JP2018034277A - 硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆切削工具 - Google Patents

硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆切削工具 Download PDF

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【課題】硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する被覆工具を提供する。【解決手段】工具基体のCrAlCN層は、NaCl型の面心立方構造を有する相を少なくとも含み、CrAlCN層を、組成式:(Cr1−xAlx)(CyN1−y)で表した場合、Alの平均含有割合XavgおよびCの平均含有割合Yavg(但し、Xavg、Yavgはいずれも原子比)は、0.70≦Xavg≦0.95、0≦Yavg≦0.005を満足し、CrAlCN層中にはポアが存在しており、CrAlCN層の平均層厚をLavg(μm)とした場合、該平均層厚Lavg(μm)を層厚方向に[Lavg/2]+1分割した各区間において求めたポアが占める面積割合Aとポアの孔径Dから、前記各区間におけるポアの平均面積割合Aavgと平均孔径Davgを算出したとき、0.1面積%≦Aavg≦10面積%、4nm≦Davg≦50nmを満足する被覆工具。【選択図】図1

Description

本発明は、高熱発生を伴うとともに、切刃に対して衝撃的な負荷が作用する炭素鋼、合金鋼、鋳鉄等の高速断続切削加工において、硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を備えることにより、長期の使用に亘ってすぐれた切削性能を発揮する表面被覆切削工具(以下、被覆工具という)に関するものである。
従来、一般に、炭化タングステン(以下、WCで示す)基超硬合金、炭窒化チタン(以下、TiCNで示す)基サーメットあるいは立方晶窒化ホウ素(以下、cBNで示す)基超高圧焼結体で構成された工具基体(以下、これらを総称して工具基体という)の表面に、硬質被覆層として、Cr−Al系の複合窒化物層を物理蒸着法により被覆形成した被覆工具が知られており、これらは、すぐれた耐摩耗性を発揮することが知られている。
ただ、前記従来のCr−Al系の複合窒化物層を被覆形成した被覆工具は、比較的高温強度にすぐれるものの、高速断続切削条件で用いた場合にチッピング等の異常損耗を発生しやすいことから、硬質被覆層の改善についての種々の提案がなされている。
特許文献1には、硬質皮膜層がTi化合物層からなる下部層と、Al層からなる上部層とで構成された被覆工具において、上部層のAl層中に、孔径2〜50nmであって、孔径分布がバイモーダルな分布をとる微小空孔を形成し、切削加工時に上部層に作用する衝撃の緩和を図るとともに熱遮蔽効果を発揮させることによって、高速断続切削加工における耐チッピング性、耐欠損性を改善することが提案されている。
例えば、特許文献2には、硬質被覆層が下部層、中間層および上部層からなる被覆工具において、(a)下部層を、Ti1−XAlN層、Ti1−XAlC層、Ti1−XAlCN層(但し、Xは、TiとAlの合量に占めるAlの含有割合を示し、原子比で、0.65≦X≦0.95)のうち1層または2層以上からなる立方晶結晶構造を有するTiとAlの窒化物、炭化物あるいは炭窒化物で構成し、(b)中間層を、Cr1−YAlN層、Cr1−YAlC層、Cr1−YAlCN層(但し、Yは、CrとAlの合量に占めるAlの含
有割合を示し、原子比で、0.60≦Y≦0.90)のうち1層または2層以上からなる
立方晶結晶構造を有するCrとAlの窒化物、炭化物あるいは炭窒化物で構成し、(c)上部層を、孔径が2〜30nmで空孔密度が100〜500個/μmの微小空孔を有するAlで構成することによって、例えば、析出硬化系ステンレス鋼やインコネル等の耐熱合金を高速切削加工した場合の耐チッピング性と耐摩耗性を改善することが提案されている。
また、特許文献3には、硬質被覆層が下部層、中間層および上部層からなる被覆工具において、(a)下部層を、Ti1−XAlN層、Ti1−XAlC層、Ti1−XAlCN層(但し、Xは、TiとAlの合量に占めるAlの含有割合を示し、原子比で、0.65≦X≦0.95)のうち1層または2層以上からなる立方晶結晶構造を有するTiとAlの窒化物、炭化物あるいは炭窒化物で構成し、(b)中間層を、Cr1−YAlN層、Cr1−YAlC層、Cr1−YAlCN層(但し、Yは、CrとAlの合量に占めるAlの含
有割合を示し、原子比で、0.60≦Y≦0.90)のうち1層または2層以上からなる
立方晶結晶構造を有するCrとAlの窒化物、炭化物あるいは炭窒化物で構成し、(c)上部層を、Alあるいは微量のZrを含有するAlで構成することによって、例えば、ステンレス鋼やTi合金などの難削材を高速切削加工した場合の耐チッピング性と耐摩耗性を改善することが提案されている。
