される。
ベルトカバー4は、ベルト層3を保護し、補強する強度部材である。ベルトカバー4は、カバーコードを含み、タイヤ1の回転軸AXに対してベルト層3の外側に配置される。ベルトカバー4は、金属繊維のカバーコードと、そのカバーコードを覆うゴムとを含む。なお、ベルトカバー4は、有機繊維のカバーコードを含んでもよい。
トレッド部6は、トレッドゴム8を含む。トレッドゴム8は、カーカス2を保護する。サイド部7は、サイドゴム9を含む。サイド部7は、タイヤ幅方向においてトレッド部6の両側に配置される。サイドゴム9は、カーカス2を保護する。
トレッド部6において、タイヤ幅方向両側にトレッド接地端Tが規定され、タイヤ幅方向中心にタイヤ赤道線CLが規定される。トレッド接地端Tとは、タイヤ1を正規リムにリム組みして、正規内圧を充填して、平面上に垂直に置いて、正規荷重を加えた負荷状態のときにトレッド部6が接地する部分のタイヤ幅方向の端部をいう。トレッド接地端Tは、トレッド部6においてタイヤ幅方向両側に規定される。タイヤ幅方向においてタイヤ赤道線CLよりも一方側のトレッド接地端Tと他方側のトレッド接地端Tとの距離は、トレッド接地幅TWと呼ばれる。
「正規リム」とは、タイヤ1が基づく規格を含む規格体系において、その規格がタイヤ1毎に定めているリムであり、JATMAであれば標準リム、TRAであれば“Design Rim”、ETRTOであれば“Measuring Rim”である。但し、タイヤ1が新車装着タイヤの場合には、このタイヤ1が組まれる純正ホイールを用いる。
「正規内圧」とは、タイヤ1が基づく規格を含む規格体系において、その規格がタイヤ1毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば最高空気圧、TRAであれば表“TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES”に記載の最大値、ETRTOであれば“INFLATION PRESSURE”である。但し、タイヤ1が新車装着タイヤの場合には、車両に表示された空気圧とする。
「正規荷重」とは、タイヤ1が基づく規格を含む規格体系において、その規格がタイヤ1毎に定めている荷重であり、JATMAであれば最大負荷能力、TRAであれば表“TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES”に記載の最大値、ETRTOであれば“LOAD CAPACITY”である。但し、タイヤ1が乗用車である場合には前記荷重の88[%]に相当する荷重とする。タイヤ1が新車装着タイヤの場合には、車両の車検証記載の前後軸重をそれぞれタイヤの数で除して求めた輪荷重とする。
図4は、本実施形態に係るトレッド部6の一部を示す平面図である。図3及び図4に示すように、トレッドゴム8に所定のパターンデザインで溝10が設けられる。溝10は、周方向主溝11及びラグ溝12を含む。また、トレッドゴム8にサイプ13が設けられる。
周方向主溝11とは、少なくとも一部がタイヤ周方向に延在する縦溝をいう。周方向主溝11は、1.0[mm]以上の溝幅を有し、4.0[mm]以上の溝深さを有する溝である。なお一般に、周方向主溝11は、6.0[mm]以上の溝幅を有し、7.0[mm]以上の溝深さを有する。周方向主溝11は、内部にトレッドウェアインジケータ(スリップサイン)を有する。トレッドウェアインジケータは、摩耗末期を示す。周方向主溝11は、タイヤ赤道面CFとトレッド部6とが交差するタイヤ赤道線(センターライン)と実質的に平行である。周方向主溝11は、タイヤ周方向に直線状に延在してもよいし、波形状又はジグザグ状に設けられてもよい。
ラグ溝12とは、少なくとも一部がタイヤ幅方向に延在する横溝をいう。ラグ溝12は、2.0[mm]以上の溝幅を有し、3.0[mm]以上の溝深さを有する溝である。ラグ溝12は、そのラグ溝12が接地したと仮定したとき、接地した場合においてもラグ溝12の開口が維持される溝である。ラグ溝12は、タイヤ赤道線に対して傾斜してもよい。
サイプ13とは、ラグ溝12よりも細い溝幅を有し、ラグ溝12よりも浅い溝深さを有する溝をいう。なお一般に、サイプ13は、1.5[mm]以下の溝幅を有し、2.5[mm]以下の溝深さを有する。サイプ13は、そのサイプ13が接地したと仮定したとき、トレッドゴム8の弾性変形によりサイプ13の開口が閉じる溝である。サイプ13は、タイヤ幅方向に延在してもよいし、タイヤ周方向に延在してもよい。サイプ13は、タイヤ幅方向及びタイヤ周方向の少なくとも一方の方向に直線状に延在してもよいし、波形状又はジグザグ状に設けられてもよい。サイプ13は、タイヤ赤道線に対して傾斜してもよい。
本実施形態において、周方向主溝11は、タイヤ幅方向に4つ設けられる。周方向主溝11は、タイヤ赤道線CLの両側に設けられた一対のセンター主溝11A,11Bと、センター主溝11A,11Bよりもタイヤ幅方向外側に設けられた一対のショルダー主溝11C,11Dと、を含む。本実施形態において、センター主溝11A、センター主溝11B、ショルダー主溝11C、及びショルダー主溝11Dのそれぞれは、タイヤ赤道線と実質的に平行な直線状である。
トレッドゴム8は、センター主溝11Aとセンター主溝11Bとの間に設けられたセンター陸部20Aと、センター主溝11Aとショルダー主溝11Cとの間に設けられたミドル陸部20Bと、センター主溝11Bとショルダー主溝11Dとの間に設けられたミドル陸部20Cと、ショルダー主溝11Cよりもタイヤ幅方向外側に設けられたショルダー陸部20Dと、ショルダー主溝11Dよりもタイヤ幅方向外側に設けられたショルダー陸部20Eと、を含む。
