図1は、本発明の一実施例における法人評価のためのネットワークシステム(法人評価システム)100の概略図を示す。
図1は、理解を容易にするために、複数の金融機関のそれぞれのコンピュータ・システム(例えば、EBM(Event Based Marketing、イベントベースドマーケティング)システム)200、300、301、302と外部DB(データベース)303とがネットワーク500を介して接続している図を示す。コンピュータ・システム200、300、301、302は、本実施例を実現するためのコンピュータ・システムである。外部DB303は、金融機関が把握していない資金等に関する法人情報データを取得して記録するためのデータベースである。ここで、法人情報データは、上述した情報に加えて、法人の財務情報(売り上げや業績など)や属性情報(規模など)を含んでもよい。外部DB303は、後述する法人情報DB237と重複する法人情報データを有してもよい。ここで、法人情報データは、総合的な点数化として記憶されていてもよい。当該法人情報データを取得することにより、法人間取引のデータを補完して、商流作成の精度を向上させることができる。特に、図1は、A銀行のコンピュータ・システム200とB銀行金融取引システム300とC銀行金融取引システム301とD銀行の金融取引システム302のそれぞれが有している金融口座同士が、同じ銀行内で、またはネットワーク500を介して別の銀行との間で金融取引データを用いて金融取引をしている概念図を示している。なお、ネットワーク500には、複数の金融機関の様々なシステムなどが更に接続されてもよい。
図2は、本発明の一実施例におけるコンピュータ・システムの機能ブロック図を示す。説明を容易にするために、A銀行のコンピュータ・システム200を説明する。
コンピュータ・システム200は、行内サーバ210と、端末220(220−1〜n:nは1以上の整数)と、行内DB(DataBase)230とを含む。行内サーバ210は、金融取引データの送受信や解析などの様々情報処理をおこなう。端末220は、行内サーバ210にデータを入力したり、行内サーバ210が解析した結果を視覚的に表示したりする。行内DB230は、行内サーバ210が情報処理をしたデータを記録したり、行内サーバ210が情報処理をする際に必要なデータを提供したりする。
行内サーバ210は、制御部211と、グルーピング部212と、法人管理部213と、商流生成部214と、商流推測部215と、マッピング部216と、外部I/F部217と、類似商流検索部218を含む。
制御部211は、後述する各部212−217を制御する。なお、制御部211は、単独で設けてもよいが、後述する各部212−217の内部に個別に制御部を設けてもよい。
グルーピング部212は、金融取引データを正規化して、複数の法人口座を関連付けて、ひとつの法人グループであることを判定する処理(本実施例では、グルーピングと称する)を行う。なお、本実施例における「法人」とは、ひとつの金融口座を有しているものを指しており、例えば、法律上の法人だけでなく、ある法人の中のひとつの事業所である場合も含む。
法人管理部213は、グルーピングされた複数の法人口座を、ひとつの法人グループとして管理する。
商流生成部214は、複数の法人口座間の資金の流れに基づいて、商流を生成する。
商流推測部215は、商流生成部214が生成した商流の中で、1つまたは複数の資金の取引の変化(資金の流れの増減など)や、法人活動上の変化(新規事業の立ち上げ、不当たりなど)が生じて商流が変化した場合に、当該変化に基づいて、別の商流の変化を推測する。
マッピング部216は、商流生成部214が生成した商流を、地図にマッピングして、端末などの画面に表示する。当該表示により、ユーザが商流を視覚的に把握することができる。また、商流推測部215が推測した商流も地図に反映させて表示することもできる。
外部I/F(Interface)部217は、ネットワーク500を介して、外部の銀行などと、金融取引データの送受信をする。
類似商流検索部218は、対象商流と類似する類似商流を検索する。類似商流を検索するための一実施例については、後述する。
行内DB230は、金融口座DB231と、地図DB232と、決済情報DB233と、グルーピングDB234と、法人管理番号DB235と、商流DB236と、法人情報DB237とを含む。
金融口座DB231は、金融機関に開設されている個々の金融口座(特に、法人口座)の残高などを管理するデータベースである。
地図DB232は、地図の情報を記録するデータベースである。特に、法人の所在地(住所)や商流をマッピングする際に、必要な情報(住所などの地理的情報との関係など)が記録されている。
決済情報DB233は、各金融取引データに基づいて決済したり、予め決められた期間内の全て(若しくは所定以上の取引回数のある一部の法人)の金融取引データを記録したりするためのデータベースである。また、後述するような法人管理番号に基づいて所定の情報処理が施された金融データを記録するように構成されてもよい。
グルーピングDB234は、グルーピングに必要なデータを記録するためのデータベースである。また、グルーピングにより、ひとつの法人グループ(仮想的な法人)であると判断された各法人を管理するデータベースである。
法人管理番号DB235は、グルーピングされた法人グループに対して、個別の法人管理番号を付与して、管理するためのデータベースである。
商流DB236は、生成された商流を記録したり管理したりするためのデータベースである。また、推測された商流を記録できるように構成されてもよい。
法人情報DB237は、法人口座を有する法人の属性情報や企業情報などを管理するデータベースである。法人の属性情報とは、例えば、法人の所在地(若しくは、対象となる金融口座に関連する事業所の所在地)などである。法人の企業情報とは、その法人の財務、格付、業績などである。また、法人情報DBには、銀行が法人から預かっている金額などに関する預金情報や、銀行が法人に貸し出している金額などに関する貸出情報を記録してもよい。法人情報DB237は、外部DB303と重複する法人情報を有してもよい。
類似口座検索DB238は、自行(本実施例では、A銀行)が有している法人情報などに基づいて生成される情報であって、異なる法人名称であっても、同一法人であるか否かを判定するための情報を記録するためのデータベースである。
なお、上述したデータベースの一部または全部は、本実施例で説明した機能を実現できれば、銀行のコンピュータ・システムの外部に設置されてもよい。
B銀行の金融取引システム300、C銀行の金融取引システム310、D銀行の金融取引システム320は、少なくとも図3で説明するような後述する金融取引データを用いて、A銀行のコンピュータ・システム200と金融取引が可能な最小限のシステムを備えていれば良い。すなわち、B銀行の金融取引システム300、C銀行の金融取引システム310、D銀行の金融取引システム320は、A銀行のコンピュータ・システム200と同じ構成でなくてよい。
図3は、本発明の一実施例における金融取引データの構造を示す。
