JP2018044564A - 運転支援装置、運転支援方法 - Google Patents
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Abstract
Description
同様なことは、オートマチックトランスミッション車(以下、AT車)の場合にも当て嵌まる。すなわち、AT車の場合は、トランスミッションのシフトアップあるいはシフトダウンは自動で行われるが、シフトアップあるいはシフトダウンしてから、次にシフトアップあるいはシフトダウンするまでの間は、エンジン回転速度と車速とが一対一に対応する。従って、AT車の場合も、運転者はエンジン回転速度の変化に基づいて、大まかな車速の変化を認識しながら車両を運転している。
例えば、穏やかで長い下り坂を走行する場合、車速が少しずつ増加すると、それに伴ってエンジン回転速度も少しずつ増加していく。ところが、エンジン回転速度の増加が少しずつなので運転者がそのことに気付かず、一定速度で走行しているものと勘違いしてしまい、その結果として速度超過することが起こり得る。
長い上り坂を走行する場合にも同様なことが起こり得る。すなわち、上り坂によって車速が少しずつ減少するために、一定速度で走行しているものと運転者が勘違いしてしまい、その結果として、車速の低下に気付くのが遅れてしまうことが起こり得る。
例えば、高速道路を走行する場合は、長い時間に亘って、エンジン回転速度の変化が小さい状態が継続する。その後、高速道路を降りて一般道に合流するために車速を低下させるが、それまでの長い時間に亘って、エンジン回転速度の変化が小さい状態が続いていたために、このときのエンジン回転速度の低下を大きく感じてしまう。その結果、減速が不十分であるにも拘わらず十分に減速したものと勘違いしてしまうことが起こり得る。
詳細に理由については後ほど詳しく説明するが、こうすれば、運転者が車速の変化状況を勘違いして、車速の超過や低下が発生することを実用的な方法で抑制することが可能となる。
A.装置構成 :
図1には、本実施例の運転支援装置100を搭載した車両1の大まかな構成が示されている。図示されるように、車両1には、運転支援装置100に加えて、車両1を操舵するためのハンドル2や、タイヤ3や、タイヤ3の回転速度に基づいて車両1の走行速度(以下、車速)を検出する車速センサー4などが搭載されている。また、車両1には、駆動力を発生するエンジン20や、エンジン20が発生した駆動力を減速してタイヤ3に向かって出力する減速機10や、ナビゲーション装置30なども搭載されている。
また、エンジン20は、燃焼室内で燃料を燃焼させて駆動力を発生するいわゆる内燃機関であり、エンジン20が駆動力を発生する動作は、エンジンECU21によって制御されている。
更に、ナビゲーション装置30は、車両1の現在位置を検出する機能や、地図情報を記憶しておく機能や、現在位置を含んだ周囲の地図情報を読み出して、図示しないモニター画面に表示する機能や、運転者によって設定された目的地までの経路を探索する機能や、探索した経路に従って道案内する機能などを備えている。
このように車両1の運転者は、速度計で車速を確認することなく、車速を上げる必要があるのか、下げる必要があるのかを感覚的に判断して、アクセルペダルを操作しながら運転していることも珍しいことではない。
そこで、本実施例の運転支援装置100は、車速センサー4からは車速の情報を取得し、ナビゲーション装置30からは車両1の現在位置や地図情報を受け取り、更に、減速機ECU11やエンジンECU21と通信して種々の情報を取得する。そして、必要に応じて、減速機ECU11に対して減速比の変更を指示し、更に、エンジンECU21に対して駆動力の増減を指示する。こうすれば、運転者が車速の変化状況を勘違いして車速が超過したり、低下したりする事態の発生を抑制することが可能となる。以下、このような本実施例の運転支援装置100について詳しく説明する。
尚、以下に説明するように、本実施例の運転支援装置100は、ナビゲーション装置30が備える機能のうち、車両1の現在位置を検出する機能と、地図情報を記憶しておき、必要に応じて読み出す機能とを専ら利用しており、他の機能については利用していない。従って、ナビゲーション装置30の代わりに、これらの機能を備える機器(例えば、ロケーターと呼ばれる機器)を用いることとしてもよい。
