以下、本発明に係る逆止弁の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
逆止弁は、流体を流す配管に配置され、配管内における流体の逆流を防止する。逆止弁は、流体の上流側に設けられる一次側配管(流体入口側配管)と、流体の下流側に設けられる二次側配管(流体出口側配管)の間で両者に接続される。そして、逆止弁は、一次側配管から二次側配管への流体の流入に対しては弁を開いてその流れを許容する一方、二次側配管から一次側配管への流体の流入に対しては弁を閉じて流れを阻止することにより逆流を防止する。
配管を流れる流体には異物が混入していることがあり、この異物が逆止弁の位置に進入すると、弁を閉じる動作が阻害されることがある。本実施形態に係る逆止弁は、異物が進入したとしてもその影響を最小限に止めることにより、流体の逆流を防止する。
図1〜図3に示すように、本実施形態に係る逆止弁1は、ケーシング10と、弁体20と、付勢部40と、フィルタ60と、を備える。
ケーシング10は、流体が流通する流路15が形成された部材であり、逆止弁1の外形を構成する。このケーシング10は、流体入口11、弁室12、弁座部13及び流体出口14を備える。
流体入口11は、流路15における一次側の端部に配置される。この流体入口11には、一次側配管が接続される。
流体出口14は、流路15における二次側の端部に配置される。この流体出口14には、二次側配管が接続される。
弁室12は、流路15における流体入口11と流体出口14との間に配置され、流体入口11及び流体出口14よりも大径な空間として形成される。
弁座部13は、弁室12における一次側の内壁面により凹形状に形成される。弁座部13の詳細については、後述する。
本実施形態において、ケーシング10は、一次側を構成する第1ケーシング111及び二次側を構成する第2ケーシング112が組み合わせられてボルト50により締結されて一体化されることで形成される。第1ケーシング111には、流体入口11、弁座部13及び弁室12の一次側の部分が形成される。第2ケーシング112には、弁室12の二次側の部分及び流体出口14が形成される。
弁体20は、弁室12に配置され、弁座部13と対向配置される。弁体20は、弁座部13に密着可能なように、凸形状に形成される。弁体20の詳細については後述する。
付勢部40は、弁室12における弁体20の二次側に配置される。付勢部40は、弁座部13側に弁体20を付勢する。この付勢部40は、板状体41と、弾性部材42と、軸部材43と、を備える。
板状体41は、例えば、非弾性材料(例えば金属等)によって形成され、弁体20の流体出口14側に重ね合わされる。本実施形態において、板状体41は、弁体20と略同径の略円形に形成され弁体20の二次側の面に沿うように配置される。板状体41には、複数の貫通穴(図示せず)が形成される。これにより、板状体41と弁体20との間に流体を流入させることができる。よって、流体出口14側から流体入口11側にかかる流体の圧力(背圧)は、板状体41に妨げられることなく弁体20に作用する。
弾性部材42は、いわゆる圧縮ばねであり、板状体41を流体出口14側から流体入口11側に向けて付勢する。この弾性部材42は、一端側が板状体41の流体出口14側の面に接触して配置され、他端側が弁室12の流体出口14側の内面に接触して配置される。弾性部材42は、弁体20が流体入口11側から流体出口14側に流体が流入する圧力により押された場合に収縮し、これにより、弁体20及び板状体41が二次側に移動して弁体20が弁座部13から離間する。また、弾性部材42は、流体入口11側から流体出口14側への流体の流入による圧力がかからない状態では伸長し、板状体41及び弁体20を弁座部13側に押し付ける。
軸部材43は、流体の流入方向Fに長さ方向が沿うように配置される。また、軸部材43は、弾性部材42の中心軸の位置に一致するように配置される。本実施形態では、軸部材43の中心軸は、ケーシング10の流路15の中心位置に一致するように配置される。
