JP2016142996A - 光学素子およびテラヘルツ波発生光学デバイス - Google Patents

光学素子およびテラヘルツ波発生光学デバイス Download PDF

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永島 圭介
Keisuke Nagashima
圭介 永島
雅明 坪内
Masaaki Tsubouchi
雅明 坪内
義浩 越智
Yoshihiro Ochi
義浩 越智
桃子 圓山
Momoko Maruyama
桃子 圓山
芙美子 吉田
Fumiko Yoshida
芙美子 吉田
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Abstract

【課題】透過回折光を生じる光学素子の透過効率を高める。
【解決手段】光学素子は、所定の入射角で入射する光Wを受光する受光部1aを有し、光Wから透過回折光WD−1を生じる回折格子13と、回折格子13の受光部1aと反対側面に積層された薄膜層12と、を備えている。薄膜層12は、回折格子13側から順に中間層12bと、反射層12aと、を備えている。反射層12aの屈折率は、中間層12bの屈折率よりも小さく、反射層12aは、透過回折光WD−1に対する全反射条件を満たす。
【選択図】図2

Description

本発明は、光学素子、特に透過回折光を生成する光学素子およびそれを用いたテラヘルツ波発生光学デバイスに関する。
近年、略THzオーダ(例えば、0.1THz〜10THz程度)の周波数を持つテラヘルツ波と呼ばれる電磁波の工業、医療、バイオ、農業、セキュリティ等の様々な分野への応用展開が盛んになってきている。それに伴い、効率的にテラヘルツ波を発生することができる光学デバイスの研究が進められている。例えば、非線形光学結晶を用いた光学デバイスが提案されている。
図3は、非線形光学結晶を用いた光整流法の概念を表す模式図である。光整流法では、1つの非線形光学結晶95に対して、1つのポンプ光を入射する。非線形光学結晶95としては、例えば、ニオブ酸リチウム(LiNbO)を用いることができる。また、ポンプ光としてはピコ秒レーザを用いることができる。図3の例では、周波数ωおよび周波数ωを持つポンプ光が非線形光学結晶95に入射している。このとき、非線形光学結晶95から、光整流によって、2つの周波数の差に等しい周波数ω=ω−ωを持つ光が発生する。
光整流法では、テラヘルツ波を得るためには、位相整合条件を満たす、すなわち、非線形光学結晶の媒質中において、ポンプ光エネルギーの伝播する方向の群速度をテラヘルツ波の位相速度vTHzと等しくすることが求められる。つまり、ポンプ光が非線形光学結晶に入射すると、ポンプ光エネルギーの伝播する方向の群速度と等しい位相速度を有するテラヘルツ波が発生する。ここで、ポンプ光エネルギーの伝播する速度を表す真空中の群速度を、vgrとする。
位相整合条件を満たす方法の一つとして、パルス面傾斜法がある(非特許文献1参照)。図4はパルス面傾斜法の概念を表す模式図である。図4に示すように、パルス面傾斜法では、ポンプ光Wのパルス面s(パルスのエネルギーピークの位置を繋いだ面)を進行方向に対して傾斜させ、同じ位相で進行させている。ここで、当初のポンプ光Wの進行方向軸をx軸、パルス面の傾斜角度γ、x軸をγ回転させた軸をx’軸とする。このとき、x’軸方向にテラヘルツ波WTHzが出射するようにすると、位相整合条件は、vTHz=vgrcosγとなる。すなわち、パルス面の傾斜角によって、位相整合条件を充足させることができる。
図5は、パルス面傾斜法を用いてテラヘルツ波を発生する光学システムの一例である。このシステムは、反射型の回折格子91、レンズ92、レンズ93、半波長板94、非線形光学結晶95を備えている。図5に示すように、ポンプ光Wとしてのピコ秒レーザパルスが回折格子91に斜め方向から入射するようにされている。また、非線形光学結晶95は、一例として断面形状が直角三角形のいわゆるプリズム型としている。
ポンプ光Wは回折格子91によって非線形光学結晶95側に回折され、回折光Wとなる。このとき、回折光Wのパルス面は、ポンプ光Wの回折格子91による回折の光路差により、その進行方向に対して傾斜する。その後、回折光Wはレンズ92、レンズ93、半波長板94を透過し、非線形光学結晶95に入射する。この位相整合条件を満たす回折光Wが非線形光学結晶95の内部を伝播することにより、非線形光学結晶95の断面の斜辺に相当する面からテラヘルツ波WTHzが放射される。
Optics Express,Vol.10,Issue 21,pp.1161−1166(2002). Opt.Acta.28,414−428(1981). Qpt.Quantum Electron.37,309−330(2005).
