JP2018059136A - 金属構造体及び金属構造体の製造方法 - Google Patents

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浩行 濱本
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陽一 渡邊
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Abstract

【課題】アルミニウム系基材に対して、良好に密着したダイヤモンドライクカーボン層を有する金属構造体を提供する。
【解決手段】アルミニウム製又はアルミニウム合金製の基材と、前記基材上に設けられた、実質的にチタン、クロム、又はタングステンのいずれかの純金属からなる厚さ0.6μm以上の第1の中間層と、前記第1の中間層上に設けられた、炭化ケイ素を主体とする厚さ0.01〜0.5μmの第2の中間層と、前記第2の中間層上に設けられた、厚さ1.0〜6.0μmの水素含有ダイヤモンドライクカーボン層とを備える金属構造体である。
【選択図】図1

Description

本発明は、金属構造体及び金属構造体の製造方法に関する。
ダイヤモンドライクカーボン(以下、「DLC」と記載することがある。)膜は、ダイヤモンド構造とグラファイト構造が混在した非晶質膜である。DLC膜は、一般的に、硬度が高く、耐摩耗性、熱伝導性、及び化学的安定性等に優れ、また、低い摩擦係数を有するなどの特性を有するため、例えば、摺動部材、耐摩耗性機械部品、磁気・光学部品、切削工具類、及び金型等の表面層として、広く利用されている。
被着対象である基材とDLC膜との密着性を高めるために、DLC膜の成膜方法や、基材とDLC膜との間に中間層を設ける層構造等に関して種々の検討がなされてきている。例えば特許文献1には、表面にカーボンイオン注入層を有する金属母材と、カーボンイオン注入層上に、炭素と珪素を含むプラズマガスより形成されたDLC膜とからなる摺動部品が開示されている。また、特許文献2には、一以上の炭化水素系ガスを用いて、パルスプラズマによる、イオン注入プロセスと成膜プロセスとを組み合わせた複合プロセスによって、基材表面にDLC膜を成膜するDLC膜の成膜方法が提案されている。
特開2000−319784号公報 特開2004−323973号公報
しかしながら、これまで、基材に対して高い密着性でDLC膜を形成可能であると提案されていた方法によっても、アルミニウム製又はアルミニウム合金製の基材に対しては、要求される特性を満足できるように良好に密着するDLC膜を形成することが困難であった。
そこで、本発明は、アルミニウム製又はアルミニウム合金製の基材に対して、良好に密着したダイヤモンドライクカーボン層を有する金属構造体を提供しようとするものである。
本発明は、アルミニウム製又はアルミニウム合金製の基材と、前記基材上に設けられた、実質的にチタン、クロム、又はタングステンのいずれかの純金属からなる厚さ0.6μm以上の第1の中間層と、前記第1の中間層上に設けられた、炭化ケイ素を主体とする厚さ0.01〜0.5μmの第2の中間層と、前記第2の中間層上に設けられた、厚さ1.0〜6.0μmの水素含有ダイヤモンドライクカーボン層と、を備える金属構造体を提供する。
本発明によれば、アルミニウム製又はアルミニウム合金製の基材に対して、良好に密着したダイヤモンドライクカーボン層を有する金属構造体を提供することができる。
本発明の一実施形態の金属構造体の層構成の一例を模式的に示す断面図である。 本発明の一実施形態の金属構造体の層構成の別の一例を模式的に示す断面図である。 実施例1で作製した金属構造体について、ボールオンディスク式摩擦摩耗試験を行った際の摺動距離と摩擦係数の関係を表すグラフである。
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。
<金属構造体>
本発明の一実施形態の金属構造体は、基材と、基材上に設けられた第1の中間層と、第1の中間層上に設けられた第2の中間層と、第2の中間層上に設けられた、水素含有ダイヤモンドライクカーボン層と、を備える。図1及び図2は、本発明の一実施形態の金属構造体の層構成の例を模式的に示す断面図である。以下、図1及び図2に付した符号を示して、本実施形態の金属構造体1における基材2、第1の中間層4、第2の中間層6、及び水素含有DLC層8について詳細に説明するが、本実施形態の金属構造体は、図1及び図2に例示した構造に限定されない。
(基材)
本実施形態の金属構造体1は、アルミニウム製又はアルミニウム合金製の基材2を備える。本明細書において、「アルミニウム製」とは、純度99%以上のアルミニウム(純アルミニウム)製であることをいう。アルミニウムとして、例えば、JIS H4000に記載の1000番台のアルミニウム(1000系アルミニウム)を用いることができる。
また、本明細書において、「アルミニウム合金製」とは、アルミニウムを主成分とする合金製であることをいう。アルミニウムを主成分とする合金とは、当該合金中にアルミニウム(Al)を50質量%以上含有する合金をいう。アルミニウム合金に含有されるアルミニウム以外の金属としては、例えば、ケイ素、鉄、銅、マンガン、マグネシウム、クロム、亜鉛、チタン、バナジウム、ビスマス、鉛、ジルコニウム、及びニッケル等を挙げることができる。アルミニウム合金としては、例えば、Al−Cu系合金、Al−Cu−Mg系合金、Al−Mn系合金、Al−Si系合金、Al−Mg系合金、Al−Mg−Si系合金、及びAl−Zn−Mg系合金等を挙げることができる。
