JP2018048935A - 機械部品の製造方法、及び時計の製造方法 - Google Patents

機械部品の製造方法、及び時計の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】簡便な工程により、シリコンを含む基材からなる回転部材と軸部材とを強固に固定できる機械部品の製造方法、および、時計の製造方法を提供する。【解決手段】シリコンを含む基材をエッチングして貫通孔115を有する回転部材としてのがんぎ歯車部101を形成する工程と、がんぎ歯車部101の貫通孔115に軸部材102を挿入して位置決めする工程と、位置決めする工程の後で、がんぎ歯車部101の酸化処理を行う工程と、を含むことを特徴とする機械部品の製造方法。【選択図】図7B

Description

本発明は、機械部品の製造方法、及び、時計の製造方法に関する。
機械式時計等の時計には、歯車等に代表される数多くの機械部品が搭載されている。歯車等の機械部品は、外周に複数の歯部が形成された回転部材の中心に形成された貫通孔に、軸部材が挿入され固定されてなる。近時では、時計用の材料としてシリコンを有する基材が用いられるようなっている。シリコン製の機械部品は、金属製のものに比べて軽いことから、慣性力を小さくした部品の材料として好適であり、エネルギーの伝達効率の向上が見込まれる。また、シリコンは、形状の自由度が高く、加工精度を向上できるという利点もある。
例えば特許文献1に、シリコンを含む基材からなる回転部材の貫通孔に軸部材を挿通して固定するために、貫通孔の内壁面(内周面)に金属膜(応力緩和層)を形成する技術が開示されている。
特許第5892181号公報
しかしながら、特許文献1に記載の機械部品の製造方法では、回転部材の貫通孔の内壁面に金属膜を形成するための工程が必要であるため、工程が複雑になってしまい、製造コストが増大する虞があるという課題があった。
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
[適用例1] 本適用例にかかる機械部品の製造方法は、シリコンを含む基材をエッチングして貫通孔を有する回転部材を形成する工程と、前記回転部材の前記貫通孔に軸部材を挿入して位置決めする工程と、前記位置決めする工程の後で、酸化処理を行う工程と、を含むことを特徴とする。
シリコンを含む材料をフォトリソグラフィー及びエッチングを用いて加工することにより形成される機械部品は、金属製の機械部品に比べて軽いとともに、形状の自由度が高く、加工精度が高いという利点を有する。
本適用例によれば、シリコンを含む基材からなる回転部材の貫通孔に、軸部材を挿入して位置決めした後で、回転部材の表面にシリコン酸化膜を形成する酸化処理を行うので、貫通孔の内壁に形成されるシリコン酸化膜により貫通孔と軸部材との隙間が埋まることによって、回転部材に軸部材が強固に固定された機械部品を提供することができる。
また、酸化処理により形成されるシリコン酸化膜は、貫通孔内において、軸部材との隙間の大小に拘わらず略均一な厚みで形成されるので、貫通孔の中心と軸部材の軸の中心とを合致させた状態で回転部材に軸部材を固定することができる。
また、シリコンを含む基材からなる回転部材の表面に形成されるシリコン酸化膜により、回転部材に軸部材が固定されてなる機械部品の機械的強度を向上させることができる。
[適用例2] 上記適用例にかかる機械部品の製造方法において、前記酸化処理を行う工程は、熱酸化処理を行うことを特徴とする。
本適用例の熱酸化処理によれば、十分な厚さの緻密なシリコン酸化膜を比較的短時間に形成することができるので、回転部材に軸部材が強固に固定され、機械的強度が高い機械部品を効率よく製造することができる。
[適用例3] 上記適用例にかかる機械部品の製造方法において、前記熱酸化処理は、水蒸気酸化法によることを特徴とする。
本適用例によれば、水蒸気酸化法は、例えばドライ酸化法に比してシリコン酸化膜の成長速度が速いので、より効率よくシリコン酸化膜を形成して、回転部材に軸部材を固定することができる。