本実施例のデータの構造は、受取人(名称)310、依頼人(名称)320、通信種目330、勘定日340、取引金額350からなる。受取人310は、金融取引の依頼先の法人の名称を示す。依頼人320は、金融取引を依頼元の法人の名称を示す。通信種目330は、金融取引の種類を示している。勘定日340は、金融機関が金融処理を行った日を示す。取引金額350は、支払元(依頼人)から支払先(受取人)に支払われた金額を示す。
図4は、本発明の一実施例におけるグルーピングの一例を示す図である。なお、本実施例における「法人」とは、ひとつの金融口座を有しているものを指しており、例えば、法律上の法人だけでなく、ある法人の中のひとつの事業所である場合も含む。
図4(a)では、図3の金融取引データから、依頼人の名称をキーとして抽出した場合のデータを示している。
図4(b)では、図4(a)で抽出したデータを正規化処理する例を示す。
本実施例では、金融取引データで使用される法人の名称が、「キーワード+略称+付加的な文字」から構成されることが多いことに着目した正規化処理の一例を示す。なお、本実施例の正規化処理において、「キーワード」「略称」「付加的な文字」の順番は任意でよい。
まず、依頼人の名称から、カブ)、カ)などの株式会社を示す略称を抜き出す。具体的には、例えば、当該略称の一覧を任意のグルーピングDB234に予め記録しておき、当該記録された略称と、各依頼人の名称とをAND論理で処理することによって、当該略称を抜き出してもよい。
次に、付加的な文字を抜き出す。具体的には、例えば、付加的な文字列の一覧(例えば、ヨコハマやキョウトなどの地域名)をグルーピングDB234に予め記録しておき、当該記録された付加的な文字列と、各依頼人の名称の末尾の数文字とをAND論理で処理することによって、当該付加的な文字を抜き出してもよい。
上述した処理を行うことにより、略称と付加的な文字以外の文字が取り除かれ、キーワードだけが残るので、当該キーワードを正規化データとして抽出することができる。当該正規化データは、今後のグルーピングを行うときに、新たな法人口座の金融取引データから、既存の法人グループであるかを判定するために、グルーピングDB234に記録されてもよい。
図4(c)では、依頼人の名称に基づく正規化処理の結果を示す。本実施例では、4つの依頼人の名称に「ナレッジソウケン」と称するキーワードが含まれていたので、グルーピング部212によって、当該キーワードを有する口座の依頼人がひとつの仮想的な法人グループに属すると判定される。今後も同様に、別の所定期間の金融取引データをグルーピングするときには、グルーピング部212は、グルーピングDB234を参照して、当該キーワードを有する依頼人の名称は、全てひとつの法人であると判定してもよい。すなわち、「ナレッジソウケン」と称するキーワードが含まれていた依頼人は、グルーピングされたことになるが、「ナレッジソウゴウケキュウショ」と称するキーワードが含まれていた依頼人は、ここでは別の法人であると判定される。一旦グルーピングされた法人は、仮想的なひとつの法人として取り扱われるので、当該仮想的なひとつの法人の所在地もグルーピングDB234に記録されてもよい。その場合、例えば、当該仮想的な法人を構成する法人口座の中で、(取引数でもよく取引額でもよいが)一番取引が多い法人口座の住所を法人情報DB237から取得して、グルーピングDB234に記録してもよい。当該住所の情報は、将来、商流を地図にマッピングする際に使用されてもよい。
図4(d)では、図4(c)で得られた正規化処理を更に拡張させて、グルーピングの対象となる口座の数を拡張するための正規化処理の一例を示す。図4(d)では、グルーピングDB212は、類似口座検索DB238を参照して、図4(c)で抽出されたキーワード(ナレッジソウケン)と類似するキーワードを検索する。ここで、類似口座検索DB238は、類似であるパターンを記録している。例えば、類似であると判定するひとつのパターンは、略称である。図4(d)においては、「ソウケン」と「ソウゴウケンキュウショ」とが同一であると判定されている。略称の例は、主に、キーワードの一部の類似検索をする場合の一例である。
同様に、類似であると判定する別のパターンは、商号変更である。これは、自行の金融取引データから抽出することができる。例えば、金融機関に対して、依頼人から名義変更の依頼があると、当該金融機関は、依頼のあった依頼人の名称を変更する。ここで、金融機関は、各金融口座には個別の口座番号などを割り当てているので、当該口座の依頼人の変更履歴を把握している。当該変更履歴を類似口座検索DB238に記録しておくことによって、類似検索の精度を向上させることができる。本実施例においては、A(損保株式会社)と、B(損保株式会社)と、A&B(損保株式会社)は同一法人であることを示している。例えば、A(損保株式会社)とB(損保株式会社)とが合併などによって、A&B(損保株式会社)になったことに基づいて口座の名義人が変更された履歴が類似口座検索DB238に記録されていたことに起因する。また、類似口座検索DB238には、ABC(自動車株式会社)とアイウ(自動車株式会社)とが同一であることも記録されている。例えば、知名度のある商品名の名称(アイウ)を用いた法人名に変更したことに基づいている。商号変更の例は、主に、キーワード全体としての類似検索をする場合の一例である。
本実施例においては、類似口座検索DB238を参照することによって、「ナレッジソウケン」と「ナレッジソウゴウケキュウショ」とが同一であることが判定される。
図4(e)では、図4(d)における判定結果により、「ナレッジソウケン」と「ナレッジソウゴウケキュウショ」とが同一であることが判定されたので、図4(a)の依頼人は全て同一の法人としてグルーピングされる。
図4で示したグルーピングにおいては、金融取引データの(勘定日などに基づく)対象期間の指定によっては、法人口座の数が変化する可能性がある。よって、例えば、当該対象期間を任意に設定できるように構成されてもよい。また、対象期間を定期的(例えば、1年ごと)に更新することにより、グルーピングされた仮想的な法人を構成する法人を定期的に入れ替える(追加や削減する)ように構成されてもよい。また、商流を作成する際に、ユーザが端末から任意に対象期間を指定するように構成されてもよい。
グルーピングは、本実施例で示した方法以外でも本発明を実施することが可能である。
図5は、本発明の一実施例における法人顧客の管理方法の一例を示す図である。
図5aは、法人管理の概念図を示す。法人A1、A2、A3、・・・が、図4で示したようなグルーピングによって、ひとつの法人グループであると判定された場合には、法人管理番号(例えば、10001)を付与する。同様に、法人B1、B2、B3、・・・についても、同じ法人グループであると判定されると、法人管理部213は、法人管理番号(例えば、10002)を付与する。法人管理番号を付与することによって、法人の管理が容易になる。例えば、法人管理番号を管理する法人管理番号DB235を構築することにより、例えば、法人A1、A2、A3が実質的に同じ法人であることなどの情報取得や情報共有が容易になる。また、新たな法人(例えば、法人A4、A5など)が追加されても、同じ法人グループであると判定されれば、同一の法人管理番号で、当該新たな法人を管理することができる。また、後述するように商流を把握する際には、個別の法人(金融口座)毎に商流を把握するのではなく、法人管理番号に基づき商流をまとめて把握することができるので、直感的に理解しやすい商流を(マッピングなどの手法で)端末の画面上などに表示することができる。
