JP2018057074A - 電機子用インシュレータ - Google Patents

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Abstract

【課題】電機子での絶縁性を高める電機子用インシュレータを提供することを目的とする。【解決手段】インシュレータ3は、多相のコイルが巻回される巻回部31の複数と、軸J0を中心とする径方向Rにおいて巻回部31よりも外側に設けられ、電機子巻線を相毎に、径方向Rにおける異なる位置で、軸J0に対する周方向Kに導く案内部32u,32v,32wとを備える。【選択図】図7

Description

この発明は、電機子においてコアと共に電機子巻線が巻回される、電機子用のインシュレータに関する。
省エネルギー化の観点から、負荷への電力供給にインバータが採用される場合が増加している。インバータで負荷の駆動を行う場合、矩形波を呈する電圧が負荷に印加される。負荷が誘導性の場合、かかる電圧を用いた負荷の駆動は、後述する原因により急峻なサージ電圧の発生を招来し、正弦波を呈する電圧を用いて駆動する場合と比べ、負荷の内部で高電圧が発生する。
かかる高電圧を考慮すると、負荷の内部での絶縁性を高めることが望ましい。例えば誘導性の負荷としてモータを例に採ると、電機子巻線間で高電圧が発生するので、モータの巻線同士、あるいは電機子巻線と他部との間の絶縁性を高めることが望まれる。モータの絶縁特性を効果的に向上させるためには、サージ電圧の発生原因とその抑制技術の開発とともに、モータ各部の絶縁特性の把握及びその特性改善が望まれる。
非特許文献1で例示されるように、放電を防ぐべき場所の絶縁は、同相のコイル同士での絶縁(以下「同相内絶縁」)、相が異なるコイル同士での絶縁(以下「相間絶縁」)、コイルとコア(あるいはケース)との間での絶縁(以下「対地絶縁」)に分類できる。
相間絶縁及び対地絶縁のいずれに要求される耐圧も、同相内絶縁に要求される耐圧よりも高い。しかし相間絶縁、対地絶縁には絶縁紙が採用され(例えばコイルに採用される導線のエナメル被覆が38μmであるのに対して、絶縁紙の厚さは0.5mm程度に選定される)、高い耐圧が実現される。よってコイルに印加される電圧が上昇する際に最初に放電する場所は同相のコイル同士の間である。
そして同相のコイルについて、最も電圧が高くなるのはそのコイルの入力側とコイルの出力側との間である。このため、コイルの形成に用いられる電機子巻線は、コイルの入力側と出力側とでは近接しないことが望ましい。
特許文献1では、集中巻コイルの各相の電機子巻線の入力側の1番目のコイルの巻始めの第1ターンからの延出部の根本側に絶縁チューブを装着する技術が開示される。これにより、耐サージ性が付与された被覆導線を用いることなく、耐サージ性の向上が企図される。
特許文献2では、インシュレータの構造により、コイルの巻始めと巻終わりのエナメル線が近接することを防ぐ技術が開示される。これにより、放電開始電圧が低下する事を防いでいる。
国際公開第2014/188588号 特許第5866081号公報 国際公開第2009/119320号
脇本、「インバータ駆動モータにおける部分放電メカニズムと絶縁性能向上に関する研究」、名古屋大学工学研究科博士論文、名古屋大学附属図書館、平成28年3月25日 高橋、脇本、香田、「異物付着による平角エナメル線のPDIV低下メカニズム解析」、平成23年電気学会全国大会論文集、電気学会、平成23年3月5日、第2巻、P.45 武藤、外三名、「巻線の部分放電現象に関する研究」、古河電工時報、古河電気工業株式会社、平成26年2月、第133号、P.11−17 小川、白土、「絶縁材料表面の汚染による耐トラッキング性」、日立評論、株式会社日立製作所、1961年11月号、P.67−72
特許文献1に開示された技術を用いれば、絶縁チューブを別途に取り付ける必要があり、コスト及び工数の増大を招く。
特許文献2に開示された技術では、同じコイル内の放電開始電圧の低下を防ぐことには有効である。しかし、モータでは一つの相のコイルは複数のコイルから構成されることが多い。例えば三相モータにおいて一つの相のコイルが二つのコイルの直列接続で構成される場合、三つの異なる相に対応するコイル同士を中性点で接続する配線の他に、これらの二つのコイルを接続する、いわゆる渡り線が必要である。また一つの相のコイルが三つのコイルの並列接続で構成される場合、中性点で接続する配線は9個のコイル同士を接続する必要がある。また一つの相あたりに、3個のコイルをモータの入力端に接続する入力線が必要となる。
例えば特許文献3では、渡り線がインシュレータ壁面に沿って配線される場合が例示される。特許文献3のモータの用途は圧縮機であり、使用環境は密閉空間である。これに対して大気中で使用する開放型筐体のモータでは、外部からの異物混入や汚染物質により部分放電開始電圧が低下する可能性がある。
例えば、非特許文献2には、金属粉(Fe)が挿入された場合の電界解析結果から、異物により空間の電圧強度が強められ、放電開始電圧が低下することが示される。
金属粉以外でもNa,K,Cl等により、部分放電開始電圧(PDIV)が低下することも知られている。例えば非特許文献3は、これらの異物によって汚染されたエナメル線ツイストペアが、汚染されていないツイストペアに比べて、高湿度環境で大幅にPDIVが低下することを報告している。