[適用例4] 上記適用例にかかる機械部品の製造方法において、前記軸部材は、タンタル(Ta)またはタングステン(W)からなることを特徴とする。
本適用例によれば、タンタルやタングステンは、軸部材として十分な剛性を有しているとともに、1000℃以上の高温で行う熱酸化処理などの酸化処理の温度に対する耐熱性を十分に有しており、そのうえ加工性が高い材料であるので、軸部材の材料として好適に用いることができる。
[適用例5] 上記適用例にかかる機械部品の製造方法において、前記軸部材は、シリコンを含む材料からなることを特徴とする。
本適用例によれば、酸化処理する工程により、回転部材の表面とともに、軸部材の表面にもシリコン酸化膜が形成されるので、より短時間で、より強く、回転部材の貫通孔に軸部材を強固に固定することができる。
[適用例6] 本適用例にかかる時計の製造方法は、香箱車、番車、がんぎ車、アンクル及びてんぷのいずれかに、上記適用例のいずれかに記載の機械部品の製造方法により製造された機械部品を用いてムーブメントを組み立てる組立工程を含むことを特徴とする。
本適用例によれば、上記適用例のいずれかに記載の機械部品の製造方法により製造された機械部品を用いてムーブメントを組み立てる工程を含むので、回転部材の貫通孔の中心と軸部材の軸の中心とを合致させた状態で、回転部材と軸部材とが強固に固定されているとともに、金属製の機械部品に比べて軽く、慣性力を小さく抑えた機械部品により、エネルギーの伝達効率の高く動作の精度が高いムーブメントを構成することができる。
したがって、信頼性及び耐久性に優れた精度の高い時計を製造することができる。
実施形態に係る時計のムーブメント表側の平面図。 ムーブメントの脱進機構の平面図。 脱進機構の斜視図。 図2のA−A線に沿う断面図。 回転部材としてのがんぎ歯車部の平面図。 機械部品としてのがんぎ車の製造方法を示すフローチャート。 がんぎ車作成工程を説明するための説明図であって、図4のD部に相当する部分断面図。 がんぎ車作成工程を説明するための説明図であって、図4のD部に相当する部分断面図。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、本実施形態では、本発明の機械部品の一例として、機械式時計のムーブメントにおける時計部品を構成する歯車の1つであるがんぎ車を例に挙げて説明する。また、以下の各図においては、各層や各部材を認識可能な程度の大きさにするため、各層や各部材について実際とは異なる尺度で示している場合がある。
[機械式時計]
はじめに、機械式時計1について説明する。図1は、本実施形態に係る時計としての機械式時計のムーブメント表側の平面図である。
図1に示すように、本実施形態の機械式時計1は、ムーブメント10と、このムーブメント10を収納する図示しないケーシングと、により構成されている。
ムーブメント10は、基板を構成する地板11を有している。この地板11の裏側には図示しない文字板が配されている。なお、ムーブメント10の表側に組み込まれる輪列を表輪列と称し、ムーブメント10の裏側に組み込まれる輪列を裏輪列と称する。
地板11には、巻真案内穴11aが形成されており、ここに巻真12が回転自在に組み込まれている。この巻真12は、おしどり13、かんぬき14、かんぬきばね15及び裏押さえ16を有する切換装置により、軸方向の位置が決められている。また、巻真12の案内軸部には、きち車17が回転自在に設けられている。
このような構成のもと、巻真12が、回転軸方向に沿ってムーブメント10の内側に一番近い方の第1の巻真位置(0段目)にある状態で巻真12を回転させると、図示しないつづみ車の回転を介してきち車17が回転する。そして、このきち車17が回転することにより、これと噛合う丸穴車20が回転する。そして、この丸穴車20が回転することにより、これと噛合う角穴車21が回転する。さらに、この角穴車21が回転することにより、香箱車22に収容された図示しないぜんまい(動力源)を巻き上げる。
