JP2018053270A - 成膜方法および成膜装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】膜質の良好な黒色膜を安定的に、しかも従来よりも低コストで成膜することのできる技術を提供する。【解決手段】基材の表面に臨ませてターゲット材を配置する工程(S101、S102)と、基材の表面とターゲット材との間の処理空間にスパッタガスおよび反応性ガスを含むガスを供給する工程(S103)と、処理空間の気圧を所定の成膜圧力に制御する工程(S104)と、処理空間に電界を形成してガスのプラズマを発生させる工程(S105)とを備え、ターゲット材がチタンであり、反応性ガスが窒素であり、成膜圧力を3Pa以上として、基材の表面に窒化チタンの膜をスパッタリング成膜する。【選択図】図5

Description

この発明は、プラズマスパッタリング技術を用いて基材上に成膜する技術に関するものである。
例えば建材への応用を目的として、金属板のような基材の表面に不透明な黒色膜を形成した製品への需要がある。このような製品を製造する目的に適用可能な技術として、例えば特許文献1には、チタン、アルミニウム、酸素および窒素を含む固体材料をターゲット材とした陰極スパッタ法により、基材上に黒色膜を形成することが記載されている。この他、黒色膜を形成する材料としては、炭窒化チタンアルミニウムが知られている。
また、このようなスパッタリングによる成膜を高品質でかつ効率よく行う技術として、本願出願人は先に特許文献2に記載の技術を開示した。この技術では、成膜対象である基材とターゲット材とが近接配置された処理空間において、低インダクタンスアンテナとマグネトロン型回転カソードとにより誘導結合プラズマを発生させる。これにより、高密度かつ比較的低温のプラズマを発生させることが可能であり、基材に与えるダメージを抑えつつ、高い成膜レートで良質の膜を形成することができる。
特開平02−047253号公報 特開2015−193863号公報
上記した黒色膜は4元系の化合物である。このような黒色膜をプラズマスパッタリング技術により成膜するためには、4元素を所定の比率で含むターゲット材、または、チタンとアルミニウムとを含むターゲット材と2種類の反応性ガスとが必要となる。このため、材料の準備にコストがかかり、特にアルミニウムとチタンとは融点が大きく異なるため合金化が難しい。また、多元系の成膜プロセスでは、各成分の比率を的確に制御しながら成膜を行う必要があり、そのための制御も複雑となる。このように、従来の黒色膜の製造方法は製造コストが高くなりがちであり、実用性および安定性という点において改良の余地が残されていた。
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、膜質の良好な黒色膜を安定的に、しかも従来よりも低コストで成膜することのできる技術を提供することを目的とする。
この発明の一の態様は、基材の表面に臨ませてターゲット材を配置する工程と、前記基材の表面と前記ターゲット材との間の処理空間にスパッタガスおよび反応性ガスを含むガスを供給する工程と、前記処理空間の気圧を所定の成膜圧力に制御する工程と、前記処理空間に電界を形成して前記ガスのプラズマを発生させる工程とを備え、前記ターゲット材がチタンであり、前記反応性ガスが窒素であり、前記成膜圧力が3Pa以上であり、前記基材の表面に窒化チタンの膜をスパッタリング成膜する成膜方法である。
また、この発明の他の態様は、基材を保持する基材保持手段と、ターゲット材を前記基材の表面に臨ませて保持するターゲット保持手段と、前記基材の表面と前記ターゲット材との間の処理空間にスパッタガスおよび反応性ガスを含むガスを供給するガス供給手段と、前記処理空間の気圧を所定の成膜圧力に制御する気圧制御手段と、前記処理空間に電界を形成して前記ガスのプラズマを発生させるプラズマ発生手段とを備え、前記ターゲット材がチタンであり、前記反応性ガスが窒素であり、前記成膜圧力が3Pa以上であり、前記基材の表面に窒化チタンの膜をスパッタリング成膜する成膜装置である。
従来、反応性プラズマスパッタリング技術においては、成膜圧力を上げると異常放電(アーキング)が発生するおそれがあることから、成膜圧力としては概ね1Paよりも低い圧力が検討されてきた。しかしながら、本願発明者は、より高い気圧でも安定した高密度プラズマが発生可能なプラズマ発生装置を用いて各種の実験を行った結果、ターゲット材としてチタン、反応性ガスとして窒素ガスを用い、成膜圧力を3Pa以上として成膜を行うことで形成される窒化チタンの膜が良質の黒色膜となることを見出した。実験の内容および結果については後述するが、成膜条件を適宜に調整することで窒化チタンにより黒色膜を形成することが可能であるとの知見は、これまで知られていないものである。
このようにして形成される膜は本質的にチタンと窒素との2元素からなるものであり、ターゲット材としては単体チタン、反応性ガスとしては窒素ガスのみを用いて成膜することが可能である。このため、多元系の成膜技術に比べて成膜条件の制御が容易であり、安定した成膜が可能となる。また、材料物質としては単体チタンと窒素ガスとを準備すればよく特殊なターゲット材を必要としない。このため、上記した従来技術に比べて低コストでの成膜が可能である。
