JP2018055004A - 偏光子 - Google Patents
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図1は、偏光子10の斜視図である。
なお、図1を含め、以下に示す各図は、模式的に示した図であり、各部の大きさ、形状は、理解を容易にするために、適宜誇張して示している。
また、以下の説明では、具体的な数値、形状、材料等を示して説明を行うが、これらは、適宜変更することができる。
偏光子10は、透過を制御する波長帯域で透明な透明材料により形成された透明部材16を備えている。この透明部材16の表面には、凹状溝11が一定のピッチPで繰り返して並べて配置されている。この凹状溝11の延長方向と直交する方向へ繰り返し配置されている凹凸形状によって、透明部材16の表面には、周期構造が設けられている。
なお、このような延伸方向(延伸軸方向)が遅相軸方向である樹脂材料は、正の複屈折性を示す樹脂材料であり、例えばPET(ポリエチレンテレフタラート)樹脂等である。また、COP(シクロオレフィンポリマー)フィルム、TAC(トリアセチルセルロース)フィルム、ポリイミドフィルム、PEN(ポリエチレンナフタレート)が挙げられる。また、延伸方向(延伸軸方向)に直交する方向が遅相軸方向である樹脂材料は、負の複屈折性を示す樹脂材料であり、例えばPS(ポリスチレン)樹脂等である。
このように設定すれば、基材15においては、第1の金属線状部12及び第2の金属線状部13で反射する偏光成分に対して面内方向の屈折率が最も大きい向きであることにより、第1の金属線状部12及び第2の金属線状部13で反射する偏光成分を、最も効率よく反射する向きに基材15が配置されることになる。またこれにより第1の金属線状部12及び第2の金属線状部13で透過する偏光成分に対しては、界面反射が最も小さくなる向きに基材15が配置されることになり、第1の金属線状部12及び第2の金属線状部13を透過する偏光成分を最も効率よく透過する向きに基材15が配置されることになる。
また、上述した基材15の延伸軸の方向と偏光子10の偏光軸の方向との関係は、0度±1度以内、又は、90度±1度以内、の角度を持って配置されていれば、偏光子10を透過した偏光成分に対して、基材15が偏光作用を及ぼすことによる悪影響を無視できるレベルに抑えることができる。なお、上述の0度及び90度に設けた±1度の範囲を超えてしまうと、急激に偏光状態が乱れるので、上記範囲内に納めることが望ましい。
図2は、偏光子10の製造工程を示すフローチャートである。
図3は、偏光子10の製造工程を示す図である。
この製造工程では、ロールに巻き取った長尺透明フィルム材から基材15が提供される。この製造工程は、ロールから基材15を引き出して搬送しながら、凹凸形状作製工程ステップ(以下、単にS)2により、基材15の表面に凹凸形状を作製する。
なおエッチング処理では、第1の金属線状部12の厚みTも減少することになるが、この厚みTの減少に比べて空隙幅Sをより多く広げることができる。しかし、エッチング時間が余りにも長いと、第2の金属線状部13の厚みが薄くなって光学特性が劣化し、特に吸収軸方向の反射率Rsが急激に低下する。一方、余りにもエッチング時間が短いと、透過軸方向の透過率Tpが低下する。また、エッチングの進行は、エッチング液の濃度や液温によっても左右される。したがって、エッチングの条件は、エッチング液の濃度、及び、エッチング液の温度、さらに、エッチング時間に関して、適切な条件を設定して行うとよい。
図4は、ロール版30の製造工程を説明する図である。
ロール版30は、周側面に微細凹凸形状が作製された賦型用金型であり、凹状溝11に対応する凸条である微細凹凸形状が周側面に形成されている。この実施形態において、この凸条は、円周方向に延長するように、凹状溝11の溝幅に対応する幅に形成されている。そして、このロール版30を用いて賦型処理を行い、基材15の長手方向に延長する凹状溝11が作製される。
また、偏光子10の製造工程中の凹凸形状作製工程S2において、上述のロール版30を用いずに、板状版を用いてもよい。
上記説明では、断面矩形形状の凹状溝を作製する場合について述べたが、図5(A)に示すように、対向する壁面が先細りのテーパ面である断面楔形形状に凹状溝11を作製してもよく、また図5(B)により示すように、全体が正弦波形状である凹凸面形状となる断面形状に凹状溝11を作製してもよく、種々の形状を適用することができる。
図6は、数値演算に用いた偏光子10のモデルを示す図である。
図6に示す各寸法パラメータ(P,S,L,T1,T2,U)を複数種類ずつ設定し、シミュレーション解析は、数万通りの組み合せについて行った。このシミュレーション解析結果の中から、良好な偏光特性を得ることができ、かつ、生産上のバラツキを許容できる寸法の組み合せが得られたので、以下に示す。