テラヘルツ波を種々の技術に応用するためには、その出力を上げることが望まれる。テラヘルツ波の出力を上げる方法としては、ポンプ光の強度を高めたり、非線形光学結晶を大口径化したりすることが考えられる。
上述の図5のような光学システムでは、口径を大きくするに連れて非線形光学結晶に投影されるパルス面の歪が増大し、その歪がテラヘルツ波の発生効率の向上を阻害するという問題がある。また、テラヘルツ波の発生位置によって、非線形光学結晶の内部を進むテラヘルツ波の光学距離が異なるため、発生するテラヘルツ波の強度が不均一になるという問題もある。そのため、図5のような光学システムでは、大口径化が困難である。
このような問題を解決するために、非線形光学結晶上に透過型回折格子を設けた光学デバイスも提案されている。しかしながら、このような光学デバイスでは、非線形光学結晶としてLiNbOを用いた場合、透過回折効率が20%程度と低くなっているため、高出力のテラヘルツ波を発生することが困難である。
さらに、上述の光学デバイスの回折効率を高めるために、回折格子の表面を、空気の屈折率と非線形光学結晶の屈折率との間の屈折率を持つ媒体に浸す方法も提案されている。このような光学デバイスでは、透過回折効率は90%と高くなっている。しかしながら、このような光学デバイスは製造が容易ではない。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的の一つは、透過回折光を生じる光学素子の透過回折効率を高めることにある。
本発明の光学素子の好適な実施形態の一つでは、所定の入射角で入射する光を受光する受光部を有し、当該光から透過回折光を生じる回折格子と、前記回折格子の受光部と反対側面に積層された薄膜層と、を備え、前記薄膜層は、前記回折格子側から順に中間層と、反射層と、を備え、前記反射層の屈折率は、前記中間層の屈折率よりも小さく、前記反射層は、前記透過回折光に対する全反射条件を満たし、前記反射層は、前記透過回折光を部分的に前記非線形光学結晶側に透過させる膜厚を有する。
この構成では、回折格子に入射した光は、受光部で反射する反射光と、回折格子を透過する透過回折光となる。透過回折光は、回折格子と反射層との間で多重反射しつつ、所定条件を満たすと部分的に受光部側に透過する。この透過した光が、回折格子の受光部で反射された光を打ち消すと、反射率が低減し回折光の透過率が向上する。
本発明の光学素子の好適な実施形態の一つでは、前記中間層は、前記中間層から前記受光部側に透過する光によって、前記受光部での反射光を最小化する膜厚に設定されている。この構成では、中間層の膜厚を適切な値に設定することにより、受光部での反射光が最
小化されるため、透過率が最大化される。
本発明のテラヘルツ発生光学デバイスの好適な実施形態の一つでは、上述の光学素子と、前記透過回折光によってテラヘルツ波を発生する非線形光学結晶と、を備え、前記非線形光学結晶は、前記反射層の前記中間層側とは反対側面に設けられ、前記回折格子と前記非線形光学結晶とは、前記非線形光学結晶に伝播する前記透過回折光のパルス面の傾斜角が位相整合条件を満たし、前記非線形光学結晶は、前記中間層に対して全反射条件を満たさない屈折率を有する。
この構成では、光学素子から非線形光学結晶に透過回折光が伝播し、テラヘルツ波を発生することができる。ここで、この透過回折光は、上述の光学素子によって回折光の透過回折効率が高められているため、テラヘルツ波の発生効率も高めることができる。
本発明の光学デバイスの好適な実施形態の一つでは、前記非線形光学結晶の入光面と放射面とは互い平行な平面としている。そのため、発生したテラヘルツ波が非線形光学結晶の内部を進む距離は、その発生位置に依存せず一様となる。よって、発生するテラヘルツ波の空間分布が一様となる。
本発明によれば、透過回折光を生じる光学素子の透過回折効率を高めることができる。
