以下に、図面を参照しながら本実施の形態について説明する。いくつかの図面を通して付された同じ符号は、同じ部品か対応する部品を示す。
<第一実施形態>
本実施の形態におけるベースバルブ3は、図1に示すように、緩衝器Dに適用されており、緩衝器Dが収縮作動をする際に減衰力を発揮するようになっている。
この緩衝器Dは、図1に示すように、シリンダ10と、シリンダ10内に摺動自在に挿入されてシリンダ10内を伸側室R1と圧側室R2に区画するピストン11と、ピストン11を先端に保持するとともにシリンダ10内に軸方向に移動自在に挿入されるロッド12と、シリンダ10とこのシリンダ10を収容する外筒1との間に形成されるリザーバRと、シリンダ10の図中下端に装着されてリザーバRと圧側室R2とを区画するとともにシリンダ10内からリザーバRへ排出される液体に抵抗を与えるベースバルブ3と、シリンダ10の図中上端に装着されロッド12の軸方向の移動をガイドする環状のロッドガイド2とを備える。
以下、緩衝器Dの各部について詳細に説明する。ピストン11には、伸側室R1と圧側室R2とを連通する通路である伸側通路14および圧側通路15と、これらの通路14,15を通過する液体の流れに抵抗を与える減衰力調整バルブVが設けられている。
本例では、図1に示すように、減衰力調整バルブVは、伸側通路14に設けられ伸側室R1から圧側室R2に向けて移動する液体の流れに抵抗を与える伸側減衰弁V1と、圧側通路15に設けられ圧側室R2から伸側室R1に向けて移動する液体の流れに抵抗を与える圧側減衰弁V2とで構成されている。
伸側減衰弁V1は、本例では電磁弁であって、伸側通路14の途中に設けた弁体30と、伸側通路14を遮断するように弁体30を附勢するバネ31と、通電時にバネ31に対抗する推力を発生するソレノイド32とを備えて構成される。これにより、ソレノイド32に流れる電流量を調整すると伸側減衰弁V1の開弁圧を調整できるようになっている。
また、圧側減衰弁V2も同様に、本例では電磁弁であって、圧側通路15の途中に設けた弁体40と、圧側通路15を遮断するように弁体40を附勢するバネ41と、通電時にバネ41に対抗する推力を発生するソレノイド42とを備えて構成される。これにより、ソレノイド42に流れる電流量を調整すると圧側減衰弁V2の開弁圧を調整できるようになっている。
また、減衰力調整バルブVは、本例のようなソレノイドバルブでなくとも、減衰力を可変にできるバルブであればよく、例えばロータリバルブや電磁絞り弁であってもよい。
本実施の形態に係るベースバルブ3は、図1、図2に示すように、シリンダ10の下端に嵌合され、圧側室R2とリザーバRとを区画するとともに、圧側室R2とリザーバRとを連通する排出ポート21を有する環状のバルブディスク20と、バルブディスク20のリザーバR側に積層されて排出ポート21を介してシリンダ10内からリザーバRに排出される液体の流れに抵抗を与える環状の弁体4とを備えて構成されている。
また、バルブディスク20には、リザーバRと圧側室R2を連通する吸込ポート22が排出ポート21と並列に配設されており、吸込ポート22はバルブディスク20の圧側室R2側に積層された環状の逆止弁23によりリザーバRから圧側室R2へ向かう液体の流れのみを許容する通路とされている。
また、図2に示すように、バルブディスク20の図中下端であるリザーバR側には環状窓20aが設けられており、排出ポート21の出口端は環状窓20aに連通している。さらに、バルブディスク20のリザーバR側には、環状窓20aの内周に沿う環状の内周シート部20bと、環状窓20aの外周に沿い環状窓20aを囲う環状の外周シート部20cが形成されている。
弁体4は、図2に示すように、バルブディスク20に積層された第一リーフバルブ5と、第一リーフバルブ5に間座7を介して積層された第二リーフバルブ6とを備えて構成される。
