以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお以下に説明する本実施形態は特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
1.本実施形態の手法
まず本実施形態の手法について説明する。図2等を用いて後述する無接点電力伝送システムで充電を行う場合、偶発的に充電の中断、再開が生じてしまうおそれがある。接点を有する電力伝送システムであれば、充電する際には送電装置10(充電器)と受電装置40(電子機器)を機械的にロックする必要があるが、無接点電力伝送システムでは、受電装置40を送電装置10にある程度近づければ充分なためである。
具体的には、後述する図5の例において、ユーザーが受電装置40を含む電子機器510を、送電装置10を含む機器(充電器500)から取り去ろうとして、取り損なった場合が考えられる。ユーザーによる取り損ないとは、ユーザーが電子機器510を一時的に手で把持するものの、電子機器510が手から脱落し、元の位置に戻るような動作を表す。そのため、取り損ないが発生した場合、ユーザーによる一時的な把持動作によりバッテリーは充電不可の状態となり、その直後に、手から脱落して受電装置40が元の位置に戻ることで、バッテリーは再度充電可能な状態に移行する。この場合、受電装置40は再度バッテリーの充電を開始することになる。
また、ここではユーザーの取り損ないの例を示したが、振動等により送電装置10と受電装置40の相対位置が変化する場合も同様である。送電装置10を含む装置(充電器)として、振動等による位置ズレが発生しても、充電可能な位置関係に戻るように、受電装置40(電子機器510)との位置を調整する構成を有するものもある。この場合も、バッテリーは一時的に充電できない状態に移行した後、再度充電可能な状態に戻る。
ここで問題となるのが、すでに満充電に近い状態となっているバッテリーに対して、充電が再開されてしまうケースである。この場合、バッテリーの充電はほぼ完了しており、且つ大きな放電もしていない状態である。つまり、再度充電が行われたとしても、当該充電はバッテリーの劣化に対する影響は小さく、実質的な充電とは言えない。
バッテリーを管理する指標として、充電回数情報(以下、サイクル回数、サイクルタイムとも記載)を用いる手法が広く知られている。バッテリーは充電や放電を繰り返すことで劣化することが知られているため、充電回数をカウントすることで、バッテリーの劣化管理が可能になる。
充電回数情報は、充電回数に応じた値となればよく、例えば充電開始時にカウントアップされたり、充電が完了した(満充電フラグ=1となった)場合にカウントアップされればよい。ただし、上述したバッテリーの劣化に対する影響が小さい充電で、充電回数をカウントアップすることは適切とは言えない。上述した例であれば、実際にはバッテリーの劣化度合いが小さいにもかかわらず、取り損ないや振動の影響で充電回数が多くカウントされてしまい、劣化度合いが大きいと誤判定するおそれがある。
よって、バッテリーに対する充電が実質的なものか否か、即ち劣化に対する影響が大きいか否かに応じて、充電回数情報のカウントアップを制御するとよい。その際、バッテリーの充電制御に関する情報を用いることが有用である。
バッテリーの充電では、定電流充電と定電圧充電という2つの充電モードを用いる手法が知られている。以下、本明細書では、定電流充電をCC(Constant-Current)充電、定電圧充電をCV(Constant-Voltage)充電とも表記する。CC充電とは、充電電流iBATとして所与の定電流値iCCを用いる充電である。CV充電とは、バッテリー電圧VBATが所与の定電圧値CVとなるように(CVを超えないように)充電電流iBATを制御する充電である。
図7等を用いて後述するように、CC充電を用いることで、バッテリー電圧VBATを短時間で大きく上昇させることができる。またCV充電を用いることで、充電電流iBATは徐々に減少するため、充電電流iBATの急激な変動を抑止し、電流値や電圧値を安定させること等が可能になる。CC充電からCV充電へ移行する充電制御を行うことで、充電電流iBATやバッテリー電圧VBATを正確に制御できるため、安定した充電が可能になる。
本実施形態の制御装置50は、図1に示すように送電装置10から無接点電力伝送で供給された電力を受電する受電装置40のための制御装置であって、受電装置40内の受電部52が受電した電力に基づいて、バッテリー90を充電する充電部58と、充電部58を制御する制御部54を含む。そして制御部54は、定電流充電と定電圧充電を切り替える制御を行うとともに、定電流充電から定電圧充電への切り替えが行われたことを条件に、バッテリー90の充電回数を表す充電回数情報を更新する制御を行う。
このようにすれば、CC充電からCV充電への切り替えに基づいて、充電回数情報を制御することが可能になる。上述したように、CC充電やCV充電定では、充電電流iBATやバッテリー電圧VBATが細かく制御されているため、充電モードの切り替わりは、バッテリー90に対してどのような充電を行ったかを表す情報となる。つまり、CC充電からCV充電への切り替えに関する情報を用いることで、充電回数情報を適切にカウントすること、即ちバッテリーの劣化を適切に管理することが可能になる。
また、CC充電からCV充電への切り替え制御では、充電電流iBATとバッテリー電圧VBATの両方の情報が用いられる。つまり、電流及び電圧の両方を充電回数情報のカウントアップ判定に用いることになるため、容量値(電流の時間積分)を用いる特許文献1に比べて適切なカウントアップが可能になる。狭義には、本実施形態に係るバッテリー90は、リチウムイオン電池であってもよい。リチウムイオン電池は、特許文献1で対象としているニッケル水素電池と比較した場合、バッテリー90の劣化に対して、バッテリー電圧VBATの影響が大きいと考えられている。よって、本実施形態の手法を用いることで、特許文献1の手法に比べて適切な充電回数情報のカウントが可能になる。
さらに、CC充電を行う制御、CV充電を行う制御、CC充電とCV充電を切り替える制御は、バッテリー90の充電制御として広く行われるものである。そのため、本実施形態の手法では、特許文献1の手法(電流の時間積分)のように、充電回数情報の更新処理特有の処理を行う必要性が低い。例えば、図9を用いて後述するフラグ情報(iCCflag)の管理のように、容易な処理により充電回数情報の制御を実現可能である。
以下、本実施形態に係る制御装置、受電装置、電子機器、無接点電力伝送システムの構成例について、図2〜図5を用いて説明する。さらに、充電部の構成や、制御部による充電制御及び充電回数情報の更新制御について、図6〜図9を用いて後述する。その後、無接点電力伝送システムの動作シーケンスの一例、及び受電装置から送電装置への通信手法の一例を説明する。
2.送電装置、受電装置、制御装置の詳細な構成例
図2に本実施形態の制御装置50及びこれを含む受電装置40の詳細な構成例を示す。また、図2では制御装置20を含む送電装置10の構成例も示している。
後述する図5の充電器500などの送電側の電子機器は送電装置10を含む。また受電側の電子機器510は受電装置40と負荷80を含む。そして図2の構成により、1次コイルL1と2次コイルL2を電磁的に結合させて送電装置10から受電装置40に対して電力を伝送する無接点電力伝送(非接触電力伝送)システムが実現される。
送電装置10は、1次コイルL1、送電部12、報知部16、制御装置20を含む。送電部12は、電力伝送時において所定周波数の交流電圧を生成して、1次コイルL1に供給する。送電部12は、1次コイルL1の一端を駆動する第1の送電ドライバーDR1と、1次コイルL1の他端を駆動する第2の送電ドライバーDR2と、電源電圧制御部14を含む。送電ドライバーDR1、DR2の各々は、例えばパワーMOSトランジスターにより構成されるインバーター回路(バッファー回路)などにより実現される。これらの送電ドライバーDR1、DR2は、制御装置20のドライバー制御回路22により制御(駆動)される。即ち、制御部24は、ドライバー制御回路22を介して送電部12を制御する。
電源電圧制御部14は、送電ドライバーDR1、DR2の電源電圧VDRVを制御する。例えば制御部24は、受電側から受信した通信データ(送電電力設定情報)に基づいて、電源電圧制御部14を制御する。これにより、送電ドライバーDR1、DR2に供給される電源電圧VDRVが制御されて、例えば送電電力の可変制御等が実現される。この電源電圧制御部14は、例えばDCDCコンバーターなどにより実現できる。例えば電源電圧制御部14は、電源からの電源電圧(例えば5V)の昇圧動作を行って、送電ドライバー用の電源電圧VDRV(例えば6V〜15V)を生成して、送電ドライバーDR1、DR2に供給する。具体的には、送電装置10から受電装置40への送電電力を高くする場合には、電源電圧制御部14は、送電ドライバーDR1、DR2に供給する電源電圧VDRVを高くし、送電電力を低くする場合には、電源電圧VDRVを低くする。