ムーブメント10の表輪列は、上述した香箱車(機械部品)22の他に、所謂番車と呼ばれる二番車(機械部品)25、三番車(機械部品)26及び四番車(機械部品)27により構成されており、香箱車22の回転力を伝達する機能を果している。また、ムーブメント10の表側には、表輪列の回転を制御するための脱進機構30及び調速機構31が配置されている。
二番車25は、香箱車22に噛合う歯車とされている。三番車26は、二番車25に噛合う歯車とされている。四番車27は、三番車26に噛合う歯車とされている。
脱進機構30は、上述した表輪列の回転を制御する機構であって、四番車27と噛み合うがんぎ車(機械部品)35と、このがんぎ車35を脱進させて規則正しく回転させるアンクル(機械部品)36と、を備えている。
調速機構31は、上述した脱進機構30を調速する機構であって、てんぷ(機械部品)40を具備している。
<脱進機構>
次に、上述したムーブメント10の脱進機構30について、より詳細に説明する。図2は脱進機構30の平面図であり、図3は脱進機構30の斜視図、図4は図2のA−A線に沿う断面図である。
図2〜図4に示すように、脱進機構30のがんぎ車35は、回転部材としてのがんぎ歯車部101と、がんぎ歯車部101に同軸(軸線O1)上に固定された軸部材(回転軸)102と、を備えている。以下の説明では、がんぎ歯車部101及び軸部材102の軸線O1に沿う方向を単に軸方向、軸線O1に直交する方向を径方向といい、軸線O1回りに周回する方向を周方向という。
図5は、回転部材としてのがんぎ歯車部101の平面図である。
図2〜図5に示すように、がんぎ歯車部101は、単結晶シリコン等、結晶方位を有する材料からなり、一方の面としての表面101a、及び、一方の面と反対側の他方の面としての裏面101bが平坦面とされるとともに、全面に亘って均一な厚みとされた板状のものである。具体的に、がんぎ歯車部101は、周囲のリム部111と、中央のハブ部112と、これらリム部111及びハブ部112を連結する複数のスポーク部113と、を有している。
リム部111の外周面には、特殊な鉤型状に形成された複数の歯部114が径方向の外側に向けて突設されている。これら複数の歯部114の先端に、後述するアンクル36の爪石144a,144bが接触するようになっている。
図3〜図5に示すように、ハブ部112は、リム部111の内側に配置された円板形状のものであり、その中央部分には軸方向に貫通する貫通孔115が形成されている。この貫通孔115は、平面視で円形状とされ、軸方向に沿う表面101aから裏面101bに貫通されている。
各スポーク部113は、ハブ部112の外周縁からリム部111の内周縁に向かって放射状に延在しており、リム部111及びハブ部112を連結している。
軸部材102は、軸方向両端部に位置するほぞ部121a,121bと、上述した四番車27の歯車部に噛合されるがんぎかな部122と、を有している。
ほぞ部121a,121bのうち、軸方向一端側に位置する一端ほぞ部121aは、図示しない輪列受に回転可能に支持され、軸方向他端側に位置する他端ほぞ部121bは、上述した地板11に回転可能に支持されている。
がんぎかな部122は、軸部材102において、一端ほぞ部121a寄りに形成されている。そして、がんぎかな部122が四番車27(図1参照)に噛合されることで、四番車27の回転力が軸部材102に伝達されがんぎ車35が回転するようになっている。
圧入軸部123は、上述した各ほぞ部121a,121bよりも大径に形成されるとともに、がんぎ歯車部101の貫通孔115内に、裏面101b側から挿通されている。この場合、圧入軸部123は、その一部ががんぎ歯車部101から軸方向他端側に向けて突出した状態で、貫通孔115内に配置されている。
また、軸部材102のうち、がんぎかな部122と圧入軸部123との間には、径方向の外側に向けて突出するフランジ部124が形成されている。フランジ部124は、貫通孔115の裏面101b側の開口よりも大径とされ、その軸方向他端側に位置する端面がハブ部112の裏面101bに当接している。
