JP2018057226A - インバータ装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】スイッチング素子の端子間電圧に基づいてスイッチング素子の状態検出を行う場合に、スイッチング素子の温度変動による影響を抑制する。
【解決手段】電圧検出回路は、スイッチング素子3の正極側端子にカソード端子が接続されるダイオードD1を介してスイッチング素子3の正極側端子と負極側端子Sとの間に接続され、スイッチング素子3の端子間電圧を検出する。スイッチング素子3及びダイオードD1は、スイッチング素子3とダイオードD1とが同じ温度となるように熱結合されて実装されている。
【選択図】図4
【解決手段】電圧検出回路は、スイッチング素子3の正極側端子にカソード端子が接続されるダイオードD1を介してスイッチング素子3の正極側端子と負極側端子Sとの間に接続され、スイッチング素子3の端子間電圧を検出する。スイッチング素子3及びダイオードD1は、スイッチング素子3とダイオードD1とが同じ温度となるように熱結合されて実装されている。
【選択図】図4
Description
本発明は、直流と交流との間で電力を変換するインバータ回路を有するインバータ装置に関する。
インバータ制御においては、インバータ回路を構成するスイッチング素子などに不具合が生じていることを検出して、インバータ回路を停止させるような保護制御が実施される場合がある。不具合の1つには、スイッチング素子の過電流がある。スイッチング素子の過電流を検出する方法には、シャント抵抗やカレントトランスを利用して電流を測定する方法や、スイッチング素子の飽和電圧(コレクタ−エミッタ間電圧VCEやドレイン−ソース間電圧VDS)を測定する方法がある。下記に出典を示す特許文献1には、パワースイッチング素子としてのパワーFET(Field Effect Transistor)(12,14,42)のドレイン−ソース間電圧(VDS)に基づいて過電流状態であるか否かを判定するセンシング回路を備えたモータコントローラの回路(10)が開示されている(図1、図2,[0003]〜[0011]等。尚、背景技術において括弧内に示す符号は参照する文献のもの。)。このセンシング回路には、パワースイッチング素子がオフ状態のときに、パワースイッチング素子の正極側の高電圧がセンシング回路に印加されることから当該センシング回路を保護するダイオード(60)が備えられている。
ところで、半導体素子は温度特性を有することが知られており、温度によって電気的特性に差が生じる。例えば、センシング回路のダイオード(60)の順方向電圧は、負の係数を持つ温度特性を有する。一方、パワーFET(12,14,42)などのパワースイッチング素子のオン抵抗は、多くの場合、正の温度係数を持つ温度特性を有する。パワースイッチング素子の損失(多くの場合、発熱)は、素子電流に応じて大きくなる。このため、発熱によってパワースイッチング素子は温度変動も大きくなる。一方、センシング回路のダイオードに流れる電流はパワースイッチング素子に比べて非常に小さく、ダイオードの温度は、基板が収納されたケース内などの雰囲気温度にほぼ連動する。このため、ダイオードの温度変動はパワースイッチング素子に比べて小さい。上述したような過電流検出を含め、パワースイッチング素子の端子間電圧(VDSやVCEなど)に基づいてスイッチング素子の状態検出を行う場合、温度に依存する端子間電圧の変動幅が大きいと検出精度に影響する。
上記背景に鑑みて、スイッチング素子の端子間電圧に基づいてスイッチング素子の状態検出を行う場合に、スイッチング素子の温度変動による影響を抑制して適切にスイッチング素子の状態検出を行うことが望まれる。
上記に鑑み、直流電源に接続されて直流と交流との間で電力を変換するインバータ回路を有するインバータ装置は、1つの態様として、
前記インバータ回路を構成する複数のスイッチング素子のそれぞれに対応する駆動回路と電圧検出回路とを備え、
前記駆動回路は、前記スイッチング素子を制御するスイッチング制御信号の電力を増幅して前記スイッチング素子の制御端子へ伝達するように構成され、
前記電圧検出回路は、前記スイッチング素子の正極側端子にカソード端子が接続されるダイオードを介して当該スイッチング素子の前記正極側端子と負極側端子との間に接続され、当該スイッチング素子の前記端子間電圧を検出するように構成され、
前記ダイオードのアノード端子と前記電圧検出回路とが接続される第1ノードは、対応する前記駆動回路の正極に接続され、
前記第1ノードとは異なる側の前記電圧検出回路の端子である第2ノードは、対応する前記駆動回路の負極に接続され、
前記スイッチング素子と前記ダイオードとが同じ温度となるように熱結合されて実装されている。
前記インバータ回路を構成する複数のスイッチング素子のそれぞれに対応する駆動回路と電圧検出回路とを備え、
前記駆動回路は、前記スイッチング素子を制御するスイッチング制御信号の電力を増幅して前記スイッチング素子の制御端子へ伝達するように構成され、
前記電圧検出回路は、前記スイッチング素子の正極側端子にカソード端子が接続されるダイオードを介して当該スイッチング素子の前記正極側端子と負極側端子との間に接続され、当該スイッチング素子の前記端子間電圧を検出するように構成され、
前記ダイオードのアノード端子と前記電圧検出回路とが接続される第1ノードは、対応する前記駆動回路の正極に接続され、
前記第1ノードとは異なる側の前記電圧検出回路の端子である第2ノードは、対応する前記駆動回路の負極に接続され、
前記スイッチング素子と前記ダイオードとが同じ温度となるように熱結合されて実装されている。
例えば、スイッチング素子の一種であるMOSFETのオン抵抗は、正の温度係数を持つ温度特性を有し、ダイオードの順方向電圧は、負の係数を持つ温度特性を有する。上記のように、スイッチング素子とダイオードとが同じ温度となると、両者の温度特性が相殺されて、過電流検出における温度変化に対する影響が抑制される。即ち、本構成によれば、スイッチング素子の端子間電圧に基づいてスイッチング素子の状態検出を行う場合に、スイッチング素子の温度変動による影響を抑制して適切にスイッチング素子の状態検出を行うことができる。
インバータ装置のさらなる特徴と利点は、図面を参照して説明する実施形態についての以下の記載から明確となる。
