JP2018058797A - イリジウム錯体化合物、並びに該化合物を含む組成物、有機電界発光素子、表示装置及び照明装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 少なくとも1つの炭素数10〜20の芳香族縮合環基を置換基として有するフェニルキナゾリン系配位子と、フェニルベンゾチアゾール系配位子を有することを特徴とするイリジウム錯体化合物を合成し、これを有機電界発光素子の有機層に用いることにより解決する。
【選択図】 図1
Description
最近では、イリジウム錯体化合物としては、フェニル(イソ)キノリン系赤色発光燐光材料(特許文献1)、フェニルキナゾリン系赤色発光燐光材料(特許文献2〜5、並びに非特許文献5)等が提案されている。
すなわち、本発明の要旨は、下記[1]〜[6]のとおりである。
[1]下記式(1)で表されるイリジウム錯体化合物。
[式(1)において、Irはイリジウム原子を表す。L1とL2はそれぞれ独立にIrと結合する有機配位子を表すが、前記L1は、下記式(2−1)または(2−2)のいずれかで表される配位子から選ばれ、前記L2は、下記式(3)で表される配位子を表す。mは1〜2の整数である。]
[3]前記炭素数10〜20の芳香族縮合環基が、ナフタレン環またはフェナントレン環である、前記[1]または[2]に記載のイリジウム錯体化合物。
[4]前記式(2−1)、前記式(2−2)および前記式(3)におけるR1〜R14およびR31〜R38が、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していても良い炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していても良い炭素数7〜40のアラルキル基、置換基を有していても良い炭素数6〜20のアリールアミノ基または置換基を有していても良い炭素数3〜20の(ヘテロ)アリール基から選ばれる、前記[1]〜[3]のいずれか一項に記載のイリジウム錯体化合物。
[6]陽極、陰極、および前記陽極と前記陰極の間に少なくとも1層の有機層を有する有機電界発光素子であって、前記有機層のうち少なくとも1層が、前記[1]〜[4]のいずれか一項に記載のイリジウム錯体化合物を含む有機電界発光素子。
[7]前記[6]に記載の有機電界発光素子を有する表示装置。
[8]前記[6]に記載の有機電界発光素子を有する照明装置。
<イリジウム錯体化合物>
本発明のイリジウム錯体化合物は、下記式(1)で表されることを特徴とする。
Ir(L1)m(L2)3−m (1)
式(1)において、Irはイリジウム原子を表す。L1とL2はそれぞれ独立にIrと結合する有機配位子を表し、mは1〜2の整数である。ただし、L1は、赤色発光に関与する配位子であり、後述の式(2−1)または式(2−2)のいずれかで表される配位子から選ばれ、L2は、式(3)で表される配位子を表す。
ただし、R1〜R14のうち少なくとも1つは、炭素数10〜20の芳香族縮合環基で
あり、この芳香族縮合環基はさらに置換基を有していても良い。
式(2−1)および式(2−2)において、R1〜R14は、耐久性の観点から、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数7〜40の(ヘテロ)アラルキル基、炭素数6〜20のアリールアミノ基、または炭素数3〜30の(ヘテロ)アリール基であることがより好ましく、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数7〜40の(ヘテロ)アラルキル基または炭素数3〜20の(ヘテロ)アリール基であることがさらに好ましい。なお、水素原子以外は、さらに置換されていても良い。
前記炭素数1〜20のアルキル基としては、直鎖、分岐または環状のアルキル基のいずれでもよく、より具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、イソペンチル基、t−ブチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。中でも、メチル基、エチル基、n−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基等の直鎖の炭素数1〜8のアルキル基が好ましい。