図3に模式的に示すように、送電装置10から受電装置40への電力伝送は、送電側に設けられた1次コイルL1(送電コイル)と、受電側に設けられた2次コイルL2(受電コイル)を電磁的に結合させて電力伝送トランスを形成することなどで実現される。これにより非接触での電力伝送が可能になる。なお無接点電力伝送の方式としては、電磁誘導方式又は磁界共鳴方式等の種々の方式を採用できる。
電力伝送が必要なときには、例えば後述する図5に示すように、充電器500の上に電子機器510を置き、1次コイルL1の磁束が2次コイルL2を通るような状態にする。一方、電力伝送が不要なときには、充電器500と電子機器510を物理的に離して、1次コイルL1の磁束が2次コイルL2を通らないような状態にする。
報知部16(表示部)は、無接点電力伝送システムの各種状態(電力伝送中、ID認証等)を、光や音や画像などを用いて報知(表示)するものであり、例えばLEDやブザーやLCDなどにより実現できる。
送電側の制御装置20は、ドライバー制御回路22、制御部24、通信部30、クロック生成回路37、発振回路38を含む。ドライバー制御回路22(プリドライバー)は、送電ドライバーDR1、DR2を制御する。例えばドライバー制御回路22は、送電ドライバーDR1、DR2を構成するトランジスターのゲートに対して制御信号(駆動信号)を出力し、送電ドライバーDR1、DR2により1次コイルL1を駆動させる。発振回路38は、例えば水晶発振回路などにより構成され、1次側のクロック信号を生成する。クロック生成回路37は、送電周波数(駆動周波数)を規定する駆動クロック信号等を生成する。そしてドライバー制御回路22は、この駆動クロック信号や制御部24からの制御信号などに基づいて、所与の周波数(送電周波数)の制御信号を生成し、送電部12の送電ドライバーDR1、DR2に出力して、制御する。
受電装置40は、2次コイルL2、制御装置50を含む。受電側の制御装置50は、受電部52、制御部54、負荷変調部56、電力供給部57、不揮発性メモリー62、検出部64を含む。
受電部52は、複数のトランジスターやダイオードなどにより構成される整流回路53を含む。整流回路53は、2次コイルL2の交流の誘起電圧を直流の整流電圧VCCに変換して、出力する。
負荷変調部56(広義には通信部)は負荷変調を行う。例えば負荷変調部56は電流源ISを有し、この電流源ISを用いて負荷変調を行う。具体的には、負荷変調部56は電流源IS(定電流源)とスイッチ素子SWを有する。電流源ISとスイッチ素子SWは、例えば整流電圧VCCのノードNVCとGND(広義には低電位側電源)のノードとの間に直列に設けられる。そして、例えば制御部54からの制御信号に基づいてスイッチ素子SWがオン又はオフにされ、ノードNVCからGNDに流れる電流源ISの電流(定電流)をオン又はオフにすることで、負荷変調が実現される。
なお、ノードNVCにはキャパシターCMの一端が接続される。このキャパシターCMは例えば制御装置50の外付け部品として設けられる。またスイッチ素子SWはMOSのトランジスターなどにより実現できる。このスイッチ素子SWは、電流源ISの回路を構成するトランジスターとして設けられるものであってもよい。また負荷変調部56は図2の構成に限定されず、例えば電流源ISの代わりとして抵抗を用いるなどの種々の変形実施が可能である。
電力供給部57は充電部58と放電部60を含む。充電部58はバッテリー90の充電(充電制御)を行う。例えば充電部58は、受電部52からの整流電圧VCC(広義には直流電圧)に基づく電圧が供給されて、バッテリー90を充電する。この充電部58は、電力供給スイッチ42とCC充電回路59を含むことができる。CC充電回路59は、バッテリー90のCC充電を行う回路である。
放電部60はバッテリー90の放電動作を行う。例えば放電部60は、バッテリー90の放電動作を行って、バッテリー90からの電力を電力供給対象100に対して供給する。例えば放電部60は、バッテリー90からのバッテリー電圧VBATが供給され、出力電圧VOUTを電力供給対象100に供給する。この放電部60はチャージポンプ回路61を含むことができる。チャージポンプ回路61は、バッテリー電圧VBATを降圧(例えば1/3降圧)して、出力電圧VOUT(VBAT/3)を電力供給対象100に対して供給する。この放電部60(チャージポンプ回路)は、例えばバッテリー電圧VBATを電源電圧として動作する。
不揮発性メモリー62(広義には記憶部)は、各種の情報を記憶する不揮発性のメモリーデバイスである。この不揮発性メモリー62は例えば受電装置40のステータス情報等の各種の情報を記憶する。ステータス情報には、本実施形態に係る充電回数情報(サイクル回数)が含まれてもよい。不揮発性メモリー62としては、例えばEEPROMなどを用いることができる。EEPROMとしては例えばMONOS(Metal-Oxide-Nitride-Oxide-Silicon)型のメモリーを用いることができる。例えばMONOS型のメモリーを用いたフラッシュメモリーを用いることができる。或いはEEPROMとして、フローティングゲート型などの他のタイプのメモリーを用いてもよい。
検出部64は各種の検出処理を行う。例えば検出部64は、整流電圧VCCやバッテリー電圧VBAT等を監視して、各種の検出処理を実行する。具体的には検出部64はA/D変換回路65を有し、整流電圧VCCやバッテリー電圧VBATに基づく電圧や、不図示の温度検出部からの温度検出電圧などを、A/D変換回路65によりA/D変換し、得られたデジタルのA/D変換値を用いて検出処理を実行する。検出部64が行う検出処理としては、過放電、過電圧、過電流、或いは温度異常(高温、低温)の検出処理を想定できる。
そして図2では、制御部54(放電系制御部)は、受電装置40の着地が検出された場合に、放電部60の放電動作をオフにして放電動作を停止する。即ち図5において受電装置40(受電側の電子機器)の着地が検出された場合に、放電部60の放電動作(VOUTの供給)を停止して、バッテリー90の電力が電力供給対象100に放電されないようにする。そして送電装置10が通常送電を行う通常送電期間では、放電部60の放電動作をオフにする。例えばバッテリー90の充電期間の間は、放電部60の放電動作をオフのままにする。
そして制御部54は、受電装置40の取り去りが検出された場合に、放電部60の放電動作をオンにする。そして取り去り期間(受電装置が取り去られている期間)において、放電部60に放電動作を行わせる。この放電動作により、バッテリー90からの電力が放電部60を介して電力供給対象100に供給されるようになる。
また負荷変調部56は、受電装置40(受電側の電子機器)の着地が検出された場合に、負荷変調を開始する。送電装置10(制御部24)は、例えば受電装置40(負荷変調部56)が負荷変調を開始したことを条件に、送電部12による通常送電を開始させる。そして受電装置40の取り去りが検出された場合に、負荷変調部56は負荷変調を停止する。送電装置10(制御部24)は、負荷変調が継続されている間は、送電部12による通常送電を継続させる。即ち、負荷変調が非検出となった場合に、通常送電を停止させ、例えば着地検出用の間欠送電を送電部12に行わせる。この場合に受電側の制御部54は、受電部52の出力電圧VCCに基づいて、着地検出、取り去り検出を行うことができる。
また制御部54(放電系制御部)は、受電部52の出力電圧(VCC、VD5)が低下し、放電動作の起動期間(TST)が経過した後に、放電部60の放電動作をオンにして放電動作を開始する。具体的には制御部54は、受電部52の出力電圧が判定電圧を下回ってから起動期間が経過した後に、放電部60の放電動作を開始する。起動期間(TST)は、例えば放電動作の立ち上げ動作の開始タイミングから放電動作を実際に開始するタイミングまでの期間であり、放電動作の開始タイミングまでのウェイト期間に対応するものである。
また送電装置10は、取り去り検出用の間欠送電を行う。例えばバッテリー90の満充電が検出された場合や、受電側の異常が検出された場合に、送電装置10は、通常送電を停止して、取り去り検出用の間欠送電を行う。そして、放電部60の放電動作の起動期間は、取り去り検出用の間欠送電の期間の間隔よりも長い期間となっている。
