本発明は、舌をはじめとした口腔関連の筋肉や顔面の筋肉を鍛えるためのトレーニング用器具に関するものである。
加齢や脳卒中等が原因となって口腔機能が低下すると、咀嚼力や嚥下のための力が衰えるため、食物や飲み物等を嚥下した際に誤って食物等が気管に入る現象(以下、この現象を「誤嚥」という。)が発生しやすくなる。この誤嚥によって誤嚥性肺炎が引き起こされるおそれもある。誤嚥性肺炎は高齢者の死因の上位を占めており、患者や高齢者の誤嚥を防ぐことは喫緊の課題である。
そこで、嚥下機能が低下した者に対して口腔関連の筋肉を鍛えるトレーニングを行い、口腔機能の改善を図ろうという試みが行われている。具体的には、口唇や舌の筋力、及びそれらの動作の巧緻性を向上させるためのトレーニングを行うのが一般的である。
このトレーニングにおいては、ガーゼやボタンなどの汎用的なものをトレーニングの意図に合わせて加工して使用することが多いが、近年、トレーニングの効果をより一層高めるために開発されたトレーニング用器具が使用されることもある(例えば、特許文献1、2参照)。
特許文献1のトレーニング用器具は、スプーン状の刺激部と、使用者が把持する把持部とを有しており、刺激部を口腔内に挿入した状態で舌で刺激部を上に押し上げるようにする等してトレーニングを行うようにしている。
特許文献2のトレーニング用器具は、舌押し上げ部と、使用者が把持する棒状部とを有しており、舌押し上げ部を舌で押し上げる運動をすることによってトレーニングを行うようにしている。
特開2007−319303号公報
特開2011−83524号公報
しかしながら、特許文献1のトレーニング用器具を用いたトレーニングでは、上述のように舌で刺激部を上に押し上げるようにするのであるが、その押し上げる範囲がどの程度であればトレーニングとして有効であるか使用者が分かりにくいという問題がある。さらに、使用者が舌で刺激部を押し上げるだけでは、実際にトレーニングができているのか実感を得にくい。
また、特許文献2のトレーニング用器具でも、舌押し上げ部を舌で押し上げる動作を行う際、その押し上げ量がどの程度であればトレーニングとして有効であるか分かりにくく、従って、実際にトレーニングができているのか実感を得にくい。
つまり、従来の各トレーニング用器具では、トレーニングが効果的に行われているか把握しにくく、しかも、トレーニングの実感がないことによるモチベーションの低下を招くことが考えられる。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、口腔機能のトレーニングを効果的に行えるようにするとともに、トレーニング中にトレーニングしているという実感が得られるようにしてモチベーションの向上を図り、もって、口腔機能を改善できるようにすることにある。
上記目的を達成するために、本発明では、舌によって力を加えたとき、その力がトレーニングに必要な所定以上の力に達したときに、トレーニングをしている者に対して振動による刺激を与えるようにした。
第1の発明は、口腔内に挿入されて使用される口腔機能のトレーニング用器具において、
口腔内へ挿入される基部と、
上記基部から膨出するように形成された弾性体からなる中空状の膨出部とを備え、
上記膨出部の外面と内面との少なくとも一方における膨出方向の中間部には、段部が設けられていることを特徴とするものである。
この構成によれば、基部を使用者の口腔内に挿入することで膨出部を例えば口腔内の舌と硬口蓋との間の所定箇所に位置付けることが可能となる。この状態で舌を押し上げるようにすると、膨出部が舌と硬口蓋とによって挟まれて上下方向に押しつぶされるように力が作用する。この舌による力が所定以上になると、膨出部の上下方向の中間部の段部が弾性変形開始のきっかけとなり、膨出部における段部よりも先端側が基端側に接近するように急に弾性変形する。この急な弾性変形を起こす瞬間に膨出部が振動し、この振動が舌や硬口蓋に伝わり、これにより、使用者が振動を感じる。膨出部が上記のように弾性変形した状態で舌による力を除くと膨出部が持つ弾性によって膨出部の形状が復元する。以上を繰り返すことによって口腔関連の筋肉や顔面の筋肉を鍛えることができる。
すなわち、トレーニングを行う際、使用者は振動が発生するまで舌に力を入れていけばよいので、トレーニング中にどの程度の力を入れればトレーニング効果を得ることができるかが明確に分かり、トレーニングを効果的に行うことが可能になる。また、振動の発生がトレーニングしているという実感として感じられる。
第2の発明は、第1の発明において、
上記膨出部の周壁部は、膨出方向に対する傾斜角度が第1の傾斜角度となるように傾斜する第1周壁部と、第1の傾斜角度よりもきつい傾斜角度となるように傾斜する第2の傾斜角度である第2周壁部とを有しており、
上記第1周壁部と上記第2周壁部とが上記膨出部の膨出方向に連続し、該第1周壁部と該第2周壁部とで段部が構成されていることを特徴とするものである。
すなわち、本トレーニング用器具の使用時、例えば舌による力の作用する方向は膨出部の膨出方向と略等しい。この使用時において、膨出方向に対する傾斜角度が比較的緩い第1周壁部が第2周壁部よりも変形しやすくなる。第1周壁部が変形しやすい部分となることで、段部をきっかけとして第1周壁部が確実に変形し、これによって発生する振動が明確なものとなる。一方、舌の力を抜くと第1周壁部が弾性力によって元の形状に戻ろうとするので、膨出部が確実に元の形状に復元する。
第3の発明は、第2の発明において、上記第1周壁部の膨出方向の長さは、第2周壁部の膨出方向の長さよりも長く設定されていることを特徴とするものである。
この構成によれば、第1周壁部が第2周壁部よりも変形しやすくなるので、発生する振動が明確なものとなる。
第4の発明は、第1から3のいずれか1つの発明において、上記膨出部の外面と内面との両方に段部が設けられていることを特徴とするものである。
この構成によれば、舌による力が所定以上になると、膨出部の内側の段部と外側の段部との両方が変形開始のきっかけとなるので、膨出部の急な弾性変形がより起こりやすくなり、その際の振動が明確なものとなる。これにより、トレーニングしているという実感がはっきりと感じられる。
第5の発明は、第1から4のいずれか1つの発明において、上記膨出部の外面の外側段部と、上記膨出部の内面の内側段部とを有しており、
上記外側段部の谷と上記内側段部の谷とが上記膨出部の膨出方向に互いにずれて配置され、上記外側段部の谷と上記内側段部の谷との間の肉厚が上記膨出部における他の部位の肉厚よりも薄く設定されていることを特徴とするものである。
この構成によれば、外側段部の谷と、内側段部の谷との間の肉厚を薄くしたので、膨出部の一部に低剛性な部分ができることになる。これにより、膨出部の全体を同じ肉厚とした場合に比べて、膨出部の急な弾性変形が起こりやすくなる。そして、膨出部を弾性変形させる際には振動が確実に起こる。
第6の発明は、第2の発明において、上記第1周壁部及び上記第2周壁部は、上記膨出部に対し潰れ方向の力が作用した際に互いに折り重なるように構成され、
上記第1周壁部の外面と上記第2周壁部の外面の少なくとも一方には、該第1周壁部と第2周壁部とが折り重なった際に他方に当接する突起が形成されていることを特徴とするものである。
この構成によれば、膨出部に対し潰れ方向の力が作用した際に、第1周壁部と第2周壁部とが折り重なるように弾性変形することになり、この状態で、一方の外面の突起が他方の外面に当接して変形し過ぎを抑制することが可能になる。そして、この突起の当接が両周壁部を元に戻す方向に力を作用させることになり、膨出部が確実に元の形状に復元する。
第7の発明によれば、第4の発明において、上記膨出部の外面の外側段部と、上記膨出部の内面の内側段部とを有しており、上記外側段部の谷と上記内側段部の谷とが上記膨出部の膨出方向に互いにずれて配置され、上記外側段部の谷と上記内側段部の谷との膨出方向に直交する方向の離間寸法をXとし、上記外側段部の谷と上記内側段部の谷との膨出方向の離間寸法をYとしたとき、XはY以下であることを特徴とするものである。
すなわち、外側段部の谷と内側段部の谷との離間寸法の関係を上記のように設定することで、XがYよりも大きい場合に比べて膨出部が急な弾性変形を起こしやすくなる。
第8の発明によれば、第7の発明において、XがYの1/3以下であることを特徴とする。
この構成によれば、力の作用した膨出部がより一層急に弾性変形しやすくなる。
第9の発明によれば、第1から8のいずれか1つに記載の口腔機能のトレーニング用器具において、上記膨出部が段部をきっかけとして弾性変形する前に発生する最大荷重をW1とし、弾性変形直後に発生する最小荷重をW2としたとき、W2はW1の1/2以下であることを特徴とするものである。
すなわち、最小荷重W2が最大荷重W1の1/2よりも大きいと、膨出部が急な弾性変形を起こしたときの振動が小さくなり、様々な使用者が使用したときに振動が感じにくい場合があるが、W2をW1の1/2以下とすることで、様々な使用者が感じることができる程度に振動を明確にすることが可能になる。
第1の発明によれば、弾性体からなる中空状の膨出部の外面と内面の少なくとも一方に段部を設けたので、舌による力を加えていったときに段部をきっかけにして膨出部を急に弾性変形させることができる。これにより、口腔機能のトレーニングを効果的に行うことができるとともに、トレーニング中にトレーニングしているという実感を得てモチベーションの向上を図ることができ、その結果、口腔機能を効果的に改善することができる。