前記炭素数3〜20の(ヘテロ)アリールオキシ基の具体例としては、フェノキシ基、4−メチルフェニルオキシ基等が挙げられる。中でも、フェノキシ基が好ましい。
前記炭素数6〜20であるアリールシリル基の具体例としては、ジフェニルピリジルシリル基、トリフェニルシリル基等が挙げられ、中でもトリフェニルシリル基が好ましい。
挙げられ、中でもアセチル基、ピバロイル基が好ましい。
前記炭素数7〜20のアリールカルボニル基の具体例としては、ベンゾイル基、ナフトイル基、アントライル基等が挙げられ、中でもベンゾイル基が好ましい。
前記炭素数6〜20のアリールアミノ基の具体例としては、フェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジ(4−トリル)アミノ基、ジ(2,6−ジメチルフェニル)アミノ基等が挙げられ、中でもジフェニルアミノ基、ジ(4−トリル)アミノ基が好ましい。
具体例としては、1個の遊離原子価を有する、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、フルオランテン環、フラン環、ベンゾフラン環、ジベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ジベンゾチオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、チエノチオフェン環、フロピロール環、フロフラン環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、シンノリン環、キノキサリン環、ペリミジン環、キナゾリン環、キナゾリノン環、アズレン環等の基が挙げられる。
なお、R1〜R14がさらに有していてもよい置換基は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、および上述のR1〜R14で表される置換基に列記の置換基からなる群より選ばれ
る少なくとも1つの基である。これらの置換基の具体例は、前項までに述べたものと同様であるが、好ましくは、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数7〜40のアラルキル基、炭素数6〜24のアリール基である。
式(3)におけるR31〜R38は、上述のR1〜R14と同様の定義で表される置換基である。なお、本発明のイリジウム錯体化合物は、式(3)で表される配位子L2が、フェニルベンゾチアゾール骨格を有することを特徴のひとつとするものである。 R31〜R38で表される基の例示および好ましい基は、R1〜R14の場合と同様であるが、アリール基として、ビフェニル基、ターフェニル基、クオーターフェニル基なども好ましいものであり、したがって、アリール基の好ましい炭素数は6〜24、特に好ましくは6〜18である。
さらに、式(3)における置換基R31〜R38の少なくとも1つが水素原子以外の基であるのが耐久性ならびに溶解性の点から好ましい。
本発明のイリジウム錯体化合物は、既知の方法の組み合わせなどにより合成され得る配位子を用い、配位子とイリジウム化合物により合成することができる。
本発明のイリジウム錯体化合物の合成方法については、下記(式A)に示すようなイリジウム2核錯体を形成したのちにトリス体を形成させる方法、下記(式B)または(式C)に示すようにイリジウム2核錯体からイリジウム錯体中間体を形成したのちに本発明のイリジウム錯体化合物を形成させる方法等、一般的なイリジウム錯体化合物の合成方法を適用することが可能であるが、これらに限定されるものではない。なお、(式A)、(式B)及び(式C)において、Rは水素または任意の置換基を表し、複数存在するRは同一でも異なっていてもよい。
00℃程度の温度が好ましく用いられる。より好ましくは90℃以上の高温が用いられる。反応は無溶媒で行っても良いし、既知の溶媒を用いてもよい。
