JP2018044223A - 耐摩耗鋼板およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】曲げ加工性と耐摩耗性を兼備した耐摩耗鋼板およびその製造方法を提供することを目的とする。【解決手段】質量%で、C:0.10〜0.45%、Si:0.05〜1.00%、Mn:0.50〜2.00%、P:0.020%以下、S:0.020%以下、Al:0.04%以下、Cr:0.15〜0.90%、N:0.0050%以下、O:0.0050%以下を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる成分組成であり、鋼板の板幅方向及び圧延方向における最大高さ粗さRzが30μm以下とし、さらに鋼板の圧延方向の算術平均粗さと板幅方向の算術平均粗さが下記の式(1)を満足することを特徴とする耐摩耗鋼板。0.5≦LRa/CRa≦1.3・・・(1)ただし、式(1)中のLRaは鋼板の圧延方向の算術平均粗さRa(μm)を、CRaは鋼板の幅方向の算術平均粗さRa(μm)を表す。【選択図】なし

Description

本発明は、耐摩耗鋼板に係り、とくに建設、土木および鉱山等の掘削等の分野で使用される産業機械、運搬機器の部材用として好適な、曲げ加工性に優れた耐摩耗鋼板およびその製造方法に関する。
従来から、鋼材の耐摩耗性は、高硬度化することにより向上することが知られている。このため、例えば、土、砂等による摩耗を受け、耐摩耗性が要求される部材には、焼入等の熱処理を施して高硬度化した鋼材が使用されてきた。
例えば、特許文献1には、重量%で、C:0.10〜0.20%、Si:0.03〜0.75%、Mn:0.4〜1.5%、N:0.0025%以下、Al:0.001〜0.080%を含み、あるいは更にCu、Ni、Cr、Mo、Bのうちの1種以上を含有する組成の鋼材に、熱間圧延を施して厚鋼板とした後、直接焼入れするか、あるいは熱間圧延後放冷し、その後γ域に再加熱して焼入れする耐摩耗厚鋼板の製造方法が記載されている。特許文献1に記載された技術によれば、焼入れままで340HB以上の硬さと、高靭性とを有し、溶接低温割れ性が改善された耐摩耗厚鋼板が得られるとしている。
また、特許文献2には、C:0.20〜0.45%、Si:0.10〜1.50%、Mn:0.60〜2.50%、Cr:0.60〜2.00%、Al:0.010〜0.080%、Nb:0.010〜0.100%、B:0.0010〜0.0060%、Ca:0.01%以下を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなり、あるいは更にTi、Mo、Vのうち1種または2種以上を含有した鋼を、900℃〜Ar変態点の温度で圧下率15%以上の熱間圧延を行い、Ar変態点以上の温度から焼入れすることを特徴とした耐摩耗鋼の製造方法が記載されている。特許文献2に記載された技術によれば、容易に耐摩耗性に有利な高い硬度の耐摩耗鋼が得られるとしている。
特許文献1〜2に記載された技術は、高硬度化することで、耐摩耗特性を向上させている。一方で、様々な形状の部材への適用や溶接個所の低減のため、耐摩耗鋼板に対して曲げ加工性が重要視されることが少なくない。
曲げ加工性に対しては、例えば特許文献3には、重量%で、C:0.05〜0.20%、Mn:0.50〜2.5%、Al:0.02〜2.00%を含有する鋼を、たとえば熱間圧延後にAcとAcの間のフェライト‐オーステナイト2相域に加熱した後急冷することで、フェライト‐ベイナイト母相中に面積分率で5〜50%のマルテンサイト組織を分散させた加工性および溶接性に優れた耐摩耗鋼が記載されている。
また、特許文献4には、重量%で、C:0.1〜0.35%、Si:0.05〜1.0%、Mn:0.1〜2.0%、P:0.02%以下、S:0.05%以下、Nb:0.005〜0.03%を含有する鋼を、熱間圧延後直ちにMs点±25℃まで冷却後、いったん冷却を中断し、Ms点+50℃以上に復熱させ、その後室温まで冷却する耐摩耗鋼の製造方法が記載されている。特許文献4によると、鋼板表面から深さ5mmまでの温度分布における最低硬度が、さらに内部の硬度分布における最高硬度よりも40HV以上低値となり、曲げ加工性に優れた耐摩耗鋼が得られるとしている。
