JP2018065707A - 導電性マイエナイト化合物の製造方法および導電性マイエナイト化合物の焼結体 - Google Patents

導電性マイエナイト化合物の製造方法および導電性マイエナイト化合物の焼結体 Download PDF

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暁 渡邉
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Yuto Ogoshi
雄斗 大越
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直通 宮川
優 河内
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優 河内
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茂 鵜川
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卓也 石川
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Abstract

【課題】比較的平坦な表面を有する焼結体を得ることが可能な、導電性マイエナイト化合物の製造方法の提供。【解決手段】(1)酸化カルシウムと酸化アルミニウムとを、13:6〜11:8(CaO:Al2O3に換算したモル比)の割合で含む仮焼粉を準備する工程S110と、(2)前記仮焼粉を含む被処理体を、1kg/cm2〜200kg/cm2の範囲の圧力で加圧した状態で、Ti部材を含む還元性雰囲気下で、1220℃〜1380℃の範囲に保持する工程であって、前記被処理体は、アルミナ布で被覆された状態で加圧される、工程S120と、を有する、導電性マイエナイト化合物の製造方法。【選択図】図1

Description

本発明は、導電性マイエナイト化合物の製造方法および導電性マイエナイト化合物の焼結体に関する。
マイエナイト化合物は、12CaO・7Alで表される代表組成を有し、三次元的に連結された直径約0.4nmの空隙(ケージ)を有する特徴的な結晶構造を持つ。このケージを構成する骨格は、正電荷を帯びており、単位格子当たり12個のケージを形成する。このケージの1/6は、結晶の電気的中性条件を満たすため、内部が酸素イオンで占められている。しかしながら、このケージ内の酸素イオンは、骨格を構成する他の酸素イオンとは化学的に異なる特性を有しており、このため、ケージ内の酸素イオンは、特にフリー酸素イオンと呼ばれている。マイエナイト化合物は、[Ca24Al2864]4+・2O2−とも表記される。
マイエナイト化合物のケージ中のフリー酸素イオンの一部または全部を電子と置換した場合、マイエナイト化合物に導電性が付与される。これは、マイエナイト化合物のケージ内に包接された電子は、ケージにあまり拘束されず、結晶中を自由に動くことができるためである。このような導電性を有するマイエナイト化合物は、特に、「導電性マイエナイト化合物」と称される。
このような導電性マイエナイト化合物は、例えば、酸化カルシウムおよび酸化アルミニウムを含む仮焼粉を、一酸化炭素およびアルミニウム蒸気が存在する還元性雰囲気下で熱処理することにより、製造することができる(特許文献1)。
国際公開第2012/157461号
前述の特許文献1に記載の方法により、高い電子密度を有する導電性マイエナイト化合物を製造することができる。
しかしながら、前述の方法では、熱処理後に得られる導電性マイエナイト化合物の焼結体(以下、単に「焼結体」ともいう)は、反りやうねりによって表面が変形しており、良好な平面度を有する焼結体が得られ難い傾向にある。従って、前述の製造方法では、熱処理後に、焼結体の表面を平坦化するための加工(後処理)が必要となる。ここで、平面度とは、「平面形体の幾何学的に正しい平面からの狂いの大きさ」として定義される。すなわち、ある対象面の平面度は、当該対象面の最凸部と最凹部を含むようにして、当該対象面の上下に、相互に平行な平面を配置したとき、両平面の間の最小距離として求められる。
そのような平坦化のための後処理は、焼結体が小型の場合は、あまり問題にはならない。しかしながら、大型の焼結体が製造される場合、後工程の実施は、極めて煩雑であり、製造コストの上昇につながるという問題が生じ得る。
本発明は、このような問題に鑑みなされたものであり、本発明では、熱処理後に、比較的平坦な表面を有する焼結体を得ることが可能な、導電性マイエナイト化合物の製造方法を提供することを目的とする。また、本発明では、比較的平坦な表面を有する導電性マイエナイト化合物の焼結体を提供することを目的とする。
本発明では、導電性マイエナイト化合物の製造方法であって、
(1)酸化カルシウムと酸化アルミニウムとを、13:6〜11:8(CaO:Alに換算したモル比)の割合で含む仮焼粉を準備する工程と、
(2)前記仮焼粉を含む被処理体を、1kg/cm〜200kg/cmの範囲の圧力で加圧した状態で、Ti部材を含む還元性雰囲気下で、1220℃〜1380℃の範囲に保持する工程であって、前記被処理体は、セラミックス粉末を含む布または紙で被覆された状態で加圧される、工程と、
を有する、製造方法が提供される。
また、本発明では、導電性マイエナイト化合物の焼結体であって、
電子密度が3×1020cm−3以上、厚さが5mm以上であり、
当該焼結体は、主表面を有し、
前記主表面の面積は、40cm以上であり、
前記主表面の平面度は、3mm以下である、焼結体が提供される。
本発明では、熱処理後に、比較的平坦な表面を有する焼結体を得ることが可能な、導電性マイエナイト化合物の製造方法を提供することができる。また、本発明では、比較的平坦な表面を有する導電性マイエナイト化合物の焼結体を提供することができる。
本発明の一実施形態による導電性マイエナイト化合物の製造方法の一例を模式的に示したフロー図である。 被処理体を熱処理する際に使用される装置の一構成例を模式的に示した図である。 図2に示した装置の使用態様を模式的に示した図である。
本発明の一実施形態では、導電性マイエナイト化合物の製造方法であって、