本発明のイリジウム錯体化合物の分子量は、錯体の安定性の高さから、通常500以上、好ましくは600以上、通常3000以下、好ましくは2000以下であるが、本発明のイリジウム錯体化合物を側鎖に含む高分子化合物にも好適に用いることができる。
<具体例>
以下に、本発明のイリジウム錯体化合物の好ましい具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお本明細書において、Meはメチル基、Phはフェニル基をそれぞれ表す。
(1)式(1)におけるL1が式(2−1)のイリジウム錯体化合物
本発明のイリジウム錯体化合物は、高い量子収率で赤色に発光し、この化合物を用いて作製した有機電界発光素子は発光効率が高いという効果を奏する。本効果を奏する理由については、構造上の特徴から以下の通りと考えられる。
一般に、赤色発光イリジウム錯体化合物は、緑色発光イリジウム錯体に比べて、発光エネルギーギャップが小さいため無輻射遷移速度が大きいことが知られており(エネルギーギャップ則)、この小さなエネルギーギャップに起因して発光量子収率は相対的に低い。したがって、赤色に発光するイリジウム錯体化合物の発光量子収率を向上するためには、非発光遷移過程(無輻射失活)に関与する無輻射遷移速度を小さくすることが必要である。
以上より、本発明のイリジウム錯体化合物は、フェニルベンゾチアゾール系配位子とともに、少なくとも1つの芳香族縮合環基を置換したフェニルキナゾリン系配位子を有することで、高い量子収率で赤色に発光し、該化合物を利用した発光効率の高い有機電界発光素子を提供することを可能とする。
本発明のイリジウム錯体化合物は、有機電界発光素子に用いられる材料、すなわち有機電界発光素子材料として好適に使用可能であり、有機電界発光素子やその他の発光素子等の発光材料としても好適に使用可能である。
本発明のイリジウム錯体化合物は、溶媒とともに使用されることが好ましい。以下、本発明のイリジウム錯体化合物と溶媒とを含有する組成物(以下、「イリジウム錯体化合物含有組成物」と称することがある。)について説明する。
本発明のイリジウム錯体化合物含有組成物は、上述の本発明のイリジウム錯体化合物および溶媒を含有する。本発明のイリジウム錯体化合物含有組成物は通常湿式成膜法で層や膜を形成するために用いられ、特に有機電界発光素子の有機層を形成するために用いられることが好ましい。該有機層は、特に発光層であることが好ましい。
該イリジウム錯体化合物含有組成物における本発明のイリジウム錯体化合物の含有量は、通常0.01重量%以上、好ましくは0.1重量%以上、通常50重量%以下、好ましくは40重量%以下である。組成物のイリジウム錯体化合物の含有量をこの範囲とすることにより、該組成物を有機電界発光素子用途に利用した場合に、隣接する層(例えば、正孔輸送層や正孔阻止層)から発光層へ、効率よく正孔や電子の注入が行われ、駆動電圧を低減することができる。なお、本発明のイリジウム錯体化合物はイリジウム錯体化合物含有組成物中に、1種のみ含まれていてもよく、2種以上が組み合わされて含まれていてもよい。
本発明のイリジウム錯体化合物含有組成物を用いて、有機電界発光素子の発光層を形成する場合には、本発明のイリジウム錯体化合物を発光材料とし、他の電荷輸送性化合物をホスト材料として含むことが好ましい。
該溶媒は、溶質である本発明のイリジウム錯体化合物および後述する電荷輸送性化合物が良好に溶解する溶媒であれば特に限定されない。好ましい溶媒としては、例えば、n−デカン、シクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、デカリン、ビシクロヘキサン等のアルカン類;トルエン、キシレン、メシチレン、フェニルシクロヘキサン、テトラリン等の芳香族炭化水素類;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素類;1,2−ジメトキシベンゼン、1,3−ジメトキシベンゼン、アニソール、フェネトール、2−メトキシトルエン、3−メトキシトルエン、4−メトキシトルエン、2,3−ジメチルアニソール、2,4−ジメチルアニソール、ジフェニルエーテル等の芳香族エーテル類;酢酸フェニル、プロピオン酸フェニル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸n−ブチル等の芳香族エステル類;シクロヘキサノン、シクロオクタノン、フェンコン等の脂環族ケトン類;シクロヘキサノール、シクロオクタノール等の脂環族アルコール類;メチルエチルケトン、ジブチルケトン等の脂肪族ケトン類;ブタノール、ヘキサノール等の脂肪族アルコール類;エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテルアセタート(PGMEA)等の脂肪族エーテル類等が挙げられる。