本実施形態の手法は、上記の制御装置50を含む受電装置40に適用できる。即ち、本実施形態の手法は、図1の受電装置40や、図2の受電装置40に適用することが可能である。
また本実施形態の手法は、上記の制御装置50を含む電子機器510に適用できる。本実施形態に係る電子機器510は、図2の制御装置50を有する受電装置40を含む。本実施形態が適用される電子機器510としては種々の機器を想定できる。例えば本実施形態の電子機器510は、図4に示すように、受電装置40と、操作用のスイッチ部514(広義には操作部)、不図示のバッテリー90を有する補聴器であってもよい。
ただし電子機器510は補聴器に限定されず、腕時計、生体情報の測定装置(脈波等を測定するウェアラブル機器)、携帯情報端末(スマートフォン、携帯電話機等)、コードレス電話器、シェーバー、電動歯ブラシ、リストコンピューター、ハンディターミナル、車載用機器、ハイブリッド車、電気自動車、電動バイク、或いは電動自転車などの種々の電子機器を想定できる。例えば本実施形態の制御装置(受電装置等)は、車、飛行機、バイク、自転車、或いは船舶等の種々の移動体に組み込むことができる。移動体は、例えばモーターやエンジン等の駆動機構、ハンドルや舵等の操舵機構、各種の電子機器(車載機器)を備えて、地上や空や海上を移動する機器・装置である。
また本実施形態の手法は、無接点電力伝送システム600に適用できる。即ち本実施形態に係る無接点電力伝送システム600は、送電装置10と、受電装置40を含む無接点電力伝送システムであって、送電装置10は、受電装置40に電力を伝送し、受電装置40は、受電装置40内の受電部52が受電した電力に基づいて、バッテリー90を充電する。そして受電装置40は、定電流充電と定電圧充電を切り替える制御を行うとともに、定電流充電から定電圧充電への切り替えが行われたことを条件に、バッテリー90の充電回数を表す充電回数情報を更新する制御を行う。
図5に本実施形態の無接点電力伝送システム600の一例を示す。充電器500(電子機器の1つ)は送電装置10を有する。電子機器510は受電装置40を有する。電子機器510は、図4と同様に補聴器を想定しているが、種々の変形実施が可能なことは上述したとおりである。図5の送電装置10と受電装置40により本実施形態の無接点電力伝送システム600が構成される。
充電器500には、電源アダプター502を介して電力が供給され、この電力が、無接点電力伝送により送電装置10から受電装置40に送電される。これにより、電子機器510のバッテリー90を充電し、電子機器510内のデバイスを動作させることができる。なお充電器500の電源は、USB(USBケーブル)による電源であってもよい。
3.充電部の構成、及び充電制御の例
次に、充電部58の詳細な構成例、及び制御部54における制御例について説明する。また、いくつかの変形例についても説明する。
3.1 詳細な構成例
図6に、受電部52、充電部58等の詳細な構成例を示す。図6に示すように、受電部52の整流回路53は、整流用のトランジスターTA1、TA2、TA3、TA4と、これらのトランジスターTA1〜TA4を制御する整流制御部51を有する。トランジスターTA1〜TA4の各々のドレイン・ソース間にはボディーダイオードが設けられている。整流制御部51は、トランジスターTA1〜TA4のゲートに対して制御信号を出力して、整流電圧VCCを生成するための整流制御を行う。
整流電圧VCCのノードNVCとGNDのノードとの間には抵抗RB1、RB2が直列に設けられている。整流電圧VCCを、抵抗RB1、RB2で電圧分割した電圧ACH1が、例えばA/D変換回路65に入力される。これにより整流電圧VCCの監視が可能になり、VCCに基づく電力制御や、VCCに基づく通信開始や充電開始の制御を実現できる。
レギュレーター67は、整流電圧VCCの電圧調整(レギュレート)を行って、電圧VD5を出力する。この電圧VD5は、トランジスターTC1を介して、充電部58のCC充電回路59に供給される。トランジスターTC1は、例えばバッテリー電圧VBATが所与の電圧を超える過電圧の検出時において、制御信号GC1に基づいてオフになる。なお制御装置50の各回路(放電部60等の放電系の回路を除く回路)は、この電圧VD5に基づく電圧(VD5をレギュレートした電圧等)を電源電圧として動作する。
CC充電回路59は、トランジスターTC2と、演算増幅器OPCと、抵抗RC1と、電流源ISCを有する。演算増幅器OPCの仮想接地により、抵抗RC1の一端の電圧(非反転入力端子の電圧)と、外付け部品であるセンス抵抗RSの他端の電圧VCS2(反転入力端子の電圧)とが等しくなるように、トランジスターTC2が制御される。信号ICDAの制御により電流源ISCに流れる電流をIDAとし、センス抵抗RSに流れる電流をIRSとする。すると、IRS×RS=IDA×RC1となるように、制御される。即ち、このCC充電回路59では、センス抵抗RSに流れる電流IRS(充電電流iBAT)が、信号ICDAにより設定される一定の電流値になるように制御される。これにより、CC(Constant-Current)充電が可能になる。
トランジスターTC3は、CC充電回路59の出力ノードと、バッテリー電圧VBATの供給ノードNBATとの間に設けられる。P型のトランジスターTC3のゲートには、N型のトランジスターTC4のドレインが接続されており、トランジスターTC4のゲートには、制御部54からの充電の制御信号CHONが入力されている。また、トランジスターTC3のゲートとノードNBATの間には、プルアップ用の抵抗RC2が設けられ、トランジスターTC4のゲートとGND(低電位側電源)のノードの間には、プルダウン用の抵抗RC3が設けられている。トランジスターTC3(TC4)により、図2の電力供給スイッチ42が実現される。
充電時には、制御部54が、制御信号CHONをHレベル(アクティブ)にする。これにより、N型のトランジスターTC4がオンになって、P型のトランジスターTC3のゲート電圧がLレベルになる。この結果、トランジスターTC3がオンになり、バッテリー90の充電が行われるようになる。
一方、制御部54が、制御信号CHONをLレベル(非アクティブ)にすると、N型のトランジスターTC4がオフになる。そしてP型のトランジスターTC3のゲート電圧が、抵抗RC2によりバッテリー電圧VBATにプルアップされることで、トランジスターTC3がオフになり、バッテリー90の充電が停止する。
また、充電系の電源電圧が回路の動作下限電圧よりも低くなった場合には、トランジスターTC4のゲート電圧が、抵抗RC3によりGNDにプルダウンされることで、トランジスターTC4がオフになる。そしてトランジスターTC3のゲート電圧が、抵抗RC2によりバッテリー電圧VBATにプルアップされることで、トランジスターTC3がオフになる。このようにすれば、例えば受電側が取り去られ、電源電圧が動作下限電圧よりも低くなった場合に、トランジスターTC3がオフになることで、CC充電回路59の出力ノードとバッテリー90のノードNBATとの間の経路が電気的に遮断される。これにより、電源電圧が動作下限電圧以下になった場合におけるバッテリー90からの逆流が防止されるようになる。
またノードNBATとGNDのノードとの間には抵抗RC4、RC5が直列に設けられており、バッテリー電圧VBATを、抵抗RC4、RC5で電圧分割した電圧ACH2が、A/D変換回路65に入力される。これによりバッテリー電圧VBATの監視が可能になり、バッテリー90の充電状態に応じた各種の制御を実現できる。またバッテリー90の近くには、サーミスターTH(広義には温度検出部)が設けられている。このサーミスターTHの一端の電圧RCTが制御装置50に入力され、これによりバッテリー温度の測定が可能になる。
3.2 充電制御の例
次に制御部54における充電制御、充電回数情報制御について説明する。上述したように、制御部54では、CC充電とCV充電を切り替える制御を行う。具体的には、バッテリー電圧VBATを監視し、制御部54は、VBAT≧CV(CVは所与の閾値電圧)となった場合に、CV充電へと切り替える(CV充電に移行する)制御を行う。
ただし、充電開始時からCC充電を実行する制御を行った場合、バッテリー90の状態によらず、CC充電からCV充電への切り替え制御が実行される。具体的には、満充電に近い状態のバッテリー90を充電する場合であっても、消費が激しくバッテリー電圧が相対的に低下しているバッテリー90を充電する場合であっても、CC充電からCV充電への切り替え制御が実行される。つまり、充電開始時からCC充電を実行する制御を行った場合、充電モードがどのように切り替えられたかという情報は、充電回数情報のカウントに有用と言えない。