上記のように、本発明によれば、ターゲット材としての単体チタン、反応性ガスとしての窒素ガスを用いて黒色膜を形成することができるので、膜質の良好な黒色膜を安定的に、しかも従来よりも低コストで成膜することが可能である。
本発明にかかる成膜装置の一実施形態を示す図である。 成膜条件を変えたときの膜色の測定結果を示す図である。 成膜条件に対する膜の色度の変化を示す図である。 成膜条件と成膜レートとの関係を示す図である。 この実施形態における成膜処理を示すフローチャートである。
図1は本発明にかかる成膜装置の一実施形態を示す図である。より具体的には、図1は、本発明にかかる成膜方法を実施するのに好適な成膜装置1の主要な構成を示す図である。なお、この成膜装置1の基本的な構成は、本願出願人が先に開示した特開2015−189800号公報に記載されたものと概ね同じである。そこで、本明細書において言及のない装置の全体構成や各部の動作原理等については同公報を参照することとして、ここでは主に装置の主要な構成およびその動作について詳しく説明する。
この成膜装置1は、反応性スパッタリングにより処理対象である基材Bの表面に皮膜を形成する装置である。例えば建材用の素材として表面を黒化処理した金属板への需要があり、この成膜装置1はこのような需要に応える素材を製造するのに好適に用いることができる。以下では、基材Bとしてのステンレス鋼板の表面に窒化チタン(TiNx)による黒色膜を形成することを想定して、成膜装置1の構成および動作について説明する。
成膜装置1は、真空チャンバー10と、その内部に配置された基材Bを搬送する搬送機構3およびスパッタソース5と、成膜装置1全体を統括制御する制御部19とを備えている。真空チャンバー10は略直方体形状の外形を有する中空の箱型部材であり、底板の上面が水平姿勢となるように配置されている。以下の説明における方向を統一的に示すために、図1に示すようにXYZ直交座標軸を設定する。ここでXY平面が水平面を表す。また、Z軸が鉛直軸を表し、より詳しくは(−Z)方向が鉛直下向き方向を表している。
搬送機構3は、基材Bをその下面を開放した状態で保持するキャリア31と、キャリア31の下面に当接してキャリア31を支持する複数の搬送ローラ32と、搬送ローラ32を回転させることでキャリア31をX方向に移動させる搬送駆動部(図示省略)とを備えている。搬送駆動部は制御部19により制御される。このように構成された搬送機構3は、真空チャンバー10内で基材Bを水平姿勢に保持しつつ搬送して、基材BをX方向に移動させる。搬送機構3による基材Bの移動は、図1に点線矢印で示すように往復移動であってもよく、また(+X)方向または(−X)方向のいずれか一方向であってもよい。
このようにして真空チャンバー10内を搬送される基材Bの下方にスパッタソース5が設けられている。スパッタソース5は、回転カソード51,52と、回転カソード51,52の内部にそれぞれ設けられた磁石ユニット53,54と、回転カソード51,52をそれぞれ保持しつつ回転させる回転駆動部55,56と、真空チャンバー10内に高周波電界を生じさせるための誘導結合アンテナ57とを備えている。
回転カソード51と磁石ユニット53とは一体としてマグネトロン型回転カソードを構成する。同様に、回転カソード52と磁石ユニット54とは一体としてマグネトロン型回転カソードを構成する。このように、この実施形態は、X方向に位置を異ならせて配置される1対のマグネトロン型回転カソードを有する。1対のマグネトロン型回転カソードはYZ平面に関して互いに対称な形状を有しているが、基本的な構造は同じである。
回転カソード51(52)は、図1紙面に直交するY方向を軸方向とする円筒状のベース部材511(521)と、ベース部材511(512)の外周を被覆するターゲット材512(522)とを備えている。ベース部材511(512)は導電体であり、Y方向の両端部に対応して回転駆動部55(56)に設けられた軸受部(図示省略)により、中心軸周りに回転自在に支持されている。回転駆動部55(56)は制御部19により制御される。
ターゲット材512(522)は基材B上に成膜される膜の材料を含むものであり、窒化チタン膜を形成する例においては金属チタンである。このようにターゲット材が導電性を有するものである場合、ベース部材を省略することが可能である。すなわち、予め円筒形状に成形されたターゲット材が用いられることで、ベース部材が省かれてもよい。この場合、回転駆動部55(56)はターゲット材を直接支持しつつ回転させるように構成される。
処理空間PSにプラズマを発生させるプロセスの進行中においてターゲット材512(522)が回転することで、処理空間PSに露出するターゲット材512(522)の表面が常時移動する。これにより、ターゲット材512(522)表面の特定の位置だけがスパッタされて消耗することが回避されるため、ターゲット材料の利用効率を高めることができる。また、ターゲットの局所的な変形に起因する電界集中が抑制されるため、アーキング等の異常放電に対する耐性を高めることができる。