そして、図1に示すように、バルブディスク20と弁体4と逆止弁23の内周には、軸部材8が挿通されており、これらの部材は軸部材8の外周に装着されている。具体的には、軸部材8は、基端にフランジ8aを備えるとともに先端にバルブナット24が螺着されている。そして、第二リーフバルブ6、間座7、第一リーフバルブ5、バルブディスク20、逆止弁23は、この順番でフランジ8aに積層され、バルブナット24で締め付けられてフランジ8aとバルブナット24とで挟持されている。これにより、バルブディスク20と弁体4と逆止弁23を軸部材8の外周に固定して装着している。なお、フランジ8aと第二リーフバルブ6の間には第二リーフバルブ6の内周側にのみ当接する外径のスペーサ25が介装されている。これにより、第二リーフバルブ6は、外周側の撓みが許容される。
第一リーフバルブ5は、図2に示すように、軸部材8の外周に内周固定された複数の環状板であって、バルブディスク20側の環状板の外周側面に切欠5aを備えている。そして、第一リーフバルブ5は、内周側面が内周シート部20bに固定され、外周側面が外周シート部20cに着座している。これにより、第一リーフバルブ5が外周シート部20cに着座した状態では切欠5aがオリフィスとして機能する。
第二リーフバルブ6は、軸部材8の外周に内周固定された複数の環状板で構成されている。なお、第一リーフバルブ5および第二リーフバルブ6の環状板の枚数は必要な剛性に基づいて任意に決定すればよいが、本例では、第二リーフバルブ6を構成する環状板を第一リーフバルブ5よりも多く積層して、第一リーフバルブ5の剛性を第二リーフバルブ6の剛性よりも低く設定している。
間座7は、外径が第一リーフバルブ5より小径であって第一リーフバルブ5の内周側にのみ当接する環状板であるため、第一リーフバルブ5と第二リーフバルブ6の間に介装されることで、間座7の外周側であって、第一リーフバルブ5と第二リーフバルブ6の間に隙間S1を形成する。また、隙間S1の大きさは間座7の軸方向の厚みに基づいて決定されるため、必要な隙間S1の大きさに合わせて適宜必要な厚みの間座7を選択すれば、隙間S1を任意の大きさに設定できる。
さらに、第一リーフバルブ5は、軸部材8に装着されてバルブディスク20に固定されると、間座7の外周縁を支点として外周側の撓みが許容される。
なお、本実施の形態においては、1つの間座7で隙間S1を形成しているが、複数の間座7を設けて隙間S1を形成するようにしてもよい。
次に、本実施の形態に係る緩衝器Dの作動を説明する。緩衝器Dが伸長すると、伸側室R1が圧縮され、圧側室R2が拡大するため、液体が伸側減衰弁V1を途中に設けた伸側通路14を通って圧側室R2に移動する。この際、伸側室R1から圧側室R2に移動する液体の流れには、伸側減衰弁V1で抵抗が与えられて緩衝器Dは伸側減衰力を発揮する。ここで、伸側減衰弁V1の開弁圧はソレノイド32に流れる電流量によって決定されるため、緩衝器Dの伸側減衰力は、ソレノイド32への通電量によって調整できる。また、この際、ロッド退出体積分の液体が吸込ポート22を介してリザーバRからシリンダ10内に流入するため、シリンダ内容積変化を補償できる。
反対に、緩衝器Dが収縮すると、伸側室R1が拡大され、圧側室R2が圧縮されるため、圧側室R2内の液体が圧側減衰弁V2を途中に設けた圧側通路15を通って伸側室R1に移動する。
この際、緩衝器Dの収縮作動時に圧側室R2から伸側室R1に移動する液体の流れには、圧側減衰弁V2で抵抗が与えられて緩衝器Dは圧側減衰力を発揮する。圧側減衰弁V2の開弁圧はソレノイド42に流れる電流量によって決定されるため、緩衝器Dの圧側減衰力は、ソレノイド42への通電量によって調整できる。
以上より、本実施の形態に係る緩衝器Dは、減衰力調整バルブVの開弁圧の調節により、緩衝器Dの伸側減衰力と圧側減衰力をソフトからハードまで調整できる。