実施形態における光学デバイスを用いた光学システムの概略図である。 実施形態における光学デバイスを示す図である。 光整流法の概念を表す模式図である。 パルス面傾斜法の概念を表す模式図である。 パルス面傾斜法を用いてテラヘルツ波を発生する光学システムを表す図である。 ポンプ光Wの入射角44.5度に対する、−1次回折光の透過回折効率の、回折格子の形状による依存性の分布の算出の例を示す図である。 光デバイスに対する入射光の効率の入射角依存性の例を示す図である。 (a)は、透過回折効率の最大値、当該透過回折効率が最大値を取るときの深さh、パラメータfの値の、反射層12aの膜厚の依存性を示すグラフである。(b)は、透過回折効率が最大値を取るときの、回折格子、中間層における電界の大きさの反射層12aの膜厚の依存性を示すグラフである。 (a)は、透過回折効率の最大値、当該透過回折効率が最大値を取るときの深さh、パラメータfの値の、中間層12bの膜厚の依存性を示すグラフである。(b)は、透過回折効率が最大値を取るときの、回折格子、中間層(layer)における電界の大きさの中間層12bの膜厚の依存性を示すグラフである。
以下に図面を用いて、光学素子およびテラヘルツ波発生光学デバイスの実施形態を説明する。図1は、本実施形態におけるテラヘルツ波を発生する光学システムの概略図である。図1に示すように、本実施形態における光学システムAは、光学デバイス1、ポンプ光発生源2を備えている。光学デバイス1は、テラヘルツ波発生光学デバイスの一例である。
ポンプ光発生源2としては、ピコ秒パルスレーザ等を用いることができる。本実施形態では、ポンプ光発生源2としてYb:YAGレーザを用い、ポンプ光Wpは1030nmの波長を有し、ピコ秒のパルス幅を有するパルス光としている。
光学デバイス1は、ポンプ光発生源2からのポンプ光Wを受光し、テラヘルツ波WTHzを発生する。本実施形態における光学デバイス1は略直方体状であり、略対向する受光部1aと放射部1bとを備えている。図1に示すように、ポンプ光Wは受光部1aに対して入射角θ(0°<θ<90°)で入射し、放射部1bからテラヘルツ波WTHzが放射される。
図2は、本実施形態における光学デバイス1を示す図である。図2に示すように、光学デバイス1は、非線形光学結晶11、薄膜層12、透過型の回折格子13を備えている。なお、回折格子13および薄膜層12(具体的には、反射層12aと中間層12b)は、光学素子の一例である
本実施形態における非線形光学結晶11では、ニオブ酸リチウム(LiNbO)が使用されている。本実施形態では、非線形光学結晶11は、直方体に形成されており、対向する入光面11aと放射面11b(放射部1b)とを備えている。本実施形態では、非線形光学結晶11の厚さは、2.2mmである。
非線形光学結晶11の入光面11a上には、薄膜層12が積層されている。薄膜層12の層数は適宜変更可能であるが、本実施形態では、反射層12a、中間層12b、バッファ層12cが形成されている。バッファ層12cは、エッチングによって回折格子13を形成する際に、エッチングの影響が中間層12b等に及ぶのを防止するために設けられており、中間層12bの組成等によっては設けられない場合もあり得る。バッファ層12cとして、エッチングされにくい、アルミナ等が使用され得る。中間層12bがエッチングされにくい物質である場合、バッファ層12cは、設けられなくてもよい。
これらの薄膜層12として、様々な誘電体を使用することができる。また、最適化する上で、薄膜層12の膜厚は適宜変更可能である。ただし、反射層12aと中間層12bとの境界が透過回折光に対して全反射条件となる必要がある。なお、全反射条件の充足は、反射層12aと中間層12bとの境界に対する入射角と、反射層12aの屈折率および中間層12bの屈折率によって規定される臨界角と、の関係によって決定される。本実施形態では、反射層12aは厚みが250nmのAl、中間層12bは厚みが120nmのTa、バッファ層12cは厚みが50nmのAlである。反射層12a、中間層12bは、これらに限定されるものではない。ポンプ光Wである1030nmの波長の光に対するTaおよびAlの屈折率はそれぞれ2.15および1.64となっている。反射層12a、中間層12bとして、タンタル酸化物、ハフニウム酸化物、チタン酸化物、ニオブ酸化物、アルミナ、石英等の誘電体が使用され得る。ただし、反射層12aの屈折率は、中間層12bの屈折率よりも小さいものとする。
バッファ層12c上には回折格子13が形成されている。回折格子13は、バッファ層12c上に形成された誘電体層に、断面形状が長方形状である複数のトレンチ13aが形成される構成を有する。隣接するトレンチ13aの間にはメサ13bが形成されている。本実施形態では、トレンチ13aの深さhは260nmであり、メサ13bの幅wは252nmとしている。この回折格子13の上面が受光部1aである。
