第1の実施の形態.
<レンズユニットの構成>
まず、本発明の第1の実施の形態について説明する。図1は、第1の実施の形態のレンズユニット10を示す斜視図である。図2は、レンズユニット10にクランプ6(後述)を取り付ける前の状態を示す斜視図である。図3は、レンズユニット10を示す分解斜視図である。図4は、レンズユニット10の一部を拡大して示す分解斜視図である。
図1〜図4に示すように、レンズユニット10は、レンズカバー板1(第1の部材)、上レンズアレイ板2(第1レンズアレイ)、中間遮光板3(第1遮光部材)、下レンズアレイ板4(第2レンズアレイ)および入射遮光板5(第2の部材)を備えている。これらレンズカバー板1、上レンズアレイ板2、中間遮光板3、下レンズアレイ板4および入射遮光板5は、いずれも一方向に長い部材であり、長手方向および幅方向の両方向に直交する方向に積層され、クランプ6で固定されている。
以下では、レンズカバー板1、上レンズアレイ板2、中間遮光板3、下レンズアレイ板4および入射遮光板5の長手方向をX方向とし、幅方向をY方向とする。レンズカバー板1、上レンズアレイ板2、中間遮光板3、下レンズアレイ板4および入射遮光板5の積層方向(X方向およびY方向に直交する方向)を、Z方向とする。
また、Z方向については、レンズカバー板1側を+Z方向(上方)とし、入射遮光板5側を−Z方向(下方)とする。X方向については、図1〜4における右側を+X方向、左側を−X方向とする。
レンズカバー板1は、レンズユニット10を後述するプリントヘッド7のレンズホルダ73(図13)またはコンタクトイメージセンサヘッド8のレンズホルダ83(図15)に装着した状態で、レンズホルダ73またはレンズホルダ83の表面に露出する平板状の部材である。
レンズカバー板1は、図4に示すように、+Z側の面(上面)1aと、−Z側の面(下面)1bと、X方向に延在する一対の側面1cと、Y方向に延在する一対の端面1dとを有している。レンズカバー板1は、例えばアクリル樹脂で構成されるが、他の積層部材と熱膨張係数を合わせるため、ポリカーボネート等で構成してもよい。
上レンズアレイ板2は、X方向に配列された複数のマイクロレンズ20(図4)を有する板状部材である。ここでは、マイクロレンズ20(レンズ要素)は2列に配列されている。各列におけるマイクロレンズ20のX方向の配列ピッチを、配列ピッチPとする。一方の列のマイクロレンズ20と、他方の列のマイクロレンズ20とは、X方向にP/2(半ピッチ)だけずれた位置関係にある。
上レンズアレイ板2は、図4に示すように、+Z側の面(上面)2aと、−Z側の面(下面)2bと、X方向に延在する一対の側面2cと、Y方向に延在する一対の端面2dとを有している。上レンズアレイ板2の上面2aは、レンズカバー板1の下面1bに当接または対向する。
図4に示すように、上レンズアレイ板2の上面2aには、X方向に長い凹部25が形成されており、この凹部25の内側に、上述したマイクロレンズ20が配列されている。また、図4では隠れているが、上レンズアレイ板2の下面2bにも、凹部26(図9(B))が形成されている。マイクロレンズ20の光軸方向は、Z方向である。
上レンズアレイ板2は、例えばシクロオレフィンポリマー樹脂(例えば、日本ゼオン株式会社製の「ZEONEX」(登録商標))で構成される。上レンズアレイ板2は一方向に長い構造体であり、高い寸法安定性が必要であるため、吸水率の小さいシクロオレフィンポリマー樹脂が最も望ましいためである。但し、アクリル樹脂、ポリカーボネートまたはエポキシ樹脂で構成してもよい。
中間遮光板3は、X方向に配列された複数の円形の開口部30(図4)を有する板状部材である。開口部30(絞り部)は、上レンズアレイ板2のマイクロレンズ20に対応する位置に形成された貫通穴であり、光をZ方向に通過させる。
中間遮光板3は、図4に示すように、+Z側の面(上面)3aと、−Z側の面(下面)3bと、X方向に延在する一対の側面3cと、Y方向に延在する一対の端面3dとを有している。中間遮光板3の上面3aは、上レンズアレイ板2の下面2bに当接または対向する。また、端面3dと下面3bとの間には、傾斜面3fが形成されている。
中間遮光板3は、例えばポリカーボネートまたはABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)樹脂で構成される。但し、レンズカバー板1、上レンズアレイ板2および下レンズアレイ板4と線膨張係数を合わせるため、ポリカーボネートで構成することが望ましい。
下レンズアレイ板4は、X方向に配列された複数のマイクロレンズ40(図4)を有する板状部材である。ここでは、マイクロレンズ40は2列に配列されている。マイクロレンズ40の配列は、上述したマイクロレンズ20の配列と同様である。
下レンズアレイ板4は、図4に示すように、+Z側の面(上面)4aと、−Z側の面(下面)4bと、X方向に延在する一対の側面4cと、Y方向に延在する一対の端面4dとを有している。下レンズアレイ板4の上面4aは、中間遮光板3の下面3bに当接または対向する。
下レンズアレイ板4の上面4aには、X方向に長い凹部45(図4)が形成されており、凹部45の内側にマイクロレンズ40が配列されている。また、図4では隠れているが、下レンズアレイ板4の下面4bにも、凹部46(図9(B))が形成されている。下レンズアレイ板4を構成する材料は、上レンズアレイ板2を構成する材料と同じである。
上レンズアレイ板2および下レンズアレイ板4は、同一の成形型で射出成形された同一形状の成形体である。下レンズアレイ板4は、上レンズアレイ板2に対して、X方向(成形体の長手方向)の回転軸を中心として180度回転し、さらにX方向(ここでは+X方向)にP/2だけシフトした位置関係にある。
上レンズアレイ板2と下レンズアレイ板4とを上記のように構成する理由は、次のとおりである。すなわち、上レンズアレイ板2および下レンズアレイ板4を構成する成形体は一方向に長いため、成形型内の樹脂の流れ方向に沿って(例えば成形型のゲートの手前から奥にかけて)密度等の特性が変化する可能性がある。そのため、各成形体の長手方向一端と他端とではマイクロレンズの配列ピッチに差が生じる可能性がある。
ここでは、下レンズアレイ板4が、上レンズアレイ板2に対して、X方向の回転軸を中心として180度回転した位置関係にあるため、上レンズアレイ板2および下レンズアレイ板4の物性の近い部分同士(例えばゲートに近い部分同士)が対向する。そのため、上レンズアレイ板2のマイクロレンズ20と下レンズアレイ板4のマイクロレンズ40との光軸のずれを抑制することができる。
入射遮光板5は、X方向に配列された複数の円形の開口部50(図4)を有する板状部材である。開口部50は、下レンズアレイ板4のマイクロレンズ40に対応する位置に形成された貫通穴であり、光をZ方向に通過させる。
入射遮光板5は、図4に示すように、+Z側の面(上面)5aと、−Z側の面(下面)5bと、X方向に延在する一対の側面5cと、Y方向に延在する一対の端面5dとを有している。入射遮光板5の上面5aは、下レンズアレイ板4の下面4bに当接または対向する。入射遮光板5を構成する材料は、中間遮光板3を構成する材料と同じである。
次に、レンズユニット10の各積層部材(レンズカバー板1、上レンズアレイ板2、中間遮光板3、下レンズアレイ板4および入射遮光板5)を固定するための構成について説明する。
レンズユニット10は、図1に示すように、X方向における5箇所で、Y方向の両側からクランプ6によって固定される。X方向における5箇所は、レンズユニット10のX方向の中央部Mと、X方向の両端部N2と、これらの間の中間部N1(2箇所)である。端部N2と中間部N1とをまとめて、非中央部Nと称する。なお、ここでは、レンズユニット10をX方向の5箇所で固定しているが、5箇所に限定されるものではない。
非中央部Nと中央部Mとでは、レンズユニット10の各積層部材を連結するための構成が異なる。まず、レンズユニット10の非中央部Nの構成について、図5(A)、(B)および図6を参照して説明する。
図5(A)および(B)は、レンズユニット10の非中央部N(ここでは中間部N1)を拡大して示す分解斜視図および斜視図である。図6は、レンズユニット10の非中央部Nにクランプ6を取り付けた状態を示す斜視図である。
図5(A)に示すように、レンズカバー板1は、上面1aのY方向の両端に、クランプ窪み11(第1の係合部)を有している。クランプ窪み11は、レンズカバー板1の上面1aと側面1cとの間の角部に形成され、X方向に延在している。また、レンズカバー板1は、下面1bのY方向の両端に、下方(すなわち上レンズアレイ板2側)に突出する凸部(突起)13を有している。
レンズカバー板1は、また、クランプ窪み11の−X側に隣接して形成されたクランプ解除窪み12(係合解除部)を有している。クランプ窪み11とクランプ解除窪み12とはX方向に連続して形成されており、Y方向の幅は同一である。但し、クランプ窪み11とクランプ解除窪み12とは、底面の傾斜が異なる。クランプ窪み11およびクランプ解除窪み12の底面の傾斜については、図9を参照して後述する。
上レンズアレイ板2は、上面2aのY方向の両端に、窪み21を有している。窪み21は、上レンズアレイ板2の上面2aと側面2cとの間の角部に形成され、X方向に延在している。この窪み21には、レンズカバー板1の凸部13が係合する。また、上レンズアレイ板2は、下面2bのY方向の両端に、下方(すなわち中間遮光板3側)に突出する凸部22を有している。凸部22のX方向の位置は、レンズカバー板1の凸部13のX方向の位置と同じである。
中間遮光板3は、上面3aのY方向の両端に、窪み31を有している。窪み31は、中間遮光板3の上面3aと側面3cとの間の角部に形成され、X方向に一定の長さを有している。この窪み31には、上レンズアレイ板2の凸部22が係合する。また、中間遮光板3は、下面3bのY方向の両端に、窪み32を有している。窪み32は、中間遮光板3の下面3bと側面3cとの間の角部に形成され、X方向に一定の長さを有している。
