JP2018054104A - すべり軸受用ブシュ及びすべり軸受 - Google Patents
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Abstract
【課題】耐破壊性などに優れるとともに、製造の容易なすべり軸受用ブシュ及びすべり軸受を提供する。
【解決手段】板状の金属部材である裏金および裏金の表面に形成された金属粉末の焼結層を有するすべり軸受用ブシュであって、裏金は、焼結層に接する表面から径方向に沿って、第1領域、第2領域および第3領域を少なくとも有し、第1領域の硬さ>第3領域の硬さ>第2領域の硬さ、が成立している。
【選択図】図5
【解決手段】板状の金属部材である裏金および裏金の表面に形成された金属粉末の焼結層を有するすべり軸受用ブシュであって、裏金は、焼結層に接する表面から径方向に沿って、第1領域、第2領域および第3領域を少なくとも有し、第1領域の硬さ>第3領域の硬さ>第2領域の硬さ、が成立している。
【選択図】図5
Description
本発明は、すべり軸受用ブシュ及びすべり軸受の技術に関する。
従来、建機や自動車などの各種機械において、ハウジングに挿通された軸を回転可能とするために、すべり軸受などの摺動部材が用いられており、これに関する技術も開示されている。
特許文献1は、少なくとも軸とブシュを有し、ブシュは多孔質の鉄系焼結材からなるすべり軸受組立体において、ブシュは240cSt〜1500cStの範囲内の粘度を有する潤滑油が含浸されているすべり軸受組立体を開示している。
特許文献2は、裏金鋼板上に焼結接合されたFe系焼結摺動材料層を有する鉄系焼結複層巻ブッシュを開示している。Fe系焼結摺動材料層は、例えば、C:0.40〜5重量%、Cu:8〜40重量%、Sn:0.5〜10重量%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなるFe−C−Cu−Sn系焼結摺動材料用混合粉末を前記裏金鋼板上に仮焼結接合し、丸曲げ加工後に1000℃以上の高温で液相焼結により本焼結接合を施したものである。
特許文献1における多孔質の鉄系焼結材は靱性が小さいため、局所的な衝撃や部材の当たりにより一旦き裂が生ずると、その伸展は止め難く、ブシュの構造を維持すること自体が困難となる。また、多孔質の材料は、一般的に汚泥環境下では耐摩耗性が減少する傾向がある。
特許文献2におけるブシュは裏金鋼板とFe系焼結摺動材料層からなる、いわゆるバイメタル構造を有している。このような構造においては、ブシュの交換の目安となるライニング(Fe系焼結摺動材料)の摩耗量に対して、所定の安全率を持たせる必要があり、高い安全率の確保のためにライニングの厚みを大きく確保する必要がある。しかしながら、このような厚みの大きいライニングの曲げ加工は難しく、製造が困難となり得る。
本発明は、耐破壊性などに優れるとともに、製造の容易なすべり軸受用ブシュ及びすべり軸受を提供する。
本発明は、板状の金属部材である裏金および当該裏金の表面に形成された金属粉末の焼結層を有するすべり軸受用ブシュであって、前記裏金は、前記焼結層に接する表面から径方向に沿って、第1領域、第2領域および第3領域を少なくとも有し、前記第1領域の硬さ>前記第3領域の硬さ>前記第2領域の硬さ、が成立している。
本発明の好ましい態様として例えば、前記第1領域において、前記裏金の前記表面から拡散した炭素を含有する炭素拡散層を有する。
本発明の好ましい態様として例えば、前記焼結層が、Cu:13.5〜22.5質量%、Sn:1.5〜2.5質量%、C:0.5〜3.0質量%を含有するとともに、残部がFe及び不可避的不純物からなる。
本発明の好ましい態様として例えば、前記裏金の炭素含有量が0.4質量%以下である。
本発明の好ましい態様として例えば、前記裏金の前記表面から0.1mmまでの領域の硬さが、ビッカース硬さ150Hv以上である。
