JP2018045073A - メタサーフェス - Google Patents

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Yoshiaki Nomoto
佳朗 野本
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Yoshitaka Kurosaka
剛孝 黒坂
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和義 廣瀬
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貴浩 杉山
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So Uenoyama
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Abstract

【課題】V字型アンテナ素子による光の変換効率の向上を実現できるメタサーフェスを提供する。
【解決手段】メタサーフェス1は、入力光10が入力される光入力面2a及び該光入力面2aに対向する光出力面2bを有する基板2と、基板2の光出力面2b側に設けられ第1腕部4x及び該第1腕部4xの一端に連続する第2腕部4yを有する複数のV字型アンテナ素子4と、を備える。V字型アンテナ素子4の厚み方向における寸法は、100nm〜400nmである。
【選択図】図2

Description

本発明は、メタサーフェスに関する。
従来、例えば下記非特許文献1に記載されているように、入力光を変調して出力するメタサーフェスが知られている。下記非特許文献1に記載されたメタサーフェスは、入力光が入力される光入力面及び該光入力面に対向する光出力面を有するSi基板と、Si基板の光出力面上に設けられた複数のV字型アンテナ素子と、を備える。このようなメタサーフェスでは、一般的に、V字型アンテナ素子の厚みが30nm〜50nmとされている。
Nanfang Yu、外6名、「Light Propagation with PhaseDiscontinuities: Generalized Laws of Reflection and Refraction」、SCIENCE, VOL 334、p.333−337、21 OCTOBER 2011
上述したメタサーフェスにおいては、V字型アンテナ素子による光の変換効率(V字型アンテナ素子から出力される光の強度)は重要な性能の一つであり、当該変換効率の向上が望まれている。
そこで、本発明は、V字型アンテナ素子による光の変換効率の向上を実現できるメタサーフェスを提供することを課題とする。
本発明に係るメタサーフェスは、入力光が入力される光入力面及び該光入力面に対向する光出力面を有する基板と、基板の光出力面側に設けられ、第1腕部及び該第1腕部の一端に連続する第2腕部を有する複数のV字型アンテナ素子と、を備え、V字型アンテナ素子の厚み方向における寸法は、100nm〜400nmである。
本発明らは鋭意検討を重ねた結果、V字型アンテナ素子の厚み方向における寸法(以下、単に「アンテナ厚」ともいう)を一般的なアンテナ厚である30nm〜50nmよりも厚くすると、V字型アンテナ素子による光の変換効率が高まる傾向があるという知見を得た。また特に、100nmよりも薄い範囲では、アンテナ厚を厚くするに伴って当該変換効率が大きく高まる場合があるという知見を得た。すわなち、アンテナ厚を100nm以上のものとすると、一般的なアンテナ厚の場合に比べて当該変換効率が大幅に高いものとなることを見出した。一方、製造上、アンテナ厚が厚くなればなるほど基板にV字型アンテナ素子を設けることは難しくなり、アンテナ厚が400nmよりも厚くなると、基板にV字型アンテナ素子を設けることが実現困難となる。そこで、本発明に係るメタサーフェスでは、アンテナ厚は100nm〜400nmである。これにより、V字型アンテナ素子による光の変換効率の向上を実現することができる。