よって制御部54は、バッテリー90の充電開始時から、充電電流iBATを所与の基準値から徐々に増加させる制御を行う。ここでの徐々に増加させる制御とは、充電電流iBATを連続的に変化させる制御であってもよいし、離散的に(段階的に)変化させる制御であってもよい。以下、図7や図8では充電電流iBATを直線的に増加させる例を説明する。また、充電電流iBATの初期値である所与の基準値についても種々の変形実施が可能であり、CC充電の定電流値iCCよりも小さい種々の電流値を適用可能である。図7や図8で後述する例では、所与の基準値を0(A)として説明する。また、本明細書では、この充電電流iBATを徐々に増加させる充電制御(充電モード)を、SC(Step-Current)充電と表記する。
SC充電では、上記所与の基準値から、CC充電の定電流値iCCに向けて充電電流iBATを増加させていく。そのため、充電電流iBATがiCCに到達した場合には、制御部54は、それ以上充電電流iBATを増加させる必要はなく、SC充電からCC充電に切り替えればよい。ただし、制御部54の充電制御で実現すべきは、バッテリー電圧VBATを、所望の電圧値、即ちCV充電の定電圧値CVに到達させることである。つまりVBAT≧CVが満たされた場合には、現在の充電モードがSC充電かCC充電かによらず、CV充電への切り替えが行われる。
そのため、SC充電を行う場合、充電を完了するまでの充電モードの切り替え(移行、遷移)には2つのパターンが考えられる。図7は第1のパターンで充電モードが切り替えられた場合の、充電電流iBAT及びバッテリー電圧VBATの時系列変化を示す図である。図8は第2のパターンで充電モードが切り替えられた場合の、充電電流iBAT及びバッテリー電圧VBATの時系列変化を示す図である。図7、図8の横軸は時間を表し、ここではt=0を充電開始時とする。なお充電開始時とは、例えば後述する図10のA1からA2に移行したタイミングである。
図7に示した例では、t=0からSC充電を開始し、充電電流iBATは0から徐々に増加していく。これにより、バッテリー電圧VBATは、充電開始時の電圧VBAT0から徐々に増加することになる。図7では、t=t1において、充電電流iBATがiCCに到達する。t=t1でのバッテリー電圧VBATはCVに到達していないため、制御部54はt=t1のタイミングで、SC充電からCC充電への切り替えを行う。
CC充電では、定電流値iCCでの充電を継続することで、バッテリー電圧VBATが時間とともに増加していき、t=t2でVBATがCVに到達する。よって制御部54は、t=t2のタイミングで、CC充電からCV充電への切り替えを行う。CV充電への切り替え後は、制御部54は、バッテリー電圧VBATがCVを超えないように、充電電流iBATを制御する。具体的には、図7に示したように、制御部54は充電電流iBATを徐々に減少させる制御を行う。
そして、CV充電を行っている状態で、充電終了条件が満たされた場合に、制御部54はバッテリー90の充電を終了する。充電終了条件は種々考えられるが、例えば充電電流iBATが所与の閾値電流以下となってから所定時間経過したことを条件とすればよい。
図8に示した例でも、t=0からSC充電を開始し、充電電流iBATは0から徐々に増加していく。ただし図8の例では、図7の場合とは異なり、充電電流iBATがiCCに到達する前に、VBATがCVに到達する(t=t3)。この場合、CC充電を経由することなく、SC充電からCV充電への切り替えが行われる。CV充電への切り替え後、バッテリー電圧VBATがCVを超えないように、充電電流iBATを徐々に減少させる点に付いては図7と同様である。
図7と図8を比較すればわかるように、SC充電からCC充電を経てCV充電に移行するか(図7)、SC充電から直接CV充電に移行するか(図8)は、充電開始時のバッテリー電圧VBAT0の大きさに依存する。なぜなら、SC充電は充電電流iBATがiCCに到達した場合に終了する(CC充電に切り替えられる)ため、SC充電によるバッテリー電圧VBATの増加量には上限がある。VBAT0が、CVに対して当該上限よりも大きく減少していた場合、図7に示したようにSC充電だけではバッテリー電圧VBATはCVに到達できず、CC充電の実行が必要になる。一方、VBAT0がほぼ満充電に近い状態であれば、SC充電だけでもバッテリー電圧VBATはCVに到達可能である。
即ち、図7に示すようにCC充電からCV充電への切り替えが行われた場合には、充分消耗した状態のバッテリー90に対して充電が行われたと判定できるし、図8に示すようにSC充電からCV充電への切り替えが行われた場合には、満充電に近い状態のバッテリー90に対して充電が行われたと判定できる。そのため制御部54は、図7の例であれば、バッテリ−90の劣化が進むものとして充電回数情報をカウントアップし、図8の例であれば、実質的な充電ではないとして充電回数情報のカウントアップを行わない。
このようにすれば、CC充電からCV充電への切り替えが行われたか否かに基づいて、適切に充電回数情報のカウントを行うことが可能になる。なお、本実施形態のSC充電は、図7のケースと図8のケースを識別可能にできるという利点があるが、SC充電を用いることによる他の効果も考えられる。
具体的には、SC充電を用いることで、充電開始時に受電装置40に流れる電流値を小さくすることが可能になる。充電開始時にいきなりiCCに相当する充電電流iBATを流してしまうと、当該充電電流iBATに起因して整流電圧が大きく低下してしまう。その点、SC充電では充電開始時の電流値がiCCに比べて小さいため、整流電圧の低下幅を小さく抑えることが可能になる。なお、時間の経過で充電電流iBATが大きくなれば、整流電圧の低下幅も大きくなる。しかし、SC充電では充電電流iBATを徐々に大きくするため、単位時間当たりの電圧の低下幅を抑えることができる。よって、整流電圧の低下を補償する制御を行うことが容易であり、整流電圧の電圧レベルを所望値に保つことが容易になる。
図9は、制御部54での充電制御、及び充電回数情報(サイクル回数)の制御を説明するフローチャートである。この制御が開始されると、まず制御部54は、充電電流iBATを所定の基準値に設定する(ステップS101)。図9の例では、図7、図8に示したように所定の基準値を0Aとしている。図6を用いて上述したように、充電電流iBATは信号ICDAにより設定される。よってステップS101では、制御部54は、信号ICDAの値として、充電電流iBAT=0(A)を実現する値(図9の例ではICDA=0)を設定する。
制御部54は、バッテリー電圧VBATが目標値であるCV未満であるか否かを判定する(ステップS102)。S102でYesの場合には、制御部54は、充電電流iBATが定電流値iCCに到達しているか否かを判定する(ステップS103)。ステップS103でNoの場合には、SC充電を継続することになるため、充電電流iBATを増加させる制御を行う(ステップS104)。ここでは信号ICDAが大きいほど、充電電流iBATが大きくなる例を示しているため、制御部54はステップS104においてICDAを増加させる制御を行う。なお、ステップS104ではICDAをインクリメントする例を示したが、ICDAの増加幅(iCCの増加幅)は種々の変形実施が可能である。また、ICDAの値を小さくするほど、充電電流iBATが増加する設定の場合であれば、制御部54はステップS104においてICDAを減少させる制御を行う。この場合の減少幅も種々の変形実施が可能であり、制御部54はICDAをデクリメントしてもよいし、他の減少幅で減少させてもよい。ステップS104の後は、ステップS102に戻る。SC充電では、ステップS102又はステップS103でYesと判定されるまで、S102〜S104のループを継続する。
ステップS103でYES、即ち充電電流iBATが定電流値iCCに到達した場合には、CC充電への切り替えを表すフラグiCCflagを1にする(ステップS105)。この場合、CC充電となるため、充電電流iBATをこれ以上増加させる必要はなく、そのままステップS102に戻る。CC充電では、ステップS102でYesと判定されるまで、S102,S103,S105のループを継続する。なお、既にフラグが立っている場合、S103,S105の処理は省略可能である。
SC充電のループ中、又はCC充電のループ中に、ステップS102でNoと判定された場合は、CV充電に移行する。この場合、制御部54はiCCflag=1か否かを判定する(ステップS106)。ステップS106でYesの場合には、制御部54は充電回数情報(サイクル回数)を増加させる制御を行う(ステップS107)。ステップS107では、制御部54は、例えば充電回数情報を1増加させる制御を行えばよい。