ラグ溝12は、タイヤ周方向に複数設けられる。ラグ溝12は、タイヤ周方向においてミドル陸部20B及びショルダー陸部20Dを分断する第1ラグ溝12Aと、タイヤ周方向においてショルダー陸部20Dを分断しミドル陸部20Bを分断しない第2ラグ溝12Bと、タイヤ周方向においてミドル陸部20C及びショルダー陸部20Eを分断する第3ラグ溝12Cと、タイヤ周方向においてショルダー陸部20Eを分断しミドル陸部20Cを分断しない第4ラグ溝12Dと、を含む。第1ラグ溝12Aと第2ラグ溝12Bとは、タイヤ幅方向においてタイヤ赤道線CLよりも一方側においてタイヤ周方向に交互に設けられる。第3ラグ溝12Cと第4ラグ溝12Dとは、タイヤ幅方向においてタイヤ赤道線CLよりも他方側においてタイヤ周方向に交互に設けられる。
第1ラグ溝12Aのタイヤ幅方向外側の端部は、トレッド接地端Tよりもタイヤ幅方向外側に配置される。第1ラグ溝12Aのタイヤ幅方向内側の端部は、センター陸部20Aに配置される。すなわち、第1ラグ溝12Aのタイヤ幅方向内側の端部は、センター陸部20Aで終端する。第1ラグ溝12Aは、センター陸部20A及びミドル陸部20Bにおいて、タイヤ幅方向外側に向かってタイヤ周方向の一方側に傾斜するように設けられる。また、第1ラグ溝12Aは、ショルダー陸部20Dにおいて、タイヤ幅方向と実質的に平行に設けられる。
第2ラグ溝12Bのタイヤ幅方向外側の端部は、トレッド接地端Tよりもタイヤ幅方向外側に配置される。第2ラグ溝12Bのタイヤ幅方向内側の端部は、ミドル陸部20Bに配置される。すなわち、第2ラグ溝12Bのタイヤ幅方向内側の端部は、ミドル陸部20Bで終端する。ミドル陸部20Bは、第1ラグ溝12Aによって分断されるものの、第2ラグ溝12Bによっては分断されない。第2ラグ溝12Bは、ミドル陸部20Bにおいて、タイヤ幅方向外側に向かってタイヤ周方向の一方側に傾斜するように設けられる。また、第2ラグ溝12Bは、ショルダー陸部20Dにおいて、タイヤ幅方向と実質的に平行に設けられる。
第3ラグ溝12Cのタイヤ幅方向外側の端部は、トレッド接地端Tよりもタイヤ幅方向外側に配置される。第3ラグ溝12Cのタイヤ幅方向内側の端部は、センター陸部20Aに配置される。すなわち、第3ラグ溝12Cのタイヤ幅方向内側の端部は、センター陸部20Aで終端する。第3ラグ溝12Cは、センター陸部20A及びミドル陸部20Cにおいて、タイヤ幅方向外側に向かってタイヤ周方向の一方側に傾斜するように設けられる。また、第3ラグ溝12Cは、ショルダー陸部20Eにおいて、タイヤ幅方向と実質的に平行に設けられる。
第4ラグ溝12Dのタイヤ幅方向外側の端部は、トレッド接地端Tよりもタイヤ幅方向外側に配置される。第4ラグ溝12Dのタイヤ幅方向内側の端部は、ミドル陸部20Cに配置される。すなわち、第4ラグ溝12Dのタイヤ幅方向内側の端部は、ミドル陸部20Cで終端する。ミドル陸部20Cは、第3ラグ溝12Cによって分断されるものの、第4ラグ溝12Dによっては分断されない。第4ラグ溝12Dは、ミドル陸部20Cにおいて、タイヤ幅方向外側に向かってタイヤ周方向の一方側に傾斜するように設けられる。また、第4ラグ溝12Dは、ショルダー陸部20Eにおいて、タイヤ幅方向と実質的に平行に設けられる。
ミドル陸部20Bには、周方向主溝11よりも溝幅が細い縦溝14が設けられる。縦溝14は、タイヤ赤道線に対して傾斜するように設けられる。縦溝14は、タイヤ周方向の他方側に向かってタイヤ幅方向外側に傾斜するように設けられる。縦溝14は、タイヤ周方向において隣り合う第2ラグ溝12Bを結ぶように設けられる。また、縦溝14は、タイヤ周方向において隣り合う第2ラグ溝12Bの間に設けられた第1ラグ溝12Aとも接続される。縦溝14は、縦溝14のタイヤ周方向の中央部が第1ラグ溝12Aと交差するように設けられる。タイヤ周方向において縦溝14の一方側の端部は、タイヤ周方向において隣り合う第2ラグ溝12Bのうち一方側の第2ラグ溝12Bと接続される。タイヤ周方向において縦溝14の他方側の端部は、タイヤ周方向において隣り合う第2ラグ溝12Bのうち他方側の第2ラグ溝12Bと接続される。一方側の第2ラグ溝12Bにおいては、第2ラグ溝12Bの内側の端部よりもタイヤ幅方向外側の部位が縦溝14と接続される。他方側の第2ラグ溝12Bにおいては、第2ラグ溝12Bの内側の端部が縦溝14と接続される。
ミドル陸部20Cには、周方向主溝11よりも溝幅が細い縦溝15が設けられる。縦溝15は、タイヤ赤道線に対して傾斜するように設けられる。縦溝15は、タイヤ周方向の他方側に向かってタイヤ幅方向外側に傾斜するように設けられる。縦溝15は、タイヤ周方向において隣り合う第4ラグ溝12Dを結ぶように設けられる。また、縦溝15は、タイヤ周方向において隣り合う第4ラグ溝12Dの間に設けられた第3ラグ溝12Cとも接続される。縦溝15は、縦溝15のタイヤ周方向の中央部が第3ラグ溝12Cと交差するように設けられる。タイヤ周方向において縦溝15の一方側の端部は、タイヤ周方向において隣り合う第4ラグ溝12Dのうち一方側の第4ラグ溝12Dと接続される。タイヤ周方向において縦溝15の他方側の端部は、タイヤ周方向において隣り合う第4ラグ溝12Dのうち他方側の第4ラグ溝12Dと接続される。一方側の第4ラグ溝12Dにおいては、第4ラグ溝12Dの内側の端部よりもタイヤ幅方向外側の部位が縦溝15と接続される。他方側の第4ラグ溝12Dにおいては、第4ラグ溝12Dの内側の端部が縦溝15と接続される。
センター陸部20Aは、ラグ溝12によって分断されず、トレッドゴム8のリブを形成する。
ミドル陸部20Bは、第1ラグ溝12Aによって分断され、トレッドゴム8のブロック列を形成する。また、ミドル陸部20Bには縦溝14が設けられている。ミドル陸部20Bのトレッドゴム8が第1ラグ溝12Aと縦溝14とで区画されることによって、センター主溝11Aとショルダー主溝11Cとの間に、トレッドゴム8の複数のブロックが形成される。
