JP2018064494A - グリコサミノグリカンおよびシアル酸含有食品 - Google Patents

グリコサミノグリカンおよびシアル酸含有食品 Download PDF

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Abstract

【課題】効率よく筋力や筋肉量、骨密度を改善または増強することができる食品組成物を提供するとともに、加齢によるロコモティブシンドローム、骨粗鬆症、サルコペニア、認知症、または肝機能障害の予防もしくは改善に有用な食品組成物を提供することを目的とする。【解決手段】グリコサミノグリカンおよびシアル酸を含む、骨または筋肉の増強または減少防止のための食品組成物、を提供する。【選択図】なし

Description

本発明は、グリコサミノグリカンおよびシアル酸を含有する食品組成物に関する。
運動と健康の関係が明らかになるにしたがい、若年者から高齢者に至るまで体を動かしたり鍛えたりすることが盛んになっている。しかし筋力や筋肉量、骨密度の不足などから事故や有害事象も多発している。そのため、骨または筋肉の増強または減少防止のための、各種プロテインやアミノ酸を含む健康食品やサプリメントが市販されている。しかし、これらには生体内で骨や筋肉等の合成に関与しているホルモンなどの産生を促す成分は含まれていないことから効率が低く、目的とする改善効果が得られない場合も多い。
高齢者の場合、加齢に伴う性ホルモン、特にテストステロンの顕著な減少が見られ、20才代を100%とすると、40〜50才代で70〜80%、60才代以降では50%以下にまで減少することが報告されている(非特許文献1)。この加齢に伴うテストステロンの減少より、抑鬱症状を主訴とする精神症状、筋力低下、不眠、性欲減退などの諸症状が誘発されることが報告されている(非特許文献2〜4)。近年ではこれら諸症状の他にも、テストステロンの減少は、インスリン非依存性糖尿病、高血圧、最終糖化物(Advanced Glycation End products:AGEs)産生、認知症の発症にも深く関わっていることが明らかにされてきている(非特許文献5〜10)。なお、従来から用いられているテストステロンの減少を補う方法として、外部からのテストステロン補充療法が知られている。
オステオカルシン(OCN)は骨形成に関与するホルモンとして位置付けられていたが、骨形成以外にも抗糖尿病(抗グルコース抵抗性)や抗高血圧等の多様な機能を示し、特にテストステロンの産生誘導には非常に強く関与していることが報告されている(非特許文献11)。その中で、OCNによるテストステロンの産生により老齢動物のバイタルサインを若齢動物とほぼ同等にまで若返りさせることが可能であるとの知見が示されており、これはヒトでも同様であると示唆されている。
一方、シアル酸(SA)は細胞間識別機能、感染防御活性、免疫機能制御機能、ミオバチー(Myopathy)改善機能、発毛・育毛機能等を有することが報告されている(非特許文献12〜14)。
このように、生体の健康や運動機能の維持・増進にOCNやSAが大きく関わっていることが示唆されている。
発明者らはグリコサミノグリカン(GAG)であるE型コンドロイチン硫酸(CS−E)の特徴的な作用として、骨芽細胞においてOCNの産生を誘導・促進することを報告している(非特許文献15および16)。また、CS−Eが経口的にOCNの産生およびテストステロンを誘導・促進することを明らかにしている(非特許文献15および16)。
岩本晃明、他;日泌尿会誌、95、751-760 (2004) 伊藤直樹、他;医学のあゆみ、205、380-384 (2003) 三熊直人;札幌医誌、64、253-266 (1995) 那須恵子;静岡県立大学短期大学部特別報告書(13、14年度)、48、1-10 (2003) Kawai Y., et al.; J. Biochem (Tokyo), 60, 317-321 (1966) Suzuki S., et al.; J. Biol. Chem., 243, 1543-1550 (1968) Stevens R.L., et al.; Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 85, 2284-2287 (1988) Saigo K. and Egami F.; J. Neurochem., 17, 633-647 (1970) Maeda N., et al.; J. Biol. Chem., 274, 12474-12479 (1999) Ueoka C., et al.; J. Biol. Chem., 275, 37407-37413 (2000) Oury F., et.al.; Cell, 144, 796-807 (2011) Malicdan, MC et al., Nat. Med., 15, 690 (2009) 野口悟, 生化学,83(4),316 (2012) 岡嶋研二,Fragrance J., 37(10), 43 (2009) 沼田ら、ジャパンフードサイエンス、2012-2、19-20 (2012) 谷ら、食品と開発、45 (6)、1-2 (2010)