本発明に係るメタサーフェスでは、V字型アンテナ素子の厚み方向における寸法は、100nm〜200nmであってもよい。アンテナ厚が200nm以下であると、基板にV字型アンテナ素子を確実に設けることができる。よって、V字型アンテナ素子による光の変換効率の向上を、確実に実現することが可能となる。
本発明に係るメタサーフェスでは、V字型アンテナ素子における第1腕部と第2腕部とがなす角度は、70度以上であってもよい。第1腕部と第2腕部とがなす角度が小さいほど、製造上、V字型アンテナ素子のV字形状を形成することが困難となる。この点、第1腕部と第2腕部とがなす角度が70度以上であると、V字型アンテナ素子を容易に製造することができる。
本発明に係るメタサーフェスでは、基板は、GaAs基板、ガラス基板、又は、Si基板であってもよい。この場合、GaAs基板、ガラス基板又はSi基板を基板として適用できる。
本発明に係るメタサーフェスでは、V字型アンテナ素子は、基板上に設けられた凸部であってもよい。この場合、V字型アンテナ素子を凸部(いわゆるポジ型)として構成したメタサーフェスにおいて、当該V字型アンテナ素子による光の変換効率の向上を実現できる。
本発明に係るメタサーフェスでは、V字型アンテナ素子は、基板上に設けられた金属層に形成された凹部であってもよい。この場合、V字型アンテナ素子を凹部(いわゆるネガ型)として構成したメタサーフェスにおいて、当該V字型アンテナ素子による光の変換効率の向上を実現できる。
本発明によれば、V字型アンテナ素子による光の変換効率の向上を実現できるメタサーフェスを提供することが可能となる。
一実施形態に係るメタサーフェスの構成を示す平面図である。 図1のII−II線に沿う一部断面図である。 (a)は、基準構造のV字型アンテナ素子の形状を定義するための図である。(b)は、反転対称構造のV字型アンテナ素子の形状を定義するための図である。 (a)は、メタサーフェスにおける出力光の強度について、アンテナ厚を変えて解析した結果を示すグラフである。(b)は、図4(a)の一部を拡大して示すグラフである。 メタサーフェスにおける出力光の強度について、アンテナ厚を変えて解析した結果を示すグラフである。 (a)は、メタサーフェスにおける出力光の強度について、アンテナ厚を変えて解析した結果を示すグラフである。(b)は、図6(a)の一部を拡大して示すグラフである。 変形例に係るメタサーフェスの一部断面図である。 変形例に係るメタサーフェスにおける出力光の強度について、アンテナ厚を変えて解析した結果を示すグラフである。
以下、図面を参照しつつ本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
図1は、一実施形態に係るメタサーフェスの構成を示す概略斜視図である。図2は、図1のII−II線に沿う一部断面図である。図1及び図2に示されるように、メタサーフェス1は、入力される入力光10を変調し、出力する出力光20の位相、振幅及び偏光の少なくとも何れかを変調し、所望の出力光20を出力する。この場合、メタサーフェス1は、入力光10の位相に対して2次元的に配置した個々の要素(後述のV字型アンテナ素子4)において所望の変調を行うことによって、所望の光学デバイスを形成できる。一般的に、メタサーフェス1は、メタマテリアルの2次元版の構造体として知られている。