従来から、金属基材に対するDLC膜の密着性を高める種々の検討が行われてきた。しかし、アルミニウム製又はアルミニウム合金製の基材(以下、「アルミニウム系基材」と記載することがある。)に対し、従来行われてきたDLC膜の密着性を高めるための手段を適用しても、十分な密着性が得られなかった。特に、鋳造で得られるアルミニウム系基材、すなわち、アルミニウム系鋳物基材に対して、DLC膜を良好に密着させることは困難であった。本発明の一実施形態の金属構造体では、基材2に対し、後述する第1の中間層4、第2の中間層6、及び水素含有DLC層8をこの順で設けることで、アルミニウム系基材2及びアルミニウム系鋳物基材に対し、DLC層8を良好に密着させることができる。
基材2における第1の中間層4が設けられる側の表面は、第1の中間層4との密着性、並びに第1の中間層4及び第2の中間層6を介したDLC層8との密着性が高まる観点から、平滑であることが好ましい。具体的には、基材2における第1の中間層4が設けられる側の表面のJIS B 0601:2013の規定に準拠して測定される算術平均粗さRaが、0.5μm以下であることが好ましく、より好ましくは0.3μm以下、さらに好ましくは0.1μm以下である。
(第1の中間層)
基材2上に設けられた第1の中間層4は、実質的にチタン(Ti)、クロム(Cr)、又はタングステン(W)のいずれかの純金属からなる厚さ0.6μm以上の金属層である。基材2上に設けられる第1の中間層4は、実質的にTi、Cr、又はWのいずれかの純金属からなり、かつ、厚さが0.6μm以上であることにより、後述する第2の中間層6及びDLC層8とともに、DLC層8の密着性を高めることが可能となる。
本明細書において、第1の中間層4が、実質的にチタン、クロム、又はタングステンのいずれかの純金属からなることは、第1の中間層4において、チタン、クロム、又はタングステンの含有量が98〜100質量%であり、不純物が2質量%以下の割合で含まれていてもよいことを意味する。DLC層8の密着性が高まる観点から、第1の中間層4を形成する純金属は、クロムであることがより好ましい。第1の中間層4に含まれていてもよい不純物としては、例えば、Si、Al、及びFe等を挙げることができる。
また、DLC層8の密着性を高める観点から、第1の中間層4の厚さは、0.7μm以上であることが好ましく、より好ましくは0.8μm以上、さらに好ましくは1.0μm以上である。DLC層8の密着性を高める観点からは、第1の中間層4の厚さの上限は特に限定されない。第1の中間層4の厚さが厚くなるほど、製造コストは高くなるため、製造コストを抑える観点からいえば、第1の中間層4の厚さは、5.0μm以下であることが好ましく、より好ましくは4.0μm以下、さらに好ましくは3.0μm以下である。
第1の中間層4は、物理蒸着層であることが好ましい。本明細書において、物理蒸着層とは、物理蒸着(PVD)法により成膜された層であることを意味する。第1の中間層4は、物理蒸着層のうち、スパッタリング層であることがより好ましく、非平衡マグネトロンスパッタリング層であることがさらに好ましい。
(第2の中間層)
上述の第1の中間層4上には第2の中間層6が設けられている。第2の中間層6は、第1の中間層4を介して、アルミニウム系基材2に設けられている。第2の中間層6は、炭化ケイ素を主体とし、厚さが0.01〜0.5μmである。この構成を有する第2の中間層6により、前述の第1の中間層4及び後述するDLC層8と相俟って、DLC層8の密着性を高めることが可能となる。第2の中間層6は、実質的にSiCx(X:1.0〜1.5)で表される炭化ケイ素からなることが好ましい。また、第2の中間層6は、テトラメチルシランガスを原料として形成されることが好ましい。第2の中間層6には、炭化ケイ素以外に、水素及び酸素等の不純物が含まれていてもよい。
第2の中間層6の厚さは、DLC層8の密着性を高める観点から、0.01μm以上であることが好ましく、より好ましくは0.02μm以上、さらに好ましくは0.05μm以上である。また、第2の中間層6の厚さは、0.5μm以下であることが好ましく、より好ましくは0.4μm以下である。
第2の中間層6は、化学蒸着層でもよく、物理蒸着層でもよい。本明細書において、化学蒸着層とは、化学蒸着(CVD)法により成膜された層であることを意味する。第2の中間層6は、化学蒸着層であることが好ましい。
(水素含有DLC層)
上述の第2の中間層6上には、水素を含有するダイヤモンドライクカーボン層(水素含有DLC層)8が設けられている。水素含有DLC層8は、前述の第1の中間層4及び第2の中間層6を介して、アルミニウム系基材2に設けられている。水素含有DLC層8は、厚さ1.0〜6.0μmに形成された、水素化アモルファスカーボン(a−C:H)の構造を有する層である。
水素含有DLC層8は、図1に示すように単層で形成されていてもよいが、図2に示すように、複数の水素化非晶質炭素層(以下、「a−C:H層」と記載することがある。)から形成されていることが好ましい。複数のa−C:H層を有する構成の好適な態様例として、炭素濃度の異なる複数のa−C:H層を備える水素含有DLC層を挙げることができる。また、アルミニウム系基材2側(第2の中間層6側)とは反対側(すなわち、表層側)に他のa−C:H層よりも密度が低いa−C:H層を備える水素含有DLC層や、表層側にケイ素(Si)がドープされたa−C:H層を備える水素含有DLC層等を挙げることもできる。以下、好適な水素含有DLC層について、具体的に説明する。
複数のa−C:H層を有する構成の一態様例として、図2に示すように、水素含有DLC層8は、第2の中間層6側に、第1の水素化非晶質炭素層(第1のa−C:H層)81、第2の水素化非晶質炭素層(第2のa−C:H層)82、及び第3の水素化非晶質炭素層(第3のa−C:H層)83をこの順で備えることが好ましい。
第2の中間層6上に設けられた第1のa−C:H層81は、第2のa−C:H層82及び第3のa−C:H層83よりも、炭素濃度が低い層である。このような相対的に炭素濃度の低い第1のa−C:H層81を第2の中間層(炭化ケイ素主体層)6上に設けることにより、第2の中間層6と水素含有DLC層8との密着性を高めることができる。