回折格子の誘電体層は、屈折率の高い物質であり、本実施形態では、非線形光学結晶11のニオブ酸リチウムの屈折率に近い屈折率を持つ酸化タンタル(Ta)である。
上述したように、光学デバイス1の回折格子13は透過型であり、回折格子13に入射したポンプ光Wの透過回折光(以下、回折光と略称する)は、回折格子13、薄膜層12を透過し、非線形光学結晶11に伝播する。ここで、非線形光学結晶11がテラヘルツ
波WTHzを発生するためには、位相整合条件を満たす必要がある。光学デバイス1における位相整合条件は従来技術で示した位相整合条件と同様であるが、屈折率を用いて定義すると、
となる。ここで、θは回折光のパルス面の傾斜角、n(λ)およびn(λ)はそれぞれ波長λの光に対する非線形光学結晶11の群屈折率および屈折率であり、λおよびλTHzはそれぞれポンプ光Wおよびテラヘルツ波WTHzの真空中の波長である。本実施形態では、n(λ)=2.208およびn(λTHz)=4.9であるため、θ=63°となる。
回折格子13のピッチdおよびポンプ光Wの入射角θは、以下の−1次回折光の方程式によって決定することができる。
また、ポンプ光Wの入射角θと−1次回折光WD−1の回折角θ(図2参照)との関係は以下の式となる。
なお、これらの式において、空気の屈折率は1としている。本実施形態では、n(λ)=2.146であり、ポンプ光Wの入射角θ=44.5°とすると、回折格子13のピッチd=420nmとなる。
このように、入光面11aから入った回折光(−1次回折光WD−1)が非線形光学結晶11の内部を伝播する際に、テラヘルツ波WTHzが発生し、放射面11b(放射部1b)から放射される。なお、このとき、非線形光学結晶11の放射面11bから放射されるテラヘルツ波WTHzの放射角は46.8°となり、ポンプ光Wの入射角θ=44.5°に略平行となる。
発生するテラヘルツ波WTHzの出力を高める方法の一つは、非線形光学結晶11に入光する光を増大させることである。そのための方法の一つは、回折光の透過回折効率を高めることである。そのため、光学デバイス1では、以下に示すように干渉効果によって回折光の透過回折効率を高めている。
先ず、一般的なファブリペロー干渉計の仕組みを説明する。一般的なファブリペロー干渉計は、一対の反射鏡で媒質を挟み込んだ構成となっており、第1の反射鏡側から光を干渉計内に入射する。この光は、一部が第1の反射鏡表面で反射され、残りは媒質内に伝播する。媒質内に伝播した光は、一部が第2の反射鏡表面で反射され、残りは干渉計から出射する。ここで、第2の反射鏡で反射された光は媒質内を伝播し、第1の反射鏡に到達し、再度反射される。このとき、部分的に第1の反射鏡側から光が出射する。この第1の反射鏡側から出射した光は、所定の条件を満たした際に、第1の反射鏡で反射された光を打
ち消す。すなわち、第1の反射鏡での反射率が低下し、透過回折効率が向上する。この条件(ファブリペロー条件と称する)は、これらの光路差が光の半波長の整数倍であることが知られている。
光学素子は、回折格子13と、中間層12bと、反射層12aとによって、ファブリペロー干渉計に類似する構成となっている。この場合、回折格子13、中間層12b、反射層12aはそれぞれ、第1の反射鏡、媒質、第2の反射鏡に相当する。
まず、回折格子13の受光部1aにポンプ光Wが照射されると、受光部1aで反射される反射回折光と回折格子13を透過する透過回折光(−1次回折光WD−1等)とが生じる。発生した−1次回折光WD−1は、バッファ層12cを透過し、中間層12bに伝播する。
上述したように、反射層12aが全反射条件を満たすようにされているため、中間層12bに伝播した−1次回折光WD−1は、反射層12aと中間層12bとの境界付近で反射され、中間層12b内(回折格子13と反射層12aとの間)を多重反射する。このとき、所定の条件を充足すると多重反射する−1次回折光WD−1は部分的に受光部1a側に透過する。この透過した光が干渉によって受光部1aで反射された光を打ち消すと、反射率が低下し、透過回折効率が向上する。すなわち、受光部1aでの反射光を最小化すれば、透過回折効率が最大となる。