下レンズアレイ板4は、上面4aのY方向の両端に、上方(中間遮光板3側)に突出する凸部41を有している。この凸部41は、中間遮光板3の窪み32に係合する。また、下レンズアレイ板4は、下面4bのY方向の両端に、窪み42を有している。窪み42は、下レンズアレイ板4の下面4bと側面4cとの間の角部に形成され、X方向に延在している。
入射遮光板5は、上面5aのY方向の両端に、上方(下レンズアレイ板4側)に突出する凸部51を有している。この凸部51は、下レンズアレイ板4の窪み42に係合する。凸部51のX方向の位置は、下レンズアレイ板4の凸部41のX方向の位置と同じである。また、入射遮光板5は、下面5bのY方向の両端に、クランプ窪み52(第2の係合部)を有している。クランプ窪み52は、入射遮光板5の下面5bと側面5cとの間の角部に形成され、X方向に延在している。入射遮光板5のクランプ窪み52は、レンズカバー板1のクランプ窪み11と、X方向において同じ位置に形成されている。
上記の通り、上レンズアレイ板2および下レンズアレイ板4は同一形状を有し、下レンズアレイ板4が上レンズアレイ板2に対してX方向の回転軸を中心として180度回転し、P/2だけX方向にシフトした位置関係にある。そのため、上レンズアレイ板2の窪み21と下レンズアレイ板4の窪み42とは同一形状であり、上レンズアレイ板2の凸部22と下レンズアレイ板4の凸部41とは同一形状である。また、上レンズアレイ板2の凸部22と下レンズアレイ板4の凸部41とは、X方向にP/2だけシフトした位置関係にある。
レンズカバー板1、上レンズアレイ板2、中間遮光板3、下レンズアレイ板4および入射遮光板5をZ方向に積層すると、図5(B)に示すように、レンズカバー板1の凸部13が上レンズアレイ板2の窪み21に係合し、上レンズアレイ板2の凸部22が中間遮光板3の窪み31に係合する。また、下レンズアレイ板4の凸部41が中間遮光板3の窪み32に係合し、入射遮光板5の凸部51が下レンズアレイ板4の窪み42に係合する。
これらの係合部により、レンズカバー板1、上レンズアレイ板2、中間遮光板3、下レンズアレイ板4および入射遮光板5は、Y方向およびZ方向に位置決めされる。なお、各係合部は、Y方向およびZ方向の最大公差が10μm程度となるように形成される。
レンズカバー板1の凸部13と上レンズアレイ板2の窪み21のX方向両端部との間には、−X方向にクリアランスc1が設けられ、+X方向にクリアランスc2が設けられる。また、上レンズアレイ板2の凸部22と中間遮光板3の窪み31のX方向両端部との間には、−X方向にクリアランスc3が設けられ、+X方向にもクリアランスc3が設けられる。また、下レンズアレイ板4の凸部41と中間遮光板3の窪み32のX方向両端部との間には、−X方向にクリアランスc3が設けられ、+X方向にもクリアランスc3が設けられる。入射遮光板5の凸部51と下レンズアレイ板4の窪み42のX方向両端部との間には、−X方向にクリアランスc4が設けられ、+X方向にクリアランスc2が設けられる。
これらのクリアランスc1〜c4は、レンズカバー板1、上レンズアレイ板2、中間遮光板3、下レンズアレイ板4および入射遮光板5が、温度変化および湿度変化に応じてX方向に変位できるようにするために設けられる。
クリアランスc1,c3,c4は、レンズカバー板1、上レンズアレイ板2、中間遮光板3、下レンズアレイ板4および入射遮光板5の温度変化および湿度変化(吸湿)による線膨張係数に基づいて決定される。
また、クリアランスc2は、レンズカバー板1を+X方向にスライドさせる際に、凸部13が窪み21の+X方向端部に当接しないような長さに設定される。具体的には、クランプ窪み11に取り付けられるクランプ6(図6)の+X方向の端面からクランプ窪み11とクランプ解除窪み12との境界までの距離をL3とすると、クリアランスc2は距離L3以上(c2≧L3)に設定される。
なお、入射遮光板5の凸部51と下レンズアレイ板4の窪み42の+X方向端部との間にもクリアランスc2が設けられるが、これは上述したように下レンズアレイ板4が上レンズアレイ板2と同一の成形体で構成されているためである。
図6に示すように、クランプ6は、XZ面に平行な四角形(ここでは長方形)の平板部63と、平板部63の上端に形成された係合片61と、平板部63の下端に形成された係合片62とを有する。クランプ6のX方向の幅を、L1とする。クランプ6は、例えば、バネ用ステンレス鋼で構成される。
クランプ6の係合片61は、レンズカバー板1のクランプ窪み11に係合し、係合片62は、入射遮光板5のクランプ窪み52に係合する。クランプ6は、レンズカバー板1と入射遮光板5とをZ方向(光軸方向)に挟み込むことにより、レンズカバー板1および入射遮光板5、並びにこれらの間の上レンズアレイ板2、中間遮光板3および下レンズアレイ板4を一体的に保持する。
クランプ6をレンズカバー板1のクランプ窪み11および入射遮光板5のクランプ窪み52に係合させた状態で、クランプ6とクランプ窪み11の+X方向の端部との間には、クリアランスc5が生じる。また、クランプ6とクランプ窪み52の+X方向の端部および−X方向の端部との間には、それぞれクリアランスc6が生じる。
クリアランスc5,c6は、後述するプリントヘッド7のレンズホルダ73(図13)またはコンタクトイメージセンサヘッド8のレンズホルダ83(図15)にクランプ6が固定された状態で、このクランプ6に対してレンズカバー板1および入射遮光板5がX方向に変位できるようにするためのものである。クリアランスc5,c6は、レンズカバー板1、入射遮光板5およびレンズホルダ73(またはレンズホルダ83)の温度変化および湿度変化による線膨張係数に基づいて決定される。
クランプ窪み11のX方向の長さは、上述した距離L3(>L1)と、クランプ6からクランプ窪み11の+X方向端部までのクリアランスc5との和(L3+c5)と同じである。クランプ窪み52のX方向の長さは、上述した距離L3と、クランプ6からクランプ窪み52の+X方向端部までのクリアランスc6との和(L3+c6)と同じである。
クランプ解除窪み12は、クランプ窪み11の−X方向に連続して形成されているため、レンズカバー板1を+X方向にスライドさせることで、クランプ6をクランプ窪み11からクランプ解除窪み12に移動させることができる。クランプ解除窪み12のX方向の長さL2は、クランプ6のX方向の幅L1よりも長い。そのため、X方向においてクランプ6の全体がクランプ解除窪み12に収まる。
なお、レンズカバー板1と上レンズアレイ板2とのZ方向の位置決めは、凸部13と窪み21との係合に限らず、レンズカバー板1の下面1bと上レンズアレイ板2の上面2aとの当接によって行ってもよい。レンズカバー板1と上レンズアレイ板2との境界部分は、レンズホルダ73(図13)あるいはレンズホルダ83(図15)から外部に露出するため、レンズカバー板1と上レンズアレイ板2との隙間を最小限に抑えることが望ましいためである。
なお、図5および図6には、レンズユニット10の中間部N1におけるクランプ窪み11,52、クランプ解除窪み12および各係合部(凸部13、窪み21、凸部22、窪み31,32、凸部41、窪み42および凸部51)を示したが、レンズユニット10のX方向の端部N2も同様に構成されている。
次に、レンズユニット10の中央部Mの構成について、図7(A)、(B)および図8を参照して説明する。
図7(A)および(B)は、レンズユニット10の中央部Mを拡大して示す分解斜視図および斜視図である。図8は、レンズユニット10の中央部Mにクランプ6を取り付けた状態を示す斜視図である。
図7(A)に示すように、レンズカバー板1の上面1aには、クランプ窪み11およびクランプ解除窪み12が形成されている。クランプ窪み11およびクランプ解除窪み12は、非中央部Nのクランプ窪み11およびクランプ解除窪み12と同様に構成されている。一方、レンズカバー板1の下面1bには、非中央部Nに設けられていた凸部13(図5(A)参照)は設けられていない。
上レンズアレイ板2は、上面2aのY方向の両端に、窪み23を有している。窪み23は、上レンズアレイ板2の上面2aと側面2cとの間の角部に形成されている。この窪み23には、何も係合しない。また、上レンズアレイ板2は、下面2bのY方向の両端に、下方(すなわち中間遮光板3側)に突出する凸部24を有している。凸部24のX方向の位置は、窪み23のX方向の位置と同じである。
中間遮光板3は、上面3aのY方向の両端に、窪み33を有している。窪み33は、中間遮光板3の上面3aと側面3cとの間の角部に形成されている。この窪み33には、上レンズアレイ板2の凸部24が係合する。また、中間遮光板3は、下面3bのY方向の両端に、窪み34を有している。窪み34は、中間遮光板3の下面3bと側面3cとの間の角部に形成されている。
下レンズアレイ板4は、上面4aのY方向の両端に、上方(中間遮光板3側)に突出する凸部43を有している。凸部43のX方向の位置は、上レンズアレイ板2の凸部24に対してP/2だけX方向にシフトした位置である。この凸部43は、中間遮光板3の窪み34に係合する。また、下レンズアレイ板4は、下面4bのY方向の両端に、窪み44を有している。窪み44は、下レンズアレイ板4の下面4bと側面4cとの間の角部に形成されている。
入射遮光板5は、上面5aのY方向の両端に、上方(下レンズアレイ板4側)に突出する凸部53を有している。この凸部53は、下レンズアレイ板4の窪み44に係合する。また、入射遮光板5は、下面5bのY方向の両端に、クランプ窪み52を有している。クランプ窪み52は、非中央部Nのクランプ窪み52と同様に構成されている。
レンズカバー板1、上レンズアレイ板2、中間遮光板3、下レンズアレイ板4および入射遮光板5をZ方向に積層すると、図7(B)に示すように、上レンズアレイ板2の凸部24が中間遮光板3の窪み33に係合する。また、下レンズアレイ板4の凸部43が中間遮光板3の窪み34に係合し、入射遮光板5の凸部53が下レンズアレイ板4の窪み44に係合する。