このように構成されたがんぎ車35は、複数の歯部114がアンクル36に噛合するようになっている(図2参照)。アンクル36は、3つのアンクルビーム143によってT字状に形成されたアンクル体142dと、アンクル真142fと、を備えたもので、軸であるアンクル真142fによってアンクル体142dが回動可能に構成されている。なお、アンクル真142fは、その両端が上述した地板11及び図示しないアンクル受に対してそれぞれ回動可能に支持されている。
3つのアンクルビーム143のうち2つのアンクルビーム143の先端には、爪石144a,144bが設けられ、残り1つのアンクルビーム143の先端には、アンクルハコ145が取り付けられている。爪石144a,144bは、四角柱状に形成されたルビーであり、接着剤等によりアンクルビーム143に接着固定されている。
このように構成されたアンクル36は、アンクル真142fを中心に回動した際に、爪石144a或いは爪石144bが、がんぎ車35の歯部114の先端に接触するようになっている。また、この際、アンクルハコ145が取り付けられたアンクルビーム143が、図示しないドテピンに接触するようになっており、これによってアンクル36は、同方向にそれ以上回動しないようになっている。その結果、がんぎ車35の回転も一時的に停止するようになっている。
[がんぎ車の製造方法]
次に、上述した機械部品としてのがんぎ車35の製造方法について説明する。
図6は、機械部品としてのがんぎ車35の製造方法を示すフローチャートであり、図7A,図7Bは、がんぎ車35の作成工程を説明するための説明図であって、図4のD部に相当する部分断面図である。
図6において、本実施形態のがんぎ車35の製造方法は、回転部材としての歯車部(がんぎ歯車部)101を形成する工程と、軸部材102を準備する工程と、これらの工程を経て準備した歯車部101と軸部材102とを組み立てる工程とを含む。
歯車部101の形成工程では、まず、シリコンを含む基材(ウェハー)200を準備する(ステップS1)。
次いで、例えばスピンコート法やスプレーコート法等により、基材200の表面200aに、フォトレジストを塗布し(ステップS2)、基材200の裏面200bに裏面マスク材を配置する(ステップS3)。フォトレジストは、ネガ型、及びポジ型の何れの材料も採用することができる。また、裏面マスク材は、後述する基材200をエッチングする工程で基材200をエッチングするときに、基材200の裏面200bをエッチングから保護できるマスク性能を有して、且つ、エッチングする工程の後で、確実に除去できる性質の樹脂材料を選択して適用する。
基材200に塗布したフォトレジスト及び裏面マスク材の各々は所定の温度によるキュアを行うが、フォトレジストのキュア条件と裏面マスク材のキュア条件との差が大きい場合等には、フォトレジストと裏面マスク材とで別々にキュアを行い、フォトレジストのキュア条件と裏面コート材のキュア条件とが同じか近似であれば、キュア工程を同時に行うことにより工程の効率化を図ることができる。
なお、フォトレジストの塗布工程と裏面マスク材の塗布工程とは、各樹脂材料のキュア条件を考慮した工程順の設定などの便宜上、順番を逆にして行う構成としてもよい。
次に、フォトレジストに対してフォトリソグラフィー技術により、露光をした後(ステップS4)、現像を行うことにより(ステップS5)、がんぎ歯車部101の平面視外形に対応するマスク(エッチングマスク)となるフォトレジストパターンを形成する。
次に、上述のフォトレジストパターンをマスクとして基材200にエッチングを施すことで、貫通孔115、および、がんぎ歯車部101の外形を形成する(ステップS6)。具体的には、ディープ・リアクティブ・イオンエッチング(DRIE=Deep Reactive Ion Etching)を行い、基材200を厚さ方向に貫通するようにエッチングすることで、がんぎ歯車部101の外形形状を得ることができる。ここで、フォトレジストパターンの開口により形成される貫通孔115等の貫通部分の内面(内壁)は、基材200の裏面200bに形成された裏面マスク材で保護されているために、裏面200bからエッチングされることなく、貫通部の内面形状が変化することはない。
