JP2018034277A - 硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆切削工具 - Google Patents
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Abstract
Description
ただ、前記従来のCr−Al系の複合窒化物層を被覆形成した被覆工具は、比較的高温強度にすぐれるものの、高速断続切削条件で用いた場合にチッピング等の異常損耗を発生しやすいことから、硬質被覆層の改善についての種々の提案がなされている。
有割合を示し、原子比で、0.60≦Y≦0.90)のうち1層または2層以上からなる
立方晶結晶構造を有するCrとAlの窒化物、炭化物あるいは炭窒化物で構成し、(c)上部層を、孔径が2〜30nmで空孔密度が100〜500個/μm2の微小空孔を有するAl2O3で構成することによって、例えば、析出硬化系ステンレス鋼やインコネル等の耐熱合金を高速切削加工した場合の耐チッピング性と耐摩耗性を改善することが提案されている。
有割合を示し、原子比で、0.60≦Y≦0.90)のうち1層または2層以上からなる
立方晶結晶構造を有するCrとAlの窒化物、炭化物あるいは炭窒化物で構成し、(c)上部層を、Al2O3あるいは微量のZrを含有するAl2O3で構成することによって、例えば、ステンレス鋼やTi合金などの難削材を高速切削加工した場合の耐チッピング性と耐摩耗性を改善することが提案されている。
また、前記特許文献2、3で提案されている被覆工具は、硬質被覆層の中間層として、CrとAlの窒化物、炭化物あるいは炭窒化物を介在形成することにより、下部層と上部層の密着強度を向上させ、耐チッピング性の改善を図っているものの、CrとAlの窒化物、炭化物あるいは炭窒化物自体の強度・硬さが十分でないため、高速断続切削加工に供した場合には、耐チッピング性、耐摩耗性が十分であるとはいえない。
前記特許文献4で提案されている被覆工具においては、(CrXAl1−X)Nからなる硬質被覆層のCr含有割合を調整し、また、結晶配向性と構成原子共有格子点分布形態を制御することにより、硬質被覆層の強度を向上させることができ、その結果、耐チッピング性、耐欠損性を高めることはできるものの、やはり(CrXAl1−X)N層の強度・硬さが十分でないため、長期の使用にわたってすぐれた耐チッピング性、耐摩耗性を発揮することはできず、合金鋼の高速断続切削においては工具寿命が短命であるという問題があった。
そこで、炭素鋼、合金鋼、鋳鉄等の高熱発生を伴うとともに、切刃に対して衝撃的な負荷が作用する高速断続切削加工で、硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性、すぐれた耐摩耗性を相兼ね備える被覆工具が求められている。
限定された条件で、CrAlCNを成膜することにより、CrAlCN層中にポアを形成することができ、さらに、層中に形成されるポアの平均面積割合と平均孔径の適正化を図ることにより、クラックの進行を抑制し得るようになること、そしてその結果として、刃先に高負荷が作用する炭素鋼、合金鋼、鋳鉄等の高速断続切削加工で、すぐれた耐チッピング性を発揮するようになることを見出した。
「(1) 炭化タングステン基超硬合金、炭窒化チタン基サーメットまたは立方晶窒化ホウ素基超高圧焼結体のいずれかで構成された工具基体の表面に、硬質被覆層が設けられた表面被覆切削工具において、
(a)前記硬質被覆層は、平均層厚1〜20μmのCrとAlの複合窒化物または複合炭窒化物層を少なくとも含み、
(b)前記複合窒化物または複合炭窒化物層は、NaCl型の面心立方構造を有する複合窒化物または複合炭窒化物の相を少なくとも含み、
(c)前記複合窒化物または複合炭窒化物層は、
組成式:(Cr1−xAlx)(CyN1−y)