ミドル陸部20Cは、第3ラグ溝12Cによって分断され、ブロック列を形成する。また、ミドル陸部20Cには縦溝15が設けられている。ミドル陸部20Cのトレッドゴム8が第3ラグ溝12Cと縦溝15とで区画されることによって、センター主溝11Bとショルダー主溝11Dとの間に、トレッドゴム8の複数のブロックが形成される。
ショルダー陸部20Dは、第1ラグ溝12A及び第2ラグ溝12Bによって分断され、ブロック列を形成する。ショルダー陸部20Dのトレッドゴム8が第1ラグ溝12Aと第2ラグ溝12Bとで区画されることによって、ショルダー主溝11Cよりもタイヤ幅方向外側に、トレッドゴム8の複数のブロックが形成される。
ショルダー陸部20Eは、第3ラグ溝12C及び第4ラグ溝12Dによって分断され、ブロック列を形成する。ショルダー陸部20Eのトレッドゴム8が第3ラグ溝12Cと第4ラグ溝12Dとで区画されることによって、ショルダー主溝11Dよりもタイヤ幅方向外側に、トレッドゴム8の複数のブロックが形成される。
以下の説明においては、トレッドゴム8のリブ及びブロックを総称して適宜、トレッドゴム8の陸部20、と称する。陸部20は、路面と接触可能な表面21を有する。
サイプ13は、複数の陸部20のそれぞれに複数設けられる。サイプ13は、そのサイプ13の両端部が陸部20を区画する周方向主溝11又はラグ溝12と接続されその陸部20を貫通するオープン構造でもよい。サイプ13は、そのサイプ13の一方の端部が陸部20を区画する周方向主溝11又はラグ溝12と接続され、他方の端部が接続されずにその陸部20で終端するセミクローズド構造でもよい。サイプ13は、そのサイプ13の両端部が陸部20を区画する周方向主溝11又はラグ溝12と接続されずにその陸部20で終端するクローズド構造でもよい。
本実施形態において、サイプ13は、センター陸部20Aとミドル陸部20Bとミドル陸部20Cとを含むトレッド部6のセンター部16と、ショルダー陸部20Dとショルダー陸部20Eとを含むトレッド部6のショルダー部17とのそれぞれに設けられる。
本実施形態において、タイヤ幅方向のセンター部16の寸法TCは、トレッド接地幅TWの40[%]である(TC=0.4×TW)。タイヤ赤道線CLと、センター部16のタイヤ幅方向一方側の端部とのタイヤ幅方向の寸法TC1は、トレッド接地幅TWの20[%]である(TC1=0.2×TW)。タイヤ赤道線CLと、センター部16のタイヤ幅方向他方側の端部とのタイヤ幅方向の寸法TC2は、トレッド接地幅TWの20[%]である(TC2=0.2×TW)。寸法TC1,TC2は、タイヤ幅方向のタイヤ赤道線CLと、タイヤ赤道線CLからタイヤ幅方向外側に0.2×TWの距離の部位とのタイヤ幅方向の距離である。
本実施形態において、トレッド接地端Tからタイヤ幅方向内側におけるタイヤ幅方向のショルダー部17の寸法TS(TS1,TS2)は、トレッド接地幅TWの30[%]である(TS=0.3×TW)。寸法TSは、トレッド接地端Tと、トレッド接地端Tからタイヤ赤道線CL側に0.3×TWの距離の部位とのタイヤ幅方向の距離である。すなわち、タイヤ幅方向一方側のショルダー部17において、そのショルダー部17のタイヤ幅方向内側の端部とタイヤ幅方向一方側のトレッド接地端Tとのタイヤ幅方向の寸法TS1は、トレッド接地幅TWの30[%]である(TS1=0.3×TW)。タイヤ幅方向他方側のショルダー部17において、そのショルダー部17のタイヤ幅方向内側の端部とタイヤ幅方向他方側のトレッド接地端Tとのタイヤ幅方向の寸法TS2は、トレッド接地幅TWの30[%]である(TS2=0.3×TW)。
センター陸部20Aのリブのうち、タイヤ赤道線CLよりもタイヤ幅方向の一方側において、サイプ13は、タイヤ周方向に複数設けられる。そのサイプ13の一方側の端部はセンター主溝11Aと接続され、他方側の端部はセンター陸部20Aで終端する。そのサイプ13の他方側の端部は、タイヤ赤道線CLにおいて終端する。
センター陸部20Aのリブのうち、タイヤ赤道線CLよりもタイヤ幅方向の他方側において、サイプ13は、タイヤ周方向に複数設けられる。そのサイプ13の他方側の端部はセンター主溝11Bと接続され、一方側の端部はセンター陸部20Aで終端する。そのサイプ13の一方側の端部は、タイヤ赤道線CLにおいて終端する。
すなわち、本実施形態において、センター陸部20Aのリブに設けられるサイプ13は、セミクローズド構造である。
ミドル陸部20Bの1つのブロックにおいて、サイプ13は、タイヤ周方向に複数設けられる。ミドル陸部20Bの1つのブロックにおいて、最もタイヤ周方向の一方側に設けられるサイプ13と、最もタイヤ周方向の他方側に設けられるサイプ13とは、サイプ13の両端部がそのブロックを囲む溝10と接続されないクローズド構造である。ミドル陸部20Bの1つのブロックにおいて、最もタイヤ周方向の一方側のサイプ13と最もタイヤ周方向の他方側のサイプ13との間に設けられる複数のサイプ13は、サイプ13の両端部がそのブロックを囲む溝10と接続されるオープン構造である。
ミドル陸部20Cの1つのブロックにおいて、サイプ13は、タイヤ周方向に複数設けられる。ミドル陸部20Cの1つのブロックにおいて、最もタイヤ周方向の一方側に設けられるサイプ13と、最もタイヤ周方向の他方側に設けられるサイプ13とは、サイプ13の両端部がそのブロックを囲む溝10と接続されないクローズド構造である。ミドル陸部20Cの1つのブロックにおいて、最もタイヤ周方向の一方側のサイプ13と最もタイヤ周方向の他方側のサイプ13との間に設けられる複数のサイプ13は、サイプ13の両端部がそのブロックを囲む溝10と接続されるオープン構造である。