また、金融機関の口座は、法人の事業所毎に開設されることが多い。各事業所単位の資金の流れを、本実施例のようなグルーピングすることによって、法人単位の資金の流れを商流として把握することができる。
図5bは、図5aの概念に基づいた法人管理番号DBに記録されるデータの具体例を示す。図4で説明したようなグルーピングに基づいて同一の法人グループと判断された各法人口座は、ひとつの法人グループとして、同一の法人管理番号(本実施例では10001)が付与されている。
図5cは、図3で示した金融取引データを加工して、図5bで示した管理テーブルに基づいて、図3の依頼人320のデータを法人名から法人管理番号に置き換え、更に、必要な項目のみ(ここでは、受取人310、依頼人320、勘定日340、取引金額350)を抽出したデータ構造の一例を示す。図5cに示したような加工したデータを、任意のDB(例えば、決済情報DB233)に記録してもよい。
図6は、本発明の一実施例における商流を作る処理を示すフローチャートを示す。図7aは、本発明の一実施例における商流の概念図を示し、図7bは、当該商流の地図へのマッピングを示す。
ここで、商流は、複数の法人間取引における資金の流れから構成されている。例えば、図7a、7bでは、法人Aは、法人Bと法人Xから資金を受けている(入金)ことを矢印で示している。一方で、法人Aは、法人Cと法人Yとに資金を送っている(出金)ことを矢印で示している。
以下、図7a、7bを参照しつつ、図6のフローチャートについて説明する。
S1010では、図4、5で示したグルーピングを実行し、法人口座を整理する。
S1020では、法人評価の対象となる法人(対象法人)を選択する。例えば、法人Aを選択する。
S1030では、対象法人Aが属する商流(対象商流)を作成する。例えば、本実施例では、対象法人Aと直接的取引がある関連法人B、C、X、Yとの間で作成される商流が対象商流である。ここで、対象商流を作成するにあたっては、例えば、図3で示した金融取引データを基に、1年当たりなどの予め定められた期間の取引の合計額を基準にしてもよい。更に、法人情報DB237や外部DB303から、対象となる法人取引の情報を任意の方式で金額に換算して、上述した予め定められた期間の取引の合計額に関する金融取引データに補完することにより、商流を作成してもよい。なお、所定の合計金額を満たさない取引関係の場合には、対象商流に属さないものと判断してもよい。
S1040では、対象商流と直接取引のある法人を選択する。本実施例では、関連法人B、C、X、Yと取引のある(更なる)関連法人J、Kが選択されることになる。
S1050では、S1040で選択された関連法人J、Kを追加して、対象商流を更新する。例えば、法人Bと直接的取引のある法人Jとの間の関係を追加して、商流を更新する。同様に、法人Xについても商流を更新する。商流を更新するに当たっては、当初(S1030)に対象商流を作成したときと同じ基準で作成してもよいし、異なる基準で作成してもよい。例えば、商流の有無を判断するにあたって所定期間における所定の合計金額を判断基準とする場合は、対象法人Aから見れば所定の合計金額よりも少ない場合であっても商流があると判断してもよい。これは、法人の規模によっては所定期間(年間、月間など)の取引額が異なるからである。
また、別の実施例として、商流を作成する際には、取引先の法人(例えば、法人B、C、X、Y)と取引元の法人(例えば、法人A)との商流作成基準(取引の合計額など)を、法人情報DB237に基づいて、取引元および取引先の法人の規模に応じて設定してもよい。これは、対象法人が、いわゆる大企業であれば、大企業と取引する直接的または間接的に取引する会社は、大企業とは取引金額が小さい中小企業となることが多いからである。更に別の実施例として、BtoB(Business to Business)すなわち法人間の取引に基づく商流だけでなく、BtoC(Business to Consumer)の商流にも適用可能である。BtoCに適用する場合は、Consumerの集合をひとつの仮想法人として取り扱えればよい。本実施例では、法人Kを仮想法人として取り扱う。なお、仮想法人の法人属性は、Consumerのマクロデータをデータベースなどに登録しておき、適宜使用できるように構成されていればよい。また、本実施例の説明において、「法人」と称して説明するときは、仮想法人も含むものとする。
S1060では、全ての関連法人との取引を商流に反映させて更新できたか否かを確認する。本実施例では、法人B、C、X、Yにおける商流を全て作成したか否かを確認する。全て作成していない場合は、S1050に戻る。全て作成した場合には、次のステップに進む。
S1060では、S1040で選択された関連法人B、C、X、Yと直接的取引のある法人を選択する。本実施例では、関連法人Bと直接的取引のある関連法人C、Jと、関連法人Cと直接的取引のある関連法人B、Kが選択されることになる。
同様に、関連法人を追加して商流を形成する場合はS1070−S1090と同様の処理をS1090の後続に追加するように構成してもよい。
S1100では、商流DB236に記録されたデータを基に、対象法人(本実施例では、法人A)を基準とした全ての商流を表示する。商流を表示する方法は、表や地図などを用いた視覚的にわかりやすい形式でもよく、その他多様な形式が用いられてもよい。例えば、図7aに示すように、概念的でもよい。また、図7bに示すように、商流の一部または全部を地図(世界地図、日本地図、市町村の地図、模式的な地図など)にマッピングして表示してもよい。商流を地図にマッピングすることにより、例えば、金融機関の営業担当者にとっては商流の流れを視覚的に理解できるようになるので法人顧客を訪問する順番を容易に決定することができるようになる。
ここで、図7aに示す商流について説明する。例えば、図7aの商流が、モノ(原材料や加工品など)の売買の流れだと仮定する。図7aでは法人Bから法人Aへ矢印が向いているので、法人Aは、法人Bと法人Xから資金を受けていることがわかる。別の見方をすれば、法人Aは、法人Bと法人Xにモノを売っていることがわかる。一方で、法人Aは、法人Cと法人Yとに資金送っているので、モノを買っていることがわかる。例えば、法人Aが製造業者であれば、法人Aは、法人Cと法人Yから原材料等を購入して、法人Aで製造加工を行い、法人Bと法人Xに製造品を販売していることがわかる。すなわち、資金の流れとモノの売買の流れは逆方向になっていることがわかる。また、図7bに示すように、商流を地図にマッピングすることにより、資金の流れが、地理的情報と共に理解できるようになる。