また、口腔周辺の筋肉を鍛えることも可能であるため、顔を引き締めるという美容的な効果を得ることもできる。
第2の発明によれば、膨出部の第1周壁部と、第1周壁部よりもきつい傾斜角度の第2周壁部とで段部を構成したので、傾斜角度が比較的緩い第1周壁部を変形させることによって振動を明確にすることができるとともに、膨出部の復元性を高めることもできる。
第3の発明によれば、第1周壁部の長さを第2周壁部よりも長く設定したので、第1周壁部が第2周壁部よりも変形しやすくなる。これにより、発生する振動が明確なものとなり、トレーニングしているという実感を明確に感じることができる。
第4の発明によれば、膨出部の外面と内面との両方に段部を設けたので、急な弾性変形がおこりやすくなる。そのため、トレーニングしているという実感を明確に感じることができる。
第5の発明によれば、膨出部の外側段部と内側段部との間の肉厚を薄くしたので、膨出部を弾性変形させやすくして振動を明確にすることができる。また、舌による力を除いた際に膨出部を確実に復元させることができる。
第6の発明によれば、第1周壁部の外面と第2周壁部の外面の少なくとも一方に、第1周壁部と第2周壁部とが折り重なった際に他方に当接する突起を形成したので、膨出部を確実に元の形状に復元させることができる。
第7の発明によれば、膨出部の外面と内面との両方に段部を設け、外側段部の谷と内側段部の谷との膨出方向に直交する方向の離間寸法をXとし、外側段部の谷と内側段部の谷との膨出方向の離間寸法をYとしたとき、XをY以下としたので、使用時に膨出部が急な弾性変形を起こしやすくなり、トレーニングしているという実感をより一層明確に感じることができるようになる。
第8の発明によれば、XがYの1/3以下であるので、使用時に膨出部がより一層急な弾性変形を起こすようになり、トレーニングしているという実感をより一層明確に感じることができるようになる。
第9の発明によれば、膨出部を弾性変形させる際の最小荷重W2を最大荷重W1の1/2以下としたので、使用時に膨出部の振動を大きくすることができ、トレーニングしているという実感をより一層明確に感じることができるようになる。
実施形態1にかかる口腔機能のトレーニング用器具の側面図である。
実施形態1にかかる口腔機能のトレーニング用器具の使用状態を説明する図である。
実施形態1にかかる口腔機能のトレーニング用器具の平面図である。
実施形態1にかかる口腔機能のトレーニング用器具の底面図である。
実施形態1にかかる膨出部近傍を拡大して示す側面図である。
実施形態1にかかる膨出部近傍の拡大断面図である。
実施形態1にかかる膨出部を押しつぶした状態の図5相当図である。
実施形態2にかかる図5相当図である。
実施形態2にかかる図6相当図である。
実施形態2にかかる膨出部を弾性変形させる場合の時間と荷重との関係を示すグラフである。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
尚、本明細書において「上下方向」とは、図2に示すように本発明の口腔機能のトレーニング用器具1を口腔内に挿入した際にトレーニングを行う者(使用者)の舌と硬口蓋とによって後述する膨出部20を押しつぶす方向であり、また、「左右方向」とは、トレーニング用器具1を口腔内に挿入した際にトレーニングを行う者の左右方向に対応している。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1にかかる口腔機能のトレーニング用器具1を示したものである。トレーニング用器具1は、口腔関連の筋肉や顔面の筋肉を鍛えるトレーニングを行うためのものであり、具体的には、口唇や舌の筋力、及びそれらの動作の巧緻性を向上させることを主目的とするトレーニングを行う際に適したものである。
トレーニング用器具1を用いたトレーニングの対象者としては、例えば、脳卒中等の病気によって嚥下機能が低下した者や、加齢によって嚥下機能が低下した者等が挙げられるが、これらの者に限られず、例えば嚥下機能が低下した者、低下するおそれのある者などであれば広く対象者とすることができる。
図3及び図4に示すように、トレーニング用器具1は、口腔機能のトレーニングの際に使用者に固定するための基部10と、基部10に設けられた弾性変形部としての膨出部20とを備えている。基部10と膨出部20とは、弾性を有する材料を用いて一体成形されている。材料としては、例えばシリコーンゴム、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、熱可塑性エラストマー、天然ゴム等が挙げられるが、これらに限られるものではなく、舌による力(荷重)を加えたときに変形させることができる硬度範囲にある各種弾性材料を用いることができる。好ましい硬度範囲としては、ショアA(デュロメータ使用)で30以上60以下である。また、安価、かつ、成形性が良好で、しかも、人体への安全性が高いエラストマーを用いているのが好ましい。
基部10は、板状に形成されている。基部10の幅(左右方向の寸法)は、例えば20mm〜30mmに設定され、長さは80mm〜90mmに設定されているが、これら寸法は一例であり、使用者の性別や体格等に合わせて変更することが可能である。
図2に示すように、トレーニング用器具1の使用状態において、基部10の長手方向一側は口腔内に挿入され、他側は口腔外へ出るようになっている。図3及び図4に示すように、基部10の長手方向一側(図3及び図4の右側)の縁部は円弧状に形成されている。これは膨出部20の外縁に沿う形状である。また、基部10の他側(図3及び図4の左側)の縁部も円弧状に形成されている。
図1に示すように、基部10の上面11には、複数の上側凸条部11aが形成されている。図3に示すように、各上側凸条部11aは、基部10の幅方向に延びており、平面視で円弧をなすように緩やかに湾曲している。この上側凸条部11aの円弧形状は、例えば成人の前歯A,B(図2に示す)の並びに対応した形状となっている。上側凸条部11aは、基部10の長手方向に間隔をあけて配置されている。基部10の長手方向に隣り合う上側凸条部11aの間には、上側溝11bが形成されることになる。この上側溝11bは、詳細は後述するが、使用者の上側の前歯Aを嵌めるためのものである。
図1に示すように、基部10の下面12にも、複数の下側凸条部12aが形成されている。下側凸条部12aの数は、上側凸条部11aよりも多くなっており、基部10の上面における上側凸条部11aの形成範囲よりも基部10の下面における下側凸条部12aの形成範囲の方が広くなっている。
下側凸条部12aは、上記上側凸条部11aと略同じ曲率であり、下側凸条部12aの方が上側凸条部11aに比べて長くなっている。下側凸条部12aの形成により、基部10の下面12にも、複数の下側溝12bが形成されることになる。詳細は後述するが、下側溝12bは、使用者の下側の前歯Bを嵌めるためのものである。
上側凸条部11aと下側凸条部12aとは、基部10の長手方向に互いにずれるように配置されている。つまり、上側凸条部11aの真下に下側凸条部12aが位置しないようになっている。従って、上側溝11bと下側溝12bも基部10の長手方向に互いにずれることになる。上側溝11bと下側溝12bとのずれ量は、一般的な成人の上側の前歯A下端と、下側の前歯B上端との前後方向のずれ量を考慮して設定されており、例えば、1mm〜2mmに設定することができる。上側溝11bと下側溝12bとのずれ量は、上側の前歯A下端と、下側の前歯B上端との前後方向のずれ量に対応する量である。
図1や図5に示すように、上記膨出部20は基部10の長手方向一側に設けられている。膨出部20は、基部10の下面12から下方へ膨出しており、図6に示すように内部は中空状とされていて中空部Rが設けられている。
基部10の長手方向一側には、膨出部20に対応する部位に上下方向(基部10の厚み方向)に貫通する貫通孔13が形成されている。貫通孔13は円形であり、膨出部20の中空部Rに連通している。この貫通孔13の形成により、中空部Rが開放されることになる。図6に示すように、基部10の上面11には、貫通孔13の周囲に凹部11cが形成されている。
図3及び図4に示すように、基部10の膨出部20と反対側の端部には、円形の貫通孔14が形成されている。貫通孔14は、トレーニング用器具1を保管する際にフック等を通して引っ掛けておくことや、使用者が指を通してトレーニング用器具1を持つことができるようにするためのものである。
図5や図6に示すように、膨出部20は、膨出方向に延びる中心線Sと直交する方向の断面形状が略円形のドーム形状をなしており、全体として膨出方向先端に近づくほど中心線Sに直交する断面形状が小さくなっている。膨出部20は周壁部21と、端壁部22とを有している。さらに、図5に示すように、周壁部21は、大きく分けて、基部側領域S1と、中間領域S2と、先端側領域S3とを備えている。
基部側領域S1は、基部10の下面12から下方へ延びる基部側第1傾斜壁部24と、基部側第1傾斜壁部24の下端に連続する基部側第2傾斜壁部25と、基部側第2傾斜壁部25の下端に連続する基部側第3傾斜壁部26とを有している。基部側第1〜第3傾斜壁部24〜26は、下に行くほど中心線Sに近づくように傾斜している。基部側第1傾斜壁部24は、周壁部21における基部側第1傾斜壁部24よりも下側部分に比べて肉厚になっている。