(1)酸化カルシウムと酸化アルミニウムとを、13:6〜11:8(CaO:Alに換算したモル比)の割合で含む仮焼粉を準備する工程と、
(2)前記仮焼粉を含む被処理体を、1kg/cm〜200kg/cmの範囲の圧力で加圧した状態で、Ti部材を含む還元性雰囲気下で、1220℃〜1380℃の範囲に保持する工程であって、前記被処理体は、セラミックス粉末を含む布または紙で被覆された状態で加圧される、工程と、
を有する、製造方法が提供される。
ここで、本願において、「マイエナイト化合物」とは、ケージ(籠)構造を有する12CaO・7Al(以下「C12A7」ともいう)およびC12A7と同等の結晶構造を有する化合物(同型化合物)の総称である。
また、本願において、「導電性マイエナイト化合物」とは、ケージ中に含まれる「フリー酸素イオン」の一部もしくは全てが電子で置換された、電子密度が1.0×1018cm−3以上のマイエナイト化合物を表す。全てのフリー酸素イオンが電子で置換されたときの電子密度は、2.3×1021cm−3である。
従って、「マイエナイト化合物」には、「導電性マイエナイト化合物」および「非導電性マイエナイト化合物」が含まれる。
本発明の一実施形態では、製造される「導電性マイエナイト化合物」の電子密度は、好ましくは3.0×1020cm−3以上である。以下、本願において、3.0×1020cm−3以上の電子密度を有する導電性マイエナイト化合物を、特に「高導電性マイエナイト化合物」と称することにする。
なお、一般に、導電性マイエナイト化合物の電子密度は、マイエナイト化合物の電子密度により、2つの方法で測定される。電子密度が1.0×1018cm−3〜3.0×1020cm−3未満の場合、電子密度は、導電性マイエナイト化合物粉末の拡散反射を測定し、クベルカムンク変換させた吸収スペクトルの2.8eV(波長443nm)の吸光度(クベルカムンク変換値)から算出される。この方法は、電子密度とクベルカムンク変換値が比例関係になることを利用している。以下、検量線の作成方法について説明する。
電子密度の異なる試料を4点作成しておき、それぞれの試料の電子密度を、電子スピン共鳴(ESR)のシグナル強度から求めておく。ESRで測定できる電子密度は、1.0×1014cm−3〜1.0×1019cm−3程度である。クベルカムンク値とESRで求めた電子密度をそれぞれ対数でプロットすると比例関係となり、これを検量線とする。すなわち、この方法では、電子密度が1.0×1019cm−3〜3.0×1020cm−3では検量線を外挿した値である。
一方、電子密度が3.0×1020cm−3〜2.3×1021cm−3の場合、電子密度は、導電性マイエナイト化合物粉末の拡散反射を測定し、クベルカムンク変換させた吸収スペクトルのピークの波長(エネルギー)から換算される。その際には、以下の(1)式が用いられる:

n=(−(Esp−2.83)/0.199)0.782 (1)式

ここで、nは電子密度(cm−3)、Espはクベルカムンク変換した吸収スペクトルのピークのエネルギー(eV)を示す。
また、本願において、導電性マイエナイト化合物は、カルシウム(Ca)、アルミニウム(Al)および酸素(O)からなるC12A7結晶構造を有している限り、カルシウム(Ca)、アルミニウム(Al)および酸素(O)の中から選ばれた少なくとも1種の原子の一部が、他の原子や原子団に置換されていても良い。例えば、カルシウム(Ca)の一部は、マグネシウム(Mg)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、セリウム(Ce)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)および銅(Cu)からなる群から選択される1以上の原子で置換されていても良い。また、アルミニウム(Al)の一部は、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、ホウ素(B)、ガリウム(Ga)、チタン(Ti)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、セリウム(Ce)、プラセオジウム(Pr)、スカンジウム(Sc)、ランタン(La)、イットリウム(Y)、ヨーロピウム(Eu)、イットリビウム(Yb)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)およびテリビウム(Tb)からなる群から選択される1以上の原子で置換されても良い。
導電性マイエナイト化合物におけるカルシウム(Ca)とアルミニウム(Al)の割合は、CaO:Alに換算したモル比で、13:6〜11:8の範囲が好ましく、12.5:6.5〜11:8の範囲がより好ましく、12.3:6.7〜11.5:7.5の範囲がより好ましく、12.2:6.8〜11.8:7.2の範囲がさらに好ましく、約12:7が特に好ましい。カルシウム(Ca)の一部が他の原子に置換されている場合は、カルシウムと他の原子のモル数をカルシウムのモル数とみなす。アルミニウム(Al)の一部が他の原子に置換されている場合は、アルミニウムと他の原子のモル数をアルミニウムのモル数とみなす。
前述のように、特許文献1に記載の製造方法では、導電性マイエナイト化合物の焼結体を製造することができる。しかしながら、その表面の平面度は、あまり良好であるとは言えない場合がある。このため、通常の場合、得られた焼結体に対して、表面を平坦化するための後処理が必要となる。
しかしながら、そのような焼結体を加工しようとして、例えば、磁石のような治具を用いて加工機に焼結体を固定させると、しばしば、振動により、焼結体が破損する場合がある。従って、これを防止するため、通常は、ロウ材を用いて、加工の際に焼結体が振動しないように固定する方法が採用される。しかしながら、ロウ材を使用するには、ロウ材を70℃以上に加熱する必要がある上、回収する際も70℃以上に加熱する必要がある。このように、従来の焼結体の平坦化のための後処理は、煩雑であり、容易に実施できるとは言い難い。
これに対して、本発明の一実施形態では、仮焼粉を含む被処理体は、加圧した状態で熱処理される。この場合、後に詳しく説明するように、熱処理後に、比較的平坦な表面を有する導電性マイエナイト化合物の焼結体を製造することができる。