回転カソード51(52)の内部に配置された磁石ユニット53(54)は、透磁鋼などの磁性材料により形成されたヨーク531(541)と、ヨーク531(541)上に設けられた複数の磁石、すなわち中央磁石532(542)およびこれを囲むように設けられた周辺磁石533(543)とを備えている。ヨーク531はY方向に延設された平板状部材であり、回転カソード51の内周面に対向して配置されている。
ヨーク531の上面のうち長手方向(Y方向)に沿った中心線上には、Y方向に延在する中央磁石532が配置されている。また、ヨーク531の上面の外縁部には、中央磁石532の周囲を囲む環状(無端状)の周辺磁石533が設けられる。中央磁石532および周辺磁石533は例えば永久磁石である。回転カソード51の内周面に対向する側の中央磁石532および周辺磁石533の極性は互いに異なっている。
ヨーク531(541)の下面には、固定部材534(544)の一端が固定され、固定部材534(544)の他端は回転カソード51(52)の中心部にY方向に延設された棒状の支持部材535(545)に取り付けられている。支持部材535(545)は回転カソード51(52)の回転によって回転せず、したがって固定部材534(544)の位置も固定されている。回転カソード51に設けられた固定部材534は支持部材535から上向きに、ただしもう1つの回転カソード52側に傾けて配置される。一方、回転カソード52に設けられた固定部材544は支持部材545から上向きに、もう1つの回転カソード51側に傾けて配置される。したがって、磁石ユニット53,54により処理空間PSに集中的に静磁場が形成される。
1対の回転カソード51,52に挟まれた空間に向けて突出するように、真空チャンバー10の底面には誘導結合アンテナ57が設けられている。誘導結合アンテナ57はLIA(Low Inductance Antenna:株式会社イー・エム・ディーの登録商標)とも称されるものであり、略U字型に形成された導体571の表面が例えば石英などの誘電体572で被覆された構造を有する。誘導結合アンテナ57は、U字を上下逆向きにした状態で、真空チャンバー10の底面を貫通してY方向に延設される。誘導結合アンテナ57は、Y方向に位置を異ならせて複数個並べて配置される。導体571の表面が誘電体572で被覆された構造とすることで、導体571がプラズマに曝露されることが防止される。これにより、導体571の構成元素が基材B上の膜に混入することが回避される。
このように構成された誘導結合アンテナ57は、X方向を巻回軸方向とし巻回数が1未満のループアンテナと見ることができる。そのため、低インダクタンスである。このような小型のアンテナを、巻回軸方向と直交する方向に複数並べて配置することで、インダクタンスの増大を抑えつつ、後述するプラズマ発生のための誘導電界を広い範囲に形成することが可能である。
成膜装置1はまた、上記のスパッタソース5の周囲を取り囲むように真空チャンバー10内に配置された、上部がY方向に沿って細長く開口する筒状または箱状の遮蔽部材であるチムニー11を備えている。チムニー11は、スパッタソース5において発生するプラズマやターゲットからスパッタされたスパッタ粒子の飛散範囲を制限するシールドとしての機能を有する。
回転カソード51,52の上面と、キャリア31により保持される基材Bの下面とは、チムニー11上部の開口を介して対向している。後述するように、これらに囲まれた空間PSが、プラズマを発生させてターゲットをスパッタリングし基材Bに成膜を行う処理空間となる。
処理空間PSには、反応性ガス供給部6から反応性ガスが、またスパッタガス供給部7からスパッタガスとしての不活性ガスが導入される。具体的には、反応性ガス供給部6は、基材Bに形成される窒化チタン膜の材料の1つである窒素を窒素ガスの形態で供給する窒素ガス供給源61と、窒素ガスを処理空間PSに案内する配管62と、チムニー11の内部に設けられ配管62を介して窒素ガス供給源61と連通するノズル63,63と、配管62の途中に設けられた流量調整部64とを備えている。
ノズル63,63は回転カソード51,52の上方に配置されており、処理空間PSにおいて対向する回転カソード51,52と基材Bとの間に反応性ガスとしての窒素ガスを吐出する。流量調整部64は、制御部19からの制御指令に応じて、処理空間PSに供給される窒素ガスの流量を制御する機能を有する。流量調整部64は、窒素ガスの流量を自動的に制御することができるものであることが好ましく、例えばマスフローコントローラを備えたものとすることができる。
一方、スパッタガス供給部7は、スパッタガスとして処理空間PSに導入される不活性ガス、例えばアルゴンガスまたはキセノンガスを供給するスパッタガス供給源71と、真空チャンバー10内にスパッタガスを吐出するノズル73,73と、スパッタガス供給源71とノズル73,73との間を接続する配管72と、配管72の途中に設けられた流量調整部74とを備えている。