基部側第2傾斜壁部25の中心線Sに対する傾斜角度α1は、基部側第3傾斜壁部26の中心線Sに対する傾斜角度α2よりも大きく設定されており、基部側第2傾斜壁部25の方が基部側第3傾斜壁部26よりも緩やかな傾斜となっている。
基部側第2傾斜壁部25と基部側第3傾斜壁部26とによって膨出部20の外面の上下方向中間部に第1外側段部41が構成されている。また、図6に示すように膨出部20の内面には、第1外側段部41に対応して第1内側段部51が構成されている。
第1外側段部41の谷と第1内側段部51の谷との間の肉厚は、基部側第2傾斜壁部25や基部側第3傾斜壁部26の肉厚よりも薄くなっている。谷とは、段部となる窪みの最も深い部位である。
図5に示すように、中間領域S2は、基部側第3傾斜壁部26の下端に連続する中間第1傾斜壁部(本発明の第1周壁部に相当)30と、中間第1傾斜壁部30の下端に連続する中間第2傾斜壁部(本発明の第2周壁部に相当)31とを有している。
中間第1傾斜壁部30及び中間第2傾斜壁部31は、下に行くほど中心線Sに近づくように傾斜している。中間第1傾斜壁部30の中心線Sに対する傾斜角度α3(本発明の第1の傾斜角度に相当)は、基部側第3傾斜壁部26の中心線Sに対する傾斜角度α2よりも大きく設定されており、中間第1傾斜壁部30の方が基部側第3傾斜壁部26よりも緩やかな傾斜となっている。また、中間第1傾斜壁部30の上下方向の寸法は、基部側第3傾斜壁部26の上下方向の寸法よりも長く設定されている。
中間第2傾斜壁部31の中心線Sに対する傾斜角度α4(本発明の第2の傾斜角度に相当)は、中間第1傾斜壁部30の中心線Sに対する傾斜角度α3よりも小さく設定されており、中間第2傾斜壁部31の方が中間第1傾斜壁部30よりもきつい傾斜となっている。また、中間第1傾斜壁部30の上下方向の寸法は、中間第2傾斜壁部31の上下方向の寸法よりも長く設定されている。
中間第1傾斜壁部30と中間第2傾斜壁部31とによって膨出部20の外面の上下方向中間部に第2外側段部42が構成されている。また、図6に示すように膨出部20の内面には、第2外側段部42に対応して第2内側段部52が構成されている。
第2外側段部42の谷が第2内側段部52の谷よりも下方に位置しており、これら第2外側段部42の谷及び第2内側段部52の谷は、上下方向に互いにずれて配置されている。第2外側段部42の谷と第2内側段部52の谷との間の肉厚は、中間第1傾斜壁部30や中間第2傾斜壁部31の肉厚よりも薄くなっている。
図5に示すように、先端側領域S3は、中間第2傾斜壁部31の下端に連続する先端側第1傾斜壁部32と、先端側第1傾斜壁部32の下端に連続する先端側第2傾斜壁部33とを有している。
先端側第1傾斜壁部32、先端側第2傾斜壁部33は、下に行くほど中心線Sに近づくように傾斜している。先端側第1傾斜壁部32の上下方向の寸法は、先端側第2傾斜壁部33の上下方向の寸法よりも長く設定されている。
先端側第1傾斜壁部32の中心線Sに対する傾斜角度α5は、中間第2傾斜壁部31の中心線Sに対する傾斜角度α4よりも大きく設定されており、先端側第1傾斜壁部32の方が緩やかな傾斜となっている。先端側第1傾斜壁部32と先端側第2傾斜壁部33とによって膨出部20の外面の上下方向中間部に第3外側段部43が構成されている。また、図6に示すように膨出部20の内面には、第3外側段部43に対応して第3内側段部53が構成されている。
第3外側段部43の谷が第3内側段部53の谷よりも下方に位置しており、これら第3外側段部43の谷及び第3内側段部53の谷は、上下方向に互いにずれて配置されている。第3外側段部43の谷と第3内側段部53の谷との間の肉厚は、先端側第1傾斜壁部32や先端側第2傾斜壁部33の肉厚よりも薄くなっている。
中間第1傾斜壁部30の中心線Sに対する傾斜角度α3は、他の傾斜角度α1、α2、α4〜α6よりも大きくなっており、従って、周壁部21のうち、中間第1傾斜壁部30が最も緩やかになる。このため、膨出部20が中心線S方向に押されたとき、中間第1傾斜壁部30が最も変形しやすくなり、中間第1傾斜壁部30よりも下側及び上側は中間第1傾斜壁部30に比べて変形しにくくなる。
膨出部20が中心線S方向に押されたときには、中間第1傾斜壁部30が第1外側段部41及び第1内側段部51近傍を起点にして膨出部20内側へ向けて(使用状態において上に向けて)折れ曲がるように弾性変形する(図7参照)。このとき、中間第2傾斜壁部31は、中間第1傾斜壁部30の上方への折れ曲がりによって弾性変形しながら上に向けて変位することになり、中間第1傾斜壁部30と中間第2傾斜壁部31とが、両傾斜壁部30,31の外面が接触するように折り重なる。
上記のように周壁部21の各部分は中心線Sに対し傾斜しているのが好ましい。また、図4に示すように、周壁部21を先端側から見たとき、各傾斜壁部24〜33の境界線が円として見えるが、この境界線の間隔は各傾斜壁部24〜33の傾斜角度や上下方向の寸法によって変わる。これら境界線の間隔は一定としない方が好ましい。
また、上記端壁部22は、先端側第2傾斜壁部33の下端に連なっており、下方へ向かって突出するように滑らかに湾曲している。
図4に示すように、中間第1傾斜壁部30の外面には、2つの突起30a,30aが膨出部20の周方向に互いに間隔をあけて形成されている。突起30aは、図7に示すように膨出部20が中心線S方向に押されて中間第1傾斜壁部30と中間第2傾斜壁部31とが折り重なった際に、中間第2傾斜壁部31の外面に当接するようになっている。
次に、上記のように構成された口腔機能のトレーニング用器具1を使用する場合について説明する。まず、図2に示すように、基部10の膨出部20側を使用者の口腔に挿入していき、膨出部20が舌の上に達したところで、それ以上の挿入を止める。この状態で基部10の長手方向他端部は口腔外へ突出する。このとき、基部10に上側溝11bと下側溝12bを形成して屈曲変形しやすくしているので、口腔の形状に対応するように基部10を弾性変形させることが可能になる。
尚、図2において仮想線は膨出部20の変形前の形状を示し、実線は変形後の形状を示している。
そして、使用者が基部10を前歯A,Bで噛む。すると、上側の前歯Aが上側溝11bに嵌り、下側の前歯Bが下側溝12bに嵌る。このとき、上側溝11b及び下側溝12bが、それぞれ、上側の前歯A及び下側の前歯Bの並びに対応するように湾曲しているので、使用者が基部10を自然に噛むだけで前歯A,Bが両溝11b,12bに確実に嵌るようになる。さらに、一般に、使用者の上側の前歯A下端と、下側の前歯Bの上端とは前後方向にずれているが、この実施形態では、上側溝11b及び下側溝12bを使用者の前後方向にずらしているので、このことによっても使用者が基部10を自然に噛むだけで前歯A,Bが両溝11b,12bに確実に嵌るようになる。これらのことにより、基部10が安定して使用者に固定されることになる。
また、膨出部20の口腔内における挿入方向の位置調整をする場合には、基部10を出し入れすればよく、この場合、基部10には複数の上側溝11b及び下側溝12bが設けられているので、位置調整後においても基部10を噛むだけで前歯A,Bが両溝11b,12bに確実に嵌る。よって、例えば性別や体格等が異なる複数の使用者で同一のトレーニング用器具1を使用したとしても、各使用者に適した位置に膨出部20を配置することができる。
その後、使用者がトレーニングを開始する。すなわち、使用者は、まず、舌に力を入れて舌を押し上げるようにする。そうすると膨出部20が舌と硬口蓋とによって挟まれ、膨出部20に対して上下方向に押しつぶすように力が作用する。膨出部20には、第1外側段部41及び第1内側段部51と、第2外側段部42及び第2内側段部52とが形成されているので、舌による力が所定以上になると、これら段部41,42,51,52が弾性変形開始のきっかけとなり、膨出部20における先端側領域S3が基部側領域S1に接近するように、中間第1傾斜壁部30が第1外側段部41及び第1内側段部51近傍を起点にして上方へ急に弾性変形する(図7に示す)とともに、中間第2傾斜壁部31が上に向けて急に変位し、中間第1傾斜壁部30と中間第2傾斜壁部31とが折り重なるようになる。このように急な弾性変形を起こす瞬間に膨出部20が振動し、この振動が舌や硬口蓋に伝わり、これにより、使用者が振動を感じる。また、膨出部20が弾性変形を起こす際には使用者が聞き取ることのできる音も発生する。
本実施形態では、膨出部20の硬度を30以上60以下としているので、弾性変形を起こす瞬間の膨出部20の振動がはっきりするとともに、舌の力が比較的弱い高齢者であっても膨出部20を舌で押しつぶすことができる。すなわち、膨出部20の硬度が30未満であると、舌で押しつぶしたときに膨出部20が全体的に弾性変形していき、部分的に急な弾性変形を起こさなくなり、使用者が感じ取れる振動が発生しなくなる。一方、膨出部20の硬度が60よりも高いと、膨出部20が硬すぎて舌で押しつぶすのが困難になるとともに、口腔内の粘膜にあたった際に強い違和感を感じるようになる。従って、膨出部20の硬さは上記範囲が好ましい。より好ましい硬度範囲は、35以上55以下である。