軸部材43の一次側は弁室12を貫通しており、二次側はケーシング10の流体出口14まで延びる。軸部材43は、一次側端部において、ケーシング10から径方向内側に延びる一次側支持部材16に挿通されて、ケーシング10に対して軸方向に(流体の流入方向Fに沿って)移動可能に支持される。また、軸部材43は、二次側端部において、ケーシング10から径方向内側に延びる二次側支持部材17に挿通されて、ケーシング10に対して軸方向に(流体の流入方向Fに沿って)移動可能に支持される。
以上の軸部材43は、弁体20及び板状体41の一次側又は二次側への移動をガイドする。
フィルタ60は、図2に示すように、ケーシング10の流路15における弁室12の流体入口11側に配置される。フィルタ60は、所定以上の大きさ(例えば、1.4mm超過)の異物を捕えて、弁体20への異物の侵入を防止する。このフィルタ60は、図4に示すように、異物が流入する一次側から見て凸形状のフィルタ本体61と、リブ部62と、を備え、凹状の開口が流体出口14側を向くように配置される。
図1に示すように、フィルタ本体61には、複数の開孔が表面全体に形成される。本実施形態において、フィルタ本体61は、金属線がメッシュ状に編まれた金属網(例えば、14メッシュ,線径0.4mm,目開き1.4mmのステンレス製ネット)のプレス加工により成形される。これにより、フィルタ本体61の表面全体に複数の開孔が形成される。フィルタ本体61は、受け面部611と、側面部612と、鍔部613とを備える。
受け面部611は、凸状のフィルタ本体61の頂面にあたる部分であり、流体の流れ方向Fに対して略垂直に配置される。受け面部611は、正面視円形状に形成される。また、受け面部611は、二次側に向けて凹んだ凹部614を有する。凹部614は、受け面部611の中心部分を流体の流れ方向Fの二次側に湾曲させることにより形成される。
側面部612は、凹状のフィルタ本体61の側面にあたる部分であり、受け面部611の外周から流体の流れ方向Fに沿う方向に延びる。即ち、側面部612は、受け面部611の全周から流体の流れ方向Fの二次側に向かって延びる円筒状に形成される。側面部612は、受け面部611と一体形成される。本実施形態では、側面部612は、受け面部611に対して、略90度屈曲した方向に延びる。
鍔部613は、側面部612の先端側(基端側である受け面部611に対して逆側)から流体の流れ方向Fに略垂直に延びる。本実施形態において、鍔部613は、側面部612の先端部においてメッシュ状の金属網を屈曲させることで、フィルタ本体61と一体形成される。この鍔部613は、後述するリブ部62の一部を構成する。
リブ部62は、側面部612の先端側(基端側である受け面部611に対して逆側)から流体の流れ方向Fに略垂直に延びる。リブ部62には、流体を流通可能な切り欠き又は隙間が形成される。リブ部62は、上述の鍔部613と、板部材621と、を含む。
板部材621は、図5に示すように、外周に所定間隔で切込みdが形成された環状に形成される。また、板部材621の内径は、側面部612の内径と略同じ径に形成される。そして、板部材621は、図6に示すように、所定間隔の切込みdが一部残るように折り曲げられる。板部材621は、図2に示すように、鍔部613を挟み込むように折り曲げられることにより、切込みdの部分で流体を流通可能に形成される。
以上のフィルタ60は、リブ部62がケーシング10におけるリブ部62を支持する部分Lに支持されて、第1ケーシング111内に配置される。そして、フィルタ60は、図1及び図2に示すように、受け面部611が一次側(流体入口11側)に配置され、リブ部62(鍔部613)が二次側(流体出口14側)に配置される。これにより、フィルタ60は、開口側(先端側)が弁室12に対向するように配置される。なお、ケーシング10におけるリブ部62を支持する部分Lにも、流体が流通可能な切り欠き又は隙間が形成される(図示せず)。
受け面部611は、一次側から二次側へ流れる流体のうち、流路15の中央部分を流れる流体を通過させる。これにより、受け面部611は、一次側から二次側へ流れる流体に混入する異物を捕えることができる。受け面部611には、凹部614が形成されていることにより、流体の流入方向Fに対して垂直な面のみで形成されている場合に比べ、受け面部611の強度を向上することができる。