で表した場合、AlのCrとAlの合量に占める平均含有割合XavgおよびCのCとNの合量に占める平均含有割合Yavg(但し、Xavg、Yavgはいずれも原子比)が、それぞれ、0.70≦Xavg≦0.95、0≦Yavg≦0.005を満足し、
(d)前記複合窒化物または複合炭窒化物層にはポアが存在しており、前記複合窒化物または複合炭窒化物層の平均層厚をLavg(μm)とした場合、該平均層厚Lavg(μm)
を層厚方向に[Lavg/2]+1分割した各区間の縦断面の1μm×1μmの範囲を、走査型電子顕微鏡によって倍率50000倍で観察し、各区間のそれぞれ観察領域面積においてポアが占める面積割合Aと観察領域におけるポアの孔径Dを求め、前記各区間におけるポアの平均面積割合Aavgと平均孔径Davgを算出した時、0.1面積%≦Aavg≦10面積%、4nm≦Davg≦50nmであることを特徴とする表面被覆切削工具。
(2) 前記複合窒化物または複合炭窒化物層は、NaCl型の面心立方構造を有するCrとAlの複合窒化物または複合炭窒化物の単相からなることを特徴とする(1)に記載の表面被覆切削工具。
(3) 前記工具基体と前記複合窒化物または複合炭窒化物層の間に、Tiの炭化物層、窒化物層、炭窒化物層、炭酸化物層および炭窒酸化物層のうちの1層または2層以上のTi化合物層からなり、0.1〜20μmの合計平均層厚を有する下部層が存在することを特徴とする(1)または(2)に記載の表面被覆切削工具。
(4) 前記複合窒化物または複合炭窒化物層の上部に、少なくとも酸化アルミニウム層を含む上部層が1〜25μmの合計平均層厚で存在することを特徴とする(1)乃至(3)のいずれかに記載の表面被覆切削工具。」
に特徴を有するものである。
本発明の硬質被覆層は、組成式:(Cr1−xAlx)(CyN1−y)で表されるCrとAlの複合窒化物または複合炭窒化物(CrAlCN)層を少なくとも含む。このCrAlCN層におけるCr成分は高温強度の維持、Al成分は高温硬さと耐熱性の向上に寄与することから、CrAlCN層は、所定の高温強度、高温硬さおよび耐熱性を具備するが、特に平均層厚が1〜20μmのとき、その効果が際立って発揮される。その理由は、平均層厚が1μm未満では、層厚が薄いため長期の使用に亘っての耐摩耗性を十分確保することができず、一方、その平均層厚が20μmを越えると、CrAlCN層の結晶粒が粗大化し易くなり、チッピングを発生しやすくなる。したがって、その平均層厚を1〜20μmと定めた。
本発明のCrAlCN層は、その成分組成を、
組成式:(Cr1−xAlx)(CyN1−y)
で表した場合、AlのCrとAlの合量に占める平均含有割合XavgおよびCのCとNの合量に占める平均含有割合Yavg(但し、Xavg、Yavgはいずれも原子比)が、それぞれ、0.70≦Xavg≦0.95、0≦Yavg≦0.005を満足するように制御する。
その理由は、Alの平均含有割合Xavgが0.70未満であると、CrAlCN層は耐酸化性に劣るため、炭素鋼、合金鋼、鋳鉄等の高速断続切削に供した場合には、耐摩耗性が十分でない。一方、Alの平均含有割合Xavgが0.95を超えると、硬さに劣る六方晶の析出量が増大し硬さが低下するため、耐摩耗性が低下する。したがって、Alの平均含有割合Xavgは、0.70≦Xavg≦0.95と定めた。