ショルダー陸部20Dの1つのブロックにおいて、サイプ13は、タイヤ周方向に複数(6つ)設けられる。また、ショルダー陸部20Dの1つのブロックにおいて、サイプ13は、タイヤ幅方向に複数(2列)設けられる。ショルダー陸部20Dの1つのブロックにおいて、タイヤ幅方向に2列設けられたサイプ13のうち、タイヤ幅方向内側に設けられたサイプ13の一部が、ショルダー主溝11Cと接続される。本実施形態においては、4つのサイプ13がショルダー主溝11Cと接続されるセミクローズド構造である。ショルダー陸部20Dの1つのブロックにおいて、セミクローズド構造以外のサイプ13は、クローズド構造である。
ショルダー陸部20Eの1つのブロックにおいて、サイプ13は、タイヤ周方向に複数(6つ)設けられる。また、ショルダー陸部20Eの1つのブロックにおいて、サイプ13は、タイヤ幅方向に複数(2列)設けられる。ショルダー陸部20Eの1つのブロックにおいて、タイヤ幅方向に2列設けられたサイプ13のうち、タイヤ幅方向内側に設けられたサイプ13の一部が、ショルダー主溝11Dと接続される。本実施形態においては、4つのサイプ13がショルダー主溝11Dと接続されるセミクローズド構造である。ショルダー陸部20Eの1つのブロックにおいて、セミクローズド構造以外のサイプ13は、クローズド構造である。
[サイプ]
図5は、トレッドゴム8に設けられた複数のサイプ13のうち、ショルダー陸部20D及びショルダー陸部20Eに設けられているサイプ13を模式的に示す斜視図である。図6は、トレッドゴム8に設けられた複数のサイプ13のうち、ショルダー陸部20D及びショルダー陸部20Eに設けられているサイプ13を模式的に示す断面図である。図6は、回転軸AXと直交する陸部20の断面を示す。なお、以下で説明するサイプ13の構造は、タイヤ1を正規リムにリム組みして、正規内圧を充填して、タイヤ1に荷重を加えない無負荷状態(接地させない状態)のときの構造である。なお、図5ではサイプ13のサイプ開口30が上方を向き、図6ではサイプ13のサイプ開口30が下方を向くようにサイプ13を図示する。なお、上述したように、サイプ13は、そのサイプ13が設けられている陸部20の表面21が接地したと仮定したとき、トレッドゴム8の弾性変形により、サイプ13のサイプ開口30が閉じる溝幅を有する溝である。
図5及び図6に示すサイプ13は、トレッドゴム8のショルダー陸部20D及びショルダー陸部20Eに設けられる。ショルダー陸部20Dは、タイヤ幅方向両側のトレッド接地端Tのうち、一方のトレッド接地端Tと、その一方のトレッド接地端Tからタイヤ赤道線CL側に0.3×TWの距離の部位との間のトレッドゴム8のブロックを含む。ショルダー陸部20Eは、タイヤ幅方向両側のトレッド接地端Tのうち、他方のトレッド接地端Tと、その他方のトレッド接地端Tからタイヤ赤道線CL側に0.3×TWの距離の部位との間のトレッドゴム8のブロックを含む。図5及び図6に示すサイプ13は、ショルダー陸部20Dのブロック及びショルダー陸部20Eのブロックのそれぞれに設けられる。
サイプ13のサイプ開口30の周囲に、路面と接触可能な陸部20の表面(接地面、踏面)21が配置される。
図5及び図6に示すように、タイヤ周方向のサイプ13のサイプ開口30の第1寸法Lは、タイヤ幅方向のサイプ13のサイプ開口30の第2寸法Wよりも小さい。すなわち、サイプ開口30は、タイヤ幅方向に延在する。サイプ開口30の長手方向とタイヤ幅方向とが一致する。
サイプ13は、サイプ開口30と接続される狭隘部31と、狭隘部31よりもタイヤ径方向内側に配置される底部32と、を有する。
狭隘部31は、タイヤ周方向においてサイプ開口30の一方側の端部30Aと接続される第1内面33と、タイヤ周方向においてサイプ開口30の他方側の端部30Bと接続される第2内面34とを含む。
第1内面33と第2内面34とは間隙を介して対向する。第1内面33と第2内面34とは、実質的に平行である。第1内面33と第2内面34との間隙の寸法は、第1寸法Lである。
狭隘部31は、第1内面33と第2内面34とによって規定される空間を含む。
底部32は、第1内面33と接続されタイヤ周方向において一方側に凹む第1凹面35と、第2内面34と接続されタイヤ周方向において他方側に凹む第2凹面36とを含む。
第1凹面35と第2凹面36とは間隙を介して対向する。第1凹面35と第2凹面36との間隙の寸法は、第1内面33と第2内面34との間隙の寸法よりも大きい。
底部32は、第1凹面35と第2凹面36とによって規定される空間を含む。
図6に示すように、回転軸AXと直交するサイプ13の断面において、第1凹面35の少なくとも一部は円弧状である。同様に、回転軸AXと直交するサイプ13の断面において、第2凹面36の少なくとも一部は円弧状である。
回転軸AXと直交するサイプ13の断面における第1凹面35の曲率半径rと、第2凹面36の曲率半径Rとは、異なる。図6に示すように、第2凹面36の曲率半径Rは、第1凹面35の曲率半径rよりも大きい。なお、曲率半径rは、第1凹面35のうち、回転軸AXと直交するサイプ13の断面において、タイヤ周方向の最も一方側に凹んだ部位において規定される。曲率半径Rは、第2凹面36のうち、回転軸AXと直交するサイプ13の断面において、タイヤ周方向の最も他方側に凹んだ部位において規定される。
本実施形態においては、第1凹面35の曲率半径rと第2凹面36の曲率半径Rとタイヤ周方向のサイプ開口30の第1寸法Lとが以下の(1)式及び(2)式の条件を満足するように、サイプ13が形成される。
5.0L ≧ R > r ≧ 0.5L …(1)
5.0r ≧ R ≧ 1.1r …(2)
図6に示すように、回転軸AXと直交するサイプ13の断面において、第1凹面35と第2凹面36との境界Kは、第1内面33と第2内面34との中央を通りタイヤ径方向に延在する中心線ILに設けられる。第1凹面35と第2凹面36との境界Kとは、第1凹面35のタイヤ径方向内側の端部35Pと、第2凹面36のタイヤ径方向内側の端部36Pとの接続部を含む。