側面部612及びリブ部62は、一次側から二次側へ流れる流体のうち、流路15のうちの外周側を流れる流体を通過させる。ここで、本実施形態では、側面部612を、複数の開孔を含んで構成するとともに、流体の流入方向Fに沿うように配置することで、流体の一部を通過させつつ、側面部612に異物を詰まりにくくできる。また、リブ部62及びケーシング10におけるリブ部62を支持する部分Lに流体を流通可能な切り欠き又は隙間が形成されていることにより、リブ部62を通過する流体も弁室12に流入させることができる。
これにより、側面部612の外周側に流入方向Fに沿う流れを形成することができ、側面部612の外周側を流れる流体の一部を側面部612から流入させつつ、また一部をリブ部62に導くことができる。よって、フィルタ60を配置することによる圧力損失を低減できる。また、板部材621は、金属線を編むことによって形成されたフィルタ本体61の終端にあたる鍔部613を保護するので、金属線が解けることによるフィルタ本体61の破損を防止して、フィルタ60の形状を維持することができる。
次に、本実施形態の弁座部13及び弁体20の詳細について説明する。
弁座部13は、図2に示すように、第1弁座部131と、第2弁座部132と、を備える。
第1弁座部131は、流体の流入方向Fに対して垂直な垂直面(流路15の径方向に沿う面)として形成される。第1弁座部131は、弁室12における流体入口11側に配置される。具体的には、第1弁座部131は、弁室12における流体入口11側の内壁面のうち、弁室12の入口の外周を囲うように配置される。本実施形態では、第1弁座部131は、弁室12の入口の外周に沿って環状に配置される。
第2弁座部132は、第1弁座部131の外周側に配置される。この第2弁座部132は、垂直面133及び傾斜面134を備える。
垂直面133は、流体の流入方向Fに対して垂直な面として形成される。垂直面133は、第2弁座部132を形成する面のうち、内周側の面として形成される。また、垂直面133は、第1弁座部131の外周に沿って配置される。本実施形態において、垂直面133は、第1弁座部131との間に段差を形成して配置され、第1弁座部131よりも流体出口14側に配置される。
傾斜面134は、流体の流入方向Fとのなす角度が鋭角となるように傾斜した面として形成される。換言すると、傾斜面134は、流体の流入方向Fに沿って(流体入口11から流体出口14に向かって)、徐々に拡径するように傾斜した傾斜面として形成される。傾斜面134は、第2弁座部132を形成する面のうち、外周側の面として形成される。また、傾斜面134は、垂直面133の外周に沿って配置される。本実施形態において、傾斜面134は、垂直面133との間に段差を形成して配置され、垂直面133よりも流体出口14側に配置される。
弁体20は、第1弁体21と、第2弁体22と、ヒンジ部30と、を備える。
第1弁体21は、流体の背圧(流体出口14側から流体入口11側への圧力)による弁座部13への接触に対して弁体20の機械的強度を保つために、非弾性材料(例えば、ステンレスなどの金属)により所定の硬度で形成される。また、第1弁体21は、第1弁座部131と第2弁座部132の垂直面133との段差と略同じ厚さをもつ。第1弁体21は、第1弁座部131に密着可能なように、第1弁座部131の内径(弁室12の入口の径)よりも大きく、第1弁座部131の外径以下の大きさの径をもつ円板状に形成される。そして、第1弁体21は、中心位置が軸部材43に挿通されるとともに、軸部材43に固定される。
これにより、第1弁体21は、流体の流入方向Fに沿って軸部材43とともに移動可能に配置される。また、第1弁体21は、径方向が流体の流入方向Fに対して垂直になるように弁室12に配置される。即ち、第1弁体21は、流体入口11側の面が第1弁座部131と略平行に配置されるとともに、対向配置される。この第1弁体21は、第1弁座部131に密着する第1シール部210を構成する。
第2弁体22は、弾性材料(例えば、フッ素ゴム,シリコンゴムなどの合成ゴム)により下底側の面が凹んだ円錐台形状に形成される。第2弁体22は、下底よりも短径で形成される上底が第1弁体21の流体出口14側の面に重ね合わせて配置される。第2弁体22の上底の径は、第1弁体21の径及び第2弁座部132の垂直面133の内径よりも大きく、第2弁座部132の垂直面133の外径よりも小さく形成される。そして、第2弁体22の側面は、第2弁座部132の傾斜面134の傾斜角度に合わせて形成される。また、第2弁体22は、中心位置が軸部材43に挿通されるとともに、軸部材43に固定される。これにより、第2弁体22は、流体の流入方向Fに沿って軸部材43とともに移動可能に配置される。この第2弁体22は、第2弁座部132に密着する第2シール部220を構成する。