なお、グルーピングされた仮想的な法人同士の金融取引データを基に、商流を作成してもよい。その際に、ひとつの仮想的な法人間の金融取引データは、商流作成のときには使用しなくてもよい。これは、自社間取引(すなわち、同じ法人下の異なる事業所間の取引)を除外することができる。一般に、ある法人の自社間取引も商流形成のために使用すると、当該法人売り上げが、公表された売り上げよりも大幅に上回ってしまうからである。このような自社間取引のデータは、データ処理におけるノイズである。本実施例で示したようなグルーピングを行ってから商流を形成すると、ノイズとなる自社間取引を除外できるので、精度の高い商流を作成することができる。また、このような精度の高い商流が作成できば、後述するように、商流の変化を高精度で予測することができる。
また、図7a、7bに示すように、商流を表示する際には、各法人間での取引額に応じて矢印の太さを変えて視覚的にわかりやすく表示してもよい。
図10dは、商流を評価するためのフローチャートを示す。
S7010では、評価対象となる商流を選択する。ここで、商流を構成する法人も選択する必要があるが、例えば、図6のフローチャートで示したような手順で、商流を構成する法人を選択してもよい。
S7020では、対象となる商流の資金取引の総量を計算する。商流を構成する法人内での資金取引の総量(対象とする商流外の取引を含ない総量)を計算してもよいし、商流構成する法人が関係する全ての資金取引の総量(対象とする商流外の取引を含めた総量)を計算してもよい。
S7030では、商流を構成する法人の個社情報を取得する。
S7040では、外部DBから外部法人情報を取得する。
S7050では、S7010−S7040で取得した情報を基に、商流を評価する。
図10eは、商流の評価に基づいて、当該商流を構成する法人を評価するためのフローチャートを示す。
S8010では、評価対象となる法人が属する商流を選択し、当該選択された商流の評価情報(評価値)も取得する。
S8020では、評価対象となる法人のポジションを計算する。また、商流を構成する他の法人のポジションも計算する。ここで、ポジションとは、商流における法人の寄与度であり、ポジションを計算するにあたっては、例えば、[ある法人が実際に取引した金額]/[商流内の取引の総量]に基づく計算式を用いてもよい。そして、商流を構成する全ての法人若しくは任意の法人のポジションを計算した後に、各法人のポジションを比較する。比較の結果、最上位の法人または上位の数法人を選択して、これら選択された法人は、商流内で「主」のポジションであると判定する。ここで、「主」のポジションであると判定された法人との取引の一部または全部は、商流全体からみると資金取引量の偏在があるという情報(商流の特性)も同時に取得できるようにしてもよい。一方、「主」のポジションで判定されなかった法人は、「従」のポジションであると判定する。「主」のポジションと判定された法人は、計算されたポジション以上の潜在能力がある法人であると判定できる。一方、「従」のポジションであると判定された法人は、計算されたポジション以上の潜在能力はない法人であると判定され、更に、「主」のポジションの法人からの影響が大きいまたは依存度が大きい法人であると判定される。すなわち、「主」のポジションであれば、他の法人からのリスクなどの負の影響を受けづらい一方で、資金ニーズなどの正の影響を増大して受ける可能性がある。一方、「従」のポジションであれば、他の法人からのリスクなどの負の影響を受けやすくなる。
S8030では、S8020で判定されたポジションと外部データからの外部法人情報と法人DBからの内部法人情報に基づいて、対象となる法人を評価する。ここで、法人情報を用いて個別の法人の情報を使用する。法人の評価値が高ければ、例えば、他の法人からのリスクなどの負の影響を受けづらい一方で、資金ニーズなどの正の影響を増大して受ける可能性がある。一方、法人の評価値が低ければ、他の法人からのリスクなどの負の影響を受けやすくなる。
図8aは、本発明の一実施例における(a)複合的変化や単一変化の実態対象と影響度を判定するためのフローチャートを示し、図8bは、複合的変化の対象を示し、図8cは、複合的変化のパターンを示し、図8dは、単一変化のパターンを示す。図8a−8dでは、生成した商流全体の中で、ある法人間取引において変化が生じたか否か、または対象法人または関連法人自身の変化が生じたか否かを確認するための情報処理の一例を示している。商流を形成する個々の法人間取引は、一定期間(1年など)の単位で見れば、取引額がある程度の範囲で変化することの方が通常である。その通常生じる変化が、必ずしも商流全体の変化を引き起こすとは限らない。よって、本実施例では、商流全体の変化を引き起こすためのパターンを予め記録しておき、当該パターンに沿って取引額の変化(またはその組み合わせ)が生じたときに、商流が変化したと判断する情報処理の一例を示す。
S2010では、検索の対象となる任意の一定期間(例えば、過去1年)すなわち対象期間内における、各法人(対象法人、関連法人)の資金移動に関する情報と、当該法人の法人情報を決済情報DB233などから読み取る。さらに、当該検索対象期間内の情報に加えて、(当該検索対象期間とは異なる)参照期間内における対象法人または関連法人の資金移動に関する情報と、対象法人または関連法人の法人情報も決済情報DB233などから読み取る。ここで、参照期間とは、検索対象期間とは異なる期間であって過去の任意の一定期間であってもよい。また、参照期間が、対象期間よりも長期の期間であって、対象期間を含むような期間でもよい。
S2020では、S2010で読み取った資金移動の情報と法人情報に関して個々の要素の変化の有無を判断する。ここで、個々の要素とは、例えば、図8bに示すように、資金移動であれば、新規入金(新規販売)、新規支払(新規仕入)、入金脱落(販売脱落)、支払脱落(仕入脱落)などであり、法人情報であれば、財務、格付、業種などである。当該個々の要素の変化の有無を判定するにあたっては、S2010で読み取った対象期間内の情報が、参照期間内の情報に対してどの程度変化したか(例えば、所定の割合以上増加したか)に基づいてもよい。なお、変化を判断するときには、例えば、互いに比較対象となるようにデータを加工してから比較するようにしてもよい。例えば、[(法人Bから法人A)への資金移動)/対象期間]と、[(法人Bから法人Aへの資金移動)/参照期間]などである。
図8bの資金移動を判定するためには、対象期間の資金移動と、参照期間の資金移動を比較すればよい。一例として、図7に示すように、対象法人Aは、関連法人Bから入金の流れがあることがわかる。対象期間における法人Bから法人Aへの資金移動が、参照期間における法人Bから法人Aへの資金移動よりも増加していれば(若しくは、ある所定割合以上増加していれば)、「新規入金」が発生したと判断できる。一方で、対象期間における法人Bから法人Aへの資金移動が、参照期間における法人Bから法人Aへの資金移動よりも減少していれば(若しくは、ある所定割合以上減少していれば)、「入金脱落」が発生したと判断できる。別の例として、図7に示すように、対象法人Aは、関連法人Cから支払(出金)の流れがあることがわかる。対象期間における法人Aから法人Cへの資金移動が、参照期間における法人Aから法人Cへの資金移動よりも増加していれば(若しくは、所定額または所定割合以上増加していれば)、「新規支払」が発生したと判断できる。一方で、対象期間における法人Aから法人Cへの資金移動が、参照期間における法人Aから法人Cへの資金移動よりも減少していれば(若しくは、所定額または所定割合以上減少していれば)、「支払脱落」が発生したと判断できる。
