図1は本発明に係る緊急避難システムの一例を示すブロック図である。図1に示すように、本発明に係る緊急避難システム100は、大別すると、緊急事態発報システム200から発信される緊急事態発生情報を受信するメイン装置1と、施設の敷地内の各作業現場に設けられた第1の中継装置2a(屋内中継装置),2b(屋外中継装置)と、作業現場にいる作業員に避難を促す警告を発する避難指示装置(屋内スピーカ3a,屋外スピーカ3b,有色回転灯4aおよび有色回転灯4b)を有する。緊急事態発報システム200から発信される緊急事態発生情報は、第1の中継装置2a,2bを介して各作業現場に設けられた避難指示装置3a,3b,4a,4bに伝えられ、作業員に避難を促す警告に変換されて各作業員に避難指示が伝達される構成を有する。
従来は、緊急事態発生情報を受け取った作業員が各作業現場の作業員に連絡する必要があったため、現場作業員の全員に避難指示を完了するまでに時間がかかり、作業員の避難が遅れる恐れがあった。これに対し、上述した本発明の構成によれば、緊急事態発報システム200から緊急事態発生情報が発信された場合、メイン装置1および中継装置2a,2bを介して、自動的に、かつ、瞬時に各作業現場の各作業員に避難指示をすることができる。また、緊急事態発報システム200から受信した緊急事態発生情報をそのまま利用することにより、避難指示の伝達を人間が介在して行う場合のヒューマンエラーを排除することができる。以下、各構成について詳述する。
本発明に係る緊急避難システム100は、原子力関連施設や製造工場施設など、広大な敷地を有する施設の敷地内において、それぞれ互いに遠く離れた複数の作業現場で作業を行う作業員に対して迅速に避難指示をするために好適なものである。図1では、作業現場として屋内作業現場20および屋外作業現場30を1つずつ記載しているが、それぞれいくつ有していても良く、作業員が作業する場所として、あらゆる作業現場を含む。また、「作業員」とは、施設の敷地内にいて緊急事態が発生した場合に避難が必要な者のことを示し、装置のオペレーターに限られず、管理者等も含む。
本発明において「緊急事態」とは、作業員が避難することが必要なあらゆる事態を含み、本発明に係る緊急避難システム100が連動される緊急事態発報システム200が緊急事態と判断するものを含む。緊急事態発報システム200は、公的な機関等が緊急事態の発生を正確に判断し、緊急事態発生情報を発信するシステムを好ましく用いることができる。このようなシステムの例として、例えば全国瞬時警報システム(J‐ALERT(ジェイアラート))が挙げられる。J‐ALERTは、通信衛星を介して市町村の防災無線等を利用し、緊急情報を住民へ瞬時に伝達するシステムである。J‐ALERTにおける緊急事態としては、大規模な自然災害や弾道ミサイル攻撃等が含まれる。本発明に係る緊急避難システム100は、上述した緊急事態発報システム200を利用することによって、私企業レベルまたは個人レベルで緊急事態発生を予測・感知する場合と比較してはるかに正確な判断を自動的かつ瞬時に行うことができる。
緊急事態発報システム200から発信された緊急事態発生情報は、施設内に設けられた制御室(屋内制御室10)に配置されているメイン装置1において受信される。メイン装置1は、施設内に1台設けられており、緊急事態発報システム200からの情報を有線または無線で受信する。メイン装置1の設置場所としては、例えば、免震構造を有しており、施設内全体を管理する制御室(中央操作室)が挙げられる。メイン装置1は、受信した緊急事態発生情報の内容から避難指示信号(A1,A2)を生成する。
メイン装置1で生成された避難指示信号(A1,A2)は、各作業現場20,30に設置されている第1の中継装置2a,2bに送信される。第1の中継装置2a,2bは、施設内の作業現場の全てに網羅して設置される。
避難指示信号(A1,A2)を受信した第1の中継装置2a,2bは、それぞれの作業現場20,30に設置されている避難指示装置3a,3b,4a,4bに避難指示信号(A1,A2)を送信する。避難指示信号(A1,A2)を受信した避難指示装置3a,3b,4a,4bは、作業員に避難を促す警告を発する。警告を受け取った作業員は、システムの使用者が定める基準に従って速やかに避難することができる。作業員は、緊急事態として地震が発生した場合には屋内から屋外へ避難し、竜巻や津波が発生した場合には屋外から屋内へ避難することができる。