中でも好ましくは、アルカン類や芳香族炭化水素類であり、特に、フェニルシクロヘキサンは湿式成膜プロセスにおいて好ましい粘度と沸点を有している。
溶媒の沸点は、通常80℃以上、好ましくは100℃以上、より好ましくは150℃以上、特に好ましくは200℃以上である。また、通常沸点270℃以下、好ましくは250℃以下、より好ましくは240℃以下である。この範囲を下回ると、湿式成膜時において、組成物からの溶媒蒸発により、成膜安定性が低下する可能性がある。
通常発光層の厚みは3〜200nm程度であるが、溶媒の含有量がこの下限を下回ると、組成物の粘性が高くなりすぎ、成膜作業性が低下する可能性がある。一方、この上限を上回ると、成膜後、溶媒を除去して得られる膜の厚みが稼げなくなるため、成膜が困難となる傾向がある。
本発明のイリジウム錯体化合物含有組成物中の他の電荷輸送性化合物の含有量は、該組成物を100重量部とすると、通常0.1重量部以上、また、通常50重量部以下、好ましくは30重量部以下である。
本発明の有機電界発光素子は、基板上に少なくとも陽極、陰極及び前記陽極と前記陰極の間に少なくとも1層の有機層を有するものであって、前記有機層のうち少なくとも1層が本発明の錯体化合物を含むことを特徴とする。前記有機層は発光層を含む。
本発明の錯体化合物を含む有機層は、本発明における組成物を用いて形成された層であることがより好ましく、湿式成膜法により形成された層であることがさらに好ましい。前記湿式成膜法により形成された層は、該発光層であることが好ましい。
これらの構造に適用する材料は、公知の材料を適用することができ、特に制限はないが、各層に関しての代表的な材料や製法を一例として以下に記載する。また、公報や論文等を引用している場合、該当内容を当業者の常識の範囲で適宜、適用、応用することができるものとする。
基板1は有機電界発光素子の支持体となるものであり、石英やガラスの板、金属板や金属箔、プラスチックフィルムやシートなどが用いられる。特にガラス板や、ポリエステル、ポリメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスルホンなどの透明な合成樹脂の板が好ましい。合成樹脂基板を使用する場合にはガスバリア性に留意する必要がある。基板1のガスバリア性が小さすぎると、基板1を通過した外気により有機電界発光素子が劣化することがある。このため、合成樹脂基板の少なくとも片面に緻密なシリコン酸化膜等を設けてガスバリア性を確保する方法も好ましい方法の一つである。
基板1上には陽極2が設けられる。陽極2は発光層側の層(正孔注入層3、正孔輸送層4又は発光層5など)への正孔注入の役割を果たすものである。
この陽極2は、通常、アルミニウム、金、銀、ニッケル、パラジウム、白金等の金属、インジウム及び/又はスズの酸化物などの金属酸化物、ヨウ化銅などのハロゲン化金属、カーボンブラック、或いは、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリピロール、ポリアニリン等の導電性高分子などにより構成される。
基板1上に導電性高分子を塗布して陽極2を形成することもできる(Appl.Phys.Lett.,60巻,2711頁,1992年)。
陽極2の厚みは、必要とする透明性により異なる。透明性が必要とされる場合は、可視光の透過率を、通常60%以上、好ましくは80%以上とすることが望ましい。この場合、陽極2の厚みは通常5nm以上、好ましくは10nm以上であり、また通常1000nm以下、好ましくは500nm以下程度である。