また、この実施形態では、第1外側段部41及び第1内側段部51、第2外側段部42及び第2内側段部52以外にも、第3外側段部43及び第3内側段部53を設けている。従って、舌による押し上げ力を高めていくと、第3外側段部43及び第3内側段部53を弾性変形のきっかけとして、先端側領域S3の先端側第1傾斜壁部32や先端側第2傾斜壁部33が段部43,53近傍を起点にして急に弾性変形する。これらのことによっても膨出部20が振動する。
膨出部20が弾性変形を開始するのに要する力の大きさは、第1〜第3外側段部41〜43及び第1〜第3内側段部51〜53の深さや、中間第1傾斜壁部30の肉厚等によって任意に設定できる。変形開始に要する力が小さすぎると筋肉のトレーニングにならず、また、変形開始に要する力が大きすぎると膨出部20を押しつぶすことができないので、この実施形態では、使用者が口腔機能のトレーニングとなるように何度も繰り返して変形させることができるように設定している。
膨出部20が上記のように弾性変形した状態で舌による力を除くと膨出部20が持つ弾性によって膨出部20の形状が復元する。このとき、本実施形態では、貫通孔13の周囲に凹部11cを形成していて口腔内の粘膜が貫通孔13を完全に塞がないようにしている。これにより、外部の空気が貫通孔13を介して膨出部20の中空部Rに入りやすくなり、膨出部20が復元する際に粘膜に吸い付くようになることはない。よって、粘膜を傷つけないようにすることができる。
また、中間第1傾斜壁部30と中間第2傾斜壁部31とが折り重なった際に突起30a,30aが中間第2傾斜壁部31の外面に当接して中間第1傾斜壁部30と中間第2傾斜壁部31との変形し過ぎを抑制することが可能になる。そして、この突起30a,30aの当接が両壁部30,31を元に戻す方向に力を作用させることになり、膨出部20が確実に元の形状に復元する。
この実施形態では、中間第1傾斜壁部30に突起30a,30aを設けているが、これに限らず、例えば、中間第2傾斜壁部31に突起(図示せず)を設けてもよい。
以上を繰り返すことによって口腔関連の筋肉や顔面の筋肉を鍛えることができる。
このように、トレーニングを行う際、使用者は振動が発生するまで舌に力を入れていけばよいので、トレーニング中にどの程度の力を入れればトレーニング効果を得ることができるかが明確に分かり、トレーニングを効果的に行うことが可能になる。また、振動の発生がトレーニングしているという実感として感じられる。
また、トレーニング中には舌を動かすことから唾液の分泌が促進される。口腔内の唾液は、基部10の上面11に形成された上側溝11b内に入ることになり、この上側溝11b内に溜まるようになる。よって、唾液が口腔外へ漏れにくくなる。
以上説明したように、この実施形態1にかかる口腔機能のトレーニング用器具1によれば、弾性体からなる中空状の膨出部20に段部41,42,51,52を設けたので、舌による力を加えていったときに段部41,42,51,52をきっかけにして膨出部20を急に弾性変形させることができる。これにより、口腔機能のトレーニングを効果的に行うことができるとともに、トレーニング中にトレーニングしているという実感を得てモチベーションの向上を図ることができ、その結果、口腔機能を効果的に改善することができる。
また、口腔周辺の筋肉を鍛えることも可能であるため、顔を引き締めるという美容的な効果を得ることもできる。
また、上記実施形態では、膨出部20の外面と内面とにそれぞれ第1〜第3外側段部41〜43と第1〜第3内側段部51〜53とを設けているが、これに限らず、第1〜第3外側段部41〜43と第1〜第3内側段部51〜53の一方を省略してもよい。
第1〜第3外側段部41〜43を省略する場合には、膨出部20の外面が滑らかな面になるが、第1〜第3内側段部51〜53が弾性変形開始のきっかけとなるので、膨出部20が急な弾性変形を起こす。また、第1〜第3内側段部51〜53を省略する場合には、膨出部20の内面が滑らかな面になるが、第1〜第3外側段部41〜43が弾性変形開始のきっかけとなるので、膨出部20が急な弾性変形を起こす。
(実施形態2)
図8及び図9は、本発明の実施形態2にかかる口腔機能のトレーニング用器具1を示したものである。実施形態2の口腔機能のトレーニング用器具1は、実施形態1のものに対し膨出部20の形状が異なっているだけであり、他の部分は実施形態1と同じであるため、以下、実施形態1と異なる部分について詳細に説明する。
すなわち、実施形態2の膨出部20には、第3外側段部43及び第3内側段部53が設けられていない。また、図9に示すように、実施形態2の膨出部20の端壁部22の肉厚は実施形態1に比べて厚く設定されている。また、実施形態2の膨出部20の中間第2傾斜壁部31の肉厚は実施形態1に比べて薄く設定されている。
端壁部22の肉厚を厚くしたことにより、端壁部22の剛性が高まる。また、基部10の貫通孔13周りの肉厚は、中間第2傾斜壁部31の肉厚よりも厚くなっており、基部10における貫通孔13周りの剛性も高くなっている。したがって、膨出部20における端壁部22と基部10との間の部分、即ち周壁部21は、該周壁部21よりも剛性の高い部分によって挟まれるように位置することになる。このため、膨出部20に対し上下方向の力が作用すると、基部10や端壁部22の変形量を抑制して周壁部21に対して確実に力を作用させて急な弾性変形を起こさせることができる。弾性変形を起こした周壁部21は、基部10の貫通孔13内に収容されるように変形するので、周壁部21の変形量を十分に確保できる。
また、第2外側段部42の谷(最も深い部分)と第2内側段部52の谷(最も深い部分)とは膨出部20の中心線S方向に離れているとともに、中心線Sと直交する方向にも離れている。
第2外側段部42の谷と第2内側段部52の谷との膨出方向(中心線S方向)に直交する方向の離間寸法をXとし、第2外側段部42の谷と第2内側段部52の谷との膨出方向の離間寸法をYとしたとき、XがY以下となるように各寸法が設定されている。具体的には、この実施形態ではXが0.5mmでYが1.5mmとされており、XがYの1/3となっている。尚、XとYの寸法は所定の条件を満たせばよく、上記以外の寸法であってもよい。XをYの1/3よりも小さくすることもできる。
また、膨出部20は段部41,42,51,52をきっかけとして弾性変形するが、膨出部20を中心線S方向に押圧した際、膨出部20の弾性変形直前に発生する荷重が最大荷重となり、一方、弾性変形直後に発生する荷重が最小荷重となる。最大荷重及び最大荷重は、上記X及びYの寸法、段部41,42,51,52の深さ、周壁部21の肉厚等によって設定することが可能である。この実施形態では、最大荷重をW1とし、最小荷重をW2としたとき、W2はW1の1/2以下となるようにしている。
口腔機能のトレーニング用器具1の膨出部20を万能試験機(テンシロン万能試験機)を用いて押しつぶし、経過時間と荷重の変化との関係を得ると図10に示すグラフのようになる。図10における横軸は時間であり、縦軸は荷重である。テンシロン万能試験機のヘッドスピードは20mm/minとした。
口腔機能のトレーニング用器具1は、端壁部22が上となり、かつ、膨出部20の中心線Sが鉛直に延びる姿勢とし、試験中に容易に変形しない硬い板の上に置いた。ヘッドを端壁部22と対向するように配置した後、上方から下方へ等速移動させて膨出部20を押しつぶした。
図10中、鎖線はX<Y(X:Y=1:3)の場合を示し、破線はX=Yの場合を示し、実線はX>Y(X:Y=3:1)の場合を示している。また、図10中、符号Cで示す範囲において最大荷重W1が発生し、符号Dで示す範囲において最小荷重W2が発生する。3つの場合とも、最大荷重W1は略同じ大きさで略同じ時期に発生しているが、最小荷重W2の大きさ、及びその発生時期については互いに異なっている。
X<Yの場合は、最小荷重W2は最大荷重W1の1/2以下となっているとともに、最大荷重W1が発生して最小荷重W2となるまでのグラフの傾きが急になっている。つまり、大きな荷重変化が急に起こったということであり、これによって膨出部20には明確に感じとることができる振動が発生する。
X=Yの場合も、最小荷重W2は最大荷重W1の1/2以下となっており、大きな荷重変化が急に起こっている。よって膨出部20には明確に感じとることができる振動が発生する。
一方、X>Yの場合は、最小荷重W2が最大荷重W1の6割程度となっている。また、最大荷重W1が発生して最小荷重W2となるまでのグラフの傾きが他の場合に比べて緩やかになっている。このことから、荷重変化が小さく、しかも、ゆっくりと起こっていることが分かる。このため、膨出部20に発生する振動も小さく、明確に感じとることができない場合がある。
尚、材料の硬度が30以上60以下の範囲であれば同様な結果となる。
以上説明したように、この実施形態2にかかる口腔機能のトレーニング用器具1によれば、実施形態1と同様な作用効果を奏することができる。
また、第2外側段部42の谷と第2内側段部52の谷との膨出方向に直交する方向の離間寸法Xが、第2外側段部42の谷と第2内側段部52の谷との膨出方向の離間寸法Y以下となるようにしたので、使用時に膨出部20が急な弾性変形を起こしやすくなり、トレーニングしているという実感をより一層明確に感じることができるようになる。
XをYの1/3以下とすることで、使用時に膨出部22がより一層急な弾性変形を起こすようになるので、XはYの1/3以下にするのが好ましい。