このような汚染によって絶縁特性が劣化することは、かなり以前から知られている。絶縁物に汚染物が堆積し、塵埃(例えばホコリ)がたまり、湿気によって微弱電流が流れるとシンチレーション(微小発光放電)が発生し、絶縁材が炭化するトラッキング現象が発生する。トラッキング現象は、短絡(いわゆる「ショート」)を招来する。例えば非特許文献4は、電極間距離が広い場合でも、カーボン等で汚染されるとトラッキングが発生することを紹介する。一度トラッキングが発生すると部分放電と同様に不可逆的に絶縁不良が進行する。
汚染に対する対策としてはエナメル線を樹脂モールドする方法や、ワニスを塗布する対策がある。しかし樹脂モールドは放熱性能の低下やコストの増大等の欠点がある。またワニスは場合によってはエナメル被覆の損傷を引き起こすことがあり、その塗布条件を管理することが重要である。
本発明は電機子用インシュレータの新たな構造を提案し、以て電機子での絶縁性を高めることを目的としている。
この発明にかかる電機子用インシュレータ(3)は、電機子コア(2)を備える電機子(100)において、前記電機子の軸(J0)に平行な方向たる軸方向(J)において前記電機子コアに隣接し、前記電機子コアと共に電機子巻線(5)が巻回される絶縁体である。
そしてその第1の態様は、前記電機子巻線(5,50,51)で形成される、多相のコイル(U1,U2,U3,V1,V2,V3,W1,W2,W3)が巻回される巻回部(31)の複数と、前記軸を中心とする径方向(R)において前記巻回部よりも外側に設けられ、前記電機子巻線を相毎に、前記径方向における異なる位置で、前記軸に対する周方向に導く第1案内部(32u,32v,32w)とを備える。
この発明にかかる電機子用インシュレータの第2の態様は、その第1の態様のであって、前記軸方向(J)に垂直で、前記径方向(R)において前記巻回部(31)よりも外側に設けられる環状体(33)と、前記第1案内部の少なくとも一つ(32u,32v)を前記環状体から前記軸方向の一方に支持する支持体(34u,34v)とを更に備える。
この発明にかかる電機子用インシュレータの第3の態様は、その第2の態様であって、前記巻回部(31)に対して前記径方向(R)において外側かつ前記周方向(K)にずれて設けられ、前記電機子巻線を前記巻回部と前記第1案内部との間で前記軸方向において前記環状体(33)と共に挟む挟み部(35)を更に備える。前記挟み部は前記軸方向における前記環状体の側に第1端(351)を有する。前記第1端と、前記環状体に最も近い前記第1案内部(32u)の前記電機子巻線と接触する部位(32u1)との間が、前記軸方向において所定距離以上離れる。
この発明にかかる電機子用インシュレータの第4の態様は、その第2の態様であって、前記第1案内部(32u,32v,32w)は、前記相毎に前記軸方向(J)において異なる位置に設けられる。
この発明にかかる電機子用インシュレータの第5の態様は、その第4の態様であって、前記軸(J0)に最も近くに位置する前記第1案内部たる最内周第1案内部(32w)を前記径方向において支持する支持面(36)を更に備える。前記最内周第1案内部以外の前記第1案内部(32u,32v)が前記支持体(34u,34v)で支持される。
この発明にかかる電機子用インシュレータの第6の態様は、その第3の態様であって、前記挟み部(35)よりも前記径方向(R)において外側に設けられ、前記周方向(K)の一方側に端(372)を有する位置決め部(37)を更に備える。前記挟み部(35)はその前記周方向(K)の他方側に第2端(352)を有する。前記第2端と前記位置決め部の前記端との間の前記周方向の距離が所定距離以下であるか、もしくは前記第2端が前記位置決め部の前記端に対して前記周方向の前記他方側に位置する。
この発明にかかる電機子用インシュレータの第7の態様は、その第1乃至第6の態様のいずれかであって、前記軸(J0)に対していずれの前記第1案内部(32u,32v,32w)よりも外側に設けられ、中性点として機能する前記電機子巻線(50)を前記周方向(K)に導く第2案内部(38)を更に備える。
この発明にかかる電機子用インシュレータの第1の態様において、ある巻回部において巻回されるコイルの相は、当該巻回部に隣接する他の巻回部において巻回されるコイルの相と異なる場合がある。しかも、同じ相についてのコイル同士の接続には、電機子巻線を周方向において敷設する必要がある。そして当該第1の態様によれば、電機子巻線のうち周方向に敷設された部位において、異なる相同士の間での絶縁距離を得やすい。
この発明にかかる電機子用インシュレータの第2の態様によれば、支持体で支持された第1案内部で周方向に導かれる電機子巻線は、当該電機子巻線とは相が異なる他の電機子巻線との間での沿面距離が得やすい。
この発明にかかる電機子用インシュレータの第3の態様によれば、電機子巻線のうち周方向に敷設された部位と、巻回部から続く近傍での電機子巻線との間の絶縁のための距離を得やすい。
この発明にかかる電機子用インシュレータの第4の態様によれば、電機子巻線のうち周方向に敷設された部位において、異なる相同士の間での絶縁距離を得やすい。
この発明にかかる電機子用インシュレータの第5の態様によれば、径方向の空間を有効に活用しやすい。
この発明にかかる電機子用インシュレータの第6の態様によれば、挟み部における電機子巻線が径方向に沿って直線状に、あるいは鋭角に屈曲して周方向において位置決めされる。よって挟み部よりも内側において、一の巻回部に巻回された電機子巻線と隣接する巻回部に巻回された電機子巻線との間の絶縁距離を稼ぐ。
この発明にかかる電機子用インシュレータの第7の態様によれば、中性点端子として機能する電機子巻線の径方向の位置が、それ以外の電機子巻線と干渉しない。