また、緩衝器Dの収縮作動時には、ロッド侵入体積分の液体がシリンダ10内で過剰となるため、ベースバルブ3の弁体4を押し開いて、ロッド侵入体積分の液体が排出ポート21を介してリザーバRに排出される。
したがって、ベースバルブ3は、シリンダ10内からリザーバRに排出される液体の流れに、弁体4の剛性に基づく抵抗を与えて、緩衝器Dの圧側減衰力の一部を発揮する。
ここで、本例のベースバルブ3の弁体4を構成する第一リーフバルブ5と第二リーフバルブ6は、隙間S1を介して配置されている。
そのため、第一リーフバルブ5は、隙間S1分撓むことができる。この構成によると、圧側室R2内の圧力が低い場合、第一リーフバルブ5がまず撓むようになっている。そして、圧側室R2内の圧力が高くなって、第一リーフバルブ5の撓み量が増えると、第一リーフバルブ5が第二リーフバルブ6に当接する。すると、第二リーフバルブ6は第一リーフバルブとともに撓むため、圧側室R2内の圧力が高くなると弁体4の剛性が大きくなる。
これにより、緩衝器Dの圧側減衰力がソフトに設定されて圧側室R2内の圧力が低くなる場合には、第一リーフバルブ5が隙間S1の範囲内で撓むので、ベースバルブ3は、排出ポート21を通過する液体の流れに対して、第一リーフバルブ5の剛性のみに基づく抵抗を与える。したがって、緩衝器Dの圧側減衰力がソフトに設定される場合には、ベースバルブ3の抵抗が小さくなるため、緩衝器Dの収縮作動時のソフト減衰力が高くならない。
対して、緩衝器Dの圧側減衰力がハードに設定されて圧側室R2内の圧力が高くなる場合には、第一リーフバルブ5の外周側が隙間S1分を超えて撓むので、第一リーフバルブ5が第二リーフバルブ6に当接する。これにより、ベースバルブ3は、排出ポート21を通過する液体の流れに対して、第一リーフバルブ5および第二リーフバルブ6の剛性が合わさった剛性に基づく抵抗を与える。これにより、緩衝器Dの圧側減衰力をハードに設定した場合には、ベースバルブ3の抵抗が大きくなるため、圧側室R2内の圧力がリザーバRに逃げにくくなり、伸側室R1が負圧になるのを防止できる。
したがって、本例のベースバルブ3は、圧側室R2内の圧力に応じて抵抗が切り替わるようになっており、圧側減衰力のハード時には抵抗を大きくして伸側室R1が負圧になるのを防止し、ソフト時には抵抗を小さくしてソフト減衰力が高くならないようにしている。
また、隙間S1は、少なくとも伸側室R1が負圧になる前に第一リーフバルブ5が第二リーフバルブ6に当接する大きさに設定されている。さらに、第一リーフバルブ5および第二リーフバルブ6の剛性の合わさった剛性は、少なくとも緩衝器Dの圧側減衰力が最もハードに設定された場合であっても、圧側室R2内の圧力がリザーバRに逃げてしまわない大きさになるように設定されている。これにより、緩衝器Dの圧側減衰力が最大限ハードに設定されている場合であっても、伸側室R1が負圧になることはない。
また、本実施の形態に係るベースバルブ3は、緩衝器Dの圧側室R2とリザーバRとを連通する排出ポート21を有するバルブディスク20と、バルブディスク20に積層されて排出ポート21の出口端を開閉する第一リーフバルブ5と、第一リーフバルブ5の反バルブディスク側に隙間S1を介して配置された第二リーフバルブ6とを備えて構成されている。
この構成によると、緩衝器Dの圧側減衰力がハードに設定されて圧側室R2内の圧力が高くなる際には、第一リーフバルブ5が第二リーフバルブ6に当接してベースバルブ3の抵抗が大きくなるため、伸側室R1内が負圧になるのを防止できる。そして、緩衝器Dの圧側減衰力がソフトに設定されて圧側室R2内の圧力がハード時ほど高くならない際には、第一リーフバルブ5の剛性のみで抵抗を与えるため、緩衝器Dの収縮作動時のソフト減衰力が高くならず、緩衝器Dがソフトな減衰力を発揮する際の車両の乗り心地が向上するとともに操縦安定性が向上する。
