JP2018033511A - 尿臭抑制剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】尿臭又はその原因物質による臭いを抑制する物質の提供。
【解決手段】アルデヒドC−12MNA、ベンゾインシアム、チモール及びメチルセドリルエーテルから選択される少なくとも1種の化合物を有効成分とする、尿臭抑制剤。前記尿臭抑制剤が、尿臭受容体であるOR10G4、OR10G7またはOR2W1の応答を抑制し、尿臭原因物質である2−メトキシ−4−ビニルフェノール又はp−クレゾールによる臭いを抑制することができる。
【選択図】なし

Description

本発明は、尿臭抑制剤に関する。
近年、下水道整備の向上により、トイレにおける便と尿が長期間接触することにより発生する強烈なアンモニア臭の問題は減少傾向にある。その反面、近年では、臭いの強度は弱いものの、トイレに飛び散った尿や、使用済みおむつから発する尿臭が問題にされている。
特許文献1には、飛び散って乾燥した尿や、使用後放置したおむつから発する尿臭に対する最も寄与の高い成分がp−クレゾールであることが記載されている。また特許文献1には、p−クレゾールと、それ以外の炭素数6〜10のフェノール化合物、例えば、フェノール、ジメチルフェノール、メトキシフェノール、メトキシビニルフェノール、ジヒドロキシベンゼンとの組成物により、当該尿臭を再現できることが記載されている。また、菌が産生するβ−グルクロニダーゼが尿に作用すると、フェノール、p−クレゾール、4−ビニル−2−メトキシ−フェノール、4−ビニルフェノール、2−メトキシ−1,3−ベンゼンジオール、1,4−ベンゼンジオール、1,3−ベンゼンジオール、インドール等の成分が尿中に増加し、尿臭強度を顕著に増加させることが知られている(特許文献2)。これらの成分は尿臭に寄与の高い成分であると考えられている。
最近、標的とする悪臭に対する嗅覚受容体の活性を特異的に阻害することによって、該悪臭を抑制する方法が提供された(例えば、特許文献3)。こうしたアンタゴニスト物質による受容体活性阻害に基づくにおいの抑制または変調のメカニズムは、嗅覚受容体アンタゴニズムと呼ばれる。嗅覚受容体アンタゴニズムによるにおいの抑制または変調は、香水や芳香剤等の別の強いにおいを付加することによる消臭方法と異なり、標的とする悪臭の認識を特異的に失くしてしまうことができ、また芳香剤の強いにおいによる不快感が生じることもないことから、好ましい消臭手段である。
特許文献3には、尿臭原因物質であるp−クレゾールまたは2−メトキシ−4−ビニルフェノールに応答する嗅覚受容体として、OR1A1、OR2W1、OR4S2、OR5K1、OR5P3、OR8H1、OR9Q2、OR10G4およびOR10G7が開示され、これらの嗅覚受容体の応答を抑制することによって、尿臭を抑制することができることが記載されている。
アルデヒドC−12 MNA、ベンゾイン シアム、チモールおよびメチルセドリルエーテルは香り物質である。特許文献4、5には、香料の混合物を悪臭抑制に用いることができ、その中にアルデヒドC−12 MNA等の揮発性アルデヒドやメチルセドリルエーテルを加えてもよいことが開示されている。特許文献6には、チモールがスカトール臭またはインドール臭を抑制することが開示されている。特許文献7には、チモールを含有するタイム粉末を含むタバコフィルタがタバコ特有の臭いを減少させたことが開示されている。しかし、現在まで、これらの物質がp−クレゾール、2−メトキシ−4−ビニルフェノール等の尿臭原因物質の臭いを抑制したという報告はない。
特許5368696号公報 国際公開公報第2009/037861号 特開2015−211667号公報 特許5866170号公報 特許5362199号公報 特許5798382号公報 特許5323064号公報
本発明は、尿臭またはその原因物質による臭いの抑制剤を提供することに関する。
本発明者は、尿臭受容体であるOR10G4、OR10G7またはOR2W1の応答を抑制する物質が、尿臭原因物質2−メトキシ−4−ビニルフェノールまたはp−クレゾールによる臭いを抑制することができることを見出した。
したがって、本発明は、アルデヒドC−12 MNA、ベンゾイン シアム、チモールおよびメチルセドリルエーテルからなる群より選択される少なくとも1種の化合物を有効成分とする、尿臭抑制剤を提供する。
また本発明は、アルデヒドC−12 MNA、ベンゾイン シアムおよびチモールからなる群より選択される少なくとも1種の化合物を有効成分とする、2−メトキシ−4−ビニルフェノール臭抑制剤を提供する。
また本発明は、メチルセドリルエーテルを有効成分とする、p−クレゾール臭抑制剤を提供する。
本発明により提供される尿臭抑制剤は、尿臭原因物質2−メトキシ−4−ビニルフェノールまたはp−クレゾールに対する嗅覚受容体の応答を抑制することで、これらの物質の臭いを抑制することができる。