メタサーフェス1は、例えば、集光レンズ、アキシコンレンズ、色収差無しレンズ、球面収差無しレンズ、λ/4波長板、λ/2波長板、光渦発生板、及び、ホログラム要素の少なくとも何れかとして用いることができる。メタサーフェス1は、例えば、検出器アレイ群の微小集光レンズ、微小結合デバイス、偏光選択性及び波長選択性を有するデバイス(偏光スプリッタ等)、及び、フォトニック結晶レーザの出力光制御の少なくとも何れかに利用することができる。メタサーフェス1は、その厚みを入力光10の波長以下とすることができる。以下、メタサーフェス1の厚み方向(基板2の光出力面2bに対して略垂直な方向である)を「Z軸方向」とし、Z軸方向と直交する一方向を「X軸方向」とし、X軸方向及びZ軸方向の双方と直交する方向を「Y軸方向」として説明する。
本実施形態のメタサーフェス1は、透過型のプラズモン型メタサーフェスである。図示する例では、メタサーフェス1は、集光レンズとして作用する光学デバイスであって、入力光10が入力された場合に所望の焦点位置に集光する出力光20を出力する。メタサーフェス1は、基板2と、複数のV字型アンテナ素子4と、を備える。
基板2は、平板状を呈する。基板2は、GaAs(ガリウムヒ素)で形成されたGaAs基板、ガラスで形成されたガラス基板、又は、Si(シリコン)で形成されたSi基板である。GaAs基板を基板2として備えるメタサーフェス1では、少なくとも880nm〜40μmの波長を含む入力光10を変調し、入力光10が例えば近赤外線ないし中赤外線である。ガラス基板を基板2として備えるメタサーフェス1では、少なくとも200nm〜40μmの波長を含む入力光10を変調し、入力光10が例えば紫外線、可視光線、近赤外線ないし中赤外線である。Si基板を基板2として備えるメタサーフェス1では、少なくとも1μm〜40μmの波長を含む入力光10を変調し、入力光10が例えば近赤外線ないし中赤外線である。
基板2は、入力光10が入力される光入力面2aと、出力光20を出力する光出力面2bと、を含む。光入力面2aは、基板2の一方の主面である。光出力面2bは、光入力面2aと対向する。光出力面2bは、基板2の他方の主面である。基板2の厚みは、例えば0.5mm〜10mmである。
V字型アンテナ素子4は、基板2の光出力面2b側に設けられている。換言すると、V字型アンテナ素子4は、基板2において光出力面2b上に配置されている。ここでのV字型アンテナ素子4は、光出力面2bに密着層5を介して設けられている。
密着層5は、Ti(チタン)、Cr(クロム)、Pt(白金)、又はこれらの少なくとも何れかにより形成されている。密着層5の厚みは、例えば5nm〜10nmである。密着層5は、基板2に対するV字型アンテナ素子4の密着性を高め、V字型アンテナ素子4の剥離を抑制する。例えば密着層5は、基板2及びV字型アンテナ素子4のそれぞれに対して、基板2とV字型アンテナ素子4と間の密着性よりも高い密着性を有する。密着性は、付着性、付着力及び密着力等と同義である。
V字型アンテナ素子4は、いわゆるポジ型の素子であって、基板2上に設けられた凸部である。V字型アンテナ素子4は、Au(金)等の金属により形成されている。V字型アンテナ素子4は、基板2の光出力面2b上に、Z軸方向に隆起するように設けられている。V字型アンテナ素子4の厚み(Z方向における寸法)は、100nm〜400nmである。V字型アンテナ素子4の厚みは、100nm〜200nmであってもよい。以下、V字型アンテナ素子4のZ方向における寸法を、「アンテナ厚」ともいう。
V字型アンテナ素子4は、例えば、基板2の光出力面2b上の100μm×100μmの領域当たりに、16万個配置されている。V字型アンテナ素子4は、突条形状の第1腕部4xと、該第1腕部4xの一端に連続する突条形状の第2腕部4yと、を有する。
複数のV字型アンテナ素子4は、そのV字型構造の形状が互いに異なる8種類の第1〜第8アンテナ素子41〜48を含む。具体的には、複数のV字型アンテナ素子4は、4種類の基準構造のV字型構造体である第1〜第4アンテナ素子41〜44と、これら4種類の基準構造をX軸で反転してなる反転対称構造のV字型構造体である第5〜第8アンテナ素子45〜48と、を含む。