尚、これらの「部」は、本実施例の運転支援装置100が車速の超過や低下を抑制するために各種の機能を備えていることに着目して、運転支援装置100の内部を便宜的に分類した抽象的な概念である。従って、運転支援装置100がこれらの「部」に物理的に区分されていることを表すものではない。これらの「部」は、CPUで実行されるコンピュータープログラムとして実現することもできるし、LSIやメモリーを含む電子回路として実現することもできるし、更にはこれらを組合せることによって実現することもできる。本実施例では、運転支援装置100は、CPUやROMやRAMなどを備えたマイクロコンピューターによって主に形成されており、従って上記の「部」はCPUが実行するコンピュータープログラムによって主に実現されている。
実変化量算出部102は、車速取得部101で取得された車速の情報に基づいて、単位時間あたりでの車速の実際の変化量(以下、実変化量)を、正負の符号を識別した状態で算出する。尚、実変化量を算出するに際しては、車速を取得する時間間隔よりも十分に長い時間(例えば5秒〜10秒)で車速を平均した後、平均化した車速を用いて算出する。あるいは、単位時間あたりの車速の変化量の代わりに、単位距離を走行する間の車速の変化量を算出することとしても良い。
現在位置取得部103は、ナビゲーション装置30に内蔵された現在位置検出部31に接続されており、車両1の現在位値の情報を取得する。
地図情報取得部104は、ナビゲーション装置30に内蔵された地図情報記憶部32に接続されており、車両1の現在位値の周辺の地図情報を取得する。この地図情報には、道路の制限速度についての情報や、運転者が車速の変化状況を勘違いし易い区間として予め設定された対象区間についての情報も含まれている。
また、車両1の進む方向に向かって前方で制限速度が増加している場合には、車速を増加させるべきと考えられる。車速を増加させる傾きは、増加前の制限速度が設定されている地点から、増加後の制限速度が設定された地点までの間に、車速が一定割合で増加するような傾きとすればよい。すると、制限速度が切り換わる2つの地点の距離を、2つの制限速度の平均速度で走行するものと考えれば、単位時間あたりにどの程度の大きさで車速を増加させるべきかを決定することができるので、目標変化量を求めることができる。
また、車両1の進行方向前方で制限速度が減少している場合にも、全く同様の考え方に基づいて、単位時間あたりに車速を減少させるべき大きさ(すなわち、目標変化量)を求めることができる。もちろん、実変化量の場合と同様に、目標変化量についても、単位時間あたりの変化量の代わりに、単位距離あたりの変化量を求めることとしても良い。
また、目標変化量取得部105は、常に車速の目標変化量を取得するのではなく、車両1の現在位置が、地図情報に設定された対象区間内にあると判断した場合に、目標変化量を取得するようにしても良い。あるいは、車速と制限速度との速度差が、所定の閾値速度以上大きくなった場合に、車速の目標変化量を取得するようにしても良い。
一方、実変化量が目標変化量に対して許容範囲内に無く、且つ、実変化量が目標変化量よりも小さかった旨の判断結果を、許容判断部106から受け取った場合には、減速比変更部107は、減速機ECU11に対して、減速機10の減速比を増加させる指示を出力する。車両1の走行中に減速機10の減速比を増加させれば、エンジン回転速度が減少する。詳細には後述するが、こうすれば、運転者が車速の変化状況を勘違いして、気付かない間に車速が制限速度を下まわっていた場合でも、そのことを運転者に気付かせることが可能となる。
エンジン駆動力補正部108は、減速比変更部107から受け取った情報に基づいて、減速比の変更に伴うエンジン20の駆動力の増減を補正するべく、エンジン20が出力する駆動力を補正する旨の指示を、エンジンECU21に対して出力する。こうすることによって、減速比を変更させることによってエンジン回転速度を変化させた場合でも、そのことに伴ってエンジンが出力する駆動力の変化を抑制することも可能となる。
以下、こうしたことを実現するために運転支援装置100が実行する運転支援処理について説明する。
図3には、本実施例の運転支援装置100が実行する運転支援処理のフローチャートが示されている。図示されるように、運転支援処理を開始すると先ず始めに、車速センサー4から車速を取得する(S100)。
続いて、車両1の現在位置と、現在位置を含んだ周辺の地図情報とを、ナビゲーション装置30から取得する(S101)。尚、本実施例では、これらの情報をナビゲーション装置30から取得することとしているが、ナビゲーション装置30に限らず、いわゆるロケーターから取得しても構わない。
例えば、図4(a)に示すように、小さな勾配の長い下り坂では、運転者が気付かないうちに少しずつ車速が増加して、いつの間にか車速が制限速度を大きく超過する虞がある。そこで、このような虞のある区間は、対象区間として地図情報に予め設定されている。