これらの係合部により、中央部Mでは、上レンズアレイ板2、中間遮光板3、下レンズアレイ板4および入射遮光板5は、X方向、Y方向およびZ方向に位置決めされ、レンズカバー板1は、Z方向にのみ位置決めされる。なお、各係合部は、X方向、Y方向およびZ方向における最大公差が10μm程度となるように形成される。
すなわち、レンズユニット10の中央部Mでは、非中央部Nとは異なり、上レンズアレイ板2、中間遮光板3、下レンズアレイ板4および入射遮光板5が、X方向にも位置決めされる。これにより、レンズカバー板1、上レンズアレイ板2、中間遮光板3、下レンズアレイ板4および入射遮光板5が温度変化または湿度変化によりX方向に変位(伸縮)する際の支点が形成される。また、レンズカバー板1は、X方向には位置決めされていない。
レンズユニット10の中央部Mにおいて、レンズカバー板1の下面1bに凸部13(図5(A))を設けない理由は、次の通りである。レンズカバー板1の下側に配置される上レンズアレイ板2は、上述したように下レンズアレイ板4と同一の成形体で構成されるため、上レンズアレイ板2の上面2aには、下レンズアレイ板4の窪み44と同一形状の窪み23が形成される。レンズカバー板1の下面1bに凸部13を設けると、凸部13が上レンズアレイ板2の窪み23に係合するため、レンズカバー板1をX方向にスライドさせることができなくなる。そのため、レンズカバー板1の下面1bには、凸部13(図5(A))を設けない。
図8は、レンズユニット10の中央部Mにクランプ6を取り付けた状態を示す斜視図である。クランプ6のX方向の幅は、上記の通りL1である。クランプ6の係合片61は、レンズカバー板1のクランプ窪み11に係合し、係合片62は、入射遮光板5のクランプ窪み52に係合する。クランプ6は、レンズカバー板1と入射遮光板5とをZ方向に挟み込むことにより、レンズカバー板1および入射遮光板5、並びにこれらの間の上レンズアレイ板2、中間遮光板3および下レンズアレイ板4を一体的に保持する。
クランプ6をレンズカバー板1のクランプ窪み11および入射遮光板5のクランプ窪み52に係合させた状態で、クランプ6とクランプ窪み11の+X方向の端部との間には、クリアランスc7が生じる。また、クランプ6とクランプ窪み52の+X方向の端部および−X方向の端部との間には、それぞれクリアランスc7が生じる。
クリアランスc7は、上述したクリアランスc5,c6(図6)よりも小さい。レンズユニット10の中央部Mは、温度変化あるいは湿度変化によるX方向の変位の支点であり、X方向の変位量を考慮する必要がないためである。
図9(A)は、レンズユニット10のクランプ窪み11を通るYZ面と平行な断面における断面図である。図9(B)は、レンズユニット10のクランプ解除窪み12を通るYZ面と平行な断面における断面図である。なお、図9(A)および(B)に示したクランプ窪み11およびクランプ解除窪み12の形状は、レンズユニット10の非中央部Nと中央部Mのいずれにも共通している。
レンズカバー板1のクランプ窪み11の底面は、図9(A)に示すように、Y方向内側が外側よりも低く(すなわち深く)なるように傾斜している。これに対し、レンズカバー板1のクランプ解除窪み12の底面は、図9(B)に示すように、Y方向外側が内側よりも低く(すなわち深く)なるように傾斜している。すなわち、クランプ窪み11は、クランプ6が外れにくい傾斜を有しているのに対し、クランプ解除窪み12は、クランプ6が外れやすい傾斜を有している。
また、クランプ窪み11の底面のY方向内側の端部11a(最も深い部分)と、クランプ解除窪み12の底面のY方向内側の端部12a(最も浅い部分)とは、略同じ高さにある。そのため、クランプ6を、クランプ窪み11からクランプ解除窪み12にスムースに移動させることができる。
このように構成されているため、クランプ6を、クランプ窪み11からクランプ解除窪み12に移動させると、クランプ6をクランプ解除窪み12から容易に取り外すことができる。なお、以上の構成において、レンズカバー板1(第1の部材)、入射遮光板5(第2の部材)およびクランプ6は、「係合解除機構」を構成している。
<レンズユニットの作用>
次に、この第1の実施の形態におけるレンズユニット10の作用について説明する。プリントヘッド7(図13)またはコンタクトイメージセンサヘッド8(図15)では、レンズユニット10は、クランプ6がレンズホルダ73またはレンズホルダ83に接着された状態で保持される。レンズユニット10では、レンズカバー板1、上レンズアレイ板2、中間遮光板3、下レンズアレイ板4および入射遮光板5が積層されているため、温度変化または湿度変化によってそれぞれの線膨張係数に応じた伸縮が生じる。
この実施の形態では、レンズユニット10の各積層部材(レンズカバー板1、上レンズアレイ板2、中間遮光板3、下レンズアレイ板4および入射遮光板5)が、接着ではなく、クランプ6によって挟み込まれて保持されているため、温度変化または湿度変化に対して、中央部Mを支点としてX方向に変位することができる。そのため、レンズユニット10の反りを抑制することができる。また、レンズユニット10の反りに起因するレンズユニット10およびレンズホルダの破損を防止することができる。
また、レンズユニット10の各積層部材がX方向に変位する際に、レンズユニット10の中央部Mの窪み33,34,44と凸部24,43,53との係合(図7(B))、および非中央部Nの窪み21,31,32,42と凸部13,22,41,51との係合(図5(B))により、各積層部材のY方向およびZ方向の位置変動が抑制される。
次に、レンズユニット10の分解方法について説明する。図10(A)は、クランプ6を取り外すためにレンズカバー板1を+X方向にスライドさせた状態を示す斜視図である。図10(B)は、レンズユニット10の中央部Mを拡大して示す斜視図である。図10(C)は、レンズユニット10の非中央部N(ここでは端部N2)を拡大して示す斜視図である。
図11(A)は、レンズカバー板1を+X方向にスライドさせる前のレンズユニット10を示す平面図である。図11(B)は、レンズカバー板1を+X方向にスライドさせた後のレンズユニット10を示す平面図である。図11(C)は、図11(A)に示した線分11C−11Cにおける矢視方向の断面図である。図11(D)は、図11(B)に示した線分11D−11Dにおける矢視方向の断面図である。
図11(C)に示すように、レンズユニット10の各積層部材(レンズカバー板1、上レンズアレイ板2、中間遮光板3、下レンズアレイ板4および入射遮光板5)は、接着剤ではなく、長手方向の複数個所(ここでは5箇所)でクランプ6に挟持されることによって一体的に保持されている。そのため、クランプ6を取り外すだけで、各積層部材を分解することができる。
クランプ6を取り外す際には、図11(A)に示す状態から、図11(B)に示すようにレンズカバー板1を+X方向にスライドさせる。これにより、図10(A)に示すように、レンズカバー板1が、上レンズアレイ板2、中間遮光板3、下レンズアレイ板4および入射遮光板5に対して+X方向に突出する。
このとき、クランプ6は、入射遮光板5のクランプ窪み52に係合しているため、レンズカバー板1の+X方向のスライドには追従しない。その結果、図10(B)および図10(C)に示すように、クランプ6の係合位置は、レンズカバー板1のクランプ窪み11からクランプ解除窪み12に移動する。
また、レンズカバー板1を+X方向にスライドさせる際、図10(C)に示すように、レンズカバー板1の凸部13が、上レンズアレイ板2の窪み21内を+X方向に移動する。これにより、レンズカバー板1がY方向およびZ方向に位置規制される。
なお、レンズカバー板1をスライドさせる距離Sは、上述した距離L3(すなわち、図6におけるクランプ6の+X方向の端面からクランプ窪み11とクランプ解除窪み12との境界までの距離)以上である。クランプ6が距離Sだけスライドすると、クランプ6の係合位置はクランプ窪み11からクランプ解除窪み12に完全に移行する。
上記の通り、クランプ解除窪み12の底面は、レンズカバー板1のY方向外側が内側よりも深くなる(低くなる)ように傾斜しているため、図11(D)に示すように、クランプ6がクランプ解除窪み12から自然に外れる。すなわち、操作者は、レンズカバー板1を+X方向にスライドさせるだけで、レンズユニット10からクランプ6を簡単に取り外すことができる。
また、レンズユニット10を組立時には、レンズユニット10の各積層部材をZ方向に積層した状態で、図11(D)に示すようにクランプ6をレンズカバー板1のクランプ解除窪み12と入射遮光板5のクランプ窪み52とに係合させ、その後、レンズカバー板1を−X方向にスライドさせる。これにより、図11(C)に示すように、クランプ6がレンズカバー板1のクランプ窪み11と入射遮光板5のクランプ窪み52とに係合する。
なお、このようにレンズカバー板1をスライドさせることでクランプ窪み11,52にクランプ6を係合させても良いが、レンズカバー板1を図11(A)に示す位置までスライドさせてから、クランプ6を弾性変形させてクランプ窪み11,52に係合させても良い。
<プリントヘッドの構成>
次に、第1の実施の形態のレンズユニット10を用いたプリントヘッド7の構成について説明する。図12(A)は、プリントヘッド7を示す斜視図であり、図12(B)は、プリントヘッド7を示す平面図である。図13は、図12(B)に線分13−13で示した断面における部分断面斜視図である。
図13に示すように、プリントヘッド7は、レンズユニット10と、レンズユニット10に対向する発光素子71が実装されたプリント配線基板72と、これらを保持する筐体としてのレンズホルダ73とを備えている。プリント配線基板72の表面72aには、複数の発光素子71がX方向に配列されている。
プリント配線基板72は、例えば、ガラスクロスエポキシ樹脂基板からなる銅張り積層基板で構成される。発光素子71は、例えば、ガリウム批素(GaAs)を主原料とするLED(発光ダイオード)等の半導体素子で構成される。発光素子71は、例えば、600dpiあるいは1200dpiの配列ピッチでX方向に配列されている。発光素子71と一体に駆動回路を形成してもよい。