図3(a)は、基準構造のV字型アンテナ素子4の形状を定義するための図である。図3(b)は、反転対称構造のV字型アンテナ素子4の形状を定義するための図である。図3では、単位セルC、すなわち、メタサーフェス1において1つのV字型アンテナ素子4のみを含む矩形板状領域を示している。単位セルCは、X軸方向及びY軸方向に沿った辺を有する。ここでの単位セルCの大きさは、240nm×240nm(X軸方向及びY軸方向の寸法がともに240nm)である。
図3(a)に示されるように、基準構造のV字型アンテナ素子4(第1〜第4アンテナ素子41〜44)では、X軸との間に角度αを有する対称軸s1と、対称軸s1に直交する非対称軸a1と、が設定されている。角度αは、45度である。この角度αによって、入力光10の偏光に対する出力光20の偏光が何度回転するかを決定できる。角度αが45度の場合、出力光20の偏光は、入力光10の偏光に対して90度回転する。基準構造のV字型アンテナ素子4は、対称軸s1を介して線対称な形状を呈する。
なお、以下においては、第1腕部4xと第2腕部4yとがなす角度を腕部間角度βとし、第1腕部4x及び第2腕部4yそれぞれの長手方向の長さを腕部長さLとし、第1腕部4x及び第2腕部4yそれぞれの幅を腕部幅Hとして説明する。
図3(b)に示されるように、反転対称構造のV字型アンテナ素子4(第5〜第8アンテナ素子45〜48)は、図3(a)の基準構造をX軸を介して反転した構造である。反転対称構造のV字型アンテナ素子4は、対称軸s1(図3(a)参照)と直交する対称軸s2と、対称軸s2に直交する非対称軸a2と、が設定されている。対称軸s2は、対称軸s1と同じく、X軸との間に角度αを有する。反転対称構造のV字型アンテナ素子4は、対称軸s2を介して線対称な形状を呈する。反転対称構造のV字型アンテナ素子4は、基準構造のV字型アンテナ素子4に対して、+180度の位相変調が得られる。
図1に戻り、複数のV字型アンテナ素子4のそれぞれにおける第1腕部4xと第2腕部4yとがなす角度は、70度以上である。つまり、第1〜第8アンテナ素子41〜48の腕部間角度βは、70度以上180度以下である。第1〜第8アンテナ素子41〜48の腕部幅Hは、互いに等しく、例えば40nmである。
第1アンテナ素子41の腕部間角度βは、75度である。第1アンテナ素子41の腕部長さLは、第2〜第4アンテナ素子42〜44の腕部長さLよりも長い。第2アンテナ素子42の腕部間角度βは、90度である。第2アンテナ素子42の腕部長さLは、第1アンテナ素子41の腕部長さLよりも短く、且つ、第3及び第4アンテナ素子43,44の腕部長さLよりも長い。
第3アンテナ素子43の腕部間角度βは、120度である。第3アンテナ素子43の腕部長さLは、第1及び第2アンテナ素子41,42の腕部長さLよりも短く、且つ、第4アンテナ素子44の腕部長さLよりも長い。第4アンテナ素子44の腕部間角度βは、180度である。つまり、第4アンテナ素子44は、第1腕部4x及び第2腕部4yが同一直線に沿って真っ直ぐ延びる形状である。第4アンテナ素子44の腕部長さLは、第1〜第3アンテナ素子41〜43の腕部長さLよりも短い。
第5アンテナ素子45は、X軸に対する第1アンテナ素子41の反転対称構造を有する。第5アンテナ素子45の腕部間角度βは、75度である。第5アンテナ素子45の腕部長さLは、第6〜第8アンテナ素子46〜48の腕部長さLよりも長い。第6アンテナ素子46は、X軸に対する第2アンテナ素子42の反転対称構造を有する。第6アンテナ素子46の腕部間角度βは、90度である。第6アンテナ素子46の腕部長さLは、第5アンテナ素子45の腕部長さLよりも短く、且つ、第7及び第8アンテナ素子47,48の腕部長さLよりも長い。