上述したように、一般的なファブリペロー干渉計では、光の光路差、すなわち、媒質の厚みによってファブリペロー条件を充足するか否かが決定される。光学素子も同様に、受光部1aでの反射率、すなわち、透過回折効率は、中間層12bの膜厚によって制御することができる。ただし、本発明の光学素子のように、反射層として全反射条件を有する薄膜を用いた場合には、反射位置が、媒質と反射層との境界ではなく、反射層の内部となる場合があり、必ずしもファブリペロー条件を充足するときに透過回折効率が最大とはならないことが本発明の発明者らの研究によって判明している。透過回折効率を最大化する中間層12bの膜厚は、数値計算や実験によって求めることができる。
このようにして、高い透過効率で透過した透過回折光を用いてテラヘルツ波を発生させるためには、この透過回折光を非線形光学結晶11に伝播させる必要がある。そのためには、透過回折光を部分的に、反射層12aを透過させなければならない。反射層12aは全反射条件を満たしているが、全反射条件を満たしても、中間層12bからの透過回折光が反射層12aに染み出して、中間層12bに反射される。よって、反射層12aの膜厚が、透過回折光が反射層12aに染み出す深さよりも小さければ、当該透過回折光が反射層12aを透過し得る。従って、反射層12aの膜厚によって光の透過率を制御することができる。テラヘルツ波発生光学デバイスでは、反射層12aの膜厚を実験や数値計算等によって求めた値としている。反射層12aの膜厚等の算出の具体例については、後に説明する。これにより−1次回折光WD−1を、非線形光学結晶11側に透過させることができる。
ここで、非線形光学結晶11の屈折率は、反射層12aの屈折率よりも大きくなっており、また、非線形光学結晶11は、中間層12bから見て全反射条件を充足しないようにされている。上述の実施形態では、中間層12b層のTaおよび非線形光学結晶11のLiNbOの屈折率は2.15、反射層12aのAlの屈折率は1.64である。このような構成により、反射層12aと非線形光学結晶11との境界に達した−1次回折光WD−1は、この境界で反射されることなく、非線形光学結晶11の内部に伝播する。
このようにして回折光の透過効率を高めることにより、非線形光学結晶11に伝播する−1次回折光WD−1の強度が高まり、テラヘルツ波の発生効率を高めることができる。
また、本実施形態では、非線形光学結晶11は直方体状に構成されているため、入光面11aと放射面11bとは平行な平面となっている。そのため、発生したテラヘルツ波WTHzが非線形光学結晶11の内部を進む距離は、その発生位置に依存せず一様となる。よって、発生するテラヘルツ波WTHzの空間分布が一様となる。
さらに、本実施形態の光学デバイス1では、図5の従来の光学システムのようなポンプ光Wの波面の歪は生じない。そのため、本発明に係る光学デバイスでは、大口径化も比較的容易となる。本実施形態の光学デバイス1によれば、回折格子と非線形光学結晶との間に薄膜層を設ける構成により、テラヘルツ波に変換されるポンプ光の利用効率が、従来の構成に比べて大きくなる。
なお、本実施形態における光学デバイス1の構成は一例であり、非線形光学結晶11,薄膜層12,回折格子13の構成は、ポンプ光Wの波長および入射角θ,テラヘルツ波WTHzの波長等に応じて変更することができる。また、本実施形態では、中間層12bは1層としたが、複数層で中間層12bを構成しても構わない。複数の中間層12bを設けることで、様々な条件に対応した光デバイスを構成することが容易になり得る。
(光デバイスにおける回折格子の形状等の算出の具体例)
光デバイス1における回折格子13の形状、薄膜層12の膜厚等の算出の具体例について説明する。ここでは、ポンプ光の波長1030nm、ポンプ光の入射角44.5度に対する光デバイス1における回折格子13の形状、薄膜層12の膜厚等を算出する例を示す。