本発明の好ましい態様として例えば、前記焼結層の内周面には複数のインデントが形成され、前記内周面全体の面積に対する前記インデントの全面積の割合が30%以下である。
上記すべり軸受用ブシュと、当該すべり軸受用ブシュの周囲に設けられたカラーより、本発明のすべり軸受が構成される。
本発明によれば、耐破壊性などに優れるとともに、製造が容易なすべり軸受用ブシュ及びすべり軸受を提供することができる。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。図1は、実施形態の摺動部材であるすべり軸受(以下、「軸受」と呼ぶ)40の概略図である。軸受40は円筒状の外形を呈しており、その摺動面としての内周面(内側)7から外周面(外側)8に向かう径方向に沿って、焼結層11、裏金15、カラー30の三層が、同心円状に配置されている。本実施形態に係る軸受40は、図示しない建機や自動車などの各種機械が有するハウジングに挿通された軸を回転可能とするために用いられるすべり軸受であり、ハウジングに圧入されて使用されるものである。この軸は、軸受40の中央に形成された穴を貫通するとともに、回転可能に支持されている。
焼結層11は、金属粉末を焼結して得られる焼結体(焼結合金)より構成され、回転する軸と直接接触する部材であって、いわゆるライニングとして機能し、軸が摺動しながら回転するため、低摩擦性、耐摩耗性、耐焼付性などが要求される。焼結層11の軸に摺動する内周面には、外部から潤滑油を供給する溝6と、溝6から供給された潤滑油を溜めることが可能なインデント(へこみ)5が複数形成されている。図1に示すように、インデント5は半球形状を有しているが、その形状は特に限定はされない。また、耐破壊性を確保するため、内周面7の全体の面積に対するインデント5の全面積の割合は30%以下に設定される。
裏金15は、板状の金属部材より構成され、軸からの荷重を受ける部材である。裏金15と焼結層11との二層構造に降り構成されるバイメタルが、主として摺動部材としての役割を果たすすべり軸受用ブシュ(以下、「ブシュ」と呼ぶ)20を構成する。後述するように、このバイメタルは、潤滑油が含浸されているとともに、所定の強度を確保するため熱処理が施されている。
カラー30は、円筒形状を呈する金属部材より構成され、軸受40の全体形状を維持するとともに、軸受40(ブシュ20)をハウジングなど他の部材に固定するための部材である。ブシュ20がカラー30の内面に圧入されることにより、軸受40が形成される。
次に、実施形態に係る摺動部材である軸受40の製造方法について説明する。
本実施形態に係る軸受40の製造方法は、図2、図3に示す如く、粉末散布工程(ステップS01)と、焼結・圧延工程(ステップS02)と、インデント形成行程(ステップS03)と、ブシュ成形工程(ステップS04)と、熱処理工程(ステップS05)と、圧入工程(ステップS06)と、含油・仕上げ工程(ステップS07)と、を備える。以下、各工程について具体的に説明する。
図2に示す粉末散布工程(ステップS01)では、まず、板状の金属部材である裏金15を準備する。この裏金15の材料には例えば鉄系部材などが用いられる。次に、主に鉄粉と銅粉とが略均一に混合された金属粉末を、散布装置を用いて裏金15の表面15aに散布し、散布層11bを形成する。このように、板状の裏金15の表面に略均一に散布層11bを散布して、板状の焼結前部材10bを構成する。
次に、図2に示す焼結・圧延工程(ステップS02)では、粉末散布工程(ステップS01)で構成した焼結前部材10bを焼結炉に入れてヒータで加熱し、散布層11bにおける主成分である鉄粉末の融点よりも低い温度(例えば、800〜1300度)の雰囲気で散布層11bを焼結させる。これにより、散布層11bは多孔質の焼結層11となり、焼結前部材10bは裏金15と焼結層11とのバイメタルからなる焼結合金10となる。本実施形態では、焼結工程を複数回繰り返すと同時に、焼結工程の間に焼結合金10をローラで圧延する圧延工程を行うことにより、焼結合金10の板厚を薄く形成している。また、本実施形態では連帯焼結法によって焼結合金10を形成するものであるが、単体焼結法など他の方法で形成する構成とすることも可能である。