また、CrAlCN層に含まれるC成分の平均含有割合Yavgは、0≦Yavg≦0.005の範囲の微量であるとき、CrAlCN層と工具基体もしくは下部層との密着性が向上し、かつ、潤滑性が向上することによって切削時の衝撃を緩和し、結果としてCrAlCN層の耐欠損性および耐チッピング性が向上する。一方、C成分の平均含有割合Yavgが0≦Yavg≦0.005の範囲を外れると、CrAlCN層の靭性が低下するため耐欠損性および耐チッピング性が逆に低下するため好ましくない。したがって、Cの平均含有割合Yavgは、0≦Yavg≦0.005と定めた。ただし、Cの含有割合には、意図的にガス原料としてCを含むガスを用いなくても含まれる不可避的なCの含有割合を除外している。具体的にはC2H4の供給量を0とした場合のCrAlCN層に含まれるC成分の含有割合(原子比)を不可避的なCの含有割合として求め、C2H4を意図的に供給した場合に得られるCrAlCN層に含まれるC成分の含有割合(原子比)から前記不可避的なCの含有割合を差し引いた値をYavgとして求めた。
図1に、本発明のCrAlCN層の部分拡大図を示す。
図1に示されるように、本発明のCrAlCN層は、層中に所定の平均面積割合および所定の平均孔径のポアが形成されており、切削加工時の高負荷によって層中にクラックが発生した場合であっても、このようなポアの存在によって、クラックの進展が抑制され、その結果、刃先に高負荷が作用する合金鋼等の高速断続切削加工条件においてもすぐれた耐チッピング性を発揮するようになる。
なお、ポアは、結晶粒界に存在することが望ましいが、結晶粒内にわずかに存在しても切削性能を大きく損なうことはない。
前記ポアの平均孔径Davgは、4nm未満であるとクラック進展抑制効果が十分でなく、一方、平均孔径Davgが50nmより大きいと、CrAlCN層の硬さが局所的に低下し、クラックの起点となりやすく、耐チッピング性、耐欠損性が低下する。
したがって、CrAlCN層中に形成されるポアの平均孔径Davgは4nm以上50nm以下とする。
また、前記ポアの平均面積割合Aavgが0.1%未満となるとクラックの進展抑制の効果を十分に引き出すことができず、一方、平均面積割合Aavgが20%を超えるとCrAlCN層全体においてポアによる硬さの低下が生じ、クラック起点の増加および耐摩耗性の低下による耐チッピング性および耐欠損性の低下を招くため、ポアの平均面積割合Aavgは0.1面積%以上10面積%以下とした。
また、ポアの形成箇所が結晶粒界ではなく、結晶粒内に主として存在する膜では、結晶粒そのものの強度低下により、切削時に刃先に作用する負荷によって粒内破壊を起こし、耐チッピング性低下の原因となる。このため、結晶粒内に存在するポアの面積はポアの全面積に対して、10面積%以下であることが好ましい。
まず、走査型電子顕微鏡(倍率5000倍)を用いて硬質被覆層の縦断面を観察し、CrAlCN層の平均層厚Lavg(μm)を測定する。
ついで、該平均層厚Lavg(μm)を層厚方向に[Lavg/2]+1分割した各区間の縦断面の1μm×1μmの範囲を、走査型電子顕微鏡によって倍率50000倍で観察し、得られた画像に関して画像処理ソフト、例えばアドビ(登録商標)社のフォトショップ(登録商標)やその他公知のものによって、ポアとポアでない領域を特定し、色をつける。
そして、測定した区間において色が付けられた総面積を測定することで、測定した区間におけるポアの面積割合Aを求めることができる。
また、ポアと同定された円もしくは楕円をカウントし、その総数でポアの総面積を割ることで、その区間におけるポア1個あたりの平均面積を算出し、その面積を有するような円の直径を算出し、その値をその区間におけるポアの孔径Dとして求めることができる。
そして、上記で求めたポアの面積割合Aとポアの孔径Dを、[Lavg/2]+1分割した各区間で求め、これを平均することによって、CrAlCN層におけるポアが占める平均面積割合Aavgとポアの平均孔径Davgを求めることができる。
ここで、[Lavg/2]はガウス記号を表し、[Lavg/2]はLavg/2を超えない最大の整数を表す数学記号である。言い換えれば、[Lavg/2]は、n≦Lavg/2<n+1で定義される数値n(ただし、nは整数)を意味する。
