JP2018061670A - 肌用被覆品及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】繰り返し使用することができる肌用被覆品を提供すること。【解決手段】美容マスク10は、肌面を覆った状態で用いられ、前記肌面から取り外し可能な肌用被覆品であり、例えば、顔面の少なくとも一部を覆うマスクである。美容マスク10は、金により形成され、前記肌面に接触される肌接触面を備える。また、美容マスク10は、前記肌面からの取り外し後において、肌接触面が前記肌面から取り外す前の面状態に保持されている。美容マスク10は、金により形成され、肌接触面を有する金形成層12と、金形成層12を支持する支持層としてのマスク本体部11と、を備える。【選択図】図1
Description
本発明は、肌用被覆品及びその製造方法に関し、詳しくは、肌面を覆った状態で用いられ、肌面から取り外し可能な肌用被覆品及びその製造方法に関する。
従来、「金」による肌の活性化や血流の促進に着目し、「金」を美容や治療に利用する試みが種々行われている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。特許文献1及び特許文献2には、紙製又は布製のシート台紙の表面に金箔が剥離可能に貼り付けられた金箔フェイスパックについて開示されている。使用者は、金箔フェイスパックの金箔面をシート台紙ごと顔面に貼り付け、その後、シート台紙のみを顔面から剥がす。美容等に必要な所定時間が経過した後に、金箔を顔面から剥がし取る。
シート台紙に貼り付けられた金箔は薄く脆いため、顔面から引き剥がす際に破れてしまい、使い捨てとなってしまう。その一方で、金は高価であるため、金箔フェイスパックは単価が高く、使い捨てでは気軽に使用しにくいのが実情である。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、繰り返し使用することができる肌用被覆品及びその製造方法を提供することを主たる目的とする。
上記課題を解決すべく、第1の構成は、肌面を覆った状態で用いられ、前記肌面から取り外し可能な肌用被覆品であって、金により形成され、前記肌面に接触される肌接触面を備え、前記肌面からの取り外し後において、前記肌接触面が前記肌面から取り外す前の面状態に保持されていることを特徴とする。
上記構成の肌用被覆品では、肌面からの取り外し後において、金により形成された肌接触面が、肌面から取り外す前の面状態で保持される。このため、次回以降の使用時にも、金で形成された肌接触面を肌面に接触させることができる。したがって、上記構成によれば、金による肌の活性化や血流の促進を行うにあたって、高価である金を用いた肌用被覆品を繰り返し使用することができる。
第2の構成は、肌面を覆った状態で用いられ、前記肌面から取り外し可能な肌用被覆品であって、金により形成され、前記肌面に接触される肌接触面を有する金形成層と、前記金形成層を支持する支持層と、を備え、前記肌面からの取り外し後において、前記金形成層が前記支持層から剥離されない状態で一体化されていることを特徴とする。金形成層と支持層とを備える構成によれば、肌用被覆品の一部を金で形成して肌面に接触させるため、金の使用量をできるだけ少なくしつつ、肌面の必要な箇所に金を接触させることができる。また、肌用被覆品を肌面から取り外す際には、金形成層が支持層から剥離されないように一体化されていることから、肌用被覆品のうち一部を金で形成した場合にも、肌用被覆品を繰り返し使用することができる。
第3の構成は、第2の構成において、前記支持層は樹脂層であることを特徴とする。この構成によれば、肌用被覆品を軽量化することができ、装着時において装着対象にかかる負荷をできるだけ軽減することができる。
第4の構成は、第3の構成において、前記樹脂層は、光透過性樹脂により形成されてなることを特徴とする。支持層が光透過性樹脂により形成されている場合、肌用被覆品に光が当たると、支持層を透過して金形成層に照射され、この光によって金形成層が温められることにより、肌の活性化や血流をより促進することができる。また、支持層が光透過性を有していると、金形成層が外部に可視化され、金の光沢を外部から視認することができる。これにより、肌用被覆品の装飾性を高めることができる。さらには、金形成層の状態を確認しやすくなり、寿命や修理の必要性をいち早く使用者に察知させることができる。