また、特許文献5には、質量%で、C:0.05〜0.35%、Si:0.05〜1.0%、Mn:0.1〜2.0%、B:0.0003〜0.0030%、Ti:0.10〜1.2%、Al:0.1%以下を含み、さらにCu:0.1〜1.0%、Ni:0.1〜0.2%、Cr:0.1〜1.0%、Mo:0.05〜1.0%、W:0.05〜1.0%から選ばれた1種または2種以上を含有し、あるいは更にNb、Vのうちから選ばれた1種または2種以上を含有し、DIを60以上に限定した鋼を、熱間圧延後平均冷却速度で0.5〜2℃/sの冷却速度で400℃以下の温度域まで冷却する耐摩耗鋼板の製造方法が記載されている。これにより、平均粒径0.5〜50μm以上のTi系の炭化物を400個/mm以上析出させて、過度に高硬度化させることなく耐摩耗性を向上させた耐摩耗鋼が得られるとしている。
特開昭63−169359号公報 特開昭64−31928号公報 特許第2864960号公報 特開2006−104489号公報 特許第4899874号公報
過去の技術では耐摩耗鋼板の曲げ加工性を向上させるため、再加熱熱処理温度を制御することによって、ミクロ組織制御、または、炭化物析出制御を行って耐摩耗性と曲げ性の両立を図っている。一般的に、耐摩耗鋼板に熱処理を施した場合、非常に強固でかつ厚い酸化物層が鋼板表面に形成される。このような非常に強固でかつ厚い酸化物層を除去するために、再加熱熱処理の前工程ではショットブラスト等によるスケール除去が行われている。しかしながら、地鉄-スケール界面に鋭い凹凸が存在している場合、ショットブラストを施しても鋼板表面の鋭い凹凸が残存してしまう。このような鋭い凹凸が残存した表面状態の耐摩耗鋼板に曲げ等の加工を施すと、鋼板表面の鋭い凹凸を起点として割れが拡大してしまう懸念があった。
そこで本発明は、このような従来技術の問題を解決し、曲げ加工性と耐摩耗性を兼備した耐摩耗鋼板およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、耐摩耗鋼板の曲げ加工性に影響する各種要因について、鋭意検討を重ねた。そして、耐摩耗鋼板の表面の凹凸(表面テクスチャー)と曲げ加工性との関係について検討した結果、耐摩耗鋼板の表面の凹凸が製品の曲げ加工性に大きく影響すること、耐摩耗鋼板表面の最大高さ粗さRzをある程度小さくした上で、鋼板長手方向(圧延方向)と鋼板幅方向における表面粗さの異方性を低減させると、曲げ加工性を改善できることを見出した。
本発明は、上記した知見に基づきなされたもので、以下を要旨とするものである。
[1]質量%で、C:0.10〜0.45%、Si:0.05〜1.00%、Mn:0.50〜2.00%、P:0.020%以下、S:0.020%以下、Al:0.04%以下、Cr:0.15〜0.90%、N:0.0050%以下、O:0.0050%以下を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる成分組成であり、鋼板の板幅方向及び圧延方向における最大高さ粗さRzが30μm以下とし、さらに鋼板の圧延方向の算術平均粗さと板幅方向の算術平均粗さが下記の式(1)を満足することを特徴とする耐摩耗鋼板。
0.5≦LRa/CRa≦1.3・・・(1)
ただし、式(1)中のLRaは鋼板の圧延方向の算術平均粗さRa(μm)を、CRaは鋼板の幅方向の算術平均粗さRa(μm)を表す。
[2]前記成分組成に加えて、さらに、質量%で、Nb:0.005〜0.020%、Ti:0.005〜0.017%、B:0.0001〜0.0020%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有することを特徴とする[1]に記載の耐摩耗鋼板。
[3]前記成分組成に加えて、さらに、質量%で、Cu:0.01〜0.2%、Ni:0.01〜2.0%、Mo:0.1〜0.5%、V:0.01〜0.05%、W:0.01〜0.05%、Co:0.01〜0.05%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有することを特徴とする[1]または[2]に記載の耐摩耗鋼板。
[4]前記成分組成に加えて、さらに、質量%で、Ca:0.0005〜0.0040%、Mg:0.0005〜0.0050%、REM:0.0005〜0.0080%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有することを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載の耐摩耗鋼板。
[5][1]〜[4]のいずれかに記載の成分組成を有する鋼素材を900〜1150℃に加熱し、次いで仕上げ圧延パス数を7パス以上として、表面粗度が算術平均で1.0〜3.0μmRaであるロールを用いて仕上げ圧延する熱間圧延を行い、熱間圧延終了後冷却し、次いでAc変態点以上1000℃未満の温度に再加熱して焼入れ処理を行うことを特徴とする耐摩耗鋼板の製造方法。