種々の濃度の2−メトキシ−4−ビニルフェノールまたはp−クレゾールに対する嗅覚受容体発現細胞の応答。n=3〜4、エラーバー=±SE。 嗅覚受容体発現細胞の尿臭原因物質応答に対する試験物質の抑制効果。横軸に試験物質の濃度を、縦軸に臭い物質(2−メトキシ−4−ビニルフェノールまたはp−クレゾール)単独刺激への応答強度を100%として、臭い物質と試験物質とを併用したときの受容体発現細胞の応答(%)を表す。n=2〜3、エラーバー=±SD。 試験物質の2−メトキシ−4−ビニルフェノールまたはp−クレゾール臭抑制効果の官能評価(n=7〜9)。Control:2−メトキシ−4−ビニルフェノールまたはp−クレゾールのみ、Vehicle:ミネラルオイルのみ。
本明細書において、「嗅覚受容体アンタゴニズムによる臭いの抑制」とは、目的の臭い分子と他の分子をともに適用することにより、当該他の分子によって目的の臭い分子に対する受容体活性を阻害し、結果的に個体に認識される臭いを抑制する手段である。嗅覚受容体アンタゴニズムによる臭いの抑制は、同様に他の分子を用いる手段であっても、芳香剤による消臭のように、目的の臭いを香料の香気によって隠蔽する手段とは区別される。嗅覚受容体アンタゴニズムによる臭いの抑制の一例は、アンタゴニスト等の嗅覚受容体の活性を阻害する物質を使用するケースである。特定の臭いをもたらす臭い分子の受容体にその活性を阻害する物質を適用すれば、当該受容体の当該臭い分子に対する活性が抑制されるため、最終的に個体に知覚される臭いを抑制することができる。
本明細書において、「尿臭」とは、好適には、放尿もしくは採尿後時間が経った尿または飛び散って乾燥した尿から発せられる臭い、あるいは使用後放置したおむつから発せられる尿の臭いである。これらの尿中には、その中に含まれる菌が持つ酵素βグルクロニダーゼの作用によって生成された2−メトキシ−4−ビニルフェノールおよびp−クレゾールが含まれている。また好適には、本明細書における「尿臭」は、βグルクロニダーゼ処理された尿またはその抽出物の臭いである。
本明細書において、「2−メトキシ−4−ビニルフェノールによる臭い(または2−メトキシ−4−ビニルフェノール臭)」および「p−クレゾールによる臭い(またはクレゾール臭)」とは、各々、2−メトキシ−4−ビニルフェノールおよびp−クレゾールによりもたらされる臭いである。2−メトキシ−4−ビニルフェノールおよびp−クレゾールは、放尿もしくは採尿後時間が経った尿、またはβグルクロニダーゼ処理された尿に含有されている。
本明細書において、「嗅覚受容体ポリペプチド」とは、嗅覚受容体またはそれと同等の機能を有するポリペプチドをいい、嗅覚受容体と同等の機能を有するポリペプチドとは、嗅覚受容体と同様に、細胞膜上に発現することができ、匂い分子の結合によって活性化し、かつ活性化されると、細胞内のGαsと共役してアデニル酸シクラーゼを活性化することで細胞内cAMP量を増加させる機能を有するポリペプチドをいう(Nat.Neurosci.,2004,5:263−278)。
本明細書において、ヌクレオチド配列およびアミノ酸配列の同一性は、リップマン−パーソン法(Lipman−Pearson法;Science,1985,227:1435−41)によって計算される。具体的には、遺伝情報処理ソフトウェアGenetyx−Win(Ver.5.1.1;ソフトウェア開発)のホモロジー解析(Search homology)プログラムを用いて、Unit size to compare(ktup)を2として解析を行うことにより算出される。
本明細書において、ヌクレオチド配列およびアミノ酸配列に関する「少なくとも80%の同一性」とは、80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、さらにより好ましくは98%以上、なお好ましくは99%以上の同一性をいう。
OR10G4、OR10G7およびOR2W1は、いずれもヒト嗅細胞で発現している嗅覚受容体である。OR10G4は、GenBankにGI:52317171として登録されている。OR10G4は、配列番号1で示されるヌクレオチド配列を有する遺伝子にコードされる、配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質である。OR10G7は、GenBankにGI:52218829として登録されている。OR10G7は、配列番号3で示されるヌクレオチド配列を有する遺伝子にコードされる、配列番号4で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質である。OR2W1は、GenBankにGI:169234788として登録されている。OR2W1は、配列番号5で示されるヌクレオチド配列を有する遺伝子にコードされる、配列番号6で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質である。