従って、本発明の一実施形態では、熱処理後に、得られた導電性マイエナイト化合物の焼結体の表面の後処理が実質的に不要となり、あるいは軽微な後処理により十分に平坦な焼結体を得ることができる。
また、これにより、本発明の一実施形態では、大型の導電性マイエナイト化合物の焼結体を製造する際にも、製造コストの上昇を有意に抑制することができる。
(本発明の一実施形態による導電性マイエナイト化合物の製造方法)
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態による導電性マイエナイト化合物の製造方法について、説明する。
図1には、本発明の一実施形態による導電性マイエナイト化合物の製造方法(以下、「第1の製造方法」と称する)のフローを模式的に示す。
図1に示すように、第1の製造方法は、
(1)酸化カルシウムと酸化アルミニウムとを、13:6〜11:8(CaO:Alに換算したモル比)の割合で含む仮焼粉を準備する工程(工程S110)と、
(2)前記仮焼粉を含む被処理体を、1kg/cm〜200kg/cmの範囲の圧力で加圧した状態で、Ti部材を含む還元性雰囲気下で、1220℃〜1380℃の範囲に保持する工程であって、前記被処理体は、セラミックス粉末を含む布または紙で被覆された状態で加圧される、工程(工程S120)と、
を有する。
以下、各工程について詳しく説明する。
(工程S110)
まず、被処理体用の仮焼粉が調製される。
なお、本願において、「仮焼粉」とは、熱処理により調合された、酸化カルシウムと酸化アルミニウムとを含む混合粉末を意味する。「仮焼粉」は、カルシウム(Ca)とアルミニウム(Al)の割合が、CaO:Alに換算したモル比で、13:6〜11:8となるように調合される。
特に、カルシウム(Ca)とアルミニウム(Al)の割合は、CaO:Alに換算したモル比で、12.5:6.5〜11:8の範囲であることが好ましく、12.3:6.7〜11.5:7.5の範囲であることがより好ましく、12.2:6.8〜11.8:7.2の範囲であることがさらに好ましい。理想的には、酸化カルシウムと酸化アルミニウムのモル比は、約12:7である。
仮焼粉は、例えば、以下のようにして調製することができる。
まず、混合粉末を準備する。混合粉末は、少なくとも、酸化カルシウム源および酸化アルミニウム源となる原料を含む。
例えば、混合粉末は、カルシウムアルミネートを含んでも良く、あるいは混合粉末は、カルシウム化合物、アルミニウム化合物、およびカルシウムアルミネートからなる群から選定された少なくとも2つを含んでも良い。
混合粉末は、例えば、カルシウム化合物とアルミニウム化合物とを含んでも良い。また、混合粉末は、例えば、カルシウム化合物とカルシウムアルミネートとを含んでも良い。また、混合粉末は、例えば、アルミニウム化合物とカルシウムアルミネートとを含んでも良い。また、混合粉末は、例えば、カルシウム化合物と、アルミニウム化合物と、カルシウムアルミネートとを含んでも良い。さらに、混合粉末は、例えば、カルシウムアルミネートのみを含む混合粉末であっても良い。
以下、代表例として、混合粉末が少なくとも、酸化カルシウム源となる原料Aと、酸化アルミニウム源となる原料Bとを含む場合を想定して、工程S110について説明する。
原料Aとしては、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸水素カルシウム、硫酸カルシウム、メタリン酸カルシウム、シュウ酸カルシウム、酢酸カルシウム、硝酸カルシウム、およびハロゲン化カルシウムなどが挙げられる。これらの中では、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、および酸化カルシウムが好ましい。
原料Bとしては、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、およびハロゲン化アルミニウムなどが挙げられる。これらの中では、酸化アルミニウムおよび水酸化アルミニウムが好ましい。酸化アルミニウム(アルミナ)には、α−アルミナ、γ−アルミナ、δ−アルミナなどあるが、α−酸化アルミニウム(アルミナ)が好ましい。
なお、仮焼粉は、原料Aおよび原料B以外の物質を含んでも良い。
次に、原料Aおよび原料Bを含む混合粉末が熱処理される。これにより、酸化カルシウムと酸化アルミニウムを含む仮焼粉が得られる。前述のように、仮焼粉中の酸化カルシウムと酸化アルミニウムの割合は、モル比で、13:6〜11:8の範囲である。
なお、熱処理の温度は、おおよそ500℃〜1270℃の範囲である。
ただし、正確には、熱処理の温度は、使用する原料Aおよび原料Bによって変化する。
例えば、原料Aとして酸化カルシウムを使用し、原料Bとして酸化アルミニウムを使用した場合、熱処理温度は、例えば500℃〜1270℃の範囲である。また、原料Aとして炭酸カルシウムを選定した場合、炭酸カルシウムが酸化カルシウムと二酸化炭素に分解する温度は、約900℃であるため、混合粉末の熱処理温度は、少なくとも900℃以上である必要がある。同様に、原料Aとして水酸化カルシウムを選定した場合、水酸化カルシウムが酸化カルシウムと水に分解する温度は、450℃〜500℃であるため、混合粉末の熱処理温度は、少なくとも500℃以上である必要がある。その他の化合物の場合も、同様に考えられる。
原料Aおよび原料Bを含む混合粉末の熱処理温度が高すぎると焼結が進み、粉砕し難くなる。熱処理温度は、700℃〜1250℃の範囲であることが好ましく、900℃〜1200℃の範囲であることがより好ましく、950℃〜1150℃の範囲であることがさらに好ましく、1000℃〜1100℃の範囲であることがもっとも好ましい。
熱処理は、大気中、もしくは酸素含有雰囲気(例えば酸素ガス雰囲気)で実施しても、不活性ガス雰囲気中または真空雰囲気中で実施しても良い。
熱処理後に得られた仮焼粉は、通常、一部が焼結した粉末状または塊状である。このため、必要に応じて、粉砕処理を実施しても良い。
粉砕処理(粗粉砕)には、例えば、ボールミル等が使用される。自動乳鉢を用いても良い。乾式ボールミルでは、平均粒径が1μm〜100μm程度まで粉砕処理が行われても良い。乾式ボールミルでは、粉砕助剤として、例えば、C2n+1OH(nは3以上の整数)で表されるアルコール(例えば、イソプロピルアルコール)が用いられる。ここで、「平均粒径」は、レーザ回折散乱法で測定して得た値を意味するものとする。以下、粉末の平均粒径は、同様の方法で測定した値を意味するものとする。