次に、図2に示すインデント形成工程(ステップS03)では、軸受40の内周面となる焼結層11の表面に、加工棒を用いてインデント5を形成する。インデント5の形成方法は特に限定されず、プレス金型、カッター、ドリルなどによる種々の加工法を用いることができる。インデント5の形状や深さは特に限定はされない。また、この工程において、同時に溝6を形成することもできる。
次に、図2に示すブシュ成形工程(ステップS04)では、ステップS01〜ステップS03で形成した焼結合金10を、焼結層11が内側となるようにプレス機等によって巻いて曲げ加工を行い、円筒状のブシュ20を成形する。このブシュ成形工程によって、後に摺動部材である軸受40の内周面となる、ブシュ20の内周面が形成される。
次に、図3に示す熱処理工程(ステップS05)では、ブシュ20に対して浸炭焼入れ・焼戻し等の熱処理を行い、ブシュ20のライニング硬化および表面改質を行う。この処理より、裏金15及び焼結層11それぞれのライニングの硬度が向上する。
ステップS05の熱処理工程においては、ブシュ20を不活性雰囲気中で、所定の温度制御を行いながら浸炭焼入れ・焼戻しをする。例えば、800℃以上(具体的には830〜900℃)の温度下で0.5〜2時間加熱し(焼入れ)、その後油などへの浸漬により急冷し、さらに140℃以上(具体的には140〜250℃)の温度下で0.5〜2時間加熱する(焼戻し)。ただし、温度や時間はこのような特定の範囲に限定されるものではない。
以上の工程により、図5の「実施例」で示す特殊な硬さを持つ軸受40が得られ、特に裏金15の径方向における硬さに特殊な変化を付与することができる。詳細については後述する。
次に、図3に示す圧入工程(ステップS06)では、円筒状の金属部材(例えば鉄系部材)であるカラー30に、熱処理を行ったブシュ20を圧入し、軸受40を形成する。カラー30の内径寸法はブシュ20を圧入できる程度に、ブシュ20の外径寸法と同一若しくは若干小さく形成されている。この圧入工程によって、後に摺動部材である軸受40の外周面となる、カラー30の外周面が形成される。
次に、図3に示す含油・仕上げ工程(ステップS07)では、含油機を用いて軸受40に高粘度潤滑油からなる油分を含浸させる。含油工程では、高粘度潤滑油を加熱して低粘度化し、この潤滑油内に軸受40を浸漬し、真空雰囲気下で静置する。これにより、軸受40の気孔内の空気が気孔外へ吸い出される一方で、低粘度化した潤滑油が軸受40の気孔内に吸引される。潤滑油を吸引した軸受40を空気中に取り出して室温にまで放冷すると、低粘度化した潤滑油は軸受40の気孔内で再び元の高粘度潤滑油に戻り流動性を失う。これにより、高粘度潤滑油を軸受40の気孔内に留めておくことができる。
上記の如く、本実施形態に係る摺動部材である軸受40においては、板状の金属部材である裏金15の表面において金属粉末を焼結して焼結層11が形成されることにより、バイメタルの焼結合金10が形成される。そして、焼結合金10が円筒状のブシュ20として成形され、ブシュ20に熱処理が施された後に、ブシュ20が円筒状の金属部材であるカラー30に圧入されて、軸受40が形成されるのである。即ち、本実施形態に係る軸受40は、図1に示す如く、その内側から外側に向かって、焼結層11、裏金15、カラー30の三層が配置されているのである。すなわち、ブシュ20と、ブシュ20の周囲に設けられたカラー30より、軸受40が構成される。
上記の如く構成することにより、軸受40をハウジングに圧入する際に、ハウジングを傷めにくくすることができる。具体的には、軸受40の外周に配置されるカラー30には熱処理が行われていないため、カラー30の硬度は裏金15等と比較して小さくなる。このため、軸受40をハウジングに圧入する際にハウジングと当接するカラー30の部分でかじりの発生を抑制することが可能となるのである。
