JP2018063586A - プラント制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】目的関数の重み係数を修正可能とすることで、修正目標値算出の誤差を小さくする。【解決手段】本実施の形態のプラント制御装置は、フィードバックコントローラと、リファレンスガバナとを含む。リファレンスガバナは、プラントとフィードバックコントローラとを含む閉ループシステムの予測モデルを用いて、予め設定された予測区間のプラントの特定状態量の将来の予測値を計算し、目的関数を用いて、予測値と特定状態量に課せられた制約値とに応じて目標値を修正する。プラント制御装置は、更に、特定状態量に対する実測値又は推定値である実状態量を取得する手段を備える。リファレンスガバナは、予測値と制約値との誤差がゼロより大きくなる場合であって、実状態量と制約値との差がゼロよりも大きい場合には、目的関数に含まれる重み係数を増大させる。【選択図】図3
Description
本発明はプラント制御装置に関する。
一般に、内燃機関の制御装置は、内燃機関の制御量に関して目標値が与えられた場合、同制御量の出力値を目標値に追従させるようにフィードバック制御によって内燃機関の制御入力を決定するように構成されている。ただし、実際の内燃機関の制御においては、内燃機関の状態量に関してハード上或いは制御上の様々な制約が存在している場合が多い。それらの制約が充足されない場合、ハードの破損や制御性能の低下が生じるおそれがある。制約の充足性は、目標値に対する出力値の追従性と同じく、内燃機関の制御において求められる重要な性能の1つである。
リファレンスガバナは上記要求を満たすための1つの有効な手段である。特許文献1には、リファレンスガバナを内燃機関の制御に適用した先行技術が開示されている。特許文献1のリファレンスガバナは制御対象である内燃機関とフィードバックコントローラとを含む閉ループシステム(フィードバック制御システム)をモデル化した予測モデルを備え、制約が課せられている状態量の将来値を予測モデルによって予測する。そして目標マップに従い出力された目標値が与えられると、状態量の将来値が制御出力に関する制約を満たすように修正目標値を生成して出力する。
ここで、特許文献1のリファレンスガバナでは、修正目標値を決定するため、評価関数として以下式(1)が用いられている。
上記式(1)において、y1i、y2iは、それぞれ、制御出力y1、y2のiステップ先の予測値であり、予測モデルに従って算出される。α、βは、制御出力y1、y2に課せられた制約であり、ここでは上限値である。rは修正前の制御量の目標値であり、wは修正目標値である。ρ1とρ2は重み係数であり、適合により予め定められた値である。
特許文献1のリファレンスガバナは、勾配法によって、式(1)に示す評価関数J(w)を最小化する修正目標候補を探索し、その値を最終的な修正目標値wとして決定する。
上記式(1)において、重み係数ρ1、ρ2は、適合により予め設定された値である。しかし、重み係数ρ1、ρ2が固定値として定められている場合、経年劣化や機差ばらつきや予測モデルのモデル化誤差によって、リファレンスガバナが算出する修正目標値の誤差が大きくなることが考えられる。
本発明は上記問題を解決することを目的とし、目的関数の重み係数を修正可能とすることで、修正目標値算出の誤差を小さくするように改良したプラント制御装置を提供するものである。
本発明は、プラント制御装置であって、フィードバックコントローラと、リファレンスガバナとを含む。フィードバックコントローラは、プラントの制御量の出力値を目標値に近づけるように、フィードバック制御によってプラントの制御入力を決定する。リファレンスガバナは、プラントとフィードバックコントローラとを含む閉ループシステムの予測モデルを用いて、予め設定された予測区間のプラントの特定状態量の将来の予測値を計算し、目的関数を用いて、予測値と特定状態量に課せられた制約値とに応じて目標値を修正する。プラント制御装置は、更に、特定状態量に対する実測値又は推定値である実状態量を取得する手段を備える。リファレンスガバナは、予測値と制約値との誤差がゼロより大きくなる場合であって、実状態量と制約値との差がゼロよりも大きい場合には、目的関数に含まれる重み係数を増大させる。
上記プラント制御装置によれば、プラントの経年劣化、機差等のばらつきを、特定状態量の予測値と実状態量とのずれによって把握することができ、それを重み係数に反映させることで、算出される修正目標値の誤差を小さくすることができる。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
本発明の実施の形態のプラント制御装置は、車両動力プラントであるディーゼルエンジンの制御装置である。本実施の形態1のディーゼルエンジンは、少なくとも過給機とEGR装置とを備えている。
過給機は、吸気通路には設置されたコンプレッサと排気通路に設置されたタービンとを備える。コンプレッサの下流にはインタークーラが備えられ、インタークーラの下流にはディーゼルスロットルが設けられている。過給機は可変容量型であって、タービンには可変ノズルが備えられている。但し、過給機の構成は特に限定されず、他の構成であってもよい。またエンジンは2基の過給機を有する2ターボシステムを含むものであってもよい。