1対のノズル73,73は、誘導結合アンテナ57を挟むように真空チャンバー10の底面に設けられており、真空チャンバー10内の処理空間PSにスパッタガスとしての不活性ガスを吐出する。流量調整部74は、制御部19からの制御指令に応じて、処理空間PSに供給されるスパッタガスの流量を制御する機能を有する。流量調整部74は、スパッタガスの流量を自動的に制御することができるものであることが好ましく、例えばマスフローコントローラを備えたものとすることができる。
回転カソード51,52と誘導結合アンテナ57との間には、電源ユニット8から適宜の電圧が印加される。具体的には、回転カソード51,52のベース部材511,521には、電源ユニット8に設けられた直流電源81が接続されており、直流電源81から適宜の直流負電位が与えられる。一方、誘導結合アンテナ57には、電源ユニット8に設けられた高周波電源82が整合回路83を介して接続されており、高周波電源82から適宜の高周波電圧が印加される。直流電源81および高周波電源82のそれぞれから出力される電圧値やその波形は制御部19により制御される。
直流電源81から回転カソード51,52に適宜の直流電位が与えられることで、回転カソード51,52の表面、より具体的には処理空間PSに臨むターゲット材512,522の表面近傍に電界が形成され、これによりスパッタガスのプラズマ(マグネトロンプラズマ)が生成される。すなわち、直流電源81は、磁石ユニット53,54が形成する静磁場によって処理空間PSにマグネトロンプラズマが発生するのに必要な電圧を回転カソード51,52に印加する。この目的のために、回転カソード51,52に印加される電圧に適宜のパルス電圧または交流電圧が重畳されてもよい。
また、高周波電源82から誘導結合アンテナ57に高周波電力(例えば周波数13.56MHzの高周波電力)が供給されることで、誘導結合アンテナ57と回転カソード51,52との間に高周波誘導電界が生じ、処理空間PSに供給されるスパッタガスおよび反応性ガスの誘導結合プラズマ(Inductivity Coupled Plasma;ICP)が発生する。このようにして生成されるプラズマも、処理空間PSに形成される静磁場に引き寄せられる。その結果、処理空間PSには高密度のプラズマが生成される。
こうして処理空間PSに生成されるプラズマによりターゲット材512,522のチタンの表面がスパッタされ、チタン粒子が反応性ガス種としての窒素とともに基材Bの下面に付着することで窒化チタンの膜を形成する。基材Bに形成される膜の品質を良好なものとするために、真空チャンバー10内には、基材Bを挟んで処理空間PSとは反対側にヒーター2が設けられる。ヒーター2は制御部19により温度制御される例えばセラミックヒーターなどの熱源を有しており、処理空間PSに臨むように搬送される基材Bを加熱することで基材B下面への膜の定着を促進する。
この他、成膜装置1は、処理空間PSにおけるプラズマ発光を検出するための機構および処理空間PS内の気圧を制御するための機構を備えている。具体的には、処理空間PSに窒素ガスを供給するノズル63の近傍に、例えば光ファイバーからなるプローブ191が配置されており、処理空間PSにおいて発生するプラズマ発光の一部がプローブ191に入射する。プローブ191は分光器192に接続され、分光器192の出力信号が制御部19に入力される。
制御部19は、分光器192の出力信号に基づき、プラズマエミッション法(PEM)により処理空間PSにおけるプラズマ強度を検出し、必要に応じ流量調整部64を制御して、処理空間PSに供給される反応性ガスの流量を制御する。
また、真空チャンバー10内には処理空間PSにおける気圧に応じた信号を制御部19に出力する圧力センサ193が設けられる。また、該信号に応じて制御部19から与えられる制御指令に応じて作動し、真空チャンバー10内の気圧を所定値に維持する排気ポンプ194が、真空チャンバー10に接続されている。これらが作動することにより、成膜時の処理空間PSにおける気圧、すなわち成膜圧力が所定値に制御される。
制御部19は、各種演算処理を行うCPU、CPUが実行するプログラムや各種データを記憶するメモリーおよびストレージ、外部装置およびユーザとの間での情報のやり取りを担うインターフェース等を備えている。例えば汎用のコンピュータ装置を制御部19として使用することが可能である。
上記のように構成された成膜装置1は、低インダクタンスの小型アンテナである誘導結合アンテナ57をY方向に複数並べ、これらに高周波電力を供給することで、プラズマ発生用の高周波誘導電界を形成する。このような構成によれば、低電位かつ低温で高密度なプラズマを発生させることが可能である。また、アンテナの配置を適宜に設定することによって任意の形状、大きさを有する均一なプラズマ生成が可能である。
さらに、マグネトロン型回転カソードとして機能する回転カソード51,52を併用することにより、処理空間PS内の限られた領域に特に高密度のプラズマを集中的に発生させることが可能である。
次に、上記のように構成された成膜装置1を使用して窒化チタンによる黒色膜を形成する方法について説明する。従来、反応性プラズマスパッタリング技術においては、成膜圧力を高くすると異常放電(アーキング)が発生するおそれがあり、また成膜圧力が高いと成膜レートが低下することから、比較的低い(例えば1Pa以下)での成膜が一般的である。