陽極2に付着した不純物を除去し、イオン化ポテンシャルを調整して正孔注入性を向上させることを目的に、陽極表面を紫外線(UV)/オゾン処理したり、酸素プラズマ、アルゴンプラズマ処理したりすることが好ましい。
正孔注入層3は、陽極2から発光層5へ正孔を輸送する層であり、通常、陽極2上に形成される。本発明に係る正孔注入層3の形成方法は真空蒸着法でも、湿式成膜法でもよく、特に制限はないが、ダークスポット低減の観点から湿式成膜法により形成することが好ましい。
正孔注入層3の膜厚は、通常5nm以上、好ましくは10nm以上、また、通常1000nm以下、好ましくは500nm以下の範囲である。
湿式成膜法により正孔注入層3を形成する場合、通常は、正孔注入層3を構成する材料を適切な溶媒(正孔注入層用溶媒)と混合して成膜用の組成物(正孔注入層形成用組成物)を調製し、この正孔注入層形成用組成物を適切な手法により、正孔注入層3の下層に該当する層(通常は、陽極2)上に塗布して成膜し、乾燥することにより正孔注入層3を形成する。
正孔注入層形成用組成物は通常、正孔注入層3の構成材料として正孔輸送性化合物及び溶媒を含有する。正孔輸送性化合物は、通常、有機電界発光素子の正孔注入層に使用される正孔輸送性を有する化合物であれば、重合体などの高分子化合物であっても、単量体などの低分子化合物であってもよいが、高分子化合物であることが好ましい。
正孔輸送性化合物の例としては、芳香族アミン誘導体、フタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体、オリゴチオフェン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ベンジルフェニル誘導体、フルオレン基で3級アミンを連結した化合物、ヒドラゾン誘導体、シラザン誘導体、シラナミン誘導体、ホスファミン誘導体、キナクリドン誘導体、ポリアニリン誘導体、ポリピロール誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリチエニレンビニレン誘導体、ポリキノリン誘導体、ポリキノキサリン誘導体、カーボン等が挙げられる。
正孔注入層3の材料として用いられる正孔輸送性化合物は、このような化合物のうち何
れか1種を単独で含有していてもよく、2種以上を含有していてもよい。2種以上の正孔輸送性化合物を含有する場合、その組み合わせは任意であるが、芳香族三級アミン高分子化合物1種又は2種以上と、その他の正孔輸送性化合物1種又は2種以上とを併用することが好ましい。
芳香族三級アミン化合物の種類は特に制限されないが、表面平滑化効果による均一な発光の点から、重量平均分子量が1000以上、1000000以下の高分子化合物(繰り返し単位が連なる重合型化合物)がさらに好ましい。芳香族三級アミン高分子化合物の好ましい例として、従来の公知化合物である正孔輸送性化合物を選択すれば特に問題はなく、例えば、日本国特開2000−036390号公報、日本国特開2007−169606号公報、日本国特開2009−212510号公報等に開示されている高分子化合物が挙げられる。
正孔注入層形成用組成物は正孔注入層3の構成材料として、電子受容性化合物を含有していることが好ましい。
電子受容性化合物とは、酸化力を有し、上述の正孔輸送性化合物から一電子受容する能力を有する化合物が好ましく、具体的には、電子親和力が4eV以上である化合物が好ましく、5eV以上である化合物がさらに好ましい。
正孔注入層3或いは正孔注入層形成用組成物中の電子受容性化合物の正孔輸送性化合物に対する含有量は、通常0.1モル%以上、好ましくは1モル%以上である。但し、通常100モル%以下、好ましくは40モル%以下である。
湿式成膜法に用いる正孔注入層形成用組成物の溶媒のうち少なくとも1種は、上述の正孔注入層3の構成材料を溶解しうる化合物であることが好ましい。また、この溶媒の沸点は通常110℃以上、好ましくは140℃以上、中でも200℃以上がより好ましく、通常400℃以下、中でも300℃以下であることが好ましい。溶媒の沸点が低すぎると、乾燥速度が速すぎ、膜質が悪化する可能性がある。また、溶媒の沸点が高すぎると乾燥工程の温度を高くする必要があり、他の層や基板に悪影響を与える可能性がある。