また、膨出部20を弾性変形させる際の最小荷重W2を最大荷重W1の1/2以下としたので、このことによっても使用時に膨出部20の振動を大きくすることができ、トレーニングしているという実感をより一層明確に感じることができるようになる。
また、上記実施形態1、2において膨出部20の外面の段部は少なくとも1つあればよく、また、内面の段部も同様に少なくとも1つあればよい。
また、上記実施形態1、2では、膨出部20が下方へ膨出するものである場合について説明したが、これに限らず、上方へ膨出させてもよい。また、上方へ膨出する膨出部と、下方へ膨出する膨出部との2つの膨出部を設けてもよい。
また、複数の膨出部を設ける場合には、基部10の長手方向に並べて設けてもよいし、幅方向に並べて設けてもよい。
また、上記実施形態1、2では、基部10と膨出部20とを一体成形しているが、これに限らず、別々に成形した後、一体化するようにしてもよい。この場合、基部10と膨出部20とを異なる材料で成形できる。
また、基部10の形状は上記した形状に限られるものではなく、上側凸条部11a、下側凸条部12aは省略してもよい。また、基部10は棒状であってもよい。
また、膨出部20の先端面は湾曲させなくてもよく、例えば、中心線Sと交差する方向に延びる平坦面であってもよい。
また、膨出部20を舌先で押すようにしてトレーニングを行うことも可能である。
また、上下の歯を噛み合わせた状態で膨出部20を奥歯の側面と頬の内面との間に配置して膨出部20の先端面を頬側に向けておき、頬の筋肉によって膨出部20を奥歯に押し付けるようにして膨出部20を弾性変形させるようにしてもよい。
また、膨出部20を上唇と下唇とで挟んで唇によって上下に押しつぶすようにしてもよい。
また、上記実施形態1、2では、膨出部20の中心線Sと直交する方向の断面形状が円形である場合について説明したが、これに限らず、断面形状が多角形状であってもよい。
以上説明したように、本発明にかかる口腔機能のトレーニング用器具は、例えば、舌をはじめとした口腔関連の筋肉や顔面の筋肉を鍛えるのに使用することができる。
1 口腔機能のトレーニング用器具
10 基部
20 膨出部
30 中間傾斜壁部(第1周壁部)
31 先端側第1傾斜壁部(第2周壁部)
41 第1外側段部
42 第2外側段部
43 第3外側段部
51 第1内側段部
52 第2内側段部
53 第3内側段部
R 中空部
S 中心線
本発明は、舌をはじめとした口腔関連の筋肉や顔面の筋肉を鍛えるためのトレーニング用器具に関するものである。
加齢や脳卒中等が原因となって口腔機能が低下すると、咀嚼力や嚥下のための力が衰えるため、食物や飲み物等を嚥下した際に誤って食物等が気管に入る現象(以下、この現象を「誤嚥」という。)が発生しやすくなる。この誤嚥によって誤嚥性肺炎が引き起こされるおそれもある。誤嚥性肺炎は高齢者の死因の上位を占めており、患者や高齢者の誤嚥を防ぐことは喫緊の課題である。
そこで、嚥下機能が低下した者に対して口腔関連の筋肉を鍛えるトレーニングを行い、口腔機能の改善を図ろうという試みが行われている。具体的には、口唇や舌の筋力、及びそれらの動作の巧緻性を向上させるためのトレーニングを行うのが一般的である。
このトレーニングにおいては、ガーゼやボタンなどの汎用的なものをトレーニングの意図に合わせて加工して使用することが多いが、近年、トレーニングの効果をより一層高めるために開発されたトレーニング用器具が使用されることもある(例えば、特許文献1、2参照)。
特許文献1のトレーニング用器具は、スプーン状の刺激部と、使用者が把持する把持部とを有しており、刺激部を口腔内に挿入した状態で舌で刺激部を上に押し上げるようにする等してトレーニングを行うようにしている。
特許文献2のトレーニング用器具は、舌押し上げ部と、使用者が把持する棒状部とを有しており、舌押し上げ部を舌で押し上げる運動をすることによってトレーニングを行うようにしている。
特開2007−319303号公報
特開2011−83524号公報
しかしながら、特許文献1のトレーニング用器具を用いたトレーニングでは、上述のように舌で刺激部を上に押し上げるようにするのであるが、その押し上げる範囲がどの程度であればトレーニングとして有効であるか使用者が分かりにくいという問題がある。さらに、使用者が舌で刺激部を押し上げるだけでは、実際にトレーニングができているのか実感を得にくい。
また、特許文献2のトレーニング用器具でも、舌押し上げ部を舌で押し上げる動作を行う際、その押し上げ量がどの程度であればトレーニングとして有効であるか分かりにくく、従って、実際にトレーニングができているのか実感を得にくい。
つまり、従来の各トレーニング用器具では、トレーニングが効果的に行われているか把握しにくく、しかも、トレーニングの実感がないことによるモチベーションの低下を招くことが考えられる。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、口腔機能のトレーニングを効果的に行えるようにするとともに、トレーニング中にトレーニングしているという実感が得られるようにしてモチベーションの向上を図り、もって、口腔機能を改善できるようにすることにある。
上記目的を達成するために、本発明では、舌によって力を加えたとき、その力がトレーニングに必要な所定以上の力に達したときに、トレーニングをしている者に対して振動による刺激を与えるようにした。
第1の発明は、口腔内に挿入されて使用される口腔機能のトレーニング用器具において、
口腔内へ挿入される基部と、
上記基部から膨出するように形成された弾性体からなる中空状の膨出部とを備え、
上記膨出部の膨出方向は、上記口腔機能のトレーニング時に力が作用する方向とされ、
上記膨出部の周壁部には、第1周壁部と第2周壁部とが該膨出部の膨出方向に連続するように設けられ、該第1周壁部と該第2周壁部とで段部が構成されていることを特徴とするものである。
この構成によれば、基部を使用者の口腔内に挿入することで膨出部を例えば口腔内の舌と硬口蓋との間の所定箇所に位置付けることが可能となる。この状態で舌を押し上げるようにすると、膨出部が舌と硬口蓋とによって挟まれて上下方向に押しつぶされるように力が作用する。この舌による力が所定以上になると、膨出部の上下方向の中間部の段部が弾性変形開始のきっかけとなり、膨出部における段部よりも先端側が基端側に接近するように急に弾性変形する。この急な弾性変形を起こす瞬間に膨出部が振動し、この振動が舌や硬口蓋に伝わり、これにより、使用者が振動を感じる。膨出部が上記のように弾性変形した状態で舌による力を除くと膨出部が持つ弾性によって膨出部の形状が復元する。以上を繰り返すことによって口腔関連の筋肉や顔面の筋肉を鍛えることができる。
すなわち、トレーニングを行う際、使用者は振動が発生するまで舌に力を入れていけばよいので、トレーニング中にどの程度の力を入れればトレーニング効果を得ることができるかが明確に分かり、トレーニングを効果的に行うことが可能になる。また、振動の発生がトレーニングしているという実感として感じられる。
また、上記膨出部の周壁部は、膨出方向に対する傾斜角度が第1の傾斜角度となるように傾斜する第1周壁部と、第1の傾斜角度よりもきつい傾斜角度となるように傾斜する第2の傾斜角度である第2周壁部とを有しており、
上記第1周壁部と上記第2周壁部とが上記膨出部の膨出方向に連続し、該第1周壁部と該第2周壁部とで段部が構成されていることを特徴とするものである。
すなわち、本トレーニング用器具の使用時、例えば舌による力の作用する方向は膨出部の膨出方向と略等しい。この使用時において、膨出方向に対する傾斜角度が比較的緩い第1周壁部が第2周壁部よりも変形しやすくなる。第1周壁部が変形しやすい部分となることで、段部をきっかけとして第1周壁部が確実に変形し、これによって発生する振動が明確なものとなる。一方、舌の力を抜くと第1周壁部が弾性力によって元の形状に戻ろうとするので、膨出部が確実に元の形状に復元する。
また、上記膨出部の外面と内面との両方に段部が設けられていることを特徴とするものである。
この構成によれば、舌による力が所定以上になると、膨出部の内側の段部と外側の段部との両方が変形開始のきっかけとなるので、膨出部の急な弾性変形がより起こりやすくなり、その際の振動が明確なものとなる。これにより、トレーニングしているという実感がはっきりと感じられる。
第1の発明によれば、弾性体からなる中空状の膨出部の外面と内面の少なくとも一方に段部を設けたので、舌による力を加えていったときに段部をきっかけにして膨出部を急に弾性変形させることができる。これにより、口腔機能のトレーニングを効果的に行うことができるとともに、トレーニング中にトレーニングしているという実感を得てモチベーションの向上を図ることができ、その結果、口腔機能を効果的に改善することができる。
また、口腔周辺の筋肉を鍛えることも可能であるため、顔を引き締めるという美容的な効果を得ることもできる。
また、膨出部の第1周壁部と、第1周壁部よりもきつい傾斜角度の第2周壁部とで段部を構成したので、傾斜角度が比較的緩い第1周壁部を変形させることによって振動を明確にすることができるとともに、膨出部の復元性を高めることもできる。
また、膨出部の外面と内面との両方に段部を設けたので、急な弾性変形がおこりやすくなる。そのため、トレーニングしているという実感を明確に感じることができる。
実施形態1にかかる口腔機能のトレーニング用器具の側面図である。