次いで、フォトレジストによるフォトレジストパターン、及び、裏面マスク材を除去する除去工程を行うことにより(ステップS7)、上述したがんぎ歯車部101が得られ、がんぎ歯車部101の形成工程は終了する。なお、樹脂除去は、フォトレジストパターン(フォトレジスト)及び裏面マスク材を溶解・剥離可能な発煙硝酸や有機溶剤等でのウェットエッチング、あるいは、酸素プラズマアッシング等により行うことができる。
がんぎ歯車部101の形成工程とは別に、軸部材102を準備する工程により、切削加工や研削加工などの機械加工をすることなどにより別途形成された軸部材102を準備する(ステップS11)。軸部材102は、軸体として十分な剛性を有しているとともに、後述する酸化処理を行う工程において、1000℃以上の高温で行う熱酸化処理などの酸化処理の温度に対する十分な耐熱性を有する材料であるタンタル(Ta)またはタングステン(W)からなることが好ましい。タンタルやタングステンは、上述した剛性や耐熱性に優れた材料であることに加えて、切削加工や研削加工などの加工性も高い材料であるため、軸部材102の材料として特に好適である。
次に、上述した形成工程により形成された回転部材としてのがんぎ歯車部101の貫通孔115に、上述した準備工程で準備した軸部材102を挿入して位置決めする工程を行う(ステップS21)。
図7Aは、がんぎ車35の作成工程において、がんぎ歯車部101の貫通孔115に軸部材102を挿入して位置決めした状態を示している。図7Aに示すように、がんぎ歯車部101の貫通孔115の開口部の直径は、軸部材102の貫通孔115内に配置される圧入軸部123の直径に対して大きめに形成されている。具体的には、貫通孔115の直径は、軸部材102を貫通孔115に挿入したときに、貫通孔115の内壁面200cが欠けてしまわない程度であって、且つ、がんぎ歯車部101と軸部材102との位置決め状態が保持できる程度にて、軸部材102の圧入軸部123の直径よりも大きめに形成されている。例えば、軸部材102の圧入軸部123の直径が320μmである場合に、貫通孔115の開口部の直径を322μm程度に形成する。
また、図7Aに示すように、軸部材102をがんぎ歯車部101の貫通孔115に挿入して位置決めした状態では、貫通孔115の内壁面200cと軸部材102(圧入軸部123)との隙間が軸部材102の周方向各所で均一でなくてもよく、また、軸部材102の軸線O1とがんぎ歯車部101の中心(貫通孔115の中心)とが所定の範囲内でずれていてもよい。
上述したがんぎ歯車部101の貫通孔115に軸部材102を挿入して位置決めした後で、次に、回転部材としてのがんぎ歯車部101の表面に二酸化ケイ素(SiO2)からなるシリコン酸化膜を形成する酸化処理を行う(図6のステップS22)。酸化処理は、例えば1000℃以上の高温で行う熱酸化処理を行うことが好ましい。熱酸化処理によれば、所定の厚さの緻密なシリコン酸化膜を比較的短時間に形成することができる。本実施形態では、水蒸気酸化法による熱酸化処理を行う。水蒸気酸化法は、熱酸化処理におけるドライ酸化法に比べてシリコン酸化膜の成長が速いので、より効率よく所望の厚みのシリコン酸化膜を形成することができる。
図7Bは、がんぎ車35の作成工程において、酸化処理後の状態を示している。図7Bに示すように、シリコンを含む基材200からなるがんぎ歯車部101の貫通孔115に、軸部材102を挿入して位置決めした後で、がんぎ歯車部101の表面に二酸化ケイ素からなるシリコン酸化膜250を形成されるので、貫通孔115の内壁面200cに形成されるシリコン酸化膜250により貫通孔115と軸部材102の圧入軸部123との隙間が埋まることによって、貫通孔115に圧入軸部123が嵌合する。これにより、がんぎ歯車部101に軸部材102が強固に固定された機械部品としてがんぎ車35を提供することができる。