[6][1]〜[4]のいずれかに記載の成分組成を有する鋼素材を900〜1150℃に加熱し、次いで仕上げ圧延パス数を7パス以上として仕上げ圧延する熱間圧延を行い、熱間圧延終了後冷却し、次いで平均粒径が0.8〜1.4mmφのショット粒子を衝突させるショットブラスト処理を行った後、Ac変態点以上1000℃未満の温度で再加熱して焼入れ処理を行うことを特徴とする耐摩耗鋼板の製造方法。
[7][1]〜[4]のいずれかに記載の成分組成を有する鋼素材を900〜1150℃に加熱し、次いで仕上げ圧延パス数を7パス以上として、表面粗度が算術平均で1.0〜3.0μmRaであるロールを用いて仕上げ圧延する熱間圧延を行い、熱間圧延終了後冷却し、次いで平均粒径が0.8〜1.4mmφのショット粒子を衝突させるショットブラスト処理を行った後、Ac変態点以上1000℃未満の温度で再加熱して焼入れ処理を行うことを特徴とする耐摩耗鋼板の製造方法。
本発明によれば、曲げ加工性と耐摩耗性を兼備した耐摩耗鋼板を、容易に製造することができ、産業上格段の効果を奏する。
本発明の耐摩耗鋼板は、質量%で、C:0.10〜0.45%、Si:0.05〜1.00%、Mn:0.5〜2.00%、P:0.020%以下、S:0.020%以下、Al:0.04%以下、Cr:0.15〜0.90%、N:0.0050%以下、O:0.0050%以下を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる成分組成を有する。
先ず、本発明の耐摩耗鋼板の組成限定の理由について説明する。以下、組成における質量%は単に%で記す。
C:0.10〜0.45%
Cは、基地相(マトリクス)硬さを増加させ、耐摩耗性を向上させる有効な元素である。このような効果を得るためには、0.10%以上の含有を必要とする。一方、0.45%を超える含有は、基地相(マトリクス)の硬度が過度に増加し、曲げ加工性が低下する。このため、Cは0.10〜0.45%の範囲に限定する。なお、好ましくは0.13〜0.42%である。
Si:0.05〜1.00%
Siは、脱酸剤として作用するとともに、鋼中に固溶して固溶強化により基地相(マトリクス)硬さを増加させる元素である。このような効果を得るためには、0.05%以上の含有を必要とする。一方、1.00%を超える含有は、延性、靭性を低下させ、さらに介在物量が増加するなどの問題を生じる。また、Siと鉄の複合酸化物が鋼板表面に生成し、強固なスケールとして残存するため、鋼板表面の凹凸形成を助長し、凹凸溝を起点とした割れが進行しやすくなるなどの問題を生じる。このため、Siは0.05〜1.00%の範囲に限定する。なお、好ましくは0.05〜0.40%である。
Mn:0.50〜2.00%
Mnは、基地相(マトリクス)硬さを増加させ、耐摩耗性を向上させる有効な元素である。このような効果を得るためには、0.50%以上の含有を必要とする。一方、2.00%を超える含有は、溶接性を低下させるだけでなく、ミクロ偏析が多くなり鋼板表面の凹凸形成を助長し、凹凸溝を起点とした割れが進行しやすくなるなどの問題を生じる。このため、Mnは0.50〜2.00%の範囲に限定する。なお、好ましくは0.70〜1.80%、より好ましくは0.90〜1.60%である。
P:0.020%以下
Pは、粒界に偏析し母材および溶接部の靱性を低下させるなど、悪影響を及ぼす元素であり、不可避的不純物として、本発明ではできるだけ低減することが好ましいが、0.020%以下であれば許容できる。このため、Pは0.020以下に限定する。なお、過剰の低減は、精錬コストの高騰を招くため、0.001%以上とすることが好ましい。
S:0.020%以下
Sは、MnS等の硫化物系介在物として鋼中に存在し、破壊の発生起点となるなど、悪影響を及ぼす元素である。本発明では不可避的不純物として、できるだけ低減することが好ましいが、0.020%以下であれば、許容できる。このため、Sは0.020%以下に限定する。なお、好ましくは、0.010%以下である。なお、過剰の低減は、精錬コストの高騰を招くため、0.0005%以上とすることが好ましい。
Al:0.04%以下
Alは、脱酸剤として作用するとともに、結晶粒を微細化する作用を有する元素であり、このような効果を得るためには、0.01%以上含有することが望ましい。一方、0.04%を超えて多量に含有すると、酸化物系介在物が増加し、清浄度が低下し、表面疵が多発して表面性状が低下するとともに、曲げ加工性が低下する。このため、Alは0.04%以下に限定する。なお、好ましくは0.03%以下、より好ましくは0.02%以下である。