第1のa−C:H層81上に設けられた第2のa−C:H層82は、第1のa−C:H層81よりも炭素濃度が高い層である。また、第2のa−C:H層82上に設けられた第3のa−C:H層83は、第1のa−C:H層81よりも炭素濃度が高く、かつ第2のa−C:H層82よりも密度が低い層である。第1のa−C:H層81上に、第1のa−C:H層81よりも相対的に炭素濃度の高い、第2のa−C:H層82と、第2のa−C:H層82よりも相対的に密度の低い第3のa−C:H層83とを設けることにより、密着性及び耐摩耗性がより良好な水素含有DLC層8を形成することができる。
第2のa−C:H層82の炭素濃度及び第3のa−C:H層83の炭素濃度は、第1のa−C:H層81の炭素濃度よりも、20〜30%程度高いことが好ましい。また、第3のa−C:H層83の密度は、第2のa−C:H層82の密度よりも、5〜10%程度低いことが好ましい。
第3のa−C:H層83の炭素濃度と、第2のa−C:H層82の炭素濃度との関係に特に制限はないが、製造上の観点から、同等程度とすることが好ましい。また、第1のa−C:H層81の密度と第2のa−C:H層82の密度との関係も特に制限はないが、製造上の観点から、同等程度とすることが好ましい。
複数のa−C:H層を有する構成の別の一態様例として、上述の第3のa−C:H層83を、ケイ素を含有する水素化非晶質炭素層(以下、「Si含有a−C:H層」と記載することがある。)84に変更した構成例を挙げることもできる。すなわち、水素含有DLC層8は、第2の中間層6上に設けられた第1のa−C:H層81と、第1のa−C:H層81上に設けられた、第1のa−C:H層81よりも炭素濃度が高い第2のa−C:H層82と、第2のa−C:H層82上に設けられたSi含有a−C:H層84とを備えることも好ましい。
第2の中間層6上に、相対的に炭素濃度の低い第1のa−C:H層81を設けることにより、第2の中間層82と水素含有DLC層8との密着性を高めることができる。また、第1のa−C:H層81上に、第1のa−C:H層81よりも相対的に炭素濃度の高い第2のa−C:H層82を設け、かつ、その上にSi含有a−C:H層84を設けることにより、密着性及び耐摩耗性がより良好な水素含有DLC層8を形成することができる。さらに、金属構造体1の表層側をSi含有a−C:H層84とすることにより、表面の摩擦係数が小さい金属構造体1とすることができる。
Si含有a−C:H層84のSi含有量は、Si含有a−C:H層84の密着力及び耐摩耗性を高める観点から、1〜20原子%であることが好ましく、5〜15原子%であることがより好ましい。Si含有a−C:H層84中のSi含有量(原子%)は、オージェ電子分光法により測定することができる。
水素含有DLC層8の厚さは、1.0〜6.0μmであり、好ましくは1.0〜5.0μmである。この水素含有DLC層8の厚さは、水素含有DLC層8が複数のa−C:H層を備える場合、各a−C:H層の厚さの合計である。上述の第1のa−C:H層81及び第2のa−C:H層82の各厚さは、0.01〜0.5μmであることが好ましく、より好ましくは0.01〜0.4μmである。第3のa−C:H層83及びSi含有a−C:H層84の各厚さは、0.98〜5.0μmであることが好ましく、より好ましくは1.0〜5.0μmである。
水素含有DLC層8は、化学蒸着層でもよく、物理蒸着層でもよく、これらを組み合わせた層でもよい。これらのうち、化学蒸着層が好ましい。水素含有DLC層8が複数のa−C:H層を備える場合、成膜条件を変えることにより、炭素濃度及び密度等の異なる複数のa−C:H層を形成することが可能である。
本発明の一実施形態の金属構造体1における上述の各層の厚さは、金属構造体1の側面又は断面を走査型電子顕微鏡で観察することにより、確認し、測定することができる。また、例えば、上述の各層の水素量は、ERDA(Erastic Recoil Detection Analysis)により、シリコン量は、オージェ電子分光法により、分析し、確認することができる。
本発明の一実施形態の金属構造体1は、アルミニウム製又はアルミニウム合金製の部材(基材2)が用いられる製品に広く適用することができる。そのような製品としては、例えば、電気・電子部品、自動車部品、光学部品、住居用部品、家具用部品、包装用品、工具、及び金型等を挙げることができる。金属構造体1が用いられる好適な部材としては、例えば摺動部材を挙げることができる。摺動部材としては、自動車用摺動部品、ピストン、シリンダ、空調用又は油圧コンプレッサー用摺動部品、住居用又は家具用のサッシフレーム及びサッシレール等を挙げることができる。
<金属構造体の製造方法>
本実施形態の金属構造体を製造する方法は特に限定されない。その製造方法の好適な一実施形態について、以下に説明する。
本発明の一実施形態の金属構造体1の製造方法は、アルミニウム製又はアルミニウム合金製の基材2上に、実質的にチタン、クロム、又はタングステンのいずれかの純金属からなる厚さ0.6μm以上の第1の中間層4を設ける工程と、第1の中間層4上に、炭化ケイ素を主体とする厚さ0.01〜0.5μmの第2の中間層6を設ける工程と、第2の中間層6上に、厚さ1.0〜6.0μmの水素含有ダイヤモンドライクカーボン層(水素含有DLC層)8を設ける工程とを含む。なお、各層の厚さは、各工程における成膜時間を調整することにより、調整することができる。
(第1の中間層の成膜工程)
アルミニウム系基材2上に、実質的にTi、Cr、又はWのいずれかの純金属からなる厚さ0.6μm以上の第1の中間層4を設ける工程は、物理蒸着(PVD)法の一種であるスパッタリング法により行うことが好ましい。例えば、スパッタ装置の真空槽内に、第1の中間層4を形成する金属材料(Ti、Cr、又はW)のターゲットと、被着対象であるアルミニウム系基材2を配置し、また、Arガス等の不活性ガスを導入する。そして、ターゲットに負電圧を印加して不活性ガスのプラズマを発生させ、不活性ガス原子のイオンをターゲットに衝突させることにより、金属材料をスパッタすることができる。