EGR装置は、排気系と吸気系とを接続するEGR通路を備え、排気系から吸気系へ排気を再循環させる装置である。EGR通路にはEGR弁が設けられている。なお、ここでEGR装置は、吸気通路におけるディーゼルスロットルの下流と排気マニホールドとをEGR通路によって接続する高圧ループEGR装置であってもよいし、吸気通路におけるコンプレッサの上流と、排気通路におけるタービンの下流とを、EGR通路によって接続する低圧ループEGR装置であってもよい。また、低圧、高圧の2系統のEGR装置を有するものであってもよい。
プラント制御装置は、車両に備えられたECU(Electronic Control Unit)である。ECUは、RAM(ランダムアクセスメモリ)、ROM(リードオンリメモリ)、CPU(マイクロプロセッサ)等を備えている。ECUは、各種センサの信号を取り込み処理する。各種センサには、エンジン回転速度を検出する回転速度センサや、アクセルペダルの開度に応じた信号を出力するアクセルペダル開度センサ、過給圧を測定する過給圧センサなどが含まれている。ECUは、取り込んだ各センサの信号を処理して所定の制御プログラムに従ってアクチュエータを操作する。ECUによって操作されるアクチュエータには、可変ノズル、ディーゼルスロットル、EGR弁などが含まれている。
本実施の形態において、ECUは、ディーゼルエンジンの過給圧制御とEGR率制御とを実行する。過給圧制御、EGR率制御における制御入力(操作量)は可変ノズル開度、EGR弁開度およびディーゼルスロットル開度であり、制御出力(特定状態量)は過給圧とEGR率である。ここで、制御出力である過給圧とEGR率には、ハード上或いは制御上の制約が課せられている。ECUは、過給圧とEGR率がそれぞれの制約を満たし、尚且つ、それぞれの目標値に追従させるように制御入力を決定する。
図1は、本実施の形態に係る制御装置が有する目標値追従制御構造を示す図である。なお、図1に示す目的値追従制御構造は、ECUのROMに格納された制御プログラムに従いCPUが動作することで仮想的に実現される構成である。この目標値追従制御構造は、目標値マップ(MAP)、リファレンスガバナ(RG)およびフィードバックコントローラ(FBC)を備えている。
目標値マップは、ディーゼルエンジン(DE)の運転条件を示す外生入力d=[エンジン回転速度;燃料噴射量]が与えられると、ディーゼルエンジンの制御量の目標値r=[EGR率目標値;過給圧目標値]を出力する。
リファレンスガバナは、目標値rが与えられると、制御出力(特定状態量)y=[EGR率;過給圧]に関する制約が満たされるように目標値rを修正し、修正目標値w=[EGR率修正目標値;過給圧修正目標値]を出力する。リファレンスガバナの詳細については後述する。
フィードバックコントローラ(FBC)は、リファレンスガバナから修正目標値wが与えられると、ディーゼルエンジンの状態量x=[EGR率;過給圧]を修正目標値wに近づけるように、フィードバック制御によってディーゼルエンジンの制御入力u=[ディーゼルスロットル開度;EGR弁開度;可変ノズル開度]を決定する。フィードバックコントローラの仕様に限定はなく、公知のフィードバックコントローラを用いることができる。
リファレンスガバナについて、より具体的に、制御出力が過給圧である場合の修正目標値wを算出する場合について説明する。リファレンスガバナは、図1において破線で囲まれた閉ループシステムの予測モデル式を用いて過給圧Pimの時刻(k+1)における予測値(将来予測値)Pim(k+1)を計算する。
以下、式(2)に過給圧Pimの予測モデル式を示す。但し、将来予測値の算出方法は種々に知られており、リファレンスガバナによる将来予測値の算出方法は式(2)に限定されない。
式(2)において、Pim(k)は時刻kにおける過給圧の予測値、Pimtrg(k)は時刻kにおける過給圧目標値、Egrtrg(k)は時刻kにおけるEGR率目標値、Qfuel(k)は時刻kにおける噴射量であり、A〜Dは係数を表している。
制御出力である過給圧Pimには、制約値α以下であることが制約として課せられている。リファレンスガバナは、将来予測値Pim(k)と制約値αとに基づき、以下の式(3)で表される目的関数J(w)を用いて修正目標値wを計算する。
右辺第2項のΨpimは、重み係数である。右辺第2項Spimは、将来予測長Nhの期間における、過給圧の将来予測値Pim(k)の制約値αに対する予測の制約オーバー量である。つまり、図2に示されるように、将来予測値Pim(k)の曲線と、制約値αにより囲まれる部分の面積がSpimである。
このように目的関数では、予測モデル式に従って算出される将来予測値を使用する。従って、実際に目標値が制約をオーバーするか否かは、モデルの精度に左右される。このため、本実施の形態のリファレンスガバナは、実機において制約オーバーしないか否かを確認しながら、修正目標値の計算を重み係数Ψpimでチューニングする。
式(4)に示す実制約オーバー量がゼロより大きい場合、実際には過給圧実測値が制約値αをオーバーしていたと判断されるので、制約が守られるように、重み係数Ψpimを大きくなるように調整する。