以下、インバータ装置の実施形態を図面に基づいて説明する。図1及び図2の回路ブロック図は、インバータ装置100(回転電機駆動装置)のシステム構成を模式的に示している。インバータ装置100は、直流電源11(高圧直流電源)に接続されて直流電力と複数相の交流電力との間で電力を変換するインバータ回路10を介して回転電機80を駆動する。図1及び図2に示すように、インバータ回路10は、上段側スイッチング素子3Hと下段側スイッチング素子3Lとの直列回路により構成された交流1相分のアーム3Aを複数本(ここでは3本)備えている。本実施形態では、回転電機80のU相、V相、W相に対応するステータコイル8のそれぞれに一組の直列回路(アーム3A)が対応したブリッジ回路が構成される。アーム3Aの中間点、つまり、上段側スイッチング素子3Hと下段側スイッチング素子3Lとの接続点は、回転電機80の3相のステータコイル8にそれぞれ接続される。
回転電機80は、例えばハイブリッド自動車や電気自動車等の車両の駆動力源とすることができる。回転電機80が車両の駆動力源の場合、直流電源11の電源電圧は、例えば200〜400Vである。以下、インバータ回路10の直流側の電圧(正極Pと負極Nとの間の電圧)を直流リンク電圧Vdcと称する。尚、回転電機80は、発電機として機能してもよい。直流電源11は、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池などの二次電池(バッテリ)や、電気二重層キャパシタなどにより構成されていると好適である。インバータ回路10の直流側には、直流リンク電圧Vdcを平滑化する平滑コンデンサ(直流リンクコンデンサ4)が備えられている。直流リンクコンデンサ4は、回転電機80の消費電力の変動に応じて変動する直流電圧(直流リンク電圧Vdc)を安定化させる。
図1に示すように、直流電源11とインバータ回路10との間には、コンタクタ9が備えられている。具体的には、コンタクタ9は、直流リンクコンデンサ4と直流電源11との間に配置されている。コンタクタ9は、インバータ装置100の電気回路系統(直流リンクコンデンサ4、インバータ回路10)と、直流電源11との電気的な接続を切り離すことが可能である。即ち、インバータ回路10は、回転電機80に接続されていると共に、直流電源11との間にコンタクタ9を介して接続されている。コンタクタ9が接続状態(閉状態)において直流電源11とインバータ回路10(及び回転電機80)とが電気的に接続され、コンタクタ9が開放状態(開状態)において直流電源11とインバータ回路10(及び回転電機80)との電気的接続が遮断される。
本実施形態において、このコンタクタ9は、車両内の上位の制御装置の1つである車両ECU(VHL-ECU:Vehicle Electronic Control Unit)90からの指令に基づいて開閉するメカニカルリレーであり、例えばシステムメインリレー(SMR : System Main Relay)と称される。コンタクタ9は、車両のイグニッションキー(IGキー)がオン状態(有効状態)の際にリレーの接点が閉じて導通状態(接続状態)となり、IGキーがオフ状態(非有効状態)の際にリレーの接点が開いて非導通状態(開放状態)となる。
インバータ回路10は、直流リンク電圧Vdcを有する直流電力を複数相(nを自然数としてn相、ここでは3相)の交流電力に変換して回転電機80に供給する。回転電機80が発電機としても機能する場合には、回転電機80が発電した交流電力を直流電力に変換して直流電源11に供給する。図1に示すように、インバータ回路10は、複数のスイッチング素子3を有して構成される。スイッチング素子3には、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)やパワーMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)やSiC−MOSFET(Silicon Carbide - Metal Oxide Semiconductor FET)やSiC−SIT(SiC - Static Induction Transistor)、GaN−MOSFET(Gallium Nitride - MOSFET)などの高周波での動作が可能なパワー半導体素子を適用すると好適である。図1及び図2等に示すように、本実施形態では、スイッチング素子3としてnチャネル型のMOSFET(好適には、SiC−MOSFET)が用いられる形態を例示する。尚、各スイッチング素子3は、スイッチング素子本体31とフリーホイールダイオード32とを有して構成されている。フリーホイールダイオード32は、負極Nから正極Pへ向かう方向(下段側から上段側へ向かう方向)を順方向として、スイッチング素子本体31に並列に備えられている(図2等参照)。
インバータ回路10は、モータ制御装置(CNTL)1により制御される。インバータ制御装置1は、マイクロコンピュータ等の論理プロセッサを中核部材として構築されている。例えば、インバータ制御装置1は、車両ECU90等の他の制御装置から提供される回転電機80の目標トルクに基づいて、ベクトル制御法を用いた電流フィードバック制御を行って、インバータ回路10を介して回転電機80を制御する。回転電機80の各相のステータコイル8を流れる実電流は電流センサ14により検出され、インバータ制御装置1はその検出結果を取得する。また、回転電機80のロータの各時点での磁極位置や回転速度は、レゾルバ15などの回転センサにより検出され、インバータ制御装置1はその検出結果を取得する。また、直流リンク電圧Vdcは、電圧センサ16等によって検出され、インバータ制御装置1はその検出結果を取得する。
インバータ制御装置1は、電流センサ14及びレゾルバ15の検出結果を用いて、例えばベクトル制御法を用いて電流フィードバック制御を実行する。インバータ制御装置1は、モータ制御のために種々の機能部を有して構成されており、各機能部は、マイクロコンピュータ等のハードウエアとソフトウエア(プログラム)との協働により実現される。ベクトル制御及び電流フィードバック制御については、公知であるのでここでは詳細な説明は省略する。