なお、シミュレーション解析の条件は、以下のようにした。
波長λ=940nm
第1の金属線状部12及び第2の金属線状部13の屈折率n=1.19、消衰係数k=6.86
透明部材16の屈折率n=1.50、消衰係数k=0
この条件下で行ったシミュレーション解析の結果から、凹状溝11の深さDを80nm、100nm、120nm、140nmの4種類と、第1の金属線状部12の幅Uを50nm、60nmの2種類とをそれぞれ組み合わせた場合において、良好な結果が得られていた。これらについて、入射光の透過率Tsと入射光の透過率Tpとが、第1の金属線状部12の厚さT1及び第2の金属線状部13の厚さT2によりどのように変化するのかを、以下に示す。なお、入射光の透過率Tsは、第1の金属線状部12の延長方向が偏光面である赤外光域の入射光の透過率Tsであり、入射光の透過率Tpは、第1の金属線状部12の繰り返し方向が偏光面である赤外光域の入射光の透過率Tpである。
図8は、凹状溝11の深さDが80nm、第1の金属線状部12の幅Uが50nmの場合における入射光の透過率Tp(%)を示すグラフである。
図7及び図8では、等高線状に各透過率を示しており、また、以下に示す各グラフについても同様である。
ここで、例えば、視線検知等のセンサ用途に用いる場合を想定し、必要な偏光特性として、Tsが0.04%以下と、より厳しい要件のTsが0.02%以下とを設定し、さらにTpが90%以上を設定した。
この条件を満たすことができるT1及びT2の範囲を分かりやすく示すために、図9にこれらのラインをまとめて示すグラフを作図した。
図9を含め以下に示す同様な図中にハッチングを設けた領域が、Tsが0.04%以下、かつ、Tpが90%以上の条件を満たすことができるT1及びT2の範囲である。この条件下では、T1は、105nm以上145nm以下であり、T2は、10nm以上50nm以下であれば、Tsが0.04%以下かつTpが90%以上の優れた偏光特性を満たすことができる。すなわち、T1及びT2については、上述した範囲でのばらつきが許容されるということであり、この範囲は、製造マージンとして捉えることができ、十分に大量生産を行えるといえる。以下に示す別条件についても同様に、ハッチングを設けて範囲については、この製造マージンとしての捉え方が可能である。
また、Tsが0.02%以下という、さらに厳しい要件を満たすことも、可能である。その場合には、T1及びT2の製造マージンが狭くなる。
図10は、凹状溝11の深さDが100nm、第1の金属線状部12の幅Uが50nmの場合における入射光の透過率Ts(%)を示すグラフである。
図11は、凹状溝11の深さDが100nm、第1の金属線状部12の幅Uが50nmの場合における入射光の透過率Tp(%)を示すグラフである。
図12は、凹状溝11の深さDが100nm、第1の金属線状部12の幅Uが50nmの場合における入射光の透過率Ts(%)及び入射光の透過率Tp(%)の必要な偏光特性を満たす範囲をまとめて示すグラフである。
これら図10から図12の条件下では、T1は、85nm以上145nm以下であり、T2は、10nm以上100nm以下であれば、Tsが0.04%以下かつTpが90%以上の優れた偏光特性を満たすことができる。
図14は、凹状溝11の深さDが120nm、第1の金属線状部12の幅Uが50nmの場合における入射光の透過率Tp(%)を示すグラフである。
図15は、凹状溝11の深さDが120nm、第1の金属線状部12の幅Uが50nmの場合における入射光の透過率Ts(%)及び入射光の透過率Tp(%)の必要な偏光特性を満たす範囲をまとめて示すグラフである。
これら図13から図15の条件下では、T1は、65nm以上145nm以下であり、T2は、20nm以上120nm以下であれば、Tsが0.04%以下かつTpが90%以上の優れた偏光特性を満たすことができる。
図17は、凹状溝11の深さDが140nm、第1の金属線状部12の幅Uが50nmの場合における入射光の透過率Tp(%)を示すグラフである。
図18は、凹状溝11の深さDが140nm、第1の金属線状部12の幅Uが50nmの場合における入射光の透過率Ts(%)及び入射光の透過率Tp(%)の必要な偏光特性を満たす範囲をまとめて示すグラフである。
これら図16から図18の条件下では、T1は、45nm以上125nm以下であり、T2は、30nm以上140nm以下であれば、Tsが0.04%以下かつTpが90%以上の優れた偏光特性を満たすことができる。
図20は、凹状溝11の深さDが80nm、第1の金属線状部12の幅Uが60nmの場合における入射光の透過率Tp(%)を示すグラフである。
図21は、凹状溝11の深さDが80nm、第1の金属線状部12の幅Uが60nmの場合における入射光の透過率Ts(%)及び入射光の透過率Tp(%)の必要な偏光特性を満たす範囲をまとめて示すグラフである。