特許文献4には、工具基体の表面に、組成式:(CrAl1−X)Nで表したときに、0.3≦X≦0.6(ただし、Xは原子比を示す)を満足するAlとCrの複合窒化物層からなる硬質被覆層を形成した被覆工具において、前記表面研磨面の法線に対して、立方晶結晶格子を有する結晶粒の結晶面である{100}面の法線がなす傾斜角を測定し、その傾斜角度数分布グラフを求めた時、30〜40度の範囲内に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の60%以上の割合を占める傾斜角度数分布を形成すること、あるいは、さらに、構成原子共有格子点分布グラフにおいて、Σ3に最高ピークが存在し、かつΣ3のΣN+1全体に占める分布割合が50%以上である構成原子共有格子点分布グラを形成することによって、切刃に対して大きな機械的負荷がかかる鋼や鋳鉄の重切削加工における耐欠損性を向上させることが提案されている。
特開2012−161847号公報 特開2014−198362号公報 特開2014−208394号公報 特開2009−56539号公報
前記特許文献1で提案されている被覆工具は、上部層のAl層中に微小空孔が形成されていることによって、切削加工時の衝撃がある程度緩和されるものの、切削条件が厳しくなり、切れ刃により一段と高負荷が作用するような場合には、耐熱衝撃性および耐チッピング性が十分であるとはいえない。
また、前記特許文献2、3で提案されている被覆工具は、硬質被覆層の中間層として、CrとAlの窒化物、炭化物あるいは炭窒化物を介在形成することにより、下部層と上部層の密着強度を向上させ、耐チッピング性の改善を図っているものの、CrとAlの窒化物、炭化物あるいは炭窒化物自体の強度・硬さが十分でないため、高速断続切削加工に供した場合には、耐チッピング性、耐摩耗性が十分であるとはいえない。
前記特許文献4で提案されている被覆工具においては、(CrAl1−X)Nからなる硬質被覆層のCr含有割合を調整し、また、結晶配向性と構成原子共有格子点分布形態を制御することにより、硬質被覆層の強度を向上させることができ、その結果、耐チッピング性、耐欠損性を高めることはできるものの、やはり(CrAl1−X)N層の強度・硬さが十分でないため、長期の使用にわたってすぐれた耐チッピング性、耐摩耗性を発揮することはできず、合金鋼の高速断続切削においては工具寿命が短命であるという問題があった。
そこで、炭素鋼、合金鋼、鋳鉄等の高熱発生を伴うとともに、切刃に対して衝撃的な負荷が作用する高速断続切削加工で、硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性、すぐれた耐摩耗性を相兼ね備える被覆工具が求められている。
本発明者らは、前述の観点から、少なくともCrとAlの複合窒化物または複合炭窒化物(以下、「CrAlCN」で示すことがある)層を含む硬質被覆層を化学蒸着で蒸着形成した被覆工具において、耐チッピング性の改善をはかるべく、鋭意研究を重ねた結果、
限定された条件で、CrAlCNを成膜することにより、CrAlCN層中にポアを形成することができ、さらに、層中に形成されるポアの平均面積割合と平均孔径の適正化を図ることにより、クラックの進行を抑制し得るようになること、そしてその結果として、刃先に高負荷が作用する炭素鋼、合金鋼、鋳鉄等の高速断続切削加工で、すぐれた耐チッピング性を発揮するようになることを見出した。
本発明は、前記知見に基づいてなされたものであって、
「(1) 炭化タングステン基超硬合金、炭窒化チタン基サーメットまたは立方晶窒化ホウ素基超高圧焼結体のいずれかで構成された工具基体の表面に、硬質被覆層が設けられた表面被覆切削工具において、
(a)前記硬質被覆層は、平均層厚1〜20μmのCrとAlの複合窒化物または複合炭窒化物層を少なくとも含み、
(b)前記複合窒化物または複合炭窒化物層は、NaCl型の面心立方構造を有する複合窒化物または複合炭窒化物の相を少なくとも含み、
(c)前記複合窒化物または複合炭窒化物層は、
組成式:(Cr1−xAl)(C1−y
で表した場合、AlのCrとAlの合量に占める平均含有割合XavgおよびCのCとNの合量に占める平均含有割合Yavg(但し、Xavg、Yavgはいずれも原子比)が、それぞれ、0.70≦Xavg≦0.95、0≦Yavg≦0.005を満足し、
(d)前記複合窒化物または複合炭窒化物層にはポアが存在しており、前記複合窒化物または複合炭窒化物層の平均層厚をLavg(μm)とした場合、該平均層厚Lavg(μm)
を層厚方向に[Lavg/2]+1分割した各区間の縦断面の1μm×1μmの範囲を、走査型電子顕微鏡によって倍率50000倍で観察し、各区間のそれぞれ観察領域面積においてポアが占める面積割合Aと観察領域におけるポアの孔径Dを求め、前記各区間におけるポアの平均面積割合Aavgと平均孔径Davgを算出した時、0.1面積%≦Aavg≦10面積%、4nm≦Davg≦50nmであることを特徴とする表面被覆切削工具。
(2) 前記複合窒化物または複合炭窒化物層は、NaCl型の面心立方構造を有するCrとAlの複合窒化物または複合炭窒化物の単相からなることを特徴とする(1)に記載の表面被覆切削工具。
(3) 前記工具基体と前記複合窒化物または複合炭窒化物層の間に、Tiの炭化物層、窒化物層、炭窒化物層、炭酸化物層および炭窒酸化物層のうちの1層または2層以上のTi化合物層からなり、0.1〜20μmの合計平均層厚を有する下部層が存在することを特徴とする(1)または(2)に記載の表面被覆切削工具。