レンズホルダ73は、図12(A)および(B)に示すように、X方向(レンズユニット10の長手方向)に延在する部材である。レンズホルダ73は、ここでは板金で構成されているが、液晶ポリマー(LCP)またはアルミダイキャストで構成してもよい。
図13に示すように、レンズホルダ73は、Y方向に対向する一対の側壁73aと、これら側壁73aの上端(+Z方向の端部)同士をつなぐ上壁部73bとを有している。各側壁73aの内側には、プリント配線基板72の表面72aに当接する基板当接部74が形成されている。プリント配線基板72は、表面72aが+Z方向を向くように、レンズホルダ73に取り付けられる。
プリント配線基板72の下側(−Z側)には、ベース部材75が配置される。ベース部材75は、レンズホルダ73の側壁73aに形成された孔部に係合する係合部を有している。ベース部材75を側壁73aに取り付けることで、プリント配線基板72は基板当接部74に当接した状態で保持される。ベース部材75は、例えばポリカーボネートで構成されるが、ナイロンなどで構成してもよい。
レンズホルダ73の上壁部73bには、レンズユニット10が挿入される開口73cが形成されている。レンズユニット10は、レンズホルダ73の開口73cの内側に挿入される。レンズユニット10のクランプ6と開口73cの内周面との間に接着剤76が付与され、クランプ6がレンズホルダ73に固定される。レンズユニット10とレンズホルダ73との間の隙間は、封止材77によって封止される。接着剤76は、例えばアクリル樹脂を主成分とするUV(紫外線)硬化性樹脂である。封止材77は、例えばシリコーン樹脂である。
レンズユニット10のZ方向位置は、プリント配線基板72上の発光素子71の表面からレンズユニット10の下レンズアレイ板4の−Z側の面の極値点までの距離が、設計された光学距離Loとなるように調整する。
プリントヘッド7は、図23に一例を示す画像形成装置200に用いられる。プリントヘッド7は、画像形成装置200内に、レンズユニット10が感光体ドラム91(像担持体)の表面に対向するように配置される。発光素子71から出射された光は、レンズユニット10に入射し、入射遮光板5の開口部50、下レンズアレイ板4のマイクロレンズ40、中間遮光板3の開口部30、上レンズアレイ板2のマイクロレンズ20およびレンズカバー板1を通過して、感光体ドラム91の表面に集光する。
<コンタクトイメージセンサの構成>
次に、第1の実施の形態のレンズユニット10を用いたコンタクトイメージセンサヘッド8(読取ヘッド)の構成について説明する。図14(A)および(B)は、コンタクトイメージセンサヘッド8を示す斜視図および平面図である。図15は、図14(B)に線分15−15で示した断面における部分断面斜視図である。なお、図14および図15は、+Z方向が下方となり、−Z方向が上方となるように示されている。
図15に示すように、コンタクトイメージセンサヘッド8は、レンズユニット10と、レンズユニット10に対向する受光素子81が実装されたプリント配線基板82と、レンズユニット10に隣接して配置された導光体87と、これらを保持する筐体としてのレンズホルダ83とを備えている。プリント配線基板82の表面82aには、複数の受光素子81がX方向に配列されている。
プリント配線基板82は、例えば、ガラスクロスエポキシ樹脂基板からなる銅張り積層基板で構成される。また、受光素子81は、例えば、Si基板上に形成したCMOSセンサあるいはCCDセンサで構成される。受光素子81は、例えば、600dpi、1200dpiまたは2400dpiの配列ピッチでX方向に配列されている。
レンズホルダ83は、図14(A)および(B)に示すように、X方向(レンズユニット10の長手方向)に延在する部材である。レンズホルダ83は、ここではポリカーボネート樹脂で構成されるが、ABS樹脂、液晶ポリマー(LCP)またはアルミダイキャストで構成してもよい。
レンズホルダ83は、Y方向に対向する一対の側壁83aを有している。各側壁83aの+Z方向の端部近傍には、プリント配線基板82の表面82aに当接する基板当接部84が形成されている。プリント配線基板82は、表面82aが−Z方向を向くように、レンズホルダ83に取り付けられる。プリント配線基板82は、接着剤によってレンズホルダ83に固定してもよいし、図13に示したベース部材75によってレンズホルダ83に固定してもよい。
レンズホルダ83の一対の側壁83aからY方向内側に突出するように、一対のレンズユニット保持部83bが形成されている。レンズユニット保持部83bは、プリント配線基板82に近い側から順に、レンズユニット10の+Z方向の端部(レンズカバー板1)に当接する受け部83cと、レンズユニット10の側面に対向する側面部83dと、この側面部83dよりもY方向外側に退避した退避部83eとを有している。退避部83eは、レンズユニット10を固定するための接着剤85を充填する空洞部である。
レンズユニット10は、レンズカバー板1がプリント配線基板82に対向する向きにレンズユニット保持部83bに挿入される。そして、レンズカバー板1が受け部83cに当接し状態で、クランプ6が接着剤85によりレンズユニット保持部83bに固定される。接着剤85が充填された退避部83eには、さらに封止材86が充填される。接着剤85は、例えばアクリル樹脂を主成分とするUV硬化性樹脂で構成される。
レンズホルダ83の一方の側壁83aの内側には、導光体87が取り付けられている。導光体87は、レンズユニット10にY方向に隣接するように配置されている。導光体87は、X方向に長い透明部材であり、例えばアクリル樹脂で構成される。導光体87は、X方向端部に配置された光源(図示せず)から入射した光を導光して、読取原稿に向けて出射するものである。導光体87の周囲は、光の入射面および出射面を除き、遮光カバー88で覆われている。遮光カバー88は、例えば、汎用の成形樹脂で構成される。
レンズユニット10のZ方向位置は、レンズカバー板1と受け部83cとの当接によって決定される。また、レンズユニット10のZ方向位置は、プリント配線基板82上の受光素子81の表面からレンズユニット10の上レンズアレイ板2の+Z側の面の極値点までの距離が、設計された光学距離Loとなるように調整する。
コンタクトイメージセンサヘッド8は、図24に一例を示す画像読取装置300に用いられる。コンタクトイメージセンサヘッド8は、画像読取装置300内に、レンズユニット10が原稿台302に対向するように配置される。原稿台302上の読取原稿から入射した光は、レンズユニット10に入射し、入射遮光板5の開口部50、下レンズアレイ板4のマイクロレンズ40、中間遮光板3の開口部30、上レンズアレイ板2のマイクロレンズ20およびレンズカバー板1を通過して、受光素子81に集光する。
<第1の実施の形態の効果>
以上説明したように、本発明の第1の実施の形態では、レンズユニット10の各積層部材(レンズカバー板1、上レンズアレイ板2、中間遮光板3、下レンズアレイ板4および入射遮光板5)がクランプ6で挟み込まれて保持されているため、温度変化および湿度変化に応じた各積層部材の変位が可能になる。その結果、各積層部材の線膨張係数の差によるレンズユニット10の反りを抑制することができ、レンズユニット10の反りに起因する各構成要素のせん断剥離を抑制することができる。
また、レンズカバー板1がX方向にスライド可能であり、レンズカバー板1および入射遮光板5がクランプ窪み11,52を有し、クランプ窪み11にX方向に隣接してクランプ解除窪み12(係合解除部)が設けられている。そのため、レンズカバー板1をX方向にスライドさせることで、クランプ6をクランプ窪み11からクランプ解除窪み12に移動させて取り外し、レンズユニット10を簡単に分解することができる。
また、レンズカバー板1および入射遮光板5がそれぞれX方向に複数のクランプ窪み11,52を有し、複数のクランプ6が係合しているため、レンズカバー板1をスライドさせることで複数のクランプ6を一度に取り外すことができる。
また、レンズカバー板1、上レンズアレイ板2、中間遮光板3、下レンズアレイ板4および入射遮光板5が、レンズユニット10の中央部MではX方向に位置規制され、非中央部NではX方向に変位可能に保持されているため、中央部を支点とした各積層部材の変位が可能となり、レンズユニット10の反りを効果的に抑制することができる。
また、このレンズユニット10を画像形成装置200のプリントヘッド7に用いることにより、温度変化および湿度変化の影響を抑制し、安定した印刷品質を確保することができる。また、このレンズユニット10を画像読取装置300のコンタクトイメージセンサヘッド8に用いることにより、温度変化および湿度変化の影響を抑制し、安定した読取品質を確保することができる。
<他の構成例>
なお、ここでは、上レンズアレイ板2および下レンズアレイ板4を同一形状の2つの成形体で構成したが、上レンズアレイ板2および下レンズアレイ板4が別々の形状を有していてもよい。この場合、下レンズアレイ板4の窪み42は、例えば、中間遮光板3の窪み32と同様の窪みとすることができる。
また、レンズユニット10の非中央部Nでは、凸部13,22,41,51と窪み21,31,32,42とが係合しているが(図5(B))、凸部と窪みとの関係は逆でもよい。例えば、レンズカバー板1に凸部13を設けて上レンズアレイ板2に窪み21を設ける代わりに、レンズカバー板1に窪みを設けて上レンズアレイ板2に凸部を設けてもよい。
また、レンズユニット10の中央部Mでは、凸部24,43,53と窪み33,34,44とが係合しているが(図7(B))、凸部と窪みとの関係は逆でもよい。例えば、上レンズアレイ板2に凸部24を設けて中間遮光板3に窪み33を設ける代わりに、上レンズアレイ板2に窪みを設けて中間遮光板3に凸部を設けてもよい。
変形例.