第5の構成は、第2乃至第4のいずれかの構成において、前記金形成層は蒸着膜であることを特徴とする。金形成層を蒸着膜とすることにより、金形成層を薄くでき、また支持層に対する金形成層の付着力を高めることができる。これにより、肌用被覆品を肌面から取り外すときに、金形成層が支持層からより剥離しにくくなり、製品寿命の更なる長期化を図ることができる。
また、蒸着によれば、金形成層をナノ単位の金粒子からなる薄膜とすることができる。支持層が光透過性を有する場合には、肌用被覆品に光が照射されると、光が支持層を透過して金形成層に照射される。この場合、光照射によって金形成層中の金ナノ粒子の表面でプラズモン共鳴が起き、熱が生成されイオン放出が発生することにより、装着された部分における肌の活性化や血流の促進を一層促進させることができる。
第6の構成は、第2乃至第5のいずれかの構成において、前記金形成層の厚みが0.05〜100μmであることを特徴とする。金形成層の形状変化を抑制するには、金形成層の厚みは薄いほどよい反面、金形成層が薄すぎると、剥離や肌への転写によって金形成層の寿命が短くなってしまう。この点に鑑み、金形成層の厚みを上記範囲とすることで、金形成層の変形を抑制しつつ、製品寿命の長期化を図ることができる。
第7の構成は、第6の構成において、前記支持層は、装着対象の個々の前記肌面に一致する立体形状を有することを特徴とする。鼻や頬骨、こぶ等による肌の隆起部や、皺やほくろ、眉毛等による微細な凹凸の形状は個人個人で相違する。この点に鑑み、支持層を装着対象の個々の肌面の形状に適合させるとともに、支持層に対して金形成層を0.05μm〜100μmの厚さで配置することにより、金形成層の表面形状についても個々の肌面の形状に適合させることができる。これにより、各人の微細な肌面の凹凸形状に合わせて金を接触させることができ、金による肌の活性化や血流の促進の効果をより高くすることができる。
第8の構成は、第1乃至第7のいずれかの構成において、肌用被覆品が、顔面の少なくとも一部を覆うマスクであることを特徴とする。金箔フェイスパックの場合、金箔を1回顔に貼り付けると簡単に取り外すことができず、顔面から取り除く際にはある程度の時間を要する。そのため、例えば急な来客があった場合など、金箔フェイスパックを直ちに取り除く必要が生じた場合には、金箔を貼ったままの顔で対応せざるを得なかったり、あるいは、対応しないことを選択せざるを得なかったりすることがある。また、金箔は脆くて破れやすいため、顔面から剥がすときには金箔が破れてしまい、顔面から1回剥がしてしまうと再利用することができない。
この点、本発明の肌用被覆品をマスクとした場合、このマスクは、再利用可能に取り外すことが可能なため、使用者が使いたいタイミングで使いたい時間だけ手軽に使うことができる。これにより、各自のニーズに合った使い方で、金による肌の活性化や血流の促進を行うことができ、顔の美容の自由度が高い。
第9の構成は、肌面を覆った状態で用いられ、前記肌面から取り外し可能な肌用被覆品の製造方法であって、前記肌用被覆品は、金により形成され前記肌面に接触される肌接触面を有する金形成層と、前記金形成層を支持する支持層と、を備えるものであり、三次元造形装置を用いて前記支持層を製造する工程と、前記支持層の一方の表面に金を蒸着して、厚みが0.05〜100μmの前記金形成層を形成する工程と、を含むことを特徴とする。
三次元造形装置、所謂3Dプリンタによれば、装着対象の個々の肌面に一致する形状を忠実に再現した面を有する立体物を製造することができる。また、金形成層を、蒸着を利用して厚さ0.05〜100μmとなるように支持層上に形成することにより、金形成層の表面形状を装着対象の個々の肌面に適合した形状とすることができる。したがって、上記の製造方法により得られた肌用被覆品によれば、各人の微細な肌面の凹凸形状に合わせて金を接触させることができ、これにより、金による肌の活性化や血流の促進の効果をより高めることができる。
第10の構成は、スパッタ蒸着により前記支持層の一方の表面に金を蒸着することを特徴とする。スパッタ蒸着によれば、金形成層として、薄くて支持層に対する付着力が高く、しかも、微細な凹凸形状を有する面に対しても均一な膜厚の薄膜を形成することができる。したがって、各人の微細な肌面の形状に適合した金形成層を得ることができる。また、金形成層が支持層から剥がれにくく、金形成層が装着対象に残りにくいことから、繰り返しの使用に耐え得る耐久性に優れた肌用被覆品とすることができる。