上述したように、制御部54は、バッテリー電圧VBATが所与の閾値電圧CVに達する(ステップS102がNoとなる)前に、充電電流iBATが定電流充電の定電流値iCCに達した(ステップS103でYesとなった)場合、定電流充電へ切り替える制御を行う。このようにすれば、SC充電ではバッテリー電圧VBATがCVに到達しなかった場合に、適切にCC充電への切り替えを行うことが可能になる。
その上で制御部54は、定電流充電の切り替え後に、バッテリー電圧VBATが所与の閾値電圧CVに達した場合に、定電圧充電への切り替えを行い、充電回数情報を更新する制御を行う。このようにすれば、CC充電からCV充電への切り替えが行われたことを条件として、充電回数情報を更新できる。つまり図7に示したように、VBAT0がある程度小さく、実質的な充電が行われた場合に、充電回数情報を増加させることが可能になる。
一方、ステップS106でNoの場合とは、充電電流iBATが定電流充電の定電流値iCCに達する前に、バッテリー電圧VBATが所与の閾値電圧CVに達した場合に相当し、この場合、制御部54は定電流充電を経ずに、定電圧充電に移行する制御を行う。そして制御部54は、図9に示したように、ステップS107の処理をスキップし、充電回数情報を非更新とする制御を行う。このようにすれば、図8に示したように、VBAT0がある程度大きく(満充電に近い、CVに近い)、実質的な充電が行われていない場合に、充電回数情報を増加させないことが可能になる。
ステップS107の処理後、又は、ステップS106でNoの場合は、制御部54はCV充電を終了するか否かの判定を行う(ステップS108)。具体的な手順は種々考えられるが、例えば制御部54は、充電電流iBAT(信号ICDA)を減少させるループを繰り返すとともに、各ループにおいて、充電電流iBATが所与の閾値電流以下となったか否かの判定、及び閾値電流以下となってからの継続時間の計測を行う。そして制御部54は、充電電流iBATが所与の閾値電流以下となり、且つ閾値電流以下となってから所定時間が経過した場合に、図9の処理を終了する。
3.3 変形例
図9のステップS107では、例えば充電回数情報を1増加させる例について説明した。しかし充電回数情報がバッテリー90の劣化度合いの評価指標である点に鑑みれば、劣化度合いに応じて充電回数情報の増加量に重みづけをするとよい。
例えば、リチウムイオン電池では、充電の目標電圧、即ち上述してきたCV充電での定電圧値CVの大きさに応じて、バッテリー90の劣化度合いに大きな差が出ることが知られている。例えばCV=4.2Vの場合、500回程度の充電でバッテリー90の劣化が進むのに対して、CV=4.1Vの場合、バッテリー90が同程度劣化するまでに1000回程度の充電が可能である。このように、CVを0.1V変更するだけで、バッテリー90の劣化に対する影響は大きく変化し、一般的にCVが大きいほど劣化度合いも大きい。つまり、CVを可変に設定可能な制御装置50を用いる場合、CV=4.2での充電と、CV=4.1Vでの充電を、同じ1回としてカウントしてしまうと、バッテリー90の実際の劣化度合いと充電回数情報との乖離が大きくなるおそれがある。
よって制御部54は、所与の閾値電圧(CV)の設定値に応じて重みづけされた更新量に基づいて、充電回数情報を更新する制御を行ってもよい。例えば、CV=4.2Vでの充電を1回とした場合に、CV=4.1Vを0.9回、CV=4.05Vを0.8回といったようにカウントする。或いは、CV=4.05Vを1回として、CV=4.1Vを1.1回、CV=4.2Vを1.2回としてもよく、具体的な数値については種々の変形実施が可能である。
このようにすれば、充電回数情報の値と、バッテリー90の実際の劣化度合いとの乖離を抑制することができ、充電回数情報を用いてバッテリー90の劣化度合いを適切に管理すること等が可能になる。
また、バッテリー90は、温度が高いほど劣化度合いが大きいことも知られている。よって制御部54は、充電中の温度情報に応じて重みづけされた更新量に基づいて、充電回数情報を更新する制御を行ってもよい。具体的には、制御部54は、温度が高い場合には、温度が低い場合に比べて充電回数情報の更新量を大きくする。この場合も、充電回数情報の値と、バッテリー90の実際の劣化度合いとの乖離を抑制することができ、充電回数情報を用いてバッテリー90の劣化度合いを適切に管理すること等が可能になる。
なお、ここでの温度情報は、温度検出部からの信号に基づいて取得される情報である。温度検出部は種々の形態により実現可能である。例えば、図6を用いて上述したように制御装置50の外部の温度検出部(サーミスターTH)を利用してもよい。具体的には、検出部64は、サーミスターTHに対して所与の定電流IREFを供給し、当該定電流IREFにより生じる電圧値をA/D変換回路65によりA/D変換することで温度検出を行ってもよい。なお、IREFの値は1つである必要はなく、例えば高温領域と低温領域とでIREFの値を異なるものにしてもよい。或いは、制御装置50がBGR回路(Band Gap Reference回路)を含み、当該BGR回路に基づいて温度検出を行ってもよい。なお、バンドギャップを利用した温度検出部については、広く知られた構成であるため詳細な説明は省略する。
また、CC充電での定電流値iCCの大きさや、SC充電における充電電流iBATの上昇幅を可変とすることも可能である。この場合、SC充電におけるバッテリー電圧VBATの増加量の上限値を可変にできる。言い換えれば、CC充電を経てCV充電へ切り替えられるパターン(図7)と、SC充電からCV充電へ切り替えられるパターン(図8)の境界となるVBAT0を可変にできる。ユーザーによっては、VBAT0がCVに対して大きく減少している場合にだけ充電回数情報をカウントアップしたいという場合もあれば、VBAT0のCVに対する減少幅が小さくても充電回数情報をカウントアップしたいという場合もある。その点、iCCの大きさや、SC充電における充電電流iBATの上昇幅を可変とすることで、これらの要求に柔軟に対応可能である。
また、以上では充電電流iBATが定電流値iCCに到達した場合に、充電回数情報がカウントアップされた。ただし、単に充電電流iBATが定電流値iCCに到達するだけでなく、当該状態を所定期間維持することを、充電回数情報のカウントアップの条件としてもよい。言い換えれば、SC充電からCC充電に移行し、CC充電を所定期間継続した後に、CC充電からCV充電に移行した場合に、充電回数情報のカウントアップを行う。そして、ごく短い時間だけ充電電流iBATが定電流値iCCに到達して(ごく短い時間だけCC充電が行われて)、CV充電に移行した場合には、充電回数情報をカウントアップしない。このようにすれば、上述してきた例に比べてバッテリー90の劣化が大きい場合に、充電回数情報のカウントアップを行うことになるため、柔軟な充電回数情報の制御が可能になる。
また、以上ではSC充電から直接CV充電へ切り替えられた場合、必ず充電回数情報のカウントアップを省略するものとしたがこれには限定されない。例えば制御部54は、所与の電流閾値を設定しておき、SC充電における充電電流iBATが当該閾値以上となった場合は、SC充電から直接CV充電へ切り替えられた場合であっても、充電回数情報のカウントアップを実行する制御を実行してもよい。この場合にも、VBAT0のCVに対する減少幅が小さくても充電回数情報がカウントアップされることになるため、柔軟な充電回数情報の制御が可能になる。
また、以上では充電制御(充電モード)として、SC充電、CC充電、CV充電の3つについて説明した。これらによる充電を通常充電モードとした場合、本実施形態の制御装置50(制御部54)は、通常充電モードとは異なる急速充電モードによる充電を行ってもよい。急速充電モードとは、例えば充電開始時のバッテリー電圧VBAT0が満充電状態に比べて大きく低下している場合に実行され、例えばVBAT0<3.75Vの場合に実行される。ただし、具体的な電圧値は3.75Vに限定されず、種々の変形実施が可能である。
急速充電モードは、バッテリー90の消耗が激しい場合に、短時間(例えば30分)の充電である程度長い時間(例えば7〜8時間)の動作を可能にさせるための充電である。制御部54は、急速充電モードにおいて、充電電流iBATを所与の基準値(例えば0A)から、所与の定電流値iFASTに向けて徐々に増加させていき、充電電流iBATがiFASTに到達したらその状態を維持する。ここでiFASTの値は種々の変形実施が考えられるが、短時間で充分な充電を行うという観点から考えれば、通常充電モード(CC充電)の定電流値iCCより大きくてもよい。