第2シール部220は、第2弁座部132のうち、流体の流入方向Fにおいて、第1弁体21(第1シール部210)と重ならない位置に形成される。即ち、第2シール部220は、第2弁体22のうち、第1弁体21の外周側に配置される部分によって形成される。この第2シール部220の厚さは、外周側に向かって徐々に薄くなるように形成される(図7〜図9参照)。そして、第2シール部220は、流体出口14側から流体入口11側にかかる圧力(背圧)により撓んで第2弁座部132に密着可能な可撓性を有する。この第2シール部220は、垂直シール部221と、傾斜シール部222と、を備える。
垂直シール部221は、第1弁体21の外周に沿って配置される。具体的には、垂直シール部221は、第2弁体22うち、第1弁体21から露出する上面を垂直面Hとする円環状に形成される。垂直シール部221の垂直面Hは、第2弁座部132の垂直面133に対向配置される。また、垂直シール部221は、第2シール部220のうち、最も肉厚に形成される。
傾斜シール部222は、垂直シール部221の外周に沿って形成される。即ち、傾斜シール部222は、第2弁体22の側面を傾斜面Sとしてもつ円環状に形成される。傾斜シール部222の傾斜面Sは、第2弁座部132の傾斜面134に対向配置される。本実施形態において、傾斜シール部222は、垂直シール部221の側面から径方向外側に延出して形成され、また、延出方向に沿って徐々に薄くなるように形成される。即ち、傾斜シール部222の厚さは、外周側に向かって徐々に薄くなるように形成される。
ヒンジ部30は、第2シール部220の位置に配置され、第2シール部220の撓みの起点となる。具体的には、ヒンジ部30は、第2シール部220の表面から流体の流通方向(流入方向Fまたはその逆方向)に沿って切り欠かれた溝として形成される。ヒンジ部30は、第1ヒンジ部310と、第2ヒンジ部320と、を備える。
第1ヒンジ部310は、第2弁体22の上底から切り欠かれた溝として形成される。第1ヒンジ部310は、第1弁体21(第1シール部210)の外周に沿って環状に形成される。即ち、第1ヒンジ部310は、垂直シール部221の垂直面Hから切り欠かれた溝として、第1弁体21(第1シール部210)の外周に沿って環状に形成される。
第2ヒンジ部320は、第2弁体22の下底から切り欠かれた溝として形成される。第2ヒンジ部320は、垂直シール部221の外周に沿って環状に形成される。即ち、第2ヒンジ部320は、傾斜シール部222の流体出口14側の面から切り欠かれた溝として、垂直シール部221の外周に沿って環状に形成される。
以上のような弁体20、弁座部13、及び、ヒンジ部30によれば、第1シール部210が第1弁座部131に密着することにより、弁室12の入口をシールすることができる。また、第2シール部220が第2弁座部132に密着することにより、弁室12の入口を更にシールすることができる。
ここで、第1ヒンジ部310が設けられていることにより、第1ヒンジ部310を起点として、垂直シール部221及び傾斜シール部222を撓みやすくすることができる。また、第2ヒンジ部320が設けられていることにより、傾斜シール部222を更に撓みやすくすることができる。また、傾斜シール部222及び第2弁座部132の傾斜面134が流体の流入方向Fに対して鋭角に傾斜して形成されていることにより、圧力損失の観点で、垂直に形成されている場合に比べ流体の流れをよりスムーズにすることができる。
以上のような逆止弁1は、以下のように用いられる。
まず、ケーシング10(第1ケーシング111)の流体入口11が、一次側配管(図示せず)に接続される。そして、ケーシング10(第2ケーシング112)の流体出口14が二次側配管(図示せず)に接続される。