第11の構成は、前記支持層を光透過性樹脂により形成することを特徴とする。支持層が光透過性樹脂により形成された樹脂層である場合、肌用被覆品が装着された状態において肌用被覆品に光が照射されると、光が支持層を透過して金形成層に照射される。この光照射によって、スパッタ蒸着により形成された金形成層中の金ナノ粒子の表面でプラズモン共鳴が起き、熱が生成されイオン放出が発生することにより、装着された部分における肌の活性化や血流の促進を一層促進させることができる。
以下、本実施形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、肌面を覆った状態で用いられる肌用被覆品を、顔面に装着される美容マスクとして具体化している。なお、以下の説明では便宜上、美容マスクを顔面に装着した装着者を正面視した状態を基準にして左右、上下及び内外を示している。図2は、美容マスクの中心線(顔の正中線)の断面図に相当する。
図1及び図2に示すように、美容マスク10は、マスク本体部11と、マスク本体部11の内側の面に金により形成されてなる金形成層12と、を備える。
マスク本体部11は、人間の顔面形状に一致する立体的な形状を有しており、顔面に装着したときに少なくとも顔全体を被覆可能な大きさを有している。マスク本体部11には、美容マスク10の装着時においてマスク装着者が呼吸可能に形成された開口部13が設けられている。本実施形態では、目部、鼻部及び口部のそれぞれに対応する位置に、マスク本体部11の厚さ方向に貫通する開口部13が形成されている。具体的には、左右の目に対応する位置に2個の開口部13aが形成されており、左右の鼻孔に対応する位置に2個の開口部13bが形成されており、口部に対応する位置に1個の開口部13cが形成されている。
なお、開口部13の大きさ及び数は、美容マスク10の装着時において装着者が呼吸可能であればよく、図1に示す大きさ及び数に限定されない。具体的には、マスク本体部11には、目に対応する開口部13aが形成されていなくてもよい。この場合、目の部分については、目を閉じた状態の顔面形状になるようにマスク本体部11を形成する。また、鼻孔に対応する開口部13bと、口部に対応する開口部13cとの両方に開口部が形成されていなくてもよく、いずれか一方に対応して開口部が形成されていればよい。このとき、鼻孔に対応する開口部13bのみを設ける場合には、口を閉じた状態の顔面形状になるようにマスク本体部11を形成する。また更に、鼻孔に対応する開口部13bについては、左右両方の鼻孔に対応して開口部が形成されていなくてもよく、左右一方の鼻孔に対応して開口部が形成されていてもよい。また、開口部13a〜13cを複数個の小孔で構成してもよい。
マスク本体部11には、身体の曲面部分に沿って曲げられた湾曲部16が設けられている。本実施形態では、顎の曲面部分に対応する位置に湾曲部16が設けられており、マスク本体部11の下側端部が内側に入り込むように曲がった形状を有している。これにより、マスク装着時において、美容マスク10の動きが抑制され、マスク内面が肌に密着されやすくなっている。
マスク本体部11は、三次元造形装置によってオーダーメードで製造されている。これにより、マスク本体部11の内面11aは、装着者個人の顔面形状と細部まで一致した形状を有するものとなっている。つまり、内面11aには、装着者の顔の眉毛やほくろ、こぶ、外傷、しわ等の凹凸形状に一致した形状を有している。マスク本体部11の厚みは、好ましくは0.3〜2mm、より好ましくは0.5〜1.5mm、更に好ましくは0.8〜1.5mmである。なお、マスク本体部11は三次元造形装置に限らず、例えば切削加工、プレス加工等によって製造されていてもよい。
マスク本体部11は樹脂製であり、本実施形態では、光透過性樹脂により形成された樹脂層である。光透過性樹脂は、光を透過可能であればよく、透明樹脂及び半透明樹脂のいずれであってもよい。また、光を透過可能である限り、マスク本体部11が顔料や染料等の着色剤で着色されていてもよい。光透過性樹脂は、好ましくは透明樹脂であり、耐熱性に優れ、かつ変形及び変質しにくい樹脂が用いられる。このような樹脂として具体的には、例えばABS樹脂、塩化ビニリデン樹脂、塩化ビニル樹脂、AS樹脂、PET樹脂、アクリル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリカーボネート、ポリプロピレン、スチレン−メチルメタクリレート−無水マレイン酸共重合体(SMM樹脂)のほか、耐熱透明樹脂として公知のものが挙げられる。