Cr:0.15〜0.90%
Crは、基地相(マトリクス)硬さを増加させ、耐摩耗性を向上させる有効な元素である。このような効果を得るためには、0.15%以上の含有を必要とする。一方、0.90%を超える含有は、溶接性を低下させる。このため、Crは0.15〜0.90%の範囲に限定する。なお、好ましくは0.20〜0.85%、より好ましくは0.25〜0.80%である。
上記した成分が基本の成分である。なお、本発明では基本の組成に加えてさらに、選択元素として、Nb:0.005〜0.020%、Ti:0.005〜0.017%、B:0.0001〜0.0020%のうちから選ばれた1種または2種以上、および/または、Cu:0.01〜0.2%、Ni:0.01〜2.0%、Mo:0.1〜0.5%、V:0.01〜0.05%、W:0.01〜0.05%、Co:0.01〜0.05%のうちから選ばれた1種または2種以上、および/または、Ca:0.0005〜0.0040%、Mg:0.0005〜0.0050%、REM:0.0005〜0.0080%のうちから選ばれた1種または2種以上、を必要に応じて選択して、含有してもよい。
Nb:0.005〜0.020%、Ti:0.005〜0.017%、B:0.0001〜0.0020%のうちから選ばれた1種または2種以上
Nb、Ti、Bはいずれも、基地相(マトリクス)硬さを増加させ、耐摩耗性を向上させる有効な元素であり、必要に応じて選択して1種または2種以上含有できる。
Nbは、基地相(マトリクス)硬さを増加させ、耐摩耗性の向上に寄与する元素であり、このような効果を得るためには、0.005%以上の含有を必要とする。一方、0.020%を超えて含有すると、NbCが多量に析出し、曲げ加工性を低下させる。このようなことから、含有する場合には、Nbは0.005〜0.020%の範囲に限定することが好ましい。なお、好ましくは0.007〜0.018%である。
Tiは、窒化物形成傾向が強く、Nを固定して固溶Nを低減するため、母材および溶接部の靭性を向上させる。また、Bを添加する場合には、Nを固定して、BNの析出を抑制し、Bの焼入れ性向上効果を助長して、焼入れ性を向上させ、耐摩耗性の向上に寄与する元素である。このような効果を得るためには、0.005%以上の含有が必要である。一方、0.017%を超えて含有すると、TiCが多量に析出し、曲げ加工性を低下させる。このため、含有する場合は、Tiは0.005〜0.017%とすることが好ましい。なお、より好ましくは0.007〜0.015%である。
Bは、微量な添加でも焼入れ性を著しく向上させ、マルテンサイトの形成を助長し、耐摩耗性の向上に寄与する元素である。このような効果を得るためには、0.0001%以上の含有が必要である。一方、0.0020%を超える含有は、溶接性を低下させる。このため、含有する場合には、Bは0.0001〜0.0020%の範囲に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.0005〜0.0020%である。さらに好ましくは0.0010〜0.0020%である。
Cu:0.01〜0.2%、Ni:0.01〜2.0%、Mo:0.1〜0.5%、V:0.01〜0.05%、W:0.01〜0.05%、Co:0.01〜0.05%のうちから選ばれた1種または2種以上
Cu、Ni、Mo、V、W、Coはいずれも、焼入れ性を向上させ、鋼板内部の硬度を得るために必要に応じて添加する。このような効果を得るためには、Cu:0.01%以上、Ni:0.01%以上、Mo:0.1%以上、V:0.01%以上、W:0.01%以上、Co:0.01%以上含有することが好ましい。一方、Cu:0.2%、Ni:2.0%、Mo:0.5%、V:0.05%、W:0.05%、Co:0.05%、を超えて含有すると、溶接性の劣化、あるいは合金コストの上昇を招く。このようなことから、含有する場合には、Cu:0.01〜0.2%、Ni:0.01〜2.0%、Mo:0.1〜0.5%、V:0.01〜0.05%、W:0.01〜0.05%、Co:0.01〜0.05%に限定することが好ましい。
Ca:0.0005〜0.0040%、Mg:0.0005〜0.0050%、REM:0.0005〜0.0080%のうちから選ばれた1種または2種以上