本実施の形態にかかるインシュレータを用いた電機子の構成を示す斜視図である。 図1の位置II−IIにおける、軸に垂直な断面を示す断面図である。 本実施の形態における他のインシュレータの形状を示す斜視図である。 他のインシュレータ側から軸に沿って見た、電機子の平面図である。 本実施の形態にかかるインシュレータの表側の平面図である。 本実施の形態にかかるインシュレータの裏側の平面図である。 本実施の形態にかかるインシュレータの表側を示す斜視図である。 本実施の形態にかかるインシュレータの表側の一部を拡大して示す斜視図である。 本実施の形態にかかるインシュレータの表側の一部を拡大して示す斜視図である。 図9の位置X−Xにおける、周方向に垂直な断面を示す断面図である。 挟み部と案内部との位置関係を示す模式図である。 複数のコイルが、相毎に直列に接続される場合の電気的構成を示す回路図である。 軸方向に沿って、本実施の形態にかかるインシュレータの表側から見た電機子の一部を示す平面図である。 径方向に沿って見た、本実施の形態にかかるインシュレータの一部を示す側面図である。 本実施の形態にかかるインシュレータの表側から見た電機子の一部を示す斜視図である。 軸方向に沿って見た、巻線出口近傍を拡大して示す平面図である。 複数のコイルが、相毎に並列に接続される場合の電気的構成を示す回路図である。 軸方向に沿って、本実施の形態にかかるインシュレータの表側から見た電機子の一部を示す平面図である。 径方向に沿って見た、本実施の形態にかかるインシュレータの一部を示す側面図である。 本実施の形態にかかるインシュレータの表側から見た電機子の一部を示す斜視図である。
<電機子の構成>
図1は本実施の形態にかかるインシュレータ3を用いた電機子100の構成を示す斜視図である。図1には、電機子100と共に回転電機を構成する不図示の界磁子の回転中心の軸J0をも併記した。軸J0は電機子100の中心軸であると理解することもできる。
電機子100は絶縁体たる電機子用のインシュレータ1,3と、磁性コアたる電機子コア2と、電機子巻線とを備える。但し図の煩雑を避けるため、図1において電機子巻線は省略している。電機子コア2は、軸J0においてインシュレータ1,3に挟まれる。
図2は、図1の位置II−IIにおける、軸J0に垂直な断面を示す断面図である。位置II−IIではインシュレータ1,3が存在しないので、当該断面図にはこれらは現れない。図2において、電機子コア2と、電機子巻線5の一部とが示されている。
電機子コア2は多相のコイルが巻回される巻回部21の複数と、巻回部21の各々に対して軸J0側(以下「内周側」とも称す)に設けられる磁極部20と、巻回部21の複数を軸J0とは反対側(以下「外周側」とも称す)で連結する連結部23とを有する。複数の相(例えば三相)の各々において複数設けられるコイルは、電機子巻線5によって形成される。当該コイルは巻回部21のそれぞれに巻回される。但し、複数の巻回部21に一つのコイルが巻回されてもよいし(例えば分布巻)、一つの巻回部21に一つのコイルが巻回されてもよい(例えば集中巻)。
本実施の形態では、電機子100は、U相、V相、W相の各相について、3つのコイルが直列もしくは並列接続される態様を用いて説明される。よって巻回部21は9個設けられる場合が例示される。
図2では、一つの巻回部21に対して電機子巻線5が集中巻で巻回されて形成されるコイルのみが示され、他の巻回部21に巻回された部分は省略されている。また、電機子巻線5は、巻回部21に巻き付いてコイルを形成する部分の外郭近辺のみが示されている、これによりコイル部分は見かけ上は中空状態となっているが、実際には中空に示された領域においても軸J0に平行に電機子巻線5が延在する。
図3はインシュレータ1の形状を示す斜視図である。図3には軸J0をも併記した。インシュレータ1は、複数の巻回部11と、環状体13と、巻回部11毎に設けられた巻線押さえ部10,16とを有する。巻線押さえ部10、巻回部11は軸J0に沿って、それぞれ磁極部20、巻回部21を覆う。また、環状体13は軸J0に沿って連結部23の内周側の一部を覆う。巻線押さえ部16は巻回部11の外周側に設けられる。
図4はインシュレータ1側から軸J0に沿って見た、電機子100の平面図である。但し図面の煩雑を避けるため、図4において電機子巻線5は、図2で現れた部分のみを併記するに留めた。
図5は、軸J0に沿って電機子コア2とは反対側から見たインシュレータ3のみの平面図である。図6は、軸J0に沿って電機子コア2が設けられる側から見たインシュレータ3のみの平面図である。便宜的に、インシュレータ3の、電機子コア2とは反対側を表側と称する。インシュレータ3の、電機子コア2が設けられる側を裏側と称する。
図7はインシュレータ3の表側を示す斜視図であり、図8は図7の一部を拡大して示す斜視図である。図7及び図8において、軸J0に平行な軸方向J、軸J0に対する周方向K、軸J0を中心とする径方向Rを併記した。
インシュレータ3は、複数の巻回部31と、環状体33と、巻回部31毎に対応して設けられた巻線押さえ部30,36,39とを有する。巻線押さえ部30、巻回部31は軸方向Jにおいて、それぞれ磁極部20、巻回部21を覆う。また、環状体33は軸方向Jにおいて、連結部23の内周側の一部を覆う。巻線押さえ部36,39は、巻回部31の外周側に設けられる。
巻回部21は軸方向Jにおいて、巻回部11,31に挟まれる。よってインシュレータ3は、電機子コア2と共に電機子巻線5が巻回される絶縁体であると言える。