さらに微細で均一な粉末を得たい場合は、例えば、C2n+1OH(nは3以上の整数)で表されるアルコール(例えば、イソプロピルアルコール)を溶媒として用いた、湿式ボールミル、または循環式ビーズミルなどを用いることにより、粉末の平均粒径を0.5μm〜50μmまで微細化することができる。
以上の工程により、仮焼粉が調製される。
なお、酸化カルシウム源および酸化アルミニウム源に加えて、添加物質を含む混合粉末から、仮焼粉を調製しても良い。
(工程S120)
次に、工程S110で得られた仮焼粉を含む被処理体が、還元性雰囲気下で熱処理される。
被処理体は、前述のような仮焼粉のみで構成されても良いが、仮焼粉に別の添加物質を添加して、被処理体を構成しても良い。
被処理体は、粉末状の仮焼粉(前述のように、別の添加物質を含んでも良い。以下同じ)をそのまま使用しても良い。あるいは、被処理体として、仮焼粉を含む成形体が使用されても良い。
また、被処理体は、微細な多数の貫通孔を有する被覆部材で被覆される。被処理体は、被覆部材で全体が被覆されることが好ましい。被覆部材は、セラミックス粉末を含む布または紙である。本発明において、セラミックス粉末は、アルミナ(酸化アルミニウム)、酸化チタン、酸化マグネシウムのような酸化物、窒化アルミニウム、窒化チタンのような窒化物、炭化ケイ素、炭化チタンのような炭化物、窒化ホウ素のようなホウ化物、水素化物、ハロゲン化物、オキソ酸、水酸化物、硫酸塩、硝酸塩、炭酸塩、酢酸塩、金属錯体(配位化合物)の粉末、あるいはこれらの混合粉末をいう。コスト面からアルミナ粉末が好ましい。
次に、被処理体が還元性雰囲気下で高温処理される。これにより、仮焼粉中の酸化カルシウムおよび酸化アルミニウム(および含まれる場合、カルシウムアルミネート)が反応して非導電性マイエナイト化合物が生成するとともに、これが還元され、導電性マイエナイト化合物が形成される。
被処理体の高温処理は、還元性雰囲気下で実施される。「還元性雰囲気」とは、環境中の酸素分圧が10−3Pa以下の雰囲気の総称を意味し、該環境は、不活性ガス雰囲気、または減圧環境(例えば圧力が100Pa以下の真空環境)であっても良い。酸素分圧は、10−5Pa以下が好ましく、10−10Pa以下がより好ましく、10−15Pa以下がさらに好ましい。
また、被処理体の高温処理は、Ti部材が存在する環境下で実施される。
Ti部材は、例えば、Ti板、Ti箔、およびTi粉末の形態であっても良い。
なお、処理環境下には、Ti部材の他に、さらに、アルミニウム(Al)蒸気源、および一酸化炭素(CO)源を設置しても良い。
このうち、Al蒸気源としては、例えば、アルミニウム粉末、アルミニウム箔、およびアルミニウム板などが使用されても良い。また、CO源としては、例えば、炭素板および炭素容器などの炭素(C)部材が使用されても良い。
前述のように、被処理体は、セラミックス粉末を含む布または紙で被覆された状態で高温処理される。このため、熱処理後に、生成物が他の部材と固着することを防ぐことができ、生成物を比較的容易に回収することが可能となる。
なお、前記セラミックス粉末が、アルミナの場合、アルミナ粉末の量は特に限定されないが、少なすぎると前記固着を防ぎ難くなり、多すぎるとアルミナ粉末から酸素が発生するため、導電性マイエナイト化合物の電子密度が低くなる。アルミナ布に含まれるアルミナ粉末の量は、10重量%〜90重量%が好ましく、20重量%〜80重量%がより好ましく、30重量%〜70重量%がさらに好ましく、40重量%〜60重量%がもっとも好ましい。
前述のように、第1の製造方法では、粉末状の仮焼粉を含む被処理体が使用され、この仮焼粉が、Tiのような還元剤を含む還元性雰囲気下で熱処理される。
この場合、まず、仮焼粉がある温度以上に加熱されると、仮焼粉中の酸化カルシウムと酸化アルミニウム(および含まれる場合、カルシウムアルミネート)とが反応して、非導電性マイエナイト化合物が生成される。
ここで、仮焼粉を含む被処理体は、内部に微視的な隙間を多く有する。このため、還元剤の存在下、生成した非導電性マイエナイト化合物におけるケージ内のフリー酸素は、被処理体の表面から内部までの全体にわたって、速やかに還元され、例えば還元剤の酸化物ガス(TiOガスなど)や酸素ガスとして外部に放出される。すなわち、非導電性マイエナイト化合物は、全体にわたって、速やかに(実際には、非導電性マイエナイト化合物の生成と同時に)還元される。
その後は、通常のセラミックス粒子の焼結過程と同様の過程により、生成した導電性マイエナイト化合物の粉末同士が焼結され、導電性マイエナイト化合物の焼結体が生成される。
このように、第1の製造方法では、非導電性マイエナイト化合物の還元反応により、表面から内部までの全体にわたって、導電性マイエナイト化合物が形成される。その結果、第1の製造方法では、電子密度が3.0×1020cm−3以上の高導電性マイエナイト化合物の焼結体も、比較的容易に得ることができる。
ここで、第1の製造方法では、被処理体の高温処理は、被処理体を、1kg/cm〜200kg/cmの範囲の圧力で加圧した状態で実施される。被処理体に印加する圧力は、10kg/cm〜150kg/cmの範囲であることが好ましく、20kg/cm〜100kg/cmの範囲であることがより好ましく、30kg/cm〜80kg/cmの範囲であることがさらに好ましく、40kg/cm〜60kg/cmの範囲であることがもっとも好ましい。
また、被処理体の高温処理は、1220℃〜1380℃の範囲で実施される。処理温度は、1250℃〜1370℃の範囲であることが好まく、1270℃〜1360℃の範囲であることがより好まく、1280℃〜1350℃の範囲であることがさらに好まく、1290℃〜1340℃の範囲であることがもっとも好ましい。
なお、被処理体の高温での保持時間は、保持される温度によっても変化するが、例えば、保持時間は、1時間〜50時間の範囲であっても良い。保持時間は、2時間〜40時間の範囲であることが好ましく、4時間〜30時間の範囲であることがより好ましく、6時間〜20時間の範囲であることがさらに好ましく、8時間〜15時間の範囲であることがもっとも好ましい。