また、熱処理がされていないカラー30が外周部に配置されることにより、軸受40の全体的な硬さを抑えることができる。これにより、軸受40が局部的に発生する強い当りを減少させることができ、耐焼付き性及び耐摩耗性を向上させて割れを生じにくくすることができる。
加えて、厚み(半径方向の厚さ)が大きい軸受40を形成する場合でも、カラー30の半径方向厚さを調整すればよく、焼結合金10の厚さを一定とすることができる。このため、軸受40の厚みが大きい場合でも容易に成形することが可能となる。
さらに、本実施形態によれば、板状の焼結前部材10bから焼結合金10を形成し、この焼結合金10を曲げ加工してブシュ20を成形する構成としているため、焼結材料のみで円筒状部品を成形する必要がなく、容易に加工することができる。加えて、脆性の高い焼結材料のみをカラー30に圧入する必要がないため、焼結材料をカラー30に圧入する際に割れが生じることがない。
また、板状の焼結合金10の段階で溝加工又はインデント加工により溝やインデントを形成しておくことができるため、軸受40の内周面に溝やインデントを容易に形成して、軸受40の内周面における摺動特性を向上させることが可能となる。
上記の如く、本実施形態によれば、ハウジングに圧入する際に軸受40の裏金部分であるカラー30にかじりが生じにくく、割れにくく、溝やインデント等の成形がしやすい、軸受40を製造することが可能となるのである。
尚、本願発明の「円筒状の金属部材であるカラー30」は、パイプ材やソリッド材から切削形成しても、また、板状(帯状)の部材の端部同士を突き合せて(巻いて)形成してもよく、コスト面や設備面で適宜選択可能である。その場合は締め代を持たせるために合せ目を閉じた状態で仕上げ加工をする。さらに、板状部材を巻いてカラーを形成する場合は、合せ目を溶接で結合するのみでなく、クリンチ形状で結合するようにしてもよい。
以下、図4を用いて、カラー30を板状部材から形成し、合せ目をクリンチ形状で結合した場合について説明する。具体的には図4(a)に示す如く、両端にクリンチ形状(略円形状の係合凸部17a及び係合凹部17bを有する板状部材を、図示しない曲げ加工機等によって巻いて曲げ加工を行い、中央部分が半円筒状の曲げ部材17cを成形する。この際、曲げ部材17cにおける内周面の曲率半径は、ブシュ20における外周面の曲率半径と略同一か、少し大きくなるように形成する。この荒曲げ工程によって形成される曲げ部材17cにおける外側の面が、カラー30の外周面、即ち軸受40の外周面となる。
次に、図4(b)に示す如く、半円筒形状の固定型である上型52sの側に曲げ部材17cの中央部分(半円筒状部分)をセットする。そして、同じく半円筒形状の可動型である下型52mを、曲げ部材17cの端部の側から図4(b)に示す矢印Uの如く近接させるのである。これにより、板状部材である曲げ部材17cの両側端部を、下型52mの半円筒面に沿わせて変形させることにより、クリンチ形状を係合させる。具体的には、係合凸部17aを係合凹部17bに進入させて係合させることにより、板状部材である曲げ部材17cの両側端部を接合するのである。このようにして、外側部材であるカラー30を形成する。その後、ブシュ20を円筒状のカラー30に圧入して、軸受40を形成するのである。
図5は、実施例及び従来品の軸受に関して、径方向(肉厚方向;図1参照)におけるビッカース硬さの変化を示すグラフである。「実施例」は、本発明の実施形態に係る軸受である。「従来品1」は、従来のFe−Cu系の焼結合金からなり潤滑油を含有するブシュを有する軸受である。「従来品2」は、従来の高周波焼入れを施したFe系のブシュを有する軸受である。「従来品3」は、従来の浸炭焼入れを施したFe系のブシュを有する軸受である。