市販されている健康食品やサプリメントには、生体内で骨や筋肉等の合成に関与しているホルモンの産生を促す成分は含まれていないことから、骨または筋肉の増強または減少防止の効率が低い。本発明は、効率よく骨または筋肉の増強または減少防止をすることができる食品組成物を提供するとともに、加齢によるロコモティブシンドローム(運動器症候群)、骨粗鬆症、サルコペニア、認知症、または肝機能障害の予防もしくは改善に有用な食品組成物を提供することを目的とする。
本発明者は、効率よく骨または筋肉の増強または減少防止をすることができ、加齢によるロコモティブシンドローム、骨粗鬆症、またはサルコペニアの予防または改善にも有用な食品について鋭意検討したところ、OCNの産生を促すことが明らかとなったE型コンドロイチン硫酸(CS−E)などのグリコサミノグリカン、およびシアル酸を含む食品組成物が有用であることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本明細書は以下の発明の開示を包含する。
[1]グリコサミノグリカンおよびシアル酸を含む、骨または筋肉の増強または減少防止のための食品組成物。
[2]グリコサミノグリカンがE型コンドロイチン硫酸、H型コンドロイチン硫酸、ヘパリン、ヘパラン硫酸から選択される1つまたは複数である、[1]に記載の食品組成物。
[3]グリコサミノグリカンがE型コンドロイチン硫酸である、[1]または[2]に記載の食品組成物。
[4]シアル酸がN−アセチルノイラミン酸である、[1]〜[3]のいずれかに記載の食品組成物。
[5]グリコサミノグリカンおよびシアル酸の重量比が50:1〜1:1である、[1]〜[4]のいずれかに記載の食品組成物。
[6]グリコサミノグリカンの一日の摂取量が100mg以上であり、シアル酸の一日の摂取量が10mg以上である、[1]〜[5]のいずれかに記載の食品組成物。
[7]さらにホエータンパク質を含む、[1]〜[6]のいずれかに記載の食品組成物。
[8]ロコモティブシンドローム、骨粗鬆症、またはサルコペニアの予防または改善のための、[1]〜[7]のいずれかに記載の食品組成物。
[9]筋肉の増強のための、[1]〜[8]のいずれかに記載の食品組成物。
本発明の食品組成物を用いることにより、効率よく骨または筋肉の増強または減少防止をすることができ、本発明の食品組成物は、加齢によるロコモティブシンドローム、骨粗鬆症、またはサルコペニアの予防または改善にも用いることができる。
本発明の食品組成物の摂取により、若年者では骨または筋肉などの順調な発育による身体能力の向上を実現することができ、中高年者では骨または筋肉などの減少を緩和して運動の継続を可能にすることにより、メタボリックシンドロームの発症を未然に防止することができる。
以下、非限定的に本発明の態様を説明する。
本発明の食品組成物は、グリコサミノグリカンおよびシアル酸を含む、骨または筋肉の増強または減少防止のための食品組成物である。
本明細書において「グリコサミノグリカン(GAG)」とは、直鎖状または一部に分岐を有する多糖であり、ウロン酸(グルクロン酸もしくはイズロン酸)とアミノ糖(グルコサミンまたはガラクトサミン)が結合した二糖の繰り返し単位から構成される。例えば、コンドロイチン硫酸(A型、B型(デルマタン硫酸)、C型、D型、E型、H型、K型など)、ヒアルロン酸、ヘパリン、ヘパラン硫酸、ケラタン硫酸などが含まれ、ヒアルロン酸を除き、二糖の繰り返し単位には硫酸基が付加している。また、ヒアルロン酸を除き、コアタンパク質と結合してプロテオグリカンを形成していることが多い。本発明の食品組成物に用いるグリコサミノグリカンは、好ましくはE型コンドロイチン硫酸、H型コンドロイチン硫酸、ヘパリン、ヘパラン硫酸であり、より好ましくはE型コンドロイチン硫酸である。GAGは塩の形態でもよく、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩など、好ましくはナトリウム塩、カリウム塩、より好ましくはナトリウム塩を用いることができる。
本明細書において、「シアル酸」とは、ノイラミン酸のアミノ基やヒドロキシ基が置換された化合物を総称するファミリー名である。例えば、N−アセチルノイラミン酸、N−グリコリルノイラミン酸などが含まれる。本発明の食品組成物に用いるシアル酸は、N−アセチルノイラミン酸である。