Ca、Mg、REMはいずれも、Sと結合し、圧延方向に長く伸びるMnS等の形成を抑制して、硫化物系介在物が球状を呈するように形態制御し、溶接部等の靭性向上に寄与する元素であり、必要に応じて1種または2種以上を選択して含有できる。このような効果を得るためには、Ca:0.0005%以上、Mg:0.0005%以上、REM:0.0005%以上、含有することが好ましい。一方、Ca:0.0040%、Mg:0.0050%、REM:0.0080%、を超えて含有すると、鋼の清浄度が低下し、表面疵が多発し表面性状が低下するとともに、曲げ加工性が低下する。このようなことから、含有する場合には、Ca:0.0005〜0.0040%、Mg:0.0005〜0.0050%、REM:0.0005〜0.0080%、に限定することが好ましい。
上記した成分以外の残部は、Feおよび不可避的不純物からなる。なお、不可避的不純物としては、O:0.0050%以下、N:0.0050%以下が許容できる。O:0.0050%超え、もしくはN:0.0050%超えでは、鋼板表面での介在物の存在割合が大きくなるため、介在物を起点とした曲げ割れが生じやすくなる。このため、O:0.0050%以下、N:0.0050%以下、に限定する。なお、好ましくはO:0.0040%以下、N:0.0040%以下である。
本発明の耐摩耗鋼板は、上記成分組成を有することに加えて、板幅方向及び圧延方向における最大高さ粗さRzを30μm以下とし、さらに下記式(1)を満足することを特徴とする。これらを満足させることにより、耐摩耗鋼板の表面テクスチャーが制御され、曲げ加工性が向上する
0.5≦LRa/CRa≦1.3・・・・・(1)
ただし、式(1)中のLRaは鋼板の圧延方向(長手方向)の算術平均粗さRa(μm)を、CRaは鋼板の幅方向の算術平均粗さRa(μm)を表す。
なお、本発明において、RzはJISB0601(2001)で規定される粗さ曲線の最大高さ粗さRzであり、RaはJISB0601(2001)で規定された算術平均粗さRaである。
0.5≦LRa/CRa≦1.3
鋼板長手方向の算術平均粗さLRa(μm)と鋼板幅方向の算術平均粗さCRaの比(LRa/CRa)が0.5〜1.3の範囲から外れると、すなわち表面粗さの異方性が大きくなると、鋼板圧延方向あるいは鋼板幅方向に連続した凹凸溝が存在することとなり、曲げ加工といった成形を行った際、このような凹凸溝を起点とした割れが進行しやすくなり、曲げ加工性が劣化する。このため、本発明では、鋼板圧延方向の算術平均粗さLRa(μm)と鋼板幅方向の算術平均粗さCRaの比(LRa/CRa)が式(1)を満足する範囲、すなわち0.5〜1.3の範囲とする。
板幅方向及び圧延方向における最大高さ粗さRzを30μm以下
板幅方向及び圧延方向における最大高さ粗さRzが30μmを超えると、耐摩耗鋼板の圧延方向の算術平均粗さRaと板幅方向の算術平均粗さRaが式(1)を満足するようにしても、鋭い凹凸溝が残存してしまうことがあるため、鋭い凹凸溝を起点とした成形割れが進行しやすく、曲げ加工性を低下させやすくなる。したがって、本発明では、板幅方向及び圧延方向における最大高さ粗さRzが30μm以下とする。
なお、鋼板の圧延方向の算術平均粗さLRa(μm)と鋼板の幅方向の算術平均粗さCRaの比(LRa/CRa)については、圧延時のロールの表面粗さ(算術平均粗さ)および/または再加熱焼入れ前のショットブラストの平均粒径を変更することで、式(1)を満足する範囲に制御することができる。また、耐摩耗鋼板の板幅方向及び圧延方向における最大高さ粗さRzについては、スラブ再加熱温度を900〜1150℃、仕上圧延パス数を7パス以上、再加熱焼入れ温度をAc変態点以上1000℃未満とすることで、Rzを30μm以下に制御することができる。
つぎに、本発明の耐摩耗鋼板の製造方法について説明する。上記した成分組成を有する鋼素材を加熱し、熱間圧延して耐摩耗鋼板とする。
鋼素材の製造方法
鋼素材の製造方法は、とくに限定する必要はないが、上記した組成を有する溶鋼を、転炉等の公知の溶製方法で溶製し、連続鋳造法等の公知の鋳造方法で、所定寸法のスラブ等の鋼素材とすることが好ましい。なお、造塊−分解圧延法により、所定寸法のスラブ等の鋼素材としてもなんら問題はない。
鋼素材を900〜1150℃に加熱
得られた鋼素材(スラブ)は、冷却することなく直接、あるいは冷却したのち、加熱炉で加熱温度:900〜1150℃に再加熱して、さらに熱間圧延し所望板厚(肉厚)の鋼板とする。加熱温度が900℃未満では、熱間圧延中の変形抵抗が高くなり、熱間圧延機への負荷が増大し、熱間圧延が困難になる。一方、1150℃を超えて高温となると、スラブ表面の酸化が著しくなり、地鉄−スケール界面の凹凸が鋭くなるため、鋼板の板幅方向及び圧延方向における最大高さ粗さRzを30μm以下とすることができず、その結果、後述する製品時の曲げ加工性が低下してしまう。このようなことから、加熱温度は900〜1150℃に限定する。なお、より好ましくは950〜1150℃である。