第7アンテナ素子47は、X軸に対する第3アンテナ素子43の反転対称構造を有する。第7アンテナ素子47の腕部間角度βは、120度である。第7アンテナ素子47の腕部長さLは、第5及び第6アンテナ素子45,46の腕部長さLよりも短く、且つ、第8アンテナ素子48の腕部長さLよりも長い。第8アンテナ素子48は、X軸に対する第4アンテナ素子44の反転対称構造を有する。第8アンテナ素子48の腕部間角度βは、180度である。つまり、第8アンテナ素子48は、第1腕部4x及び第2腕部4yが同一直線に沿って真っ直ぐ延びる形状である。第8アンテナ素子48の腕部長さLは、第5〜第7アンテナ素子45〜47の腕部長さLよりも短い。
このような複数のV字型アンテナ素子4は、位相変調光学デバイスとして使用可能に構成されている。すなわち、第1〜第8アンテナ素子41〜48のそれぞれは、入力光10の入力に応じて出力する出力光20の強度が等しい。第1〜第8アンテナ素子41〜48は、入力された入力光10について0〜2πの位相変調を行う。
第1〜第8アンテナ素子41〜48は、下式(1)に従い、所望の位置に所望の位相差が生じるように基板2の光出力面2b上に配置されている。これにより、基板2の光入力面2aから入力光10が入力された際、出力光20を所望の焦点位置に集光する集光レンズを形成できる。下式(1)において、x及びyは平面内の座標、φは座標(x,y)おける位相シフト量、fは所望の焦点距離を意味する。
Figure 2018045073
以上に説明したメタサーフェス1を製造する場合、まず、基板2を用意する。基板2の光出力面2b上に、レジスト層を形成する。電子線描画装置を用いて電子線をレジスト層に照射して、V字型アンテナ素子4の形状に対応した描画パターンを露光する。基板2及びレジスト層上に、金属層を蒸着する。ここでは、Ti層及びAu層をこの順に蒸着する。リフトオフプロセスにより、レジスト層を当該レジスト層上の金属層と一緒に取り除く。これにより、メタサーフェス1が得られる。基板2の光出力面2b上に蒸着した金属層は、密着層5及びV字型アンテナ素子4を構成する。
このように製造されるメタサーフェス1では、製造上、アンテナ厚が厚くなればなるほど基板2にV字型アンテナ素子4を設けることは難しくなる。アンテナ厚が400nmよりも厚くなると、基板2に対してV字型アンテナ素子4の厚みが厚くなりすぎるために、基板2にV字型アンテナ素子4を設けることが実現困難となる。露光したレジスト層への金属層の蒸着が困難となる。一方、アンテナ厚が200nm以下であると、製造上、基板2にV字型アンテナ素子4を確実かつ容易に設けることができる。
図4(a)は、メタサーフェス1における出力光20の強度について、アンテナ厚を変えて解析した結果を示すグラフである。図4(b)は、図4(a)の一部を拡大して示すグラフである。ここでの解析では、GaAs基板を基板2として備えたメタサーフェス1を解析対象としている。密着層5の厚みは、5nmである。入力光10は、基板2の光入力面2aから垂直に入力する、波長940nmの光である。出力光20の強度は、V字型アンテナ素子4による光の変換効率と同義である。出力光20の強度は、交差−散乱光強度(交差電界強度)とも称される。
図4(a)に示されるように、GaAs基板を基板2として備えたメタサーフェス1では、一般的なアンテナ厚(30nm〜50nm)に対してアンテナ厚を厚くすると、出力光20の強度が高まる傾向があることがわかる。図4(b)に示されるように、アンテナ厚が100nmよりも薄い範囲では、アンテナ厚が厚くなるに従い、出力光20の強度が大きく(急峻に)高まることがわかる。アンテナ厚が100nmよりも薄い範囲では、それ以外の範囲に対して、アンテナ厚に対する出力光20の強度の変化度合い(傾き)が大きいことがわかる。
図4(a)及び図4(b)に示されるように、アンテナ厚が400nm以下の範囲では、出力光20の強度に関するピークが複数(2つ)存在している。アンテナ厚が400nmの場合に、出力光20の強度がピークである。アンテナ厚が200nm以下の範囲においては、アンテナ厚が100nm〜200nmのときに出力光20の強度が高く、アンテナ厚が140nmの場合に出力光20の強度がピークである。アンテナ厚が140nmのときの出力光20の強度は、アンテナ厚が30nmのときの出力光20の強度に対して、7.9倍となる。