金形成層12は、図2に示すように、マスク本体部11に隣接して配置されており、マスク本体部11に隣接する面とは反対側の面が、装着対象の肌面(美容マスク10では顔面)に接触される肌接触面14となっている。金形成層12は、マスク本体部11の内面11a、つまりマスク全体として凹部となる側に配置されている。これにより、金形成層12が凹部内に収まり、肌接触面14が傷付きにくくなっている。本実施形態では、金形成層12の形成領域の境界12aが、マスク本体部11の外縁端部11bよりも所定長さdだけ内側に配置されており、美容マスク10の保管時や取扱い時に金形成層12がより傷付きにくくなっている。肌接触面14は、マスク本体部11の内面11aの凹凸形状に適合された形状を有しており、内面11aと同様に、装着者個人の顔面形状に細部まで一致した面となっている。
金形成層12は、美容マスク10の取り外し時に、マスク本体部11から剥離されない状態でマスク本体部11に支持されている。本実施形態では、金形成層12は、金により形成されてなる蒸着膜であり、肌接触面14の面全体が金で形成されている。金形成層12の厚みは、金形成層12の形状変化の抑制を図りつつ、製品寿命を長くする点で、好ましくは0.05〜100μmである。より好ましくは0.1〜80μm、更に好ましくは5〜50μmである。なお、マスク本体部11が、金形成層12を支持する「支持層」に相当する。
金形成層12を形成する金は、純金(24K)であってもよく、純金と他の金属との合金であってもよい。合金を用いた場合、金形成層12の表面に傷が付きにくく、また低コスト化を図ることが可能である。他の金属としては、例えば銀、銅、鉄、アルミニウム等が挙げられる。金の純度は特に制限されないが、金による肌の活性化や血流の促進によって美容効果を十分に高める点で、75%以上であることが好ましく、94%以上であることがより好ましく、99%以上であることが更に好ましい。
美容マスク10の側縁部には、美容マスク10が顔面に装着された状態を保持する保持部15が設けられている。本実施形態では、保持部15は、例えば紐やゴム紐等の線状部材によって構成されており、マスク本体部11の左右において装着者の耳に対応する位置に設けられた開口部17に線状部材がそれぞれ取り付けられている。装着者がマスク本体部11を顔面に装着後、保持部15を左右の耳に引っ掛けることで、マスク本体部11が顔面にフィットした状態で保持され、金形成層12が肌に密着した状態が保持される。
なお、保持部15は上記のものに限定されない。例えば、線状部材を耳に引っ掛ける構成に代えて、左右それぞれに取り付けた線状部材の先端部を頭部の後方位置で結ぶようにしたり、フックを取り付けて引っ掛けたりする構成としてもよい。また、ゴム状の線状部材をマスク本体部11の左右に架け渡し、マスク本体部11と線状部材との間に頭部を入れるようにしてもよい。あるいは、顔面に装着した状態の美容マスク10を伸縮性のあるネット等で覆うことによって、美容マスク10を顔面に保持してもよい。
美容マスク10の厚みは、繰り返し使用する場合の耐久性や、取り扱い容易性を確保する点から、0.5mm以上とすることが好ましい。当該厚みは、より好ましくは、0.8mm以上であり、更に好ましくは1mm以上である。厚みの上限は特に制限されないが、顔面に装着したときの不快感を抑えたり軽量化を図ったりする点で、10mm以下とすることが好ましく、5mm以下とすることがより好ましい。
次に、美容マスク10の製造方法について説明する。本実施形態では、三次元造形装置(3Dプリンタ)を用いてマスク本体部11を製造する工程と、マスク本体部11の一方の表面に金形成層12を形成する工程と、を含む方法により美容マスク10を製造する。
マスク本体部11を製造するには、まず、美容マスク10を装着する各個人の顔の三次元形状を表す3Dデータを、例えば3Dスキャナを用いて作成する。3Dデータ取得のためのスキャンは、装着者が座った姿勢で装着者の顔面をスキャンすることにより行う。なお、装着者が起立した姿勢や仰向けの姿勢でスキャンすることにより、顔面の3Dデータを取得してもよい。3Dデータについては、マスク本体部11に開口部13が形成されるように修正する。本実施形態では、各個人の目部、鼻部及び口部に対応する位置に開口部13a〜13cが形成されるように3Dデータを修正する。続いて、作成した3Dデータを三次元造形装置に出力して、3Dデータに対応する立体形状を有するマスク本体部11を作製する。これにより、マスク本体部11の内面11aに装着者各個人の肌面の凹凸形状が精細に再現される。