ド系溶媒などが挙げられ、従来の溶媒を選択すれば特に問題はなく、例えば、日本国特開2007−169606号公報、国際公開第2006/087945号、日本国特開2009−212510号公報等に開示されている。
(成膜方法)
正孔注入層形成用組成物を調製後、この組成物を湿式成膜により、正孔注入層3の下層に該当する層(通常は、陽極2)上に塗布成膜し、乾燥することにより正孔注入層3を形成することができる。例えば、日本国特開2009−212510号公報等に開示されている従来の方法を適用することができる。
真空蒸着により正孔注入層3を形成する場合には、正孔注入層3の構成材料(前述の正孔輸送性化合物、電子受容性化合物等)の1種又は2種以上を真空容器内に設置されたるつぼに入れ(2種以上の材料を用いる場合は各々のるつぼに入れ)、真空容器内を適当な真空ポンプで10−4Pa程度まで排気した後、るつぼを加熱して(2種以上の材料を用いる場合は各々のるつぼを加熱して)、蒸発量を制御して蒸発させ(2種以上の材料を用いる場合は各々独立に蒸発量を制御して蒸発させ)、るつぼと向き合って置かれた基板1の陽極2上に正孔注入層3を形成させる。なお、2種以上の材料を用いる場合は、それらの混合物をるつぼに入れ、加熱、蒸発させて正孔注入層3を形成することもできる。
正孔輸送層4は、正孔注入層3がある場合には正孔注入層3の上に、正孔注入層3が無い場合には陽極2の上に形成することができる。また、本発明の有機電界発光素子は、正孔輸送層を省いた構成であってもよい。
正孔輸送層4の形成方法は真空蒸着法でも湿式成膜法でもよく、特に制限はないが、ダークスポット低減の観点から湿式成膜法により形成することが好ましい。
正孔輸送層4を形成する材料としては、正孔輸送性が高く、かつ、注入された正孔を効率よく輸送することができる材料であることが好ましい。そのために、イオン化ポテンシャルが小さく、可視光の光に対して透明性が高く、正孔移動度が大きく、安定性に優れ、トラップとなる不純物が製造時や使用時に発生しにくいことが好ましい。また、多くの場合、正孔輸送層4は発光層5に接するため、発光層5からの発光を消光したり、発光層5との間でエキサイプレックスを形成して効率を低下させたりしないことが好ましい。
正孔輸送層4の上には通常、発光層5が設けられる。発光層5は、電界を与えられた電極間において、陽極2から正孔注入層3を通じて注入された正孔と、陰極9から電子輸送層7を通じて注入された電子との再結合により励起された、主たる発光源となる層である。
は2種以上の電荷輸送性化合物を含むことが好ましい。発光層5は、真空蒸着法で形成してもよいが、本発明の組成物を用い、湿式成膜法によって作製された層であることが特に好ましい。
ここで、湿式成膜法とは、前述の如く、溶媒を含む組成物を、スピンコート法、ディップコート法、ダイコート法、バーコート法、ブレードコート法、ロールコート法、スプレーコート法、キャピラリーコート法、インクジェット法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、フレキソ印刷法等湿式で成膜される方法をいう。
正孔阻止層6は、発光層5の上に、発光層5の陰極側の界面に接するように積層形成される。特に、発光物質として燐光材料を用いたり、青色発光材料を用いたりする場合、正孔阻止層6を設けることは効果的である。
正孔阻止層6は正孔と電子を発光層5内に閉じこめて、発光効率を向上させる機能を有する。即ち、正孔阻止層6は、発光層5から移動してくる正孔が電子輸送層7に到達するのを阻止することで、発光層5内で電子との再結合確率を増やし、生成した励起子を発光層5内に閉じこめる役割と、電子輸送層7から注入された電子を効率よく発光層5の方向に輸送する役割がある。