第1の中間層4を設ける工程では、第1の中間層4を非平衡マグネトロンスパッタリング法(UBMS法)により成膜することがさらに好ましい。UBMS法は、スパッタカソードの磁場を意図的に非平衡にし、その非平衡磁場を用いることで、被着対象へのプラズマ照射を強化したスパッタリング方式である。第1の中間層4をUBMS法により成膜することで、アルミニウム系基材2と第1の中間層4との密着性をより高めることができる。
なお、第1の中間層4を設ける工程では、第1の中間層4を成膜する前(すなわち、金属材料をスパッタする前)に、スパッタ装置の真空槽内に不活性ガスのプラズマを発生させ、イオン化した不活性ガス原子によって、アルミニウム系基材2の表面をイオンボンバードすることが好ましい。これにより、アルミニウム系基材2に第1の中間層4を形成する金属が着きやすくなる。
(第2の中間層の成膜工程)
第1の中間層4上に炭化ケイ素を主体とする第2の中間層6を設ける工程は、PVD法及びCVD法のいずれでも行うことができる。これらのうち、CVD法が好ましく、プラズマCVD法がより好ましい。
CVD法によって第2の中間層6を成膜する場合、プラズマCVD法によって行うことが好ましい。プラズマCVD法では、直流、高周波、又はマイクロ波等を供給することで、原料ガスをプラズマ化して分解させ、被着対象(アルミニウム系基材2上の第1の中間層4上)に第2の中間層6を成膜することができる。原料ガスとしては、気体状の有機ケイ素化合物を用いることができる。有機ケイ素化合物とは、Si−C結合を有する化合物であり、例えば、Si原子にメチル基及びエチル基等の有機官能基が結合した化合物、及びSi原子にO原子を介して有機官能基が結合した化合物等を挙げることができる。原料ガスとして使用する有機ケイ素化合物は、ガス化できれば特に限定されない。有機ケイ素化合物としては、例えば、モノメチルシラン、モノエチルシラン、ジエチルシラン、トリメチルシラン、テトラメチルシラン、テトラエトキシシラン、及びヘキサメチルジシロキサン等を挙げることができる。これらのうち、テトラメチルシランが好ましい。
(水素含有DLC層の成膜工程)
第2の中間層6上に、水素含有DLC層8を設ける工程は、PVD法により行うことも可能であるし、プラズマCVD法により行うことも可能である。PVD法では、固体カーボンを原料に使用し、固体カーボンを蒸発させて被着対象に成膜することができる。CVD法では、炭化水素ガスを原料に使用し、チャンバー内で炭化水素ガスを分解させて被着対象に成膜することができる。炭化水素ガスとしては、例えば、メタン、エチレン、プロパン、ブタン、ヘキサン、アセチレン、ベンゼン、及びトルエン等を挙げることができる。本発明の一実施形態の製造方法では、プラズマCVD法により、水素含有DLC層8を成膜することが好ましい。
水素含有DLC層8を設ける工程は、第2の中間層6上に第1のa−C:H層81を設ける工程と、第1のa−C:H層81上に、第1のa−C:H層81よりも炭素濃度を高くした第2のa−C:H層82を設ける工程とを含むことが好ましい。さらに、第2のa−C:H層82上に、第1のa−C:H層81よりも炭素濃度を高くし、かつ第2のa−C:H層82よりも密度を低くした第3のa−C:H層83を設ける工程、又はケイ素を含有する水素化非晶質炭素層(Si含有a−C:H層)84を設ける工程を行うことが好ましい。
上述のように複数のa−C:H層によって水素含有DLC層8を形成する場合、成膜条件を変えることにより、炭素濃度や密度の異なる複数のa−C:H層を形成することが可能である。例えば、炭化水素ガスを原料として使用するプラズマCVD法により、水素含有DLC層(各a−C:H層)を成膜する場合、使用する炭化水素ガスの種類等を変えることにより、炭素濃度の異なる複数のa−C:H層を形成することが可能である。また、プラズマCVD法において、プラズマの生成に直流電圧等を用いる場合、例えば、印加する電圧等を変えることにより、密度の異なる複数のa−C:H層を形成することが可能である。
より具体的には、第2の中間層6上に、メタン(CH4)ガスを原料に使用して第1のa−C:H層81を成膜し、次いで、第1のa−C:H層81上に、アセチレン(C22)ガスを原料に使用して第2のa−C:H層82を成膜することがより好ましい。このような方法により、第2の中間層82上に、炭素濃度が相対的に低い第1のa−C:H層81と、炭素濃度が相対的に高い第2のa−C:H層82とをこの順で容易に成膜することができる。
また、第3のa−C:H層83の成膜には、第2のa−C:H層82の成膜に使用した炭化水素ガスと同じ原料を用いることが好ましい。これにより、第3のa−C:H層83の炭素濃度を、第1のa−C:H層81の炭素濃度よりも高くでき、かつ、第2のa−C:H層82の炭素濃度と同程度にすることができる。さらに、第3のa−C:H層83を成膜する際のプラズマ生成条件を、第2のa−C:H層82を成膜する際のプラズマ生成条件よりも弱くすること(例えば印加電圧の絶対値を下げること等)が好ましい。これにより、第3のa−C:H層83の密度を、第2のa−C:H層82の密度よりも低くすることができる。
Si含有a−C:H層84を設ける工程では、炭化水素ガスに加えて、前述の有機ケイ素化合物のガスを原料として用いることにより、Si含有a−C:H層84を容易に成膜することができる。
本発明の一実施形態の製造方法では、プラズマCVD法の一種であるプラズマイオン注入・成膜法(PBII&D法)により、前述の第2の中間層6及び水素含有DLC層8を設ける工程を行うことがさらに好ましい。PBII&D法によって、複雑な三次元形状のアルミニウム系基材に対しても、付き回り良く、水素含有DLC層8を成膜することができる。