仕上げ圧延パス数を7パス以上として仕上げ圧延
次いで熱間圧延を行う。熱間圧延条件について、本発明では、仕上げ圧延パス数を7パス以上として仕上げ圧延を行う。仕上げ圧延パス数が7パス未満では、スラブ加熱によって形成された地鉄−スケール界面の凹凸が平坦化されず、鋭いままとなるため、鋼板の板幅方向及び圧延方向における最大高さ粗さRzを30μm以下とすることができない。
次に、本発明では、熱間圧延時のロールの表面粗さ(算術平均粗さ)および/または再加熱焼入れ前のショットブラストの平均粒径を変更することで、鋼板の圧延方向の算術平均粗さLRa(μm)と鋼板の幅方向の算術平均粗さCRaの比(LRa/CRa)が式(1)を満足する範囲に制御する。
ロールの表面粗度が算術平均で1.0〜3.0μmRaであるロールを用いて仕上げ圧延
ロールの表面粗度が算術平均で3.0μmRaを超えると、鋼板の圧延方向の算術平均粗さLRa(μm)と鋼板の幅方向の算術平均粗さCRaの比(LRa/CRa)を式(1)の範囲に満足させることができず、また、圧延荷重の増大を招き所定のパススケジュールでの圧延が困難となる。一方、ロールの表面粗度が算術平均で1.0μmRaを下回ると、鋼板の圧延方向の算術平均粗さLRa(μm)と鋼板の幅方向の算術平均粗さCRaの比(LRa/CRa)を式(1)の範囲に満足させることができず、また、圧延中にロールと鋼板との間でスリップが生じやすくなる。
なお、本発明におけるロールの表面粗度は、最終圧延スタンドのロールの表面粗度という意味である。
平均粒径が0.8〜1.4mmφのショット粒子を衝突させるショットブラスト処理
さらに、熱間圧延終了後冷却し、ショットブラスト処理を行う。本発明では、ショット粒子の平均粒径は、0.8〜1.4mmφの範囲とする。ショット粒子の平均粒径が0.8mmφ未満もしくは1.4mmφ超えでは、鋼板の圧延方向の算術平均粗さLRa(μm)と鋼板の幅方向の算術平均粗さCRaの比(LRa/CRa)を式(1)の範囲に満足させることができず、また、仕上げ圧延で生成した表層スケールを均一に除去することができない。なお、投射速度等のショット条件については、特に限定されない。
Ac変態点以上1000℃未満の温度で再加熱して焼入れ処理
ショットブラスト処理後、Ac変態点以上1000℃未満の温度に再加熱して焼入れ処理を行う。これは、オーステナイト状態からの焼入れによってマルテンサイト組織を得るためである。Ac変態点未満からの焼入れでは十分に焼きが入らず、硬度が低下し、耐摩耗性が高いミクロ組織は得られない。また、1000℃以上では、地鉄−スケール界面の凹凸が鋭くなるため、鋼板の板幅方向及び圧延方向における最大高さ粗さRzを30μm以下とすることができない。なお、Ac変態点は、例えば、Ac(℃)=912.0−230.5×C+31.6×Si−20.4×Mn−39.8×Cu−18.1×Ni−14.8×Cr+16.8×Mo(各元素は含有量(質量%)であり、含まない場合は0とする。)で求めることが可能である。
なお、焼入れ処理の冷却速度は、マルテンサイト組織が形成される冷却速度であればとくに限定されない。また、冷却停止温度は、Mf点以下の温度、好ましくは200℃以下まで水冷することが好ましい。Mf点は、例えば、410.5−407.3×C−7.3×Si−37.8×Mn−20.5×Cu−19.5×Ni−19.8×Cr−4.5×Mo(各元素は含有量(質量%)であり、含まない場合は0とする。)で求めることが可能である。
表1に示す組成の溶鋼を溶製し、鋼素材(スラブ)とした。これら鋼素材(スラブ)に、表2に示す条件で加熱および熱間圧延を施し、表2に示す板厚の熱延板とした。その後、放冷し、再加熱したのち焼入れる再加熱焼入れ処理を施した。
Figure 2018044223
得られた鋼板について、表層部の硬さ試験、粗さ測定および曲げ試験を実施した。試験方法は次の通りである。
(1)表面硬さ試験
鋼板の耐摩耗性は、主に表層部分の硬度によって決まる。そのため、得られた鋼板から、硬さ測定用試験片を採取し、JIS Z 2243(1998)の規定に準拠して、表面から板厚方向に1mm位置の硬さを測定した。表面のスケールおよび脱炭層の影響を除くため表面から1mmを研削除去して、表面から1mmの面で表面硬さを測定した。なお、測定に際しては、直径10mmのタングステン硬球を使用し、荷重は3000kgfとした。硬さがHB380以上を合格とした。