次に、この第1の実施の形態の変形例について説明する。図16(A)は、変形例のレンズユニット10Aを示す平面図である。図16(B)は、図16(A)に示した線分16B−16Bにおける矢視方向の断面図、すなわちレンズユニット10AのX方向の非中央部の断面図である。図16(C)は、図16(A)に示した線分16C−16Cにおける矢視方向の断面図、すなわちレンズユニット10AのX方向の中央部の断面図である。
変形例のレンズユニット10Aでは、中央部(図16(C))におけるレンズカバー板1のクランプ窪み15の傾斜が、非中央部(図16(B))におけるレンズカバー板1のクランプ窪み14の傾斜よりも緩やかに形成されている。すなわち、中央部におけるクランプ窪み15のY方向内側の端部の深さは、非中央部におけるクランプ窪み14のY方向内側の端部の深さよりもΔh1だけ浅い。
同様に、中央部(図16(C))における入射遮光板5のクランプ窪み55の傾斜は、非中央部(図16(B))における入射遮光板5のクランプ窪み54の傾斜よりも緩やかに形成されている。すなわち、中央部におけるクランプ窪み55のY方向内側の端部の深さは、非中央部におけるクランプ窪み54のY方向内側の端部の深さよりΔh2だけ浅い。
中央部(図16(C))のクランプ窪み15,55に係合するクランプ6と、非中央部(図16(B))のクランプ窪み14,54に係合するクランプ6とは、取り付け前の形状が同一である。そのため、中央部のクランプ窪み15,55に係合するクランプ6は、非中央部のクランプ窪み14,54に係合するクランプ6と比較して、係合片61,62の先端がΔh1+Δh2だけZ方向外側に弾性変形した状態にある。
従って、中央部(図16(C))においてクランプ6がクランプ窪み15,55に係合する力は、非中央部(図16(B))においてクランプ6がクランプ窪み14,54に係合する力よりも強い。
このように構成されているため、変形例のレンズユニット10Aは、X方向の中央部においてクランプ6に強く挟持される。その結果、温度変化または湿度変化によってレンズユニット10Aの各積層部材が伸縮(変位)する際に、レンズユニット10AのX方向の中央部を支点として確実に支持することができる。レンズユニット10Aの他の構成は、第1の実施の形態のレンズユニット10と同様である。
この変形例によれば、第1の実施の形態で説明した効果に加え、温度変化または湿度変化によってレンズユニット10Aの各積層部材が伸縮する際に、レンズユニット10AのX方向の中央部を確実に支持することができる。そのため、レンズユニット10Aの反りをより確実に抑制することができる。さらに、レンズユニット10AのX方向の中央部を支点とすることで、レンズアレイ板2,4の各マイクロレンズの光軸の変動を抑制することができる。
第2の実施の形態.
<レンズユニットの構成>
図17は、第2の実施の形態のレンズユニット10Bを示す斜視図である。図18は、レンズユニット10Bにクランプ16を取り付ける前の状態を示す斜視図である。図19(A)および(B)は、レンズユニット10Bの非中央部Nを示す斜視図である。図20(A)および(B)は、レンズユニット10Bの中央部Mを示す斜視図である。
図17および図18に示すように、レンズユニット10Bは、レンズカバー板110(第2の部材)、上レンズアレイ板120(第2レンズアレイ)、中間遮光板130(第1遮光部材)、下レンズアレイ板140(第1レンズアレイ)および入射遮光板150(第1の部材)を備えている。これらレンズカバー板110、上レンズアレイ板120、中間遮光板130、下レンズアレイ板140および入射遮光板150は、いずれもX方向に長く、Z方向に積層されている。
レンズカバー板110は、プリントヘッド7のレンズホルダ73(図13)またはコンタクトイメージセンサヘッド8のレンズホルダ83(図15)の表面に露出する平板状の部材である。レンズカバー板110の材質は、第1の実施の形態1のレンズカバー板1と同様である。
上レンズアレイ板120は、複数のマイクロレンズ20(図22(C))を有する板状部材である。マイクロレンズ20の配列は、第1の実施の形態のマイクロレンズ20と同様である。また、上レンズアレイ板120の材質は、実施の形態1の上レンズアレイ板2と同様である。
中間遮光板130は、複数の円形の開口部30(図22(C))を有する板状部材である。開口部30の配列は、第1の実施の形態の開口部30と同様である。また、中間遮光板130の材質は、実施の形態1の中間遮光板3と同様である。
下レンズアレイ板140は、複数のマイクロレンズ40(図22(C))を有する板状部材である。マイクロレンズ40の配列は、第1の実施の形態のマイクロレンズ40と同様である。また、下レンズアレイ板140の材質は、実施の形態1の下レンズアレイ板4と同様である。
上レンズアレイ板120および下レンズアレイ板140は、第1の実施の形態の上レンズアレイ板2および下レンズアレイ板4と同様に、同一の成形型で射出成形された同一形状の成形体である。下レンズアレイ板140は、上レンズアレイ板120に対して、X方向の回転軸を中心として180度回転し、さらにX方向(ここでは+X方向)にP/2だけシフトした位置関係にある。
入射遮光板150は、複数の円形の開口部50(図22(C))を有する板状部材である。開口部50の配列は、第1の実施の形態の開口部50と同様である。また、入射遮光板150の材質は、実施の形態1の入射遮光板5と同様である。
次に、レンズユニット10Bの各積層部材(レンズカバー板110、上レンズアレイ板120、中間遮光板130、下レンズアレイ板140および入射遮光板150)を固定するための構成について説明する。
図17に示すように、レンズユニット10Bは、実施の形態1と同様、レンズユニット10BのX方向の中央部Mと、X方向の両端部N2と、これらの間の中間部N1(2箇所)で、クランプ16によって固定される。
まず、レンズユニット10Bの非中央部Nにおける構成について説明する。図19(A)は、レンズユニット10Bの非中央部Nを示す斜視図であり、図19(B)は、非中央部Nにクランプ16を取り付けた状態を示す斜視図である。
図19(A)に示すように、レンズカバー板110は、上面のY方向両端にクランプ窪み111を有し、下面のY方向両端に凸部112を有している。クランプ窪み111および凸部112は、第1の実施の形態1のレンズカバー板1のクランプ窪み11および凸部13とそれぞれ同様に構成されている。但し、レンズカバー板110は、第1の実施の形態1で説明したクランプ解除窪み12(図5(A))を有さない。
上レンズアレイ板120は、上面のY方向両端に窪み121を有し、下面のY方向両側に凸部122を有している。窪み121および凸部122は、第1の実施の形態1の上レンズアレイ板2の窪み21および凸部22(図5(A))とそれぞれ同様に構成されている。
中間遮光板130は、上面のY方向両端に窪み131を有し、下面のY方向両端に窪み132を有している。窪み131,132は、第1の実施の形態1の中間遮光板3の窪み31,32(図5(A))とそれぞれ同様に構成されている。
下レンズアレイ板140は、上面のY方向両端に凸部141を有し、下面のY方向両端に窪み142を有している。凸部141および窪み142は、第1の実施の形態1の下レンズアレイ板4の凸部41および窪み42(図5(A))とそれぞれ同様に構成されている。
入射遮光板150は、上面のY方向両端に凸部151を有し、下面のY方向両端にクランプ窪み152を有している。凸部151およびクランプ窪み152は、第1の実施の形態1の入射遮光板5の凸部51およびクランプ窪み52(図5(A))とそれぞれ同様に構成されている。入射遮光板150のクランプ窪み152は、レンズカバー板110のクランプ窪み111と、X方向において同じ位置に形成されている。
入射遮光板150は、さらに、クランプ窪み152の−X側に隣接して、クランプ解除窪み153を有している。クランプ窪み152とクランプ解除窪み153とはX方向に連続して形成されており、Y方向の幅は同一である。但し、クランプ窪み152とクランプ解除窪み153とは、底面の傾斜が異なる。
すなわち、クランプ窪み152の底面は、Y方向内側が外側よりも高く(すなわち深く)なるように傾斜している。これに対し、クランプ解除窪み153の底面は、Y方向外側が内側よりも高く(すなわち深く)なるように傾斜している。すなわち、クランプ窪み152は、クランプ16が外れにくい傾斜を有しているのに対し、クランプ解除窪み153は、クランプ16が外れやすい傾斜を有している。
レンズカバー板110、上レンズアレイ板120、中間遮光板130、下レンズアレイ板140および入射遮光板150をZ方向に積層すると、図19(A)に示すように、レンズカバー板110の凸部112が上レンズアレイ板120の窪み121に係合し、上レンズアレイ板120の凸部122が中間遮光板130の窪み131に係合する。また、下レンズアレイ板140の凸部141が中間遮光板130の窪み132に係合し、入射遮光板150の凸部151が下レンズアレイ板140の窪み142に係合する。
これらの係合部により、レンズカバー板110、上レンズアレイ板120、中間遮光板130、下レンズアレイ板140および入射遮光板150は、Y方向およびZ方向に位置決めされる。なお、各係合部は、Y方向およびZ方向における最大公差が10μm程度となるように形成される。