PBII&D法におけるプラズマの生成方法は特に限定されない。例えば、高電圧パルスを基材2に印加してプラズマを生成する方法や、高電圧パルスと高周波パルスを重畳させて基材2に印加してプラズマを生成する方法を挙げることができる。また、高電圧パルスを印加する基材2とは別に誘導結合型プラズマ(ICP)源等のプラズマ源を有してプラズマ生成を行う方法を挙げることもできる。本発明の一実施形態の製造方法では、高電圧パルスと高周波パルスを重畳させてアルミニウム系基材2に印加し、プラズマを生成させることが好ましい。PBII&D法によるDLC膜の成膜方法は、例えば特開2004−323973号公報を参照することができる。
本発明の一実施形態の製造方法では、プラズマイオン注入・成膜装置(PBII&D装置)におけるチャンバーに、非平衡マグネトロンスパッタリング装置(UBMS装置)を備え付けた複合成膜装置を用いることが特に好ましい。この複合成膜装置を用いることにより、アルミニウム系基材2に対し、前述の第1の中間層4、第2の中間層6、及び水素含有DLC層8を同じチャンバー内で一貫して成膜することが可能である。以下に、UBMS装置が備え付けられたPBII&D装置(複合成膜装置)を用いる好適な製造方法の一例を説明する。
まず、PBII&D装置におけるチャンバー内でフィードスルー(試料保持器)にアルミニウム系基材2を取り付け、チャンバー内を真空状態にする。そして、チャンバー内にArガス等の不活性ガスを導入してイオンボンバードメントを行い、アルミニウム系基材2の表面に付着した微細な汚れや水分の除去を行う。
次に、チャンバーに備え付けられたUBMS装置を用い、チャンバー内にセットしたアルミニウム系基材2に高電圧パルスを印加し、チャンバー内にセットした金属材料(Ti、Cr、又はW)のターゲットをスパッタすることで、第1の中間層4を成膜する。
第1の中間層4が所望の厚さとなるような時間にわたって成膜した後、チャンバー内に有機ケイ素化合物のガスを導入し、第1の中間層4が設けられたアルミニウム系基材2に高電圧パルスを印加し、第1の中間層4上に炭化ケイ素主体の第2の中間層6を成膜する。
第2の中間層6が所望の厚さとなるような時間にわたって成膜した後、チャンバー内に炭化水素ガスを導入し、第1の中間層4及び第2の中間層6が設けられたアルミニウム系基材2に高電圧パルスを印加して、第2の中間層6上に第1のa−C:H層81を成膜する。そして、第1のa−C:H層81よりも炭素濃度が高い層が得られるように、チャンバー内に導入する炭化水素ガスの種類を変更し、同様の手順で、第1のa−C:H層81上に第2のa−C:H層82を成膜する。
第2のa−C:H層82の成膜後、第2のa−C:H層82上に第3のa−C:H層83又はSi含有a−C:H層84を成膜する。第3のa−C:H層83を成膜する場合には、チャンバー内に第2のa−C:H層82の成膜に用いた炭化水素ガスを導入し、第2のa−C:H層82の成膜条件における高電圧パルスの電圧絶対値よりも低い高電圧パルスをアルミニウム系基材2に印加する。Si含有a−C:H層84を成膜する場合には、チャンバー内に炭化水素ガス及び有機ケイ素化合物のガスを導入し、アルミニウム系基材2に高電圧パルスを印加する。
上述のように、UBMS装置が備え付けられたPBII&D装置(複合成膜装置)を用いることで、前述の第1の中間層4、第2の中間層6、及び水素含有DLC層8を同じ装置(チャンバー)内で成膜することが可能であるため、生産性を高めることができる。
以上詳述した本実施形態の金属構造体1は、アルミニウム系基材2上に、実質的にTi、Cr、又はWのいずれかの純金属からなる厚さ0.6μm以上の第1の中間層4と、炭化ケイ素を主体とする厚さ0.01〜0.5μmの第2の中間層6と、厚さ1.0〜6.0μmの水素含有DLC層8とをこの順で備える。そのため、アルミニウム系基材2に対して、良好に密着したDLC層8を有する金属構造体1を提供することができる。さらに、水素含有DLC層8を、第2の中間層6側から、相対的に炭素濃度が低い第1のa−C:H層81と、相対的に炭素濃度が高い第2のa−C:H層82と、相対的に炭素濃度が高く、密度が低い第3のa−C:H層83、又はSi含有a−C:H層84とを備える構成とすることで、密着性及び耐摩耗性がより良好なDLC層8を形成することができる。
本発明の一実施形態の金属構造体は、以下の構成をとることも可能である。
[1]Al製又はAl合金製の基材と、前記基材上に設けられた、実質的にTi、Cr、又はWのいずれかの純金属からなる厚さ0.6μm以上の第1の中間層と、前記第1の中間層上に設けられた、炭化ケイ素を主体とする厚さ0.01〜0.5μmの第2の中間層と、前記第2の中間層上に設けられた、厚さ1.0〜6.0μmの水素含有DLC層と、を備える金属構造体。
[2]前記第1の中間層は、実質的にCrからなる前記[1]に記載の金属構造体。
[3]前記水素含有DLC層は、前記第2の中間層上に設けられた第1のa−C:H層と、前記第1のa−C:H層上に設けられた、前記第1のa−C:H層よりも炭素濃度が高い第2のa−C:H層と、前記第2のa−C:H層上に設けられた、前記第1のa−C:H層よりも炭素濃度が高く、かつ前記第2のa−C:H層よりも密度が低い第3のa−C:H層と、を備える前記[1]又は[2]に記載の金属構造体。
[4]前記水素含有DLC層は、前記第2の中間層上に設けられた第1のa−C:H層層と、前記第1のa−C:H層上に設けられた、前記第1のa−C:H層よりも炭素濃度が高い第2のa−C:H層と、前記第2のa−C:H層上に設けられた、Si含有a−C:H層と、を備える前記[1]又は[2]に記載の金属構造体。
[5]前記Si含有a−C:H層のSi含有量が、1〜20原子%、より好ましくは5〜15原子%である前記[4]に記載の金属構造体。
[6]前記基材における前記第1の中間層が設けられる側の表面のJIS B 0601:2013の規定に準拠して測定される算術平均粗さRaが、0.5μm以下、さらに好ましくは0.1μm以下である前記[1]〜[5]のいずれかに記載の金属構造体。
[7]摺動部材に用いられる前記[1]〜[6]のいずれかに記載の金属構造体。