一方、本実施形態の成膜装置1は、上記のような構成を有することにより、プラズマの高密度化、均一化および低電位化が図られている。このため、より高い成膜圧力での成膜プロセスが実行可能となっている。特に、プラズマ発生空間に露出するターゲット表面が回転により常時変化する回転カソードを用いることで、アーキングに対する耐性が高くなっている。
本願発明者は、上記構成の成膜装置1により、従来よりも高い成膜圧力も含めて成膜条件を種々に変更しながら窒化チタン(TiNx)膜を成膜する実験を行い、その結果、膜質の良好な黒色膜を得るための成膜条件を特定するに至った。
基材の黒化処理、つまり基材の表面に黒色の皮膜を形成する処理においては、黒色皮膜の材料として酸窒化チタンアルミニウム(TiAlOxNy)または炭窒化チタンアルミニウム(TiAlCxNy)がこれまでに知られている。このような多元系の材料では特別のターゲット材が必要となるため高コストであり、また複数種の反応性ガスを用いる場合にはガス供給系統およびプロセス制御も複雑となる。特に炭素系のガスには可燃性の高いものも多く、このようなガスが使用される場合にはさらなる安全対策も必要となる。
単体のターゲット材と単体の反応性ガスとにより成膜が可能な窒化チタンにより黒色膜を形成することができれば、従来技術に比して大きなコスト削減が可能となる。これまで窒化チタン膜は金色やブロンズ色などの金属色を得るための皮膜として利用されているが、黒色膜の材料としては用いられていない。本願発明者は、成膜条件を適宜に設定することで、窒化チタンにより良質な黒色不透明膜を得られることを見出した。
以下、本願発明者による実験の結果およびそれから得られた知見について説明する。以下に説明する実験においては、ターゲット材512,522を金属チタン、反応性ガスを窒素ガスとして、成膜条件を種々に変更して基材Bとしてのステンレス鋼板に成膜を行った。得られた膜については、CIE(Commission Internationale de l'Eclairage;国際照明委員会)が規定するL表色系を用いてその膜色を評価した。なお、成膜条件によって成膜レートが異なることから、実験では基材Bであるステンレスの地色が完全に遮蔽される程度の成膜を行ってから膜色の評価を行った。そのため、成膜時間および膜厚は成膜条件ごとに必ずしも同じではない。
ここでは、スパッタガスであるアルゴンガスと反応性ガスである窒素ガスとの合計流量を約200sccm(standard cubic centimeter per minute)とほぼ一定に保ちつつ、ガス全量に対する窒素ガスの比率を変えながら、成膜圧力を0.3Paから5Paまで多段階に設定して、各成膜圧力でそれぞれ成膜を行った場合の実験結果を中心に説明する。
図2は成膜圧力と窒素ガス比率との組み合わせに対する膜色の測定結果を示す図である。図2の(a)欄に示すグラフは、成膜圧力をパラメータとして、横軸に窒素ガス(N)比率を、縦軸にa値をプロットしたものである。同様に、(b)欄は縦軸をb値として、(c)欄は縦軸をL値としてそれぞれ示したものである。(a)欄および(b)欄に示すように、膜の色度を表すa値およびb値は、成膜圧力や窒素ガス比率によって様々な変化態様を取る。
一方、(c)欄に示すように、膜の明るさを表すL値は、いずれの成膜圧力においても概ね同様の変化を示す。すなわち、窒素比率が比較的低い領域ではL値が比較的大きく、窒素比率が高い領域ではL値が小さい。そして、窒素ガス比率が10%ないし30%程度の領域においてL値の急激な変化が見られる。ただし、(c)欄のグラフからわかるように、成膜圧力が0.3Paまたは1.0Paのとき、窒素ガス比率を大きくしてもL値はあまり低下せず、最小でも60程度である。
図3は成膜圧力と窒素ガス比率との組み合わせに対する膜の色度の変化を示す図である。より具体的には、図2に示される結果において、形成される膜の色合いを表すa値およびb値の組み合わせが成膜圧力および窒素ガス比率によりどのように変化しているかを表す図である。
図3の(a)欄は、成膜圧力を0.3Paに固定したときの、窒素ガス比率に対するa値およびb値の変化を表すグラフである。これからわかるように、ガス中の窒素ガス比率によりa値およびb値は大きなループを描いて変動する。具体的には、窒素ガス比率を大きくしてゆくのにつれて時計回りのループが描かれる。無彩色と見なせるa値およびb値の数値範囲をそれぞれ例えば5以下とすると、窒素ガス比率の設定値によってはこの範囲を大きく超え特有の色彩を帯びることがわかる。
(b)欄は成膜圧力を1.0Paに固定して同様のプロットを行ったものである。同様に、(c)欄、(d)欄および(e)欄は成膜圧力をそれぞれ3.0Pa、4.0Paおよび5.0Paとしたときの結果である。これらからわかるように、成膜圧力が高いほどループは小さくなり、特に成膜圧力が3Pa以上であるときとそれ未満であるときではループの大きさに顕著な差異が見られる。さらに成膜圧力が4Pa以上では、a値およびb値は窒素ガス比率によらず概ね5以下となっている。このとき、窒素ガス比率によらずほぼ無彩色の膜が得られていると言える。