例えば、CrAlCN層の平均層厚Lavg(μm)=1.5(μm)の場合、『[Laあればvg/2]+1分割』は、[1.5/2]+1=1分割であり、また、平均層厚Lavg(μm)=15(μm)の場合、『[Lavg/2]+1分割』は、[15/2]+1=8分割ということになる。
変動係数は次のようにして求めることができる。
前記CrAlCN層の縦断面を、走査型電子顕微鏡によって倍率50000倍で1μm×1μmの範囲を観察してポアの数密度(個/μm2)を測定し、5視野以上で測定することによってポアの平均数密度Navg(個/μm2)と標準偏差σを算出し、標準偏差σ/平均数密度Navgから求められる変動係数が1以下であることが好ましい。
本発明のCrAlCN層では、該層を構成するCrAlCN結晶粒は、NaCl型の面心立方構造を有する結晶粒からなることが好ましいが、縦断面に占める面積割合が5面積%以下の六方晶構造の微粒結晶粒の含有は、切削性能に大きな影響を及ぼすことがないので含有されていても良い。
成膜条件:
反応ガス組成(容量%):ガス群A:NH3 1.0〜2.0%、H2 65〜75%、
ガス群B:AlCl3 0.2〜0.4%、CrCl3 0.08〜0.1%、N2:0.0〜10.0%,C2H4 0.0〜0.05%、H2:残、
反応雰囲気圧力:4.0〜5.0kPa、
反応雰囲気温度:700〜900℃
供給周期:10〜30秒、
1周期当たりのガス供給時間:0.5〜2.0秒、
ガス群Aの供給とガス群Bの供給の位相差:0.5〜1.5秒、
上記化学蒸着条件において、原料ガスの供給量および供給速度によって膜中でのポアの形成密度や大きさが変化する。これを利用して、ポアの平均面積割合Aavgおよびポアの平均孔径Davgを、金属原料ガスの割合および供給周期を変化させることによって、制御することができる。
本発明のCrAlCN層は、それだけでも十分な効果を奏するが、Tiの炭化物層、窒化物層、炭窒化物層、炭酸化物層および炭窒酸化物層のうちの1層または2層以上のTi化合物層からなり、0.1〜20μmの合計平均層厚を有する下部層を設けた場合、および/または、少なくとも酸化アルミニウム層を含む上部層を1〜25μmの合計平均層厚で設けた場合には、これらの層が奏する効果と相俟って、一層すぐれた特性を創出することができる。Tiの炭化物層、窒化物層、炭窒化物層、炭酸化物層および炭窒酸化物層のうちの1層または2層以上のTi化合物層からなる下部層を設ける場合、下部層の合計平均層厚が0.1μm未満では、下部層の効果が十分に奏されず、一方、20μmを超えると結晶粒が粗大化し易くなり、チッピングを発生しやすくなる。また、少なくとも酸化アルミニウム層を含む上部層の合計平均層厚が1μm未満では、上部層の効果が十分に奏されず、一方、25μmを超えると結晶粒が粗大化し易くなり、チッピングを発生しやすくなる。
なお、実施例では、WC基超硬合金、TiCN基サーメットを工具基体として用いた場合について説明するが、立方晶窒化ホウ素基超高圧焼結体を工具基体とした場合にも、同様の効果が得られる。
表4に示される形成条件A〜H、すなわち、NH3とH2からなるガス群Aと、AlCl3、CrCl3、N2、C2H4、H2からなるガス群B、および、おのおのガスの供給方法として、反応ガス組成(ガス群Aおよびガス群Bを合わせた全体に対する容量%)を、ガス群AとしてNH3:1.0〜2.0%、H2:65〜75%、ガス群BとしてAlCl3 0.2〜0.4%、CrCl3 0.08〜0.1%、N2:0.0〜10.0%,C2H4 0.0〜0.05%、H2:残、反応雰囲気圧力:4.0〜5.0kPa、反応雰囲気温度:700〜900℃、供給周期10〜30秒、1周期当たりのガス供給時間0.5〜2.0秒、ガス群Aの供給とガス群Bの供給の位相差0.5〜1.5秒として、所定時間、熱CVD法を行い、表6に示されるCrAlCN層を成膜することにより本発明被覆工具1〜12を製造した。