このように、被処理体を所定の圧力で加圧した状態で熱処理した場合、熱処理後に、比較的平坦な表面を有する導電性マイエナイト化合物の焼結体を製造することができる。
従って、第1の製造方法では、熱処理後に、得られた導電性マイエナイト化合物の表面を後処理する工程が実質的に不要となり、あるいは加工が容易な導電性マイエナイト化合物を得ることができる。
第1の製造方法によって製造される導電性マイエナイト化合物は、緻密な焼結体であり、焼結体の相対密度は、例えば、89%以上である。焼結体の相対密度は、好ましくは92%以上であり、より好ましくは95%以上であり、特に好ましくは97%以上である。相対密度が高いほど、導電性マイエナイト化合物の焼結体が衝撃や熱応力に対して壊れにくくなる。
なお、第1の製造方法では、比較的大型の導電性マイエナイト化合物の焼結体も、製造コストをあまり上昇させずに製造することができる。
例えば、得られる導電性マイエナイト化合物の焼結体は、厚さが5mm〜50mmの範囲であり、主表面の面積が40cm〜5000cmの範囲の寸法を有しても良い。ここで、導電性マイエナイト化合物の焼結体の「主表面」は、焼結体の表面のうち、面積が最大の表面を意味する。
図2には、工程S120において、被処理体を熱処理する際に使用される装置の一構成図を模式的に示す。
図2に示すように、この装置100は、加圧部材110と、加熱室180とを有する。
加圧部材110は、筒状部材120、および押し付け部材130を有する。
前記被処理体は、前記加圧部材内で加圧される。前記筒状部材は、カーボンを含む材質の部材であることが好ましく(例えばカーボンやSiC等)、カーボン製の部材であることがより好ましい。本発明において前記筒状とは、筒形状に限られない。例えば箱形状でもよい。また筒状の断面は、四角形や円形等に限られない。製造される導電性マイエナイト化合物の形状に従えばよい。また前記押し付け部材は、その材質は特に限定されない。カーボンを含む材質の部材であることが好ましく(例えばカーボンやSiC等)、カーボン製の部材であることがより好ましい。したがって、前記被処理体は、カーボンを含む材質の加圧部材内で加圧することが好ましく、カーボン製の加圧部材内で加圧することがより好ましい。特に、カーボンを含む材質の筒状部材内で加圧することが好ましく、カーボン製の筒状部材内で加圧することがより好ましい。
筒状部材120は、側面122および底面124を有し、さらに側面122と底面124に囲まれた内部空間126を有する。より具体的には、内部空間126は、内側側壁128と内側底部壁129によって区画される。
特に、筒状部材120は、略円柱状または角柱状の形態を有しても良い。前者の場合、底面124は略円形となり、後者の場合、底面124は略多角形状となる。内部空間126は、略円柱状または角柱状の形態を有しても良い。前者の場合、内側底部壁129は略円形となり、後者の場合、内側底部壁129は略多角形状となる。
押し付け部材130は、先端135を有し、該先端135を、所定の押し付け圧力で、筒状部材120の内部空間126に挿入することができる。図2には、押し付け部材130が、筒状部材120の内部空間126に挿入される前の状態が示されている。
なお、加圧部材110は、市販のホットプレス装置で構成されても良い。
加熱室180は、加圧部材110を収容する構造を有する。加熱室180は、ガス入口182および排気口184を有し、内部の圧力(真空度)および雰囲気を制御することができる。また、加熱室180は、加圧部材110を加熱できる加熱構造を有しても良い。例えば、加熱室180と筒状部材120の間に発熱体がある構造である。ただし、加圧部材110自身が加熱機構を有する場合、加熱室180の加熱構造は省略できる。
図3には、この装置100を使用する際の態様の一例が示されている。
図3に示すように、装置100を使用する際には、まず、加圧部材110の筒状部材120の内部空間126の下面、すなわち内側底部壁129に、1または2以上のカーボン板140が設置される。ただし、カーボン板140の設置は任意である。
次に、カーボン板140の上に、第1の部材142が設置される。
第1の部材142は、Tiのような還元剤を有する。例えば、第1の部材142は、Ti粉末、Ti板、またはTi箔で構成されても良い。
次に、筒状部材120の内部空間126に、第1の部材142を覆うようにして、被処理体145が設置される。被処理体145は、前述のように、酸化カルシウムおよび酸化アルミニウムを含む仮焼粉を有する。
また、被処理体145は、セラミックス粉末を含む布または紙(図示されていない)で被覆した状態で、内部空間126に設置される。
次に、必要な場合、筒状部材120の内部空間126に、被処理体145を覆うようにして、第2の部材147が設置される。
第2の部材147は、Tiのような還元剤を有する。例えば、第2の部材147は、Ti粉末、Ti板、またはTi箔で構成されても良い。第2の部材147は、第1の部材142と同じ部材であっても良い。
次に、第2の部材147の上に、1または2以上の第2のカーボン板150が設置される。ただし、第2のカーボン板150の設置は任意である。
次に、筒状部材120の内部空間126に、押し付け部材130の先端135が挿入される。また、押し付け部材130に上から荷重を加えることにより、押し付け部材130の先端135を介して、内部空間126内の各部材に、所定の圧力が印加される。
前述のように、印加される圧力は、1kg/cm〜200kg/cmの範囲である。
次に、このようにして構成された加圧部材110を含む組立体160が、加熱室180の内部に設置される。
次に、加熱室180のガス入口182および排気口184を用いて、加熱室180の内部が所定の圧力および雰囲気に調整される。
例えば、排気口184を真空ポンプのような排気装置に接続して、排気装置を稼働させることにより、加熱室180の内部を減圧することができる。その後、ガス入口182を介して、所定の濃度で、所定のガスを導入しても良い。
次に、加熱室180の内部が所定の温度に昇温され、組立体160が加熱される。組立体160の加熱温度は、前述のように、1220℃〜1380℃の範囲である。