レンズカバー板110の凸部112と上レンズアレイ板120の窪み121のX方向両端部との間には、−X方向にクリアランスc1が設けられ、+X方向にクリアランスc2が設けられる。また、上レンズアレイ板120の凸部122と中間遮光板130の窪み131のX方向両端部との間には、−X方向にクリアランスc3が設けられ、+X方向にもクリアランスc3が設けられる。また、下レンズアレイ板140の凸部141と中間遮光板130の窪み132のX方向両端部との間には、−X方向にクリアランスc3が設けられ、+X方向にもクリアランスc3が設けられる。入射遮光板150の凸部151と下レンズアレイ板140の窪み142のX方向両端部との間には、−X方向にクリアランスc4が設けられ、+X方向にクリアランスc2が設けられる。
これらのクリアランスc1〜c4は、レンズカバー板110、上レンズアレイ板120、中間遮光板130、下レンズアレイ板140および入射遮光板150が、温度変化および湿度変化に応じてX方向に変位できるようにするために設けられる。
クリアランスc1,c3,c4は、レンズカバー板110、上レンズアレイ板120、中間遮光板130、下レンズアレイ板140および入射遮光板150の温度変化および湿度変化による線膨張係数に基づいて決定される。
また、クリアランスc2は、入射遮光板150を+X方向にスライドさせる際に、凸部151が窪み142の+X方向端部に当接しないような長さに設定される。具体的には、クランプ窪み152に取り付けられるクランプ16(図19(B))の+X方向の端面からクランプ窪み152とクランプ解除窪み153との境界までの距離をL3とすると、クリアランスc2は距離L3以上(c2≧L3)に設定される。
なお、レンズカバー板110の凸部112と上レンズアレイ板2の窪み121の+X方向端部との間にもクリアランスc2が設けられるが、これは上述したように上レンズアレイ板120が下レンズアレイ板140と同一の成形体で構成されているためである。
図19(B)に示すように、クランプ16は、平板部163と、平板部163の上端に形成された係合片161と、平板部163の下端に形成された係合片162とを有する。クランプ16の係合片161は、レンズカバー板110のクランプ窪み111に係合し、係合片162は、入射遮光板150のクランプ窪み152に係合する。クランプ16のX方向の幅を、L1とする。クランプ16は、例えば、バネ用ステンレス鋼で構成される。
レンズカバー板110のクランプ窪み111および入射遮光板150のクランプ窪み152にクランプ16を係合させると、クランプ16とクランプ窪み111の+X方向の端部および−X方向の端部との間には、それぞれクリアランスc5が生じる。また、クランプ16とクランプ窪み152の+X方向の端部および−X方向の端部との間には、それぞれクリアランスc6が生じる。
クリアランスc5,c6は、プリントヘッド7のレンズホルダ73(図13)またはコンタクトイメージセンサヘッド8のレンズホルダ83(図15)にクランプ16が固定された状態で、クランプ16に対してレンズカバー板110および入射遮光板150がX方向に変位できるようにするためのものである。クリアランスc5,c6は、レンズカバー板110、入射遮光板150およびレンズホルダ73(またはレンズホルダ83)の温度および吸湿による線膨張係数に基づいて決定される。
クランプ窪み111のX方向の長さは、上述した距離L3と、クランプ16からクランプ窪み111の+X方向端部までのクリアランスc5との和(L3+c5)と同じである。クランプ窪み152のX方向の長さは、上述した距離L3と、クランプ16からクランプ窪み152の+X方向端部までのクリアランスc6との和(L3+c6)と同じである。
入射遮光板150のクランプ解除窪み153は、クランプ窪み152の−X方向に連続して形成されているため、レンズカバー板110を+X方向にスライドさせることで、クランプ16をクランプ窪み152からクランプ解除窪み153に移動させることができる。クランプ解除窪み153のX方向の長さL2は、クランプ16のX方向の幅L1よりも長い。そのため、X方向においてクランプ16の全体がクランプ解除窪み153に収まる。
なお、図19(A)および(B)には、レンズユニット10Bの中間部N1におけるクランプ窪み111,152、クランプ解除窪み153および各係合部(凸部112、窪み121、凸部122、窪み131,132、凸部141、窪み142および凸部151)を示したが、レンズユニット10BのX方向の端部N2も同様に構成されている。
次に、レンズユニット10Bの中央部Mの構成について説明する。図20(A)は、レンズユニット10Bの中央部Mを拡大して示す斜視図である。図20(B)は、レンズユニット10Bの中央部Mにクランプ16を取り付けた状態を示す斜視図である。
図20(A)に示すように、レンズカバー板110は、上面のY方向両端にクランプ窪み111を有し、下面のY方向両端に凸部113を有している。クランプ窪み111および凸部113は、非中央部Nのクランプ窪み111および凸部113と同様に構成されている。
上レンズアレイ板120は、上面のY方向両端に窪み123を有し、下面のY方向両端に凸部124を有している。窪み123および凸部124は、第1の実施の形態1の上レンズアレイ板2の窪み23および凸部24(図7(A))とそれぞれ同様に構成されている。
中間遮光板130は、上面のY方向両端に窪み133を有し、下面のY方向両端に窪み144を有している。窪み133および窪み134は、第1の実施の形態1の中間遮光板3の窪み33および窪み34とそれぞれ同様に構成されている。
下レンズアレイ板140は、上面のY方向両端に凸部143を有し、下面のY方向両端に窪み144を有している。凸部143および窪み144は、第1の実施の形態1の上レンズアレイ板2の凸部43および窪み44(図7(A))とそれぞれ同様に構成されている。
入射遮光板150は、上面のY方向両端に凸部154を有し、下面のY方向両端にクランプ窪み152を有している。凸部154およびクランプ窪み152は、第1の実施の形態1の入射遮光板5の凸部53およびクランプ窪み52(図7(A))とそれぞれ同様に構成されている。
入射遮光板150は、レンズユニット10Bの中央部Mでは、非中央部Nのようなクランプ解除窪み153(図19(A))を有さない。代わりに、入射遮光板150のY方向の両側面150cに、Y方向に深さdを有する退避部156(クランプ除去スリット)が形成されている。退避部156は、クランプ窪み152のX方向中心に対応する位置から、クランプ窪み152の+X方向端部を超えてさらに所定量延在している。
この退避部156は、レンズユニット10Bの中央部Mのクランプ16を取り外す際に、クランプ16の裏側に治具を挿入するために形成される。従って、退避部156の深さd並びにX方向の長さおよびY方向の長さは、クランプ16の裏側に治具を挿入しやすいように決定される。
レンズカバー板110、上レンズアレイ板120、中間遮光板130、下レンズアレイ板140および入射遮光板150をZ方向に積層すると、レンズカバー板110の凸部112が上レンズアレイ板120の窪み123に係合し、上レンズアレイ板120の凸部124が中間遮光板130の窪み133に係合する。また、下レンズアレイ板140の凸部143が中間遮光板130の窪み134に係合し、入射遮光板150の凸部154が下レンズアレイ板140の窪み144に係合する。
これらの係合部により、レンズカバー板110、上レンズアレイ板120、中間遮光板130、下レンズアレイ板140および入射遮光板150は、X方向、Y方向およびZ方向に位置決めされる。なお、各係合部は、X方向、Y方向およびZ方向における最大公差が10μm程度となるように形成される。
すなわち、レンズユニット10Bの中央部Mでは、非中央部Nとは異なり、レンズカバー板110、上レンズアレイ板120、中間遮光板130、下レンズアレイ板140および入射遮光板150が、X方向にも位置決めされる。これにより、レンズカバー板110、上レンズアレイ板120、中間遮光板130、下レンズアレイ板140および入射遮光板150が温度変化または湿度変化によりX方向に変位(伸縮)する際の支点が形成される。
図20(B)に示すように、レンズカバー板110のクランプ窪み111および入射遮光板150のクランプ窪み152にクランプ6を係合させると、クランプ6とクランプ窪み11の+X方向の端部および−X方向の端部との間には、それぞれクリアランスc7が生じる。また、クランプ16とクランプ窪み152の+X方向の端部および−X方向の端部との間には、それぞれクリアランスc7が生じる。
クリアランスc7は、上述したクリアランスc5,c6(図6)よりも小さい。レンズユニット10の中央部Mは、温度変化および湿度変化によるX方向の変位の支点であり、X方向の変位量を考慮する必要がないためである。
<レンズユニットの作用>
次に、この第2の実施の形態におけるレンズユニット10Bの作用について説明する。