なお、本発明被覆工具5〜12については、表3に示される形成条件で、表5に示される下部層、上部層を形成した。
なお、本発明被覆工具5〜12と同様に、比較被覆工具10〜12については、表3に示される形成条件で、表5に示される下部層、上部層を形成した。
また、CrAlCN層の平均Al含有割合Xavgについては、電子線マイクロアナライザ(EPMA,Electron−Probe−Micro−Analyser)を用い、表面を研磨した試料において、電子線を試料表面側から照射し、得られた特性X線の解析結果の10点平均からAlの平均Al含有割合Xavgを求めた。
平均C含有割合Yavgについては、二次イオン質量分析(SIMS,Secondary−Ion−Mass−Spectroscopy)により求めた。イオンビームを試料表面側から70μm×70μmの範囲に照射し、スパッタリング作用によって放出された成分について深さ方向の濃度測定を行った。平均C含有割合YavgはTiAlCN層についての深さ方向の平均値を示す。
ただし、Cの含有割合には、意図的にガス原料としてCを含むガスを用いなくても含まれる不可避的なCの含有割合を除外している。具体的にはC2H4の供給量を0とした場合のCrAlCN層に含まれるC成分の含有割合(原子比)を不可避的なCの含有割合として求め、C2H4を意図的に供給した場合に得られるCrAlCN層に含まれるC成分の含有割合(原子比)から前記不可避的なCの含有割合を差し引いた値をYavgとして求めた。
表6および表7に、XavgおよびYavgの値を示す。
まず、走査型電子顕微鏡(倍率5000倍)を用いて硬質被覆層の縦断面を観察し、CrAlCN層の平均層厚Lavg(μm)を測定し、ついで、該平均層厚Lavg(μm)を層厚方向に[Lavg/2]+1分割した各区間の縦断面の1μm×1μmの範囲を、走査型電子顕微鏡(倍率50000倍)で観察し、得られた画像に関して画像処理ソフト、例えばアドビ(登録商標)社のフォトショップ(登録商標)やその他公知のものによって、ポアとポアでない領域を特定し、色をつける。
そして、測定した区間において色が付けられた総面積を測定することで、測定した区間におけるポアの面積割合Aを求める。
また、ポアと同定された円もしくは楕円の個数をカウントし、その総数でポアの総面積を割ることで、その区間におけるポア1個あたりの平均面積を算出し、その面積を有するような円の直径を算出し、その値をその区間におけるポアの孔径Dとして求める。
ついで、上記で求めたポアの面積割合Aとポアの孔径Dを、[Lavg/2]+1分割した各区間で求め、これを平均することによって、CrAlCN層におけるポアが占める平均面積割合Aavgとポアの平均孔径Davgを求める。
なお、[Lavg/2]+1分割とは、既に述べたように、n≦Lavg/2<n+1で定義される数値n(ただし、nは整数)によって、CrAlCN層の平均層厚Lavg(μm)をn分割することを意味する。
また、CrAlCN層の結晶粒内に存在するポア(即ち、結晶粒界に存在するポアを除く)の面積比率は、各区間において、一つの結晶粒に内包されるポアの面積をポアの総面積で除すことで、その区間における結晶粒内に存在するポアの面積比率を求め、ついで、各区間における粒内に存在するポアの面積比率を平均することによって求めた。
表6および表7に、その結果を示す。
先述の方法でCrAlCN層の平均層厚Lavg(μm)をn分割した各区間で、CrAlCN層の縦断面を、走査型電子顕微鏡によって倍率50000倍で1μm×1μmの範囲を観察してポアの数密度(個/μm2)を測定した。5視野以上で測定することによってポアの平均数密度Navg(個/μm2)と標準偏差σを算出し、標準偏差σ/平均数密度Navgから求められる変動係数を評価した。n<5の場合は、5視野以上となるように各区間において層厚方向に対して90度の方向に視野が重ならないように移動し、同様にポアの平均数密度を算出し、5視野以上の観察を行う。