なお、開口部13を形成する方法は上記に限らず、三次元造形装置で立体物を作製した後に、その立体物から、各個人の目部、鼻部及び口部に対応する位置の造形部分を取り除くことにより開口部13を形成してもよい。
三次元造形装置の種類は特に限定されず、例えば熱溶解積層法、インクジェット法、粉末焼結法、粉末固着法、光造形法等による装置が挙げられる。安価に製造可能な点及び樹脂の選択の幅が広い点で、造形物の製造に際し一般には熱溶解積層法が用いられる。
続いて、マスク本体部11の内面11a、つまりマスク全体として凹部となる側に金形成層12を形成する。本実施形態では、蒸着によって金を内面11aに付着させる。金の付着を蒸着法によって行うことで、ナノ単位の金粒子からなる薄膜が、マスク本体部11から剥離されない状態で一体化されるように、マスク本体部11の内面11aに形成される。
蒸着方法としては、例えば抵抗蒸着や電子銃蒸着、スパッタ蒸着等が挙げられ、中でもスパッタ蒸着が好ましい。スパッタ蒸着によれば、マスク本体部11に対する付着力が高く、美容マスク10を繰り返し使用した場合にも、金形成層12がマスク本体部11から剥がれにくい蒸着膜が得られる。また、微細な凹凸形状を有する内面11aに対して均一な膜厚で成膜でき、金形成層12として、マスク本体部11の内面11aに形成された微細な凹凸形状を表面に有する薄膜が形成される。この場合、装着者個々の肌面の凹凸形状が精細に再現された肌接触面14が得られる。
スパッタ蒸着では、一般には、真空容器内に不活性ガス(アルゴン等)を充填し、ターゲット(ここでは金の板材)にマイナスの電圧を印加して不活性ガス原子をイオン化し、ガスイオンをターゲットの表面に衝突させることで、粒子状の金を基材上に付着させて成膜する。金粒子の粒径は、美容マスク10による肌の活性化や血流の促進効果を十分に高くでき、また膜を剥がれにくくできる点で、好ましくは1〜100nmであり、より好ましくは2〜50nmであり、更に好ましくは3〜30nmである。金粒子の粒径がナノ単位であると、光の照射により金粒子(金ナノ粒子)が励起されることで表面プラズモン共鳴が起き、美容マスク10の装着時に、熱とイオン放出による肌の活性化や血流の促進効果をより高くできる点で好ましい。なお、金粒子の粒径は、透過電子顕微鏡(TEM)により測定することができる。
金のスパッタ蒸着は、通常、市販のスパッタ蒸着装置を用いて行われる。スパッタ蒸着による成膜の際には、1回の蒸着処理によって所望の膜厚としてもよく、複数回の蒸着処理によって所望の膜厚としてもよい。また、スパッタ蒸着を行う前には、必要に応じて、マスク本体部11の内側表面に適当な表面改質処理を施してもよい。
なお、スパッタ蒸着装置において、スパッタ蒸着が可能な基材の大きさに上限が設けられている場合、複数のパーツに分けてマスク本体部11を作製し、各パーツに金形成層12を形成した後に各パーツを組み合わせて一体化することにより美容マスク10を製造してもよい。その後、必要に応じて保持部15を取り付ける。
次に、上述した美容マスク10の作用について、図3を参照しながら説明する。
図3(a)に示すように、美容マスク10は、金形成層12が配置されている面を内側にして装着者Pの顔面に装着される。上述したように、美容マスク10の内面(肌接触面14)は、面全体が金で形成されており、また、装着者Pの顔面形状に細部まで一致した凹凸形状を有している。したがって、美容マスク10が装着された状態では、装着者Pの顔面全体に金を密着させることができる。また、金が顔面に密着されることで、肌の活性化や血流の促進、保湿等が促され、美肌効果を高めることができる。美容マスク10が顔面に装着されている間は、保持部15を使うことで美容マスク10を顔面に密着させておくことができる。したがって、装着者Pは、美容マスク10を装着したまま、自由に動いたり両手を使ったりすることが可能である。
マスク本体部11は透明樹脂で形成されている。そのため、美容マスク10が装着された状態では、装着者Pの顔に光が当たると、光はマスク本体部11を透過して金形成層12に照射される。この光の照射によって金ナノ粒子の表面プラズモン共鳴が起こり、発熱とイオン放出が促進される。これにより、肌の活性化や血流の促進が一層促進され、美容効果を更に高めることができる。なお、美容マスク10に照射される光は、自然光であっても照明光であってもよい。