図5は、メタサーフェス1における出力光20の強度について、アンテナ厚を変えて解析した結果を示すグラフである。ここでの解析では、Si基板を基板2として備えたメタサーフェス1を解析対象としている。密着層5の厚みは、10nmである。入力光10は、基板2の光入力面2aから垂直に入力する、波長8μmの光である。
図5に示されるように、Si基板を基板2として備えたメタサーフェス1では、一般的なアンテナ厚に対してアンテナ厚を厚くすると、出力光20の強度が高まる傾向があることがわかる。また特に、アンテナ厚が100nmよりも薄い範囲では、アンテナ厚が厚くなるに従い、出力光20の強度が大きく高まることがわかる。アンテナ厚が100nmよりも薄い範囲では、それ以外の範囲に対して、アンテナ厚に対する出力光20の強度の変化度合いが大きいことがわかる。アンテナ厚が400nm以下の範囲における出力光20の強度は、アンテナ厚が厚くなるに従い、急峻に増加した後、緩やかに増加している。
図6(a)は、メタサーフェス1における出力光20の強度について、アンテナ厚を変えて解析した結果を示すグラフである。図6(b)は、図6(a)の一部を拡大して示すグラフである。ここでの解析では、ガラス基板を基板2として備えたメタサーフェス1を解析対象としている。密着層5の厚みは、5nmである。入力光10は、基板2の光入力面2aから垂直に入力する、波長940nmの光である。
図6(a)に示されるように、ガラス基板を基板2として備えたメタサーフェス1では、一般的なアンテナ厚に対してアンテナ厚を厚くすると、出力光20の強度が高まる傾向があることがわかる。また特に、アンテナ厚が50nmよりも薄い範囲では、アンテナ厚が厚くなるに従い、出力光20の強度が大きく高まることがわかる。アンテナ厚が50nmよりも薄い範囲では、それ以外の範囲に対して、アンテナ厚に対する出力光20の強度の変化度合いが大きいことがわかる。
図6(a)及び図6(b)に示されるように、アンテナ厚が400nm以下の範囲における出力光20の強度は、アンテナ厚が厚くなるに従い、急峻に増加した後、緩やかに増加し、ピークに達している。アンテナ厚が400nm以下の範囲では、アンテナ厚が380nmの場合に、出力光20の強度がピークである。アンテナ厚が380nmのときの出力光20の強度は、アンテナ厚が30nmのときの出力光20の強度に対して、27倍となる。
以上、図4〜図6の解析結果に示されるように、出力光20の強度がV字型アンテナ素子4による光の変換効率と同義であるところ、アンテナ厚を一般的なアンテナ厚である30nm〜50nmよりも厚くすると、当該変換効率が高まる傾向があるという知見が得られる。また特に、100nmよりも薄い範囲では、アンテナ厚を厚くするに伴って、当該変換効率が大きく高まる(当該変換効率の増加度合いが大きい)場合があるという知見が得られる。これは、一般的なアンテナ厚は、V字型アンテナ素子4の表皮効果による厚さよりも薄いことから、アンテナ厚を厚くすることで電子が流れる領域を増加でき、双極子輻射の効率を増加できるためと考えられる。したがって、アンテナ厚を100nm以上のものとすると、一般的なアンテナ厚の場合に比べて当該変換効率が大幅に高いものとなる、すなわち、当該変換効率を効果的に向上できることが見出される。一方、製造上、アンテナ厚が厚くなればなるほど基板2にV字型アンテナ素子4を設けることは難しくなり、アンテナ厚が400nmよりも厚くなると、基板2にV字型アンテナ素子4を設けることが実現困難となるという実情が存在する。