巻線押さえ部10は巻線押さえ部30と、巻線押さえ部16は巻線押さえ部36,39と、軸方向Jにおいてそれぞれ電機子コア2とは反対側に突出する。電機子巻線5が巻回部11,21,31に巻回されて形成するコイルは、内周側へ崩れることが巻線押さえ部10,30によって、外周側へ崩れることが巻線押さえ部16,36,39によって、それぞれ防止される。
<インシュレータ3における電機子巻線5の周回>
インシュレータ1における巻線押さえ部16とは異なり、インシュレータ3における巻線押さえ部36,39は、それらが同一の巻回部31に対応して設けられているものであっても周方向Kにおいて分離している。もちろん、異なる巻回部31に対応する巻線押さえ部36,39同士の間も周方向Kにおいて分離している。
かかる分離は、電機子巻線5を、巻線押さえ部36,39に対して外周側において敷設する観点で望ましい。通常、電機子巻線を電機子に設ける際には、電機子巻線を排出するノズルが移動して、電機子巻線が敷設されるからである。よって、一つの巻回部31について対となって設けられる巻線押さえ部36,39同士が分離される距離は、電機子巻線5を排出するノズル(不図示)の外径よりも大きいことが望ましい。この分離により、巻回部31の周方向Kの中央近傍において、巻線押さえ部36,39と環状体33とで囲まれた巻線入口42が形成される。
電機子巻線5は、巻線入口42を通過してからその近傍の巻回部31に接触して巻回され、コイルを形成する。電機子巻線5の巻回は、その当初においては巻回部31に接触して行われる。その後、電機子巻線5は、巻回済みの電機子巻線5を介して巻回部11,21,31に巻回され、巻回部31との距離を軸方向J及び周方向Kにおいて拡げつつ巻回される。
巻線押さえ部36の外周側には、案内部32wが設けられる。また環状体33には案内部32u,32vが設けられる。このように案内部32u,32v,32wのいずれもが、巻回部31よりも径方向Rにおける外側(外周側)に設けられる。
案内部32u,32v,32wは、電機子巻線5を相毎に周方向Kに導く。例えば、案内部32wは三相(U相、V相、W相)の電機子巻線5のうち、W相のコイル同士を接続させる部分、あるいは他部(具体的には電流を供給する端子や、中性点となる端子:いずれも後述する)にW相のコイルの一端を接続させる部分を、周方向Kに導く。案内部32u,32vについても同様である。
本実施の形態では、案内部32u,32v,32wによる導きを含め、電機子巻線5が周方向Kに敷設される状態を「周回」と称し、電機子巻線5の巻回部11,21,31の周囲においてコイルを形成する「巻回」とは区別する。電機子巻線5の周回は、原則として巻線押さえ部36,39の外周側で行われる。
ここでは案内部32u,32v,32wは、いずれも軸方向Jにおいて電機子コア2とは反対側に開口する凹部を呈する。それぞれの凹部はその電機子コア2側に面32u1,32v1,32w1を有し、これらが電機子巻線5を支持する部位として機能する。
案内部32u,32v,32wは、互いに径方向Rにおいて異なる位置で、周方向Kに電機子巻線5を導く。具体的には面32u1,32v1,32w1は径方向Rにおける位置が互いに異なる。案内部32wは最内周に設けられるので、最内周案内部32wとも称する。ここでは面32u1は面32v1に対して、面32v1は面32w1に対して、それぞれ外周側にある場合(径方向Rにおいて外側に配置される場合)が例示されている。
ある巻回部11,21,31において巻回されるコイルの相は、当該巻回部11,21,31に隣接する他の巻回部11,21,31において巻回されるコイルの相と異なる場合がある。しかも、同じ相についてのコイル同士の接続を実現するには、電機子巻線5が周回する必要がある。よって案内部32u,32v,32wは、それぞれU相、V相、W相のコイルに続く電機子巻線5を、互いに径方向Rにおける異なる位置において周方向Kに導くことで、周回する電機子巻線5において、相間絶縁のための絶縁距離を得やすい。
本実施の形態では、最内周案内部32wが巻線押さえ部36によって支持される。もし案内部32u,32v,32wのいずれもが、径方向Rについて同じ位置において電機子巻線5を周方向Kに導くのであれば、案内部32u,32vをも巻線押さえ部36に支持させ、面32u1,32v1,32w1の軸方向J及び周方向Kのいずれかもしくは両方における位置を異ならせることも考えられる。
しかしながら、このように案内部32u,32v,32wのいずれをも巻線押さえ部36に支持させてしまうと、これらの間での沿面放電は巻線押さえ部36の外周側の面のみを介することになる。
そこで面32u1,32v1,32w1の径方向Rにおける位置を互いに異ならせることが、相間絶縁の観点で望ましい。この点をより詳細に説明する。
図9は案内部32u,32v,32wの近傍を円形に抽出して拡大した、インシュレータ3の表側の平面図である。図10は図9の位置X−Xにおける周方向Kに垂直なインシュレータ3の断面を示す断面図である。
案内部32u,32v,32wに、互いに径方向Rにおける異なる位置において電機子巻線5を案内させるためには、これらを支持する機構が必要となる。本実施の形態では、案内部32u,32v,32wのうち軸J0に最も近くに位置する最内周案内部32wを、巻線押さえ部36が支持面となって径方向Rにおいて支持する。最内周案内部32w以外の案内部32u,32vは,それぞれ支持体34u,34vによって、環状体33から軸方向Jにおいて電機子コア2とは反対の方向に支持される。