(4) 前記複合窒化物または複合炭窒化物層の上部に、少なくとも酸化アルミニウム層を含む上部層が1〜25μmの合計平均層厚で存在することを特徴とする(1)乃至(3)のいずれかに記載の表面被覆切削工具。」
に特徴を有するものである。
本発明について、以下に詳細に説明する。
CrAlCN層の平均層厚:
本発明の硬質被覆層は、組成式:(Cr1−xAl)(C1−y)で表されるCrとAlの複合窒化物または複合炭窒化物(CrAlCN)層を少なくとも含む。このCrAlCN層におけるCr成分は高温強度の維持、Al成分は高温硬さと耐熱性の向上に寄与することから、CrAlCN層は、所定の高温強度、高温硬さおよび耐熱性を具備するが、特に平均層厚が1〜20μmのとき、その効果が際立って発揮される。その理由は、平均層厚が1μm未満では、層厚が薄いため長期の使用に亘っての耐摩耗性を十分確保することができず、一方、その平均層厚が20μmを越えると、CrAlCN層の結晶粒が粗大化し易くなり、チッピングを発生しやすくなる。したがって、その平均層厚を1〜20μmと定めた。
CrAlCN層の組成:
本発明のCrAlCN層は、その成分組成を、
組成式:(Cr1−xAl)(C1−y
で表した場合、AlのCrとAlの合量に占める平均含有割合XavgおよびCのCとNの合量に占める平均含有割合Yavg(但し、Xavg、Yavgはいずれも原子比)が、それぞれ、0.70≦Xavg≦0.95、0≦Yavg≦0.005を満足するように制御する。
その理由は、Alの平均含有割合Xavgが0.70未満であると、CrAlCN層は耐酸化性に劣るため、炭素鋼、合金鋼、鋳鉄等の高速断続切削に供した場合には、耐摩耗性が十分でない。一方、Alの平均含有割合Xavgが0.95を超えると、硬さに劣る六方晶の析出量が増大し硬さが低下するため、耐摩耗性が低下する。したがって、Alの平均含有割合Xavgは、0.70≦Xavg≦0.95と定めた。
また、CrAlCN層に含まれるC成分の平均含有割合Yavgは、0≦Yavg≦0.005の範囲の微量であるとき、CrAlCN層と工具基体もしくは下部層との密着性が向上し、かつ、潤滑性が向上することによって切削時の衝撃を緩和し、結果としてCrAlCN層の耐欠損性および耐チッピング性が向上する。一方、C成分の平均含有割合Yavgが0≦Yavg≦0.005の範囲を外れると、CrAlCN層の靭性が低下するため耐欠損性および耐チッピング性が逆に低下するため好ましくない。したがって、Cの平均含有割合Yavgは、0≦Yavg≦0.005と定めた。ただし、Cの含有割合には、意図的にガス原料としてCを含むガスを用いなくても含まれる不可避的なCの含有割合を除外している。具体的にはCの供給量を0とした場合のCrAlCN層に含まれるC成分の含有割合(原子比)を不可避的なCの含有割合として求め、Cを意図的に供給した場合に得られるCrAlCN層に含まれるC成分の含有割合(原子比)から前記不可避的なCの含有割合を差し引いた値をYavgとして求めた。
CrAlCN層中に存在するポア:
図1に、本発明のCrAlCN層の部分拡大図を示す。
図1に示されるように、本発明のCrAlCN層は、層中に所定の平均面積割合および所定の平均孔径のポアが形成されており、切削加工時の高負荷によって層中にクラックが発生した場合であっても、このようなポアの存在によって、クラックの進展が抑制され、その結果、刃先に高負荷が作用する合金鋼等の高速断続切削加工条件においてもすぐれた耐チッピング性を発揮するようになる。
なお、ポアは、結晶粒界に存在することが望ましいが、結晶粒内にわずかに存在しても切削性能を大きく損なうことはない。
前記ポアの平均孔径Davgは、4nm未満であるとクラック進展抑制効果が十分でなく、一方、平均孔径Davgが50nmより大きいと、CrAlCN層の硬さが局所的に低下し、クラックの起点となりやすく、耐チッピング性、耐欠損性が低下する。
したがって、CrAlCN層中に形成されるポアの平均孔径Davgは4nm以上50nm以下とする。
また、前記ポアの平均面積割合Aavgが0.1%未満となるとクラックの進展抑制の効果を十分に引き出すことができず、一方、平均面積割合Aavgが20%を超えるとCrAlCN層全体においてポアによる硬さの低下が生じ、クラック起点の増加および耐摩耗性の低下による耐チッピング性および耐欠損性の低下を招くため、ポアの平均面積割合Aavgは0.1面積%以上10面積%以下とした。
また、ポアの形成箇所が結晶粒界ではなく、結晶粒内に主として存在する膜では、結晶粒そのものの強度低下により、切削時に刃先に作用する負荷によって粒内破壊を起こし、耐チッピング性低下の原因となる。このため、結晶粒内に存在するポアの面積はポアの全面積に対して、10面積%以下であることが好ましい。
ここで、ポアの平均面積割合Aavg、ポアの平均孔径Davgは、次のような方法で測定・算出することができる。
まず、走査型電子顕微鏡(倍率5000倍)を用いて硬質被覆層の縦断面を観察し、CrAlCN層の平均層厚Lavg(μm)を測定する。
ついで、該平均層厚Lavg(μm)を層厚方向に[Lavg/2]+1分割した各区間の縦断面の1μm×1μmの範囲を、走査型電子顕微鏡によって倍率50000倍で観察し、得られた画像に関して画像処理ソフト、例えばアドビ(登録商標)社のフォトショップ(登録商標)やその他公知のものによって、ポアとポアでない領域を特定し、色をつける。