実施形態1にかかる口腔機能のトレーニング用器具の使用状態を説明する図である。
実施形態1にかかる口腔機能のトレーニング用器具の平面図である。
実施形態1にかかる口腔機能のトレーニング用器具の底面図である。
実施形態1にかかる膨出部近傍を拡大して示す側面図である。
実施形態1にかかる膨出部近傍の拡大断面図である。
実施形態1にかかる膨出部を押しつぶした状態の図5相当図である。
実施形態2にかかる図5相当図である。
実施形態2にかかる図6相当図である。
実施形態2にかかる膨出部を弾性変形させる場合の時間と荷重との関係を示すグラフである。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
尚、本明細書において「上下方向」とは、図2に示すように本発明の口腔機能のトレーニング用器具1を口腔内に挿入した際にトレーニングを行う者(使用者)の舌と硬口蓋とによって後述する膨出部20を押しつぶす方向であり、また、「左右方向」とは、トレーニング用器具1を口腔内に挿入した際にトレーニングを行う者の左右方向に対応している。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1にかかる口腔機能のトレーニング用器具1を示したものである。トレーニング用器具1は、口腔関連の筋肉や顔面の筋肉を鍛えるトレーニングを行うためのものであり、具体的には、口唇や舌の筋力、及びそれらの動作の巧緻性を向上させることを主目的とするトレーニングを行う際に適したものである。
トレーニング用器具1を用いたトレーニングの対象者としては、例えば、脳卒中等の病気によって嚥下機能が低下した者や、加齢によって嚥下機能が低下した者等が挙げられるが、これらの者に限られず、例えば嚥下機能が低下した者、低下するおそれのある者などであれば広く対象者とすることができる。
図3及び図4に示すように、トレーニング用器具1は、口腔機能のトレーニングの際に使用者に固定するための基部10と、基部10に設けられた弾性変形部としての膨出部20とを備えている。基部10と膨出部20とは、弾性を有する材料を用いて一体成形されている。材料としては、例えばシリコーンゴム、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、熱可塑性エラストマー、天然ゴム等が挙げられるが、これらに限られるものではなく、舌による力(荷重)を加えたときに変形させることができる硬度範囲にある各種弾性材料を用いることができる。好ましい硬度範囲としては、ショアA(デュロメータ使用)で30以上60以下である。また、安価、かつ、成形性が良好で、しかも、人体への安全性が高いエラストマーを用いているのが好ましい。
基部10は、板状に形成されている。基部10の幅(左右方向の寸法)は、例えば20mm〜30mmに設定され、長さは80mm〜90mmに設定されているが、これら寸法は一例であり、使用者の性別や体格等に合わせて変更することが可能である。
図2に示すように、トレーニング用器具1の使用状態において、基部10の長手方向一側は口腔内に挿入され、他側は口腔外へ出るようになっている。図3及び図4に示すように、基部10の長手方向一側(図3及び図4の右側)の縁部は円弧状に形成されている。これは膨出部20の外縁に沿う形状である。また、基部10の他側(図3及び図4の左側)の縁部も円弧状に形成されている。
図1に示すように、基部10の上面11には、複数の上側凸条部11aが形成されている。図3に示すように、各上側凸条部11aは、基部10の幅方向に延びており、平面視で円弧をなすように緩やかに湾曲している。この上側凸条部11aの円弧形状は、例えば成人の前歯A,B(図2に示す)の並びに対応した形状となっている。上側凸条部11aは、基部10の長手方向に間隔をあけて配置されている。基部10の長手方向に隣り合う上側凸条部11aの間には、上側溝11bが形成されることになる。この上側溝11bは、詳細は後述するが、使用者の上側の前歯Aを嵌めるためのものである。
図1に示すように、基部10の下面12にも、複数の下側凸条部12aが形成されている。下側凸条部12aの数は、上側凸条部11aよりも多くなっており、基部10の上面における上側凸条部11aの形成範囲よりも基部10の下面における下側凸条部12aの形成範囲の方が広くなっている。
下側凸条部12aは、上記上側凸条部11aと略同じ曲率であり、下側凸条部12aの方が上側凸条部11aに比べて長くなっている。下側凸条部12aの形成により、基部10の下面12にも、複数の下側溝12bが形成されることになる。詳細は後述するが、下側溝12bは、使用者の下側の前歯Bを嵌めるためのものである。
上側凸条部11aと下側凸条部12aとは、基部10の長手方向に互いにずれるように配置されている。つまり、上側凸条部11aの真下に下側凸条部12aが位置しないようになっている。従って、上側溝11bと下側溝12bも基部10の長手方向に互いにずれることになる。上側溝11bと下側溝12bとのずれ量は、一般的な成人の上側の前歯A下端と、下側の前歯B上端との前後方向のずれ量を考慮して設定されており、例えば、1mm〜2mmに設定することができる。上側溝11bと下側溝12bとのずれ量は、上側の前歯A下端と、下側の前歯B上端との前後方向のずれ量に対応する量である。
図1や図5に示すように、上記膨出部20は基部10の長手方向一側に設けられている。膨出部20は、基部10の下面12から下方へ膨出しており、図6に示すように内部は中空状とされていて中空部Rが設けられている。
基部10の長手方向一側には、膨出部20に対応する部位に上下方向(基部10の厚み方向)に貫通する貫通孔13が形成されている。貫通孔13は円形であり、膨出部20の中空部Rに連通している。この貫通孔13の形成により、中空部Rが開放されることになる。図6に示すように、基部10の上面11には、貫通孔13の周囲に凹部11cが形成されている。
図3及び図4に示すように、基部10の膨出部20と反対側の端部には、円形の貫通孔14が形成されている。貫通孔14は、トレーニング用器具1を保管する際にフック等を通して引っ掛けておくことや、使用者が指を通してトレーニング用器具1を持つことができるようにするためのものである。
図5や図6に示すように、膨出部20は、膨出方向に延びる中心線Sと直交する方向の断面形状が略円形のドーム形状をなしており、全体として膨出方向先端に近づくほど中心線Sに直交する断面形状が小さくなっている。膨出部20は周壁部21と、端壁部22とを有している。さらに、図5に示すように、周壁部21は、大きく分けて、基部側領域S1と、中間領域S2と、先端側領域S3とを備えている。
基部側領域S1は、基部10の下面12から下方へ延びる基部側第1傾斜壁部24と、基部側第1傾斜壁部24の下端に連続する基部側第2傾斜壁部25と、基部側第2傾斜壁部25の下端に連続する基部側第3傾斜壁部26とを有している。基部側第1〜第3傾斜壁部24〜26は、下に行くほど中心線Sに近づくように傾斜している。基部側第1傾斜壁部24は、周壁部21における基部側第1傾斜壁部24よりも下側部分に比べて肉厚になっている。
基部側第2傾斜壁部25の中心線Sに対する傾斜角度α1は、基部側第3傾斜壁部26の中心線Sに対する傾斜角度α2よりも大きく設定されており、基部側第2傾斜壁部25の方が基部側第3傾斜壁部26よりも緩やかな傾斜となっている。
基部側第2傾斜壁部25と基部側第3傾斜壁部26とによって膨出部20の外面の上下方向中間部に第1外側段部41が構成されている。また、図6に示すように膨出部20の内面には、第1外側段部41に対応して第1内側段部51が構成されている。
第1外側段部41の谷と第1内側段部51の谷との間の肉厚は、基部側第2傾斜壁部25や基部側第3傾斜壁部26の肉厚よりも薄くなっている。谷とは、段部となる窪みの最も深い部位である。
図5に示すように、中間領域S2は、基部側第3傾斜壁部26の下端に連続する中間第1傾斜壁部(本発明の第1周壁部に相当)30と、中間第1傾斜壁部30の下端に連続する中間第2傾斜壁部(本発明の第2周壁部に相当)31とを有している。
中間第1傾斜壁部30及び中間第2傾斜壁部31は、下に行くほど中心線Sに近づくように傾斜している。中間第1傾斜壁部30の中心線Sに対する傾斜角度α3(本発明の第1の傾斜角度に相当)は、基部側第3傾斜壁部26の中心線Sに対する傾斜角度α2よりも大きく設定されており、中間第1傾斜壁部30の方が基部側第3傾斜壁部26よりも緩やかな傾斜となっている。また、中間第1傾斜壁部30の上下方向の寸法は、基部側第3傾斜壁部26の上下方向の寸法よりも長く設定されている。
中間第2傾斜壁部31の中心線Sに対する傾斜角度α4(本発明の第2の傾斜角度に相当)は、中間第1傾斜壁部30の中心線Sに対する傾斜角度α3よりも小さく設定されており、中間第2傾斜壁部31の方が中間第1傾斜壁部30よりもきつい傾斜となっている。また、中間第1傾斜壁部30の上下方向の寸法は、中間第2傾斜壁部31の上下方向の寸法よりも長く設定されている。
中間第1傾斜壁部30と中間第2傾斜壁部31とによって膨出部20の外面の上下方向中間部に第2外側段部42が構成されている。また、図6に示すように膨出部20の内面には、第2外側段部42に対応して第2内側段部52が構成されている。