ところで、インバータ回路10を構成するそれぞれのスイッチング素子3の制御端子(例えばMOSFETのゲート端子G)は、駆動回路(DRV)2を介してインバータ制御装置1に接続されており、それぞれ個別にスイッチング制御される。スイッチング制御信号SWを生成するインバータ制御装置1は、マイクロコンピュータなどを中核とした電子回路であり、低圧系回路として構成される。低圧系回路は、インバータ回路10などの高圧系回路とは、動作電圧(回路の電源電圧)が大きく異なる。多くの場合、車両には、直流電源11の他に、直流電源11よりも低電圧(例えば12〜24[V])の電源である低圧直流電源(不図示)も搭載されている。低圧直流電源の出力電圧は、図3に示す“IG”である。インバータ制御装置1の動作電圧は、例えば5[V]や3.3[V]であり、低圧直流電源の電力に基づいてこのような動作電圧を生成する不図示の電圧レギュレータなどの電源回路から電力を供給されて動作する。
上述したように、低圧系回路は、インバータ回路10などの高圧系回路とは、動作電圧(回路の電源電圧)が大きく異なる。このため、インバータ装置100には、各スイッチング素子3に対するスイッチング制御信号SW(スイッチング素子3がMOSFETやIGBTの場合、ゲート駆動信号)の電力を増幅する駆動回路2が備えられている。換言すれば、駆動回路2は、スイッチング制御信号SWの駆動能力(例えば電圧振幅や出力電流など、後段の回路を動作させる能力)をそれぞれ高めて対応するスイッチング素子3に中継する。低圧系回路のインバータ制御装置1により生成されたスイッチング制御信号SWは、駆動回路2により増幅された高圧系回路の駆動信号DSとして保護抵抗R5を介してインバータ回路10に供給される。
駆動回路2は、それぞれのスイッチング素子3に対応して備えられている。図1に示すように、本実施形態では、インバータ回路10に、駆動対象となる6つのスイッチング素子3が備えられており、駆動回路2も6つ備えられている。駆動回路2には、上段側スイッチング素子3Hに駆動信号DSを提供する上段側駆動回路2Hと、下段側スイッチング素子3Lに駆動信号DSを提供する下段側駆動回路2Lとがあるが、特に区別する必要が無い場合は、単に駆動回路2として説明する。
1つの態様として、駆動回路2は、ドライバICなどを利用して構成されている。このようなドライバICは、自己診断機能を有している場合が多い。ここで、自己診断とは、駆動対象のスイッチング素子3における過電流や温度上昇の検出や、駆動信号DSの振幅(信号レベル)に影響を与える駆動電圧(例えば12〜15[V]程度のVD−VG間電圧:図2参照)の低下の検出などである。それぞれのドライバICは、自己診断機能によってこれらの異常を検出した場合に、異常検出信号を出力する。異常検出信号は、インバータ制御装置1に提供され、インバータ制御装置1は、例えば異常検出信号に基づいて、インバータ回路10を停止させるなどのフェールセーフ制御を実行する。
駆動回路2に駆動電力を供給するために、駆動電源回路7(PW)が設けられている。図3は、駆動電源回路7の一例を示している。6つの駆動回路2に対応して、駆動電源回路7は6つ備えられている。駆動電源回路7は、U相上段用駆動電源回路71、V相上段用駆動電源回路72、W相上段用駆動電源回路73、V相下段用駆動電源回路74、U相下段用駆動電源回路75、W相下段用駆動電源回路76を有している。上段側駆動回路2Hに電力を供給する3つの駆動電源回路7(71,72,73)は上段側駆動電源回路7Hであり、下段側駆動回路2Lに電力を供給する3つの駆動電源回路7(74,75,76)は下段側駆動電源回路7Lである。
上段側駆動電源回路7H(71〜73)は、それぞれ電気的に絶縁されたフローティング電源である。上段側駆動電源回路7Hは、それぞれ異なる正極側電位(VHU,VHV,VHW)及び負極側電位(GHU,GHV,GHW)を有する。下段側駆動電源回路7L(74〜76)は、図1から明らかなように負極側電位(GL:GLU,GLV,GLW)が共通しており、互いに絶縁されてはいないが、それぞれ異なる正極側電位(VLU,VLV,VLW)を有する。尚、各相を区別することなく上段側駆動電源回路7Hの正極側電位を示す場合は“VH”と称し、各相を区別することなく下段側駆動電源回路7Lの正極側電位を示す場合は“VL”と称する(図1、図2、図3等参照)。
図3に示すように、駆動電源回路7は、インバータ制御装置1が備えられる低圧側回路との絶縁を確保するためにトランスTの二次側コイルを用いて構成されている。駆動電源回路7の一次側には電源制御ICなどを用いた電源制御装置79(PCNT)が備えられており、低圧直流電源の出力電圧“IG”に接続されたスイッチング素子をスイッチング制御することによって、駆動電源回路7に規定された出力電圧を生じさせる。電源制御装置79は、駆動電源回路7の一次側回路に生じる電圧に基づくフィードバック制御を行って当該スイッチング素子をスイッチングし、駆動電源回路7に規定された出力電圧を生じさせる。
上述したように、駆動回路2は、駆動対象のスイッチング素子3における過電流や温度上昇の検出や、駆動信号DSの振幅(信号レベル)に影響を与える駆動電圧の低下の検出などの自己診断機能を有している。本実施形態では、駆動対象のスイッチング素子3の過電流を検出する自己診断機能を例示する。スイッチング素子3の過電流を検出する方法には、シャント抵抗やカレントトランスを利用して電流を測定する方法や、スイッチング素子3の飽和電圧(コレクタ−エミッタ間電圧VCEやドレイン−ソース間電圧VDSなど、スイッチング素子3の正極側端子と負極側端子との間の端子間電圧)を測定する方法がある。スイッチング素子3の端子間電圧(VCEやVDS)は、スイッチング素子3に流れる電流(コレクタ−エミッタ間電流ICEやドレイン−ソース間電流IDSなど、スイッチング素子3の正極側端子と負極側端子との間を流れる素子電流)が増加すると上昇するという特性を持つ。従って、スイッチング素子3の端子間電圧(VCEやVDS)を監視することによって、スイッチング素子3の過電流を検出することができる。本実施形態では、スイッチング素子3の端子間電圧を監視する方式をDESAT(desaturation)方式と称する。
本実施形態では、図2に示すように、スイッチング素子3の端子間電圧(本実施形態ではMOSFETのドレイン−ソース間電圧VDS)に基づいて、スイッチング素子3(アーム3A)の過電流を検出する過電流検出回路が、それぞれのスイッチング素子3に対応して複数設けられている。過電流検出回路は、第1分圧抵抗器R1と第2分圧抵抗器R2とが直列に接続されて構成された電圧検出回路20と、保護ダイオードD1と、抵抗器R3と、駆動回路2(ドライバIC)の内部に配置された過電流判定部としてのコンパレータ21とを含む。第1分圧抵抗器R1及び第2分圧抵抗器R2の抵抗値は例えば10〜20[kΩ]程度、抵抗器R3の抵抗値は例えば20〜30[kΩ]程度である。