ここでは面32u1,32v1,32w1がそれぞれ環状体33から軸方向Jに沿って異なる高さL1,L2,L3(L1<L2<L3)において配置されている場合を例示する。このような高さが相違する配置も、案内部32u,32v,32wがそれぞれ周方向Kに導く電機子巻線5同士の間で、相間絶縁のための距離を得る観点で望ましい。
案内部32vを支持体34vで支持すると、案内部32v,32wとの間の沿面放電では、その経路に巻線押さえ部36の外周側の面のみならず、支持体34vも存在する。よって支持体34vを用いて案内部32vを支持することが、沿面距離を増す観点で望ましい。例えば支持体34vと巻線押さえ部36の外周側の面との間の径方向Rにおける距離R0を導入すれば、沿面距離は距離(L1+L3+R0)以上となる。
もちろん、巻線押さえ部36の外周側から更に径方向Rでの外側に延在する支持体を設け、これに案内部32vを支持させることもできる。但しこの場合、当該支持体が径方向Rに沿って延在するので、沿面距離を稼ぐにはインシュレータ3の径方向Rの寸法が大きくなってしまう。これは電機子100の外径を大きくする観点で望ましくない。
これに対し、本実施の形態のように支持体34vが軸方向Jに沿って延在すれば、電機子100の外径を大きくせずに、支持体34vに案内部32vを支持させることができる。これは、軸方向Jにおける電機子100の寸法は、支持体34vが無くても巻線押さえ部36,39の環状体33に対する高さ程度となるからである。よって例えば、環状体33から見た案内部32vの高さを、巻線押さえ部36,39よりも低くすれば、電機子100の寸法は支持体34vの存否に影響されない。支持体34u及び案内部32uに関しても同様である。
最内周案内部32wも案内部32u,32vと同様に支持体を用いて環状体33から軸方向Jにおいて支持することも考えられる。しかしその場合であっても、案内部32u,32w同士の沿面距離や、案内部32v,32w同士の沿面距離は、最内周案内部32wが巻線押さえ部36で支持される場合と殆ど異ならない。
よってインシュレータ3の表側の空間を径方向Rにおいて有効に活用する観点、具体的には環状体33の径方向Rの寸法を拡げずに済む観点から、最内周案内部32wが巻線押さえ部36で支持されることが望ましい。
なお、インシュレータ3の成形の都合上、環状体33には軸方向Jにおいて案内部32u,32v,32wにそれぞれに対向する孔32ub,32vb,32wb(図6参照)が空いている。しかしこれらの孔32ub,32vb,32wbは案内部32u,32v,32wについての上記の奏功に必須でもないし、奏功を阻害するものでもない。
図7及び図8を参照して、巻回部31に対応して設けられる巻線押さえ部39の、周方向Kにおいて当該巻回部31とは反対側には、挟み部35が設けられる。挟み部35は、巻回部31に対して径方向Rにおいて外側かつ周方向Kにずれて設けられていると見ることもできる。
挟み部35は環状体33と共に、当該巻回部31と案内部32u,32v,32wとの間で、電機子巻線5を軸方向Jにおいて挟む。挟み部35と、当該挟み部35に対応する巻回部31とは異なる巻回部31に対応して設けられた巻線押さえ部36と、環状体33とで囲まれて、巻線出口43が形成される。挟み部35に対応する巻回部31に巻回されたコイルに続く電機子巻線5が、巻線出口43を経由して、巻線押さえ部36,39よりも外周側で周回する電機子巻線5に続く。
集中巻でコイルが形成される場合を例に採って、巻線入口42と巻線出口43との間で電機子巻線5が巻回部11,21,31を巻回してコイルを形成する態様を説明する。不図示のノズルによって巻線入口42を経由して、電機子巻線5が巻線押さえ部36,39の外周側から内周側へ敷設される。その後、ノズルの移動によって、電機子巻線5が巻回部11,21,31に巻回されてコイルが形成され、更に巻線出口43を経由して、電機子巻線5が巻線押さえ部36,39の内周側から外周側へ敷設される。
巻線入口42と同様、ノズルの移動の観点から、巻線出口43を囲む巻線押さえ部36,39の間の周方向Kにおける距離は、ノズルの外径よりも大きいことが望ましい。
挟み部35と、面32u1,32v1,32w1のうち環状体33に最も近いもの(ここでは面32u1)との間の望ましい関係について述べる。
図11は径方向Rに対して垂直に見た場合の、挟み部35と案内部32uとの位置関係を示す模式図である。挟み部35は軸方向Jにおいて環状体33側に端351を有する。図11において、電機子巻線50は電機子巻線5のうち案内部32uで周方向Kに導かれて周回する部位を、電機子巻線51は電機子巻線5のうち挟み部35と環状体33との間に挟まれる部位を、それぞれ示す。
まず、端351と環状体33との間の軸方向Jにおける距離d2は、第1の所定距離以上離れる。電機子巻線51の外径の軸方向Jでの寸法φ、ノズルによって電機子巻線5を電機子巻線51として挟み部35と環状体33との間に挟むためのマージンδを導入して、第1の所定距離は和(φ+δ)に選定される。電機子巻線5に断面が円形の導線が用いられる場合には、寸法φは電機子巻線5の外径の直径である。
次に、端351と面32u1との間の軸方向Jにおける距離d3は、第2の所定距離以上離れる。第2の所定距離は、電機子巻線50,51同士の間での空間を介した放電を防止するのに必要な距離pに選定される。
上述の様に距離d3を設定することにより、周回する電機子巻線50と、巻回部11,21,31に巻回された電機子巻線5から続く近傍での電機子巻線51との間の絶縁のための距離は得やすくなる。図10及び図11を参照して、L1=d2+d3の関係がある。つまり高さL1は、和(φ+δ+p)以上に選定されることが望ましい。