なお重み係数Ψpimの調整方法は特に限定されず、実制約オーバー量がゼロとなるようにPID制御等のフィードバック制御を行って調整してもよいし、一定量ずつ徐々に増減してその値を学習するものであってもよい。
図3は、リファレンスガバナによって実行される重み係数調整のための制御ロジックについて説明するためのフローチャートである。図3に示される制御ロジックでは、まずステップS2において重み係数Ψpimの値が取得される。ここでは初回の制御では予め設定されている重み係数の初期値が、2回目以降は重み係数の前回値が重み係数Ψpimとして取得される。
ステップS4では過給圧の制約値αが取得される。続くステップS6では過給圧Pimの将来予測が実行される。過給圧Pimの将来予測は、上記式(2)に従って予測値Pim(k)が算出されることで実行される。次に、ステップS8において、予測の制約オーバー量が算出される。予測の制約オーバー量Spimは、上記式(3)に従って算出される。
続くステップS10において、算出された予測の制約オーバー量Spimがゼロより大きいか否かが判別される。ステップS10において、予測の制約オーバー量Spimがゼロ以下である場合には、今回の処理は終了する。予測の制約オーバー量がゼロ以下の場合、予測の状態量が制約内であり、式(3)の目的関数がゼロとなり重み係数の学習ができないためである。
一方、ステップS10において、予測の制約オーバー量がゼロより大きいと判別された場合、次に、ステップS12に進み、今回の過給圧センサの出力から過給圧の実測値Pimmeasured(k)が取得される。次に、ステップS14において実制約オーバー量が式(4)に従って算出される。
次に、ステップS16において、算出された実制約オーバー量が、ゼロより大きいか否かが判別される。ステップS16において、実制約オーバー量が、ゼロより大きいと判断された場合、ステップS18に進み、重み係数Ψpimが大きくなるように更新されて、今回の処理は終了する。一方、ステップ16において、実制約オーバー量がゼロより大きいと判別された場合には、ステップS20に進み、重み係数Ψpimが小さくなるように更新され、今回の処理は終了する。
以上説明したように、本実施の形態では、過給圧の実測値を用いて、目的関数の重み係数が補正される。従って、モデル化誤差や経時劣化等に対応して、より高い制御で、修正目標値の算出を行うことができる。
例えば、従来、実機を用いて重み係数を適合により設定する場合、式(3)における重み関数Ψpimを適宜変化させながら制御を行い、実際の過給圧が制約値αをオーバーせず、かつ、過給圧目標値の修正量が小さくなる値を検証する。このような実機を用いた適合には工数がかかる。また、重み係数を固定値とした場合、機差や劣化の影響が反映されないため、制約オーバー量が大きくなることも考えられる。そして状態量の制約オーバーを確実に避けるように重み係数を設定した場合、制約値に対するマージンが過剰に大きくなり、動作性能等に影響を与えることも考えられる。しかしこれに対して本実施の形態の制御装置によれば、実機を用いた適合を行わなくても重み係数を定め、自動的に更新することができるため、修正予測値の算出誤差を小さく抑えることができる。
なお、本実施の形態では、リファレンスガバナによる過給圧の修正目標値の算出について説明した。しかしながら、センサにより状態量の実測値を検出可能又は状態量を推定する機能を有するものであれば、他の制御量に対しても用いることができる。具体的には、例えば、EGR率を制御出力とする場合には、実際の制約オーバー量としてEGR率の状態推定値からEGR率の制約値を減じた値を用いることで、EGR率の修正目標値算出に用いられる目的関数の重み係数を修正することができる。同様にターボ回転センサの出力値からターボ回転の制約値を減じた値や、排気圧力センサの出力値から排気圧の制約値を減じた値を、それぞれ制約オーバー量として用いることで、それぞれの目的関数の重み係数を修正することができる。
なお、以上の実施の形態において各要素の個数、数量、量、範囲等の数に言及した場合、特に明示した場合や原理的に明らかにその数に特定される場合を除いて、その言及した数に、この発明が限定されるものではない。また、この実施の形態において説明する構造等は、特に明示した場合や明らかに原理的にそれに特定される場合を除いて、この発明に必ずしも必須のものではない。
Claims (1)
- プラントの制御量の出力値を目標値に近づけるように、フィードバック制御によって前記プラントの制御入力を決定するフィードバックコントローラと、
前記プラントと前記フィードバックコントローラとを含む閉ループシステムの予測モデルを用いて、予め設定された予測区間の前記プラントの特定状態量の将来の予測値を計算し、目的関数を用いて、前記予測値と前記特定状態量に課せられた制約値とに応じて前記目標値を修正するリファレンスガバナと、
前記特定状態量に対する実測値又は推定値である実状態量を取得する手段と、
を備え、
前記リファレンスガバナは、前記予測値と前記制約値との誤差がゼロより大きくなる場合であって、前記実状態量と前記制約値との差がゼロよりも大きい場合には、前記目的関数に含まれる重み係数を増大させる、
ことを特徴とするプラント制御装置。
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