また、成膜圧力が3Paであるとき、a値およびb値は概ね10以下と比較的低いが、窒素ガス比率の値によっては特にb値が10を超える場合がある。ここで、成膜圧力を同じく3Paとしてガス流量を500sccmに増加させると、図3の(f)欄に示すように、窒素ガス比率に対する色度の変化がより小さくなる。つまり、ガス流量の調節により、色度の変動を緩和することができる。
これらの結果から次のことが言える。すなわち、成膜圧力が3Pa未満であるとき、形成される膜は比較的明るくまた特有の色彩を有するものとなる。このような膜は黒色膜と言いがたい。そして、成膜条件の変動に対して膜の色度は高い感受性を有する。つまり、成膜条件の小さな変動によって膜色が大きく変動する。このことは、求められる色度を得るために、あるいは均一な色度を得るためには厳密な成膜条件の制御が必要であることを意味する。
これに対し、成膜圧力が3Pa以上であるとき、ガス中における窒素ガスの比率やガス流量の設定値の比較的広い範囲で、L値、a値およびb値のいずれもが低い、すなわち十分に黒色であると言える膜が得られる。そして、成膜条件の変化に対して膜の色度および明るさの変化が少ないため、成膜条件の変動に対する感受性が低い。つまり、成膜条件が多少変動しても得られる膜の色彩に大きな変化がない。このため、成膜条件の制御に求められる厳密さが緩和され、比較的簡単な制御によっても色ムラの少ない膜を安定して形成することが可能である。
特に、成膜圧力が4Pa以上であるとき、成膜圧力やガス流量、ガス中の窒素ガス比率等が多少変動したとしても、形成される膜のL値、a値およびb値が「黒色」と言えるレベルの数値、例えばL値が50以下、a値およびb値がそれぞれ5以下に維持される。ただし、図2の(c)欄に示されるように、ガス中の窒素ガス比率が20%よりも低い領域ではL値が高くなる傾向があるため、窒素ガス比率は20%以上であることがより好ましい。このとき色ムラの少ない良質の黒色膜が得られ、しかも、そのような黒色膜を得るために必要な成膜条件の許容範囲が比較的広い。成膜圧力が3Paのとき、成膜条件の許容範囲は上記より幾らか狭くなるが、条件設定が適正になされれば、良質の黒色膜を得ることは十分に可能である。
図4は成膜条件と成膜レートとの関係を示す図である。同図に示されるように、概ね成膜圧力が低いほど成膜レートは高く、また成膜圧力が一定であればガス中の窒素ガス比率が高くなると成膜レートは低下する。ただし、窒素ガス比率がある程度以上に高くなると成膜レートの変化は少なくなる。良質の黒色膜が得られる3Pa以上の成膜圧力について見ると、窒素ガス比率が20%以下のとき比較的高い成膜レートが得られる一方、窒素ガス比率が40%を超えると成膜レートはほぼ一定である。
単に高い成膜レートが必要である場合には、ガス中の窒素ガス比率を低く、例えば20%以下とすればよいことになる。ただし上記したように、窒素ガス比率が低い領域では膜のL値が高くなるため、黒色膜の品質という点では窒素ガス比率を20%以上とすることが好ましい。窒素ガス比率を20%以上とすれば、成膜レートの数値自体は低くなるが、成膜条件の変動に対する感受性も低くなるため、成膜時間によって膜厚を精度よく制御することも可能となる。
図5はこの実施形態における成膜処理を示すフローチャートである。最初に、回転カソード51(52)のベース部材511(521)に、ターゲット材512(522)としての金属チタンが取り付けられる(ステップS101)。あるいは、ターゲット材512(522)が表面に装着されたベース部材511(521)が、成膜装置1本体に取り付けられる態様であってもよい。
続いて、キャリア31に成膜対象となる基材Bがセットされる(ステップS102)。この状態で真空チャンバー10の開口部が閉じられ、真空チャンバー10の内部に、スパッタガス供給部7からスパッタガスとしてのアルゴンガスが、また反応性ガス供給部6から反応性ガスとしての窒素ガスがそれぞれ供給される(ステップS103)。そして、圧力センサ193により検出される真空チャンバー10内の圧力値に基づき、制御部19が排気ポンプ194を作動させて、処理空間PSの気圧が所定の成膜圧力となるように、真空チャンバー10内の気圧を制御する(ステップS104)。
この状態で回転カソード51,52が回転されるとともに電源ユニット8から各部に所定の電圧が印加される(ステップS105)。これにより、処理空間PSにプラズマ発生電界が生じ、プラズマが発生してスパッタリングおよび成膜が開始される。基材Bを走査移動させてチムニー11の開口に臨む基材Bの位置を順次変化させることで(ステップS106)、基材B下面全体に窒化チタン膜が成膜される。
基材Bの走査移動が終了すると(ステップS107)、成膜のための各プロセス、すなわち電源ユニット8からの電力供給、反応性ガス供給部6およびスパッタガス供給部7からのガス供給等が停止され、成膜が停止される(ステップS108)。成膜対象である新たな基材Bがある場合には(ステップS109においてYES)、ステップS102に戻って基材Bが交換されて、新たな基材Bに対し成膜が行われる。全ての基材について成膜が終了すれば(ステップS109においてNO)、成膜処理は終了される。