また、図4(b)に示すように、小さな勾配の長い上り坂では、運転者が気付かないうちに少しずつ車速が低下して、いつの間にか車速が制限速度を大幅に下まわる虞がある。あるいは、図4(c)に示すように、下り坂の後に平坦路を介して上り坂が続くいわゆるサグと呼ばれる区間では、上り坂に差し掛かる辺りで、運転者が気付かない間に車速が低下し、そこに下り坂で車速が増加した車両が近付く虞がある。そこで、これらの区間も、対象区間として地図情報に予め設定されている。
その結果、車両1の現在位置が対象区間内に無かった場合は(S102:no)、運転者が車速の変化状況を勘違いして制限速度の超過や低下を引き起こす虞は無いと考えられるので、後述する減速比変更処理を行うことなく、運転を終了するか否かを判断する(S108)。そして、運転を終了しない場合は(S108:no)、処理の先頭に戻って、再び車速を取得し(S100)、車両1の現在位置および地図情報を取得して(S101)、車両1の現在位置が対象区間内にあるか否かを判断する(S102)。
尚、ここでは、あるべき車速は運転支援装置100が決定するものとして説明するが、制限速度の情報と同様に、あるべき車速についての情報も地図情報に記憶しておき、車両1の現在位置に応じて、地図情報に記憶されたあるべき車速も読み出すようにしても良い。
例えば、制限速度が一定の区間であれば、車両1は車速を維持して走行するべきであると考えられるので、車速の目標変化量は「0」と決定することができる。
また、車両1の進行方向前方で制限速度が変化している場合は、現在の制限速度Vnが設定されている地点から、変化後の制限速度Vfが設定されている地点までの距離をΔLとすると、ΔLの距離をかけて、車速をVf−Vn変化させればよい。そして、その間の平均車速は、(Vf+Vn)/2と考えて良いから、車速の目標変化量は、
車速の目標変化量 = (Vf−Vn)・(Vf+Vn)/2ΔL
によって算出することができる。この計算式から明らかなように、車速を増加させるべき状況では、車速の目標変化量は正の値となり、車速を減少させるべき状況では負の値となる。
あるいは、車両1の外部のサーバーに無線でアクセスすることによって、車両1の現在位置に対応する目標変化量を取得するようにしても良い。
その結果、実変化量が目標変化量に対して許容範囲内にあった場合は(S106:yes)、運転者が車速の変化状況を勘違いしていないと考えられるので、後述する減速比変更処理を行うことなく、運転を終了するか否かを判断する(S108)。そして、運転を終了しない場合は(S108:no)、処理の先頭に戻って、再び車速を取得した後(S100)、上述した続く一連の処理(S101〜S106)を実行する。
その結果、実際の車速と、あるべき車速との偏差が閾値速度よりも小さかった場合は(S107:no)、まだ車速は、あるべき車速から大きくは異なっておらず、実害は生じていないと考えられるので、後述する減速比変更処理を行うことなく、運転を終了するか否かを判断し(S108)、運転を終了しない場合は(S108:no)、先頭に戻って、再び車速を取得し(S100)、上述した続く一連の処理を実行する。
これに対して、実際の車速と、あるべき車速との偏差が閾値速度よりも大きかった場合は(S107:yes)、運転者が車速の変化状況を勘違いしており、実際の車速があるべき車速を大きく超過したり、下まわったりする可能性があると判断して、後述する減速比変更処理(S200)を開始する。
これに対して実際の車速は次第に増加していくから、車速の実変化量は正の値となる。ここで、前述したように、実変化量とは、単位時間あたりの実際の車速の変化量である。そして、この実変化量が、目標変化量に対して許容範囲を超えて大きい場合には、下り坂に差し掛かったことに運転者が気付いていない可能性があるので、実際の車速が、制限速度+閾値速度を超えた時点(図5では時点Ta)で、減速比変更処理を開始するものと判断する。
こうして減速比変更処理を開始すれば、以下のような理由から、運転者が車速の変化状況を勘違いして車速が制限速度(あるいはあるべき車速)を超過したり、下まわったりする事態を抑制することが可能となる。
以下では、運転者が車速の変化状況を勘違いする事態を、減速比変更処理を実行することによって抑制することが可能な理由について説明する。