S2030では、S2020で変化が発生したと判断された場合に実行される処理である。図8cに示すような複合的変化のパターンや図8dに示すような単一変化のパターンが検索される。これらのパターンを、予め所定のDB(図示せず)に記録しておく。ここで、複合的変化とは、複数の所定の条件が一致したときの変化である。単一変化とは、1つの条件が一致したときの変化である。
例えば、図8cのパターンNO.1に該当するためには、(1)法人A(対象法人)が、(2)法人B(相手先法人)からの入金脱落の後、(3)法人Xからの新規入金があり、(4)上記(2)と(3)の資金額が共にxx億円以上(xxは、予め設定された数字)であったことを全て満たす必要がある。図8(c)のパターンNO.2以降も同様に判定される。図8cのテーブルに記載されたパターンの中からいずれか1つを満たすと次の処理へ進む。
図8dのパターンNO.1に該当するためには、法人A(対象法人)の格付が1ランク上がったことが必要である。図8dのパターンNO.2以降も同様に判定される。
別の実施例として、図8c、8dのパターンの中から複数のパターンに該当する場合は、所定の計算式を用いて、各パターンの影響度から総合の影響度を計算するような手法を適用してもよい。
S2040では、該当する複合的変化のパターンから、当該パターンに対応する実態対象を判定する。本実施例では、図8cのパターンNOに対応する実施対象が予め記録されている。例えば、パターンNO.1を満たす場合は、実施対象は、図8cによると、「資金ニーズ」となる。すなわち、対象法人Aは、資金ニーズがあると判断される。一方、パターンNO.2を満たす場合は、実施対象は、図8cによると、「リスク」である。すなわち、対象法人Aは、リスクがあると判断される。本実施例においては、いずれかのパターンに該当すれば、「資金ニーズ」か「リスク」の2つの実施対象が判定されればよい。ここで、資金ニーズとは、対象法人が資金を必要としている若しくは必要となる可能性が高いことを意味する。また、リスクとは、対象法人が倒産や不当たりなどを起こす若しくは起こす可能性が高いことを意味する。パターンNO.3以降も同様である。図8cのパターンは、法人A(対象法人)の実態対象が判断される例を示したが、別の例として、関連法人の実態対象が判断されてもよい。また、
S2050では、影響度を計算する。ここで、本実施例における影響度とは、(新規支払い、支払脱落、企業情報などに基づく複合的変化や単一変化により)対象法人が関連法人に与える影響若しくは(新規入金、入金脱落、企業情報などの複合的変化や単一変化により)関連法人自身や関連法人との取引が直接的に対象法人に与える影響や関連法人や商流(資金の取引量など)が間接的に対象法人に与える影響を数値(例えば、0から100%の範囲)で示したものである。影響度の計算にあたっては、パターン毎に対応する一定の値(図8cのxx%、yy%など)を決めておいてもよい。また、パターン毎に一定の幅(図8cのaa%からbb%など)で値をもたせておき、例えば、法人間取引の資金量の割合(対象法人や関連法人が取引する資金量に対する割合や対象法人を含む商流全体に対する資金量に対する割合)に基づいて、その範囲内で値が決まるように計算されてもよい。このように、影響度が生じる一覧(テーブル)を作成して影響度を決定し、更に後述する伝搬度も考慮することにより、法人を定量的に評価することができるようになる。また、関連法人自身の変化に基づく影響度を計算することもできるし、商流(資金の流れ等)の変化に基づく計算をすることもできる。
S2060では、検索された複合的変化の実態対象と影響度を出力する。当該出力は、商流DB236に記録されてもよく、端末の画面上に図7で示した地図に上書きするように表示されてもよい。また、変化が発生した際には、S2020で判定結果を表示、すなわち図8cの変化の実態対象が「資金ニーズ」や「リスク」である旨を表示してもよい。
図9aは、本発明の一実施例における商流の変化を検知して、別の商流の変化を推測するためのフローチャートを示す。ここで、商流の変化は、実際に発生した商流の現実的な変化であってもよく、シミュレーションによって計算された仮想的な変化であってもよい。
S3010では、対象商流内の変化を検知する。対象商流内の変化は、例えば、対象商流内に属する対象法人や関連法人(対象法人と直接的にまたは間接的に関係する法人)の法人情報データの変化(例えば、売り上げの変化)でもよく、対象法人と直接的にまたは間接的に関係する(対象商流内の)法人間取引の金融取引データの変化でもよい。ここで、対象法人と直接的に関係する法人とは、例えば、図7aで説明すると、法人Aが対象法人の場合は、法人B、C、J、K、X、Y(関連法人)である。対象法人と間接的に関係する法人とは、例えば、図7aで説明すると、法人Aが対象法人の場合は、法人Jは(法人Bを介して)間接的に関連する法人である。なお、同様に、法人Kとは、法人Aの間接的に関連する法人である。
S3020では、直接的にまたは間接的に関連する法人の影響度を計算する。影響度は、図8a〜8dで説明したようなフローチャート(特に、S2050)やテーブルなどに基づいて、計算されてもよい。
S3030では、商流内の各法人への伝播度を計算する。ある変化が生じた場合、同じ商流内であっても、法人によって影響を受ける程度(割合)が異なる。伝播度は、各法人が、ある商流変化に対して、ある金融取引データがどの程度影響を受けるかを示している。なお、伝播度は、例えば、変化が生じる前のあるひとつの法人間取引の資金量の割合(商流全体の総額に対するある一つの金融取引の額)に基づいて予め計算されていてもよく、またはその他の任意の計算方法に基づく値を用いてもよい。
S3040では、影響度と伝播度から、影響値を計算する。これにより、商流全体の変化を推測することができる。ここで、影響値の計算する手法は、例えば、影響度と伝播度との積でもよく、更に、当該積の値に所定の係数を足したり掛け合わせたりしてもよい。