一次側配管(図示せず)及び二次側配管(図示せず)の間に流体が流れていないときには、逆止弁1の内部の流体も移動しない。このとき、弁体20は、付勢部40による付勢により、弁座部13に密着した状態になる。具体的には、弾性部材42が弁体20を流体出口14側から流体入口11側へ付勢することにより、第1シール部210が第1弁座部131に密着する。また、第2シール部220の垂直シール部221(垂直面H)が第2弁座部132の垂直面133に密着する。そして、第2シール部220の傾斜シール部222(傾斜面S)が第2弁座部132の傾斜面134に密着する。これにより、弁室12の入口がシールされるので、流体入口11側と流体出口14側の間で流体の移動は発生しない。
流体入口11側(一次側)から流体出口14側(二次側)への流体の流入が開始されると、弁体20は、流体の圧力によって流体入口11側から流体出口14側へ移動しようとする力を受ける。つまり、弁体20は、流体の圧力によって、付勢部40の圧力に抗する方向へ移動しようとする力を受ける。弾性部材42は、弁体20の移動しようとする力によって収縮し、弁体20及び板状体41は、軸部材43とともに流体の流入方向Fに沿って、弁座部13から離れる方向に移動する。これにより、第1シール部210が第1弁座部131から離間する。また、第2シール部220の垂直シール部221及び傾斜シール部222が第2弁座部132の垂直面133及び傾斜面134から離間する。したがって、弁座部13及び弁体20の間のシールが解除されて、流体が流体入口11側から流体出口14側へ流通可能となる。
一方、流体出口14側から流体入口11側へ流体が逆流しようとすると、弁体20及び板状体41は、流体の圧力(背圧)によって流体出口14側から流体入口11側へ移動しようとする力を受ける。また、弁体20及び板状体41は、付勢部40の付勢力によって、流体出口14側から流体入口11側へ移動しようとする力を受ける。これにより、弁体20及び板状体41は、軸部材43とともに流体の流入方向Fに沿って弁座部13に向けて移動を開始する。
このとき、板状体41は、弾性部材42の付勢力を第2シール部220の流体出口14側の面の全体に伝える。これにより、第2シール部220が第2弁座部132に近づく方向に移動する際に、流体入口11側から流体出口14側に撓むことを防止する。
第2シール部220及び板状体41の間に弁室12内の流体が入り込むことにより、第2シール部220は、流体出口14側から流体入口11側にかかる圧力によって、流体出口14側から流体入口11側に撓む。即ち、垂直シール部221は、第2弁座部132の垂直面133に向けて撓み、傾斜シール部222は、第2弁座部132の傾斜面134に向けて撓む。このとき、第1ヒンジ部310は、垂直シール部221及び傾斜シール部222の撓みの起点となり、第2ヒンジ部320は、傾斜シール部222の撓みの起点となる。
したがって、弁体20が弁座部13に向けて移動すると、第2シール部220によるシールが第1シール部210によるシールよりも先に開始される。第2シール部220によるシールは、傾斜シール部222の延出方向先端(外周側)から傾斜面134に密着する。そして、傾斜シール部222の根本部分が傾斜面134に密着した後に、垂直シール部221が垂直面133に密着する。即ち、弁体20によるシールは、流体出口14側から流体入口11側へ順に行われる。
これにより、弁体20と、弁室12の流体入口11側の壁面との間に圧力の高い流体(流体出口14側の圧力をもつ流体)が残ることを防止できる。したがって、残された流体から弁体20が圧力を受けて、弁体20が弁座部13から意図せずに離れてしまうことを防止できる。更には、第2シール部220が第1シール部210よりも先にシールを開始するので、第1シール部210が第1弁座部131に勢いよく接触することを防止することができる。
最終的に、第1シール部210は、弾性部材42の付勢力と、流体出口14側から流体入口11側への流体の圧力とにより、第1弁座部131に密着する。また、第2シール部220は、弾性部材42の付勢力と、流体出口14側から流体入口11側への流体の圧力による撓みとにより第2弁座部132に密着する。このように、弁体20が弁座部13に密着することにより、弁室12の入口がシールされるので、流体出口14側から流体入口11側への流体の逆流が防止される。