したがって、本実施の形態に係るベースバルブ3によれば、ハード時に伸側室R1が負圧になるのを防止するためにベースバルブ3の抵抗の上限を大きくしても、ソフト時のベースバルブの抵抗が大きくならないため、減衰力調整幅を確保できる。
さらに、本実施の形態に係るベースバルブ3によると、緩衝器Dが収縮作動時にソフト減衰力を発揮する場合のベースバルブ3の開弁圧が、従来のベースバルブの開弁圧に比べて低くなるため、ベースバルブ3の開弁時の急激な圧力変動が抑制されて、急激な圧力変動に起因する異音の発生を抑制できる。
また、本実施の形態に係る第一リーフバルブ5は、第二リーフバルブ6よりも剛性が低く設定されている。そのため、緩衝器Dが圧側ソフト減衰力を発揮する際に、ベースバルブ3がシリンダ10内からリザーバRへ排出される液体の流れに対して与える抵抗を小さくできるので、緩衝器Dの収縮作動時のソフト減衰力が高くならず、車両の乗り心地がさらに向上する。
なお、第一リーフバルブ5の剛性を第二リーフバルブ6の剛性よりも低くするための手段は特に限定されず、たとえば、第一リーフバルブ5を構成する環状板の枚数を第二リーフバルブ6よりも少なくするようにしてもよいし、第一リーフバルブ5を第二リーフバルブ6を構成する環状板よりも軸方向の厚みが薄い環状板で構成するようにしてもよい。あるいは、その両方の手段で第一リーフバルブ5と第二リーフバルブ6の剛性を調節するようにしてもよい。
また、本実施の形態においては、第一リーフバルブ5と第二リーフバルブ6との間に間座7を設けて、隙間S1を形成している。この構成によると、隙間S1の大きさが間座7の軸方向の厚みによって決定される。そのため、隙間S1を伸側室R1が負圧になる前に第一リーフバルブ5が第二リーフバルブ6に当接する大きさに設定するのに必要な大きさに合わせて適宜間座7を選択すれば、隙間S1の大きさを適当な大きさに調節できる。
なお、本実施の形態においては、隙間S1は、第一リーフバルブ5と第二リーフバルブ6との間に間座7を介装して形成されているが、隙間S1を設ける手段は特に限定されない。
また、図3に示すように、第一リーフバルブ5と第二リーフバルブ6との間に環状の調整プレート9を設けるようにしてもよい。
図3に示す調整プレート9は、厚みが間座7よりも薄く、間座7の外径よりも大きな内径を備える環状板であって、間座7の外周に軸方向移動自在に装着されている。この構成によると、間座7よりも薄い環状板である調整プレート9が隙間S1内に配置されるため、間座7のみでは十分に調節できない分の隙間S1の大きさを調節できる。これにより、間座7で大まかに隙間S1の大きさを決めてから調整プレート9で微調整できるため、隙間S1の大きさを調節するために用意する厚みの異なる間座7の種類を少なくできる。
また、この構成によると、隙間S1の大きさを伸側室R1が負圧にならない限度いっぱいで第一リーフバルブ5が第二リーフバルブ6に当接するように調節できる。
なお、調整プレート9は、間座7の外周に内周固定されるようにしてもよいが、調整プレート9の目的が隙間S1の大きさの調節であることからすると、調整プレート9は間座7の外周に軸方向移動自在に装着されていれば足りる。
また、本実施の形態においては、隙間S1は、伸側室R1が負圧になる前に第一リーフバルブ5が第二リーフバルブ6に当接するように設定されているが、この設定は第一リーフバルブ5の剛性と隙間S1の大きさの両方の条件によって決定される。したがって、隙間S1の大きさを調節するだけでなく、第一リーフバルブ5の剛性を調節することによっても、伸側室R1が負圧になる前に第一リーフバルブ5が、第二リーフバルブ6に当接するように設定できる。
<第二実施形態>
次に第二実施形態に係るベースバルブ80について説明する。ベースバルブ80は、図4に示すように、バルブディスク20のリザーバ側に積層されて排出ポート21の出口端を開閉する第一リーフバルブ50の内周が固定されずに軸方向に移動自在に設けられている点で第一実施形態に係るベースバルブ3と異なる。ここでは上述した第一実施形態に係るベースバルブ3との異なる点を中心に説明し、同様の機能を有する構成には同一の符号を付して説明を省略する。