S3050では、影響値に基づいてパラメータを修正する。ここで、本実施例におけるパラメータとは、対象商流を形成する法人間の金融取引データと法人情報データであるが、まず、金融取引データを修正して、当該修正に基づいて、法人情報データを修正してもよい。ここで、影響値は、イベント(商流の変化)毎に且つ取引間毎に個別の値を持つ。以下、金融取引データについて説明する。本実施例において、影響値は、パーセント表示である。例えば、ある商流の変化(以下、商流変化A)が生じた場合において、ある法人間(以下、法人取引A)における取引額が1000万円であり、商流変化Aに対する法人取引Aへの影響値が90%であり、また、別の法人間(以下、法人取引B)における取引額が2000万円であり、商流変化Aに対する法人取引Bへの影響値が80%であると仮定する。かかる場合においては、商流変化Aが発生すると、法人取引Aにおける取引額が、1000万円X90%=900万円に変化し、法人取引Bの取引額が、2000万円X80%=1600万円に変化する。同様に、法人情報データに関しても、イベント(商流の変化)毎に且つ取引間毎に個別の値を持つ。なお、影響値は、100%以上の値を有する場合もあり、その場合には、商流変化が生じると取引額が増加する。そして、修正された金融取引データに基づいて法人の法人情報データを修正する。例えば、修正された金融取引データが減少した場合は、当該修正された金融取引データに関連する法人の売り上げが低下する等の法人情報データの修正が生じる。更に、売り上げの低下の程度によっては、当該法人の法人情報データにおいて、倒産の危機などの警告(ステータス)も含めてもよい。逆に、売り上げが上がった場合には、関連する法人に対して、資金ニーズが生じるというステータスを含めてもよい。また、ひとつの法人が複数の法人と取引している場合は、複数の金融取引データが存在するので、個別の金融取引データ毎に、影響値を計算して、当該ひとつの法人への影響(法人情報データの修正)は、これら複数の影響値に基づいて計算されてもよい。
S3060では、S3050で修正されたパラメータに基づいて、対象商流の評価値を再計算する。これにより、ある商流の変化が生じた場合における対象商流の評価値を計算することができる。商流の評価値の計算方法の一例については、図10dやS7010〜S7040と同じでもよい。
S3070では、影響値に基づいて寄与度を修正する。寄与度の修正方法は、例えば、寄与度に影響値をかけて(必要であれば、所定の係数をかけて)求めてよい。別の実施例として、ある商流変化後の[ある法人が実際に取引した金額]と[商流内の取引の総量]とを個別に計算した上で、S8020で同じように計算してもよい。
また、本実施例では、S3050と別の工程として実行したが、S3050と同じ工程で予め実行してもよい。
S3080では、対象法人の評価値を再計算する。本実施例では、対象商流の修正された評価値(S3060参照)と、修正された法人情報データ(S3050参照)と、対象商流における対象法人の修正された寄与度(S3070参照)に基づいて、対象法人の評価値を再計算する。対象法人の計算方法の一例については、図10eやS8010〜S8030と同じでもよい。
S3090では、推測結果の表示またはマッピングする。図9bに示すように、図7aや図7bで示されたマッピングに推測された商流を上書きしてもよいし、重複してマッピングしてもよい。また、図9cに示すように、重複してマッピングする際には、重複がわかるように、矢印の色、形状、大きさ、位置などを変えてもよい。
図9b、図9cでは、一例として、2つの態様の法人Aへの最終影響を示している。1つ目は、法人Xにおいて、図8b〜dなどに基づく変化が生じたときの態様である。2つ目は、法人Bと法人Jとの間の資金の流れにおいて、図8b〜dなどに基づく変化が生じたときの態様である。このように、本実施例では、様々な変化を視覚的にとらえることができる。すなわち、本実施例では、商流の変化をとらえることができる。
このような情報処理を用いることにより、同一商流の上で直接取引のある他法人や直接取引のない他法人の存在も含めて商流を把握することができるだけではなく、商流の変化も推測できるようになる。従来技術では、対象法人に対する直接的な変化を検知しても、その変化を受けて金融機関が行動しても対応が遅れてしまうこともあるが、本実施例で示した推測をおこなうことで、そのような遅れを防ぐことが可能となる。
図10a、10bは、本発明の一実施例における法人評価(個社情報、商流、商流の特性(ポジション))の表示例を示しており、図10aは商流全体で変化が生じる前の法人評価を示し、図10bは商流全体で変化が生じた時の法人評価の変化を示す。図10a、10bで示すようなグラフは、全ての法人の評価を俯瞰的に視覚的に表示することができるので、金融機関の営業担当者が資金の貸し付けや引き上げを検討するときなどに有益な情報のひとつとなり得る。本実施例では、商流の特性のひとつとしてポジションを例に挙げて説明する。商流の特性とは、商流の特徴を示すデータであり、例えば、商流内における資金移動の偏在性を示すデータなどを含む。本実施例で説明する以外の商流の特性を用いてもよい。
図10aは、商流全体における各法人の評価を示したグラフである。例えば、図10aを参照すると、法人Aは、個社情報の評価が80点であり、商流全体の評価が80点であり、ポジションが45%である。ここで、個社情報とは、法人情報DB237に記録された法人評価(財務、格付、業績など)に基づいて計算された値である。商流全体の評価値とは、商流を構成する各法人の法人評価に基づいて計算された値である。ポジションは、商流全体における各法人の強さや影響度を示す値であり、例えば、商流内における総取引額に対する各法人の取引額に基づいて計算されてもよく、この場合、(商流内では、ひとつの取引に対して2つの法人が関係するので)各法人のポジションの値の合計が200%でもよい。さらに、例えば、各法人のポジションの値の合計が100%になるように、それぞれのポジションの値が計算(調整)されてもよい。なお、法人評価の値、商流全体の評価値およびポジションを計算する方法は任意でよい。
図10bは、商流の変化前の法人評価と商流の変化後の法人評価を示したグラフである。例えば、法人Aの個社情報の評価が、商流の変化前では80点であったが、商流の変化後では85点になっていることがわかる。更に、法人Aの属する商流全体の評価が、商流に変化前では80点であったが、商流の変化後では90点になっていることがわかる。更に、法人Aのポジションが、商流の変化前では45%であったが商流の変化後では40%になっていることがわかる。このような評価から、例えば、法人A等の個別評価が上がっても、他の法人の個別評価が大幅に上がっていれば、法人Aの商流全体の中での評価(ポジション)が下がってしまうことを示している。
図10cは、図10dおよび図10eのフローチャートに基づいて評価された商流および法人の表示例を示す。図10cでは、図10dのフローチャートで評価された商流が表示されており、本実施例においては、商流の評価が80点であることが示されている。さらに、図10eのフローチャートで評価された法人が表示されており、本実施例においては、対象法人Aの評価が80点であり、本商流におけるポジションが40%であり、更に、「主」のポジションであることが表示されている。
類似する商流を抽出手順について説明する。ここでは、図14aのフローチャートと図10cの商流を参照しながら、説明する。
例えば、図10cで示される商流では、商流の評価値、商流を構成する法人の評価値、当該法人の商流におけるポジションがパラメータとして表示されている。ここでは、これらパラメータを使って類似商流を決定する手法の一例について説明する。
S9010では、対象商流(任意商流)を選択する。ここで、対象商流は、商流DB236内に、対象商流の評価値と共に記憶されているとする。商流DB236は、複数の商流を記憶しており、ユーザが任意の商流を選択する。なお、複数の商流をそれぞれ区別するために、識別番号や商流の名称などが各商流に付加されていてもよい。