本発明の食品組成物に用いるグリコサミノグリカンは既に調製されているものであってもよく、適当な原材料から調製したものであってもよい。原材料としては、例えば、円口類、軟骨魚類、硬骨魚類、両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類などの脊椎動物、昆虫・甲殻類などの節足動物、イカなどの軟体動物、ナマコなどの棘皮動物など;好ましくはサメ、エイ、ウナギ、サケ、ニワトリ、ブタ、ウシ、カブトガニ、イカ;より好ましくはイカの頭部軟骨などの天然由来の原材料を用いることができる。
本発明の食品組成物に用いるグリコサミノグリカンは、例えば5〜20kDa、好ましくは6〜15kDa、より好ましくは8〜10kDaの分子量(重量平均分子量)のものを用いることができる。用いるグリコサミノグリカンがE型コンドロイチン硫酸である場合、例えば5〜20kDa、好ましくは6〜15kDa、より好ましくは8〜10kDaの分子量(重量平均分子量)のものを用いることができる。
本発明の食品組成物に用いるシアル酸は既に調製されているものであってもよく、適当な原材料から調製したものであってもよい。原材料としては、例えばアナツバメ族の鳥の巣、牛乳などの動物の乳、鶏卵や魚卵などの動物の卵、家畜などの動物の体液(血液、唾液、消化液など)、ナマコなどの棘皮動物の組織、クラゲなどの刺胞動物の組織などの天然由来の原材料を用いることができる。
本発明の食品組成物は、グリコサミノグリカンおよびシアル酸を、例えば、50:1〜1:1、好ましくは25:1〜2:1、より好ましくは15:1〜5:1、最も好ましくは10:1の重量比で含んでいる。グリコサミノグリカンおよびシアル酸の他、例えば、ホエー(乳清)タンパク質などの利用効率の高いタンパク質を含んでいてもよい。これらのタンパク質と、グリコサミノグリカンおよびシアル酸の合計量との重量比は、例えば、30:1〜1:1、好ましくは20:1〜2:1、より好ましくは15:1〜5:1、さらに好ましくは10:1〜8:1である。
本発明の食品組成物によるグリコサミノグリカンの一日の摂取量は、例えば、100〜2,000mg、好ましくは250〜1,500mg、より好ましくは500〜1,000mgであり、シアル酸の一日の摂取量は、例えば、10〜200mg、好ましくは25〜150mg、より好ましくは50〜100mgである。
本発明の食品組成物によるグリコサミノグリカンの一日の摂取量の下限値は、例えば、100mg、好ましくは250mg、より好ましくは500mgであり、シアル酸の一日の摂取量の下限値は、例えば、10mg、好ましくは25mg、より好ましくは50mgである。
本発明の食品組成物は、例えば、90日以上、好ましくは60日以上、より好ましくは30日以上連続して摂取することが望ましい。
本発明の食品組成物は、健康食品、サプリメントなどとして使用することができる。例えば、錠剤、カプセル剤(軟カプセル剤、硬カプセル剤)、顆粒剤(ドライシロップを含む)、散剤(粉末剤)、細粒剤、丸剤などの固形製剤、水性または非水性の内服用液(液剤、懸濁剤、シロップ剤など)として使用することができる。
上記の各種製剤は、本発明の食品組成物と、健康食品、サプリメントなどで通常許容され得る添加剤を混和して、周知の方法で製造することができる。そのような添加剤としては、例えば、賦形剤、滑沢剤(コーティング剤)、結合剤、崩壊剤、安定剤、矯味矯臭剤、基剤、分散剤、希釈剤、界面活性剤、乳化剤、経皮吸収促進剤、pH調整剤、保存剤、着色剤、油分(油脂、鉱物油など)、保湿剤、アルコール、増粘剤、ポリマー、皮膜形成剤、紫外線吸収剤、細胞賦活剤、酸化防止剤、防腐剤、清涼剤、消臭剤、顔料、染料、香料、糖類、アミノ酸類、ビタミン類、有機酸、有機アミン、植物抽出物などがあげられるが、これらに限定されるものではない。
本発明の食品組成物は、例えば、ロコモティブシンドローム、骨粗鬆症、サルコペニア、認知症、肝機能障害などの予防または改善に用いることができる。
以下、本発明の具体的態様を実施例として説明する。
実施例1 ボランティアの被験者による被験食品の効果の評価試験
1.E型コンドロイチン硫酸(CS−E)もしくはシアル酸(SA)の単体、またはそれらの混合物の摂取が筋肉量および体脂肪に及ぼす効果
1包あたり、CS−E(0.5g、ハイドロックス社製、商品名:イカコンドロイチン)の単体、SA(0.05g、N−アセチルノイラミン酸、ハイドロックス社製、商品名:MFGM)の単体、またはCS−E(0.5g)とSA(0.05g、N−アセチルノイラミン酸)の混合物を含む、3種類の被験食品を作製した。健康な40〜50歳代の男性9名を3つの群に分け、群ごとに異なる被験食品を1日に1包ずつ1カ月間連日就寝前に摂取させた。摂取前および1カ月後に総筋肉量、右足、左足、右腕、左腕、および体幹の筋肉量および体脂肪率をInner SCAN 50V(TANITA社製)を用いて測定した。日常生活の中で、普段通りの歩行量、運動量を継続してもらい、その他に行動について指示は行わなかった。被験食品の摂取期間の前後での被験者の筋肉量および体脂肪率の変化率を表1に示す。