美容マスク10を取り外すときには、保持部15を外してからマスク本体部11を顔面から離間させる。美容マスク10には、金の蒸着によってマスク内側に金形成層12が形成されており、金形成層12がマスク本体部11の表面に強固に付着した状態となっている。そのため、図3(b)に示すように、美容マスク10を顔面から取り外しても、金形成層12は顔面上には残らず、金形成層12がマスク本体部11から剥離されない状態で一体化されたまま、美容マスク10が取り除かれる。つまり、美容マスク10を取り外した後にも、金形成層12の肌接触面14は、美容マスク10を肌面から取り外す前の面状態に保持されており、美容マスク10を再利用可能である。また、美容マスク10の装着及び取り外しが簡便かつ容易であり、金による美肌促進を手軽に行うことができる。
なお、本明細書において「面状態に保持」とは、肌接触面14の表面形状を使用前後で変化のないように保持することを意味する。具体的には、(1)肌接触面14の表面が変形しすぎて次回使用時に肌面の形状に適合しなくなった状態、及び(2)肌接触面14の表面にある金が剥離等により脱落して、次回使用時に金の作用が肌面に及ばないか又は及びにくくなった状態、のうちの少なくともいずれかを満たす状態にならないように、肌接触面14の表面形状を使用前後で変化のないように保持することをいう。
以上詳述した本実施形態によれば、以下の優れた効果が得られる。
美容マスク10によれば、金により形成された肌接触面14が、肌面からの取り外し後において取り外し前の面状態に保持され、肌接触面14の表面形状が使用前後で変化がないため、次回以降の使用時にも、金で形成された肌接触面14を肌面に接触させることができる。したがって、金を肌面に接触させて肌の活性化や血流の促進を行うにあたって、美容マスク10を繰り返し使用することができる。そのため、金箔パックのように1回の使い切りではなく、何度も再利用することができる。
美容マスク10を、金により形成された金形成層12と、金形成層12を支持する支持層としてのマスク本体部11とを備える構成とし、肌用被覆品の一部を金で形成して肌面に接触させるようにした。これにより、金の使用量をできるだけ少なくしつつ、肌面の必要な箇所に金を接触させることができる。
また、マスク本体部11と金形成層12とは、肌面からの取り外し後において、金形成層12がマスク本体部11から剥離されない状態で一体化されており、美容マスク10の取り外し後では、金形成層12は顔面に残らず、マスク本体部11とともに肌面から離間される。これにより、美容マスク10のうち一部を金で形成した場合にも、美容マスク10を繰り返し使用することができる。
マスク本体部11を樹脂層としたため、美容マスク10を軽量化することができ、装着者Pが美容マスク10を顔面に装着した時に、装着者Pにかかる負荷をできるだけ軽減することができる。また、装着時において、美容マスク10が顔面からずり下がることを抑制することができる。
マスク本体部11を光透過性樹脂により形成したため、金形成層12を外部に可視化させることができ、金の光沢を外部から視認することができる。これにより、装飾性の高い美容マスク10とすることができる。また、金形成層12の状態を確認しやすくなり、寿命や修理の必要性をいち早く使用者に察知させることができる。
また、マスク本体部11が、光透過性樹脂によって形成された樹脂層であるため、美容マスク10が装着者Pに装着された状態では、美容マスク10に光が当たると、光がマスク本体部11を透過して金形成層12に照射される。この光の照射によって金形成層12が効率よく温められ、肌の活性化や血流促進をより効率よく行うことができる。特に、金形成層12が蒸着膜であると、金形成層12中の金ナノ粒子の表面でプラズモン共鳴が起き、熱が生成されイオン放出が発生することにより、肌の活性化や血流の促進、保湿が促進される。これにより、美容効果を一層高めることができる。
金形成層12を蒸着膜としたため、金形成層12がマスク本体部11からより剥がれにくくなり、美容マスク10を肌面から取り外すときに、金形成層12が顔面に残ることを抑制することができる。また、再利用性が高い点で有意である。
マスク本体部11の内面11aを、装着者Pの個々の肌面に一致する立体形状を有するように形成するとともに、内面11aに金形成層12を厚み0.05μm〜100μmの範囲の薄膜とすることにより、肌接触面14を、装着者Pの個々の肌面に一致する立体形状とすることができる。その結果、各人の肌面の凹凸形状に合わせて金を肌に接触させることができ、美肌効果をより高めることができる。