図6に示すように、タイヤ径方向における第1凹面35の端部35Pの位置と、タイヤ径方向における第2凹面36の端部36Pの位置とは、一致する。第1凹面35の端部35Pと第2凹面36の端部36Pとが接続されるように(連続するように)、サイプ13が形成される。換言すれば、第1凹面35の端部35Pと第2凹面36の端部36Pとの間に段差が形成されないように、第1凹面35の端部35Pと第2凹面36の端部36Pとが滑らかに接続される。回転軸AXと直交するサイプ13の断面における底部32の形状は、実質的に楕円形状である。
タイヤ径方向における第1内面33の寸法H1は、第2内面34の寸法H2よりも大きい。第1内面33のタイヤ径方向内側の端部と、第1凹面35のタイヤ径方向外側の端部とが接続される。第2内面34のタイヤ径方向内側の端部と、第2凹面36のタイヤ径方向外側の端部とが接続される。
タイヤ径方向における第1凹面35の寸法H3は、タイヤ径方向における第2凹面36の寸法H4よりも小さい。
第1内面33と第1凹面35との境界に角部37が形成される。第2内面34と第2凹面36との境界に角部38が形成される。角部37において第1内面33と第1凹面35とがなす角度θ1は、実質的に270[°]である。角部38において第2内面34と第2凹面36とがなす角度θ2は、角度θ1よりも小さい。
サイプ13の深さH0は、3.0[mm]以上9.0[mm]以下である。
図7は、本実施形態に係るショルダー陸部20D及びショルダー陸部20Eのトレッドゴム8の複数のブロック60のうち1つのブロック60に設けられているサイプ13を模式的に示す断面図である。
ブロック60において、タイヤ周方向両側にブロック端BTが規定される。本実施形態において、ブロック端BTは、ブロック60の表面21と、ブロック60のタイヤ周方向両側の溝10によって規定されるブロック60の側面22との境界である。
ブロック60において、ブロック長BLが規定される。ブロック長BLは、一方のブロック端BTと他方のブロック端BTとの距離を示す。
本実施形態において、サイプ13は、タイヤ周方向両側のブロック端BTのうち、一方のブロック端BTと、その一方のブロック端BTからブロック60のタイヤ周方向中心側に0.4×BLの距離の部位との間のブロック60の第1部位61に設けられる。また、サイプ13は、タイヤ周方向両側のブロック端BTのうち、他方のブロック端BTと、その他方のブロック端BTからブロック60のタイヤ周方向中心側に0.4×BLの距離の部位との間のブロック60の第2部位62に設けられる。
サイプ13は、第1部位61において、第2凹面36が第1凹面35よりも一方のブロック端BTに近い位置に配置されるようにブロック60に設けられる。また、サイプ13は、第2部位62において、第2凹面36が第1凹面35よりも他方のブロック端BTに近い位置に配置されるようにブロック60に設けられる。
図7に示す例では、第1部位61において、タイヤ周方向に2つのサイプ13が設けられる。第2部位62において、タイヤ周方向に2つのサイプ13が設けられる。
なお、第1部位61において、サイプ13は、タイヤ周方向に3つ以上の任意の複数設けられてもよい。第2部位62において、サイプ13は、タイヤ周方向に3つ以上の任意の複数設けられてもよい。
なお、第1部位61において、サイプ13は、1つ設けられてもよい。第2部位62において、サイプ13は、1つ設けられてもよい。
なお、第1部位61に設けられるサイプ13の数と、第2部位62に設けられるサイプ13の数とは、等しくてもよいし、異なってもよい。
本実施形態において、複数のサイプ13の深さH0は、等しい。
なお、図7に示す例では、タイヤ周方向におけるブロック60の中央部に、第1凹面35及び第2凹面36を有しないサイプ13Jが設けられる。なお、タイヤ周方向におけるブロック60の中央部にサイプ13Jが設けられなくてもよい。
[作用及び効果]
以上説明したように、本実施形態によれば、トレッドゴム8にサイプ13が設けられることにより、サイプ13のエッジ効果によって、氷上におけるタイヤ1の制動性能の低下が抑制される。また、曲率半径が異なる第1凹面35と第2凹面36とによってサイプ13の底部32が形成されるので、サイプ13の底部32においてトレッドゴム8に作用する応力が分散される。応力が分散されることにより、トレッドゴム8にクラックが発生することが抑制される。そのため、タイヤ1の耐久性能の低下が抑制される。
また、曲率半径が異なる第1凹面35と第2凹面36とによってサイプ13の底部32が形成されるので、タイヤ周方向においてサイプ13の一方側に配置されるトレッドゴム8の第1部分41(図6参照)の振動モードと、他方側に配置されるトレッドゴム8の第2部分42(図6参照)の振動モードとに差異が発生する。サイプ13を挟んだトレッドゴム8の第1部分41の振動モードと第2部分42の振動モードとが異なるので、サイプ13に雪が入り込んだ場合、そのサイプ13に入り込んだ雪は、異なる振動モードで振動するトレッドゴム8の第1部分41と第2部分42との相対的な動きにより、サイプ13から円滑に排出される。サイプ13からの雪の排出性能が向上するので、サイプ13に雪が入り込んでも、サイプ13に雪が詰まった状態が維持されることが抑制される。そのため、雪上におけるタイヤ1の制動性能の低下が抑制される。