このときのエンジン回転速度は、減速機10の減速比が変更されない限り、実際の車速の増加に従って増加していく。しかし、車速の増加が少しずつなので、エンジン回転速度も少しずつしか増加せず、運転者はエンジン回転速度が増加していることに気付くことは難しい。図7(c)に示した実線は、車速の増加に伴ってエンジン回転速度が増加する様子を表している。また、図中に示した破線は、制限速度で走行する場合のエンジン回転速度を表している。
尚、減速機10の減速比を変更する際に、減速比を大幅に高くすると、エンジン回転速度も大きく増加するので、運転者がいわゆる変速ショックを感じたり、あるいは不自然な状況で変速段が切り換わったと感じたりする虞がある。そこで、減速比を高くする程度は、こうした虞が生じる程には高くないが、エンジン回転速度が増加していることに運転者が気付くことができる程度には高い値に設定しておく必要がある。
このときのエンジン回転速度は、減速機10の減速比が変更されない限り、車速の減少に従って減少していくが、車速の減少が少しずつなので、エンジン回転速度の減少も少しずつとなる(図8(c)参照)。このため、運転者はエンジン回転速度の減少に気付くことは難しい。
尚、減速機10の減速比を高くする場合と同様に、減速比を低くする場合も、大幅に減速比を低くするとエンジン回転速度も大きく減少するので、いわゆる変速ショックが生じたり、あるいは不自然な状況で変速段が切り換わったと運転者に感じさせたりする虞がある。そこで、減速比を低くする程度についても、こうした虞が生じる程には大幅に低くはないが、エンジン回転速度が減少していることに運転者が気付くことができる程度には低くする必要がある。
図9には、高速道路から一般道に合流する場合を例に用いて、上述した考え方を適用する大まかな方法が示されている。高速道路の制限速度は高く、一般道の制限速度は低いから、車両1のあるべき車速は、図9(a)中に破線で示すように、ある程度の傾きで減少させていく必要がある。ところが、高速道路を走行してきた運転者は、実際の車速の減少量を実際よりも大きく感じてしまうため、図9(a)中に実線で示したように、実際の車速の減少が不十分となってしまうことがある。
このときのエンジン回転速度は、減速機10の減速比が変更されない限り、車速の減少に従って減少していく。図9(b)の実線は、車速の減少に伴ってエンジン回転速度が減少していく様子を表しているが、運転者は一般道に合流するために車速を減少させているから、このようにエンジン回転速度が減少するのは何ら不思議なことではない。このため、実際の車速の減少が不十分なことにも、なかなか気付くことができない。
上述したように、運転者は意図して車速を減少させており、車速の減少に伴ってエンジン回転速度も減少するものと思っている。従って、図9(b)中の一点鎖線で示したようにエンジン回転速度がなかなか減少しないと、車速の減少が不十分と思うようになり、その結果、実際の車速の減少が不十分であることを、運転者に気付かせることが可能となる。
尚、減速機10の減速比を変更する際に、減速比を大幅に高くすると、エンジン回転速度も大きく増加するので、このときのエンジン回転速度の増加が、車速の減少に伴うエンジン回転速度の減少を上回ってしまう可能性がある。すると、車速は減少しているにも拘わらず、エンジン回転速度は増加することになって運転者に不自然な感じを与えてしまう虞がある。そこで、減速比を高くする程度は、こうした虞が生じない範囲で高い値に設定しておく必要がある。
このときのエンジン回転速度は、減速機10の減速比が変更されない限り、車速の増加に従って増加していく(図10(b)の実線を参照)。運転者は意図して車速を増加させているから、このようにエンジン回転速度が増加するのは、運転者に取って何ら不思議なことではない。このため、実際の車速の増加が不十分なことにも、なかなか気付くことが難しい。
上述したように、運転者は意図して車速を増加させており、車速の増加に伴ってエンジン回転速度も増加するものと思っている。従って、図10(b)中の一点鎖線で示したようにエンジン回転速度がなかなか増加しないと、車速の増加が不十分と思うようになり、その結果、実際の車速の増加が不十分であることを、運転者に気付かせることが可能となる。
図11には、減速比を変更することによって車速の超過あるいは低下を運転者に気付かせる方法を、様々な状況に対して適用可能とするため一般化した結果がまとめられている。一般化するに際しては、車両1が走行する道路を、「車速を維持して走行すべき区間」と、「車速を減少させるべき区間」と、「車速を増加させるべき区間」とに分類する。
また、それらの区間を実際に車両1が走行する状況を、「車速の実変化量が、(その区間の)目標変化量より大きい場合」と、「車速の実変化量が、目標変化量より小さい場合」とに分類する。