後述の実施例に示すとおり、嗅覚受容体OR10G4およびOR10G7は、2−メトキシ−4−ビニルフェノールに対して濃度依存的な活性化を示す、2−メトキシ−4−ビニルフェノールの受容体である(図1)。また、嗅覚受容体OR2W1は、p−クレゾールに対して濃度依存的な活性化を示す、p−クレゾールの受容体である(図1)。
したがって、OR10G4、OR10G7またはOR2W1の応答を抑制する物質は、2−メトキシ−4−ビニルフェノールまたはp−クレゾールに対するこれらの嗅覚受容体の応答の抑制に基づく嗅覚受容体アンタゴニズムにより、個体の尿臭の認識に変化を生じさせ、尿臭を抑制することができる。好適には、OR10G4またはOR10G7応答を抑制する物質は、2−メトキシ−4−ビニルフェノールに対するこれらの嗅覚受容体の応答の抑制に基づく嗅覚受容体アンタゴニズムにより、個体の2−メトキシ−4−ビニルフェノール臭の認識に変化を生じさせ、2−メトキシ−4−ビニルフェノール臭を抑制することができる。また好適には、OR2W1の応答を抑制する物質は、p−クレゾールに対する当該受容体の応答の抑制に基づく嗅覚受容体アンタゴニズムにより、個体のp−クレゾール臭の認識に変化を生じさせ、p−クレゾール臭を抑制することができる。
したがって、一態様において、本発明は、OR10G4、OR10G7またはOR2W1に対するアンタゴニストを有効成分とする、尿臭の抑制剤を提供する。
別の一態様において、本発明は、OR10G4またはOR10G7に対するアンタゴニストを有効成分とする、2−メトキシ−4−ビニルフェノール臭の抑制剤を提供する。
別の一態様において、本発明は、OR2W1に対するアンタゴニストを有効成分とする、p−クレゾール臭の抑制剤を提供する。
本発明で使用されるOR10G4、OR10G7またはOR2W1のアンタゴニストとしては、下記の化合物が挙げられる:
アルデヒドC−12 MNA(Aldehyde C−12 MNA[2−Methylundecanal]);
ベンゾイン シアム(Benzoin Siam);
チモール(Thymol[5−Methyl−2−(1−methylethyl)−phenol]);および
メチルセドリルエーテル(Methyl Cedryl Ether[(3R,3aS,6S,7R,8aS)−Octahydro−6−methoxy−3,6,8,8,−tetramethyl−1H−3a,7−methanoazulene])。
より詳細には、上記の化合物は、OR10G4、OR10G7、OR2W1、またはそれらと同等な機能を有する嗅覚受容体ポリペプチドに対するアンタゴニストである。本明細書において「OR10G4と同等な機能を有する嗅覚受容体ポリペプチド」とは、配列番号2で示されるアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ2−メトキシ−4−ビニルフェノール臭に対する応答性を有する嗅覚受容体ポリペプチドをいう。また本明細書において「OR10G7と同等な機能を有する嗅覚受容体ポリペプチド」とは、配列番号4で示されるアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ2−メトキシ−4−ビニルフェノール臭に対する応答性を有する嗅覚受容体ポリペプチドをいう。また本明細書において「OR2W1と同等な機能を有する嗅覚受容体ポリペプチド」とは、配列番号6で示されるアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつp−クレゾール臭に対する応答性を有する嗅覚受容体ポリペプチドをいう。
本発明で使用されるOR10G4、OR10G7、またはそれらと同等な機能を有する嗅覚受容体ポリペプチドのアンタゴニストとしては、アルデヒドC−12 MNA、ベンゾイン シアムおよびチモールが挙げられる。好ましくは、アルデヒドC−12 MNAまたはベンゾイン シアムは、OR10G7またはそれと同等な機能を有する嗅覚受容体ポリペプチドのアンタゴニストとして使用され得、チモールは、OR10G4、OR10G7、またはそれらと同等な機能を有する嗅覚受容体ポリペプチドのアンタゴニストとして使用され得る。本発明で使用されるOR2W1またはそれと同等な機能を有する嗅覚受容体ポリペプチドのアンタゴニストとしては、メチルセドリルエーテルが挙げられる。
上記に挙げたアンタゴニスト化合物は、これまで香料素材として知られていたが、OR10G4、OR10G7またはOR2W1に対するアンタゴニスト作用により該受容体の尿臭原因物質応答を抑制することや、尿臭、または2−メトキシ−4−ビニルフェノールもしくはp−クレゾール臭を選択的に抑制する機能があることは知られていなかった。