(2)粗さ測定
得られた鋼板から、粗さ測定用試験片を採取し、JIS B 0601(2001)の規定に準拠して、最大高さ粗さRz、鋼板の圧延方向(L方向)及び鋼板の幅方向(C方向)における算術平均粗さRaを測定し、L方向のRa(μm)とC方向のRa(μm)の比(LRa/CRa)を求めた。なお上記Rz、Raの測定にあたり、測定長さを4.0mm、カットオフ値を0.8mmとした。
(3)曲げ試験
得られた鋼板から曲げ試験片(幅150mm×300mm長さ)を採取し、JIS Z 2248の規定に準拠して、曲げ角度:180°まで押し曲げ、割れ発生のない曲げ半径R(mm)を板厚t(mm)に対する比率で表した限界曲げ半径R/tを求めた。なお、曲げ試験片は、評価する方向(圧延方向、板幅方向)を長手方向として採取し、各方向についてそれぞれR/tを求めた。R/tがL、C方向共に1.5以下を合格とした。
得られた結果を表2に示す。
Figure 2018044223
発明例は、曲げ加工性と耐摩耗性を具備した耐摩耗鋼板となっている。一方、比較例は、硬度が同等でかつ曲げ半径が大きい、あるいは硬度が低く曲げ半径が小さくなっており、曲げ加工性もしくは耐摩耗性に劣っている。
表3に示す組成の溶鋼を溶製し、鋼素材(スラブ)とした。これら鋼素材(スラブ)に、表4に示す条件で加熱および熱間圧延を施し、表4に示す板厚の熱延板とした。その後、放冷し、再加熱したのち焼入れる再加熱焼入れ処理を施した。
Figure 2018044223
得られた鋼板について、表層部の硬さ試験、粗さ測定および曲げ試験を実施した。試験方法は次の通りである。
(1)表面硬さ試験
鋼板の耐摩耗性は、主に表層部分の硬度によって決まる。そのため、得られた鋼板から、硬さ測定用試験片を採取し、JIS Z 2243(1998)の規定に準拠して、表面から板厚方向に1mm位置の硬さを測定した。表面のスケールおよび脱炭層の影響を除くため表面から1mmを研削除去して、表面から1mmの面で表面硬さを測定した。なお、測定に際しては、直径10mmのタングステン硬球を使用し、荷重は3000kgfとした。硬さがHB480以上を合格とした。
(2)粗さ測定
得られた鋼板から、粗さ測定用試験片を採取し、JIS B 0601(2001)の規定に準拠して、最大高さ粗さRz、鋼板の圧延方向(L方向)及び鋼板の幅方向(C方向)における算術平均粗さRaを測定し、L方向のRa(μm)とC方向のRa(μm)の比(LRa/CRa)を求めた。なお上記Rz、Raの測定にあたり、測定長さを4.0mm、カットオフ値を0.8mmとした。
(3)曲げ試験
得られた鋼板から曲げ試験片(幅150mm×300mm長さ)を採取し、JIS Z 2248の規定に準拠して、曲げ角度:180°まで押し曲げ、割れ発生のない曲げ半径R(mm)を板厚t(mm)に対する比率で表した限界曲げ半径R/tを求めた。なお、曲げ試験片は、評価する方向(圧延方向、板幅方向)を長手方向として採取し、各方向についてそれぞれR/tを求めた。R/tがL、C方向共に2.5以下を合格とした。
得られた結果を表4に示す。
Figure 2018044223
発明例は、曲げ加工性と耐摩耗性を具備した耐摩耗鋼板となっている。一方、比較例は、硬度が同等でかつ曲げ半径が大きい、あるいは硬度が低く曲げ半径が小さくなっており、曲げ加工性もしくは耐摩耗性に劣っている。
表5に示す組成の溶鋼を溶製し、鋼素材(スラブ)とした。これら鋼素材(スラブ)に、表6に示す条件で加熱および熱間圧延を施し、表6に示す板厚の熱延板とした。その後、放冷し、再加熱したのち焼入れる再加熱焼入れ処理を施した。
Figure 2018044223
得られた鋼板について、表層部の硬さ試験、粗さ測定および曲げ試験を実施した。試験方法は次の通りである。
(1)表面硬さ試験
鋼板の耐摩耗性は、主に表層部分の硬度によって決まる。そのため、得られた鋼板から、硬さ測定用試験片を採取し、JIS Z 2243(1998)の規定に準拠して、表面から板厚方向に1mm位置の硬さを測定した。表面のスケールおよび脱炭層の影響を除くため表面から1mmを研削除去して、表面から1mmの面で表面硬さを測定した。なお、測定に際しては、直径10mmのタングステン硬球を使用し、荷重は3000kgfとした。硬さがHB580以上を合格とした。
(2)粗さ測定