また、酸化処理により形成されるシリコン酸化膜250は、貫通孔115内において、軸部材102(圧入軸部123)の各部との隙間の大小に拘わらず、貫通孔115の内壁面200cと、基材200の表面200aおよび裏面200bに略均一な厚みで形成される。これにより、図7Aに示すように、軸部材102をがんぎ歯車部101の貫通孔115に挿入して位置決めした状態において、貫通孔115の内壁面200cと軸部材102(圧入軸部123)との隙間が軸部材102の周方向各所で均一でなかったり、軸部材102の軸線O1とがんぎ歯車部101の中心(貫通孔115の中心)とがずれていたりする場合でも、図7Bに示すように、基材200の表面(表面200aおよび裏面200b)および貫通孔115の内壁面200cに均一な厚みで形成されるシリコン酸化膜250により、貫通孔115の中心と軸部材の軸の中心とを合致させた状態で回転部材としてのがんぎ歯車部101に軸部材102を固定することができる。
また、切削加工や研削加工などの機械加工により形成された軸部材102は、表面に微小なキズなどの凹凸を有しているので、これらの凹凸にがんぎ歯車部101のシリコン酸化膜250が入り込むことにより、所謂アンカー効果が働いて、がんぎ歯車部101の貫通孔115に軸部材102がより強固に固定される効果が得られる。
以上に述べた、本実施形態のがんぎ車35(機械部品)の製造方法によれば、以下の効果を得ることができる。
本実施形態によれば、シリコンを含む基材200からなる回転部材としてのがんぎ歯車部101の貫通孔115に、軸部材102を挿入して位置決めした後で、がんぎ歯車部101の表面にシリコン酸化膜250を形成する酸化処理を行うので、貫通孔115の内壁面200cに形成されるシリコン酸化膜250により貫通孔115と軸部材102との隙間が埋まることによって、がんぎ歯車部101に軸部材102が強固に固定された機械部品としてのがんぎ車35を提供することができる。
また、酸化処理により形成されるシリコン酸化膜250は、貫通孔115内において、軸部材102の圧入軸部123との隙間の大小に拘わらず略均一な厚みで形成されるので、貫通孔115の中心と軸部材102の軸の中心(軸線O1)とを合致させた状態でがんぎ歯車部101に軸部材102を固定することができる。
また、上記実施形態では、シリコンを含む材料からなる基材200を、標準的なフォトリソグラフィー技術及びエッチングを用いて加工することにより、比較的簡便な工程で、精密な機械部品であるがんぎ車35を低コストにて製造することができる。
また、シリコンを含む基材200を本実施形態の製造方法により加工して形成されるがんぎ歯車部101などの精密な機械部品の少なくとも一部分は、金属製の機械部品に比べて軽いとともに、形状の自由度が高く、高精度な外形形状の形成ができるという利点を有する。
さらに、比較的脆く欠けなどが起こりやすいシリコンを含む基材200からなるがんぎ歯車部101は、酸化処理を行う工程で形成されるシリコン酸化膜250により、機械的な強度が顕著に向上するという効果が得られる。
また、上記実施形態の機械部品の製造方法は、標準的なフォトリソグラフィーや酸化処理などの、比較的簡易な工程により構成されるので、高い歩留りにて、低コストで機械部品としてのがんぎ車35が得られる製造方法を提供することができる。
なお、本発明は上述した実施形態に限定されず、上述した実施形態に種々の変更や改良などを加えることが可能である。以下に、上記実施形態のがんぎ車35(機械部品)の製造方法の変形例について述べる。
(変形例)
上記実施形態では、軸部材102の材料として、タンタルまたはタングステンが好ましいことを説明したが、これに限らない。軸部材102の材料として、シリコンを含む材料を用いる構成としてもよい。
このような構成によれば、がんぎ歯車部101の貫通孔115に軸部材102を挿入して位置決めした後で、酸化処理する工程により、回転部材であるがんぎ歯車部101の貫通孔115の内壁面200cを含む表面(表面200aおよび裏面200b)とともに、軸部材102の表面にもシリコン酸化膜が形成されるので、より短時間で、より強く、回転部材としてのがんぎ歯車部101の貫通孔115に軸部材102を強固に固定することができる。
[機械式時計の製造方法]