急速充電モードでの電流制御は、充電電流iBATを所与の基準値から、所与の定電流値に向けて徐々に増加させるものであるため、SC充電及びCC充電と類似している。ただし、本実施形態での充電回数情報のカウントアップは、あくまでCC充電からCV充電に移行したか否かで判定する。即ち、充電電流iBATがCC充電の定電流値iCCに到達したことがカウントアップの条件であり、急速充電モードにおいて充電電流iBATが定電流値iFASTに到達したとしても、それは充電回数情報のカウントアップに寄与しない。
そもそも急速充電モードは、上述したように短時間にある程度の充電を行うことを目的としており、バッテリー電圧VBATをCV充電での定電圧値CVまで増加させることは想定していない。例えば急速充電モードは、所定時間の経過、或いはバッテリー電圧VBATの所定電圧への到達により終了することが想定される。ここでの所定電圧は、例えば上述した3.75V等でありCVに比べて小さい。つまり、急速充電モードから直接的にCV充電に移行することは考えにくく、例えば急速充電モード→CC充電→CV充電といった移行が行われる。以上の点を考慮すれば、制御部54は、急速充電モードにおいて充電電流iBATが定電流値iFASTに到達したか否かによらず、通常充電モードにおいて充電電流iBATが定電流値iCCに到達したか否かに基づいて、充電回数情報の制御を行えばよい。
また制御装置50(制御部54)は、図7に示した充電電流iBATがiCCに到達してから(CC充電から)CV充電に移行する充電と、図8に示した充電電流iBATがiCCに到達せずに(CC充電に移行せずに)CV充電に移行する充電と、のいずれが行われたかに応じて、ユーザーや他の装置に対する出力(報知)を切り替えてもよい。
例えば、図7の充電がある程度の回数行われた場合、バッテリー90の劣化が大きいため、制御部54はユーザーに対してその旨を報知するとよい。ここでの報知は、例えばLED等の発光でもよいし、音や振動を発生させてもよい。或いは、バッテリー90の劣化が大きい場合、これ以上の充電は好ましくないため、制御部54は、送電装置10に対して情報を送信し、送電の停止を指示してもよい。一方、図8の充電であればバッテリー90の劣化度合いは相対的に小さい。よって、制御部54は、ユーザーへの報知を行わない、或いは送電装置に対する送電停止指示を行わない、といった制御を行う。
まとめると、本実施形態の手法は、送電装置10から無接点電力伝送で供給された電力を受電する受電装置40のための制御装置50であって、受電装置40内の受電部52が受電した電力に基づいて、バッテリー90を充電する充電部58と、充電部58を制御する制御部54と、を含む。そして制御部54は、定電流充電と定電圧充電を切り替える制御を行うとともに、定電流充電から定電圧充電へと切り替える充電が所定回数行われた場合に、ユーザーに対する報知及び送電装置10に対する送電の停止指示の少なくとも一方を行う。ここで定電流充電から定電圧充電へと切り替える充電とは、充電電流iBATが所与の閾値電流(CC充電の定電流値iCC)に達してから、定電圧充電への切り替えが行われる充電に対応する。また制御部54は、充電電流iBATが所与の閾値電流(定電流値iCC)に到達せずに、定電圧充電への切り替えが行われる充電が上記所定回数行われた場合は、ユーザーに対する報知及び送電装置10に対する送電の停止指示を行わない。ここでの所定回数は、バッテリー90が大きく(使用継続が好ましくない程度に)劣化する可能性があるだけの充電回数であり、例えば1000回程度である。ただし、所定回数については種々の変形実施が可能である。
このようにすれば、同等の回数の充電が行われた場合であっても、実際の充電状況に応じて、ユーザーへの報知や送電装置10への送電停止指示等を適切に制御することが可能になる。
4.無接点電力伝送システムの動作シーケンス
次に本実施形態の無接点電力伝送システム600の動作シーケンスの一例について説明する。図10は動作シーケンスの概要を説明する図である。なお図10ではバッテリー90を模式的に示しているが、このバッテリー90は実際には電子機器510に内蔵されている。
図10のA1では、受電装置40を有する電子機器510が、送電装置10を有する充電器500に上に置かれておらず、取り去り状態になっている。この場合にはスタンバイステートとなる。このスタンバイステートでは、送電装置10の送電部12は、着地検出のための間欠送電を行って、電子機器510の着地を検出する状態になる。またスタンバイモードでは、受電装置40では、電力供給対象100への放電動作がオンになっており、電力供給対象100への電力供給がイネーブルになっている。これにより、処理部等の電力供給対象100は、バッテリー90からの電力が供給されて動作可能になる。
図10のA2に示すように、電子機器510が充電器500に上に置かれ、着地が検出されると、通信チェック&充電ステートになる。この通信チェック&充電ステートでは、送電装置10の送電部12は、連続送電である通常送電を行う。この際に、電力伝送の状態などに応じて電力が可変に変化する電力制御を行いながら、通常送電を行う。またバッテリー90の充電状態に基づく制御も行われる。電力伝送の状態は、例えば1次コイルL1、2次コイルL2の位置関係(コイル間距離等)などにより決まる状態であり、例えば受電部52の整流電圧VCCなどの情報に基づいて判断できる。バッテリー90の充電状態は、例えばバッテリー電圧VBATなどの情報に基づいて判断できる。
また通信チェック&充電ステートでは、受電装置40の充電部58の充電動作がオンになり、受電部52が受電した電力に基づいてバッテリー90の充電が行われる。また放電部60の放電動作がオフになり、バッテリー90からの電力が、電力供給対象100に供給されなくなる。また通信チェック&充電ステートでは、負荷変調部56の負荷変調により、通信データが送電側に送信される。例えば電力伝送状態情報(VCC等)や、充電状態情報(VBATや各種のステータスフラグ等)や、温度などの情報を含む通信データが、通常送電期間中の常時の負荷変調により、受電側から送電側に送信される。
図10のA3に示すように、バッテリー90の満充電が検出されると、満充電スタンバイステートになる。この満充電スタンバイステートでは、送電部12は、例えば取り去り検出のための間欠送電を行って、電子機器510の取り去りを検出する状態になる。また放電部60の放電動作はオフのままとなり、電力供給対象100への電力供給もディスエーブルのままとなる。
図10のA4に示すように電子機器510の取り去りが検出されると、A5に示すように電子機器510が使用状態になり、受電側の放電動作がオンになる。具体的には、放電部60の放電動作がオフからオンに切り替わり、バッテリー90からの電力が放電部60を介して電力供給対象100に供給される。これにより、バッテリー90からの電力が供給されて、処理部等の電力供給対象100が動作し、ユーザーが電子機器510を通常に使用できる状態となる。
以上のように本実施形態では図10のA1に示すように、電子機器510の着地が検出されると、通常送電が行われ、この通常送電期間において常時の負荷変調が行われる。また着地が検出されると、放電部60の放電動作が停止する。そして、この常時の負荷変調では、送電側の電力制御のための情報や受電側のステータスを表す情報を含む通信データが、受電側から送電側に送信される。例えば電力制御のための情報(電力伝送状態情報)を通信することで、例えば1次コイルL1と2次コイルL2の位置関係等に応じた最適な電力制御を実現できる。また受電側のステータスを表す情報を通信することで、最適で安全な充電環境を実現できる。そして本実施形態では、負荷変調が継続している間は、通常送電も継続され、放電部60の放電動作もオフのままになる。
また本実施形態では図10のA3に示すように、バッテリー90の満充電が検出されると、通常送電が停止し、取り去り検出用の間欠送電が行われる。そしてA4、A5に示すように、取り去りが検出されて、取り去り期間になると、放電部60の放電動作が行われる。これによりバッテリー90からの電力が電力供給対象100に供給されて、電子機器510の通常動作が可能になる。なお、着地検出や取り去り検出は、受電部52の出力電圧VCCに基づいて行われる。
このように本実施形態では、電子機器510のバッテリー90の充電期間(通常送電期間)においては、電力供給対象100への放電動作がオフになるため、充電期間において電力供給対象100により無駄に電力が消費されてしまう事態を抑制できる。