このような条件を満たす正孔阻止層材料としては、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(フェノラト)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(トリフェニルシラノラト)アルミニウム等の混合配位子錯体、ビス(2−メチル−8−キノラト)アルミニウム−μ−オキソ−ビス−(2−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム二核金属錯体等の金属錯体、ジスチリルビフェニル誘導体等のスチリル化合物(日本国特開平11−242996号公報)、3−(4−ビフェニルイル)−4−フェニル−5(4−tert−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール等のトリアゾール誘導体(日本国特
開平7−41759号公報)、バソクプロイン等のフェナントロリン誘導体(日本国特開平10−79297号公報)が挙げられる。
電子輸送層7は素子の発光効率をさらに向上させることを目的として、正孔阻止層6と電子注入層8との間に設けられる。電子輸送層7は、電界を与えられた電極間において陰極9から注入された電子を効率よく発光層5の方向に輸送することができる化合物により形成される。電子輸送層7に用いられる電子輸送性化合物としては、陰極9又は電子注入層8からの電子注入効率が高く、かつ、高い電子移動度を有し、注入された電子を効率よく輸送することができる化合物であることが必要である。
電子輸送層7の膜厚は、通常下限は1nm、好ましくは5nm程度であり、上限は通常300nm、好ましくは100nm程度である。
電子輸送層7は、正孔注入層3と同様にして湿式成膜法、或いは真空蒸着法により形成されるが、通常は、真空蒸着法が用いられる。
電子注入層8は陰極9から注入された電子を効率よく発光層5へ注入する役割を果たす。電子注入を効率よく行うには、電子注入層8を形成する材料は、仕事関数の低い金属が好ましく、ナトリウムやセシウム等のアルカリ金属、バリウムやカルシウムなどのアルカリ土類金属が用いられる。電子注入層8の膜厚は0.1〜5nmが好ましい。
陰極9は、発光層側の層(電子注入層8又は発光層5など)に電子を注入する役割を果たす。陰極9として用いられる材料は、前記陽極2に使用される材料を用いることも可能であるが、効率よく電子注入を行うには、仕事関数の低い金属が好ましく、スズ、マグネシウム、インジウム、カルシウム、アルミニウム、銀等の適当な金属又はそれらの合金が用いられる。具体例としては、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、アルミニウム−リチウム合金等の低仕事関数合金電極が挙げられる。
低仕事関数金属から成る陰極9を保護する目的で、この上にさらに、仕事関数が高く大気に対して安定な金属層を積層してもよく、これにより有機電界発光素子の安定性を増すことができる。この目的のために、アルミニウム、銀、銅、ニッケル、クロム、金、白金等の金属が使われる。
以上、図1に示す層構成の素子を中心に説明してきたが、本発明の有機電界発光素子における陽極2及び陰極9と発光層5との間には、その性能を損なわない限り、上記説明にある層の他にも、任意の層を有していてもよく、また発光層5以外の任意の層を省略してもよい。
このため、電子阻止層も湿式成膜適合性を有することが好ましく、このような電子阻止層に用いられる材料としては、F8−TFBに代表されるジオクチルフルオレンとトリフェニルアミンの共重合体(国際公開第2004/084260号)等が挙げられる。
さらには、図1に示す層構成を複数段重ねた構造(発光ユニットを複数積層させた構造)とすることも可能である。その際には段間(発光ユニット間)の界面層(陽極2がITO、陰極9がAlの場合はその2層)の代わりに、例えばV2O5等を電荷発生層として用いると段間の障壁が少なくなり、発光効率・駆動電圧の観点からより好ましい。
本発明は、有機電界発光素子が、単一の素子、アレイ状に配置された構造からなる素子、陽極2と陰極9がX−Yマトリックス状に配置された構造の素子など、いずれにおいても適用することができる。
本発明の表示装置及び照明装置は、上述のような本発明の有機電界発光素子を用いたものである。本発明の表示装置及び照明装置の形式や構造については特に制限はなく、本発明の有機電界発光素子を用いて常法に従って組み立てることができる。