電圧検出回路20は、それぞれのスイッチング素子3の正極側端子(ここではドレイン端子D)にカソード端子が接続される保護ダイオードD1を介してスイッチング素子3の正極側端子(ドレイン端子D)と負極側端子(ここではソース端子S)との間に接続され、スイッチング素子3の端子間電圧(ここではドレイン−ソース間電圧VDS)を検出する。保護ダイオードD1のアノード端子と電圧検出回路20とが接続される第1ノードn1は、対応する駆動電源回路7の正極(VD)に接続される。本実施形態では、第1ノードn1は、電流制限回路としての抵抗器R3を介して駆動電源回路7の正極(VD)に接続されている。抵抗器R3は、電圧検出回路20(R1,R2)や保護ダイオードD1に大きな電流が流れないように、電流を制限する。尚、本実施形態では、電流制限回路として抵抗器R3を例示しているが、その他の公知の定電流回路によって電流制限回路を構成してもよい。つまり、第1ノードn1と駆動電源回路7の正極(VD)との間に電流制限回路を備えていればよい。第1ノードn1とは異なる側の電圧検出回路20の端子である第2ノードn2は、対応する駆動電源回路7の負極(VG)に接続される。
保護ダイオードD1は、抵抗器R3の側にアノード端子、スイッチング素子3のドレイン端子Dの側にカソード端子が接続される形態で、抵抗器R3からスイッチング素子3の側に向かって順方向となるように接続されている。保護ダイオードD1のアノード端子とスイッチング素子のソース端子Sとの間には第1分圧抵抗器R1と第2分圧抵抗器R2とが直列に接続されて電圧検出回路20が形成されており、これらの抵抗器により分圧された分圧電圧が駆動回路2に入力される。駆動回路2に設けられたコンパレータ21(過電流判定部)は、基準電圧refと分圧電圧とを比較し、分圧電圧が基準電圧ref以上の場合に、スイッチング素子3に過電流が生じていると判定する。また、詳細は後述するが、分圧電圧をインバータ制御装置1へ提供し、インバータ制御装置1においてスイッチング素子3の温度を推定してもよい。これら過電流検出(過電流判定)や温度推定は、スイッチング素子3の状態検出に相当する。
保護ダイオードD1は、スイッチング素子3がオフ状態の際に、スイッチング素子3の正極側端子(コレクタ端子やドレイン端子D)と駆動電源グラウンドVGとの間の高電圧が分圧された高電圧の分圧電圧が、駆動回路2に入力されることを防止する。スイッチング素子3がオン状態となると、保護ダイオードD1がオン状態(導通状態)となり、第1分圧抵抗器R1と保護ダイオードD1との接続ノード(第1ノードn1)の電位は、保護ダイオードD1の順方向電圧Vfと、スイッチング素子3(MOSFET)のドレイン−ソース間電圧VDSとの和となる。過電流が生じた際のドレイン−ソース間電圧VDSに比べて、順方向電圧Vfは小さく、第1ノードn1の電位はほぼスイッチング素子3(MOSFET)のドレイン−ソース間電圧VDSとなる。
尚、電圧検出回路20による検出電圧(分圧電圧)は常時、駆動回路2に入力されているが、過電流判定部(コンパレータ21)による判定は、判定対象のスイッチング素子3がオン状態に制御されている期間(駆動信号DSが有効な期間)のみである。駆動信号DSの信号レベル(論理レベル)は、駆動回路2において既知であるから、駆動回路2は、判定対象のスイッチング素子3がオン状態に制御されている期間のみ、過電流の判定を行う。また、本実施形態では、第1分圧抵抗器R1と第2分圧抵抗器R2とが直列に接続されて電圧検出回路20が形成されている形態を例示しているが、この形態には限られない。スイッチング素子3の導通時の端子間電圧(VCEやVDS)や駆動回路2の仕様(コンパレータ21など過電流判定部の仕様)に応じて、第2分圧抵抗器R2に相当する抵抗器のみを備えて電圧検出回路20が形成されていてもよい。
上述したように、直流電源11に接続されて直流と交流との間で電力を変換するインバータ回路10を有するインバータ装置100は、インバータ回路10を構成する複数のスイッチング素子3のそれぞれに対応する駆動回路2と電圧検出回路20とを備えている。駆動回路2は、スイッチング素子3を制御するスイッチング制御信号SWの電力を増幅してスイッチング素子3の制御端子(ゲート端子G)へ伝達するように構成されている。電圧検出回路20は、スイッチング素子3の正極側端子(ドレイン端子D)にカソードが接続される保護ダイオードD1を介してスイッチング素子3の正極側端子(ドレイン端子D)と負極側端子(ソース端子S)との間に接続され、スイッチング素子3の端子間電圧(ドレイン−ソース間電圧VDS)を検出するように構成されている。保護ダイオードD1のアノード端子と電圧検出回路20とが接続される第1ノードn1は、対応する駆動回路2の正極(VD)に接続されている。第1ノードn1とは異なる側の電圧検出回路20の端子である第2ノードn2は、対応する駆動回路2の負極(VG)に接続されている。さらに、詳細は図4、図11、図13等を参照して後述するが、スイッチング素子3及び保護ダイオードD1は、スイッチング素子3と保護ダイオードD1とが同じ温度となるように熱結合されて実装されている。1つの態様として、図4等に示すように、保護ダイオードD1は、スイッチング素子3と共にパワーモジュール30として構成されている。
上述したように、インバータ制御装置1と駆動回路2とインバータ回路10とは、それぞれ動作電圧が異なる。このため、多くの場合、インバータ制御装置1とインバータ回路10とは異なる基板上に実装される。インバータ制御装置1とインバータ回路10とをつなぐインターフェイス回路40の一部である駆動回路2は、回路規模や動作電圧よりインバータ制御装置1と同じ基板上に実装されることが多い。従って、一般的には、図5の比較例のパワーモジュール30Bに示すように、保護ダイオードD1は、インバータ回路10とは別に実装されることが多い。つまり、スイッチング素子3及び保護ダイオードD1は、スイッチング素子3と保護ダイオードD1とが同じ温度となるように熱結合されてはいない。
スイッチング素子3や保護ダイオードD1などの半導体素子は温度特性を有することが知られており、温度によって電気的特性に差が生じる。例えば、MOSFETのオン抵抗Rdsは、図6に示すように正の温度係数を持つ温度特性を有する。一方、保護ダイオードD1の順方向電圧Vfは、図7に示すような負の係数を持つ温度特性を有する。本実施形態では、スイッチング素子3としてMOSFETを例示しているが、図6に示すように正の温度係数を持つ素子であれば上述したようにMOSFETに限らず、スイッチング素子3としてIGBT等を採用してもよい。