本実施の形態におけるベースバルブ80は、第一実施形態に係るベースバルブ3と同様に緩衝器Dに適用されており、緩衝器Dが収縮作動をする際に減衰力を発揮するようになっている。
弁体70は、図4に示すように、バルブディスク20の内周シート部20bにスペーサ51を介して積層された第二リーフバルブ60と、スペーサ51の外周に設けられた第一リーフバルブ50とを備えて構成される。
第一リーフバルブ50は、スペーサ51の外径よりも大きな内径を備える複数の環状板で構成されるとともに、第一リーフバルブ50の軸方向厚みがスペーサ51の軸方向厚みよりも薄く設定されている。これにより、第一リーフバルブ50と第二リーフバルブ60との間には、スペーサ51の軸方向厚みと第一リーフバルブ50の軸方向厚みとの差からなる隙間S2が形成され、第一リーフバルブ50は、スペーサ51の外周に沿って隙間S2を自在に軸方向移動できるようになっている。
第二リーフバルブ60は、軸部材8の外周に内周固定された複数の環状板で構成されており、スペーサ25によって内周側のみが押えられて外周撓みが許容されている。
なお、本実施の形態においては、1つのスペーサ51で隙間S2を形成しているが、複数のスペーサ51を設けて隙間S2を形成するようにしてもよい。
また、第一リーフバルブ50を構成する環状板の内、バルブディスク20側の環状板の外周側面には切欠50aが設けられている。これにより、第一リーフバルブ50が外周シート部20cに着座した状態では、切欠50aがオリフィスとして機能する。
次に本実施の形態に係るベースバルブ80の機能について説明する。本実施の形態に係るベースバルブ80は、バルブディスク20に積層されて排出ポート21の出口端を開閉する第一リーフバルブ50と、第一リーフバルブ50の反バルブディスク側に隙間S2を介して配置された第二リーフバルブ60とを備え、第一リーフバルブ50が隙間S2を軸方向に移動可能とされて構成されている。
この構成によると、第一リーフバルブ50は内周が固定されていないため、バルブディスク側から圧力を受けると第二リーフバルブ60側に移動しやすい。そのため、第一リーフバルブ50は、内周が軸部材8に固定された第二リーフバルブ60よりも開弁しやすくなっている。
これにより、圧側室R2内の圧力が低い場合には、排出ポート21を通過する液体の流れに対して剛性の低い第一リーフバルブ50の剛性のみに基づく抵抗が与えられる。そして、圧側室R2内の圧力が高くなると、第一リーフバルブ50が第二リーフバルブ60側に軸方向に移動して第二リーフバルブ60に当接するため、排出ポート21を通過する液体の流れに対して、第一リーフバルブ50および第二リーフバルブ60の剛性が合わさった剛性に基づく抵抗を与える。つまり、本実施の形態に係るベースバルブ80は、圧側室R2内の圧力の高さに応じて抵抗が切り替わるようになっている。
したがって、本例のベースバルブ80は、緩衝器Dの圧側減衰力がハードに設定されて圧側室R2内の圧力が高くなる際には、第一リーフバルブ50が第二リーフバルブ60に当接してベースバルブ80の抵抗が高くなるため、伸側室R1が負圧になるのを防止できる。対して、緩衝器Dの圧側減衰力がソフトに設定されて圧側室R2内の圧力がハード時ほど高くならない際には、第一リーフバルブ50のみで抵抗を与えるため、緩衝器Dの収縮作動時のソフト減衰力が高くならず、緩衝器Dがソフトな減衰力を発揮する際の車両の乗り心地が向上するとともに操縦安定性が向上する。