第2外側段部42の谷が第2内側段部52の谷よりも下方に位置しており、これら第2外側段部42の谷及び第2内側段部52の谷は、上下方向に互いにずれて配置されている。第2外側段部42の谷と第2内側段部52の谷との間の肉厚は、中間第1傾斜壁部30や中間第2傾斜壁部31の肉厚よりも薄くなっている。
図5に示すように、先端側領域S3は、中間第2傾斜壁部31の下端に連続する先端側第1傾斜壁部32と、先端側第1傾斜壁部32の下端に連続する先端側第2傾斜壁部33とを有している。
先端側第1傾斜壁部32、先端側第2傾斜壁部33は、下に行くほど中心線Sに近づくように傾斜している。先端側第1傾斜壁部32の上下方向の寸法は、先端側第2傾斜壁部33の上下方向の寸法よりも長く設定されている。
先端側第1傾斜壁部32の中心線Sに対する傾斜角度α5は、中間第2傾斜壁部31の中心線Sに対する傾斜角度α4よりも大きく設定されており、先端側第1傾斜壁部32の方が緩やかな傾斜となっている。先端側第1傾斜壁部32と先端側第2傾斜壁部33とによって膨出部20の外面の上下方向中間部に第3外側段部43が構成されている。また、図6に示すように膨出部20の内面には、第3外側段部43に対応して第3内側段部53が構成されている。
第3外側段部43の谷が第3内側段部53の谷よりも下方に位置しており、これら第3外側段部43の谷及び第3内側段部53の谷は、上下方向に互いにずれて配置されている。第3外側段部43の谷と第3内側段部53の谷との間の肉厚は、先端側第1傾斜壁部32や先端側第2傾斜壁部33の肉厚よりも薄くなっている。
中間第1傾斜壁部30の中心線Sに対する傾斜角度α3は、他の傾斜角度α1、α2、α4〜α6よりも大きくなっており、従って、周壁部21のうち、中間第1傾斜壁部30が最も緩やかになる。このため、膨出部20が中心線S方向に押されたとき、中間第1傾斜壁部30が最も変形しやすくなり、中間第1傾斜壁部30よりも下側及び上側は中間第1傾斜壁部30に比べて変形しにくくなる。
膨出部20が中心線S方向に押されたときには、中間第1傾斜壁部30が第1外側段部41及び第1内側段部51近傍を起点にして膨出部20内側へ向けて(使用状態において上に向けて)折れ曲がるように弾性変形する(図7参照)。このとき、中間第2傾斜壁部31は、中間第1傾斜壁部30の上方への折れ曲がりによって弾性変形しながら上に向けて変位することになり、中間第1傾斜壁部30と中間第2傾斜壁部31とが、両傾斜壁部30,31の外面が接触するように折り重なる。
上記のように周壁部21の各部分は中心線Sに対し傾斜しているのが好ましい。また、図4に示すように、周壁部21を先端側から見たとき、各傾斜壁部24〜33の境界線が円として見えるが、この境界線の間隔は各傾斜壁部24〜33の傾斜角度や上下方向の寸法によって変わる。これら境界線の間隔は一定としない方が好ましい。
また、上記端壁部22は、先端側第2傾斜壁部33の下端に連なっており、下方へ向かって突出するように滑らかに湾曲している。
図4に示すように、中間第1傾斜壁部30の外面には、2つの突起30a,30aが膨出部20の周方向に互いに間隔をあけて形成されている。突起30aは、図7に示すように膨出部20が中心線S方向に押されて中間第1傾斜壁部30と中間第2傾斜壁部31とが折り重なった際に、中間第2傾斜壁部31の外面に当接するようになっている。
次に、上記のように構成された口腔機能のトレーニング用器具1を使用する場合について説明する。まず、図2に示すように、基部10の膨出部20側を使用者の口腔に挿入していき、膨出部20が舌の上に達したところで、それ以上の挿入を止める。この状態で基部10の長手方向他端部は口腔外へ突出する。このとき、基部10に上側溝11bと下側溝12bを形成して屈曲変形しやすくしているので、口腔の形状に対応するように基部10を弾性変形させることが可能になる。
尚、図2において仮想線は膨出部20の変形前の形状を示し、実線は変形後の形状を示している。
そして、使用者が基部10を前歯A,Bで噛む。すると、上側の前歯Aが上側溝11bに嵌り、下側の前歯Bが下側溝12bに嵌る。このとき、上側溝11b及び下側溝12bが、それぞれ、上側の前歯A及び下側の前歯Bの並びに対応するように湾曲しているので、使用者が基部10を自然に噛むだけで前歯A,Bが両溝11b,12bに確実に嵌るようになる。さらに、一般に、使用者の上側の前歯A下端と、下側の前歯Bの上端とは前後方向にずれているが、この実施形態では、上側溝11b及び下側溝12bを使用者の前後方向にずらしているので、このことによっても使用者が基部10を自然に噛むだけで前歯A,Bが両溝11b,12bに確実に嵌るようになる。これらのことにより、基部10が安定して使用者に固定されることになる。
また、膨出部20の口腔内における挿入方向の位置調整をする場合には、基部10を出し入れすればよく、この場合、基部10には複数の上側溝11b及び下側溝12bが設けられているので、位置調整後においても基部10を噛むだけで前歯A,Bが両溝11b,12bに確実に嵌る。よって、例えば性別や体格等が異なる複数の使用者で同一のトレーニング用器具1を使用したとしても、各使用者に適した位置に膨出部20を配置することができる。
その後、使用者がトレーニングを開始する。すなわち、使用者は、まず、舌に力を入れて舌を押し上げるようにする。そうすると膨出部20が舌と硬口蓋とによって挟まれ、膨出部20に対して上下方向に押しつぶすように力が作用する。膨出部20には、第1外側段部41及び第1内側段部51と、第2外側段部42及び第2内側段部52とが形成されているので、舌による力が所定以上になると、これら段部41,42,51,52が弾性変形開始のきっかけとなり、膨出部20における先端側領域S3が基部側領域S1に接近するように、中間第1傾斜壁部30が第1外側段部41及び第1内側段部51近傍を起点にして上方へ急に弾性変形する(図7に示す)とともに、中間第2傾斜壁部31が上に向けて急に変位し、中間第1傾斜壁部30と中間第2傾斜壁部31とが折り重なるようになる。このように急な弾性変形を起こす瞬間に膨出部20が振動し、この振動が舌や硬口蓋に伝わり、これにより、使用者が振動を感じる。また、膨出部20が弾性変形を起こす際には使用者が聞き取ることのできる音も発生する。
本実施形態では、膨出部20の硬度を30以上60以下としているので、弾性変形を起こす瞬間の膨出部20の振動がはっきりするとともに、舌の力が比較的弱い高齢者であっても膨出部20を舌で押しつぶすことができる。すなわち、膨出部20の硬度が30未満であると、舌で押しつぶしたときに膨出部20が全体的に弾性変形していき、部分的に急な弾性変形を起こさなくなり、使用者が感じ取れる振動が発生しなくなる。一方、膨出部20の硬度が60よりも高いと、膨出部20が硬すぎて舌で押しつぶすのが困難になるとともに、口腔内の粘膜にあたった際に強い違和感を感じるようになる。従って、膨出部20の硬さは上記範囲が好ましい。より好ましい硬度範囲は、35以上55以下である。
また、この実施形態では、第1外側段部41及び第1内側段部51、第2外側段部42及び第2内側段部52以外にも、第3外側段部43及び第3内側段部53を設けている。従って、舌による押し上げ力を高めていくと、第3外側段部43及び第3内側段部53を弾性変形のきっかけとして、先端側領域S3の先端側第1傾斜壁部32や先端側第2傾斜壁部33が段部43,53近傍を起点にして急に弾性変形する。これらのことによっても膨出部20が振動する。
膨出部20が弾性変形を開始するのに要する力の大きさは、第1〜第3外側段部41〜43及び第1〜第3内側段部51〜53の深さや、中間第1傾斜壁部30の肉厚等によって任意に設定できる。変形開始に要する力が小さすぎると筋肉のトレーニングにならず、また、変形開始に要する力が大きすぎると膨出部20を押しつぶすことができないので、この実施形態では、使用者が口腔機能のトレーニングとなるように何度も繰り返して変形させることができるように設定している。
膨出部20が上記のように弾性変形した状態で舌による力を除くと膨出部20が持つ弾性によって膨出部20の形状が復元する。このとき、本実施形態では、貫通孔13の周囲に凹部11cを形成していて口腔内の粘膜が貫通孔13を完全に塞がないようにしている。これにより、外部の空気が貫通孔13を介して膨出部20の中空部Rに入りやすくなり、膨出部20が復元する際に粘膜に吸い付くようになることはない。よって、粘膜を傷つけないようにすることができる。
また、中間第1傾斜壁部30と中間第2傾斜壁部31とが折り重なった際に突起30a,30aが中間第2傾斜壁部31の外面に当接して中間第1傾斜壁部30と中間第2傾斜壁部31との変形し過ぎを抑制することが可能になる。そして、この突起30a,30aの当接が両壁部30,31を元に戻す方向に力を作用させることになり、膨出部20が確実に元の形状に復元する。
この実施形態では、中間第1傾斜壁部30に突起30a,30aを設けているが、これに限らず、例えば、中間第2傾斜壁部31に突起(図示せず)を設けてもよい。
以上を繰り返すことによって口腔関連の筋肉や顔面の筋肉を鍛えることができる。
このように、トレーニングを行う際、使用者は振動が発生するまで舌に力を入れていけばよいので、トレーニング中にどの程度の力を入れればトレーニング効果を得ることができるかが明確に分かり、トレーニングを効果的に行うことが可能になる。また、振動の発生がトレーニングしているという実感として感じられる。