上記に挙げたアンタゴニスト化合物は、いずれも市販のものを購入することができる(「合成香料 化学と商品知識」増補改訂版、印藤元一著、化学工業日報社、2005年3月発行を参照)。例えば、上記アンタゴニスト化合物は、Payan Bertrand S.A.、Sigma−Aldrich Co.LLC、花王株式会社 などから入手することが可能である。あるいは、化学合成によって、該市販品と同一物質またはそれを含む組成物を製造することが可能である。
本発明の一態様において、上記に挙げたOR10G4、OR10G7またはOR2W1のアンタゴニストは、尿臭を抑制するための有効成分として使用され得る。したがって、本発明の尿臭抑制剤は、上記に挙げたOR10G4、OR10G7またはOR2W1のアンタゴニストからなる群より選択される少なくとも1種の化合物を有効成分として含有する。例えば、本発明の尿臭抑制剤の有効成分は、上記に挙げたOR10G4、OR10G7またはOR2W1のアンタゴニストからなる群より選択される少なくとも1種、例えばいずれか単独もしくはいずれか2種以上の組み合わせであり得る。あるいは、本発明の尿臭抑制剤は、上記に挙げたOR10G4、OR10G7またはOR2W1のアンタゴニストからなる群より選択される少なくとも1種の化合物から本質的に構成され得る。
好ましい態様において、上記に挙げたOR10G4またはOR10G7のアンタゴニストは、2−メトキシ−4−ビニルフェノール臭を抑制するための有効成分として使用され得る。したがって、本発明の2−メトキシ−4−ビニルフェノール臭抑制剤は、上記に挙げたOR10G4またはOR10G7のアンタゴニストからなる群より選択される少なくとも1種の化合物を有効成分として含有する。例えば、本発明の2−メトキシ−4−ビニルフェノール臭抑制剤の有効成分は、上記に挙げたOR10G4またはOR10G7のアンタゴニストからなる群より選択される少なくとも1種、例えばいずれか単独もしくはいずれか2種以上の組み合わせであり得る。あるいは、本発明の2−メトキシ−4−ビニルフェノール臭抑制剤は、上記に挙げたOR10G4またはOR10G7のアンタゴニストからなる群より選択される少なくとも1種の化合物から本質的に構成され得る。
別の好ましい態様において、上記に挙げたOR2W1アンタゴニストは、p−クレゾール臭を抑制するための有効成分として使用され得る。したがって、本発明のp−クレゾール臭抑制剤は、上記に挙げたOR2W1アンタゴニストを有効成分として含有する。あるいは、本発明のp−クレゾール臭抑制剤は、上記に挙げたOR2W1アンタゴニストから本質的に構成され得る。
一実施形態において、上記に挙げたOR10G4、OR10G7またはOR2W1のアンタゴニスト(以下、本発明のアンタゴニストともいう)は、尿臭、または2−メトキシ−4−ビニルフェノールもしくはp−クレゾール臭を抑制するための化合物もしくは組成物に、該臭いを抑制するための有効成分として含有され得る。あるいは、本発明のアンタゴニストは、尿臭、または2−メトキシ−4−ビニルフェノールもしくはp−クレゾール臭の抑制剤の製造のため、あるいは尿臭、または2−メトキシ−4−ビニルフェノールもしくはp−クレゾール臭を抑制するための化合物もしくは組成物の製造のために使用することができる。尿臭、または2−メトキシ−4−ビニルフェノールもしくはp−クレゾール臭を抑制するための化合物もしくは組成物の例としては、トイレ用の消臭剤または芳香剤、トイレ用洗浄剤、下着もしくはおむつ用の洗剤もしくは柔軟剤などが挙げられる。
一実施形態において、本発明のアンタゴニストは、尿臭、または2−メトキシ−4−ビニルフェノールもしくはp−クレゾール臭の抑制が所望されるあらゆる化合物もしくは組成物に対して、あるいは尿臭、または2−メトキシ−4−ビニルフェノールもしくはp−クレゾール臭の抑制が所望されるあらゆる環境下において、該臭いの抑制のための有効成分として使用され得る。あるいは、本発明のアンタゴニストは、尿臭、または2−メトキシ−4−ビニルフェノールもしくはp−クレゾール臭の抑制のための有効成分として、該臭いの抑制が所望される化合物または組成物の製造のために使用することができる。尿臭、2−メトキシ−4−ビニルフェノールもしくはp−クレゾール臭の抑制が所望される化合物または組成物の例としては、おむつ、尿パッド、ベッドパッド、ベッドマット、シーツ、ブランケット、下着、便器、便座シート、トイレ用マット、トイレの壁もしくは床材などが挙げられる。
上記尿臭、または2−メトキシ−4−ビニルフェノールもしくはp−クレゾール臭の抑制剤、および当該臭いの抑制が所望される化合物または組成物は、本発明のアンタゴニストに加えて、他の消臭効果を有する成分を、その目的に応じて適宜含有していてもよい。当該消臭効果を有する他の成分としては、尿において2−メトキシ−4−ビニルフェノールやp−クレゾールを発生させる酵素βグルクロニダーゼを阻害する成分であるCyclohexadec−8−en−1−one(グロバノン(登録商標))などが挙げられる。さらに、上記臭い抑制剤および臭いの抑制が所望される化合物または組成物は、消臭剤や防臭剤に一般的に添加される任意の成分を含んでいてもよい。