加熱時間は、処理温度および被処理体145の質量によっても変化するが、例えば、1時間〜50時間の範囲である。
組立体160の加熱により、カーボン製の加圧部材110、およびカーボン板140、150の側から一酸化炭素ガスが生じる。
また、第1の部材142と第2の部材147の存在により、被処理体145は、Tiのような還元剤に取り囲まれる。
その結果、加熱室180内、特に筒状部材120の内部空間126内は、強い還元性雰囲気となる。そのため、前述のような反応によって、被処理体145から導電性マイエナイト化合物が生成される。
その後、組立体160が常温まで冷却されてから、組立体160が加熱室180から取り出され、組立体160から生成物が回収される。
このような装置100を用いて熱処理を実施することにより、被処理体145から、比較的平坦な表面を有する導電性マイエナイト化合物の焼結体を製造することができる。
なお、上記装置100は、単なる一例に過ぎず、その他の装置を使用して、被処理体を熱処理しても良いことは、当業者には明らかであろう。
(本発明の一実施形態による導電性マイエナイト化合物の焼結体)
次に、本発明の一実施形態による導電性マイエナイト化合物の焼結体について説明する。
本発明の一実施形態による導電性マイエナイト化合物の焼結体(以下、「第1の焼結体」と称する)は、
電子密度が3×1020cm−3以上、厚さが5mm以上であり、
主表面の面積は、40cm以上であり、
前記主表面の平面度は、3mm以下である、
という特徴を有する。
ここで、第1の焼結体の「主表面」とは、前述のように、第1の焼結体の表面のうち、面積が最大の表面を意味する。
第1の焼結体の厚さは、5mm〜50mmの範囲であり、6mm〜40mmの範囲であることが好ましく、7mm〜30mmの範囲であることがより好ましく、8mm〜20mmの範囲であることがさらに好ましく、9mm〜15mmの範囲であることがもっとも好ましい。
また、第1の焼結体の主表面の面積は、40cm〜5000cmの範囲であり、60cm〜4000cmの範囲であることが好ましく、80cm〜3000cmの範囲であることがより好ましく、100cm〜2000cmの範囲であることがさらに好ましく、120cm〜1000cmの範囲であることがもっとも好ましい。
また、第1の焼結体の主表面の平面度は、3.0mm以下であり、1.0mm以下であることが好ましく、0.6mm以下であることがより好ましく、0.3mm以下であることがさらに好ましく、0.1mm以下であることがもっとも好ましい。
このような第1の焼結体は、例えば、前述の第1の製造方法により、製造することができる。
前述のように、従来の高導電性マイエナイト化合物の製造方法では、得られる焼結体の表面は、あまり良好な平面度を有しない。このため、通常の場合、得られた焼結体に対して、表面を平坦化するための後処理が必要となる。
これに対して、第1の焼結体は、比較的大きい寸法を有するものの、比較的平坦な表面を有するという特徴を有する。従って、第1の焼結体は、そのままの状態で、あるいは軽微な加工を実施することにより、使用することができる。
以下、本発明の実施例について説明する。ここで、例1〜例8は実施例であり、例51は比較例である。
(例1)
以下の方法で、導電性マイエナイト化合物を製造した。
(仮焼粉の調製)
まず、酸化カルシウム(CaO):酸化アルミニウム(Al)のモル比換算で12:7となるように、炭酸カルシウム(CaCO、関東化学社製、特級)粉末313.5gと、酸化アルミニウム(α−Al、関東化学社製、特級)粉末186.5gとを混合した。
次に、この混合粉末を、大気中、300℃/時間の昇温速度で1000℃まで加熱し、1000℃に12時間保持した。その後、これを300℃/時間の冷却速度で、室温まで降温した。
その結果、約362gの白色粉末(以下、粉末「A1」と称する)が得られた。レーザ回折散乱法(SALD−2100、島津製作所社製)により、得られた粉末A1の粒度を測定したところ、平均粒径は、10μmであった。
次に、粉末A1を300gと、直径5mmのジルコニアボール3kgと、粉砕助剤としての工業用ELグレードのイソプロピルアルコール1mlとを、7リットルのジルコニア製容器に入れ、容器にジルコニア製の蓋を載せてから、回転速度72rpmで、10時間、ボールミル粉砕処理を実施した。
これにより、白色粉末(以下、粉末「B1」と称する)を得た。X線回折分析の結果、得られた粉末B1は、酸化カルシウム(CaO)と酸化アルミニウム(Al)が主結晶で、僅かにカルシウムアルミネート(CaO.Al、3CaO.Al、CaO.2Al)を含むことが確認された。また、前述のレーザ回折散乱法により得られた粉末B1の平均粒径は、2.0μmであることがわかった。
(導電性マイエナイト化合物の製造)
次に、粉末B1を熱処理し、導電性マイエナイト化合物を製造した。
粉末B1の熱処理には、前述の図2に示したような装置100を使用した。筒状部材120の内側底部壁129は、矩形状であり、約155mm×約105mmの寸法を有する。
筒状部材120の内部空間126には、下から以下の順番で各部材を設置した:
5枚のカーボン板140(155mm×105mm×厚さ20mm×5枚)
アルミナ布(アルミナ粉末を約50wt%含んだ布)(田中製紙工業社製、MA−80)
第1の部材142としてのTi板(154mm×104mm×厚さ0.5mm)
被処理体145としての粉末B1(370g);粉末B1は、前記アルミナ布で被覆した状態で配置した
第2の部材147としてのTi板(154mm×104mm×厚さ0.5mm)
アルミナ布(アルミナ粉末を約50wt%含んだ布)(田中製紙工業社製、MA−80)
4枚のカーボン板150(155mm×105mm×厚さ20mm×4枚)。
次に、押し付け部材130により、得られた筒状部材120に25kg/cmのプレス圧力を印加した状態で、この組立体を加熱室180内に設置した。
ロータリーポンプにより、加熱室180内を、約30Paまで減圧した。この状態で、加熱室180内を加熱し、粉末B1の熱処理を実施した。
熱処理は、300℃/時間の昇温速度で組立体を1300℃まで加熱し、この温度に12時間保持した後、300℃/時間の降温速度で、組立体を室温まで冷却させることにより実施した。