スイッチング素子3の損失(多くの場合、発熱)は、素子電流に応じて大きくなる。このため、発熱によってスイッチング素子3は温度変動も大きくなる。一方、保護ダイオードD1に流れる電流はスイッチング素子3に比べて非常に小さく、保護ダイオードD1の温度は、基板が収納されたケース内などの雰囲気温度にほぼ連動する。このため、保護ダイオードD1の温度変動はスイッチング素子3に比べて小さい。上述したように、スイッチング素子3の端子間電圧(VDSやVCEなど)に基づいて過電流が生じているか否かを判定する場合には、端子間電圧(VDS)の分圧電圧と基準電圧refとが比較される。しかし、温度に依存する端子間電圧(VDS)の変動幅が大きいと過電流の判定精度に影響する。
ここで、図6及び図7の温度特性を参照すると、スイッチング素子3の温度特性と、保護ダイオードD1の温度特性とは、正負が逆の特性である。スイッチング素子3の温度と、保護ダイオードD1の温度が同じであれば、温度特性が相殺されて判定への影響を抑制することができる。しかし、多くの場合、スイッチング素子3と、保護ダイオードD1とは異なる場所に配置されている。例えば、スイッチング素子3は、インバータ回路10を構成する6つのスイッチング素子3を集積したパワーモジュールとして構成される場合が多い。一方、保護ダイオードD1は、駆動回路2などと共に、制御基板などに実装されることが多い。大電流が流れるインバータ回路10(パワーモジュール)は発熱量も大きく、温度が上昇し易いが、制御基板はインバータ回路10に比べて発熱量は小さく、温度も上昇しにくい。保護ダイオードD1の温度は、制御基板が収納されるケース内の雰囲気温度にほぼ連動するので、パワーモジュールとして構成されたスイッチング素子3の温度と大きく異なることになる。
下記に示す式(1)は、素子温度(ジャンクション温度)がTj_MOSのときのスイッチング素子3のオン抵抗Rdsを示している。スイッチング素子3の素子温度Tj_MOSは摂氏温度であり、式(1)は摂氏25度におけるオン抵抗Rdsを基準として、絶対温度で規定される温度係数に基づいてオン抵抗Rdsが変動することを示している。
下記に示す式(2)は、保護ダイオードD1の素子温度(ジャンクション温度)がTj_DIのときの保護ダイオードD1の順方向電圧Vfを示している。保護ダイオードD1の順方向電圧Vfは、保護ダイオードD1の素子温度Tj_DIに対して線形であるため、ここでは絶対零度(0[K]、−273[℃])の順方向電圧(Vf0)を基準として示している。
上述したように、保護ダイオードD1の素子温度Tj_DIは、スイッチング素子3の素子温度Tj_MOSに比べて変動しにくい。ここで、保護ダイオードD1の温度がほぼ一定であると仮定すると、下記式(3)に示すように、過電流検出の際のスイッチング素子3の許容電流ILIMも大きな温度特性を有することになる。尚、式(3)において“ref”は、コンパレータ21の基準電圧を示し、“R1,R2”は、第1分圧抵抗器R1及び第2分圧抵抗器R2の抵抗値を示している。
ここで、保護ダイオードD1をスイッチング素子3の近傍に実装し、保護ダイオードD1の素子温度Tj_DIが、スイッチング素子3の素子温度Tj_MOSに連動するようにすることで、温度特性を相殺することができる。つまり、許容電流ILIMの温度特性を改善することができる。
本実施形態では、スイッチング素子3の温度と、保護ダイオードD1の温度が同じ温度となるように、両者を熱結合して実装している。即ち、図2に示すように、保護ダイオードD1がパワーモジュール30の中に、スイッチング素子3と共に実装されている。ここで、図4及び図11も参照して説明する。図4は、パワーモジュール30の構成例を模式的に示す上面図であり、図11は、パワーモジュール30の構成例を模式的に示す断面図である。パワーモジュール30は、インバータ回路10を構成する6つのスイッチング素子3を有している。図4の上面図は6つのスイッチング素子3が同一の金属基板(ここではDBC(Direct Bonded Copper)基板39)に実装されている形態を例示しており、図11の断面図は1つスイッチング素子3と保護ダイオードD1とが実装されている実装用ランド33における断面を例示している。尚、図4及び図11では、フリーホイールダイオード32は省略している(比較例のパワーモジュール30Bを示す図5、及び後述する別実施形態の図12も同様。)。
スイッチング素子3(スイッチング素子本体31)の素子チップであるMOSFETチップ37(スイッチング素子チップ)は、保護ダイオードD1の素子チップであるダイオードチップ38と共に、熱伝導率の高い銅を用いて形成された実装用ランド33に実装されている。実装用ランド33の側には、MOSFETチップ37のドレイン端子Dと、ダイオードチップ38のカソード端子が配置されており、実装用ランド33を介してスイッチング素子3のドレイン端子Dと、保護ダイオードD1のカソード端子とが接続されている。実装用ランド33とは反対側には、MOSFETチップ37のソース端子S及びゲート端子G、ダイオードチップ38のアノード端子が配置されている。MOSFETチップ37及びダイオードチップ38に設けられたチップ側ボンディングパッド34と、DBC基板39に設けられた基板側ボンディングパッド35とがボンディングワイヤーBWで接続される。基板側ボンディングパッド35は、パワーモジュール30の端子となる。ゲート端子G及びソース端子Sは、パワーモジュール30とMOSFETチップ37とで同一であるが、パワーモジュール30におけるドレイン端子は、保護ダイオードD1を介しているため、MOSFETチップ37のドレイン端子Dとは異なり、符号D’で示している。
インバータ回路10を構成する6つのスイッチング素子3のMOSFETチップ37は、それぞれ独立した実装用ランド33に、それぞれのスイッチング素子3に対応する保護ダイオードD1のダイオードチップ38と共に実装されている。上述したように、実装用ランド33は、熱伝導率の高い銅製であり、スイッチング素子3と保護ダイオードD1とは、互いに同じ温度となるように熱結合されて実装される。実装用ランド33、又は、実装用ランド33及びDBC基板39は、熱伝動部材に相当する。また、スイッチング素子3と保護ダイオードD1とは、同じ金属基板(DBC基板39)上に近接して実装されているということもできる。6つのスイッチング素子3及びそれぞれのスイッチング素子3に対応する6つの保護ダイオードD1が実装されたDBC基板39はモジュールケース10Cに格納される。