ところで、フィルタ60は、一次側から二次側へ流れる流体に混入した異物を捕えることにより、弁体20及び弁座部13の位置に所定以上の大きさの異物が進入することを防止する。これに対し、フィルタ60を通過した所定未満の大きさの異物が弁体20及び弁座部13の間に進入した場合には、流体の逆流を防止すべく、弁体20は以下のように動作する。
まず、図7に示すように、第1シール部210及び第1弁座部131の間に異物Dが進入した場合、非弾性材料で形成されている第1シール部210は、第1弁座部131との間に異物Dを噛んでしまうため、第1弁座部131に密着することができない。そのため、第1シール部210は、弁室12の流体入口11をシールすることができない。第2シール部220は、第1シール部210が第1弁座部131に密着することができないので、第2弁座部132まで移動することができない。このとき、弁室12の圧力は、ケーシング10の流体入口11側の圧力よりも大きくなっているため、流体は、弁室12からケーシング10の流体入口11側へと逆流しようとする。
逆流しようとする流体は、板状体41及び第2シール部220の間に進入する。すると、弾性材料によって形成されている第2シール部220は、流体出口14側から流体入口11側にかかる圧力及び弾性部材42の弾性力により撓んで第2弁座部132に密着する。即ち、垂直シール部221は、第1ヒンジ部310を起点として流体入口11側に撓むことにより、垂直面Hが第2弁座部132の垂直面133に密着する。また、傾斜シール部222は、第2ヒンジ部320を起点として流体入口11側に撓むことにより、傾斜面Sが第2弁座部132の傾斜面134に密着する。
このとき、ヒンジ部30が撓みの起点となることにより、第2シール部220を撓ませやすくできる。また、第2シール部220の厚さが外周側に向かって徐々に薄くなるように形成されていることによっても、第2シール部220を撓ませやすくできる。これにより、弁体20は、第1シール部210において弁室12の流体入口11をシールできない場合であっても、第2シール部220において弁室12の流体入口11をシールすることができ、流体の逆流を防止できる。
図8に示すように、垂直シール部221の垂直面Hと第2弁座部132の垂直面133との間に異物Dが進入した場合、垂直シール部221は、弾性部材42の付勢力と、流体出口14側から流体入口11側にかかる圧力とによって、異物Dを包み込むように変形する。これにより、垂直シール部221は、第2弁座部132の垂直面133まで移動して密着することができる。また、第1シール部210は、第1弁座部131に密着することができる。また、傾斜シール部222は、第2弁座部132の傾斜面134に密着することができる。これにより、第1シール部210及び第2シール部220によって、弁室12の入口をシールすることができる。
なお、垂直シール部221の変形によっても、第1シール部210が第1弁座部131に密着できない場合、垂直シール部221は、異物Dを支点として撓むことにより、第2弁座部132の垂直面133に密着する。また、傾斜シール部222は、逆流しようとする流体の圧力により撓むことにより、第2弁座部の傾斜面134に密着する。これにより、第2シール部220において弁室12の入口をシールすることができ、流体の逆流を防止できる。
次に、図9に示すように、傾斜シール部222及び第2弁座部132の傾斜面134の間に異物Dが進入した場合、傾斜シール部222は、流体出口14側から流体入口11側にかかる圧力によって、異物Dを包み込むように変形する。これにより、傾斜シール部222は、第2弁座部132の傾斜面134まで移動して密着することができる。即ち、第1シール部210は、第1弁座部131に密着することができる。また、傾斜シール部222は、第2弁座部132の傾斜面134に密着することができる。これにより、第1シール部210及び第2シール部220によって、弁室12の入口をシールすることができる。
なお、傾斜シール部222の変形によっても、第1シール部210が第1弁座部131に密着できない場合、傾斜シール部222は、流体出口14側から流体入口11側にかかる圧力(背圧)によって、第2ヒンジ部320を起点として撓むことにより、第2弁座部132の傾斜面134に密着する。また、傾斜シール部222の先端側は、異物Dを支点として傾斜面134に密着する。垂直シール部221は、流体出口14側から流体入口11側にかかる圧力(背圧)によって、第1ヒンジ部310を起点として撓む。そして、垂直シール部221は、第2弁座部132の垂直面133に密着する。これにより、第2シール部220において弁室12の入口をシールすることができ、流体の逆流を防止できる。