また、本発明の一実施形態の金属構造体の製造方法は、以下の構成をとることも可能である。
[8]Al製又はAl合金製の基材上に、実質的にTi、Cr、又はWのいずれかの純金属からなる厚さ0.6μm以上の第1の中間層を設ける工程と、前記第1の中間層上に、炭化ケイ素を主体とする厚さ0.01〜0.5μmの第2の中間層を設ける工程と、前記第2の中間層上に、厚さ1.0〜6.0μmの水素含有DLC層を設ける工程と、を含む金属構造体の製造方法。
[9]前記第1の中間層を非平衡マグネトロンスパッタリング法により成膜する前記[8]に記載の製造方法。
[10]前記水素含有DLC層を設ける工程を、プラズマイオン注入・成膜法により行う前記[8]又は[9]に記載の製造方法。
[11]前記水素含有DLC層を設ける工程は、前記第2の中間層上に、第1のa−C:H層を設ける工程と、前記第1のa−C:H層上に、前記第1のa−C:H層よりも炭素濃度を高くした第2のa−C:H層を設ける工程と、前記第2のa−C:H層上に、前記第1のa−C:H層よりも炭素濃度を高くし、かつ前記第2のa−C:H層よりも密度を低くした第3のa−C:H層を設ける工程と、を含む前記[8]〜[10]のいずれかに記載の製造方法。
[12]前記水素含有DLC層を設ける工程は、前記第2の中間層上に、第1のa−C:H層を設ける工程と、前記第1のa−C:H層上に、前記第1のa−C:H層よりも炭素濃度を高くした第2のa−C:H層を設ける工程と、前記第2のa−C:H層上に、Si含有a−C:H層を設ける工程と、を含む前記[8]〜[10]のいずれかに記載の製造方法。
[13]前記第1のa−C:H層を、メタンガスを原料に使用して成膜し、前記第2のa−C:H層を、アセチレンガスを原料に使用して成膜する前記[11]又は[12]に記載の製造方法。
以下、本発明の一実施形態の金属構造体について、実施例に基づいてさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
基材として、アルミニウム合金板(JIS規格A2024材)を用いた。この基材への中間層及び/又はDLC層の成膜には、PBII&D装置におけるチャンバーにUBMS装置を備え付けた複合成膜装置を用いた。この装置におけるPBII&D装置には、栗田製作所社製の「PEKURIS−PBIID−PAT−01型」を用いた。UBMS装置のスパッタガンには、J&L Tech社製のSPUTTER 700×100を用いた。
上記PBII&D装置は、チャンバーと、チャンバーに取り付けられたフィードスルー(試料保持器)と、フィードスルーに接続されたプラズマ発生用高周波電源及び高電圧パルス発生用電源等を備える(特開2004−323973号公報参照)。このPBII&D装置を使用する際には、チャンバー内で基材をフィードスルーに取り付け、プラズマ発生用高周波電源と高電圧パルス発生用電源とをフィードスルーを介して基材に接続する。そして、基材に対し、CPUによる制御に基づいてプラズマ発生用高周波電源から高周波パルスを印加することで基材の外形に沿ってパルスプラズマを発生させることが可能である。加えて、そのプラズマ中又はアフターグロープラズマ中に、CPUによる制御に基づいて高電圧パルス発生用電源から基材に負の高電圧パルスを印加することで、イオン注入及び成膜プロセスを行うことが可能である。
(実施例1)
上記PBII&D装置のフィードスルーに基材を取り付け、チャンバーに取り付けられた真空装置により、チャンバー内を1.33×10-3Paまで真空状態にした。その後、チャンバーに取り付けられたガス供給装置により、チャンバー内にアルゴンガスを導入してイオンボンバードメントを行い、基材表面に付着した微細な汚れ及び水分を除去した。
(第1の中間層の成膜工程)
PBII&D装置のチャンバーに備え付けたUBMS装置を用い、高電圧パルスを−15kVの電圧で印加し、チャンバー内に取り付けられたCrターゲットをスパッタし、基材上に第1の中間層を成膜した。この成膜を75分かけて行い、実質的にCrからなる厚さ0.6μmの第1の中間層を得た。
(第2の中間層の成膜工程)
次に、チャンバー内にテトラメチルシラン(TMS)ガスを導入し、高電圧パルスを−20kVの電圧で印加し、第1の中間層上に、炭化ケイ素を主体とする厚さ0.01μmの第2の中間層を成膜した。
(DLC層の成膜工程)
次に、チャンバー内にメタン(CH4)ガスを導入し、高電圧パルスを−20kVの電圧で印加し、第2の中間層上に、厚さ0.1μmの第1のa−C:H層を成膜した。
その後、チャンバー内にアセチレン(C22)ガスを導入し、高電圧パルスを−20kVの電圧で印加し、第1のa−C:H層上に、第1のa−C:H層よりも炭素濃度が高い、厚さ0.3μmの第2のa−C:H層を成膜した。
そして、チャンバー内にC22ガスを導入し、高電圧パルスを−5kVの電圧で印加し、第2のa−C:H層上に、第1のa−C:H層よりも炭素濃度が高く、かつ、第2のa−C:H層よりも密度が低い、厚さ4.0μmの第3のa−C:H層を成膜した。
このようにして、基材上に、第1の中間層、第2の中間層、第1のa−C:H層、第2のa−C:H層、及び第3のa−C:H層をこの順で設けた金属構造体を作製した。
(実施例2)
実施例2では、実施例1における第1の中間層、第2の中間層、第1のa−C:H層、第2のa−C:H層、及び第3のa−C:H層の各層を成膜する時間を変更した以外は、実施例1と同様にして、金属構造体を作製した。
(実施例3)
実施例3では、実施例1で行ったDLC層の成膜工程を変更した以外は、実施例1と同様にして、金属構造体を得た。すなわち、実施例3では、実施例1と同様の手法により、基材上に第1の中間層を成膜した後、第1の中間層上に第2の中間層を成膜した。その後、チャンバー内にメタン(CH4)ガスを導入し、高電圧パルスを−20kVの電圧で印加し、第2の中間層上に、厚さ0.1μmの第1のa−C:H層を成膜した。次に、チャンバー内にアセチレン(C22)ガスを導入し、高電圧パルスを−20kVの電圧で印加し、第1のa−C:H層上に、第1のa−C:H層よりも炭素濃度が高い、厚さ0.3μmの第2のa−C:H層を成膜した。そして、チャンバー内にC22ガス及びTMSガスを導入し、高電圧パルスを−5kVの電圧で印加し、第2のa−C:H層上に、厚さ1.0μmのSi含有a−C:H層を成膜した。