このように、互いに正負が逆の温度特性を有するスイッチング素子3と保護ダイオードD1とが熱結合するように実装することによって、温度特性による影響を相殺することができる。図8は、過電流検出の際のスイッチング素子3の許容電流ILIMと、スイッチング素子3の素子温度Tj_MOSとの関係を示している。図8において一点鎖線で示す曲線は、スイッチング素子3と保護ダイオードD1とが熱結合していない場合の特性を示している(例えば図5の比較例に示す形態)。図8において実線で示す曲線は、スイッチング素子3と保護ダイオードD1とが熱結合しており、両者の温度が同一である場合の特性を例示している(図4を参照して上述した形態)。図8に示すように、スイッチング素子3と保護ダイオードD1とが熱結合し、両者の温度が同一の場合には、温度特性による影響が低減されていることが判る。
ところで、このように、スイッチング素子3と保護ダイオードD1とが熱結合し、両者の温度が同一と見なせる場合には、スイッチング素子3の素子温度Tj_MOSを推定することができる。図9は、駆動回路2及びインバータ制御装置1が素子温度Tj_MOSを推定する機能を備えている場合のインターフェイス回路40を中心とした回路ブロック図を示している。駆動回路2には、分圧電圧をA/D(Analogue to Digital)変換してインバータ制御装置1に提供するA/Dコンバータ22(A/D)が備えられている。ここでは、スイッチング素子3がオン状態であり、電流センサ14による検出結果より、下段側スイッチング素子3Lに素子電流ICSが流れているとインバータ制御装置1が判定できる場合を考える。このとき、A/Dコンバータ22に入力される電圧Vad(分圧電圧)は、下記式(4)で表される。
上述したスイッチング素子3のオン抵抗を示す式(1)、及び、保護ダイオードD1の順方向電圧Vfを示す式(2)より、式(4)は下記式(5)と表される。
ここで、スイッチング素子3と保護ダイオードD1とが完全に熱結合し、両者の温度が同一(Tj_MOS=Tj_DI、又は、Tj_MOS≒Tj_DI)と考えると、式(5)は下記式(6)と表される。
式(6)において、スイッチング素子3の素子温度Tj_MOS以外は既知の値である。従って、インバータ制御装置1が、電流センサ14から取得した電流の値ICSを用いて式(6)を解くことによって、スイッチング素子3の素子温度Tj_MOSを推定することができる。即ち、インバータ制御装置1は、スイッチング素子3の温度特性(式(6)の右辺第1項(ICSを除く))と、保護ダイオードD1の温度特性(式(6)の右辺第2項及び第3項)と、端子間電圧(式(6)の左辺;VDS,VCEに対応する電圧)と、スイッチング素子3を流れる素子電流ICSとに基づいて、スイッチング素子3の温度を推定する。
このようにして、スイッチング素子3の温度を推定することができれば、インバータ制御装置1は、さらに推定したスイッチング素子3の温度に応じて過電流判定部の判定しきい値(コンパレータ21の基準電圧ref)を設定することができる。図10は、駆動回路2及びインバータ制御装置1が素子温度Tj_MOSを推定する機能を備えていると共に、推定したスイッチング素子3の温度に応じてコンパレータ21の基準電圧refを設定する機能を有する場合のインターフェイス回路40を中心とした回路ブロック図を示している。図10に示すように、駆動回路2には、推定したスイッチング素子3の温度に応じてインバータ制御装置1が演算した判定しきい値をD/A(Digital to Analogue)変換してコンパレータ21の基準電圧refとして設定するD/Aコンバータ23(D/A)が備えられている。
このように、推定したスイッチング素子3の温度に応じてコンパレータ21の基準電圧refを設定することができると、温度特性による影響をさらに低減することができる。上述したように、図8は、過電流検出の際のスイッチング素子3の許容電流ILIMと、スイッチング素子3の素子温度Tj_MOSとの関係を示している。図8において一点鎖線で示す曲線は、スイッチング素子3と保護ダイオードD1とが熱結合していない場合の特性を示している(例えば図5の比較例に示す形態)。図8において実線で示す曲線は、スイッチング素子3と保護ダイオードD1とが熱結合しており、両者の温度が同一である場合の特性を例示している(図4を参照して上述した形態)。さらに、図8において破線で示す曲線(直線)は、スイッチング素子3の温度を推定して過電流判定部の判定しきい値(コンパレータ21の基準電圧ref)を補償した場合の特性(例えば図10に示す形態)を示している。推定したスイッチング素子3の温度に応じてコンパレータ21の基準電圧refを設定することができると、温度特性による影響をほぼ無くすことができる。
尚、上記においては、スイッチング素子3と保護ダイオードD1とが熱結合し、両者の温度が同一と見なせる場合に、スイッチング素子3の素子温度Tj_MOSを推定する形態について説明した。しかし、両者の温度が同一と見なせなくても、スイッチング素子3の温度及び保護ダイオードD1の温度の対応関係が規定されていれば、スイッチング素子3の素子温度Tj_MOSを推定することができる。また、スイッチング素子3と保護ダイオードD1との温度が同一と見なせなくても、インバータ制御装置1は、スイッチング素子3の素子温度Tj_MOSを推定することができれば、推定したスイッチング素子3の温度に応じてコンパレータ21の基準電圧refを設定することができる。
図11の断面図は、パワーモジュール30の構成例を模式的に示しており、構成要素の境界部分における温度(T1〜T6)を示している。また、図12は、パワーモジュール30上のスイッチング素子3の模式的な熱回路図を示している。スイッチング素子3には損失が発生するため、MOSFETチップ37の表面から実装用ランド33までの各境界における温度は異なる。しかし、保護ダイオードD1には損失がないため、ダイオードチップ38の表面から実装用ランド33までの各境界における温度は全て同じ温度と見なすことができる。即ち、ダイオードチップ38の表面温度T6、ダイオードチップ38と実装用のハンダ層36との境界の温度T5、ハンダ層36と実装用ランド33との境界の温度T4は、全て“Tj_DI”と見なすことができる。