図2、図3で示した工程、特に図3に示す熱処理工程(ステップS05)を行うことにより、図5の「実施例」で示す特殊な硬さを持つ軸受40が得られる。すなわち、「従来品1」では、径方向に渡って硬さは略一定の値をとっている。「従来品2」では、径方向の内側および外側で硬さが大きくなり、中間では硬さが小さくなっている。「従来品3」では、径方向の外側ほど硬さは小さくなっている。
一方、実施例では、特に裏金15の径方向において硬さが特殊な挙動を示している。すなわち裏金15は、図5に示すように、焼結層11に接する表面(内側表面)から径方向に沿って、第1領域A、第2領域Bおよび第3領域Cの少なくとも三つの領域を有しており、第1領域の硬さ>第3領域の硬さ>第2領域の硬さの関係が成立している。
第1領域は、焼結層11に接する表面から所定の長さに渡って存在する領域であり、裏金15のなかで比較的大きな硬さを持つ。具体的には、焼結・圧延工程(ステップS02)および熱処理工程(ステップS05)における、焼結層11に接する表面から所定の長さに渡って焼結層11の炭素が拡散する、いわゆる浸炭作用により、第1領域は、炭素を多く含有する炭素拡散層を有する。炭素が拡散することより、第1領域の硬さは、第2領域および第3領域に比べて大きい。
また、熱処理工程(ステップS05)において、外側の第3領域が炭素を含有した雰囲気にさらされて、第3領域に炭素が拡散する。第3領域は第1領域に比べて炭素の含有量が少なく、硬さも第1領域よりは小さいが、第2領域に比べて炭素の含有量が多く、硬さは第2領域よりも大きい。硬さが大きい第3領域が外側に存在するため、ブシュ20の構造が維持される。
一方、第2領域は、径方向に沿って第1領域および第3領域の中間に存在し、熱処理工程(ステップS05)において炭素が拡散する可能性が小さく、第2領域の硬さは、第1領域および第3領域に比べて小さい。すなわち第2領域は硬さは小さいが、炭素含有量が小さいため粘り強い、すなわち靱性が大きい。このことから、第2領域は延性が大きい、すなわち延びやすい性質をもっており、脆性破壊が生じにくい。
以上の構成によれば、熱処理工程の焼入れによる、焼結層11と裏金15のバイメタルの硬化処理が行われ、炭素が焼結層11から裏金15に浸入し拡散する、いわゆる浸炭により、炭素拡散層が形成される。この炭素拡散層はいわば硬化層であり、この炭素拡散層を含む、裏金15の焼結層11に接する表面を含む第1領域が硬化するとともに、裏金15の内部である第2領域では、表面に比べて硬さが小さく、やわらかい性質を持つ。
裏金15の内部は、比較的柔らかく靱性の高い第2領域が占めているため、所定の延びやすさが確保されている。したがって、たとえ焼結層11または裏金15の表面に、局所的な衝撃や部材の当たりによりひび割れ、き裂等が生じても、さらにひび割れ、き裂等が裏金15の内部に向けて伸展するのを抑制することができ、耐破壊性を確保することができる。よって、ブシュの構造を強固に維持することができる。
また、焼結層11であるライニングが摩耗し、裏金15の表面が露出しても、当該表面が硬く、耐摩耗性、耐荷重性が確保されているため、裏金15(の表面)にライニングのバックアップ層としての機能を持たせることができる。また、裏金は多孔質ではないため、汚泥環境下でも高い耐摩耗性が確保される。
よって、使用限界時間を過ぎた使用により、焼結層11が摩耗により消失しても、裏金15の表面が焼結層11と同等の役割を果たすため、軸受40がいきなり破壊される事態を防止することができ、建機や自動車などの各種機械が停止してしまう事態を回避することができる。例えば破線で示した内周面(摺動面)7から、市場での一般的なブシュ20の交換目安である1.5mmの位置まで摩耗しても、軸受40は破壊しない。
また、焼結層11の厚みそのものを、ブシュ20の交換の目安に設定することができる。すなわち、焼結層11の許容できる摩耗量を大きく確保でき、焼結層11が完全に摩耗により消失する前にブシュ20を交換すべき安全率を小さくする、またはなくすことができる。このことは、焼結層11の厚みを下げることができることを意味し、ライニングの曲げ加工が容易となる。