案内部32u,32v,32wや挟み部35が招来する上述の効果は、電機子巻線5が形成するコイルが集中巻で形成されるか分布巻で形成されるかに依存しないことは明白である。電機子巻線5はいずれの巻き方でも、周回する部位を有するからである。
<コイルを直列接続する場合の電機子巻線5の案内>
図12は、それぞれ集中巻で巻回部11,21,31に巻回される複数のコイルが、相毎に直列に接続される場合(以下「相内コイル直列接続」と称す)の電気的構成を示す回路図である。コイルU1,U2,U3は互いに直列に接続されてU相のコイルを形成する。コイルV1,V2,V3は互いに直列に接続されてV相のコイルを形成する。コイルW1,W2,W3は互いに直列に接続されてW相のコイルを形成する。
コイルU1の一端は電流入力端子Uinに、コイルV1の一端は電流入力端子Vinに、コイルW1の一端は電流入力端子Winに、それぞれ接続される。コイルU3,V3,W3のそれぞれの一端は、いずれも中性点端子Nに接続される。コイルU2の一端はコイルU1の他端に、コイルU2の他端はコイルU3の他端に、コイルV2の一端はコイルV1の他端に、コイルV2の他端はコイルV3の他端に、コイルW2の一端はコイルW1の他端に、コイルW2の他端はコイルW3の他端に、それぞれ接続される。
例えば電機子100において、コイルU1,V1,W1,U2,V2,W2,U3,V3,W3がこの順に、インシュレータ3の表側から見て反時計回りに周方向Kに沿って環状に配置される。
図13、図14,図15はいずれも、相内コイル直列接続において採用される電機子巻線5の配置を示す。
図13は軸方向Jに沿ってインシュレータ3の表側から見た電機子100の一部を示す平面図である。但し、電機子巻線5については下記の観点で省略されている。まず電機子巻線5はコイルU2に対応する部分のみが示される。電機子巻線5が敷設される状況を見やすくするため、巻回部31に巻回される電機子巻線5が形成するコイルU1のうち、巻回部31よりも電機子コア2から離れる部分(紙面手前側)について省略されている。また、巻線入口42を経由してコイルU1に続く部分(電機子巻線50)及び巻線出口43を経由してコイルU1に続く部分(電機子巻線51)は、コイルU2近傍の部分のみを示し、それ以遠の部位を省略する。これにより巻回部31に巻回される電機子巻線5は図13において断面が示されるが、更に、図2と類似して、コイルU2の外郭近辺のみが示されている。
図14は径方向Rに沿って見たインシュレータ3の一部を示す側面図である。図14では図13で示された電機子巻線50,51も併記している。図15はインシュレータ3の表側から見た電機子100の一部を示す斜視図である。但し電機子巻線5については図13と同様の観点で省略されている。
電機子巻線50は不図示のコイルU1に続き、電機子巻線51は不図示のコイルU3に続く。インシュレータ3の表側から見て反時計回りに見れば、コイルU2からコイルU3の距離の方が、コイルU2からコイルU1への距離よりも短い。インシュレータ3の表側から見て時計回りに見れば、コイルU2からコイルU1の距離の方が、コイルU2からコイルU3への距離よりも短い。よってインシュレータ3の表側から見て、電機子巻線50は巻線入口42を始点として時計回りに、電機子巻線51は巻線出口43を始点として反時計回りに、それぞれ周回する。
電機子巻線50は、コイルU2のうちの最内周の電機子巻線5、つまりコイルU2を形成するための巻回の際の巻き始めの部分に続く。電機子巻線51は、コイルU2のうちの最外周の電機子巻線5、つまりコイルU2を形成するための巻回の際の巻き終わりの部分に続く。よって、上述の様に、電機子巻線50,51が、それぞれ異なる位置に配置される巻線入口42と巻線出口43とを経由して、互いに異なる方向に周回することは、同一のコイルU2での絶縁耐圧を高める観点で望ましい。
なお、図13、図15で示されたコイルU2がコイルU1として読み替えられる場合には、電機子巻線50は不図示の電流入力端子Uin(図12参照)に接続され、電機子巻線51は(読み替えによって不図示となる)コイルU2に続く。図13、図15で示されたコイルU2がコイルU3として読み替えられる場合には、電機子巻線50は(読み替えによって不図示となる)コイルU2に続き、電機子巻線51は不図示の中性点端子N(図12参照)に接続される。
図11を用いて説明された様に、電機子巻線50は案内部32uによって周方向Kへ案内され、電機子巻線51は挟み部35と環状体33との間に挟まれる。但し相内コイル直列接続では、電機子巻線51は、巻線出口43を経由してコイルU2から離れる方向に周回する。よって電機子巻線51が巻線出口43から単に周回する場合には、電機子巻線51は、巻線押さえ部36,39よりも内周側(軸J0に近い側)において、反時計回りで周方向Kで隣接する他のコイル(具体的には不図示のコイルV2(図12参照))へ近づくことになる。
もちろん巻線出口43は、図8に示されるように、挟み部35を有する巻線押さえ部39と、当該挟み部35と周方向Kにおいて対向する巻線押さえ部36とで囲まれる。よって電機子巻線51が巻線出口43から単に周回する場合、隣接するコイルV2への接触は、コイルV2が巻回される巻回部31に対応して設けられる巻線押さえ部36によって回避される。
しかし図12を参照して、コイルU2の最外周の電機子巻線5と、コイルV2の最外周の電機子巻線5との間には、コイルU3,V3の二つのコイルが支える電位差がある。よって相間絶縁の観点から、コイルU2に続く電機子巻線51と、コイルV2の最外周の電機子巻線5との間の距離は大きいことが望ましい。