また、実装用ランド33が銅のように熱抵抗の小さい金属であり、スイッチング素子3(MOSFETチップ37)と保護ダイオードD1(ダイオードチップ38)とが近接して実装されているような場合には、MOSFETチップ37を実装するハンダ層36と実装用ランド33との境界の温度T3も“Tj_DI”と見なすことができる。上述したように、スイッチング素子3には損失が発生するため、MOSFETチップ37の表面から実装用ランド33までの各境界における温度は異なる。MOSFETチップ37と実装用のハンダ層36との境界の温度T2は“Tj_SOL”であり、MOSFETチップ37の表面温度T1は“Tj_MOS”である。
ここで、MOSFETチップ37の熱回路は、MOSFETチップ37の熱抵抗(MOSFETチップ37の表面からハンダ層36との境界までの熱抵抗)をθ1[℃/W]、ハンダ層36の熱抵抗をθ2[℃/W]、MOSFETチップ37の損失をPd[W]として、図12のように示され、下記式(7)の関係式が成り立つ。
ここで、インバータ制御装置1がインバータ回路10を同期整流動作させており、スイッチング素子3(MOSFET)のスイッチング速度が素子温度“Tj_MOS”に依存しないとすれば、損失Pdは簡易的に以下の式(8)で表現することができる。尚、式(8)において、電流センサ14により検出される電流(回転電機80のステータコイル8を流れる電流)の実効値をIrms[A]、直流リンク電圧VdcをVdc[V]、スイッチング周波数をfsw[Hz]、スイッチング速度から設計的に定まる定数をαとする。スイッチング制御信号SWはインバータ制御装置1が生成しているので、スイッチング周波数fswは、インバータ制御装置1が既知のパラメータである。
スイッチング素子3(MOSFET)の損失には、定常損失とスイッチング損失とがある。式(8)の右辺第1項は定常損失を示し、式(8)の右辺第2項はスイッチング損失を示している。
式(1)、式(8)より、下記式(9)が導かれ、式(5)、式(7)より、下記式(10)が導かれる。
上記式(9)、式(10)より、下記式(11)が導かれる。
上述したように、θ1、θ2、αは設計的に定まる定数である。従って、電流実効値Irms、直流リンク電圧Vdc、スイッチング周波数fswが判ればスイッチング素子3の素子温度Tj_MOSを推定することができる。
尚、上記においては、図4や図11を参照して、実装用ランド33を熱伝導部材とする形態を例示したが、図13に例示するように、MOSFETチップ37の表面とダイオードチップ38の表面とを熱伝導部材51でつないでもよい。この場合は、DBC基板39よりも熱伝導率が低い材質の基板59にパワーモジュール30が実装されてもよい。また、実装用のランド53も銅よりも熱伝導率の低い材質によって形成されていてもよい。
〔実施形態の概要〕
以下、上記において説明したインバータ装置(100)の概要について簡単に説明する。
以下、上記において説明したインバータ装置(100)の概要について簡単に説明する。
直流電源(11)に接続されて直流と交流との間で電力を変換するインバータ回路(10)を有するインバータ装置(100)は、1つの態様として、
前記インバータ回路(10)を構成する複数のスイッチング素子(3)のそれぞれに対応する駆動回路(2)と電圧検出回路(20)とを備え、
前記駆動回路(2)は、前記スイッチング素子(3)を制御するスイッチング制御信号(SW)の電力を増幅して前記スイッチング素子(3)の制御端子(G)へ伝達するように構成され、
前記電圧検出回路(20)は、前記スイッチング素子(3)の正極側端子(D)にカソード端子が接続されるダイオード(D1)を介して当該スイッチング素子(3)の前記正極側端子(D)と負極側端子(S)との間に接続され、当該スイッチング素子(3)の前記端子間電圧を検出するように構成され、
前記ダイオード(D1)のアノード端子と前記電圧検出回路(20)とが接続される第1ノード(n1)は、対応する前記駆動回路(2)の正極(VD)に接続され、
前記第1ノード(n1)とは異なる側の前記電圧検出回路(20)の端子である第2ノード(n2)は、対応する前記駆動回路(2)の負極(VG)に接続され、
前記スイッチング素子(3)と前記ダイオード(D1)とが同じ温度となるように熱結合されて実装されている。
前記インバータ回路(10)を構成する複数のスイッチング素子(3)のそれぞれに対応する駆動回路(2)と電圧検出回路(20)とを備え、
前記駆動回路(2)は、前記スイッチング素子(3)を制御するスイッチング制御信号(SW)の電力を増幅して前記スイッチング素子(3)の制御端子(G)へ伝達するように構成され、
前記電圧検出回路(20)は、前記スイッチング素子(3)の正極側端子(D)にカソード端子が接続されるダイオード(D1)を介して当該スイッチング素子(3)の前記正極側端子(D)と負極側端子(S)との間に接続され、当該スイッチング素子(3)の前記端子間電圧を検出するように構成され、
前記ダイオード(D1)のアノード端子と前記電圧検出回路(20)とが接続される第1ノード(n1)は、対応する前記駆動回路(2)の正極(VD)に接続され、
前記第1ノード(n1)とは異なる側の前記電圧検出回路(20)の端子である第2ノード(n2)は、対応する前記駆動回路(2)の負極(VG)に接続され、
前記スイッチング素子(3)と前記ダイオード(D1)とが同じ温度となるように熱結合されて実装されている。
例えば、スイッチング素子(3)の一種であるMOSFETのオン抵抗は、正の温度係数を持つ温度特性を有し、ダイオード(D1)の順方向電圧は、負の係数を持つ温度特性を有する。上記のように、スイッチング素子(3)とダイオード(D1)とが同じ温度となると、両者の温度特性が相殺されて、過電流検出における温度変化に対する影響が抑制される。即ち、本構成によれば、スイッチング素子(3)の端子間電圧に基づいてスイッチング素子(3)の状態検出を行う場合に、スイッチング素子(3)の温度変動による影響を抑制して適切にスイッチング素子(3)の状態検出を行うことができる。
1つの態様として、前記スイッチング素子(3)と前記ダイオード(D1)とが熱伝導部材(3,51)で接続されていると好適である。
スイッチング素子(3)とダイオード(D1)とが熱伝導部材(3,51)で接続されていることによって適切にスイッチング素子(3)とダイオード(D1)とが同じ温度となるように熱結合することができる。