表6および表7に、その結果を示す。
表6および表7に、その結果を示す。
工具基体:炭化タングステン基超硬合金、炭窒化チタン基サーメット、
切削試験: 乾式高速正面フライス、センターカット切削加工、
被削材: JIS・SCM440幅100mm、長さ400mmのブロック材、
回転速度: 866 min−1、
切削速度: 340 m/min、
切り込み: 2.5 mm、
一刃送り量: 0.3 mm/刃、
切削時間: 8分、
(通常の切削速度は、220m/min)
表8に、前記切削試験の結果を示す。
なお、本発明被覆工具16〜24については、表3に示される形成条件で、表11に示される下部層、上部層を形成した。
なお、本発明被覆工具16〜24と同様に、比較被覆工具16〜24については、表3に示される形成条件で、表11に示される下部層、上部層を形成した。
また、CrAlCN層の平均Al含有割合Xavgについては、電子線マイクロアナライザ(EPMA,Electron−Probe−Micro−Analyser)を用い、表面を研磨した試料において、電子線を試料表面側から照射し、得られた特性X線の解析結果の10点平均からAlの平均Al含有割合Xavgを求めた。
平均C含有割合Yavgについては、二次イオン質量分析(SIMS,Secondary−Ion−Mass−Spectroscopy)により求めた。イオンビームを試料表面側から70μm×70μmの範囲に照射し、スパッタリング作用によって放出された成分について深さ方向の濃度測定を行った。平均C含有割合YavgはTiAlCN層についての深さ方向の平均値を示す。
ただし、Cの含有割合には、意図的にガス原料としてCを含むガスを用いなくても含まれる不可避的なCの含有割合を除外している。具体的にはC2H4の供給量を0とした場合のCrAlCN層に含まれるC成分の含有割合(原子比)を不可避的なCの含有割合として求め、C2H4を意図的に供給した場合に得られるCrAlCN層に含まれるC成分の含有割合(原子比)から前記不可避的なCの含有割合を差し引いた値をYavgとして求めた。
表12および表13に、XavgおよびYavgの値を示す。
まず、走査型電子顕微鏡(倍率5000倍)を用いて硬質被覆層の縦断面を観察し、CrAlCN層の平均層厚Lavg(μm)を測定し、ついで、該平均層厚Lavg(μm)を層厚方向に[Lavg/2]+1分割した各区間の縦断面の1μm×1μmの範囲を、走査型電子顕微鏡(倍率50000倍)で観察し、得られた画像に関して画像処理ソフト、例えばアドビ(登録商標)社のフォトショップ(登録商標)やその他公知のものによって、ポアとポアでない領域を特定し、色をつける。
そして、測定した区間において色が付けられた総面積を測定することで、測定した区間におけるポアの面積割合Aを求める。
また、ポアと同定された円もしくは楕円の個数をカウントし、その総数でポアの総面積を割ることで、その区間におけるポア1個あたりの平均面積を算出し、その面積を有するような円の直径を算出し、その値をその区間におけるポアの孔径Dとして求める。
ついで、上記で求めたポアの面積割合Aとポアの孔径Dを、[Lavg/2]+1分割した各区間で求め、これを平均することによって、CrAlCN層におけるポアが占める平均面積割合Aavgとポアの平均孔径Davgを求める。
なお、[Lavg/2]+1分割とは、既に述べたように、n≦Lavg/2<n+1で定義される数値n(ただし、nは整数)によって、CrAlCN層の平均層厚Lavg(μm)をn分割することを意味する。
また、CrAlCN層の結晶粒内に存在するポア(即ち、結晶粒界に存在するポアを除く)の面積比率は、各区間において、一つの結晶粒に内包されるポアの面積をポアの総面積で除すことで、その区間における結晶粒内に存在するポアの面積比率を求め、ついで、各区間における粒内に存在するポアの面積比率を平均することによって求めた。