光デバイス1の回折格子13の形状等は、光デバイス1の−1次回折光の透過回折効率が大きくなるように、決定される。回折格子13の形状は、トレンチ13aの深さh、メサ13bの幅w、回折格子13のピッチdによって定義される。ここで、パラメータfを、f=w/dとする。パラメータfは、回折格子13のピッチdに対するメサ13bの幅の割合を示す値である。回折格子13は、メサbの幅が小さすぎず、かつ、トレンチの溝の幅(d−w)が小さすぎない構成であると、容易に作成され得る。よって、f=0.5に近い値であることが好ましい。光デバイス1の−1次回折光の透過回折効率は、回折格子13の形状、薄膜層の膜厚、屈折率等に依存する。光デバイス1の透過回折効率は、Maxwell方程式、回折格子の式(非特許文献2、3参照)に、入射光の入射角、波長、回折格子の形状、薄膜層の膜厚、屈折率等の条件を与えることにより、算出される。
図6は、ポンプ光Wの入射角44.5度に対する、−1次回折光の透過回折効率の、回折格子の形状による依存性の分布の算出の例を示す図である。図6の分布において、横軸はパラメータf、縦軸はトレンチ13aの深さhである。ここでは、中間層12b(Ta)の膜厚を130nm、反射層12a(Al)の膜厚を250nmとしている。また、バッファ層12cは、ないものとしている。図6の分布において、fが0.5から0.6程度、hが0.2μmから0.3μm程度の範囲で、透過回折効率が0.7以上となっている。また、図6の分布では、f=0.55、h=0.25μmで、透過回折効率が最大値0.811をとっている。
図7は、光デバイスに対する入射光の透過率、反射率(効率)の入射角依存性の例を示す図である。図7の例は、図6で透過回折効率が最大値をとる条件における、0次透過光(0th trans)、−1次透過光(−1st trans:−1次回折光)、0次反射光(0th ref)、−1次反射光(−1st ref)の各効率の入射角依存性
である。図7のグラフでは、ポンプ光Wの入射角44.5度付近で、−1次回折光の透過率(透過回折効率)が最大となっている。また、ポンプ光Wの入射角44.5度付近で、0次の反射光及び0次の透過光は最小となっている。さらに、−1次回折光のピークが、10度程度の広い半値幅を有しており、入射角が多少ずれたとしても、当該光デバイスは大きい透過率を得られることが分かる。−1次回折光のピークが広い半値幅を有する条件が好ましい。−1次回折光のピークの半値幅が小さい場合は、膜厚等の条件を変更して半値幅が大きくなるようにすることが好ましい。
図6のような、透過回折効率の、回折格子の形状による依存性の分布は、薄膜層の膜厚等を変更して、様々な条件で算出され得る。
図8(a)は、透過回折効率の最大値(effi)、当該透過回折効率が最大値を取るときの深さh、パラメータfの値の、反射層12aの膜厚の依存性を示すグラフである。図8(a)のグラフの横軸は反射層12aの膜厚、縦軸は透過回折効率の最大値、深さh又はパラメータfの値をとる。ここで、中間層12bの膜厚は130nmで固定している。図8(a)のグラフにおいて、反射層12aの膜厚が250nmから300nmにおいて、透過回折効率が0.8程度の値をとる。従って、反射層12aの膜厚は、この範囲にすることが好ましい。図8(a)のグラフにおいて、透過回折効率が最大値を取るとき、回折格子13のトレンチ13aの深さhはほとんど同じ値をとるが、パラメータfの値は反射層12aの膜厚が大きくなるのにしたがって小さくなる。
図8(b)は、透過回折効率が最大値を取るときの、回折格子(grating)、中間層(layer)における電界の大きさの反射層12aの膜厚の依存性を示すグラフである。図8(b)のグラフの横軸は反射層12aの膜厚、縦軸は回折格子または中間層におけるポンプ光入射時の電界の大きさである。電界が大きいほど、素子が壊れやすくなるため、電界は小さいほうが好ましい。透過回折効率が最大値付近の0.8程度の値を取る反射層12aの膜厚が250nmから300nmにおいて、電界の値が最も小さいのは、250nmである。よって、図8(a)(b)から、反射層12aの膜厚として、250nmが好ましいことが分かる。
図9(a)は、透過回折効率の最大値(effi)、当該透過回折効率が最大値を取るときの深さh、パラメータfの値の、中間層12bの膜厚の依存性を示すグラフである。図9のグラフの横軸は中間層12bの膜厚、縦軸は透過回折効率の最大値、深さh又はパラメータfの値をとる。ここで、反射層12aの膜厚は250nmで固定している。図9のグラフにおいて、中間層12bの膜厚が100nmから150nmにおいて、透過回折効率が0.8程度の値をとる。従って、中間層12bの膜厚は、この範囲にすることが好ましい。図9のグラフにおいて、透過回折効率が最大値を取るとき、回折格子13のトレンチ13aの深さhはほとんど同じ値をとるが、パラメータfは中間層12bの膜厚に応じて大きく変化する。