実施の形態1で説明したように、プリントヘッド7(図13)またはコンタクトイメージセンサヘッド8(図15)では、レンズユニット10Bは、クランプ6がレンズホルダ73またはレンズホルダ83に直接接着された状態で保持される。レンズユニット10Bでは、レンズカバー板110、上レンズアレイ板120、中間遮光板130、下レンズアレイ板140および入射遮光板150が積層されているため、温度変化あるいは湿度変化によってそれぞれの線膨張係数に応じた伸縮が生じる。
この実施の形態では、レンズユニット10Bの各積層部材(レンズカバー板110、上レンズアレイ板120、中間遮光板130、下レンズアレイ板140および入射遮光板150)が、接着ではなく、クランプ16によって挟み込まれて保持されているため、温度変化または湿度変化に対して、中央部Mを支点としてX方向に変位することができる。そのため、レンズユニット10Bの反りを抑制することができる。また、レンズユニット10Bの反りに起因するレンズユニット10Bおよびレンズホルダの破損を防止することができる。
また、レンズユニット10Bの各積層部材がX方向に変位する際に、レンズユニット10Bの中央部Mの窪み123,133,34,44と凸部112,124,143,154との係合(図20(A))、および非中央部Nの窪み121,131,132,142と凸部113,122,141,151との係合(図19(A))により、各積層部材のY方向およびZ方向の位置変動が抑制される。
次に、レンズユニット10Bの分解方法について説明する。図21(A)は、レンズユニット10Bの分解方法を説明するための斜視図である。図21(B)は、レンズユニット10Bの中央部Mを拡大して示す斜視図である。図21(C)は、レンズユニット10Bの非中央部(ここでは端部N2)を拡大して示す斜視図である。
図22(A)は、入射遮光板150を+X方向にスライドさせる前のレンズユニット10Bの平面図である。図22(B)は、入射遮光板150を+X方向にスライドさせた後のレンズユニット10Bの平面図である。図22(C)は、図22(A)に示した線分22C−22Cにおける矢視方向の断面図である。図22(D)は、図22(B)に示した線分22D−22Dにおける矢視方向の断面図である。
この第2の実施の形態では、レンズユニット10Bを分解する際には、まずレンズユニット10Bの中央部Mのクランプ16を取り外す。具体的には、操作者が、入射遮光板150の退避部156(図20(B))とクランプ16との間に治具を挿入し、クランプ16を弾性変形させて、クランプ窪み111,152からY方向外側に引き抜く。
さらに、操作者は、入射遮光板150のX方向中央部を下方に撓ませることにより、入射遮光板150の凸部154(図20(A))を下レンズアレイ板140の窪み144から離脱させる。これにより、入射遮光板150がX方向にスライド可能な状態となる。
この状態で、操作者は、図22(A)に示す状態から入射遮光板150を+X方向にスライドさせる。これにより、図22(B)に示すように、入射遮光板150は、レンズカバー板110、上レンズアレイ板120、中間遮光板130および下レンズアレイ板140に対して+X方向に突出する。
このとき、既に取り外されている中央部Mのクランプ16を除く4つのクランプ16は、レンズカバー板110のクランプ窪み111に係合しているため、入射遮光板150の+X方向のスライドには追従しない。その結果、図22(B)および図22(C)に示すように、クランプ16の係合位置は、入射遮光板150のクランプ窪み152からクランプ解除窪み153に移動する。
また、入射遮光板150を+X方向にスライドさせる際、図21(C)に示すように、入射遮光板150の凸部151が、下レンズアレイ板140の窪み142内を+X方向に移動する。これにより、入射遮光板150がY方向およびZ方向に位置規制される。
なお、入射遮光板150をスライドさせる距離Sは、上述した距離L3(すなわち、図19(B)におけるクランプ16の+X方向の端面からクランプ窪み152とクランプ解除窪み153との境界までの距離)以上である。クランプ16が距離Sだけスライドすると、クランプ16の係合位置はクランプ窪み152からクランプ解除窪み153に完全に移行する。
上記の通り、クランプ解除窪み153の底面は、レンズユニット10BのY方向外側が内側よりも深くなる(高くなる)ように傾斜しているため、図22(D)に示すように、クランプ16がクランプ解除窪み153から自然に外れる。すなわち、操作者は、入射遮光板150を−Z方向に僅かに撓ませて+X方向にスライドさせるだけで、レンズユニット10Bからクランプ16を取り外すことができる。
<第2の実施の形態の効果>
以上説明したように、本発明の第2の実施の形態では、レンズユニット10Bの各積層部材(レンズカバー板110、上レンズアレイ板120、中間遮光板130、下レンズアレイ板140および入射遮光板150)がクランプ16によって挟み込まれて保持されているため、温度変化および湿度変化に応じた各積層部材の変位が可能になる。その結果、各積層部材の線膨張係数の差によるレンズユニット10Bの反りを抑制することができ、レンズユニット10Bの反りに起因する各構成要素のせん断剥離を防止することができる。
また、入射遮光板150がX方向にスライド可能であり、レンズカバー板110および入射遮光板150がクランプ窪み111,152を有し、クランプ窪み152にX方向に隣接してクランプ解除窪み153が設けられている。そのため、入射遮光板150をX方向にスライドさせることで、クランプ16をクランプ窪み152からクランプ解除窪み153に移動させて取り外し、レンズユニット10Bを簡単に分解することができる。
また、この第2の実施の形態では、レンズユニット10Bの中央部Mにおいて、凸部112,124,143,154と窪み123,133,134,144とが係合している(図20(A))。すなわち、スライドする入射遮光板150を含むレンズユニット10Bの全ての積層部材が、凸部と窪みとの係合によって互いに位置決めされる。そのため、各積層部材を、X方向、Y方向およびZ方向において高精度に位置決めすることができ、レンズユニット10Bの組み立て精度が向上する。
また、入射遮光板150に退避部156(クランプ除去スリット)を設けることにより、レンズユニット10Bの中央部Mにおけるクランプ16の取り外しを容易に行うことができる。
また、このレンズユニット10Bを画像形成装置200のプリントヘッド7に用いることにより、温度変化および湿度変化の影響を抑制し、安定した印刷品質を確保することができる。また、このレンズユニット10Bを画像読取装置300のコンタクトイメージセンサヘッド8に用いることにより、温度変化および湿度変化の影響を抑制し、安定した読取品質を確保することができる。
<他の構成例>
なお、ここでは、レンズユニット10Bの中央部Mで全ての積層部材(レンズカバー板110、上レンズアレイ板120、中間遮光板130、下レンズアレイ板140および入射遮光板150)を互いに係合させたが、中央部Mにおいて入射遮光板150に凸部154を形成しない構成も可能である。その場合には、レンズユニット10Bを分解する際に、最初に中央部Mのクランプ16を取り外す必要がなく、入射遮光板150を+X方向にスライドさせるだけでよい。
また、ここでは、入射遮光板150をスライドさせたが、第1の実施の形態のようにレンズカバー板110をスライドさせるレンズユニット10に、中央部Mで全ての積層部材を互いに係合させる構成を適用してもよい。その場合には、レンズカバー板1に、上レンズアレイ板2の窪み23(図7(A))に係合する凸部を形成し、退避部156(図20(A))と同様の退避部を設ける。
また、ここでは、レンズユニット10Bの非中央部Nにおいて、凸部112,122,141,151と窪み121,131,132,142とが係合しているが(図19(A))、凸部と窪みとの関係は逆でもよい。例えば、レンズカバー板110に凸部112を設け、上レンズアレイ板120に窪み121を設ける代わりに、レンズカバー板110に窪みを設け、上レンズアレイ板120に凸部を設けてもよい。
また、ここでは、レンズユニット10Bの中央部Mにおいて、凸部112,124,143,154と窪み123,133,134,144とが係合しているが(図20(A))、凸部と窪みとの関係は逆でもよい。例えば、上レンズアレイ板120に凸部124を設け、中間遮光板130に窪み133を設ける代わりに、上レンズアレイ板120に窪みを設け、中間遮光板130に凸部を設けてもよい。
また、上述した各実施の形態では、レンズカバー板1(110)と入射遮光板5(150)との間に、2つのレンズアレイ板2,4(120,140)を配置したが、レンズアレイ板の数は1つでもよく、また3つ以上でもよい。また、遮光板の数および配置は、レンズアレイ板の数に応じて適宜選択することができる。
<画像形成装置>
次に、各実施の形態で説明したレンズユニットが適用されるプリントヘッド7(図13)を備えた画像形成装置200(LEDプリンタ)について説明する。
図23は、画像形成装置200を示す図である。画像形成装置200は、電子写真法を用いてカラー画像を形成するものである。画像形成装置200は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)およびブラック(K)の画像を形成するプロセスユニット(画像形成ユニット)9Y,9M,9C,9Kを備えている。プロセスユニット9Y,9M,9C,9Kは、記録媒体Rの搬送路に沿って上流側から下流側(ここでは右から左)に一列に配列されている。