また、1つの態様として、前記スイッチング素子(3)と前記ダイオード(D1)とが同じ金属基板(39)上に近接して実装されていると好適である。
金属基板(39)は熱伝導率が高い。このため、スイッチング素子(3)とダイオード(D1)とを同じ金属基板(39)上に実装することで、簡単な構成で適切にスイッチング素子(3)とダイオード(D1)とが同じ温度となるように熱結合することができる。
また、1つの態様として、インバータ装置(100)は、前記スイッチング制御信号(SW)を生成するインバータ制御装置(1)を備え、前記インバータ制御装置(1)は、前記スイッチング素子(3)の温度特性と、前記ダイオード(D1)の温度特性と、前記端子間電圧と、前記スイッチング素子(3)を流れる電流(ICS)とに基づいて、当該スイッチング素子(3)の温度(Tj_MOS)を推定すると好適である。
スイッチング素子(3)とダイオード(D1)とが同じ温度となるように熱結合されているため、スイッチング素子(3)の温度(Tj_MOS)と、ダイオード(D1)の温度(Tj_DI)とを同一と見なすことができる。その結果、特性を示す関係式の変数を減じて、素子温度に関する変数を、スイッチング素子(3)の温度(Tj_MOS)に統一することができる。これにより、簡単な演算によってスイッチング素子(3)の温度(Tj_MOS)を推定することができる。
また、1つの態様として、前記駆動回路(2)は、前端子間電圧に基づいて前記スイッチング素子(3)に過電流が流れているか否かを判定する過電流判定部(21)を備え、前記インバータ制御装置(1)は、推定した前記スイッチング素子(3)の温度に応じて前記過電流判定部(21)の判定しきい値(ref)を設定すると好適である。
上述したように、スイッチング素子(3)とダイオード(D1)とが同じ温度となると、両者の温度特性が相殺されて、過電流検出における温度変化に対する影響が抑制される。さらに、スイッチング素子(3)の温度を推定することによって、過電流検出における判定しきい値(ref)を温度変化に応じた値に追従させることができる。これにより、過電流検出における温度変化に対する影響をさらに抑制することができる。
1 インバータ制御装置
2 駆動回路
3 スイッチング素子
10 インバータ回路
11 直流電源
20 電圧検出回路
21 コンパレータ(過電流判定部)
100 インバータ装置
D ドレイン端子(正極側端子)
D1 保護ダイオード(ダイオード)
G ゲート端子(制御端子)
ICS 素子電流(スイッチング素子を流れる電流)
N 負極
P 正極
R1 第1分圧抵抗器
R2 第2分圧抵抗器
S ソース端子(負極側端子)
SW スイッチング制御信号
Tj_DI 保護ダイオードの素子温度(ダイオードの温度)
Tj_MOS スイッチング素子の素子温度(スイッチング素子の温度)
VD 駆動電源電圧(駆動回路の正極)
VG 駆動電源グラウンド(駆動回路の負極)
n1 第1ノード
n2 第2ノード
ref 基準電圧(判定しきい値)
2 駆動回路
3 スイッチング素子
10 インバータ回路
11 直流電源
20 電圧検出回路
21 コンパレータ(過電流判定部)
100 インバータ装置
D ドレイン端子(正極側端子)
D1 保護ダイオード(ダイオード)
G ゲート端子(制御端子)
ICS 素子電流(スイッチング素子を流れる電流)
N 負極
P 正極
R1 第1分圧抵抗器
R2 第2分圧抵抗器
S ソース端子(負極側端子)
SW スイッチング制御信号
Tj_DI 保護ダイオードの素子温度(ダイオードの温度)
Tj_MOS スイッチング素子の素子温度(スイッチング素子の温度)
VD 駆動電源電圧(駆動回路の正極)
VG 駆動電源グラウンド(駆動回路の負極)
n1 第1ノード
n2 第2ノード
ref 基準電圧(判定しきい値)
Claims (5)
- 直流電源に接続されて直流と交流との間で電力を変換するインバータ回路を有するインバータ装置であって、
前記インバータ回路を構成する複数のスイッチング素子のそれぞれに対応する駆動回路と電圧検出回路とを備え、
前記駆動回路は、前記スイッチング素子を制御するスイッチング制御信号の電力を増幅して前記スイッチング素子の制御端子へ伝達するように構成され、
前記電圧検出回路は、前記スイッチング素子の正極側端子にカソード端子が接続されるダイオードを介して当該スイッチング素子の前記正極側端子と負極側端子との間に接続され、当該スイッチング素子の前記端子間電圧を検出するように構成され、
前記ダイオードのアノード端子と前記電圧検出回路とが接続される第1ノードは、対応する前記駆動回路の正極に接続され、
前記第1ノードとは異なる側の前記電圧検出回路の端子である第2ノードは、対応する前記駆動回路の負極に接続され、
前記スイッチング素子と前記ダイオードとが同じ温度となるように熱結合されて実装されているインバータ装置。 - 前記スイッチング素子と前記ダイオードとが熱伝導部材で接続されている請求項1に記載のインバータ装置。
- 前記スイッチング素子と前記ダイオードとが同じ金属基板上に近接して実装されている請求項1又は2に記載のインバータ装置。
- 前記スイッチング制御信号を生成するインバータ制御装置を備え、前記インバータ制御装置は、前記スイッチング素子の温度特性と、前記ダイオードの温度特性と、前記端子間電圧と、前記スイッチング素子を流れる電流とに基づいて、当該スイッチング素子の温度を推定する請求項1から3の何れか一項に記載のインバータ装置。
- 前記駆動回路は、前記端子間電圧に基づいて前記スイッチング素子に過電流が流れているか否かを判定する過電流判定部を備え、
前記インバータ制御装置は、推定した前記スイッチング素子の温度に応じて前記過電流判定部の判定しきい値を設定する、請求項4に記載のインバータ装置。
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Cited By (1)
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JP2020058192A (ja) * | 2018-10-04 | 2020-04-09 | 東芝三菱電機産業システム株式会社 | 電力変換装置 |
-
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