このようにして、基材上に、第1の中間層、第2の中間層、第1のa−C:H層、第2のa−C:H層、及びSi含有a−C:H層をこの順で設けた金属構造体を作製した。
(実施例4〜6)
実施例4〜6では、実施例3における第1の中間層、第2の中間層、第1のa−C:H層、第2のa−C:H層、及びSi含有a−C:H層の各層を成膜する時間を変更した以外は、実施例3と同様にして、金属構造体を作製した。
(実施例7)
実施例7では、第1の中間層の成膜にWターゲットを用い、実質的にWからなる厚さ4.5μmの第1の中間層を成膜したこと、及び実施例3における第2の中間層、第1のa−C:H層、第2のa−C:H層、及びSi含有a−C:H層の各層を成膜する時間を変更したこと以外は、実施例3と同様にして、金属構造体を作製した。
(実施例8)
実施例8では、第1の中間層の成膜にTiターゲットを用い、実質的にTiからなる厚さ3.0μmの第1の中間層を成膜したこと、及び実施例2で行ったDLC層の成膜工程を変更したこと以外は、実施例2と同様にして金属構造体を作製した。実施例8では、実施例2で行ったDLC層の成膜工程を変更したことにより、DLC層を、厚さ0.1μm第1のa−C:H層と、厚さ2.0μmの第3のa−C:H層の2層構造とした。
(実施例9)
実施例9では、実施例2で行ったDLC層の成膜工程を、第3のa−C:H層の成膜のみに変更したこと以外は、実施例2と同様にして金属構造体を作製した。
(比較例1)
比較例1では、実施例1と比較して、第1の中間層の成膜工程を実行しなかったこと、実施例1で行った第2の中間層の成膜時間を変更したこと、及びDLC層を、実施例1で行った第3のa−C:H層の成膜条件で行った1層のa−C:H層のみとしたこと以外は、実施例1と同様にして、金属構造体を得た。
すなわち、比較例1では、イオンボンバードメントを行った基材に対し、チャンバー内にTMSガスを導入し、高電圧パルスを−20kVの電圧で印加し、炭化ケイ素を主体とする厚さ0.4μmの中間層を成膜した。次に、チャンバー内にC22ガスを導入し、高電圧パルスを−5kVの電圧で印加し、中間層上に、厚さ6.0μmのa−C:H層を成膜した。このようにして、比較例1の金属構造体を作製した。
(比較例2)
比較例2では、実施例1における第1の中間層、第2の中間層、及びDLC層のそれぞれの成膜工程を変更した以外は、実施例1と同様にして、金属構造体を得た。具体的には、次のようにして、第1の中間層、第2の中間層、及びDLC層を成膜した。
比較例2における第1の中間層の成膜工程では、PBII&D装置のチャンバーに備え付けたUBMS装置を用い、高電圧パルスを−15kVの電圧で印加し、チャンバー内に取り付けられたWターゲットをスパッタし、基材上に第1の中間層を成膜した。この成膜を30分かけて行い、実質的にWからなる厚さ0.2μmの第1の中間層を得た。
比較例2における第2の中間層の成膜工程では、チャンバー内にTMSガスを導入し、高電圧パルスを−20kVの電圧で印加し、第1の中間層上に、炭化ケイ素を主体とする厚さ0.002μmの第2の中間層を成膜した。
比較例2におけるDLC層の成膜工程では、チャンバー内にCH4ガスを導入し、高電圧パルスを−20kVの電圧で印加し、第2の中間層上に、厚さ0.5μmのa−C:H層を成膜した。そして、チャンバー内にC22ガス及びTMSガスを導入し、高電圧パルスを−5kVの電圧で印加し、a−C:H層上に、厚さ4.0μmのSi含有a−C:H層を成膜した。このようにして、比較例2の金属構造体を作製した。
(比較例3)
比較例3では、実施例1における第1の中間層、第2の中間層、及びDLC層のぞれぞれの成膜工程を変更した以外は、実施例1と同様にして、金属構造体を得た。具体的には、次のようにして、第1の中間層、第2の中間層、及びDLC層を成膜した。
比較例3における第1の中間層の成膜工程では、PBII&D装置のチャンバーに備え付けたUBMS装置を用い、高電圧パルスを−15kVの電圧で印加し、チャンバー内に取り付けられたTiターゲットをスパッタし、基材上に第1の中間層を成膜した。この成膜を45分かけて行い、実質的にTiからなる厚さ0.3μmの第1の中間層を得た。
比較例3における第2の中間層の成膜工程では、チャンバー内にTMSガスを導入し、高電圧パルスを−20kVの電圧で印加し、第1の中間層上に、炭化ケイ素を主体とする厚さ0.8μmの第2の中間層を成膜した。
比較例3におけるDLC層の成膜工程では、チャンバー内にC22ガス及びTMSガスを導入し、高電圧パルスを−5kVの電圧で印加し、第2の中間層上に、厚さ5.0μmのSi含有a−C:H層を成膜した。このようにして、比較例3の金属構造体を作製した。
(比較例4)
比較例4では、第1の中間層の成膜に窒化クロム(CrN)ターゲットを用い、実質的にCrNからなる厚さ0.6μmの第1の中間層を成膜したこと以外は、実施例5と同様にして、金属構造体を作製した。
なお、上記各例で作製した金属構造体における各層の厚さは、金属構造体の断面を走査型電子顕微鏡で観察することにより、測定した。各金属構造体における各層の厚さを表1及び表2に示す。
(DLC層の密着性評価)