さらなる態様として、本発明は、尿臭、または2−メトキシ−4−ビニルフェノールもしくはp−クレゾール臭と、本発明のアンタゴニストとを共存させる工程を含む、尿臭、または2−メトキシ−4−ビニルフェノールもしくはp−クレゾール臭の抑制方法を提供する。
上記本発明の方法の一実施形態においては、尿臭、または2−メトキシ−4−ビニルフェノールもしくはp−クレゾール臭の存在下で、対象に、上記に挙げたOR10G4、OR10G7またはOR2W1のアンタゴニストからなる群より選択される少なくとも1つを適用することにより、該臭いと該アンタゴニストとを共存させる。それによって、該対象のOR10G4、OR10G7またはOR2W1と該アンタゴニストとが結合して、該臭いに対する該嗅覚受容体の応答が抑制されるので、嗅覚受容体アンタゴニズムによって、尿臭、または2−メトキシ−4−ビニルフェノールもしくはp−クレゾール臭が抑制される。
上記本発明の方法の別の一実施形態においては、2−メトキシ−4−ビニルフェノール臭の存在下で、対象に、上記に挙げたOR10G4またはOR10G7のアンタゴニストからなる群より選択される少なくとも1種を適用することにより、該臭いと該アンタゴニストとを共存させる。それによって、該対象のOR10G4またはOR10G7と該アンタゴニストとが結合して、該臭いに対する該嗅覚受容体の応答が抑制されるので、嗅覚受容体アンタゴニズムによって、2−メトキシ−4−ビニルフェノール臭が抑制される。
上記本発明の方法の別の一実施形態においては、p−クレゾール臭の存在下で、対象に、上記に挙げたOR2W1アンタゴニストを適用することにより、該臭いと該アンタゴニストとを共存させる。それによって、該対象のOR2W1と該アンタゴニストとが結合して、該臭いに対する該嗅覚受容体の応答が抑制されるので、嗅覚受容体アンタゴニズムによって、p−クレゾール臭が抑制される。
上記本発明の方法において、対象としては、尿臭、または2−メトキシ−4−ビニルフェノールもしくはp−クレゾール臭の抑制を必要とする対象、好ましくは嗅覚受容体アンタゴニズムによる尿臭、または2−メトキシ−4−ビニルフェノールもしくはp−クレゾール臭の抑制を必要とする対象が挙げられる。当該対象は、哺乳動物であれば特に限定されないが、好ましくはヒトである。より詳細には、本発明の方法における、尿臭、または2−メトキシ−4−ビニルフェノールもしくはp−クレゾール臭の抑制を必要とする対象の例としては、病人、おむつを装着するヒト、病人または高齢者の介護従事者、清掃員、ごみの収集作業に従事するヒトなどが挙げられる。
上記本発明の方法の一実施形態において、本発明のアンタゴニストは、尿臭、または2−メトキシ−4−ビニルフェノールもしくはp−クレゾール臭の発生する可能性のある環境下に予め適用される。それにより、当該環境下で該臭いが発生した場合、対象に対して該臭い存在下で本発明のアンタゴニストが適用されるので、嗅覚受容体アンタゴニズムによって該臭いは抑制される。
上記本発明の方法の一実施形態において、本発明のアンタゴニストは、2−メトキシ−4−ビニルフェノールまたはp−クレゾールを含有する化合物または組成物に配合される。これによって、当該化合物または組成物に含まれる2−メトキシ−4−ビニルフェノールまたはp−クレゾールに対する嗅覚受容体の活性を低下させ、対象における2−メトキシ−4−ビニルフェノールまたはp−クレゾール臭の認識を抑制し、結果として当該臭いを抑制する。また別の実施形態において、本発明のアンタゴニストは、2−メトキシ−4−ビニルフェノールまたはp−クレゾールを発生する可能性のある化合物または組成物に配合される。これによって、該アンタゴニストは当該化合物または組成物から発生した2−メトキシ−4−ビニルフェノールまたはp−クレゾールに対する嗅覚受容体の活性を低下させ、対象における2−メトキシ−4−ビニルフェノールまたはp−クレゾール臭の認識を抑制し、結果として当該臭いを抑制する。2−メトキシ−4−ビニルフェノールまたはp−クレゾールを発生する可能性のある化合物または組成物の例としては、尿、おむつ、尿パッド、ベッドパッド、ベッドマット、シーツ、ブランケット、下着、便器、便座シート、トイレ用マット、トイレの壁もしくは床材などが挙げられる。したがって、本発明のなお別の態様として、上記OR10G4、OR10G7またはOR2W1のアンタゴニストからなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含有する、おむつ、尿パッド、ベッドパッド、ベッドマット、シーツ、ブランケット、下着、便器、便座シート、トイレ用マット、トイレの壁もしくは床材、トイレ用の消臭剤または芳香剤、トイレ用洗浄剤、または、下着もしくはおむつ用の洗剤もしくは柔軟剤が提供される。
本発明の例示的実施形態として、さらに以下の物質、製造方法、用途、方法等を本明細書に開示する。但し、本発明はこれらの実施形態に限定されない。