そして、測定した区間において色が付けられた総面積を測定することで、測定した区間におけるポアの面積割合Aを求めることができる。
また、ポアと同定された円もしくは楕円をカウントし、その総数でポアの総面積を割ることで、その区間におけるポア1個あたりの平均面積を算出し、その面積を有するような円の直径を算出し、その値をその区間におけるポアの孔径Dとして求めることができる。
そして、上記で求めたポアの面積割合Aとポアの孔径Dを、[Lavg/2]+1分割した各区間で求め、これを平均することによって、CrAlCN層におけるポアが占める平均面積割合Aavgとポアの平均孔径Davgを求めることができる。
ここで、[Lavg/2]はガウス記号を表し、[Lavg/2]はLavg/2を超えない最大の整数を表す数学記号である。言い換えれば、[Lavg/2]は、n≦Lavg/2<n+1で定義される数値n(ただし、nは整数)を意味する。
例えば、CrAlCN層の平均層厚Lavg(μm)=1.5(μm)の場合、『[Laあればvg/2]+1分割』は、[1.5/2]+1=1分割であり、また、平均層厚Lavg(μm)=15(μm)の場合、『[Lavg/2]+1分割』は、[15/2]+1=8分割ということになる。
本発明では、CrAlCN層中におけるポアの平均面積割合Aavgとポアの平均孔径Davgを前記のとおり定めたが、局所的にポアが偏在するような場合には、ポア密度の高い個所が破壊起点となりやすいことから、層中のポアは均一に分散していること、即ち、ポアの平均数密度と標準偏差から求められる変動係数が1以下であることが好ましい。
変動係数は次のようにして求めることができる。
前記CrAlCN層の縦断面を、走査型電子顕微鏡によって倍率50000倍で1μm×1μmの範囲を観察してポアの数密度(個/μm)を測定し、5視野以上で測定することによってポアの平均数密度Navg(個/μm)と標準偏差σを算出し、標準偏差σ/平均数密度Navgから求められる変動係数が1以下であることが好ましい。
CrAlCN層を構成する相:
本発明のCrAlCN層では、該層を構成するCrAlCN結晶粒は、NaCl型の面心立方構造を有する結晶粒からなることが好ましいが、縦断面に占める面積割合が5面積%以下の六方晶構造の微粒結晶粒の含有は、切削性能に大きな影響を及ぼすことがないので含有されていても良い。
本発明で規定する成分組成、ポアの平均面積割合Aavg、ポアの平均孔径Davgを有するCrAlCN層、さらには、ポアの好ましい変動係数を有するCrAlCN層は、例えば、以下に示す条件の化学蒸着法によって成膜することができる。
成膜条件:
反応ガス組成(容量%):ガス群A:NH 1.0〜2.0%、H 65〜75%、
ガス群B:AlCl 0.2〜0.4%、CrCl 0.08〜0.1%、N:0.0〜10.0%,C 0.0〜0.05%、H:残、
反応雰囲気圧力:4.0〜5.0kPa、
反応雰囲気温度:700〜900℃
供給周期:10〜30秒、
1周期当たりのガス供給時間:0.5〜2.0秒、
ガス群Aの供給とガス群Bの供給の位相差:0.5〜1.5秒、
上記化学蒸着条件において、原料ガスの供給量および供給速度によって膜中でのポアの形成密度や大きさが変化する。これを利用して、ポアの平均面積割合Aavgおよびポアの平均孔径Davgを、金属原料ガスの割合および供給周期を変化させることによって、制御することができる。
下部層および上部層:
本発明のCrAlCN層は、それだけでも十分な効果を奏するが、Tiの炭化物層、窒化物層、炭窒化物層、炭酸化物層および炭窒酸化物層のうちの1層または2層以上のTi化合物層からなり、0.1〜20μmの合計平均層厚を有する下部層を設けた場合、および/または、少なくとも酸化アルミニウム層を含む上部層を1〜25μmの合計平均層厚で設けた場合には、これらの層が奏する効果と相俟って、一層すぐれた特性を創出することができる。Tiの炭化物層、窒化物層、炭窒化物層、炭酸化物層および炭窒酸化物層のうちの1層または2層以上のTi化合物層からなる下部層を設ける場合、下部層の合計平均層厚が0.1μm未満では、下部層の効果が十分に奏されず、一方、20μmを超えると結晶粒が粗大化し易くなり、チッピングを発生しやすくなる。また、少なくとも酸化アルミニウム層を含む上部層の合計平均層厚が1μm未満では、上部層の効果が十分に奏されず、一方、25μmを超えると結晶粒が粗大化し易くなり、チッピングを発生しやすくなる。
本発明は、工具基体の表面に、硬質被覆層を設けた表面被覆切削工具において、硬質被覆層が、CrAlCN層を少なくとも含み、該CrAlCNを組成式:(Cr1−xAl)(C1−y)で表した場合、AlのCrとAlの合量に占める平均含有割合XavgおよびCのCとNの合量に占める平均含有割合Yavgは、それぞれ、0.70≦Xavg≦0.95、0≦Yavg≦0.005(但し、Xavg、Yavgはいずれも原子比)を満足し、該CrAlCN層を構成する結晶粒中にNaCl型の面心立方構造を有するCrAlCN結晶粒が存在し、また、該CrAlCN層中には所定の平均面積割合Aavgと平均孔径Davgのポアが存在することによって、層中におけるクラックの伝播・進展が抑制されるため、刃先に高負荷が作用する炭素鋼、合金鋼、鋳鉄等の高速断続切削加工で、すぐれた耐チッピング性を発揮する。
本発明のCrAlCN層の縦断面を模式的に表した層構造の概略模式図である。