また、(1)式の条件を満足することにより、タイヤ1の耐久性能の低下及び制動性能の低下が抑制される。第2凹面36の曲率半径Rが第1凹面35の曲率半径rよりも大きい場合[R>rである場合]において、[5.0L ≧ R]の条件を満足しない場合、すなわちサイプ13のサイプ開口30の第1寸法Lに対して曲率半径Rが大き過ぎる場合、トレッドゴム8の剛性(ブロック剛性)が低下する。その結果、タイヤ1の耐久性能及び制動性能が低下する。また、[r ≧ 0.5L]の条件を満足しない場合、すなわちサイプ13のサイプ開口30の第1寸法Lに対して曲率半径rが小さ過ぎる場合、第1凹面35は第1内面33に対して十分に凹んだ状態とならず、サイプ13の底部32においてトレッドゴム8にクラックが発生する可能性が高くなる。また、第1凹面35が第1内面33に対して十分に凹んでいないと、サイプ13を挟んだトレッドゴム8の第1部分41及び第2部分42のうち第1凹面35を含む第1部分41が十分に動かなくなる可能性がある。その結果、サイプ13からの雪の排出性能が低下し、雪上におけるタイヤ1の制動性能が低下する。(1)式の条件を満足することにより、タイヤ1の耐久性能及び制動性能の低下が抑制される。
また、(2)式の条件を満足することにより、タイヤ1の耐久性能及び制動性能はより向上する。[5.0r ≧ R]の条件を満足しない場合、すなわち曲率半径rに対して曲率半径Rが大き過ぎる場合又は曲率半径Rに対して曲率半径rが小さ過ぎる場合、応力が作用する部位が第1凹面35及び第2凹面36のいずれか一方に偏り過ぎてしまい、適切な応力分散効果を得ることが困難となる。その結果、タイヤ1の耐久性能が低下する。また、[R ≧ 1.1r]の条件を満足しない場合、すなわち曲率半径Rと曲率半径rとが近似する場合、サイプ13を挟んだトレッドゴム8の第1部分41の振動モードと第2部分42との振動モードとが近似することとなる。その結果、サイプ13からの雪の排出性能が低下し、雪上におけるタイヤ1の制動性能が低下する。(2)式の条件を満足することにより、タイヤ1の耐久性能及び制動性能はより向上する。
また、ショルダー部17にトレッドゴム8のブロック60が設けられる場合、応力集中はブロック端BTに近い部位に発生する可能性が高い。本実施形態によれば、ショルダー部17のショルダー陸部20D及びショルダー陸部20Eに設けられるトレッドゴム8のブロック60において、第2凹面36が第1凹面35よりもブロック端BTに近い位置に配置されるようにサイプ13が設けられることにより、応力集中が効果的に低減される。したがって、タイヤ1の耐久性能は向上する。
また、本実施形態においては、サイプ13は、ブロック60の第1部位61及び第2部位62に設けられる。第1部位61及び第2部位62よりも広い範囲にサイプ13が設けられる場合、ブロック剛性が低下する可能性がある。第1部位61及び第2部位62にサイプ13が設けられることにより、ブロック剛性の低下が抑制され、タイヤ1の氷上制動性能及び耐久性能の低下が抑制される。
また、本実施形態においては、回転軸AXと直交するサイプ13の断面において、第1凹面35と第2凹面36との境界は、第1内面33と第2内面34との中央を通りタイヤ径方向に延在する中心線ILに設けられ、回転軸AXと直交するサイプ13の断面における底部32の形状は、実質的に楕円形状である。これにより、底部32には、タイヤ周方向において一方側と他方側とのそれぞれに大きい空間が形成されるので、タイヤ1が氷上を走行した場合、サイプ13は氷の水分を十分に吸い上げることができる。そのため、氷上におけるタイヤ1の制動性能は向上する。
また、本実施形態においては、タイヤ径方向における第1凹面35の端部35Pの位置と第2凹面36の端部36Pの位置とは一致し、端部35Pと端部36Pとの間に段差が形成されず、端部35Pと端部36Pとは滑らかに接続される。これにより、底部32における応力集中が抑制され、トレッドゴム8にクラックが発生することが抑制される。したがって、タイヤ1の耐久性能の低下が抑制される。
また、本実施形態においては、サイプ13のサイプ開口30の長手方向がタイヤ幅方向と一致するように、トレッドゴム8にサイプ13が設けられる。これにより、サイプ13の十分なエッジ効果が得られるので、タイヤ1の制動性能が向上する。また、タイヤ1の耐久性能も向上する。
第2実施形態.
第2実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成要素については同一の符号を付し、その説明を簡略又は省略する。
図8は、本実施形態に係るショルダー陸部20D及びショルダー陸部20Eのトレッドゴム8の複数のブロック60のうち1つのブロック60に設けられているサイプ13を模式的に示す断面図である。
図8に示すように、第1部位61において、タイヤ周方向に複数のサイプ13が設けられる。第2部位62において、タイヤ周方向に複数のサイプ13が設けられる。
本実施形態においては、第1部位61において、隣り合うサイプ13の深さH0が異なる。また、第2部位62において、隣り合うサイプ13の深さH0が異なる。
図8に示す例においては、第1部位61においてタイヤ周方向に隣り合うサイプ13のうち、一方のブロック端BTに近いサイプ13の深さH0が最も深い。第2部位62においてタイヤ周方向に隣り合うサイプ13のうち、他方のブロック端BTに近いサイプ13の深さH0が最も深い。
なお、第1部位61においてタイヤ周方向に隣り合うサイプ13のうち、一方のブロック端BTに近いサイプ13の深さH0が最も浅くてもよい。第2部位62においてタイヤ周方向に隣り合うサイプ13のうち、他方のブロック端BTに近いサイプ13の深さH0が最も浅くてもよい。
以上説明したように、本実施形態によれば、第1部位61及び第2部位62のそれぞれにおいて、隣り合うサイプ13の深さH0が異なる。これにより、応力が分散され、トレッドゴム8にクラックが発生することが抑制される。また、隣り合うサイプ13の深さH0が異なることにより、隣り合うサイプ13のうち一方のサイプ13の底部32にクラックが発生しても、他方のサイプ13に伝播することが抑制され、クラックの成長が抑制される。
第3実施形態.