S9020では、当該選択された対象商流に関するデータを商流DB236から取得する。ここで取得されたデータは、例えば、図10cに示されるようなデータであり、商流の評価値や商流の特性、当該商流を構成する法人の数(例えば、主のポジションの数、従のポジションの数、主従のポジションの総数)や各法人の評価値、各法人の個別評価(個社)などの法人情報データなどである。そして、これらのデータを使用して、重要な法人を抽出する。法人を抽出する手法は任意でよいが、本実施例においては、ポジションが主である法人を抽出する。主のポジションである法人は、当該法人が属する商流における重要な法人であると考えられるからである。なお、主のポジションである法人が複数であってもよく、その場合には、それぞれの主のポジションの法人に対して、後述するS9030、S9040を実行すればよい。
S9030では、抽出された重要な法人に関するデータを使用して、当該抽出された重要な法人に類似する法人(類似法人)を検索する。また、類似法人を検索する手法は任意でよいが、例えば、抽出された重要な法人と任意の法人とを比較して、それぞれのデータ(評価値など)の差異を計算する。ここで、任意の法人とは、図10cに示された法人だけでなく法人情報DB237等に記録されている全ての法人が対象である(但し、類似法人の対象となる法人は、少なくとも1つの別の商流に属していることが必要である。)そして、対象商流と認証流の各差異を基に、対象商流と任意商流との総合的な差異を計算して、総合的な差異が一番小さい法人を類似法人であると決定してもよい。別の実施例としては、重要な法人に関係する業種や規模などに基づいて、所定のデータベースに記憶されている同一業種や同一規模の法人から選択するように構成されていてもよい。
S9040では、S9030における処理結果を基に、(必要であれば類似法人を表示すると共に)類似法人が属する商流(類似商流)を表示する。ここで、類似法人が複数の商流に属する場合は、全ての類似商流を表示してもよいし、所定の基準(例えば、対象商流の評価値が一番近い値など)に基づいて、少なくとも1つの類似商流を表示してもよい。
図14bは、図14aで得られた類似商流を使用して、当該類似商流の変化を推測するフローチャートを示す。
S10010では、図14aのS9040で表示された類似商流から、任意のひとつの商流を選択する。そして、類似商流の評価値および特性を商流データベースから取得する。
S10020では、類似商流の変化を推測するために、対象商流の変化に関する情報(例えば、図9aの影響度、伝播度、影響値)を取得する。
S10030では、対象商流の変化に関する情報に基づいて、類似商流の評価値を推測(すなわち、再計算)して、その評価値の変化量を得る。ここで、類似商流の評価値を推測する手法は、S9010−S9040と同じでよい。
S10040は、S10030で推測した類似商流の評価値の変化によって、当該類似商流内のどの法人(1つまたは複数の法人)が変化したのかを特定して、その類似商流に属する法人の評価値の変化を推測する場合に、実行する処理である。S10040により、対象商流内で実際に生じた変化若しくはシミュレーションにより計算された変化に基づいて、類似商流内で影響を受けやすい法人を特定することができ、さらに、特定された法人の評価値の変化量を把握することができる。ここで、類似商流内の法人の評価値を推測する手法は、S3020−S3040と同じでよい。
従来は、法人を評価する担当者の経験などに基づいて、同一業種・同一規模の視点で抽出された法人同士を比較しながら、個別の法人を評価していた。一方、本実施例では、商流の評価値に基づいて、個別の業種等を問わず、類似する商流同士を比較することができるようになるので、例えば、評価値の低い商流と評価値の高い商流とを比較することにより、評価値の低い商流はどうすれば評価値を上げることができるかどうかを検討することができるようになる。そして、商流の価値を高める(商流の評価値を上げる)ことができれば、結果的に、個別の法人の価値を高めることができるようになる。
図11は、本発明の一実施例における法人評価のためのMCIF共同化システム110の概略図を示す。なお、実施例の図2と同じ参照符号は、同じものを指し示すので、説明を省略する。
本実施例のシステムは、実施例1(特に図2)で示したシステムの別の実施例である。MCIF共同化システムとは、特定の情報(MCIF)を複数の金融機関などで共同管理するためのシステムを意味する。ここで、MCIFとは、Marketing Customer Information Fileの略称であり、マーケティング用の顧客情報のファイルを意味する。本実施例によれば、共有サーバを設けて、所定の情報を共有することにより、互いの情報を組み合わせて所望の情報を自動的に構築することができるようになる。
図11のMCIF共同化システムは、A銀行のコンピュータ・システム200と、B銀行のコンピュータ・システム300(図示せず)、C銀行のコンピュータ・システム(図示せず)と、D銀行のコンピュータ・システム(図示せず)と、E銀行のコンピュータ・システム(図示せず)と、共同MCIFセンター400を含み、これらは、ネットワーク500を介して、接続されている。
MCIFセンター400は、商流サーバ410と、法人管理サーバ420とを含む。なお、商流サーバ410と法人管理サーバ420とは、共同MCIFセンター400の中に配置されていなくてもよい。
グルーピング部212、法人管理部213、商流生成部214、商流推測部215、ルーピングDB234、法人管理番号DB235、商流DB236は、実施例1のようにコンピュータ・システム200内に配置されていないが、実施例2では共同MCIFセンター400内に配置されている。
実施例2において、図示していないが、B銀行のコンピュータ・システム300、C銀行のコンピュータ・システムと、D銀行のコンピュータ・システムと、E銀行のコンピュータ・システムは、A銀行のコンピュータ・システム200と同じ内部構成を有してもよい。
商流サーバ410は、管理サーバ411と、商流生成部214と、商流推測部215と、A銀行用商流DB413と、B銀行用商流DB423とを含む。なお、実施例1と同様に、本実施例で説明している機能が達成できれば、各DBはコンピュータ・システムの外部に配置されていてもよい。
商流サーバ410の管理サーバ411は、商流生成部214と、商流推測部215と、A銀行用商流DB413と、B銀行用商流DB423とを制御する。なお、別の実施例においては、商流DBごとに管理サーバを設けてもよく、その場合には、MCIF共同化システムに接続されている金融機関のコンピュータ・システムの数に基づいて、設けるべき管理サーバの数が決まってもよい。
法人管理サーバ420は、管理サーバ421と、グルーピング部212と、グルーピングDB234と、法人管理番号DB235と、類似口座検索DB238とを含む。複数の金融機関で、グルーピングされた複数の金融口座をひとつの仮想的な法人口座とみなして、更に、当該グルーピングされた口座に法人管理番号を付して、複数の金融機関で共有化することにより、グルーピングの対象となる金融口座の数を複数の金融機関を通じて増やすことができる。さらに、グルーピングの対象となる金融口座の数を増やすことができれば、結果的には商流変化の予測の精度を向上させることもできる。