つぎに、本発明の被覆工具を実施例により具体的に説明する。
なお、実施例では、WC基超硬合金、TiCN基サーメットを工具基体として用いた場合について説明するが、立方晶窒化ホウ素基超高圧焼結体を工具基体とした場合にも、同様の効果が得られる。
原料粉末として、いずれも1〜3μmの平均粒径を有するWC粉末、TiC粉末、TaC粉末、NbC粉末、Cr32粉末およびCo粉末を用意し、これら原料粉末を、表1に示される配合組成に配合し、さらにワックスを加えてアセトン中で24時間ボールミル混合し、減圧乾燥した後、98MPaの圧力で所定形状の圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を5Paの真空中、1370〜1470℃の範囲内の所定の温度に1時間保持の条件で真空焼結し、焼結後、ISO規格SEEN1203AFSNのインサート形状をもったWC基超硬合金製の工具基体A〜Cをそれぞれ製造した。
また、原料粉末として、いずれも0.5〜2μmの平均粒径を有するTiCN(質量比でTiC/TiN=50/50)粉末、Mo2C粉末、ZrC粉末、NbC粉末、WC粉末、Co粉末およびNi粉末を用意し、これら原料粉末を、表2に示される配合組成に配合し、ボールミルで24時間湿式混合し、乾燥した後、98MPaの圧力で圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を1.3kPaの窒素雰囲気中、温度:1500℃に1時間保持の条件で焼結し、焼結後、ISO規格SEEN1203AFSNのインサート形状をもったTiCN基サーメット製の工具基体Dを作製した。
つぎに、これらの工具基体A〜Dの表面に、化学蒸着装置を用い、
表4に示される形成条件A〜H、すなわち、NHとHからなるガス群Aと、AlCl、CrCl、N、C、Hからなるガス群B、および、おのおのガスの供給方法として、反応ガス組成(ガス群Aおよびガス群Bを合わせた全体に対する容量%)を、ガス群AとしてNH:1.0〜2.0%、H:65〜75%、ガス群BとしてAlCl 0.2〜0.4%、CrCl 0.08〜0.1%、N:0.0〜10.0%,C 0.0〜0.05%、H:残、反応雰囲気圧力:4.0〜5.0kPa、反応雰囲気温度:700〜900℃、供給周期10〜30秒、1周期当たりのガス供給時間0.5〜2.0秒、ガス群Aの供給とガス群Bの供給の位相差0.5〜1.5秒として、所定時間、熱CVD法を行い、表6に示されるCrAlCN層を成膜することにより本発明被覆工具1〜12を製造した。
なお、本発明被覆工具5〜12については、表3に示される形成条件で、表5に示される下部層、上部層を形成した。
また、比較の目的で、工具基体A〜Dの表面に、表3および表4に示される比較成膜工程の条件で、表7に示される目標平均層厚(μm)で本発明被覆工具1〜12と同様に、少なくともCrAlCN層を含む硬質被覆層を蒸着形成し比較被覆工具1〜12を製造した。この時には、CrAlCN層の成膜工程中に、工具基体表面における反応ガス組成が時間的に変化しない様に硬質被覆層を形成することにより比較被覆工具5〜12を製造した。
なお、本発明被覆工具5〜12と同様に、比較被覆工具10〜12については、表3に示される形成条件で、表5に示される下部層、上部層を形成した。
ついで、本発明被覆工具1〜12、比較被覆工具1〜12の各構成層の工具基体表面に垂直な方向の縦断面を、走査型電子顕微鏡(倍率5000倍)を用いて測定し、観察視野内の5点の層厚を測って平均して平均層厚を求めたところ、いずれも表6および表7に示される目標層厚と実質的に同じ目標平均層厚を示した。なお、CrAlCN層の平均層厚はLavg(μm)で示す。
また、CrAlCN層の平均Al含有割合Xavgについては、電子線マイクロアナライザ(EPMA,Electron−Probe−Micro−Analyser)を用い、表面を研磨した試料において、電子線を試料表面側から照射し、得られた特性X線の解析結果の10点平均からAlの平均Al含有割合Xavgを求めた。
平均C含有割合Yavgについては、二次イオン質量分析(SIMS,Secondary−Ion−Mass−Spectroscopy)により求めた。イオンビームを試料表面側から70μm×70μmの範囲に照射し、スパッタリング作用によって放出された成分について深さ方向の濃度測定を行った。平均C含有割合YavgはTiAlCN層についての深さ方向の平均値を示す。
ただし、Cの含有割合には、意図的にガス原料としてCを含むガスを用いなくても含まれる不可避的なCの含有割合を除外している。具体的にはCの供給量を0とした場合のCrAlCN層に含まれるC成分の含有割合(原子比)を不可避的なCの含有割合として求め、Cを意図的に供給した場合に得られるCrAlCN層に含まれるC成分の含有割合(原子比)から前記不可避的なCの含有割合を差し引いた値をYavgとして求めた。
表6および表7に、XavgおよびYavgの値を示す。
ついで、本発明被覆工具1〜12、比較被覆工具1〜12について、それぞれ、CrAlCN層中に存在するポアの平均面積割合Aavgと平均孔径Davgを、次のような手順で求めた。