得られた鋼板から、粗さ測定用試験片を採取し、JIS B 0601(2001)の規定に準拠して、最大高さ粗さRz、鋼板の圧延方向(L方向)及び鋼板の幅方向(C方向)における算術平均粗さRaを測定し、L方向のRa(μm)とC方向のRa(μm)の比(LRa/CRa)を求めた。なお上記Rz、Raの測定にあたり、測定長さを4.0mm、カットオフ値を0.8mmとした。
(3)曲げ試験
得られた鋼板から曲げ試験片(幅150mm×300mm長さ)を採取し、JIS Z 2248の規定に準拠して、曲げ角度:180°まで押し曲げ、割れ発生のない曲げ半径R(mm)を板厚t(mm)に対する比率で表した限界曲げ半径R/tを求めた。なお、曲げ試験片は、評価する方向(圧延方向、板幅方向)を長手方向として採取し、各方向についてそれぞれR/tを求めた。R/tがL、C方向共に3.5以下を合格とした。
得られた結果を表6に示す。
Figure 2018044223
発明例は、曲げ加工性と耐摩耗性を具備した耐摩耗鋼板となっている。一方、比較例は、硬度が同等でかつ曲げ半径が大きい、あるいは硬度が低く曲げ半径が小さくなっており、曲げ加工性もしくは耐摩耗性に劣っている。

Claims (7)

  1. 質量%で、C:0.10〜0.45%、Si:0.05〜1.00%、Mn:0.50〜2.00%、P:0.020%以下、S:0.020%以下、Al:0.04%以下、Cr:0.15〜0.90%、N:0.0050%以下、O:0.0050%以下を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる成分組成であり、鋼板の板幅方向及び圧延方向における最大高さ粗さRzが30μm以下とし、さらに鋼板の圧延方向の算術平均粗さと板幅方向の算術平均粗さが下記の式(1)を満足することを特徴とする耐摩耗鋼板。
    0.5≦LRa/CRa≦1.3・・・(1)
    ただし、式(1)中のLRaは鋼板の圧延方向の算術平均粗さRa(μm)を、CRaは鋼板の幅方向の算術平均粗さRa(μm)を表す。
  2. 前記成分組成に加えて、さらに、質量%で、Nb:0.005〜0.020%、Ti:0.005〜0.017%、B:0.0001〜0.0020%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の耐摩耗鋼板。
  3. 前記成分組成に加えて、さらに、質量%で、Cu:0.01〜0.2%、Ni:0.01〜2.0%、Mo:0.1〜0.5%、V:0.01〜0.05%、W:0.01〜0.05%、Co:0.01〜0.05%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の耐摩耗鋼板。
  4. 前記成分組成に加えて、さらに、質量%で、Ca:0.0005〜0.0040%、Mg:0.0005〜0.0050%、REM:0.0005〜0.0080%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の耐摩耗鋼板。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の成分組成を有する鋼素材を900〜1150℃に加熱し、次いで仕上げ圧延パス数を7パス以上として、表面粗度が算術平均で1.0〜3.0μmRaであるロールを用いて仕上げ圧延する熱間圧延を行い、熱間圧延終了後冷却し、次いでAc変態点以上1000℃未満の温度に再加熱して焼入れ処理を行うことを特徴とする耐摩耗鋼板の製造方法。
  6. 請求項1〜4のいずれかに記載の成分組成を有する鋼素材を900〜1150℃に加熱し、次いで仕上げ圧延パス数を7パス以上として仕上げ圧延する熱間圧延を行い、熱間圧延終了後冷却し、次いで平均粒径が0.8〜1.4mmφのショット粒子を衝突させるショットブラスト処理を行った後、Ac変態点以上1000℃未満の温度で再加熱して焼入れ処理を行うことを特徴とする耐摩耗鋼板の製造方法。
  7. 請求項1〜4のいずれかに記載の成分組成を有する鋼素材を900〜1150℃に加熱し、次いで仕上げ圧延パス数を7パス以上として、表面粗度が算術平均で1.0〜3.0μmRaであるロールを用いて仕上げ圧延する熱間圧延を行い、熱間圧延終了後冷却し、次いで平均粒径が0.8〜1.4mmφのショット粒子を衝突させるショットブラスト処理を行った後、Ac変態点以上1000℃未満の温度で再加熱して焼入れ処理を行うことを特徴とする耐摩耗鋼板の製造方法。
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