〔1〕アルデヒドC−12 MNA、ベンゾイン シアム、チモールおよびメチルセドリルエーテルからなる群より選択される少なくとも1種の化合物を有効成分とする、尿臭抑制剤。
〔2〕尿臭抑制のための、アルデヒドC−12 MNA、ベンゾイン シアム、チモールおよびメチルセドリルエーテルからなる群より選択されるいずれか1種の化合物の使用。
〔3〕尿臭抑制剤の製造のための、アルデヒドC−12 MNA、ベンゾイン シアム、チモールおよびメチルセドリルエーテルからなる群より選択されるいずれか1種の化合物の使用。
〔4〕尿臭の抑制を必要とする対象に、アルデヒドC−12 MNA、ベンゾイン シアム、チモールおよびメチルセドリルエーテルからなる群より選択されるいずれか1種の化合物を適用することを含む、尿臭抑制方法。
〔5〕アルデヒドC−12 MNA、ベンゾイン シアムおよびチモールからなる群より選択される少なくとも1種の化合物を有効成分とする、2−メトキシ−4−ビニルフェノール臭抑制剤。
〔6〕2−メトキシ−4−ビニルフェノール臭抑制のための、アルデヒドC−12 MNA、ベンゾイン シアムおよびチモールからなる群より選択される少なくとも1種の化合物の使用。
〔7〕2−メトキシ−4−ビニルフェノール臭抑制剤の製造のための、アルデヒドC−12 MNA、ベンゾイン シアムおよびチモールからなる群より選択される少なくとも1種の化合物の使用。
〔8〕2−メトキシ−4−ビニルフェノール臭の抑制を必要とする対象に、アルデヒドC−12 MNA、ベンゾイン シアムおよびチモールからなる群より選択される少なくとも1種の化合物を適用することを含む、2−メトキシ−4−ビニルフェノール臭の抑制方法。
〔9〕メチルセドリルエーテルを有効成分とする、p−クレゾール臭抑制剤。
〔10〕p−クレゾール臭抑制のための、メチルセドリルエーテルの使用。
〔11〕p−クレゾール臭抑制剤の製造のための、メチルセドリルエーテルの使用。
〔12〕p−クレゾール臭の抑制を必要とする対象にメチルセドリルエーテルを適用することを含む、p−クレゾール臭の抑制方法。
〔13〕上記〔1〕〜〔4〕のいずれか1項において、好ましくは、上記尿臭は、放尿または採尿後時間が経った尿から発せられる臭い、飛び散って乾燥した尿から発せられる臭い、使用後放置したおむつから発せられる尿の臭い、またはβグルクロニダーゼ処理した尿もしくはその抽出物の臭いである。
〔14〕アルデヒドC−12 MNA、ベンゾイン シアムおよびチモールからなる群より選択されるいずれか1種の化合物を有効成分とする、OR10G7またはそれと同等な機能を有する嗅覚受容体ポリペプチドに対する受容体拮抗剤。
〔15〕OR10G7またはそれと同等な機能を有する嗅覚受容体ポリペプチドに対する受容体拮抗剤としての、アルデヒドC−12 MNA、ベンゾイン シアムおよびチモールからなる群より選択されるいずれか1種の化合物の使用。
〔16〕チモールを有効成分とする、OR10G4またはそれと同等な機能を有する嗅覚受容体ポリペプチドに対する受容体拮抗剤。
〔17〕OR10G4またはそれと同等な機能を有する嗅覚受容体ポリペプチドに対する受容体拮抗剤としての、チモールの使用。
〔18〕メチルセドリルエーテルを有効成分とする、OR2W1またはそれと同等な機能を有する嗅覚受容体ポリペプチドに対する受容体拮抗剤。
〔19〕OR2W1またはそれと同等な機能を有する嗅覚受容体ポリペプチドに対する受容体拮抗剤としての、メチルセドリルエーテルの使用。
〔20〕上記〔14〕〜〔19〕のいずれか1項において、
好ましくは、OR10G4は、配列番号2で示されるアミノ酸配列からなる嗅覚受容体ポリペプチドであり、
好ましくは、OR10G4と同等な機能を有する嗅覚受容体ポリペプチドは、配列番号2で示されるアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ2−メトキシ−4−ビニルフェノール臭に対する応答性を有する嗅覚受容体ポリペプチドであり、
好ましくは、OR10G7は、配列番号4で示されるアミノ酸配列からなる嗅覚受容体ポリペプチドであり、
好ましくは、OR10G7と同等な機能を有する嗅覚受容体ポリペプチドは、配列番号4で示されるアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ2−メトキシ−4−ビニルフェノール臭に対する応答性を有する嗅覚受容体ポリペプチドであり、
好ましくは、OR2W1は、配列番号6で示されるアミノ酸配列からなる嗅覚受容体ポリペプチドであり、
好ましくは、OR2W1と同等な機能を有する嗅覚受容体ポリペプチドは、配列番号6で示されるアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつp−クレゾール臭に対する応答性を有する嗅覚受容体ポリペプチドである。
以下、実施例を示し、本発明をより具体的に説明する。