まず、走査型電子顕微鏡(倍率5000倍)を用いて硬質被覆層の縦断面を観察し、CrAlCN層の平均層厚Lavg(μm)を測定し、ついで、該平均層厚Lavg(μm)を層厚方向に[Lavg/2]+1分割した各区間の縦断面の1μm×1μmの範囲を、走査型電子顕微鏡(倍率50000倍)で観察し、得られた画像に関して画像処理ソフト、例えばアドビ(登録商標)社のフォトショップ(登録商標)やその他公知のものによって、ポアとポアでない領域を特定し、色をつける。
そして、測定した区間において色が付けられた総面積を測定することで、測定した区間におけるポアの面積割合Aを求める。
また、ポアと同定された円もしくは楕円の個数をカウントし、その総数でポアの総面積を割ることで、その区間におけるポア1個あたりの平均面積を算出し、その面積を有するような円の直径を算出し、その値をその区間におけるポアの孔径Dとして求める。
ついで、上記で求めたポアの面積割合Aとポアの孔径Dを、[Lavg/2]+1分割した各区間で求め、これを平均することによって、CrAlCN層におけるポアが占める平均面積割合Aavgとポアの平均孔径Davgを求める。
なお、[Lavg/2]+1分割とは、既に述べたように、n≦Lavg/2<n+1で定義される数値n(ただし、nは整数)によって、CrAlCN層の平均層厚Lavg(μm)をn分割することを意味する。
また、CrAlCN層の結晶粒内に存在するポア(即ち、結晶粒界に存在するポアを除く)の面積比率は、各区間において、一つの結晶粒に内包されるポアの面積をポアの総面積で除すことで、その区間における結晶粒内に存在するポアの面積比率を求め、ついで、各区間における粒内に存在するポアの面積比率を平均することによって求めた。
表6および表7に、その結果を示す。
また、CrAlCN層中に存在するポアの分散性について、次の方法で測定した。
先述の方法でCrAlCN層の平均層厚Lavg(μm)をn分割した各区間で、CrAlCN層の縦断面を、走査型電子顕微鏡によって倍率50000倍で1μm×1μmの範囲を観察してポアの数密度(個/μm)を測定した。5視野以上で測定することによってポアの平均数密度Navg(個/μm)と標準偏差σを算出し、標準偏差σ/平均数密度Navgから求められる変動係数を評価した。n<5の場合は、5視野以上となるように各区間において層厚方向に対して90度の方向に視野が重ならないように移動し、同様にポアの平均数密度を算出し、5視野以上の観察を行う。
表6および表7に、その結果を示す。
前記本発明被覆工具1〜12、比較被覆工具1〜12の硬質被覆層を構成するCrAlCN層について、透過型電子顕微鏡を用いて複数視野に亘って観察し、CrAlCN結晶粒がNaCl型の立方晶構造単相からなるか、六方晶構造の結晶粒が存在するかを、透過型電子顕微鏡を用いて電子線回折図形を解析することにより確認した。
表6および表7に、その結果を示す。







つぎに、前記各種の被覆工具をいずれもカッタ径125mmの工具鋼製カッタ先端部に固定治具にてクランプした状態で、本発明被覆工具1〜12、比較被覆工具1〜12について、以下に示す、合金向の高速断続切削の一種である乾式高速正面フライス、センターカット切削加工試験を実施し、いずれも切刃の逃げ面摩耗幅を測定した。
<切削試験:乾式高速正面フライス、センターカット切削加工>
工具基体:炭化タングステン基超硬合金、炭窒化チタン基サーメット、
切削試験: 乾式高速正面フライス、センターカット切削加工、
被削材: JIS・SCM440幅100mm、長さ400mmのブロック材、
回転速度: 866 min−1
切削速度: 340 m/min、
切り込み: 2.5 mm、
一刃送り量: 0.3 mm/刃、
切削時間: 8分、
(通常の切削速度は、220m/min)
表8に、前記切削試験の結果を示す。

原料粉末として、いずれも1〜3μmの平均粒径を有するWC粉末、TiC粉末、ZrC粉末、TaC粉末、NbC粉末、Cr32粉末、TiN粉末およびCo粉末を用意し、これら原料粉末を、表9に示される配合組成に配合し、さらにワックスを加えてアセトン中で24時間ボールミル混合し、減圧乾燥した後、98MPaの圧力で所定形状の圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を5Paの真空中、1370〜1470℃の範囲内の所定の温度に1時間保持の条件で真空焼結し、焼結後、切刃部にR:0.07mmのホーニング加工を施すことによりISO規格CNMG120412のインサート形状をもったWC基超硬合金製の工具基体α〜γをそれぞれ製造した。
また、原料粉末として、いずれも0.5〜2μmの平均粒径を有するTiCN(質量比でTiC/TiN=50/50)粉末、NbC粉末、WC粉末、Co粉末、およびNi粉末を用意し、これら原料粉末を、表10に示される配合組成に配合し、ボールミルで24時間湿式混合し、乾燥した後、98MPaの圧力で圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を1.3kPaの窒素雰囲気中、温度:1500℃に1時間保持の条件で焼結し、焼結後、切刃部分にR:0.09mmのホーニング加工を施すことによりISO規格・CNMG120412のインサート形状をもったTiCN基サーメット製の工具基体δを形成した。