避難指示装置3a,3b,4a,4bとしては、作業員が避難しなければならないことを認識できるものであればよく、特に限定は無い。本実施例では、スピーカ3a,3bおよび有色回転灯4a,4bを用いている。スピーカ3a,3bを用いる場合は、音声案内(避難すべき旨のアナウンス)を行うことによって、作業員に避難を促すことができる。また、有色回転灯4a,4bであれば、照明の点灯と回転を組み合わせることによって、作業員に避難を促すことができる。
第1の中継装置2a,2bは、メイン装置1から発信された避難指示信号(A1,A2)を中継して避難指示装置3a,3b,4a,4bに送信できるものであれば特に限定はない。また、メイン装置1と第1の中継装置2a,2bとの間および第1の中継装置2a,2bと避難指示装置3a,3b,4a,4bとの間は、有線で接続されていてもよいし、無線で接続されていてもよい。
メイン装置1および第1の中継装置2a,2bは、停電時でも作動するよう非常用電源もしくは無停電装置を組込んだ構成とすることが好ましい。メイン装置1は、緊急事態が解消されたものと判断される場合には解除信号(図示せず)を生成し、第1の中継装置2a,2bに送信する。解除信号を受信した第1の中継装置2a,2bは、避難指示装置3a,3b,4a,4bへの避難指示信号の発信を中止する。言い換えると、第1の中継装置2a,2bから避難指示装置3a,3b,4a,4bへの避難指示信号の発信は、メイン装置1から解除信号を受け取るまでは継続される。
緊急事態発報システム200からの第1番目の緊急事態発生情報の発信後に、同種もしくは異種の第2番目の緊急事態発生情報が発信された場合、緊急事態発生情報は最新の発信により更新される。第2番目の緊急事態発生情報の発信以降も同様である。メイン装置1によって緊急事態が解消されたものと判断されるのは、緊急事態発報システム200からのすべての発信が解除された時である。
また、各作業現場20,30に作業機器(屋内作業機器8および屋外作業機器9)が設置されている場合、緊急事態の発生と共にこれらの機器を停止する構成(いわゆるインターロック機能)を有していても良い。具体的には、各作業現場20,30に第2の中継装置6a,6bを設置する。メイン装置1は、緊急事態発報システム200から緊急事態発生情報を受信すると、作業機器停止信号(S1,S2)を生成し、第2の中継装置6a,6bに送信する。第2の中継装置6a,6bは、作業機器停止信号(S1,S2)を受信して中継し、作業機器8,9に送信する。そして、作業機器停止信号(S1,S2)を受信した作業機器8,9は、運転を停止する。このような構成によって、緊急事態発生時に、緊急事態発報システム200と連動して各作業現場に設置されている作業機器を停止することができる。作業機器の強制的な停止によって作業員は作業を続けることができなくなるので、作業員の迅速な避難を助けることができる。
第2の中継装置6a,6bは、メイン装置1から発信された作業機器停止信号(S1,S2)を作業機器8,9に伝達できるものであれば特に限定はない。また、メイン装置1と第2の中継装置6a,6bとの間および第2の中継装置6a,6bと作業機器8,9との間は、有線で接続されていてもよいし、無線で接続されていてもよい。作業機器8,9としては、例えばクレーンやリフターを挙げることができる。
しかし、作業機器8,9を意図しない態勢で停止した場合、二次災害を引き起こす可能性がある。例えば、作業員の迅速な避難を優先してクレーンが荷物を吊り下げたまま停止した場合、災害の影響で荷物が落下すると、人的被害を及ぼす恐れがある。そこで、本実施例では、作業機器8,9が停止した後であっても、遠隔操作で作業機器8,9を操作できる構成とした。具体的には、実施例では屋内制御室10に遠隔操作装置5が設けられている。遠隔操作装置5は、作業機器8,9が受信した作業機器停止信号(S1,S2)を一時的に無効化し、第2の中継装置6a,6bを介して作業機器8,9に遠隔操作信号(R1,R2)を送信し、作業機器8,9を操作可能な構成を有する。このような構成を有することによって、身の安全を確保できた作業員が、屋内制御室10に設置されている遠隔操作装置5によって手動で作業機器8、9を安全なポジションに動かすことができる。遠隔操作装置5および2の中継装置6a,6bも、第1の中継装置2a,2bと同様に、停電時でも作動するよう非常用電源もしくは無停電装置を組込んだ構成とすることが好ましい。
以上、本発明によれば、緊急事態発報システムと連動し、施設内の各作業現場の全ての作業員に瞬時に避難指示を伝達することが可能な緊急避難システムを提供することができることが示された。
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。