例えば、「有機ELディスプレイ」(オーム社、平成16年8月20日発刊、時任静士、安達千波矢、村田英幸著)に記載されているような方法で、本発明の表示装置および照明装置を形成することができる。
(中間体1の合成)
(中間体2の合成)
(中間体3の合成)
(中間体4の合成)
(中間体5の合成)
(中間体8の合成)
(化合物D−1の合成)
(中間体10の合成)
(中間体11の合成)
(化合物D−2の合成)
(中間体12の合成)
(中間体13の合成)
(中間体14の合成)
(化合物D−3の合成)
(中間体15の合成)
(中間体17の合成)
(中間体19の合成)
(化合物D−4の合成)
(実施例1)
本発明化合物であるイリジウム錯体化合物D−1を2−メチルテトラヒドロフラン(脱水、安定剤無添加)に溶解し、1×10−5mol/Lの溶液を調製した。テフロン(登
録商標)コック付きの石英セルに移したのち、20分間窒素バブリングをおこない、発光量子収率を測定した。結果を表1に示す。なお、2−メチルテトラヒドロフラン(脱水、安定剤無添加)は、シグマアルドリッチ社製のものを使用した。
装置:浜松ホトニクス(株) 有機EL量子収率測定装置C9920−02
(光源:モノクロ光源L9799−01)
(検出器:マルチチャンネル検出器PMA−11)
励起光:380nm
(実施例2、実施例3、比較例1)
実施例1において、化合物D−1に代えて化合物D−2、化合物D−3または化合物D−5を用いたほかは実施例1と同様に2−メチルテトラヒドロフラン溶液を調製し、絶対量子収率測定を実施した。これらの測定結果について表1にまとめた。
実施例1において、化合物D−1に代えて化合物D−4または化合物D−6を用いたほかは実施例1と同様に2−メチルテトラヒドロフラン溶液を調製し、絶対量子収率測定を実施した。これらの測定結果について表2にまとめた。
の光源、液晶ディスプレイや計器類のバックライト光源)、表示板、標識灯、照明装置等の分野において、好適に使用することが出来る。
2 陽極
3 正孔注入層
4 正孔輸送層
5 発光層
6 正孔阻止層
7 電子輸送層
8 電子注入層
9 陰極
10 有機電界発光素子
Claims (8)
- 下記式(1)で表されるイリジウム錯体化合物。
Ir(L1)m(L2)3−m (1)
[式(1)において、Irはイリジウム原子を表す。L1とL2はそれぞれ独立にIrと結合する有機配位子を表すが、前記L1は、下記式(2−1)または(2−2)のいずれかで表される配位子から選ばれ、前記L2は、下記式(3)で表される配位子を表す。mは1〜2の整数である。]
- 前記式(2−1)および式(2−2)におけるR2〜R3およびR7〜R12のうち少なくとも1つが、置換基を有していても良い前記炭素数10〜20の芳香族縮合環基である、請求項1に記載のイリジウム錯体化合物。
- 前記炭素数10〜20の芳香族縮合環基が、ナフタレン環又はフェナントレン環である、請求項1または2に記載のイリジウム錯体化合物。
- 前記式(2−1)、前記式(2−2)および前記式(3)におけるR1〜R14およびR31〜R38が、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していても良い炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していても良い炭素数7〜40のアラルキル基、置換基を有していても良い炭素数6〜20のアリールアミノ基または置換基を有していても良い炭素数3〜20の(ヘテロ)アリール基から選ばれる、請求項1〜3のいずれか一項に記載のイリジウム錯体化合物。
- 請求項1〜4のいずれか一項に記載のイリジウム錯体化合物及び有機溶媒を含む組成物。
- 陽極、陰極、及び前記陽極と前記陰極の間に少なくとも1層の有機層を有する有機電界発光素子であって、前記有機層のうち少なくとも1層が、請求項1〜4のいずれか一項に記載のイリジウム錯体化合物を含む有機電界発光素子。
- 請求項6に記載の有機電界発光素子を有する表示装置。
- 請求項6に記載の有機電界発光素子を有する照明装置。
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