そこで、本実施形態のメタサーフェス1では、アンテナ厚は100nm〜400nmである。これにより、V字型アンテナ素子4による光の変換効率の向上を実現可能となる。V字型アンテナ素子4による光の変換効率を、一般的なアンテナ厚の場合に比べて顕著に高くすることができる。
メタサーフェス1では、アンテナ厚みは100nm〜200nmであってもよい。アンテナ厚が200nm以下であると、基板2にV字型アンテナ素子4を確実に設けることができる。例えば、アンテナ厚が200nm以下であると、それよりもアンテナ厚が厚い場合に比べて、基板2にV字型アンテナ素子4を確実かつ容易に設けることができる。よってこの場合、V字型アンテナ素子4による光の変換効率の向上を、確実に実現することが可能となる。
V字型アンテナ素子4における第1腕部4xと第2腕部4yとがなす腕部間角度βが小さいほど、製造上、V字型アンテナ素子4のV字形状を形成することが困難となる。例えば腕部間角度βが40度及び60度のV字型アンテナ素子では、電子線照射時の電子線の近接効果によって描画パターンが拡がるため、設計図通りの形状とすることが困難である。腕部間角度βが40度及び60度のV字型アンテナ素子は、実際に製造した場合、V字形状が崩れやすく、V字形状ではなく三角形形状になってしまう場合がある。この点、本実施形態のメタサーフェス1では、腕部間角度βは、70度以上である。これにより、V字型アンテナ素子4を容易に製造することができる。
メタサーフェス1では、基板2は、GaAs基板、ガラス基板、又は、Si基板である。これにより、GaAs基板、ガラス基板又はSi基板を基板2として適用できる。
メタサーフェス1では、V字型アンテナ素子4は、基板2上に設けられた凸部である。これにより、いわゆるポジ型として構成したV字型アンテナ素子4を備えるメタサーフェス1において、当該V字型アンテナ素子4による光の変換効率を向上できる。
メタサーフェス1では、上述したように、位相変調光学デバイスとして使用可能に構成されている。すなわち、第1〜第8アンテナ素子41〜48のそれぞれは、入力光10の入力に応じて出力する出力光20の強度が等しい。第1〜第8アンテナ素子41〜48は、入力された入力光10について0〜2πの位相変調を行う。したがって、メタサーフェス1によれば、0〜2πの位相変調能力を確保しつつ、V字型アンテナ素子4による光の変換効率を向上できる。
メタサーフェス1では、反転対称構造を用いて複数のV字型アンテナ素子4を構成している。これにより、入力光10の0〜2πの位相変調を容易に実現できる。また、メタサーフェス1では、単位セルCを空間的に適宜配置することで、出力光20の任意波面を形成できる。
図7は、変形例に係るメタサーフェス1Aの一部断面図である。変形例に係るメタサーフェス1Aでは、厚さ方向における基板2の光出力面2bとV字型アンテナ素子4との間に、中間層3を備えている。中間層3は、基板2の屈折率よりも低い屈折率を有する。屈折率は、その物質中の光の速度に対する真空中の光の速度の比である。中間層3は、SiN(窒化ケイ素)で形成されたSiN層、TiO(酸化チタン)で形成されたTiO層、HfO(酸化ハフニウム)で形成されたHfO層、Ta(五酸化タンタル)で形成されたTa層、Nb(五酸化ニオブ)で形成されたNb層、Al(酸化アルミニウム)で形成されたAl層、SiO(二酸化ケイ素)で形成されたSiO層、又は、これらの少なくとも何れかを含む層である。SiN層は、Siで形成されたSi層を含む。
図8は、変形例に係るメタサーフェス1Aにおける出力光20の強度について、アンテナ厚を変えて解析した結果を示すグラフである。ここでの解析では、GaAs基板を基板2として備えたメタサーフェス1Aを解析対象としている。中間層3の厚みは90nmであり、密着層5の厚みは5nmである。入力光10は、基板2の光入力面2aから垂直に入力する、波長940nmの光である。