すると、減速比を変更して車速の超過あるいは低下を運転者に気付かせなければならない状況は、これらの2つの分類を組合わせて得られる6つの類型の何れかに分類することができる。
また、図8を用いて前述したように、長い上り坂の走行中に実際の車速が制限速度を下まわる状況は、「車速を維持すべき区間」で「車速の実変化量が目標変化量よりも小さい場合」に該当する。この場合、本来は一定であるべきエンジン回転速度が、少しずつ減少していく状況だから、そのエンジン回転速度の減少を目立たせるように(すなわち、エンジン回転速度の減少量が大きくなるように)、減速比を低くする。
更に、制限速度が高い道路から低い道路に合流する際に、実際の車速を過剰に減少させる場合も起こり得る。仮に、このようなことが起きたとすると、その状況は、「車速を減少させるべき区間」で「車速の実変化量が目標変化量よりも小さい場合」に該当する。この場合は、車速の減少に伴って減少するエンジン回転速度の減少量が、本来の減少量に対して過剰になっている状況だから、エンジン回転速度の減少量が過剰になっていることを目立たせるように(すなわち、エンジン回転速度の減少量が更に大きくなるように)、減速比を低くすればよい。
更に、制限速度が低い道路から高い道路に合流する際に、実際の車速を過剰に増加させる場合も起こり得る。仮に、このようなことが起きたとすると、その状況は、「車速を増加させるべき区間」で「車速の実変化量が目標変化量よりも大きい場合」に該当する。この場合は、車速の増加に伴って増加するエンジン回転速度の増加量が、本来の増加量に対して過剰になっている状況だから、エンジン回転速度の増加量が過剰になっていることを目立たせるように(すなわち、エンジン回転速度の増加量が更に大きくなるように)、減速比を高くすればよい。
そこで、本実施例の運転支援装置100は、車両1が対象区間(すなわち、運転者の気付かない間に車速の超過や低下が起こり易い区間)を走行しており(図3のS102:yes)、実際の車速の変化量(すなわち実変化量)が、あるべき車速の変化量(すなわち目標変化量)に対して許容範囲内になく(S106:no)、更に、実際の車速とあるべき車速との偏差が閾値速度よりも大きい場合には(S107:yes)、以下に説明する減速比変更処理を行うことによって、車速の超過や低下を運転者に気付かせることとしている。
図12および図13には、本実施例の運転支援装置100が実行する減速比変更処理のフローチャートが示されている。
図12に示されるように、減速比変更処理(S200)を開始すると、先ず始めに、前回に減速比を変更してから所定時間が経過したか否かを判断する(S201)。図11を用いて前述したように、減速比変更処理は、実際のエンジン回転速度と、あるべきエンジン回転速度との変化量の違いが強調されるように、エンジン回転速度を変化させることによって、実際の車速の変化状況を運転者に気付かせることを原理としている。従って、減速比を変更しても、運転者が実際の車速の変化状況に気付くまでには、ある程度の時間が掛かると考えられる。
そこで、前回に減速比を変更してから所定時間が経過したか否かを判断して(S201)、所定時間が経過していない場合は(S201:no)、そのまま減速比変更処理を終了して、図3の運転支援処理に復帰する。そして、運転支援処理では、再び、減速比変更処理が開始されて(S200)、所定時間が経過したか否かが判断される(S201)。
ここで、所定値Δeは比較的小さな値に設定されている。このため、目標変化量の絶対値が所定値Δeよりも小さかった場合は(S203:no)、目標変化量が変化していない状況、すなわち、図11に示した分類では、「車速を維持すべき区間」に該当すると考えて良い。
その結果、実変化量が目標変化量よりも大きかった場合は(S204:yes)、図11の6つの類型では、上段の左側の類型、すなわち「車速を維持すべき区間」で「車速の実変化量が目標変化量よりも大きい場合」に該当する。
そこで、この場合(S204:yes)は、現状減速比に所定の一定値を加算して、得られた減速比を減速機10の目標減速比に設定する(S205)。ここで、目標減速比とは、減速機10を制御している減速機ECU11に対して、運転支援装置100から制御目標として出力される減速比である。この点については後ほど説明する。
尚、現状減速比に対して目標減速比が大きく異なるとエンジン回転速度も大きく変化するので、いわゆる変速ショックが生じたり、あるいは不自然な状況で変速段が切り換わったと運転者に感じさせたりする虞がある。そこで、現状減速比に対して加算される所定の一定値は、こうした虞が生じない程度の大きさに設定されている。