図9(b)は、透過回折効率が最大値を取るときの、回折格子(grating)、中間層(layer)における電界の大きさの中間層12bの膜厚の依存性を示すグラフである。図9(b)のグラフの横軸は中間層12bの膜厚、縦軸は回折格子または中間層におけるポンプ光入射時の電界の大きさである。透過回折効率が最大値付近の0.8程度の値を取る中間層12bの膜厚が100nmから150nmにおいて、電界の値は、中間層12bの膜厚にほとんど依存しない。よって、図9(a)(b)から、中間層12bの膜厚として、100nmから150nmが好ましいことが分かる。ここでは、中間層12bの膜厚として、130nmを採用する。
以上のようにして、光デバイス1の形状として、回折格子13のトレンチ13aの深さ
h=0.25μm、パラメータf=0.55、中間層12b(Ta)の膜厚130nm、反射層12a(Al)の膜厚250nmが、算出される。この算出例は、一例であり、ポンプ光Wの波長および入射角θ、テラヘルツ波WTHzの波長等に応じて、各値は変化する。また、この算出例ではバッファ層12cを設けない場合について算出しているが、バッファ層12cを設ける場合についても、上記の例と同様にして、バッファ層12cの膜厚を含む各値が算出され得る。光デバイス1の形状は、他の方法によって算出されてもよい。
光学素子は、透過回折光を利用する光学システムに利用することができる。また、テラヘルツ波発生光学デバイスは、テラヘルツ波の発生技術に利用することができる。発生したテラヘルツ波は、工業、医療、バイオ、農業、セキュリティをはじめとして、種々の分野に適用することができる。
A:光学システム
D−1:−1次回折光(透過回折光、回折光)
:ポンプ光
THz:テラヘルツ波
s:パルス面
θ:入射角
θ:回折角
θ:傾斜角
1:光学デバイス
1a:受光部
11:非線形光学結晶
12:薄膜層
12a:反射層(薄膜層)
12b:中間層(薄膜層)
12c:バッファ層
13:回折格子

Claims (5)

  1. 所定の入射角で入射する光を受光する受光部を有し、当該光から透過回折光を生じる回折格子と、
    前記回折格子の前記受光部と反対側面に積層された薄膜層と、を備え、
    前記薄膜層は、前記回折格子側から順に中間層と、反射層と、を備え、
    前記反射層の屈折率は、前記中間層の屈折率よりも小さく、
    前記反射層は、前記透過回折光に対する全反射条件を満たし、前記透過回折光を部分的に透過させる膜厚を有する
    光学素子。
  2. 前記中間層は、前記中間層から前記受光部側に透過する光によって、前記受光部での反射光を最小化する膜厚に設定されている請求項1に記載の光学素子。
  3. 前記薄膜層は、前記回折格子側に、前記中間層と異なる物質によるバッファ層をさらに備える
    請求項1又は2に記載の光学素子。
  4. 請求項1から3のいずれか1項に記載の光学素子と、
    前記透過回折光によってテラヘルツ波を発生する非線形光学結晶と、を備え、
    前記非線形光学結晶は、前記反射層の前記中間層側とは反対側面に設けられ、
    前記回折格子と前記非線形光学結晶とは、前記非線形光学結晶に伝播する前記透過回折光のパルス面の傾斜角が位相整合条件を満たし、
    前記非線形光学結晶は、前記中間層に対して全反射条件を満たさない屈折率を有する、
    テラヘルツ波発生光学デバイス。
  5. 前記非線形光学結晶の入光面と放射面とは互い平行な平面で構成されている請求項4に記載のテラヘルツ波発生光学デバイス。
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JP2019191412A (ja) * 2018-04-26 2019-10-31 浜松ホトニクス株式会社 量子カスケードレーザ

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