本実施例で用いた尿臭原因物質および試験物質を下記表1に示す。
実施例1 尿臭原因物質受容体の同定
1)嗅覚受容体発現細胞の作製
ヒト嗅覚受容体はGenBankに登録されている配列情報を基に、human genomic DNA female(G1521:Promega)を鋳型としたPCR法によりクローニングした。PCR法により増幅した遺伝子をpENTRベクター(Invitrogen)にマニュアルに従って組込み、pENTRベクター上に存在するNotI、AscIサイトを利用して、pME18Sベクター上のFlag−Rhoタグ配列の下流に作製したNotI、AscIサイトへと組換えた。また、培養細胞内で作られた嗅覚受容体タンパク質を細胞膜表面へ移行するタンパク質であるヒトRTP1Sをコードする遺伝子を別のpME18SベクターのEcoRI、XhoIサイトへ組込んだ。
表2に示す組成の反応液を調製し、クリーンベンチ内で15分静置した後、96ウェルプレート(BD)の各ウェルに添加した。次いで、HEK293細胞(2×105細胞/cm2)を100μLずつ各ウェルに播種し、37℃、5%CO2を保持したインキュベータ内で24時間培養した。対照として、嗅覚受容体を発現させない細胞(Mock)を用意した。
2)ルシフェラーゼアッセイ
HEK293細胞に発現させた嗅覚受容体は、細胞内在性のGαsと共役しアデニル酸シクラーゼを活性化することで、細胞内cAMP量を増加させる。本研究での尿臭原因物質応答測定には、細胞内cAMP量の増加をホタルルシフェラーゼ遺伝子(fluc2P−CRE−hygro)由来の発光値としてモニターするルシフェラーゼレポータージーンアッセイを用いた。また、CMVプロモータ下流にウミシイタケルシフェラーゼ遺伝子を融合させたもの(hRluc−CMV)を同時に遺伝子導入し、遺伝子導入効率や細胞数の誤差を補正する内部標準として用いた。
上記1)で作製した培養物から、培地を取り除き、新しい培地で調製した尿臭原因物質(2−メトキシ−4−ビニルフェノールまたはp−クレゾール)を所定の濃度で含む溶液を75μL添加した。細胞をCO2インキュベータ内で4時間培養し、ルシフェラーゼ遺伝子を細胞内で十分に発現させた。ルシフェラーゼの活性測定には、Dual−GloTMluciferase assay system(Promega)を用い、製品の操作マニュアルに従って測定を行った。尿臭原因物質刺激により誘導されたホタルルシフェラーゼ由来の発光値を尿臭原因物質刺激を行わない細胞での発光値で割った値を、fold increaseとして算出し、応答強度の指標とした。
3)結果
387種類の嗅覚受容体それぞれを発現させた細胞について2−メトキシ−4−ビニルフェノールまたはp−クレゾールに対する応答を測定した結果、2−メトキシ−4−ビニルフェノールに対して活性化する嗅覚受容体としてOR10G4およびOR10G7が、p−クレゾールに対して活性化する嗅覚受容体としてOR2W1が見出された。OR10G4およびOR10G7発現細胞の2−メトキシ−4−ビニルフェノールに対する応答、OR2W1発現細胞のp−クレゾールに対する応答は、いずれも濃度依存的であった(図1)。これらの結果から、OR10G4およびOR10G7を2−メトキシ−4−ビニルフェノールを認識する2−メトキシ−4−ビニルフェノール受容体として、OR2W1をp−クレゾールを認識するp−クレゾール受容体として、それぞれ同定した。
実施例2 尿臭原因物質受容体アンタゴニストの同定
1)ルシフェラーゼアッセイ
実施例1と同様の手順で、OR10G4、OR10G7またはOR2W1発現細胞を用いたルシフェラーゼアッセイにより、OR10G4発現細胞およびOR10G7発現細胞の2−メトキシ−4−ビニルフェノール応答に対する試験物質の影響、ならびにOR2W1発現細胞のp−クレゾール応答に対する試験物質の影響を調べた。2−メトキシ−4−ビニルフェノールの濃度は300μM、p−クレゾールの濃度は1000μMとした。嗅覚受容体発現細胞の応答強度は以下のとおり算出した。各種刺激条件について、ホタルルシフェラーゼ由来の発光値をウミシイタケルシフェラーゼ由来の発光値で除した値fLuc/hRlucを算出した。尿臭原因物質(2−メトキシ−4−ビニルフェノールまたはp−クレゾール)単独刺激により誘導されたfLuc/hRluc値(X)を、同じ受容体を導入し刺激を行わなかった細胞でのfLuc/hRluc値(Y)で除し、尿臭原因物質単独刺激による受容体活性Fold increase(X/Y)を求めた。同様に、尿臭原因物質(2−メトキシ−4−ビニルフェノールまたはp−クレゾール)と試験物質との混合物での刺激によるfLuc/hRluc値(Z)を、刺激を行わない細胞でのfLuc/hRluc値(Y)で除し、試験物質添加時の受容体活性(Z/Y)を求めた。以下の計算式により、尿臭原因物質単独刺激による受容体活性(X/Y)に対する試験物質添加時の受容体活性(Z/Y)の割合を算出し、試験物質存在下での応答強度(Response%)を求めた。独立した実験を2〜3回行い、各回の実験の平均値を得た。