表12および表13に、その結果を示す。
表12および表13に、その結果を示す。
表12および表13に、その結果を示す。
切削条件1:
被削材:JIS・S15Cの長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒、
切削速度:280 m/min、
切り込み:2.5 mm、
送り:0.32 mm/rev、
切削時間:5 分、
(通常の切削速度は、200m/min)、
切削条件2:
被削材:JIS・FCD450の長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒、
切削速度:270 m/min、
切り込み:2.2 mm、
送り:0.32 mm/rev、
切削時間:5 分、
(通常の切削速度は、200m/min)、
表14に、前記切削試験の結果を示す。
これに対して、CrAlCN層に本発明で規定するポアの平均面積割合、平均孔径を有するポアが存在しない比較被覆工具については、高熱発生を伴い、しかも、切れ刃に断続的・衝撃的高負荷が作用する高速断続切削加工に用いた場合、チッピング、欠損等の発生により短時間で寿命にいたることが明らかである。
Claims (4)
- 炭化タングステン基超硬合金、炭窒化チタン基サーメットまたは立方晶窒化ホウ素基超高圧焼結体のいずれかで構成された工具基体の表面に、硬質被覆層が設けられた表面被覆切削工具において、
(a)前記硬質被覆層は、平均層厚1〜20μmのCrとAlの複合窒化物または複合炭窒化物層を少なくとも含み、
(b)前記複合窒化物または複合炭窒化物層は、NaCl型の面心立方構造を有する複合窒化物または複合炭窒化物の相を少なくとも含み、
(c)前記複合窒化物または複合炭窒化物層は、
組成式:(Cr1−xAlx)(CyN1−y)
で表した場合、AlのCrとAlの合量に占める平均含有割合XavgおよびCのCとNの合量に占める平均含有割合Yavg(但し、Xavg、Yavgはいずれも原子比)が、それぞれ、0.70≦Xavg≦0.95、0≦Yavg≦0.005を満足し、
(d)前記複合窒化物または複合炭窒化物層にはポアが存在しており、前記複合窒化物または複合炭窒化物層の平均層厚をLavg(μm)とした場合、該平均層厚Lavg(μm)
を層厚方向に[Lavg/2]+1分割した各区間の縦断面の1μm×1μmの範囲を、走査型電子顕微鏡によって倍率50000倍で観察し、各区間のそれぞれ観察領域面積においてポアが占める面積割合Aと観察領域におけるポアの孔径Dを求め、前記各区間におけるポアの平均面積割合Aavgと平均孔径Davgを算出した時、0.1面積%≦Aavg≦10面積%、4nm≦Davg≦50nmであることを特徴とする表面被覆切削工具。 - 前記複合窒化物または複合炭窒化物層は、NaCl型の面心立方構造を有するCrとAlの複合窒化物または複合炭窒化物の単相からなることを特徴とする請求項1に記載の表面被覆切削工具。
- 前記工具基体と前記複合窒化物または複合炭窒化物層の間に、Tiの炭化物層、窒化物層、炭窒化物層、炭酸化物層および炭窒酸化物層のうちの1層または2層以上のTi化合物層からなり、0.1〜20μmの合計平均層厚を有する下部層が存在することを特徴とする請求項1または2に記載の表面被覆切削工具。
- 前記複合窒化物または複合炭窒化物層の上部に、少なくとも酸化アルミニウム層を含む上部層が1〜25μmの合計平均層厚で存在することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の表面被覆切削工具。
Priority Applications (1)
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