焼結層11は鉄を主成分とするFe系焼結層が好ましい。例えば焼結層11は、Cu:13.5〜22.5質量%、Sn:1.5〜2.5質量%、C:0.5〜3.0質量%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなるのが好ましい。このような焼結層11によれば、大きな硬さを有するため、優れた耐摩耗性、耐破壊性が確保される。
また、粉末散布工程(ステップS01)において、散布層11bの炭素含有量は、裏金15の炭素含有量より大きく設定することにより、熱処理工程(ステップS05)において、焼結層11から裏金15への炭素の拡散が円滑に行われる。この結果、裏金15の全体における炭素含有量は、焼結層11の炭素含有量より小さいことが好ましい。特に裏金15の全体における炭素含有量は0.4質量%以下であることが好ましい。
また、裏金15の焼結層11に接する表面から0.1mmまでの領域(第1領域に含まれる)硬さが、ビッカース硬さ150Hv以上であることが好ましい。これにより裏金15(の表面)にライニングのバックアップ層としての機能を持たせることができる。
図6は、実施例の焼結層および裏金の組織を示す電子顕微鏡写真である。裏金の表面は、裏金の内部と組織が明らかに異なっており、炭素拡散層(硬化層)が形成されていることを観測できる。
また、焼結層11の内周面7には複数のインデント5が形成されているが、内周面7全体の面積に対するインデント5の全面積の割合は30%以下であることが好ましい。これにより、また、高い耐破壊性を確保することができる。
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
本発明に係るすべり軸受用ブシュ及びすべり軸受によれば、耐破壊性などに優れるとともに、製造が容易なすべり軸受用ブシュ及びすべり軸受を提供することができ、産業上有用である。
5 インデント
6 溝
7 内周面
8 外周面
11 焼結層
15 裏金
20 ブシュ(すべり軸受用ブシュ)
30 カラー
40 軸受(すべり軸受)
6 溝
7 内周面
8 外周面
11 焼結層
15 裏金
20 ブシュ(すべり軸受用ブシュ)
30 カラー
40 軸受(すべり軸受)
Claims (7)
- 板状の金属部材である裏金および当該裏金の表面に形成された金属粉末の焼結層を有するすべり軸受用ブシュであって、
前記裏金は、前記焼結層に接する表面から径方向に沿って、第1領域、第2領域および第3領域を少なくとも有し、
前記第1領域の硬さ>前記第3領域の硬さ>前記第2領域の硬さ、が成立している、
すべり軸受用ブシュ。 - 前記第1領域において、前記裏金の前記表面から拡散した炭素を含有する炭素拡散層を有する、請求項1に記載のすべり軸受用ブシュ。
- 前記焼結層が、Cu:13.5〜22.5質量%、Sn:1.5〜2.5質量%、C:0.5〜3.0質量%を含有するとともに、残部がFe及び不可避的不純物からなる、請求項1または2に記載のすべり軸受用ブシュ。
- 前記裏金の炭素含有量が0.4質量%以下である、請求項1から3いずれか1項に記載のすべり軸受用ブシュ。
- 前記裏金の前記表面から0.1mmまでの領域の硬さが、ビッカース硬さ150Hv以上である、請求項1から4のいずれか1項に記載のすべり軸受用ブシュ。
- 前記焼結層の内周面には複数のインデントが形成され、前記内周面全体の面積に対する前記インデントの全面積の割合が30%以下である、請求項1から5のいずれか1項に記載のすべり軸受用ブシュ。
- 請求項1から6のいずれか1項に記載のすべり軸受用ブシュと、当該すべり軸受用ブシュの周囲に設けられたカラーと、を備えるすべり軸受。
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