プレス圧力は、1300℃で12時間保持した直後に、0kg/cmまで下げた。
この処理の後に被処理体を回収したところ、表面が黒色の黒色物質(以下、黒色物質「C1」と称する)が得られた。黒色物質C1は、他の部材には固着しておらず、比較的容易に採取された。
黒色物質C1には、反りや膨れなどの変形は観察されず、寸法は、長さ155mm×幅105mm×厚さ8.3mmであった。主表面(長さ155mm×幅105mmの表面)の平面度は、0.3mmであった。また、黒色物質C1の相対密度は、97.7%であり、場所によるバラつきは1%以下であった。
(評価)
黒色物質C1から電子密度測定用サンプルを採取した。サンプルは、アルミナ製自動乳鉢を用いて黒色物質C1の粗粉砕を行い、得られた粗粉のうち、黒色物質C1の中央部分に相当する部分から採取した。
得られたサンプルもX線回折分析の結果、このサンプルは、C12A7構造だけを有することがわかった。また、得られた粉末の光拡散反射スペクトルのピーク位置から求められた電子密度は、2.0×1021cm−3であり、場所によるバラつきは顕著ではなかった。
このように、良好な平坦度を有する高電子密度の導電性マイエナイト化合物が製造された。
(例2)
前述の例1と同様の方法により、導電性マイエナイト化合物を製造した。
ただし、この例2では、前述の(導電性マイエナイト化合物の製造)の工程において、以下の条件を採用した。その他の条件は、例1の場合と同様である。
粉末B1の平均粒径:10μm
熱処理時間:4時間
プレス圧力:75kg/cm
第1の部材142および第2の部材147(Ti板)の厚さ:0.1mm。
熱処理後に、黒色物質(以下、黒色物質「C2」と称する)が得られた。黒色物質C2は、他の部材には固着しておらず、比較的容易に採取された。
黒色物質C2には、反りや膨れなどの変形は観察されず、寸法は、長さ155mm×幅105mm×厚さ8.3mmであった。主表面の平面度は、0.3mmであった。
前述のような評価の結果、黒色物質C2は、C12A7構造を有することがわかった。また、黒色物質C2の相対密度は、93.9%であり、電子密度は、1.3×1021cm−3であった。
(例3)
前述の例1と同様の方法により、導電性マイエナイト化合物を製造した。
ただし、この例3では、前述の(導電性マイエナイト化合物の製造)の工程において、筒状部材120として、内側底部壁129が約204mm×約197mmの寸法を有するものを使用した。なお、押し付け部材130の先端135も、この内側底部壁129に対応する寸法を有する。
さらに、熱処理条件として、以下の条件を採用した。その他の条件は、例1の場合と同様である。
粉末B1の質量:910g
プレス圧力:50kg/cm
熱処理後に、黒色物質(以下、黒色物質「C3」と称する)が得られた。黒色物質C3は、他の部材には固着しておらず、比較的容易に採取された。
黒色物質C3には、反りや膨れなどの変形は観察されず、寸法は、204mm×197mm×厚さ9.0mmであった。主表面の平面度は、0.5mmであった。
前述のような評価の結果、黒色物質C3は、C12A7構造を有することがわかった。また、黒色物質C3の相対密度は、97.0%であり、電子密度は、2.0×1021cm−3であった。
(例4)
前述の例1と同様の方法により、導電性マイエナイト化合物を製造した。
ただし、この例4では、前述の(導電性マイエナイト化合物の製造)の工程において、以下の条件を採用した。その他の条件は、例1の場合と同様である。
粉末B1の平均粒径:10μm
熱処理時間:24時間
プレス圧力:100kg/cm
熱処理後に、黒色物質(以下、黒色物質「C4」と称する)が得られた。黒色物質C4は、他の部材には固着しておらず、比較的容易に採取された。
黒色物質C4には、反りや膨れなどの変形は観察されず、寸法は、長さ155mm×幅105mm×厚さ8.9mmであった。主表面の平面度は、0.3mmであった。
前述のような評価の結果、黒色物質C4は、C12A7構造を有することがわかった。また、黒色物質C4の相対密度は、94.1%であり、電子密度は、1.9×1021cm−3であった。
(例5)
前述の例1と同様の方法により、導電性マイエナイト化合物を製造した。
ただし、この例5では、前述の(導電性マイエナイト化合物の製造)の工程において、以下の条件を採用した。その他の条件は、例1の場合と同様である。
粉末B1の平均粒径:10μm
粉末B1の質量:440g
熱処理温度:1280℃。
熱処理後に、黒色物質(以下、黒色物質「C5」と称する)が得られた。黒色物質C5は、他の部材には固着しておらず、比較的容易に採取された。
黒色物質C5には、反りや膨れなどの変形は観察されず、寸法は、長さ155mm×幅105mm×厚さ19mmであった。主表面の平面度は、0.1mm以下であった。
前述のような評価の結果、黒色物質C5は、C12A7構造を有することがわかった。また、黒色物質C5の相対密度は、89.7%であり、電子密度は、1.2×1021cm−3であった。
(例6)
前述の例1と同様の方法により、導電性マイエナイト化合物を製造した。
ただし、この例6では、前述の(導電性マイエナイト化合物の製造)の工程において、筒状部材120として、内側底部壁129が約204mm×約197mmの寸法を有するものを使用した。なお、押し付け部材130の先端135も、この内側底部壁129に対応する寸法を有する。
さらに、熱処理条件として、以下の条件を採用した。その他の条件は、例1の場合と同様である。
粉末B1の質量:910g
熱処理温度:1320℃。
熱処理後に、黒色物質(以下、黒色物質「C6」と称する)が得られた。黒色物質C6は、他の部材には固着しておらず、比較的容易に採取された。
黒色物質C6には、反りや膨れなどの変形は観察されず、寸法は、204mm×197mm×厚さ8.9mmであった。主表面の平面度は、0.5mmであった。
前述のような評価の結果、黒色物質C6は、C12A7構造を有することがわかった。また、黒色物質C6の相対密度は、91.0%であり、電子密度は、1.9×1021cm−3であった。
(例7)
前述の例1と同様の方法により、導電性マイエナイト化合物を製造した。
ただし、この例7では、前述の(導電性マイエナイト化合物の製造)の工程において、以下の条件を採用した。その他の条件は、例1の場合と同様である。