そして、電子機器510の取り去りが検出されると、通常送電から間欠送電に切り替わると共に、電力供給対象100への放電動作がオンになる。このように放電動作がオンになることで、バッテリー90からの電力が電力供給対象100に供給されるようになり、処理部(DSP)等の電力供給対象100の通常動作が可能になる。このようにすることで、例えば電子機器510が充電器500の上に置かれる充電期間においては動作しないようなタイプの電子機器510(例えば、補聴器、ウェアラブル機器等のユーザーが装着する電子機器)において、好適な無接点電力伝送の動作シーケンスを実現できる。
5.通信手法
図11は、負荷変調による通信手法を説明する図である。図11に示すように、送電側では、送電ドライバーDR1、DR2が、電源電圧制御部14から供給された電源電圧VDRVに基づいて動作して、1次コイルL1を駆動する。
一方、受電側(2次側)では、2次コイルL2のコイル端電圧を受電部52の整流回路53が整流し、ノードNVCに整流電圧VCCが出力される。なお、1次コイルL1とキャパシターCA1により送電側の共振回路が構成され、2次コイルL2とキャパシターCA2により受電側の共振回路が構成されている。
受電側では、負荷変調部56のスイッチ素子SWをオン・オフさせることで、電流源ISの電流ID2をノードNVCからGND側に間欠的に流して、受電側の負荷状態(受電側の電位)を変動させる。
送電側では、負荷変調による受電側の負荷状態の変動により、電源ラインに設けられたセンス抵抗RCSに流れる電流ID1が変動する。例えば送電側の電源(例えば図5の電源アダプター502等の電源装置)と電源電圧制御部14との間に、電源に流れる電流を検出するためのセンス抵抗RCSが設けられている。電源電圧制御部14は、このセンス抵抗RCSを介して電源から電源電圧が供給される。そして負荷変調による受電側の負荷状態の変動により、電源からセンス抵抗RCSに流れる電流ID1が変動し、通信部30が、この電流変動を検出する。そして通信部30は、検出結果に基づいて、負荷変調により送信される通信データの検出処理を行う。この通信部30は、電源から送電部12に流れる電流ID1を検出する電流検出回路と、電流検出回路による検出電圧と判定用電圧との比較判定を行う比較回路と、比較回路の比較判定結果に基づいて負荷変調パターンを判断する復調部を含むことができる。
図2の制御部54(充電系制御部)は、送電装置10の送電信号の送電周波数を測定し、通信データを送信するための制御信号を生成して、負荷変調部56に出力する。そして、この制御信号により、図11のスイッチ素子SWのオン・オフ制御を行って、通信データに対応する負荷変調を負荷変調部56に行わせる。
負荷変調部56は、例えば第1の負荷状態、第2の負荷状態というように、受電側の負荷状態(負荷変調による負荷)を変化させることで、負荷変調を行う。第1の負荷状態は、例えばスイッチ素子SWがオンになる状態であり、受電側の負荷状態(負荷変調の負荷)が高負荷(インピーダンス小)になる状態である。第2の負荷状態は、例えばスイッチ素子SWがオフになる状態であり、受電側の負荷状態(負荷変調の負荷)が低負荷(インピーダンス大)になる状態である。
そして、これまでの負荷変調手法では、例えば第1の負荷状態を、通信データの論理レベル「1」(第1の論理レベル)に対応させ、第2の負荷状態を、通信データの論理レベル「0」(第2の論理レベル)に対応させて、受電側から送電側への通信データの送信を行っていた。即ち、通信データのビットの論理レベルが「1」である場合には、スイッチ素子SWをオンにし、通信データのビットの論理レベルが「0」である場合には、スイッチ素子SWをオフにすることで、所定のビット数の通信データを送信していた。
しかしながら、例えばコイル間の結合度が低かったり、コイルが小型であったり、送電電力も低パワーであるような用途では、このような従来の負荷変調手法では、適正な通信の実現が難しい。即ち、負荷変調により受電側の負荷状態を、第1の負荷状態、第2の負荷状態というように変化させても、ノイズ等が原因で、通信データの論理レベル「1」、「0」のデータ検出エラーが発生してしまう。
そこで本実施形態では、図12に示すように、負荷変調部56は、送電装置10に送信する通信データの第1の論理レベル「1」については、負荷変調パターンが第1のパターンPT1となる負荷変調を行う。一方、図13に示すように、通信データの第2の論理レベル「0」については、負荷変調パターンが第1のパターンPT1とは異なる第2のパターンPT2となる負荷変調を行う。
そして送電側の通信部30(復調部)は、負荷変調パターンが第1のパターンPT1である場合には、第1の論理レベル「1」の通信データであると判断する。一方、負荷変調パターンが第1のパターンPT1とは異なる第2のパターンPT2である場合には、第2の論理レベル「0」の通信データであると判断する。
ここで負荷変調パターンは、第1の負荷状態と第2の負荷状態で構成されるパターンである。第1の負荷状態は、負荷変調部56による受電側の負荷が、例えば高負荷になる状態である。具体的には、図12、図13において、第1の負荷状態の期間TM1は、負荷変調部56のスイッチ素子SWがオンになって、電流源ISの電流がノードNVCからGND側に流れる期間であり、第1、第2のパターンPT1、PT2のHレベル(ビット=1)に対応する期間である。一方、第2の負荷状態は、負荷変調部56による受電側の負荷が、例えば低負荷になる状態である。具体的には、図12、図13において第2の負荷状態の期間TM2は、負荷変調部56のスイッチ素子SWがオフになる期間であり、第1、第2のパターンPT1、PT2のLレベル(ビット=0)に対応する期間である。
そして図12、図13において、第1のパターンPT1は、第1の負荷状態の期間TM1の幅が第2のパターンPT2に比べて長くなるパターンとなっている。このように第1の負荷状態の期間TM1の幅が、第2のパターンPT2に比べて長い第1のパターンPT1については、論理レベル「1」であると判断される。一方、第1の負荷状態の期間TM1の幅が、第1のパターンPT1に比べて短い第2のパターンPT2については、論理レベル「0」であると判断される。
図12に示すように、第1のパターンPT1は、例えば(1110)のビットパターンに対応するパターンである。図13に示すように、第2のパターンPT2は、例えば(1010)のビットパターンに対応するパターンである。これらのビットパターンにおいて、ビット=1は、負荷変調部56のスイッチ素子SWがオンになる状態に対応し、ビット=0は、負荷変調部56のスイッチ素子SWがオフになる状態に対応する。
例えば受電側は、送信する通信データのビットが論理レベル「1」である場合には、第1のパターンPT1に対応する(1110)のビットパターンで、負荷変調部56のスイッチ素子SWをオン又はオフにする。具体的には、スイッチ素子SWを、順に、オン、オン、オン、オフにするスイッチ制御を行う。そして送電側は、負荷変調パターンが、(1110)のビットパターンに対応する第1のパターンPT1であった場合には、通信データのビットの論理レベルは「1」であると判断する。
一方、受電側は、送信する通信データのビットが論理レベル「0」である場合には、第2のパターンPT2に対応する(1010)のビットパターンで、負荷変調部56のスイッチ素子SWをオン又はオフにする。具体的には、スイッチ素子SWを、順に、オン、オフ、オン、オフにするスイッチ制御を行う。そして送電側は、負荷変調パターンが、(1010)のビットパターンに対応する第2のパターンPT2であった場合には、通信データのビットの論理レベルは「0」であると判断する。
ここで、送電部12の送電周波数(駆動クロック信号FCKの周波数)をfckとし、送電周期をT=1/fckとした場合には、第1、第2のパターンPT1、PT2の長さは、例えば512×Tと表すことができる。この場合に、1つのビット区間の長さは、(512×T)/4=128×Tと表される。従って、受電側は、通信データのビットが論理レベル「1」である場合には、例えば128×Tの間隔で、第1のパターンPT1に対応する(1110)のビットパターンで、負荷変調部56のスイッチ素子SWをオン又はオフにする。また受電側は、通信データのビットが論理レベル「0」である場合には、例えば128×Tの間隔で、第2のパターンPT2に対応する(1010)のビットパターンで、負荷変調部56のスイッチ素子SWをオン又はオフにする。
一方、送電側は、例えば図14に示す手法で通信データの検出処理及び取り込み処理を行う。例えば通信部30(復調部)は、第1のパターンPT1における第1の負荷状態の期間TM1内に設定された第1のサンプリングポイントSP1から、所与のサンプリング間隔SIで負荷変調パターンのサンプリングを行って、所与のビット数の通信データを取り込む。