なるほど、コイルU2,V2の周方向Kにおける寸法を小さくすることは、相間絶縁の観点で望ましい。しかしながらそのような寸法の縮小は、いわゆる占積率を低下させ、ひいては電機子100の性能を低下させてしまう。
上記の観点から、本実施の形態では位置決め部37が設けられる。位置決め部37は、挟み部35よりも径方向Rにおいて外側に設けられる。
図16は、軸方向Jに沿って見た、巻線出口43の近傍を拡大して示す平面図である。位置決め部37は周方向Kの一方(ここではインシュレータ3の表側から見て時計回り方向:図16において左方向)側に端372を有する。挟み部35はその周方向Kの他方(ここではインシュレータ3の表側から見て反時計回り方向:図16において右方向)側に端352を有する(図11も参照)。つまり端352,372は周方向Kにおいて互いに対向する。
電機子巻線51は端372に当接する。かかる当接による電機子巻線51の損傷を防ぐ観点からは、平面視上、端372は曲線を呈することが望ましい。端372の周方向Kにおける位置を後述するように設定することにより、電機子巻線51は端352に当接する。周方向Kにおける電機子巻線5の位置決めをこのように行うことにより、挟み部35における電機子巻線51が直線状または鋭角に屈曲する。よって巻線押さえ部36,39よりも内周側において、電機子巻線51がコイルV2へ近づくことが防止され、コイルU2に続く電機子巻線51と、コイルV2の最外周の電機子巻線5との間の距離を大きくすることができる。
端372の周方向Kにおける位置は、端352,372の間の周方向Kにおける距離d1が第3の所定距離以下となるように設定される。電機子巻線51の外径の周方向Kでの寸法Φ、電機子巻線51を端352,372で挟むためのマージンΔを導入して、第3の所定距離はΦ+Δに選定される。電機子巻線5に断面が円形の導線が用いられる場合には、寸法Φは電機子巻線5の外径の直径である。
マージンΔは、例えば電機子巻線5が可撓性に富むほど小さく設定され、負値を採ることもできる。よって端352が端372に対して周方向Kの他方側に位置してもよい。
このように、位置決め部37を設けることにより、挟み部35における電機子巻線51が径方向Rに沿って直線状に、あるいは鋭角に屈曲して周方向Kにおいて位置決めされる。よって挟み部35よりも内側において、ある巻回部11,21,31に巻回された電機子巻線5と、隣接する巻回部11,21,31に巻回された電機子巻線5との間の絶縁距離を稼ぐ。
なお、電機子巻線50の周回を妨げない観点から、位置決め部37の環状体33を基準とした高さは、案内部32u,32v,32wのうち最も低いもの(上述の説明では案内部32u)の底部よりも低いことが望ましい。
<コイルを並列接続する場合の電機子巻線5の案内>
図17は、それぞれ集中巻で巻回部11,21,31に巻回される複数のコイルが、相毎に並列に接続される場合(以下「相内コイル並列接続」と称す)の電気的構成を示す回路図である。コイルU1,U2,U3は互いに並列に接続されてU相のコイルを形成する。コイルV1,V2,V3は互いに並列に接続されてV相のコイルを形成する。コイルW1,W2,W3は互いに並列に接続されてW相のコイルを形成する。
コイルU1,U2,U3のいずれの一端も電流入力端子Uinに、コイルV1,V2,V3のいずれの一端も電流入力端子Vinに、コイルW1,W2,W3のいずれの一端も電流入力端子Winに、それぞれ接続される。コイルU1,U2,U3,V1,V2,V3,W1,W2,W3のいずれの他端も、中性点端子Nに接続される。
相内コイル並列接続においても、相内コイル直列接続と同様に、例えば電機子100において、コイルU1,V1,W1,U2,V2,W2,U3,V3,W3がこの順に、インシュレータ3の表側から見て反時計回りに周方向Kに沿って環状に配置される。
図18、図19,図20はいずれも、相内コイル並列接続において採用される電機子巻線5の配置を示す。
図18は軸方向Jに沿ってインシュレータ3の表側から見た電機子100の一部を示す平面図である。但し、電機子巻線5については図13、図14、図15と同様の観点で省略されている。図19は径方向Rに沿って見たインシュレータ3の一部を示す側面図である。図19では図18で示された電機子巻線50,51も併記している。図20はインシュレータ3の表側から見た電機子100の一部を示す斜視図である。但し電機子巻線5については図18と同様の観点で省略されている。
相内コイル並列接続においても相内コイル直列接続と同様、電機子巻線50は、コイルU2のうちの最内周の電機子巻線5、つまりコイルU2を形成するための巻回の際の巻き始めの部分に続く。電機子巻線51は、コイルU2のうちの最外周の電機子巻線5、つまりコイルU2を形成するための巻回の際の巻き終わりの部分に続く。よって、上述の様に、電機子巻線50,51は、それぞれ異なる位置に配置される巻線入口42と巻線出口43とを経由して、互いに異なる方向に周回することは、同一のコイルU2での絶縁耐圧を高める観点で望ましい。
電機子巻線50は不図示の電流入力端子Uin(図12参照)に接続され、電機子巻線51は不図示の中性点端子N(図12参照)に接続される。図18、図20で示されたコイルU2がコイルU1,U3のいずれに読み替えられても、電機子巻線50,51の接続関係についての説明は変わらない。図18、図20で示されたコイルU2がコイルV1,V2,V3のいずれに読み替えられても、電機子巻線50の接続先は電流入力端子Vin(図12参照)に読み替えられる。図18、図20で示されたコイルU2がコイルW1,W2,W3のいずれに読み替えられても、電機子巻線50の接続先は電流入力端子Win(図12参照)に読み替えられる。図18、図20で示されたコイルU2がコイルV1,V2,V3,W1,W2,W3のいずれに読み替えられても、電機子巻線51の接続関係についての説明は変わらない。