図12a―12cは、本発明の一実施例におけるMCIF共同化システム(図11)の処理のフローチャートを示す。特に、図12aは、商流サーバが商流を作成する処理の一例を示し、図12bは、商流サーバが商流を推測する処理の一例を示し、図12cは、法人管理番号を付与する処理の一例を示す。
図12aは、商流サーバ410が商流を作成する処理の一例を示す。
S4010では、例えばA銀行の顧客を対象法人(ここでは、対象法人Aする。)とした商流作成をA銀行が商流サーバ410に要求する信号を送信する。または、A銀行から要求がなくても、商流サーバ410が所定の間隔で定期的に法人ごとに商流を更新してもよい。
S4020では、商流サーバ410は、各金融機関に対して、対象法人Aに対応する法人管理番号の依頼人または受取人として含まれている金融取引データを、例えば図5cに示すような形式で送信するように要求する。
S4030では、商流サーバ410は、各金融機関から取得した金融取引データをグルーピングする。ここで、グルーピングするにあたっては、例えば、図4に示したような手法を用いてもよい。
S4040では、各金融機関用の商流DB(B銀行用の商流DB423など)およびS4030でグルーピングされた金融取引データを基に、商流を作成する。商流の作成においては、例えば、図6に示したような手法を用いてもよい。
S4050では、作成された商流の結果(データ)を要求元であるA銀行に送信する。
S4060では、S4050で作成された商流の結果をA銀行用の商流DB413へ更新する。
図12bは、商流サーバ410が商流を推測する処理の一例を示す。
S5010では、A銀行の顧客を対象法人(ここでは、対象法人Aとする。)とした商流の推測を、A銀行が商流サーバ410に要求する信号を送信する。
S5020では、商流サーバ410は、A銀行用の商流DB413から対象法人Aの週流のデータを取得する。
S5030では、商流サーバ410は、各金融機関用の商流DB(B銀行用の商流DB423など)および金融取引データを基に、商流を更新(最新の商流を再作成)する。商流の作成においては、例えば、図6に示したような手法を用いてもよい。また、金融取引データを利用するときには、図12aのS4020、S4030で説明した手法を用いてもよい。
S5040では、S5020で取得した商流データと、S5030で更新した商流データを基に、商流を推測する。商流の推測においては、図9に示したような手法を用いてもよい。
S5050では、商流の推測結果(データ)を要求元であるA銀行に送信する。
図12cは、法人管理サーバ420が法人管理番号を付与する処理の一例を示す。
S6010では、例えばA銀行が法人管理サーバ420に対して法人A1の法人管理番号を付与してもらいたい旨の信号を送信したとする。
S6020では、法人管理サーバ420は、法人管理番号DB235を検索して、法人A1に対応する法人管理番号の有無を確認する。
S6030では、法人管理サーバ420は、グルーピングDB234を検索して、法人A1がグルーピングDB234に記録されているか否かを確認する。もし、法人A1がグルーピングDB234に記録されていれば、法人管理番号DB235を検索して、法人A1に対応する法人管理番号を取得して、A銀行に対して法人管理番号を送信する(S6090参照)。一方、法人管理番号が取得できない場合は、法人管理サーバ420がS6040以降に示すように、グルーピングDB234と法人管理番号DB235を更新して、再度法人管理番号を検索してもよい。また、法人管理番号が取得できない場合は、S6080のように、法人管理番号が不明である信号を要求元であるA銀行に送信してもよい。
S6040では、法人管理サーバ420は、各金融機関に対して、金融取引データを取得する。
S6050では、法人管理サーバ420は、S6040で取得した金融取引データを基にグルーピングを行う。ここで、グルーピングするにあたっては、例えば、図4に示したような手法を用いてもよい。
S6060では、グルーピングDB234を更新する。また、新たな法人管理番号が追加された場合には、法人管理番号DB235を更新する。
S6070では、法人管理サーバ420は、再度グルーピングDB234を検索して、法人A1がグルーピングDB234に記録されているか否かを確認する。もし、法人A1がグルーピングDB234に記録されていれば、法人管理番号DB235を検索して、法人A1に対応する法人管理番号を取得して、A銀行に対して法人管理番号を送信する(S6090参照)。一方、法人管理番号が取得できない場合は、法人管理番号が不明である信号を要求元であるA銀行に送信する(S6080参照)。
図13aは、本発明の一実施例におけるMCIF共同化システムにおいて、複数の金融機関のコンピュータ・システムが連携した場合に作成された商流を示し、図13bは、当該商流をマッピングした地図を示す。
図7aに示した商流は、A銀行の各口座と(自行および他行の)金融口座との金融取引データに基づいて作成されている。すなわち、A銀行のコンピュータ・システムと金融取引が発生している(自行および他行の)法人口座の金融取引データにのみ基づいて商流が作成されている。一方、図13aで示した商流は、MCIF共同化システムを用いて各金融機関の金融取引データを相互に活用しているので、商流全体に含まれる取引の対象が増えていることがわかる。特に、A銀行の口座(本実施例では、口座A、口座B、口座C)と直接取引の無いE銀行の口座O、口座Pの金融取引も、対象法人Aの商流の一部を形成するようになる。更に、図7aにおいては、B銀行、C銀行、D銀行との間の相互の金融取引は対象法人Aの商流を形成していなかったが、図13aにおいては、B銀行、C銀行、D銀行も金融取引データを共同MCIFシステムに提供するので、B銀行、C銀行、D銀行との間の金融取引も対象法人Aの商流の一部を形成するようになる。商流を構成する金融取引の数(図7や図13で示す矢印の数)が増えれば、商流の変化の推測の精度が高まることになり、対象法人を一層適切に評価できるようになる。
本実施例によれば、共同MCIFシステムで各金融機関の顧客取引データ等から生成された情報を相互の金融機関で利用できるため、MCIF共同化システムに参加している金融機関であれば、対象となる法人を、より適切に評価することができる。
以上のように本発明の実施態様について説明したが、上述の説明に基づいて当業者にとって種々の代替例、修正又は変形が可能であり、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲で前述の種々の代替例、修正又は変形を包含するものである。例えば、ハードウェアによる構成をソフトウェア(プログラム)で実現できるように構成されてもよい。
本発明は、実施例で示した以外の様々な産業や技術分野で利用することが可能である。例えば、本発明はフィンテック(Financial Technology)の一態様であるので、様々な金融機関の営業支援システムに組み込むことが可能である。