第1の部材142および第2の部材147(Ti板)の厚さ:1mm。
熱処理後に、黒色物質(以下、黒色物質「C7」と称する)が得られた。黒色物質C7は、他の部材には固着しておらず、比較的容易に採取された。
黒色物質C7には、反りや膨れなどの変形は観察されず、寸法は、長さ155mm×幅105mm×厚さ8.5mmであった。主表面の平面度は、0.3mmであった。
前述のような評価の結果、黒色物質C7は、C12A7構造を有することがわかった。また、黒色物質C5の相対密度は、96.7%であり、電子密度は、2.1×1021cm−3であった。
(例8)
前述の例1と同様の方法により、導電性マイエナイト化合物を製造した。
ただし、この例8では、前述の(仮焼粉の調製)の工程において、粉末B1の代わりに、以下の方法で、粉末B8を調製した。
(粉末B8の調整)
まず、酸化カルシウム(CaO):酸化アルミニウム(Al)のモル比換算で12:7となるように、炭酸カルシウム(CaCO、関東化学社製、特級)粉末313.5gと、酸化アルミニウム(α−Al、関東化学社製、特級)粉末186.5gとを混合した。次に、この混合粉末を、大気中、300℃/時間の昇温速度で1200℃まで加熱し、1200℃に6時間保持した。その後、これを300℃/時間の冷却速度で降温し、約362gの白色粉末(以下、粉末「A8」と称する)を得た。
レーザ回折散乱法(SALD−2100、島津製作所社製)により、得られた粉末A8の粒度を測定したところ、平均粒径は、10μmであった。
次に、粉末A8を300gと、直径5mmのジルコニアボール3kgと、粉砕助剤としての工業用ELグレードのイソプロピルアルコール1mlとを、7リットルのジルコニア製容器に入れ、容器にジルコニア製の蓋を載せてから、回転速度72rpmで、10時間、ボールミル粉砕処理を実施した。
これにより、粉末B8が得られた。X線回折分析の結果、粉末B8は、カルシウムアルミネート(CaO.Al、3CaO.Al、CaO.2Al)が主結晶で、僅かに酸化カルシウム(CaO)と酸化アルミニウム(Al)を含むことがわかった。また、前述のレーザ回折散乱法により得られた粉末B8の平均粒径は、2.0μmであった。
次に、前述の例1に示した(導電性マイエナイト化合物の製造)の工程を実施した。
熱処理後に、黒色物質(以下、黒色物質「C8」と称する)が得られた。黒色物質C8は、他の部材には固着しておらず、比較的容易に採取された。
黒色物質C8には、反りや膨れなどの変形は観察されず、寸法は、長さ155mm×幅105mm×厚さ8.4mmであった。主表面の平面度は、0.3mmであった。
前述のような評価の結果、黒色物質C8は、C12A7構造を有することがわかった。また、黒色物質C8の相対密度は、97.5%であり、電子密度は、1.9×1021cm−3であった。
(例51)
前述の例1と同様の方法により、導電性マイエナイト化合物の製造を試みた。
ただし、この例51では、前述の(導電性マイエナイト化合物の製造)の工程において、Ti板を使用しなかった。すなわち、筒状部材120の内部空間126には、5枚のカーボン板140、アルミナ布、被処理体145(アルミナ布で被覆)、アルミナ布、および4枚のカーボン板150の順に、各部材を積層した。また、プレス圧力は、100kg/cmとした。
熱処理後に、黒色物質(以下、黒色物質「C51」と称する)が得られた。黒色物質C51の粉末のX線回折の結果、黒色物質C51の主結晶は、C3A(3CaO.Al)であることがわかった。
このように、例51では、導電性マイエナイト化合物を製造することはできなかった。
以下の表1には、例1〜例8および例51における導電性マイエナイト化合物の製造条件、および評価結果をまとめて示した。
Figure 2018065707
100 装置
110 加圧部材
120 筒状部材
122 側面
124 底面
126 内部空間
128 内側側壁
129 内側底部壁
130 押し付け部材
135 先端
140 カーボン板
142 第1の部材
145 被処理体
147 第2の部材
150 第2のカーボン板
160 組立体
180 加熱室
182 ガス入口
184 排気口

Claims (7)

  1. 導電性マイエナイト化合物の製造方法であって、
    (1)酸化カルシウムと酸化アルミニウムとを、13:6〜11:8(CaO:Alに換算したモル比)の割合で含む仮焼粉を準備する工程と、
    (2)前記仮焼粉を含む被処理体を、1kg/cm〜200kg/cmの範囲の圧力で加圧した状態で、Ti部材を含む還元性雰囲気下で、1220℃〜1380℃の範囲に保持する工程であって、前記被処理体は、セラミックス粉末を含む布または紙で被覆された状態で加圧される、工程と、
    を有する、製造方法。
  2. 前記セラミックス粉末は、アルミナ粉末である、請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記(2)の工程は、さらに、CO源および/またはAl蒸気源を含む環境下で実施される、請求項1または2に記載の製造方法。
  4. 前記(2)の工程は、前記被処理体を、カーボンを含む材質の加圧部材内で加圧する、請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
  5. 前記(2)の工程は、ホットプレス装置により実施される、請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
  6. 前記(2)の工程後に、電子密度が3×1020cm−3以上の導電性マイエナイト化合物が得られる、請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
  7. 導電性マイエナイト化合物の焼結体であって、
    電子密度が3×1020cm−3以上、厚さが5mm以上であり、
    当該焼結体は、主表面を有し、
    前記主表面の面積は、40cm以上であり、
    前記主表面の平面度は、3mm以下である、請求項1〜6のいずれかの方法で製造される焼結体。
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