以上説明した一実施形態の逆止弁1によれば、以下のような効果を奏する。
(1)逆止弁1を、流体入口11、弁室12、弁座部13及び流体出口14が形成されたケーシング10と、弁室12に配置される弁体20と、弁体20を弁座部13側に付勢する付勢部40とを含んで構成した。そして、逆止弁1を更に、ケーシング10における流体入口11側に配置されるフィルタ60を含んで構成した。ここで、弁座部13を、弁室12における流体入口11側に配置される第1弁座部131と、第1弁座部131の外周側に配置される第2弁座部132と、により構成し、弁体20を、第1弁座部131に密着する板状の第1シール部210と、第1シール部210の外周側に配置されて第2弁座部132に密着する第2シール部220と、により構成した。そして、第2シール部220が、流体出口14側から流体入口11側にかかる圧力により撓んで第2弁座部132に密着可能な可撓性を有するように構成した。これにより、大きな異物の進入をフィルタ60により防げ、また、フィルタ60を通過した異物Dがあったとしても、第2シール部220が撓むことにより第2弁座部132に密着することができる。したがって、異物Dが進入した場合であっても、好適なシール性を維持することができる。
(2)第2シール部220について、フィルタ60を通過した異物Dが第1シール部210と第1弁座部131との間に挟まった状態において第2弁座部132に密着するように構成した。これにより、異物Dの影響により第1シール部210が第1弁座部131に密着できない場合であっても、第2シール部220が撓むことにより第2弁座部132に密着する。つまり、第1シール部210が第1弁座部131に対して流体出口14側に所定距離移動した状態であっても、第2シール部220は、第2弁座部132に密着することができる。したがって、好適なシール性を維持することができる。
(3)弁体20を更に、第2シール部220の位置に配置され、第2シール部220の撓みの起点となるヒンジ部30を含んで構成した。これにより、第2シール部220の自身の可撓性と合わせ、ヒンジ部30を起点する第2シール部220の撓みをより大きくすることができる。
(4)第2シール部220の厚さを、外周側に向かって徐々に薄くなるように形成した。これにより、第2シール部220を外周側に向けてより撓みやすくすることができる。第2シール部220の外周側をより撓みやすくすることにより、第2シール部220及び第2弁座部132の間に異物Dが進入したとしても、異物Dを支点としてその外周側の第2シール部220を撓ませることができる。
(5)第1弁座部131を、流体の流入方向Fに対して垂直な垂直面として形成し、第2弁座部132を、流体の流入方向Fとのなす角度が鋭角となるように傾斜した傾斜面として形成した。これにより、第1弁座部131及び第2弁座部132は、第1シール部210及び第2シール部220が密着することにより二重のシール構造とすることができる。
(6)付勢部40を、弁体20の流体出口14側の面に重ね合わされる板状体41と、板状体41を流体出口14側から流体入口11側に向けて付勢する弾性部材42と、を含んで構成した。板状体41を弁体20の流体出口14側の面に重ねることで、弾性部材42による付勢力を弁体20全体に伝えることができる。
以上、本発明の逆止弁の好ましい各実施形態につき説明したが、本発明は、上述の実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
例えば、図10に示すように、第2シール部220の流体入口11側の面に、ヒンジ部30を複数設けてもよい。これにより、第2シール部220をより撓みやすい構成にすることができる。
また、上記実施形態において、フィルタ本体61について、金属線を編んで形成されたメッシュ状の金属網として形成されるとしたが、これに限定されない。例えば、フィルタ本体61は、パンチングメタルや、樹脂成形品であってもよい。