図8に示されるように、メタサーフェス1Aにおいても、一般的なアンテナ厚に対してアンテナ厚を厚くした場合に出力光20の強度が高まる傾向があることがわかる。また特に、アンテナ厚が100nmよりも薄い範囲では、アンテナ厚が厚くなるに従い、出力光20の強度が大きく高まることがわかる。アンテナ厚が400nm以下の範囲における出力光20の強度は、アンテナ厚が厚くなるに従い、急峻に増加した後、緩やかに増加し、ピークに達している。出力光20の強度は、アンテナ厚が370nmの場合にピークに達する。アンテナ厚が370nmのときの出力光20の強度は、アンテナ厚が30nmのときの出力光20の強度に対して、11.5倍となる。
図8の解析結果に示されるように、中間層3を備えたメタサーフェス1Aにおいても、アンテナ厚を100nm〜400nmとすることによって光の変換効率の向上を実現可能という上記作用効果が奏されることがわかる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で変形し、又は他のものに適用してもよい。例えば上記の各数値には、設計上、計測上又は製造上等の誤差が含まれる。
上記実施形態において、V字型アンテナ素子4は、基板2上に設けられた金属層に形成された凹部であってもよい。具体的には、V字型アンテナ素子4は、いわゆるネガ型の素子であって、基板2の光出力面2bに密着層5を介して設けられた金属層にZ軸方向に窪むように設けられていてもよい。金属層は、Au(金)等の金属により形成されている。V字型アンテナ素子4の深さ(Z方向における寸法)は、100nm〜400nmであってもよいし、100nm〜200nmであってもよい。この場合、いわゆるネガ型として構成したV字型アンテナ素子4を備えるメタサーフェス1において、当該V字型アンテナ素子4による光の変換効率の向上を実現できる。
上記実施形態における複数のV字型アンテナ素子4は、第1〜第4アンテナ素子41〜44をX軸で反転してなる反転対称構造の第5〜第8アンテナ素子45〜48に代えて、第1〜第4アンテナ素子41〜44をY軸で反転してなる反転対称構造の第5〜第8アンテナ素子を含んでいてもよい。
1,1A…メタサーフェス、2…基板、2a…光入力面、2b…光出力面、4…V字型アンテナ素子、4x…第1腕部、4y…第2腕部、10…入力光、41…第1アンテナ素子(V字型アンテナ素子)、42…第2アンテナ素子(V字型アンテナ素子)、43…第3アンテナ素子(V字型アンテナ素子)、44…第4アンテナ素子(V字型アンテナ素子)、45…第5アンテナ素子(V字型アンテナ素子)、46…第6アンテナ素子(V字型アンテナ素子)、47…第7アンテナ素子(V字型アンテナ素子)、48…第8アンテナ素子(V字型アンテナ素子)。

Claims (6)

  1. 入力光が入力される光入力面及び該光入力面に対向する光出力面を有する基板と、
    前記基板の前記光出力面側に設けられ、第1腕部及び該第1腕部の一端に連続する第2腕部を有する複数のV字型アンテナ素子と、を備え、
    前記V字型アンテナ素子の厚み方向における寸法は、100nm〜400nmである、メタサーフェス。
  2. 前記V字型アンテナ素子の厚み方向における寸法は、100nm〜200nmである、請求項1に記載のメタサーフェス。
  3. 前記V字型アンテナ素子における前記第1腕部と前記第2腕部とがなす角度は、70度以上である、請求項1又は2に記載のメタサーフェス。
  4. 前記基板は、GaAs基板、ガラス基板、又は、Si基板である、請求項1〜3の何れか一項に記載のメタサーフェス。
  5. 前記V字型アンテナ素子は、前記基板上に設けられた凸部である、請求項1〜4の何れか一項に記載のメタサーフェス。
  6. 前記V字型アンテナ素子は、前記基板上に設けられた金属層に形成された凹部である、請求項1〜4の何れか一項に記載のメタサーフェス。
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