そこで、この場合(S204:no)は、現状減速比から所定の一定値を減算して、得られた減速比を減速機10の目標減速比に設定する(S206)。尚、現状減速比から減算する一定値は、S205で現状減速比に対して加算する一定値と同じ値に設定されている。このため、現状減速比に対して目標減速比が大幅に低くなってしまうことが無く、従って、変速ショックが生じたり、不自然な状況で変速段が切り換わったと運転者に感じさせたりする虞は生じない。もちろん、こうした虞が生じない範囲であれば、S205で現状減速比に対して加算される一定値と、S206で現状減速比から減算される一定値とは、異なる値としても構わない。
これに対して、目標変化量の絶対値が所定値Δeよりも大きかった場合は(S203:yes)、今度は、目標変化量が正の値か否かを判断する(S207)。その結果、目標変化量が正の値ではなかった場合は(S207:no)、図11に示した分類では、「車速を減少させるべき区間」に該当すると考えて良い。そこでこの場合も、S203で「no」と判断した場合と同様に、続いて、車速の実変化量が、車速の目標変化量よりも大きいか否かを判断する(S208)。
そこで、この場合(S208:yes)は、エンジン回転速度を増加させない範囲で、現状減速比よりも高い目標減速比を設定する(S209)。すなわち、車両1は車速を減少させるべき区間を走行しているから、実際の車速も減少していると考えられ、これに伴って実際のエンジン回転速度も減少していると考えられる。一方、減速機10の減速比を高くするとエンジン回転速度が増加するので、減速比をあまりに高くすると、減速比を高くしたことによるエンジン回転速度の増加が、車速の減少によるエンジン回転速度の減少よりも大きくなってしまう。その結果、車速は減少しているにも拘わらず、エンジン回転速度は増加することになって運転者に不自然な感じを与えてしまう虞がある。そこで、S209では、エンジン回転速度を増加させない範囲で、現状減速比よりも高い目標減速比を設定する。
そこで、この場合(S208:no)は、現状減速比から所定の一定値を減算して、得られた減速比を減速機10の目標減速比に設定する(S210)。尚、現状減速比から減算する一定値は、S206で現状減速比から減算する一定値と同じ値に設定されている。もちろん、変速ショックが生じたり、不自然な状況で変速段が切り換わったと運転者に感じさせたりする虞が生じない範囲であれば、S206で現状減速比から減算する一定値と、S210で減算する一定値とを、異なる値としても構わない。
これに対して、目標変化量の絶対値が所定値Δeよりも大きく(S203:yes)、且つ、目標変化量が正の値であった場合は(S207:no)、図11に示した分類では、「車速を増加させるべき区間」に該当すると考えて良い。そこでこの場合も、車速の実変化量が、車速の目標変化量よりも大きいか否かを判断する(図13のS211)。
そこで、現状減速比に所定の一定値を加算して、得られた減速比を減速機10の目標減速比に設定する(S212)。尚、現状減速比に加算する一定値は、S205で現状減速比に加算する一定値と同じ値に設定されている。
これに対して、実変化量が目標変化量よりも小さかった場合は(S211:no)、図11の6つの類型では下段の右側の類型、すなわち「車速を増加させるべき区間」で「車速の実変化量が目標変化量よりも小さい場合」に該当する。
そこで、エンジン回転速度を減少させない範囲で、現状減速比よりも低い目標減速比を設定する(S213)。すなわち、車両1は車速を増加させるべき区間を走行しているから、実際の車速も増加していると考えられ、これに伴って実際のエンジン回転速度も増加していると考えられる。ところが、減速機10の減速比をあまりに低くすると、エンジン回転速度が大幅に減少するので、車速は増加しているにも拘わらず、エンジン回転速度が減少することになって運転者に不自然な感じを与えてしまう虞がある。そこで、S213では、エンジン回転速度を減少させない範囲で、現状減速比よりも低い目標減速比を設定する。
尚、このような目標減速比を設定する方法は、図12のS209で目標減速比を設定する方法と、基本的な方法は同様であるため、ここでは説明を省略する。
その後、減速機ECU11に対して、減速機10の減速比を目標減速比に向かって変更するように指示する信号を出力する(S214)。すなわち、減速機10の減速比を変更する具体的な制御は減速機ECU11が実行しているので、S214では、減速機ECU11に対して減速比の変更を指示することとしている。