美容マスク10は、再利用可能に直ぐに取り外すことが可能である。このため、美容マスク10の装着中に、例えば急な来客があった場合など、美容マスク10を直ちに取り外す事情が生じた場合にも、美容マスク10を再利用可能に取り外すことができる。したがって、美容マスク10によれば、使用者は、使いたいタイミングに使いたい時間だけ手軽に使って美容を行うことができる。
美容マスク10を、マスク装着時に装着者が呼吸可能に形成された開口部13を備える構成としたため、美容マスク10を長時間装着したままにすることができる。これにより、使用者は、長時間に亘って美容を楽しむことができる。
金形成層12を、マスク本体部11においてマスク全体として凹部となる側に配置する構成とした。この場合、金形成層12が凹部内に収まり、金形成層12を平面に対してどのように接触させても肌接触面14が平面に接触しないようにすることができる。これにより、肌接触面14が傷付きにくく、繰返し使用に適したものとすることができる。
また、三次元造形装置を用いてマスク本体部11を作製するとともに、蒸着を利用して、マスク本体部11の内面11aに、金形成層12として膜厚が0.05μm〜100μmの薄膜を形成することから、装着者Pの個々の肌面に一致する形状が忠実に再現された肌接触面14を形成することができる。これにより、各人の肌面の凹凸形状に合わせて金を接触させることができ、美肌効果をより高めることができる。
(他の実施形態)
本発明は上記実施形態に限らず、例えば以下のように実施されてもよい。
・上記実施形態では、金形成層12を蒸着膜としたが、金を含む組成物を塗布して形成される塗布膜としてもよい。金形成層12を塗布膜とすることにより、低コスト化と、支持層(マスク本体部11)に対する付着力との両立を図ることができる。塗布膜を形成するには、まず、例えばアルコール等の溶剤に金粒子が分散されてなる分散液を調製し、調製した分散液をマスク本体部11の内面11aに塗布する。塗布方法としては、例えばスプレー法、ディップ法、スピンコート法、刷毛塗り法等が挙げられ、中でもスプレー法が好ましい。なお、分散液を塗布する前に、マスク本体部11の内面11aに接着剤を塗布してもよい。この場合、マスク本体部11と金形成層12との間に接着剤層が介在された美容マスクが得られる。分散液の塗布後、例えば加熱処理、風乾処理等によって溶剤を除去することにより、マスク全体として凹部となる側に金形成層12が形成された美容マスクが得られる。
・上記実施形態では、マスク本体部11を光透過性樹脂で形成したが、光不透過性樹脂で形成してもよい。この場合、金形成層12を外部から視認できないようにすることができるため、装着時や保管時に金の光沢を外部に見せたくない使用者に対して、ニーズに合った製品を提供することができる。
・マスク本体部11を樹脂以外の材料(例えば金属等)によって形成してもよい。
・上記実施形態では、顔面の全体を覆う美容マスク10としたが、顔面の一部を覆うマスクであってもよい。例えば、目部周辺のみを覆うアイマスクとしてもよいし、口部周辺のみを覆う口用マスクとしてもよい。
・上記実施形態の美容マスク10は、支持層としてのマスク本体部11と、金形成層12とを備えていたが、美容マスク全体が金で形成されてなる黄金マスクであってもよい。この場合にも、金により形成された肌接触面を有するとともに、肌面からの取り外し後において、肌接触面が肌面から取り外す前の面状態に保持されるマスクを得ることができる。したがって、金を肌面に接触させるにあたって、高価である金を用いた肌用被覆品を繰り返し使用することができる。
全体が金で形成された美容マスクは、肌接触面が、装着対象の個々の肌面に一致する立体形状を有していることが好ましい。こうしたマスクは、例えば、三次元造形装置を用いて、装着者個々の肌面に細部まで一致する凹凸形状を有する一対の金型を作製し、一対の金型の間に金板を挟んでプレス加工することにより製造する。全体が金で形成された美容マスクは財産としても十分に価値がある。
・上記実施形態では、支持層としてのマスク本体部11の一方の面に金形成層12を配置したが、マスク本体部11の全体を金で被覆してもよい。