Figure 2018064494
各群の被験者3名の平均値を被験食品の摂取期間開始時からの変化率(%)で示している。その結果、CS−Eの単体を摂取した群(A)またはSAの単体を摂取した群(B)と比較して、CS−EとSAの混合物を摂取した群(C)では、より高い筋肉量の増加率および体脂肪率の減少率が達成されたことが明らかとなり、CS−EとSAを混合して摂取することにより、増強された効果が得られることが示唆された。
2.ロコモティブシンドロームの症状の改善効果
1包あたり、CS−E(0.5g、ハイドロックス社製、商品名:イカコンドロイチン)、SA(0.05g、N−アセチルノイラミン酸、ハイドロックス社製、商品名:MFGM)、およびホエー(乳清)タンパク質濃縮物(0.45g、AGROPUR社製、商品名:ISO CHILL 8000)を配合して被験食品を作製した。5名の60歳代(男性3名、女性2名)に被験食品を1日に1包(1g)ずつ1ヶ月間連日摂取させ、摂取期間終了後に自由回答によるコメントを聴取した。結果を表2に示す。
Figure 2018064494
被験食品の摂取により、被験者のロコモティブシンドロームの症状が改善していることが示唆された。
3.筋肉増強効果
1包あたり、ホエー(乳清)タンパク質濃縮物(4.45g、AGROPUR社製、商品名:ISO CHILL 8000)、CS−E(0.5g、ハイドロックス社製、商品名:イカコンドロイチン)、およびSA(0.05g、N−アセチルノイラミン酸、ハイドロックス社製、商品名:MFGM)を混合し、賦形剤を加えずに押出成形により顆粒化したものを、被験食品とした。
(1)40歳代の筋肉トレーニングをしている10名の男性被験者に対して、被験食品を1日に1包(5g)摂取させ、4週間後に筋肉量をInner SCAN 50V(TANITA社製)を用いて測定した。筋肉量が平均で5%程度上昇していた。また、これらの被験者は各種のプロテイン・サプリメントを以前から摂取していたが、これまで筋肉量の増加は認められていなかった。
(2)高校のアメリカンフットボール部の6名の被験者に対して、被験食品を1日に2包(10g)摂取させ、3週間後に筋肉量、体脂肪、および身体各部のサイズを測定し、摂取期間の前後での変化率を算出した。結果を表3に示す。
Figure 2018064494
被験者6名の平均値を被験食品の摂取期間開始時からの変化率(%)で示している。
その結果、被験食品の摂取により体脂肪は減少し、その他は全て増加したことが明らかとなった。特に、胸囲や左右太ももは、サイズがそれぞれ約3%ずつ増加しており、被験食品による効果が顕著であった。また、被験者6名は、被験食品の摂取期間開始前には市販のプロテイン・サプリメントを摂取していたが、これを本発明の被験食品に変更したこと以外は、摂取期間開始前と摂取期間中とで何ら異なることはしていない。

Claims (9)

  1. グリコサミノグリカンおよびシアル酸を含む、骨または筋肉の増強または減少防止のための食品組成物。
  2. グリコサミノグリカンがE型コンドロイチン硫酸、H型コンドロイチン硫酸、ヘパリン、ヘパラン硫酸から選択される1つまたは複数である、請求項1に記載の食品組成物。
  3. グリコサミノグリカンがE型コンドロイチン硫酸である、請求項1または2に記載の食品組成物。
  4. シアル酸がN−アセチルノイラミン酸である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の食品組成物。
  5. グリコサミノグリカンおよびシアル酸の重量比が50:1〜1:1である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の食品組成物。
  6. グリコサミノグリカンの一日の摂取量が100mg以上であり、シアル酸の一日の摂取量が10mg以上である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の食品組成物。
  7. さらにホエータンパク質を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の食品組成物。
  8. ロコモティブシンドローム、骨粗鬆症、またはサルコペニアの予防または改善のための、請求項1〜7のいずれか1項に記載の食品組成物。
  9. 筋肉の増強のための、請求項1〜8のいずれか1項に記載の食品組成物。
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