以上のように、この実施形態では、従来の反応性プラズマスパッタリング処理では使われていなかった比較的高い成膜圧力でのスパッタリング成膜により、これまで黒色膜の材料としては用いられていなかった窒化チタン(TiNx)による黒色膜を形成することが可能である。この成膜方法では、ターゲット材としての単体チタンと反応性ガスとしての単体窒素とで黒色膜を形成することができる。このため、多元系材料からなるターゲットを準備する必要がなく、またガス供給系統も比較的単純なものとすることができる。このため、低コストで黒色膜を形成することが可能である。
また、黒色膜を得られる成膜条件の範囲が広く、条件の変動に対する膜色の感受性が低いため、成膜条件に多少の変動があったとしてもそれが膜色に及ぼす影響が小さい。このため、色ムラの少ない良質の黒色膜が安定的に得られる。また成膜条件の制御に高い精度が必要とされないので、成膜コストをさらに低減することが可能である。
成膜圧力としては3Pa以上が望ましいが、成膜条件の変動に対する許容範囲をより広くするという観点からは、4Pa以上がより好ましい。成膜圧力が4Pa以上である場合には、ガス流量やガス中の窒素ガス比率の変動があっても膜色の変動は極めて小さく、色ムラの少ない黒色膜を安定して形成することが可能である。成膜圧力が3Paである場合には、ガス流量および窒素ガス比率(つまり処理空間PSに供給される窒素量)を適切に設定することによって、安定した黒色膜を形成することが可能である。
スパッタガスとしての不活性ガス(アルゴンガス)および反応性ガスとしての窒素ガスを合わせた全ガスの流量としては、200sccmないし500sccmの範囲において良質な黒色膜が得られた。また、全ガスのうち窒素ガスの比率としては20%ないし80%の範囲で、膜質および成膜レートの双方において安定した成膜が可能であった。
低インダクタンスアンテナとマグネトロン型回転カソードとの組み合わせによるプラズマ発生プロセスでは、低温、低電位で高密度なプラズマを局所的に、かつ均一に発生させることが可能である。プラズマをターゲット近傍に集中的に発生させることで、ターゲットを高いレートでスパッタリングすることができる一方、基材Bへのダメージを抑えることができる。これにより、基材B表面に均一かつ良質の窒化チタン膜を形成することができる。
以上説明したように、この実施形態の成膜装置1においては、キャリア31が本発明の「基材保持手段」として機能する一方、回転駆動部55,56が回転カソード51,52とともに本発明の「ターゲット保持手段」として機能している。また、反応性ガス供給部6およびスパッタガス供給部7が一体として、本発明の「ガス供給手段」として機能している。
また、上記実施形態では、圧力センサ193および排気ポンプ194が一体として本発明の「気圧制御手段」として機能している。また、誘導結合アンテナ57と高周波電源82とが一体として本発明の「プラズマ発生手段」として機能している。また、回転カソード51と磁石ユニット53との組、および回転カソード52と磁石ユニット54との組がそれぞれ、本発明の「マグネトロン型回転カソード」として機能している。
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態では処理空間PSに臨ませて2組のマグネトロン型回転カソードが設けられているが、回転カソードは1組であってもよい。また、上記の好ましい成膜圧力下で異常放電を起こすことなく成膜が可能であれば、回転カソードでなく平板カソードであってもよい。
また、上記実施形態の成膜装置1は、スパッタソース5の上方において上向きに開口するチムニー11を備えており、該開口の上部を通過する基材Bの下面に窒化チタン膜を形成する。しかしながら、スパッタソース5と成膜対象である基材Bとの位置関係はこれに限定されない。例えば、略垂直姿勢で搬送される基材の側方にスパッタソースが配置された構成であってもよい。また例えば、スパッタソースの下方を搬送される基材の上面に成膜が行われる態様でもよいが、この場合には、スパッタによりターゲット表面に生じて遊離する小粒子等の汚染物質が基材表面に落下するのを防止する対策がなされることが好ましい。
また、上記実施形態では、「黒色」と判断する目安について、L値については50以下、a値およびb値についてはそれぞれ5以下としたが、これらの目安の数値は目的に応じて変更されてもよい。これにより、上記した好ましい成膜条件については幾らかの変更が必要となる。
また、上記実施形態では成膜対象である基材Bとしてステンレス鋼板が用いられているが、基材の材料はこれに限定されるものではなく任意である。例えば他の金属板やガラス板等に黒色膜を形成する目的に、上記技術を適用することが可能である。特に低温プラズマを発生可能な構成においては、高い耐熱性を有していない例えば樹脂製の平板やフィルム等を成膜対象として、その表面に黒色膜を成膜することができる。また基材の表面は平坦なものに限定されず、例えば表面が曲面である基材を成膜対象とすることもできる。