第3実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成要素については同一の符号を付し、その説明を簡略又は省略する。
図9は、本実施形態に係るサイプ13が設けられた陸部20を模式的に示す斜視図である。図10は、本実施形態に係るサイプ13が設けられた陸部20を模式的に示す断面図である。
図9及び図10に示すように、本実施形態においては、サイプ13に底上げ部50が設けられる。図9に示すように、底上げ部50は、サイプ13のタイヤ幅方向の一部に設けられる。すなわち、タイヤ幅方向の底上げ部50の寸法Vは、タイヤ幅方向のサイプ13のサイプ開口30の第2寸法Wよりも小さい。タイヤ幅方向において、底上げ部50は、サイプ13の中央部に設けられる。タイヤ幅方向の底上げ部50の寸法Vは、1.0[mm]以上6.0[mm]以下である。
サイプ13の一部に底上げ部50が設けられることにより、サイプ13には、第1深さの溝浅部分と、第1深さとは異なる第2深さの溝深部分とが設けられる。溝浅部分とは、サイプ13の内部空間のうち、タイヤ幅方向において底上げ部50が設けられている部分空間である。溝深部分とは、サイプ13の内部空間のうち、タイヤ幅方向において底上げ部50が設けられていない部分空間である。溝浅部分の第1深さは、溝深部分の第2深さよりも浅い。
図10に示すように、底上げ部50は、第1凹面35のタイヤ径方向内側の端部35Pと、第2凹面36のタイヤ径方向内側の端部36Pとの間に設けられる。底上げ部50の外面は、第1内面33、第2内面34、第1凹面35、及び第2凹面36と接触せず、離れている。タイヤ径方向の最も外側の底上げ部50の外端部51は、タイヤ径方向において、第2内面34と第2凹面36との境界である角部38と、サイプ開口30との間に配置される。すなわち、底上げ部50の外端部51は、角部38よりもタイヤ径方向外側に配置され、サイプ開口30よりもタイヤ径方向内側に配置される。
上述の実施形態と同様、第2内面34と第2凹面36との境界である角部38は、第1内面33と第1凹面35との境界である角部37よりもタイヤ径方向外側に配置される。したがって、底上げ部50の外端部51は、角部37及び角部38よりもタイヤ径方向外側に配置される。
本実施形態において、タイヤ径方向における外端部51とサイプ開口30との寸法H5は、曲率半径rの3倍である(H5=3×r)。第2内面34の寸法H2は、曲率半径rの3倍よりも大きい。
以上説明したように、本実施形態によれば、サイプ13の一部に底上げ部50が設けられることにより、底上げ部50が設けられた溝浅部分においてはサイプ13の深さが浅くなり、底上げ部50が設けられていない溝深部分においてはサイプ13の深さが溝浅部分よりも深くなる。1つのサイプ13において深さが異なる溝浅部分及び溝深部分が設けられることにより、サイプ13の底部32においてトレッドゴム8に作用する応力が分散される。応力が分散されることにより、トレッドゴム8にクラックが発生することが抑制される。そのため、タイヤ1の耐久性能の低下が抑制される。
実施例.
次に、本発明に係るタイヤ1について実施した評価試験の結果について説明する。評価試験では、タイヤサイズが195/65R15 91Qのタイヤを、リムサイズが15×6.0Jのリムにリム組みして、評価車両に装着して評価試験を実施した。評価車両として、排気量1800[cc]の前輪駆動乗用車を使用した。
評価対象のタイヤとして、底部の凹面の曲率半径が一様である従来例に係るタイヤと、曲率半径が異なる第1凹面と第2凹面とによって底部が形成されているものの(1)式又は(2)式の条件を満たさない比較例1,2,3,4,5に係るタイヤと、曲率半径が異なる第1凹面と第2凹面とによって底部が形成され(1)式又は(2)式の条件を満たしているもののサイプ13が第1部位61及び第2部位62のみならずブロック60のタイヤ周方向中央部にも設けられている比較例6に係るタイヤと、本発明の技術的範囲に属する実施例1,2,3,4,5,6に係るタイヤ1と、を用意した。実施例1,2,3,4,5,6に係るタイヤ1は全て、図5及び図6を参照して説明したサイプ13がショルダー部17に設けられているタイヤ1である。また、実施例1,2,3,4,5,6に係るタイヤ1は全て、図7又は図8を参照して説明したように、サイプ13が第1部位61及び第2部位62のみに設けられているタイヤ1である。
サイプ13のサイプ開口30の第1寸法をLとした場合、従来例に係るタイヤ、比較例に係るタイヤ、及び実施例に係るタイヤ1それぞれの曲率半径R、曲率半径r、及びR/rは、図11に示す通りである。
図11において、「サイプが第1部位及び第2部位のみに有るか」が「○」とは、図7又は図8を参照して説明したように、サイプ13が第1部位61及び第2部位62のみに設けられていることを示し、「×」とは、第1部位61及び第2部位62のみならずブロック60のタイヤ周方向中央部にも設けられていることを示す。
図11において、「サイプの深さが均一か」が「○」とは、図7を参照して説明したように、複数のサイプ13の深さが等しいことを示し、「×」とは、図8を参照して説明したように、隣り合うサイプ13の深さが異なることを示す。
評価試験の評価項目は、(1)氷上制動性能、(2)耐久性能、(3)雪上制動性能(雪排出性能)、とした。
氷上制動性能の評価試験では、空気圧を230[kPa]にした状態で、氷路面において、時速40[km]から0[km]になるまでの制動試験を行い、その制動距離を用いて氷上制動性能を評価した。制動距離が短いほど、氷上制動性能が優れていることを意味する。
耐久性能の評価試験では、まず、空気圧を180[kPa]にした状態で、タイヤに正規荷重の85[%]の荷重を負荷した状態で、時速120[km]で4時間走行させる。4時間走行させた後、荷重を15[%]増加させ、時速120[km]で4時間走行させる。4時間走行させた後、荷重を更に15[%]増加させ、時速120[km]で4時間走行させる。このように、4時間走行させる毎に荷重を15[%]増加させ、トレッドゴム8がチャンクアウトするまでの走行距離を用いて耐久性能を評価した。なお、チャンクアウトとは、サイプ近傍のトレッドゴムが剥離する現象をいう。走行距離が長いほど、耐久性能が優れていることを意味する。