プロセスユニット9Y,9M,9C,9Kの上側には、露光装置としてのプリントヘッド7Y,7M,7C,7Kが、それぞれ感光体ドラム91(後述)に対向するように配置されている。プリントヘッド7Y,7M,7C,7Kは、各色の画像データに基づいて感光体ドラム91の表面を露光し、静電潜像を形成する。
画像形成装置200の下部には、記録媒体Rを収容する媒体収容部としての媒体カセット201と、媒体カセット201に収容された記録媒体R(例えば印刷用紙)を一枚ずつ搬送路に送り出すホッピングローラ202とが備えられている。媒体カセット201から送り出された記録媒体Rの搬送路に沿って、記録媒体Rのスキューを矯正しながら搬送するレジストローラ対203と、記録媒体Rをプロセスユニット9Y,9M,9C,9Kに向けてさらに搬送する搬送ローラ対204とが配設されている。
プロセスユニット9Y,9M,9C,9Kは、使用するトナーを除いて共通の構成を有しているため、以下では「プロセスユニット9」として説明する。また、プリントヘッド7Y,7M,7C,7Kは、「プリントヘッド7」として説明する。
プロセスユニット9は、静電潜像担持体としての感光体ドラム91と、帯電部材としての帯電ローラ92と、現像剤担持体としての現像ローラ93と、現像剤供給部材としての供給ローラ94と、現像剤規制部材としての現像ブレード95と、現像剤収容体としてのトナーカートリッジ96とを備えている。
感光体ドラム91は、金属製の円筒部材の表面に感光層(電荷発生層および電荷輸送層)を積層したものである。感光体ドラム91は、図示しない駆動源とギア列とからなる駆動機構によって、図中時計周りに回転する。
帯電ローラ92は、感光体ドラム91に接触するように配置され、感光体ドラム91に追従して回転する。帯電ローラ92は、帯電電圧を付与され、感光体ドラム91の表面を一様に帯電させる。現像ローラ93は、感光体ドラム91に接触するように配置され、感光体ドラム91と反対方向に回転する。現像ローラ93は、現像電圧を付与され、感光体ドラム91の表面に形成された静電潜像にトナー(現像剤)を付着させて現像し、トナー像(現像剤像)を形成する。
供給ローラ94は、現像ローラ93に接触するように(または対向するように)配置され、現像ローラ93と同方向に回転する。供給ローラ94は、供給電圧を付与され、トナーカートリッジ96から補給されたトナーを現像ローラ93に供給する。現像ブレード95は、金属製の板状部材を屈曲させたものであり、その屈曲部分を現像ローラ93の表面に押し当てている。現像ブレード95は、現像ローラ93の表面のトナー層の厚さを規制する。トナーカートリッジ96は、プロセスユニット9に着脱可能に取り付けられ、トナーを収容している。トナーカートリッジ96は、現像ローラ93および供給ローラ94にトナーを補給する。
各プロセスユニット9の下側には、感光体ドラム91に対向するように、転写部材としての転写ローラ97が配置されている。転写ローラ97は、シャフトに半導電性のゴム層を形成したものである。転写ローラ97は、転写電圧を付与され、感光体ドラム91の表面のトナー像を、感光体ドラム91と転写ローラ97との間を通過する記録媒体Rに転写する。
記録媒体Rの搬送方向においてプロセスユニット9Y,9M,9C,9Kの下流側(図中左側)には、定着ユニット205が配置されている。定着ユニット205は、記録媒体Rに転写されたトナー像を熱および圧力により記録媒体Rに定着させる定着ローラ206および加圧ローラ207を備えている。
また、記録媒体Rの搬送方向において定着ユニット205の下流側には、定着が完了した記録媒体Rを画像形成装置200外に排出するための排出ローラ対208,209が設けられている。また、画像形成装置200の上部には、排出された記録媒体Rを載置するスタッカ210が設けられている。
なお、画像形成装置200には、両面印刷モードにおいて、表面へのトナー像の転写および定着が完了した記録媒体Rを、表裏を反転させてレジストローラ対203まで搬送する両面印刷ユニット211(図24に破線で示す)が設けられている。この両面印刷ユニット211については、説明を省略する。
画像形成装置200のプリントヘッド7として、第1の実施の形態または第2の実施の形態で説明したレンズユニット10,10A,10Bを備えたプリントヘッド7を用いることができる。
画像形成装置200の基本的な動作は、以下の通りである。画像形成装置200は、パーソナルコンピュータ等の上位装置から印刷コマンドおよび印刷データを受信すると、画像形成動作を実行する。まず、ホッピングローラ202が回転し、媒体カセット201に収容された記録媒体Rを一枚ずつ搬送路に送り出す。搬送路に送り出された記録媒体Rは、レジストローラ対203および搬送ローラ対204によって、プロセスユニット9Y,9M,9C,9Kに搬送される。
各プロセスユニット9では、感光体ドラム91の表面が帯電ローラ92によって一様に帯電したのち、プリントヘッド7によって感光体ドラム91の表面が露光され、静電潜像が形成される。また、トナーカートリッジ96から供給されたトナーは、供給ローラ94によって現像ローラ93に供給され、現像ブレード95によって現像ローラ93の表面に均一な厚さのトナー像が形成される。感光体ドラム91の表面に形成された静電潜像は、現像ローラ93によって現像されてトナー像となる。感光体ドラム91の表面に形成されたトナー像は、感光体ドラム91と転写ローラ97との間を通過する記録媒体Rに転写される。記録媒体Rがプロセスユニット9Y,9M,9C,9Kを通過することにより、記録媒体Rの表面に、イエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックのトナー像が転写される。
トナー像が転写された記録媒体Rは、定着ユニット205に搬送され、定着ローラ206および加圧ローラ207によって熱および圧力が加えられ、トナー像が記録媒体Rに定着する。トナー像が定着した記録媒体Rは、排出ローラ対208,209によって、画像形成装置200の外部に排出され、スタッカ210に積載される。これにより画像形成動作が完了する。
<画像読取装置の構成>
次に、各実施の形態で説明したレンズユニットが適用されるコンタクトイメージセンサヘッド8(図15)を備えた画像読取装置300について説明する。
図24は、画像読取装置300を示す斜視図である。画像読取装置300は、例えばフラットベッド型のイメージスキャナである。画像読取装置300は、筐体301と、筐体301の上面に設けられた原稿台302と、原稿台302を覆う蓋303とを備えている。原稿台302は、可視光線を透過するガラス等の材料で構成されており、その表面に読取原稿(読取対象物)が載置される。
原稿台302の下側には、読取ヘッドとしてのコンタクトイメージセンサヘッド8が設けられている。コンタクトイメージセンサヘッド8を副走査方向(Y方向)に案内するため、原稿台302に沿って一対のガイド306が設けられている。また、コンタクトイメージセンサヘッド8は、駆動ベルト307に連結されており、この駆動ベルト307は、ステッピングモータ308に連結されている。また、コンタクトイメージセンサヘッド8は、フレキシブルフラットケーブル309を介して制御回路310に接続されている。
画像読取装置300の基本動作は、以下の通りである。原稿台302上に原稿を載置し、所定のスイッチ(例えばスキャンボタン)を押下すると、コンタクトイメージセンサヘッド8に取り付けられた光源(図示せず)が点灯して原稿台302上の読取原稿を照明する。読取原稿の面で反射された光は、コンタクトイメージセンサヘッド8に入射する。コンタクトイメージセンサヘッド8は、ステッピングモータ308によって駆動される駆動ベルト307によってY方向に移動しながら、読取原稿の表面で反射された光を取り込む。読取原稿からの光は、レンズユニット10の各マイクロレンズ20,40(図9(A))により、受光素子81(図15)に集光する。受光素子81で受光した光信号は、電気信号に変換される。
なお、上記のようにコンタクトイメージセンサヘッド8を移動させる代わりに、原稿台302上の所定の読取位置を通過するようにADF(Automatic Document Feeder)で原稿を搬送し、当該読取位置に停止したコンタクトイメージセンサヘッド8で原稿の画像を読み取ってもよい。
本発明は、レンズアレイを備えたレンズユニット、レンズユニットを用いたプリントヘッドおよびコンタクトイメージセンサヘッド、プリントヘッドを用いた露光装置および画像形成装置、並びにコンタクトイメージセンサを用いた画像読取装置に適用することができる。
以上、本発明の望ましい実施の形態について具体的に説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良または変形を行なうことができる。
画像形成装置としては、例えば、プリンタ、複写機、ファクシミリ装置および複合機などがある。画像読取装置としては、例えば、スキャナおよび複合機などがある。