従って、いずれの巻線出口43を経由する電機子巻線51も、中性点端子Nへ共通に接続される。換言すればかかる電機子巻線51それ自身が中性点端子Nとして機能するとみることができる。
よって相内コイル並列接続では、電機子巻線51を隣接するコイルに向けて周回させる必要がない。よって電機子巻線51は巻線出口43を始点として、当該巻線出口43を囲む巻線押さえ部39に対応するコイル(図18、図20に即して言えばコイルU2)が巻回された巻回部31に向けて周回する。ここではインシュレータ3の表側から見て、電機子巻線51は巻線出口43を始点として時計回りに周回する。
また、コイルU1,U2,U3にそれぞれ続く電機子巻線50は、いずれも電流入力端子Uinに接続される。よってこの観点では電機子巻線50が周回する方向は制限されない。しかし電機子巻線51が、上述の様に周回するので、相内絶縁の観点からは電機子巻線50もインシュレータ3の表側から見て、巻線入口42を始点として時計回りに周回することが望ましい。
本実施の形態では電機子巻線51がそれ以外の電機子巻線5、具体的には電機子巻線50と干渉しないように、案内部38が設けられる。案内部38は中性点端子として機能する電機子巻線50を周方向Kに導く。案内部38は案内部32u,32v,32wよりも外側に設けられる。よって電機子巻線51の径方向Rにおける位置が、電機子巻線50と干渉しない。
つまり案内部32u,32v,32wに加えて案内部38が設けられたインシュレータ3は、相内コイル直列接続のみならず、相内コイル並列接続についても採用することができる。
2 電機子コア
3 インシュレータ
5,50,51 電機子巻線
31 巻回部
32u,32v,32w 案内部
32u1,32v1,32w1 面
33 環状体
34u,34v 支持体
35 挟み部
36 巻線押さえ部
37 位置決め部
38 案内部
100 電機子
351,352,372 端
J 軸方向
J0 軸
K 周方向
R 径方向
R0 距離
U1,U2,U3,V1,V2,V3,W1,W2,W3 コイル

Claims (7)

  1. 電機子コア(2)を備える電機子(100)において、
    前記電機子の軸(J0)に平行な方向たる軸方向(J)において前記電機子コアに隣接し、
    前記電機子コアと共に電機子巻線(5)が巻回される絶縁体であって、
    前記電機子巻線(5,50,51)で形成される、多相のコイル(U1,U2,U3,V1,V2,V3,W1,W2,W3)が巻回される巻回部(31)の複数と、
    前記軸を中心とする径方向(R)において前記巻回部よりも外側に設けられ、前記電機子巻線を相毎に、前記径方向における異なる位置で、前記軸に対する周方向に導く第1案内部(32u,32v,32w)と
    を備える電機子用インシュレータ(3)。
  2. 前記軸方向(J)に垂直で、前記径方向(R)において前記巻回部(31)よりも外側に設けられる環状体(33)と、
    前記第1案内部の少なくとも一つ(32u,32v)を前記環状体から前記軸方向の一方に支持する支持体(34u,34v)と
    を更に備える、請求項1記載の電機子用インシュレータ(3)。
  3. 前記巻回部(31)に対して前記径方向(R)において外側かつ前記周方向(K)にずれて設けられ、前記電機子巻線を前記巻回部と前記第1案内部との間で前記軸方向において前記環状体(33)と共に挟む挟み部(35)
    を更に備え、
    前記挟み部は前記軸方向における前記環状体の側に第1端(351)を有し、
    前記第1端と、前記環状体に最も近い前記第1案内部(32u)の前記電機子巻線と接触する部位(32u1)との間が、前記軸方向において所定距離以上離れる、請求項2記載の電機子用インシュレータ(3)。
  4. 前記第1案内部(32u,32v,32w)は、前記相毎に前記軸方向(J)において異なる位置に設けられる、請求項2記載の電機子用インシュレータ(3)。
  5. 前記軸(J0)に最も近くに位置する前記第1案内部たる最内周第1案内部(32w)を前記径方向において支持する支持面(36)
    を更に備え、
    前記最内周第1案内部以外の前記第1案内部(32u,32v)が前記支持体(34u,34v)で支持される、請求項4記載の電機子用インシュレータ(3)。
  6. 前記挟み部(35)よりも前記径方向(R)において外側に設けられ、前記周方向(K)の一方側に端(372)を有する位置決め部(37)
    を更に備え、
    前記挟み部(35)はその前記周方向(K)の他方側に第2端(352)を有し、
    前記第2端と前記位置決め部の前記端との間の前記周方向の距離が所定距離以下であるか、もしくは前記第2端が前記位置決め部の前記端に対して前記周方向の前記他方側に位置する、請求項3記載の電機子用インシュレータ(3)。
  7. 前記軸(J0)に対していずれの前記第1案内部(32u,32v,32w)よりも外側に設けられ、中性点として機能する前記電機子巻線(50)を前記周方向(K)に導く第2案内部(38)
    を更に備える、請求項1〜6のいずれか一つに記載の電機子用インシュレータ(3)。
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