つぎに、これらの工具基体α〜γおよび工具基体δの表面に、通常の化学蒸着装置を用い、表4に示される形成条件A〜H、すなわち、NHとHからなるガス群Aと、AlCl、CrCl、N、C、Hからなるガス群B、および、おのおのガスの供給方法として、反応ガス組成(ガス群Aおよびガス群Bを合わせた全体に対する容量%)を、ガス群AとしてNH:1.0〜2.0%、H:65〜75%、ガス群BとしてAlCl 0.2〜0.4%、CrCl 0.08〜0.1%、N:0.0〜10.0%,C 0.0〜0.05%、H:残、反応雰囲気圧力:4.0〜5.0kPa、反応雰囲気温度:700〜900℃、供給周期10〜30秒、1周期当たりのガス供給時間0.5〜2.0秒、ガス群Aの供給とガス群Bの供給の位相差0.5〜1.5秒として、所定時間、熱CVD法を行い、表12に示されるCrAlCN層を成膜することによりことにより本発明被覆工具13〜24を製造した。
なお、本発明被覆工具16〜24については、表3に示される形成条件で、表11に示される下部層、上部層を形成した。
また、比較の目的で、同じく工具基体α〜γおよび工具基体δの表面に、通常の化学蒸着装置を用い、表3および表4に示される条件かつ表13に示される目標平均層厚で本発明被覆工具と同様に硬質被覆層を蒸着形成することにより、表13に示される比較被覆工具13〜24を製造した。
なお、本発明被覆工具16〜24と同様に、比較被覆工具16〜24については、表3に示される形成条件で、表11に示される下部層、上部層を形成した。
ついで、本発明被覆工具13〜24、比較被覆工具13〜24の各構成層の工具基体表面に垂直な方向の縦断面を、走査型電子顕微鏡(倍率5000倍)を用いて測定し、観察視野内の5点の層厚を測って平均して平均層厚を求めたところ、いずれも表6および表7に示される目標層厚と実質的に同じ目標平均層厚を示した。なお、CrAlCN層の平均層厚はLavg(μm)で示す。
また、CrAlCN層の平均Al含有割合Xavgについては、電子線マイクロアナライザ(EPMA,Electron−Probe−Micro−Analyser)を用い、表面を研磨した試料において、電子線を試料表面側から照射し、得られた特性X線の解析結果の10点平均からAlの平均Al含有割合Xavgを求めた。
平均C含有割合Yavgについては、二次イオン質量分析(SIMS,Secondary−Ion−Mass−Spectroscopy)により求めた。イオンビームを試料表面側から70μm×70μmの範囲に照射し、スパッタリング作用によって放出された成分について深さ方向の濃度測定を行った。平均C含有割合YavgはTiAlCN層についての深さ方向の平均値を示す。
ただし、Cの含有割合には、意図的にガス原料としてCを含むガスを用いなくても含まれる不可避的なCの含有割合を除外している。具体的にはCの供給量を0とした場合のCrAlCN層に含まれるC成分の含有割合(原子比)を不可避的なCの含有割合として求め、Cを意図的に供給した場合に得られるCrAlCN層に含まれるC成分の含有割合(原子比)から前記不可避的なCの含有割合を差し引いた値をYavgとして求めた。
表12および表13に、XavgおよびYavgの値を示す。
ついで、本発明被覆工具13〜24、比較被覆工具13〜24について、それぞれ、CrAlCN層中に存在するポアの平均面積割合Aavgと平均孔径Davgを、次のような手順で求めた。
まず、走査型電子顕微鏡(倍率5000倍)を用いて硬質被覆層の縦断面を観察し、CrAlCN層の平均層厚Lavg(μm)を測定し、ついで、該平均層厚Lavg(μm)を層厚方向に[Lavg/2]+1分割した各区間の縦断面の1μm×1μmの範囲を、走査型電子顕微鏡(倍率50000倍)で観察し、得られた画像に関して画像処理ソフト、例えばアドビ(登録商標)社のフォトショップ(登録商標)やその他公知のものによって、ポアとポアでない領域を特定し、色をつける。
そして、測定した区間において色が付けられた総面積を測定することで、測定した区間におけるポアの面積割合Aを求める。
また、ポアと同定された円もしくは楕円の個数をカウントし、その総数でポアの総面積を割ることで、その区間におけるポア1個あたりの平均面積を算出し、その面積を有するような円の直径を算出し、その値をその区間におけるポアの孔径Dとして求める。
ついで、上記で求めたポアの面積割合Aとポアの孔径Dを、[Lavg/2]+1分割した各区間で求め、これを平均することによって、CrAlCN層におけるポアが占める平均面積割合Aavgとポアの平均孔径Davgを求める。
なお、[Lavg/2]+1分割とは、既に述べたように、n≦Lavg/2<n+1で定義される数値n(ただし、nは整数)によって、CrAlCN層の平均層厚Lavg(μm)をn分割することを意味する。
また、CrAlCN層の結晶粒内に存在するポア(即ち、結晶粒界に存在するポアを除く)の面積比率は、各区間において、一つの結晶粒に内包されるポアの面積をポアの総面積で除すことで、その区間における結晶粒内に存在するポアの面積比率を求め、ついで、各区間における粒内に存在するポアの面積比率を平均することによって求めた。
表12および表13に、その結果を示す。
先述の方法でCrAlCN層の平均層厚Lavg(μm)をn分割した各区間で、CrAlCN層の縦断面を、走査型電子顕微鏡によって倍率50000倍で1μm×1μmの範囲を観察してポアの数密度(個/μm)を測定した。5視野以上で測定することによってポアの平均数密度Navg(個/μm)と標準偏差σを算出し、標準偏差σ/平均数密度Navgから求められる変動係数を評価した。n<5の場合は、5視野以上となるように各区間において層厚方向に対して90度の方向に視野が重ならないように移動し、同様にポアの平均数密度を算出し、5視野以上の観察を行う。