図14には、エンジン駆動力補正処理のフローチャートが示されている。図示されるように、エンジン駆動力補正処理では、先に設定した目標減速比が、現状減速比よりも高いか否かを判断する(S251)。
その結果、目標減速比が現状減速比よりも高かった場合は(S251:yes)、減速機10の減速比を目標減速比に変更することによって、エンジン回転速度が増加する。すると、エンジン20が出力する駆動力が僅かに減少して、それに応じて車速が低下する可能性がある。このような車速の低下は運転者が意図しない低下であるため、運転者に違和感を与える虞がある。そこで、このような車速の低下を抑制するべく、エンジン20が出力する駆動力を所定量だけ増加させるように、エンジンECU21に対して指示する信号を出力する(S252)。尚、このときの所定量は、比較的小さな値に設定されている。
こうしてエンジンECU21に対して駆動力の補正を指示したら(S252、S253)、図14のエンジン駆動力補正処理を終了して、図12および図13の減速比変更処理に復帰する。
これに対して、運転を終了すると判断した場合は(S108:yes)、図3の運転支援処理を終了する。
その後、車速が、制限速度よりも閾値速度以上大きくなった時点Tdで、運転支援装置100から減速機ECU11に対して、減速比を目標減速比に変更するように指示が出力され、その指示を受けて減速機ECU11は、減速比を目標減速比に向かって連続的に変えていく。その結果、図15(d)中に一点鎖線で示されるように、車速の実変化量が次第に大きくなっていき、やがて、目標減速比に対応する実変化量で一定となる。これに伴って、図15(c)中に一点鎖線で示されるように、エンジン回転速度も次第に増加していく。
その結果、運転者がエンジン回転速度の増加に気付いた時点Teで、車速が制限速度を超過していることに気付いて車速を減少させることにより、時点Tfで車速を制限速度まで低下させることが可能となる。
その後、車速が、制限速度よりも閾値速度以上小さくなった時点Tdで、運転支援装置100から出力された指示に従って、減速機ECU11が減速比を目標減速比に向かって連続的に変えていく。その結果、図16(d)中に一点鎖線で示されるように、車速の実変化量が、目標減速比に対応する実変化量に向かって次第に小さくなっていき、これに伴って、図16(c)中に一点鎖線で示されるように、エンジン回転速度も次第に減少する。
その結果、運転者がエンジン回転速度の減少に気付いた時点Teで、車速が制限速度を大きく下まわっていることに気付いて車速を増加させることにより、時点Tfで車速を制限速度まで増加させることが可能となる。
その後、車速が、あるべき車速よりも閾値速度以上大きくなった時点Thで、運転支援装置100から出力された指示に従って、減速機ECU11が減速比を目標減速比に向かって連続的に変えていく。また、このときに減速機ECU11が指示される目標減速比は、エンジンの回転速度が増加しないように連続的に変更される。
上述した実施例では、減速機10の減速比を変更する方向に応じて、エンジン20の駆動力を増加させるのか、減少させるのかは切り換えるものの、駆動力を増減させる大きさは、比較的小さな所定量に固定されているものとして説明した。
しかし、減速比の変更に伴うエンジン20の駆動力の変化量は、減速比を変更する大きさや、その時のエンジン回転速度に応じて、異なる値となることが考えられる。従って、この点も考慮して、エンジンECU21に対する補正量を変更しても良い。
変形例のエンジン駆動力補正処理(S260)では、先ず始めに、減速機10の減速比を目標減速比に変更した時のエンジン回転速度を算出する(S261)。車速とエンジン回転速度とは比例関係にあり、その比例係数は減速比によって決まるから、減速比を目標減速比に変更した時のエンジン回転速度は容易に算出することができる。
このような変形例のエンジン駆動力補正処理では、減速比の変更に伴って、エンジン20が出力する駆動力が変化する事態を回避することができるので、運転者が意図しない駆動力の変化が生じて運転者に違和感を与えてしまう事態を回避することが可能となる。
こうしても、エンジン回転速度が増加あるいは減少していることを運転者に気付かせることによって、車速の増加あるいは減少に気付かせることができる。その結果、運転者が気付かない間に車速が制限速度を超過あるいは下まわることを抑制することが可能となる。
10…減速機、 11…減速機ECU、 20…エンジン、
21…エンジンECU、 30…ナビゲーション装置、 31…現在位置検出部、
32…地図情報記憶部、 100…運転支援装置、 101…車速取得部、
102…実変化量算出部、 103…現在位置取得部、 104…地図情報取得部、