以上、具体的な実施形態を例示して説明してきたように、この発明においては、成膜圧力が4Pa以上であってもよい。本願発明者の知見によれば、成膜圧力が4Pa以上であるとき、処理空間への窒素ガス供給量に対する膜色および成膜レートの感受性が極めて低くなる。つまり、窒素ガス供給量の変動が膜色および成膜レートに与える影響が小さい。これにより、より品質の安定した成膜を行うことが可能になる。
また例えば、成膜圧力が5Pa以下であってもよい。上記したように、成膜圧力が4Pa以上であれば窒素供給量をそれ以上増加させても膜質や成膜レートに大きな変化は現れない。したがって、成膜圧力をこれ以上に大きくしても特に利点は生じず、むしろアーキング等の好ましくない現象の発生確率が高まることになる。本願発明者の知見によれば、成膜圧力が5Pa以下であるとき、アーキング等の問題を発生することなく良好に成膜を行うことが可能である。
また例えば、処理空間に供給されるガス全体に対する窒素ガスの体積比が20%ないし80%であってもよい。このような数値範囲で処理空間に窒素を供給することで、特に膜色および成膜レートの安定した成膜を行うことが可能である。
また例えば、処理空間に臨んで設けられた誘導結合アンテナと、ターゲット材との間に高周波電圧を印加してプラズマを発生させる構成であってもよい。このような構成によれば、処理空間に高密度のプラズマを安定して発生させることができ、プラズマスパッタリングによる成膜を安定的に進行させることができる。
また例えば、ターゲット材がマグネトロン型回転カソードと一体化された構成であってもよい。より具体的には、例えばターゲット保持手段がマグネトロン型回転カソードを有し、該回転カソードの表面がターゲット材により被覆された構成であってもよい。このような回転カソードが用いられることで、アーキング等の異常放電を生じることなく従来よりも成膜圧力を高くすることが可能であるため、本発明の成膜条件を実現するのに好適である。
この発明は、適宜の基材の表面に不透明で均一な黒色膜を形成する種々の目的に利用することができる。製品の用途としては例えば建材や光学部品などが考えられるが、これらに限定されるものでなく任意である。
1 成膜装置
6 反応性ガス供給部(ガス供給手段)
7 スパッタガス供給部(ガス供給手段)
8 電源ユニット
31 キャリア(基材保持手段)
51,52 回転カソード(ターゲット保持手段、マグネトロン型回転カソード)
53,54 磁石ユニット(マグネトロン型回転カソード)
55,56 回転駆動部(ターゲット保持手段)
63,73 ノズル
57 誘導結合アンテナ(プラズマ発生手段)
82 高周波電源(電源、プラズマ発生手段)
193 圧力センサ(気圧制御手段)
194 排気ポンプ(気圧制御手段)
512,522 ターゲット材
B 基材

Claims (9)

  1. 基材の表面に臨ませてターゲット材を配置する工程と、
    前記基材の表面と前記ターゲット材との間の処理空間にスパッタガスおよび反応性ガスを含むガスを供給する工程と、
    前記処理空間の気圧を所定の成膜圧力に制御する工程と、
    前記処理空間に電界を形成して前記ガスのプラズマを発生させる工程と
    を備え、
    前記ターゲット材がチタンであり、前記反応性ガスが窒素であり、前記成膜圧力が3Pa以上であり、前記基材の表面に窒化チタンの膜をスパッタリング成膜する成膜方法。
  2. 前記成膜圧力が4Pa以上である請求項1に記載の成膜方法。
  3. 前記成膜圧力が5Pa以下である請求項1または2に記載の成膜方法。
  4. 前記処理空間に供給される前記ガス全体に対する窒素ガスの体積比が20%ないし80%である請求項1ないし3のいずれかに記載の成膜方法。
  5. 前記処理空間に臨んで設けられた誘導結合アンテナと、前記ターゲット材との間に高周波電圧を印加して前記プラズマを発生させる請求項1ないし4のいずれかに記載の成膜方法。
  6. 前記ターゲット材がマグネトロン型回転カソードと一体化されている請求項5に記載の成膜方法。
  7. 基材を保持する基材保持手段と、
    ターゲット材を前記基材の表面に臨ませて保持するターゲット保持手段と、
    前記基材の表面と前記ターゲット材との間の処理空間にスパッタガスおよび反応性ガスを含むガスを供給するガス供給手段と、
    前記処理空間の気圧を所定の成膜圧力に制御する気圧制御手段と、
    前記処理空間に電界を形成して前記ガスのプラズマを発生させるプラズマ発生手段と
    を備え、
    前記ターゲット材がチタンであり、前記反応性ガスが窒素であり、前記成膜圧力が3Pa以上であり、前記基材の表面に窒化チタンの膜をスパッタリング成膜する成膜装置。
  8. 前記プラズマ発生手段は、前記処理空間に臨んで設けられた誘導結合アンテナと、前記誘導結合アンテナと前記ターゲット材との間に高周波電圧を印加する電源とを有する請求項7に記載の成膜装置。
  9. 前記ターゲット保持手段がマグネトロン型回転カソードを有し、前記回転カソードの表面が前記ターゲット材により被覆されている請求項8に記載の成膜装置。
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