表12および表13に、その結果を示す。
前記本発明被覆工具13〜24、比較被覆工具13〜24の硬質被覆層を構成するCrAlCN層について、透過型電子顕微鏡を用いて複数視野に亘って観察し、CrAlCN結晶粒がNaCl型の立方晶構造単相からなるか、六方晶構造の結晶粒が存在するかを、透過型電子顕微鏡を用いて電子線回折図形を解析することにより確認した。
表12および表13に、その結果を示す。



つぎに、前記各種の被覆工具をいずれも工具鋼製バイトの先端部に固定治具にてネジ止めした状態で、本発明被覆工具13〜24、比較被覆工具13〜24について、以下に示す、炭素鋼・鋳鉄の湿式高速断続切削試験を実施し、いずれも切刃の逃げ面摩耗幅を測定した。
切削条件1:
被削材:JIS・S15Cの長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒、
切削速度:280 m/min、
切り込み:2.5 mm、
送り:0.32 mm/rev、
切削時間:5 分、
(通常の切削速度は、200m/min)、
切削条件2:
被削材:JIS・FCD450の長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒、
切削速度:270 m/min、
切り込み:2.2 mm、
送り:0.32 mm/rev、
切削時間:5 分、
(通常の切削速度は、200m/min)、
表14に、前記切削試験の結果を示す。
表8、表14に示される結果から、本発明の被覆工具は、CrAlCN層に所定の平均面積割合と所定の平均孔径を有するポアが存在することで、層中のクラックの伝播・進展が抑制され、刃先に高負荷が作用する炭素鋼、合金鋼、鋳鉄等の高速断続切削加工で、すぐれた耐チッピング性、耐摩耗性を発揮する。
これに対して、CrAlCN層に本発明で規定するポアの平均面積割合、平均孔径を有するポアが存在しない比較被覆工具については、高熱発生を伴い、しかも、切れ刃に断続的・衝撃的高負荷が作用する高速断続切削加工に用いた場合、チッピング、欠損等の発生により短時間で寿命にいたることが明らかである。
本発明の被覆工具は、炭素鋼、合金鋼、鋳鉄の高速断続切削加工ばかりでなく、各種の被削材の被覆工具として用いることができ、しかも、長期の使用に亘ってすぐれた耐チッピング性、耐摩耗性を発揮するものであるから、切削装置の高性能化並びに切削加工の省力化および省エネ化、さらに低コスト化に十分満足に対応できるものである。

Claims (4)

  1. 炭化タングステン基超硬合金、炭窒化チタン基サーメットまたは立方晶窒化ホウ素基超高圧焼結体のいずれかで構成された工具基体の表面に、硬質被覆層が設けられた表面被覆切削工具において、
    (a)前記硬質被覆層は、平均層厚1〜20μmのCrとAlの複合窒化物または複合炭窒化物層を少なくとも含み、
    (b)前記複合窒化物または複合炭窒化物層は、NaCl型の面心立方構造を有する複合窒化物または複合炭窒化物の相を少なくとも含み、
    (c)前記複合窒化物または複合炭窒化物層は、
    組成式:(Cr1−xAl)(C1−y
    で表した場合、AlのCrとAlの合量に占める平均含有割合XavgおよびCのCとNの合量に占める平均含有割合Yavg(但し、Xavg、Yavgはいずれも原子比)が、それぞれ、0.70≦Xavg≦0.95、0≦Yavg≦0.005を満足し、
    (d)前記複合窒化物または複合炭窒化物層にはポアが存在しており、前記複合窒化物または複合炭窒化物層の平均層厚をLavg(μm)とした場合、該平均層厚Lavg(μm)
    を層厚方向に[Lavg/2]+1分割した各区間の縦断面の1μm×1μmの範囲を、走査型電子顕微鏡によって倍率50000倍で観察し、各区間のそれぞれ観察領域面積においてポアが占める面積割合Aと観察領域におけるポアの孔径Dを求め、前記各区間におけるポアの平均面積割合Aavgと平均孔径Davgを算出した時、0.1面積%≦Aavg≦10面積%、4nm≦Davg≦50nmであることを特徴とする表面被覆切削工具。
  2. 前記複合窒化物または複合炭窒化物層は、NaCl型の面心立方構造を有するCrとAlの複合窒化物または複合炭窒化物の単相からなることを特徴とする請求項1に記載の表面被覆切削工具。
  3. 前記工具基体と前記複合窒化物または複合炭窒化物層の間に、Tiの炭化物層、窒化物層、炭窒化物層、炭酸化物層および炭窒酸化物層のうちの1層または2層以上のTi化合物層からなり、0.1〜20μmの合計平均層厚を有する下部層が存在することを特徴とする請求項1または2に記載の表面被覆切削工具。
  4. 前記複合窒化物または複合炭窒化物層の上部に、少なくとも酸化アルミニウム層を含む上部層が1〜25μmの合計平均層厚で存在することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の表面被覆切削工具。
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