105…目標変化量取得部、 106…許容判断部、 107…減速比変更部、
108…エンジン駆動力補正部。
Claims (9)
- 駆動力を発生するエンジン(20)と、該エンジンが発生した前記駆動力を減速してタイヤ(3)に出力すると共に減速比を変更可能な減速機(10)とを備える車両(1)に搭載されて、前記車両の運転者による運転動作を支援する運転支援装置(100)であって、
前記車両の車速を取得して、所定の単位時間または単位距離あたりの前記車速の実変化量を、正負を識別した状態で算出する実変化量算出部(102)と、
前記車両の走行位置に応じて前記車速を変化させる際の該車速の目標変化量を、正負を識別した状態で取得する目標変化量取得部(105)と、
前記実変化量と前記目標変化量とを比較して、前記実変化量が、前記目標変化量に対して所定の許容範囲内にあるか否かを判断する許容判断部(106)と、
前記実変化量が前記目標変化量よりも大きいために前記許容範囲内に無いと判断された場合には、前記減速比を減少させ、前記実変化量が前記目標変化量よりも小さいために前記許容範囲内に無いと判断された場合には、前記減速比を増加させる減速比変更部(107)と
を備える運転支援装置。 - 請求項1に記載の運転支援装置であって、
前記車両の現在位置を取得する現在位置取得部(103)と、
道路の制限速度の情報を含んだ地図情報を取得する地図情報取得部(104)と
を備え、
前記目標変化量取得部は、前記車両の現在位置と前記制限速度の情報とに基づいて、前記車速の目標変化量を取得する
ことを特徴とする運転支援装置。 - 請求項2に記載の運転支援装置であって、
前記地図情報取得部は、前記車速の目標変化量を取得する対象区間の情報を含んだ前記地図情報を取得し、
前記目標変化量取得部は、前記車両が前記対象区間に存在する場合に、前記目標変化量を取得する
ことを特徴とする運転支援装置。 - 請求項1ないし請求項3の何れか一項に記載の運転支援装置であって、
前記許容判断部は、前記車両の車速と前記制限速度との偏差が所定の閾値速度よりも大きくなった場合に、前記実変化量が、前記目標変化量に対して所定の許容範囲内にあるか否かを判断する
ことを特徴とする運転支援装置。 - 請求項1ないし請求項4の何れか一項に記載の運転支援装置であって、
前記減速比変更部は、前記目標変化量が正の値で、且つ、前記実変化量が前記目標変化量よりも小さいために前記許容範囲内に無いと判断された場合には、前記エンジンの回転速度が減少しない範囲で、前記減速比を減少させる
ことを特徴とする運転支援装置。 - 請求項1ないし請求項5の何れか一項に記載の運転支援装置であって、
前記減速比変更部は、前記目標変化量が負の値で、且つ、前記実変化量が前記目標変化量よりも大きいために前記許容範囲内に無いと判断された場合には、前記エンジンの回転速度が増加しない範囲で、前記減速比を増加させる
ことを特徴とする運転支援装置。 - 請求項1ないし請求項6の何れか一項に記載の運転支援装置であって、
前記減速機は、前記減速比を連続的に変更可能な無段減速機である
ことを特徴とする運転支援装置。 - 請求項1ないし請求項7の何れか一項に記載の運転支援装置であって、
前記減速比変更部が前記減速比を増加させる場合は、前記エンジンが発生する駆動力を増加させ、前記減速比変更部が前記減速比を減少させる場合は、前記エンジンが発生する駆動力を減少させるエンジン駆動力補正部(108)を備える
ことを特徴とする運転支援装置。 - 駆動力を発生するエンジン(20)と、該エンジンが発生した前記駆動力を減速してタイヤ(3)に出力すると共に減速比を変更可能な減速機(10)とを備える車両(1)に適用されて、前記車両の運転者による運転動作を支援する運転支援方法であって、
前記車両の車速を取得して、所定の単位時間または単位距離あたりの前記車速の実変化量を、正負を識別した状態で算出する工程(S105)と、
前記車両の走行位置に応じて前記車速を変化させる際の該車速の目標変化量を、正負を識別した状態で取得する工程(S104)と、
前記実変化量と前記目標変化量とを比較して、前記実変化量が、前記目標変化量に対して所定の許容範囲内にあるか否かを判断する工程(S106)と、
前記実変化量が前記目標変化量よりも大きいために前記許容範囲内に無いと判断された場合には、前記減速比を減少させ、前記実変化量が前記目標変化量よりも小さいために前記許容範囲内に無いと判断された場合には、前記減速比を増加させる工程(S200)と
を備える運転支援方法。
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