これら図19から図21の条件下では、Tsが0.04%以下かつTpが90%以上の優れた偏光特性を満たすことができる範囲は存在していなかった。
図23は、凹状溝11の深さDが100nm、第1の金属線状部12の幅Uが60nmの場合における入射光の透過率Tp(%)を示すグラフである。
図24は、凹状溝11の深さDが100nm、第1の金属線状部12の幅Uが60nmの場合における入射光の透過率Ts(%)及び入射光の透過率Tp(%)の必要な偏光特性を満たす範囲をまとめて示すグラフである。
これら図22から図24の条件下では、Tsが0.04%以下かつTpが90%以上の優れた偏光特性を満たすことができる範囲は存在していなかった。
図26は、凹状溝11の深さDが120nm、第1の金属線状部12の幅Uが60nmの場合における入射光の透過率Tp(%)を示すグラフである。
図27は、凹状溝11の深さDが120nm、第1の金属線状部12の幅Uが60nmの場合における入射光の透過率Ts(%)及び入射光の透過率Tp(%)の必要な偏光特性を満たす範囲をまとめて示すグラフである。
これら図25から図27の条件下では、T1は、60nm以上90nm以下であり、T2は、60nm以上115nm以下であれば、Tsが0.04%以下かつTpが90%以上の優れた偏光特性を満たすことができる。
図29は、凹状溝11の深さDが140nm、第1の金属線状部12の幅Uが60nmの場合における入射光の透過率Tp(%)を示すグラフである。
図30は、凹状溝11の深さDが140nm、第1の金属線状部12の幅Uが60nmの場合における入射光の透過率Ts(%)及び入射光の透過率Tp(%)の必要な偏光特性を満たす範囲をまとめて示すグラフである。
これら図28から図30の条件下では、T1は、50nm以上90nm以下であり、T2は、80nm以上140nm以下であれば、Tsが0.04%以下かつTpが90%以上の優れた偏光特性を満たすことができる。
次に、実際に偏光子10を作製して、各部寸法及び偏光特性を測定したので、その結果を以下に示す。
図31は、実際に作製された偏光子のSEM写真である。
実際に作製された偏光子10の各部寸法を、先に示した図6中の符号に基づいて以下に示す。
L=38nm
S=62nm
P=100nm
U=55nm
T1=91nm
T2=78nm
D=140nm
以上の形状の偏光子10について、日本分光社製のV670分光器用いて、波長940nmにおいて分光測定を行ったところ、Tp=85%、Ts=0.01%という優れた結果を得ることができた。
なお、上記実測寸法を用いて、上述と同様なシミュレーション解析を行った結果、Tp=87.3%、Ts=0.01%という結果が得られた。よって、実測値とシミュレーション解析結果とが略合致していることも確認された。
11 凹状溝
12 第1の金属線状部
13 第2の金属線状部
15 基材
16 透明部材
30 ロール版
31 母材
32 バイト
Claims (4)
- 凹状溝が繰り返し配置された周期構造を備え、透明樹脂材により構成されている透明部材と、
前記凹状溝の間の頂部に設けられ、金属材料により構成されている第1の金属線状部と、
前記凹状溝の底部に設けられ、金属材料により構成されている第2の金属線状部と、
を備え、
前記凹状溝が繰り返し配置されているピッチPが、透過を制限する波長帯域の最短波長以下であり、
前記最短波長は、780nmである、
偏光子。 - 請求項1に記載の偏光子において、
前記ピッチPに対する前記凹状溝の幅Sの比率S/Pが、0.5〜0.6であること、
を特徴とする偏光子。 - 請求項1又は請求項2に記載の偏光子において、
前記第1の金属線状部の厚さT1は、65nm以上145nm以下であり、
前記第2の金属線状部の厚さT2は、20nm以上140nm以下であり、
前記第1の金属線状部の延長方向が偏光面である赤外光域の入射光の透過率Tsが0.04%以下であり、
前記第1の金属線状部の繰り返し方向が偏光面である赤外光域の入射光の透過率Tpが90%以上であること、
を特徴とする偏光子。 - 請求項1又は請求項2に記載の偏光子において、
前記第1の金属線状部の繰り返し方向における前記第1の金属線状部の幅は、前記頂部の幅よりも広く構成されており、
前記第1の金属線状部の幅Uは、50nm以上90nm以下であり、
前記凹状溝の深さDは、80nm以上140nm以下であり、
前記第1の金属線状部の延長方向が偏光面である赤外光域の入射光の透過率Tsが0.04%以下であり、
前記第1の金属線状部の繰り返し方向が偏光面である赤外光域の入射光の透過率Tpが90%以上であること、
を特徴とする偏光子。
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