雪上制動性能の評価試験では、空気圧を230[kPa]にした状態で、雪路面を走行させ、走行前のタイヤ重量と走行後のタイヤ重量との差を求め、走行前に対する走行後のタイヤ重量の増加量を測定し、その増加量を用いて雪上制動性能(雪排出性能)を評価した。増加量が小さいほど、雪排出性能に優れ、雪上制動性能が優れていることを意味する。
評価試験では、従来例を基準(100)とした指数評価を行った。この評価は、指数が大きいほど、各性能が優れていることを示す。
上述の3つの評価項目について評価試験した結果を図11に示す。図11に示すように、本発明の技術的範囲に属する実施例に係るタイヤ1は、従来例に係るタイヤ及び比較例に係るタイヤに比べて、(1)氷上制動性能、(2)耐久性能、(3)雪上制動性能(雪の排出性能)の全ての項目において優れていることが確認できた。
1 タイヤ(空気入りタイヤ)、2 カーカス、3 ベルト層、3A 第1ベルトプライ、3B 第2ベルトプライ、4 ベルトカバー、5 ビード部、5A ビードコア、5B ビードフィラー、6 トレッド部、7 サイド部、8 トレッドゴム、9 サイドゴム、10 溝、11 周方向主溝、11A,11B センター主溝、11C,11D ショルダー主溝、12 ラグ溝、12A 第1ラグ溝、12B 第2ラグ溝、12C 第3ラグ溝、12D 第4ラグ溝、13 サイプ、14 縦溝、15 縦溝、16 センター部、17 ショルダー部、20 陸部、20A センター陸部、20B,20C ミドル陸部、20D,20E ショルダー陸部、21 表面(接地面、踏面)、22 側面、30 サイプ開口、30A 端部、30B 端部、31 狭隘部、32 底部、33 第1内面、34 第2内面、35 第1凹面、35P 端部、36 第2凹面、36P 端部、37 角部、38 角部、41 第1部分、42 第2部分、60 ブロック、61 第1部位、62 第2部位、BL ブロック長、BT ブロック端、r 曲率半径、R 曲率半径、L 第1寸法、W 第2寸法、IL 中心線、K 境界、H1 寸法、H2 寸法、θ1 角度、θ2 角度、AX 回転軸、CF タイヤ赤道面、CL タイヤ赤道線、T トレッド接地端、TW トレッド接地幅。

Claims (4)

  1. 車両に装着された状態で回転軸を中心に回転する空気入りタイヤであって、
    トレッド部を有するトレッドゴムと、
    前記トレッドゴムに設けられたサイプと、を備え、
    前記トレッド部において、タイヤ幅方向両側にトレッド接地端が規定され、タイヤ幅方向中心にタイヤ赤道線が規定され、
    一方の前記トレッド接地端と他方の前記トレッド接地端との距離を示すトレッド接地幅をTWとしたとき、前記サイプは、一方の前記トレッド接地端と一方の前記トレッド接地端から前記タイヤ赤道線側に0.3×TWの距離の部位との間の前記トレッドゴムのブロックと、他方の前記トレッド接地端と他方の前記トレッド接地端から前記タイヤ赤道線側に0.3×TWの距離の部位との間の前記トレッドゴムのブロックとのそれぞれに設けられ、
    前記ブロックにおいて、タイヤ周方向両側にブロック端が規定され、
    一方の前記ブロック端と他方の前記ブロック端との距離を示すブロック長をBLとしたとき、前記サイプは、一方の前記ブロック端と一方の前記ブロック端から前記ブロックの中心側に0.4×BLの距離の部位との間の前記ブロックの第1部位と、他方の前記ブロック端と他方の前記ブロック端から前記ブロックの中心側に0.4×BLの距離の部位との間の前記ブロックの第2部位とのそれぞれに設けられ、
    前記サイプは、サイプ開口と接続される狭隘部と、前記狭隘部よりもタイヤ径方向内側に配置される底部と、を有し、
    前記狭隘部は、タイヤ周方向において前記サイプ開口の一方の端部と接続される第1内面と、前記サイプ開口の他方の端部と接続され前記第1内面と間隙を介して対向する第2内面と、を含み、
    前記底部は、前記第1内面と接続されタイヤ周方向において一方側に凹む第1凹面と、前記第2内面と接続されタイヤ周方向において他方側に凹む第2凹面と、を含み、
    前記回転軸と直交する前記サイプの断面において、前記第1凹面及び前記第2凹面のそれぞれは少なくとも一部が円弧状であり、
    前記断面における前記第1凹面の曲率半径と前記第2凹面の曲率半径とは異なり、
    前記断面における前記第1凹面の曲率半径をr、前記第2凹面の曲率半径をR、前記タイヤ周方向の前記サイプ開口の第1寸法をLとしたとき、
    5.0L ≧ R > r ≧ 0.5L、
    5.0r ≧ R ≧ 1.1r、
    の条件を満足し、
    前記サイプは、前記第1部位において、前記第2凹面が前記第1凹面よりも一方の前記ブロック端に近い位置に配置されるように設けられ、前記第2部位において、前記第2凹面が前記第1凹面よりも他方の前記ブロック端に近い位置に配置されるように設けられる、
    空気入りタイヤ。
  2. 前記第1部位において、前記タイヤ周方向に複数のサイプが設けられ、
    前記第2部位において、前記タイヤ周方向に複数のサイプが設けられ、
    前記第1部位及び前記第2部位のそれぞれにおいて、隣り合う前記サイプの深さが異なる、
    請求項1に記載の空気入りタイヤ。
  3. 前記断面において、前記第1凹面と前記第2凹面との境界は、前記第1内面と前記第2内面との中央を通りタイヤ径方向に延在する中心線に設けられ、
    前記断面における前記底部の形状は、実質的に楕円形状である、
    請求項1又は請求項2に記載の空気入りタイヤ。
  4. 前記第1凹面のタイヤ径方向内側の端部と前記第2凹面のタイヤ径方向内側の端部との間において前記サイプのタイヤ幅方向の一部に設けられ、タイヤ径方向外側に突出する底上げ部を備え、
    前記第2内面と前記第2凹面との境界は、前記第1内面と前記第1凹面との境界よりもタイヤ径方向外側に配置され、
    タイヤ径方向の最も外側の前記底上げ部の外端部は、タイヤ径方向において、前記第2内面と前記第2凹面との境界と、前記サイプ開口との間に配置される、
    請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の空気入りタイヤ。
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