Response(%)=(Z/Y)/(X/Y)×100
2)結果
アルデヒドC−12 MNAおよびベンゾイン シアムは、濃度依存的にOR10G7発現細胞の2−メトキシ−4−ビニルフェノール応答を抑制し、OR10G7アンタゴニストであると判断された。メチルセドリルエーテルは、濃度依存的にOR2W1発現細胞のp−クレゾール応答を抑制し、OR2W1アンタゴニストであると判断された。チモールは、濃度依存的にOR10G4発現細胞およびOR10G7発現細胞の2−メトキシ−4−ビニルフェノール応答を抑制し、OR10G4およびOR10G7アンタゴニストであると判断された(図2)。
実施例3 尿臭原因物質受容体アンタゴニストによる2−メトキシ−4−ビニルフェノール臭およびp−クレゾール臭抑制能
実施例2で同定されたOR10G4、OR10G7またはOR2W1のアンタゴニストによる2−メトキシ−4−ビニルフェノール臭およびp−クレゾール臭抑制効果を、官能試験により確認した。
2−メトキシ−4−ビニルフェノールおよびp−クレゾールは、蒸留水の1%(v/v)水溶液を調製した。実施例2で同定した4つのアンタゴニスト化合物は、ミネラルオイル(Sigma)に溶解させて0.1%(v/v)溶液を調製し、試験物質溶液として用いた。
20mL容のガラス瓶(マルエム、No.6)に2つの綿球を入れ、1つの綿球には2−メトキシ−4−ビニルフェノール水溶液またはp−クレゾール水溶液30μLを、もう1つの綿球にはいずれか一種の試験物質溶液30μLを染み込ませた。綿球を入れたガラス瓶は蓋をして37℃で1時間静置した後、試験サンプルとして試験に用いた。基準サンプル(Control)として2−メトキシ−4−ビニルフェノールまたはp−クレゾールのみ、対照サンプル(Vehicle)としてミネラルオイルのみを準備した。
官能試験は、7〜9名の評価者により単盲式にて行った。試験は、匂いの拡散を防ぐため、ドラフト付近で行った。匂いへの順応の影響を排除するため、試験中には適宜、基準サンプルからの悪臭の認知強度を確認させ、必要であれば休憩をとった。評価するサンプルはランダムに提示し、4つの試験物質の2−メトキシ−4−ビニルフェノール臭またはp−クレゾール臭抑制効果を評価した。試験サンプルの評価では、次の5段階の基準「対象の悪臭が、1:わからない、2:弱く感じる、3:楽にわかる、4:強く感じる、5:耐えられないほど強く感じる」を設定し、基準サンプルでの悪臭強度を3としたときの各試験サンプルの悪臭強度を、1.0から0.5刻みで5.0までの9段階で評価した。
各評価者による官能試験の評価結果を図3に示す。実施例2で同定した4つのアンタゴニスト化合物は、いずれも2−メトキシ−4−ビニルフェノール臭またはp−クレゾール臭抑制効果を示した。2−メトキシ−4−ビニルフェノール臭に関しては、9人の被験者のうち、アルデヒドC−12 MNAは7人に、ベンゾイン シアムは5人に、チモールは8人に対して、2−メトキシ−4−ビニルフェノールを単独で嗅いだ場合と比較して弱い2−メトキシ−4−ビニルフェノール臭強度(スコア3未満)を回答させるという抑制効果を示した。また、p−クレゾール臭に関しては、7人の被験者のうち、メチルセドリルエーテルは4人に対して、p−クレゾールを単独で嗅いだ場合と比較して弱いp−クレゾール臭強度(スコア3未満)を回答させるという抑制効果を示した。本実施例の結果から、同定された4種のOR10G4、OR10G7またはOR2W1アンタゴニスト化合物が、いずれも2−メトキシ−4−ビニルフェノール臭またはp−クレゾール臭の抑制に有効であることが示された。

Claims (6)

  1. アルデヒドC−12 MNA、ベンゾイン シアム、チモールおよびメチルセドリルエーテルからなる群より選択される少なくとも1種の化合物を有効成分とする、尿臭抑制剤。
  2. アルデヒドC−12 MNA、ベンゾイン シアムおよびチモールからなる群より選択される少なくとも1種の化合物を有効成分とする、2−メトキシ−4−ビニルフェノール臭抑制剤。
  3. メチルセドリルエーテルを有効成分とする、p−クレゾール臭抑制剤。
  4. アルデヒドC−12 MNA、ベンゾイン シアムおよびチモールからなる群より選択される少なくとも1種の化合物を有効成分とする、嗅覚受容体OR10G7またはそれと同等な機能を有する嗅覚受容体ポリペプチドに対する受容体拮抗剤。
  5. チモールを有効成分とする、嗅覚受容体OR10G4またはそれと同等な機能を有する嗅覚受容体ポリペプチドに対する受容体拮抗剤。
  6. メチルセドリルエーテルを有効成分とする、嗅覚受容体OR2W1またはそれと同等な機能を有する嗅覚受容体ポリペプチドに対する受容体拮抗剤。
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