次に、本発明の機械式時計の製造方法について説明する。
本発明の機械式時計の製造方法は、図1〜図5のいずれかに示す香箱車22、番車(二番車25、三番車26、四番車27)、がんぎ車35、アンクル36及びてんぷ40のいずれかに、上記実施形態および変形例のがんぎ歯車部101を代表例として説明した機械部品のいずれかの製造方法により製造された機械部品を用いて、ムーブメント10を組み立てる組立工程を含むことを特徴とするものである。
このような機械式時計の製造方法によれば、上記実施形態および変形例に記載の機械部品の製造方法により製造された機械部品を用いてムーブメント10を組み立てる工程を含むので、金属製の機械部品に比べて軽く、慣性力を小さく抑えた機械部品により、エネルギーの伝達効率の高いムーブメント10を構成することができる。
また、上記実施形態のがんぎ車35におけるがんぎ歯車部101の貫通孔115と軸部材102のような、機械部品における回転部材の貫通孔の中心と、軸部材の軸の中心とが合致した機械部品を用いているので、時計用ムーブメントの精度の向上に寄与できる。
したがって、信頼性及び耐久性に優れた精度の高い機械式時計を提供することができる。
以上、発明者によってなされた本発明の実施の形態について具体的に説明したが、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記実施形態および変形例では、機械部品としてのがんぎ車35の軸部材102の材料は、タンタル(Ta)やタングステン(W)、あるいはシリコンからなることが好ましいことを述べたが、これらに限らず、後工程の酸化処理を行う工程における水蒸気酸化法などの熱酸化処理の温度に対する耐熱性を有していれば、他の材料を用いてもよい。
1…機械式時計、10…ムーブメント、11…地板、11a…巻真案内穴、12…巻真、17…きち車、20…丸穴車、21…角穴車、22…香箱車、25…二番車、26…三番車、27…四番車、30…脱進機構、31…調速機構、35…機械部品としてのがんぎ車、36…アンクル、40…てんぷ、101…回転部材としてのがんぎ歯車部(歯車部)、102…軸部材、111…リム部、112…ハブ部、113…スポーク部、114…歯部、115…貫通孔、121a…一端ほぞ部、121b…他端ほぞ部、122…がんぎかな部、123…圧入軸部、124…フランジ部、142d…アンクル体、142f…アンクル真、143…アンクルビーム、144a,144b…爪石、145…アンクルハコ、200…基材、200a…表面、200b…裏面、200c…内壁面、250…シリコン酸化膜。

Claims (6)

  1. シリコンを含む基材をエッチングして貫通孔を有する回転部材を形成する工程と、
    前記回転部材の前記貫通孔に軸部材を挿入して位置決めする工程と、
    前記位置決めする工程の後で、酸化処理を行う工程と、
    を含むことを特徴とする機械部品の製造方法。
  2. 請求項1に記載の機械部品の製造方法において、
    前記酸化処理を行う工程は、熱酸化処理を行うことを特徴とする機械部品の製造方法。
  3. 請求項2に記載の機械部品の製造方法において、
    前記熱酸化処理は、水蒸気酸化法によることを特徴とする機械部品の製造方法。
  4. 請求項2または3に記載の機械部品の製造方法において、
    前記軸部材は、タンタル(Ta)またはタングステン(W)からなることを特徴とする機械部品の製造方法。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項に記載の機械部品の製造方法において、
    前記軸部材は、シリコンを含む材料からなることを特徴とする機械部品の製造方法。
  6. 香箱車、番車、がんぎ車、アンクル及びてんぷのいずれかに、請求項1〜5のいずれか一項に記載の機械部品の製造方法により製造された機械部品を用いてムーブメントを組み立てる組立工程を含むことを特徴とする時計の製造方法。
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