DLC層の密着性の評価には、上記各例で使用したアルミニウム合金板製の基材として、そのアルミニウム合金板を縦50mm×横50mm×厚さ3mmに加工した基材を用いて、上記各例と同条件で作製した金属構造体(評価用試験片)を使用した。DLC層の密着性の評価として、ボールオンディスク式摩擦摩耗試験を行った。この試験には、摩擦係数を測定可能なボールオンディスク式摩擦摩耗試験機(レスカ社製の製品名「FPR−2100型」、ボール材質:SUJ2調質材、ボール直径:3/16インチ、負荷荷重:600g、摺動速度:0.06m/s)を用いた。ここで、DLC層の密着性の評価として、ボールオンディスク式摩擦摩耗試験を採用したのは、本試験例では、硬さが鉄鋼に比べて著しく低いアルミニウム合金を基材として用いているためである。すなわち、アルミニウム系基材では、通常のロックウェル試験やスクラッチ試験よりも、ボールオンディスク式摩擦摩耗試験の方が、DLC層の密着耐久性を評価するのにより適しているためである。一例として、実施例1の金属構造体について、ボールオンディスク式摩擦摩耗試験を行った際の摩擦係数の変動状況を図3に示す。図3に示すように、DLC層が剥離し、中間層又は基材が露出すると、摩擦係数の著しい上昇が認められるため、この摩擦係数の著しい上昇が生じた時点の摺動距離の長さで、密着性を評価した。その摺動距離が長いほど、密着耐久性が良いことを表す。各例の金属構造体におけるDLC層が剥離し、摩擦係数が急上昇するまでの摺動距離及び急上昇する前の定常摩擦係数を表1及び表2に示す。
Figure 2018059136
Figure 2018059136
実施例1〜9では、比較例1〜4に比べて、アルミニウム系基材に対して、良好に密着したDLC層を有する金属構造体を得られたことが確認された。
1 金属構造体
2 基材
4 第1の中間層
6 第2の中間層
8 水素含有DLC層
81 第1のa−C:H層
82 第2のa−C:H層
83 第3のa−C:H層
84 Si含有a−C:H層

Claims (13)

  1. アルミニウム製又はアルミニウム合金製の基材と、
    前記基材上に設けられた、実質的にチタン、クロム、又はタングステンのいずれかの純金属からなる厚さ0.6μm以上の第1の中間層と、
    前記第1の中間層上に設けられた、炭化ケイ素を主体とする厚さ0.01〜0.5μmの第2の中間層と、
    前記第2の中間層上に設けられた、厚さ1.0〜6.0μmの水素含有ダイヤモンドライクカーボン層と、
    を備える金属構造体。
  2. 前記第1の中間層は、実質的にクロムからなる請求項1に記載の金属構造体。
  3. 前記水素含有ダイヤモンドライクカーボン層は、
    前記第2の中間層上に設けられた第1の水素化非晶質炭素層と、
    前記第1の水素化非晶質炭素層上に設けられた、前記第1の水素化非晶質炭素層よりも炭素濃度が高い第2の水素化非晶質炭素層と、
    前記第2の水素化非晶質炭素層上に設けられた、前記第1の水素化非晶質炭素層よりも炭素濃度が高く、かつ前記第2の水素化非晶質炭素層よりも密度が低い第3の水素化非晶質炭素層と、
    を備える請求項1又は2に記載の金属構造体。
  4. 前記水素含有ダイヤモンドライクカーボン層は、
    前記第2の中間層上に設けられた第1の水素化非晶質炭素層と、
    前記第1の水素化非晶質炭素層上に設けられた、前記第1の水素化非晶質炭素層よりも炭素濃度が高い第2の水素化非晶質炭素層と、
    前記第2の水素化非晶質炭素層上に設けられた、ケイ素を含有する水素化非晶質炭素層と、
    を備える請求項1又は2に記載の金属構造体。
  5. 前記ケイ素を含有する水素化非晶質炭素層のSi含有量が、1〜20原子%である請求項4に記載の金属構造体。
  6. 前記基材における前記第1の中間層が設けられる側の表面のJIS B 0601:2013の規定に準拠して測定される算術平均粗さRaが、0.5μm以下である請求項1〜5のいずれか1項に記載の金属構造体。
  7. 摺動部材に用いられる請求項1〜6のいずれか1項に記載の金属構造体。
  8. アルミニウム製又はアルミニウム合金製の基材上に、実質的にチタン、クロム、又はタングステンのいずれかの純金属からなる厚さ0.6μm以上の第1の中間層を設ける工程と、
    前記第1の中間層上に、炭化ケイ素を主体とする厚さ0.01〜0.5μmの第2の中間層を設ける工程と、
    前記第2の中間層上に、厚さ1.0〜6.0μmの水素含有ダイヤモンドライクカーボン層を設ける工程と、
    を含む金属構造体の製造方法。
  9. 前記第1の中間層を非平衡マグネトロンスパッタリング法により成膜する請求項8に記載の製造方法。
  10. 前記水素含有ダイヤモンドライクカーボン層を設ける工程を、プラズマイオン注入・成膜法により行う請求項8又は9に記載の製造方法。
  11. 前記水素含有ダイヤモンドライクカーボン層を設ける工程は、
    前記第2の中間層上に、第1の水素化非晶質炭素層を設ける工程と、
    前記第1の水素化非晶質炭素層上に、前記第1の水素化非晶質炭素層よりも炭素濃度を高くした第2の水素化非晶質炭素層を設ける工程と、
    前記第2の水素化非晶質炭素層上に、前記第1の水素化非晶質炭素層よりも炭素濃度を高くし、かつ前記第2の水素化非晶質炭素層よりも密度を低くした第3の水素化非晶質炭素層を設ける工程と、
    を含む請求項8〜10のいずれか1項に記載の製造方法。
  12. 前記水素含有ダイヤモンドライクカーボン層を設ける工程は、
    前記第2の中間層上に、第1の水素化非晶質炭素層を設ける工程と、
    前記第1の水素化非晶質炭素層上に、前記第1の水素化非晶質炭素層よりも炭素濃度を高くした第2の水素化非晶質炭素層を設ける工程と、
    前記第2の水素化非晶質炭素層上に、ケイ素を含有する水素化非晶質炭素層を設ける工程と、
    を含む請求項8〜10のいずれか1項に記載の製造方法。
  13. 前記第1の水素化非晶質炭素層を、メタンガスを原料に使用して成膜し、
    前記第2の水素化非晶質炭素層を、アセチレンガスを原料に使用して成膜する請求項11又は12に記載の製造方法。
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