例えば図14のサンプリングポイントSP1、SP2、SP3、SP4、SP5、SP6は、サンプリング間隔SI毎に設定されるサンプリングポイントである。このサンプリング間隔SIは、負荷変調パターンの長さに対応する間隔である。例えば図12、図13では、第1、第2のパターンPT1、PT2の長さは512×T(=512/fck)となっているため、サンプリング間隔SIの長さも512×Tになる。
そして図14では、期間TS1、TS2、TS3、TS4、TS5、TS6での負荷変調パターンは、各々、PT1、PT2、PT1、PT2、PT2、PT2になっている。従って、図14の場合には、第1のサンプリングポイントSP1から、サンプリング間隔SIで負荷変調パターンのサンプリングを行うことで、例えばビット数=6である通信データ(101000)が取り込まれることになる。
具体的には、第1の負荷状態の期間TM1の幅が、第1の範囲幅内(220×T〜511×T)である場合に、図14に示すように、第1の負荷状態の期間TM1内に、第1のサンプリングポイントSP1を設定する。即ち、信号レベルがHレベルとなる期間TM1の幅が、第1の範囲幅内である場合に、ビット同期を行い、その期間TM1内の例えば中心点に、第1のサンプリングポイントSP1を設定する。そして、設定された第1のサンプリングポイントSP1から、サンプリング間隔SI毎にサンプリングを行う。そして取り込んだ信号のレベルが、Hレベル(第1の負荷状態)であれば、論理レベル「1」(第1のパターンPT1)であると判断し、Lレベル(第2の負荷状態)であれば、論理レベル「0」(第2のパターンPT2)であると判断する。
ここで第1の範囲幅(220×T〜511×T)は、第1のパターンPT1における第1の負荷状態の期間TM1(384×T)に対応して設定される範囲幅である。例えば信号に重畳するノイズ等が原因となって、期間TM1の幅は変動してしまう。そして第1のパターンPT1における期間TM1の幅のティピカル値は、3ビット分(111)に対応する幅である128×3×T=384×Tである。従って、この384×Tを含むような第1の範囲幅220×T〜511×Tを設定する。そして、第1の範囲幅220×T〜511×T内であるHレベルの期間については、第1のパターンPT1の期間TM1であると判断し、第1のサンプリングポイントSP1を設定するためのビット同期を行う。このようにすることで、ノイズが信号に重畳している場合にも、適正なビット同期を行って、適切な第1のサンプリングポイントSP1を設定できるようになる。
なお、図14の各サンプリングポイントSP2〜SP6において、そのサンプリングポイントを含む負荷状態の期間の幅が、所定の範囲幅内であるか否かを確認するようにしてもよい。
例えば第2のサンプリングポイントSP2において、負荷状態が第1の負荷状態(Hレベル)であり、且つ、第2のサンプリングポイントSP2を含む第1の負荷状態の期間TM1の幅が、第1の範囲幅内(220×T〜511×T)である場合には、第2のサンプリングポイントSP2での負荷変調パターンが第1のパターンPT1(論理レベル「1」)であると判断する。
一方、第2のサンプリングポイントSP2において、負荷状態が第2の負荷状態(Lレベル)であり、且つ、第2のサンプリングポイントSP2を含む第2の負荷状態の期間TM2の幅が、第2の範囲幅内(例えば80×T〜150×T)である場合には、第2のサンプリングポイントSP2での負荷変調パターンが第2のパターンPT2(論理レベル「0」)であると判断する。
ここで第2の範囲幅(80×T〜150×T)は、第2のパターンPT2における第2の負荷状態の期間TM2(128×T)に対応して設定される範囲幅である。期間TM2のティピカル値は、1ビットに対応する幅である128×Tとなるため、この128×Tを含むような第2の範囲幅80×T〜150×Tが設定される。
以上のように本実施形態では、負荷変調パターンを判別して通信データの論理レベルを判定している。従って、ノイズが多いような状況においても、通信データの適正な検出が可能になる。即ち、図12、図13の第1、第2のパターンPT1、PT2では、例えば第1の負荷状態(Hレベル)の期間TM1の幅が大きく異なっており、本実施形態では、この期間TM1の幅の違いを判別することで、パターンを判別して、通信データの各ビットの論理レベルを検出している。従って、例えばノイズが原因でサンプリングポイントSP1での期間TM1の幅等が変動した場合にも、通信データの適正な検出が可能になる。また、以降のサンプリングポイントSP2、SP3、SP4・・・は、サンプリング間隔SIに基づき簡素な処理で設定できるため、通信データの検出処理の処理負荷も軽減できるという利点がある。
図15、図16に、本実施形態で用いられる通信データのフォーマットの例を示す。
図15では、通信データは64ビットで構成され、この64ビットで1つのパケットが構成される。一番目の16ビットは0000hとなっている。例えば受電側の負荷変調を検出して送電側が通常送電(或いは間欠送電)を開始する場合に、通信部30の電流検出回路等が動作して、通信データを適正に検出できるようになるまでに、ある程度の時間が必要になる。このため、一番目の16ビットには、ダミー(空)のデータである0000hを設定する。送電側は、この1番目の16ビットの0000hの通信期間において、例えばビット同期のために必要な種々の処理を行うことになる。
次の2番目の16ビットには、データコードと、整流電圧(VCC)の情報が設定される。データコードは、図16に示すように、次の3番目の16ビットで通信されるデータを特定するためのコードである。整流電圧(VCC)は、送電装置10の送電電力設定情報として用いられる。
3番目の16ビットには、データコードでの設定に従って、温度、バッテリー電圧、バッテリー電流、ステータスフラグ、サイクル回数、IC番号・充電実行・オフスタート、或いはIDなどの情報が設定される。温度は例えばバッテリー温度などである。バッテリー電圧、バッテリー電流は、バッテリー90の充電状態を表す情報である。ステータスフラグは、例えば温度エラー(高温異常、低温異常)、バッテリーエラー(1.0V以下のバッテリー電圧)、過電圧エラー、タイマーエラー、満充電(ノーマルエンド)などの受電側のステータスを表す情報である。サイクル回数(サイクルタイム)は充電回数を表す情報である。IC番号は、制御装置のICを特定するための番号である。充電実行のフラグ(CGO)は、認証した送電側が適正であり、送電側からの送電電力に基づいて充電を実行することを示すフラグである。オフスタートのフラグ(OFST)は、取り去り検出時に放電動作がオフに設定されることを知らせるフラグである。4番目の16ビットにはCRCの情報が設定される。
図15、図16に示したように、制御部54は、充電回数情報(サイクル回数)を、送電装置10に対して送信する制御を行う。このようにすれば、送電装置10側でもバッテリー90の劣化度合いを管理すること等が可能になる。
なお本実施形態の通信手法は、図12〜図16等で説明した手法に限定されず、種々の変形実施が可能である。例えば図12、図13では第1のパターンPT1に論理レベル「1」を対応づけ、第2のパターンPT2に論理レベル「0」を対応づけているが、この対応づけは逆であってもよい。また、図12、図13の第1、第2のパターンPT1、PT2は負荷変調パターンの一例であり、本実施形態の負荷変調パターンはこれに限定されず、種々の変形実施が可能である。例えば図12、図13では、第1、第2のパターンPT1、PT2は同じ長さに設定されているが、異なる長さに設定してもよい。また図12、図13では、ビットパターン(1110)の第1のパターンPT1と、ビットパターン(1010)の第2のパターンPT2を用いているが、これらとは異なったビットパターンの第1、第2のパターンPT1、PT2を採用してもよい。例えば第1、第2のパターンPT1、PT2は、少なくとも第1の負荷状態の期間TM1(或いは第2の負荷状態の期間TM2)の長さが異なるパターンであればよく、図12、図13とは異なる種々のパターンを採用できる。また、通信データのフォーマットや通信処理も本実施形態で説明した手法に限定されず、種々の変形実施が可能である。
なお、上記のように本実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また本実施形態及び変形例の全ての組み合わせも、本発明の範囲に含まれる。また送電側、受電側の制御装置、送電装置、受電装置の構成・動作等も、本実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。