また、トレーニング中には舌を動かすことから唾液の分泌が促進される。口腔内の唾液は、基部10の上面11に形成された上側溝11b内に入ることになり、この上側溝11b内に溜まるようになる。よって、唾液が口腔外へ漏れにくくなる。
以上説明したように、この実施形態1にかかる口腔機能のトレーニング用器具1によれば、弾性体からなる中空状の膨出部20に段部41,42,51,52を設けたので、舌による力を加えていったときに段部41,42,51,52をきっかけにして膨出部20を急に弾性変形させることができる。これにより、口腔機能のトレーニングを効果的に行うことができるとともに、トレーニング中にトレーニングしているという実感を得てモチベーションの向上を図ることができ、その結果、口腔機能を効果的に改善することができる。
また、口腔周辺の筋肉を鍛えることも可能であるため、顔を引き締めるという美容的な効果を得ることもできる。
また、上記実施形態では、膨出部20の外面と内面とにそれぞれ第1〜第3外側段部41〜43と第1〜第3内側段部51〜53とを設けているが、これに限らず、第1〜第3外側段部41〜43と第1〜第3内側段部51〜53の一方を省略してもよい。
第1〜第3外側段部41〜43を省略する場合には、膨出部20の外面が滑らかな面になるが、第1〜第3内側段部51〜53が弾性変形開始のきっかけとなるので、膨出部20が急な弾性変形を起こす。また、第1〜第3内側段部51〜53を省略する場合には、膨出部20の内面が滑らかな面になるが、第1〜第3外側段部41〜43が弾性変形開始のきっかけとなるので、膨出部20が急な弾性変形を起こす。
(実施形態2)
図8及び図9は、本発明の実施形態2にかかる口腔機能のトレーニング用器具1を示したものである。実施形態2の口腔機能のトレーニング用器具1は、実施形態1のものに対し膨出部20の形状が異なっているだけであり、他の部分は実施形態1と同じであるため、以下、実施形態1と異なる部分について詳細に説明する。
すなわち、実施形態2の膨出部20には、第3外側段部43及び第3内側段部53が設けられていない。また、図9に示すように、実施形態2の膨出部20の端壁部22の肉厚は実施形態1に比べて厚く設定されている。また、実施形態2の膨出部20の中間第2傾斜壁部31の肉厚は実施形態1に比べて薄く設定されている。
端壁部22の肉厚を厚くしたことにより、端壁部22の剛性が高まる。また、基部10の貫通孔13周りの肉厚は、中間第2傾斜壁部31の肉厚よりも厚くなっており、基部10における貫通孔13周りの剛性も高くなっている。したがって、膨出部20における端壁部22と基部10との間の部分、即ち周壁部21は、該周壁部21よりも剛性の高い部分によって挟まれるように位置することになる。このため、膨出部20に対し上下方向の力が作用すると、基部10や端壁部22の変形量を抑制して周壁部21に対して確実に力を作用させて急な弾性変形を起こさせることができる。弾性変形を起こした周壁部21は、基部10の貫通孔13内に収容されるように変形するので、周壁部21の変形量を十分に確保できる。
また、第2外側段部42の谷(最も深い部分)と第2内側段部52の谷(最も深い部分)とは膨出部20の中心線S方向に離れているとともに、中心線Sと直交する方向にも離れている。
第2外側段部42の谷と第2内側段部52の谷との膨出方向(中心線S方向)に直交する方向の離間寸法をXとし、第2外側段部42の谷と第2内側段部52の谷との膨出方向の離間寸法をYとしたとき、XがY以下となるように各寸法が設定されている。具体的には、この実施形態ではXが0.5mmでYが1.5mmとされており、XがYの1/3となっている。尚、XとYの寸法は所定の条件を満たせばよく、上記以外の寸法であってもよい。XをYの1/3よりも小さくすることもできる。
また、膨出部20は段部41,42,51,52をきっかけとして弾性変形するが、膨出部20を中心線S方向に押圧した際、膨出部20の弾性変形直前に発生する荷重が最大荷重となり、一方、弾性変形直後に発生する荷重が最小荷重となる。最大荷重及び最大荷重は、上記X及びYの寸法、段部41,42,51,52の深さ、周壁部21の肉厚等によって設定することが可能である。この実施形態では、最大荷重をW1とし、最小荷重をW2としたとき、W2はW1の1/2以下となるようにしている。
口腔機能のトレーニング用器具1の膨出部20を万能試験機(テンシロン万能試験機)を用いて押しつぶし、経過時間と荷重の変化との関係を得ると図10に示すグラフのようになる。図10における横軸は時間であり、縦軸は荷重である。テンシロン万能試験機のヘッドスピードは20mm/minとした。
口腔機能のトレーニング用器具1は、端壁部22が上となり、かつ、膨出部20の中心線Sが鉛直に延びる姿勢とし、試験中に容易に変形しない硬い板の上に置いた。ヘッドを端壁部22と対向するように配置した後、上方から下方へ等速移動させて膨出部20を押しつぶした。
図10中、鎖線はX<Y(X:Y=1:3)の場合を示し、破線はX=Yの場合を示し、実線はX>Y(X:Y=3:1)の場合を示している。また、図10中、符号Cで示す範囲において最大荷重W1が発生し、符号Dで示す範囲において最小荷重W2が発生する。3つの場合とも、最大荷重W1は略同じ大きさで略同じ時期に発生しているが、最小荷重W2の大きさ、及びその発生時期については互いに異なっている。
X<Yの場合は、最小荷重W2は最大荷重W1の1/2以下となっているとともに、最大荷重W1が発生して最小荷重W2となるまでのグラフの傾きが急になっている。つまり、大きな荷重変化が急に起こったということであり、これによって膨出部20には明確に感じとることができる振動が発生する。
X=Yの場合も、最小荷重W2は最大荷重W1の1/2以下となっており、大きな荷重変化が急に起こっている。よって膨出部20には明確に感じとることができる振動が発生する。
一方、X>Yの場合は、最小荷重W2が最大荷重W1の6割程度となっている。また、最大荷重W1が発生して最小荷重W2となるまでのグラフの傾きが他の場合に比べて緩やかになっている。このことから、荷重変化が小さく、しかも、ゆっくりと起こっていることが分かる。このため、膨出部20に発生する振動も小さく、明確に感じとることができない場合がある。
尚、材料の硬度が30以上60以下の範囲であれば同様な結果となる。
以上説明したように、この実施形態2にかかる口腔機能のトレーニング用器具1によれば、実施形態1と同様な作用効果を奏することができる。
また、第2外側段部42の谷と第2内側段部52の谷との膨出方向に直交する方向の離間寸法Xが、第2外側段部42の谷と第2内側段部52の谷との膨出方向の離間寸法Y以下となるようにしたので、使用時に膨出部20が急な弾性変形を起こしやすくなり、トレーニングしているという実感をより一層明確に感じることができるようになる。
XをYの1/3以下とすることで、使用時に膨出部22がより一層急な弾性変形を起こすようになるので、XはYの1/3以下にするのが好ましい。
また、膨出部20を弾性変形させる際の最小荷重W2を最大荷重W1の1/2以下としたので、このことによっても使用時に膨出部20の振動を大きくすることができ、トレーニングしているという実感をより一層明確に感じることができるようになる。
また、上記実施形態1、2において膨出部20の外面の段部は少なくとも1つあればよく、また、内面の段部も同様に少なくとも1つあればよい。
また、上記実施形態1、2では、膨出部20が下方へ膨出するものである場合について説明したが、これに限らず、上方へ膨出させてもよい。また、上方へ膨出する膨出部と、下方へ膨出する膨出部との2つの膨出部を設けてもよい。
また、複数の膨出部を設ける場合には、基部10の長手方向に並べて設けてもよいし、幅方向に並べて設けてもよい。
また、上記実施形態1、2では、基部10と膨出部20とを一体成形しているが、これに限らず、別々に成形した後、一体化するようにしてもよい。この場合、基部10と膨出部20とを異なる材料で成形できる。
また、基部10の形状は上記した形状に限られるものではなく、上側凸条部11a、下側凸条部12aは省略してもよい。また、基部10は棒状であってもよい。
また、膨出部20の先端面は湾曲させなくてもよく、例えば、中心線Sと交差する方向に延びる平坦面であってもよい。
また、膨出部20を舌先で押すようにしてトレーニングを行うことも可能である。
また、上下の歯を噛み合わせた状態で膨出部20を奥歯の側面と頬の内面との間に配置して膨出部20の先端面を頬側に向けておき、頬の筋肉によって膨出部20を奥歯に押し付けるようにして膨出部20を弾性変形させるようにしてもよい。
また、膨出部20を上唇と下唇とで挟んで唇によって上下に押しつぶすようにしてもよい。
また、上記実施形態1、2では、膨出部20の中心線Sと直交する方向の断面形状が円形である場合について説明したが、これに限らず、断面形状が多角形状であってもよい。
以上説明したように、本発明にかかる口腔機能のトレーニング用器具は、例えば、舌をはじめとした口腔関連の筋肉や顔面の筋肉を鍛えるのに使用することができる。
1 口腔機能のトレーニング用器具
10 基部
20 膨出部
30 中間傾斜壁部(第1周壁部)
31 先端側第1傾斜壁部(第2周壁部)
41 第1外側段部
42 第2外側段部
43 第3外側段部
51 第1内側段部
52 第2内側段部
53 第3内側段部
R 中空部
S 中心線