・本発明の肌用被覆品を、顔面の少なくとも一部に装着されるマスク以外の用途に適用してもよい。顔面用以外の用途に適用した場合にも、金による肌の活性化や血流の促進を行うことができ、各種症状や疾患の緩和や治療のために有用である。こうした肌用被覆品は、体全体を覆うものであってもよく、体の前半分又は後ろ半分を覆うものであってもよい。なお、体全体又は体の前半分を覆う製品とする場合には、呼吸のための非被覆部を肌用被覆品に設ける。
本発明の肌用被覆品は、腹部や腰部、肩部、頭部、腕部、脚部、首部等の体の局部を覆う局部用製品であってもよい。例えば、腹部型の肌用被覆品は、胃腸を温めて血流促進が図られることで、胃腸の機能低下に起因する症状を改善又は緩和する効果が期待できる。また、腰部型の肌用被覆品であれば、腰部の血流促進によって腰痛やギックリ腰等の症状を改善又は緩和したり、肩部側の肌用被覆品であれば、肩こり、四十肩、五十肩等の症状を改善又は緩和したりする効果が期待できる。また、頭部型の肌用被覆品であれば、頭部の血流促進によって脱毛防止や育毛を図る効果が期待できる。
・上記実施形態では、肌面の形状に一致する立体形状を有する肌用被覆品について説明したが、肌用被覆品を、肌面の形状に一致する形状に変形可能な平面状の製品としてもよい。具体的には、マスク本体部11を平面状の基材とし、基材の一方の表面に、蒸着法や塗布法を用いて金形成層12を形成する。基材としては、例えば可撓性の樹脂フィルムを用いる。樹脂フィルムの厚さは、0.2〜1mmとすることが好ましい。肌用被覆品が平面状の製品である場合には、装着対象(例えば、腕部や脚部など)の肌面に肌用被覆品の金形成層12を接触させ、装着対象の肌面の形状に沿って肌用被覆品を変形させる。そして、その変形させた状態を保持したまま、伸縮ネット等の保持部材を上から被せて、肌用被覆品を肌面に密着させる。
・上記実施形態では、肌用被覆部材は保持部15を備える構成としたが、保持部15を備えない構成としてもよい。
・上記実施形態では、肌用被覆品が人に装着される場合について説明したが、犬や猫、牛、馬等の家畜やその他の動物を装着対象としてもよい。
10…美容マスク(肌用被覆品)、11…マスク本体部(支持層)、11a…内面、12…金形成層、13…開口部、14…肌接触面、15…保持部、16…湾曲部。
Claims (11)
- 肌面を覆った状態で用いられ、前記肌面から取り外し可能な肌用被覆品であって、
金により形成され、前記肌面に接触される肌接触面を備え、
前記肌面からの取り外し後において、前記肌接触面が前記肌面から取り外す前の面状態に保持されていることを特徴とする肌用被覆品。 - 肌面を覆った状態で用いられ、前記肌面から取り外し可能な肌用被覆品であって、
金により形成され、前記肌面に接触される肌接触面を有する金形成層と、
前記金形成層を支持する支持層と、を備え、
前記肌面からの取り外し後において、前記金形成層が前記支持層から剥離されない状態で一体化されていることを特徴とする肌用被覆品。 - 前記支持層は樹脂層である、請求項2に記載の肌用被覆品。
- 前記樹脂層は、光透過性樹脂により形成されてなる、請求項3に記載の肌用被覆品。
- 前記金形成層は蒸着膜である、請求項2〜4のいずれか一項に記載の肌用被覆品。
- 前記金形成層の厚みが0.05〜100μmである、請求項2〜5のいずれか一項に記載の肌用被覆品。
- 前記支持層は、装着対象の個々の前記肌面に一致する立体形状を有する、請求項6に記載の肌用被覆品。
- 顔面の少なくとも一部を覆うマスクである、請求項1〜7のいずれか一項に記載の肌用被覆品。
- 肌面を覆った状態で用いられ、前記肌面から取り外し可能な肌用被覆品の製造方法であって、
前記肌用被覆品は、金により形成され前記肌面に接触される肌接触面を有する金形成層と、前記金形成層を支持する支持層と、を備えるものであり、
三次元造形装置を用いて前記支持層を製造する工程と、
前記支持層の一方の表面に金を蒸着して、厚みが0.05〜100μmの前記金形成層を形成する工程と、
を含む肌用被覆品の製造方法。 - スパッタ蒸着により前記支持層の一方の表面に金を蒸着する、請求項9に記載の肌用被覆品の製造方法。
- 前記支持層を光透過性樹脂により形成する、請求項10に記載の肌用被覆品の製造方法。
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-
2016
- 2016-10-12 JP JP2016201258A patent/JP2018061670A/ja active Pending
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