また、上述の通り、本実施の形態に係る第一リーフバルブ50は、隙間S2を軸方向に自在に移動できるように設けられており内周が固定されていないため、内周が固定されている場合に比べて開弁圧が低く設定されている。そのため、本実施の形態では、緩衝器Dの圧側減衰力がソフトに設定される際に、排出ポート21を通過する液体に対して、第一リーフバルブ50のみで抵抗を与えていることに加え、第一リーフバルブ50の開弁圧が低く設定されていることにより、さらに緩衝器Dの収縮作動時のソフト減衰力が高くならないようになっている。
さらに、本実施の形態に係るベースバルブ80によると、緩衝器Dが収縮作動時にソフト減衰力を発揮する場合のベースバルブ80の開弁圧が、従来のベースバルブの開弁圧に比べて低くなるため、ベースバルブ80の開弁時の急激な圧力変動が抑制されて、急激な圧力変動による異音の発生を低減できる。
本実施の形態においては、隙間S2は、バルブディスク20と第二リーフバルブ60との間に介装されたスペーサ51によって形成されている。隙間S2は、第一実施形態に係る隙間S1と同様に、伸側室R1が負圧になる前に第一リーフバルブ50が第二リーフバルブ60に当接する大きさに設定されていればよいため、必要な隙間S2の大きさに合わせて適宜スペーサ51を選択すれば、隙間S2の大きさを必要な大きさに調節できる。
なお、本実施の形態においては、隙間S2は、バルブディスク20と第二リーフバルブ60との間に介装されたスペーサ51によって形成されているが、隙間S2を設ける手段は特に限定されない。
また、従来のベースバルブでは、ベースバルブに切欠を設けて、この切欠きが圧側室とリザーバとを連通するオリフィスとして機能する場合、緩衝器の収縮速度が低速域にあるとオリフィスを介してリザーバに液体が排出されるため、低速域に減衰力の可変幅が小さくなる領域がある。そして、従来のように緩衝器が圧側ハード減衰力を発揮する際に伸側室が負圧にならないようにベースバルブの開弁圧が設定されていると、この領域では、伸側室に液体を流しやすくするために必要な開弁圧以上にベースバルブの開弁圧が高く設定されていた。そのため、圧側室の内部圧力がベースバルブの開弁圧を上回るまでオリフィスを介してしかシリンダ内の液体がリザーバへ排出されないため、減衰力の可変幅の小さい領域が広くなっていた。
このような場合にあっても、本発明に係るベースバルブ3,80は、圧側室R2の圧力に応じて抵抗が切り替わるようになっているため、圧側室R2の内部圧力が低く、排出ポート21を通過する液体の圧力が低い低速域では、ベースバルブ3,80は第一リーフバルブ5,50のみに基づく抵抗に設定されるため、低速域における減衰力の可変幅が小さい領域を狭くできる。
また、緩衝器をストラット型のサスペンションに利用する場合、入力されるモーメントに対応するために、ロッドの径が大きくなり、収縮作動時にシリンダ内からリザーバに排出される液体の流量が多くなる。流量が多くなるのに伴って、ベースバルブを通過する液体の流れに対する抵抗も大きくなるので、ストラット型のサスペンションに利用される場合、収縮作動時のソフト減衰力がストラット型のサスペンションに利用される以外の場合以上に大きくなって、車両の乗り心地がより悪化しやすい。
したがって、本発明のベースバルブ3,80を備える緩衝器Dは、ストラット型のサスペンションに利用される場合、特に顕著な効果を発揮する。
なお、本実施の形態においては、緩衝器Dは複筒型であって、外筒1とシリンダ10の間にリザーバRを設けた緩衝器とされているが、本発明は、リザーバと、収縮作動時にリザーバに排出される液体の流れに抵抗を与えるベースバルブを備える緩衝器に利用されればよい。本発明は、たとえば、タンクを別に設けて当該タンクをリザーバとした単筒型の緩衝器や、シリンダ内にフリーピストンで区画した液室とエア室からなるリザーバを設けた単筒型の緩衝器で実現されてもよい。
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱なく改造、変形及び変更ができるのは当然である。