JP7158192B2 - メチルメルカプタン臭抑制剤 - Google Patents

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本発明はメチルメルカプタン臭抑制剤に関する。
ヒトの鼻腔には、約400個の嗅覚受容体が存在することが報告されている。各々の嗅覚受容体は、それぞれ特定のにおい物質をアゴニストとして認識することで活性化し、嗅神経を興奮させることでにおいの情報を脳に伝える。におい物質を認識する嗅覚受容体の活性化を抑えることで、そのにおいを抑えることができる。例えば、悪臭受容体アンタゴニストは、該悪臭の抑制剤として用いることができる。特許文献1には、嗅覚受容体OR4S2がジメチルジスルフィド、ジメチルトリスルフィド等の特定の構造のスルフィド化合物に応答すること、OR4S2のアンタゴニストが該スルフィド化合物臭を抑制することが記載されている。
一方で、アゴニストが受容体を抑制する場合がある。すなわち、受容体がアゴニストに刺激され続けた結果、後から曝露されたアゴニストに対して応答しなくなることがある。このプロセスは、アゴニストに対する受容体の脱感作と言われ、感覚の面では、刺激に対する順応を引き起こす。例えば、悪臭に対する嗅覚受容体の脱感作は、悪臭順応現象を引き起こし、悪臭を感じなくさせる。さらに、交差順応と呼ばれる嗅覚メカニズム(非特許文献1)では、ある一つのにおいに順応することで、異なるにおいに対しても順応が起こる。特許文献2には、標的のにおいに応答する嗅覚受容体を、該標的のにおいとは異なるアゴニストに順応させることにより、交差順応に基づいて該標的のにおいを抑制することができることが記載されている。交差順応によれば、悪臭ではないにおいに順応させることで、悪臭に対しても順応が生じてその知覚が抑制される。
国際公開公報第2016/204211号 国際公開公報第2016/194788号
川崎通昭・堀内哲嗣郎「嗅覚とにおい物質」p71-72、社団法人におい・かおり環境協会、1998年
本発明はメチルメルカプタン臭抑制剤に関する。
嗅覚受容体の応答はにおい物質に選択的である。したがって、アンタゴニストによる嗅覚受容体抑制又はアゴニストによる交差順応に基づく悪臭抑制のためには、最初に標的の悪臭に選択性を有する嗅覚受容体を見つけ出すことが肝要である。本発明者は、メチルメルカプタンに応答する嗅覚受容体を新たに同定することに成功した。また本発明者は、該メチルメルカプタンに応答する嗅覚受容体を別の物質を用いて活性化し、脱感作を引き起こすことで、交差順応に基づいてメチルメルカプタン臭を抑制する物質を見出した。
したがって、本発明は、アセトフェノン、p-メンテン-8-チオール、p-メンタン-8-チオール-3-オン、及びフルフリルメルカプタンからなる群より選択される少なくとも1種の物質を有効成分とする、メチルメルカプタン臭抑制剤を提供する。
本発明によれば、メチルメルカプタン臭を選択的に抑制することができる。
メチルメルカプタンに対する嗅覚受容体の応答。横軸は被験対象とした405種の各嗅覚受容体、縦軸は受容体の相対応答強度を表す。上図:300μMの銅イオン存在下での応答、下図:銅イオン非存在下での応答。 種々の濃度のメチルメルカプタンに対するOR4S2(4S2)、OR2T11(2T11)、OR2W1(2W1)、OR2T1(2T1)及びOR13C2(13C2)発現細胞の応答。上図:300μMの銅イオン存在下での応答、下図:銅イオン非存在下での応答。エラーバー=±SE、n=3。 OR4S2発現細胞の各種試験物質に対する応答。エラーバー=±SE、n=3。 官能試験手順のスキーム。 OR4S2アゴニストのメチルメルカプタン臭抑制効果についての官能評価結果(平均値、n=3)。試験サンプル適用前のメチルメルカプタン臭強度(スコア3)に対する、試験サンプル適用後のメチルメルカプタン臭の相対強度。
本明細書において「アゴニスト」とは、受容体に結合し、活性化させる物質をいう。一方、本明細書において「アンタゴニスト」とは、受容体に結合するが、受容体を活性化しないか、又はアゴニストに対する受容体の応答を抑制する物質をいう。
本明細書において、「嗅覚受容体アゴニズム」とは、受容体に結合して、その受容体を活性化することをいう。
本明細書において、標的においに関する「においの交差順応(又は嗅覚の交差順応)」とは、当該標的においの原因物質とは別の物質のにおいを予め受容し、そのにおいに慣れることによって、該標的においの原因物質に対する嗅覚感受性が低下又は変化する現象を指す。本発明者らは、以前、「においの交差順応」が、嗅覚受容体アゴニズムに基づく現象であることを明らかにした(特許文献2)。すなわち、「においの交差順応」においては、標的においの原因物質に対する嗅覚受容体が、該標的においの原因物質への応答に先だって異なるにおいの原因物質に応答し、次いで脱感作することにより、後から該標的においの原因物質に曝されても低い応答しかできず、その結果、個体に認識される標的においの強度の低下又は変質が生じる。こうした嗅覚受容体の挙動により引き起こされるにおいの交差順応の仕組みを、本明細書において「嗅覚受容体アゴニズムによるにおいの交差順応」とも呼ぶ。
本発明により抑制される「メチルメルカプタン臭」とは、メチルメルカプタンにより生じるにおいであり、例えば、パーマネント剤から発せられる悪臭、糞便臭、体臭、口臭、わきが、加齢臭、老人臭などに含まれる。
本発明者は、多くの嗅覚受容体の中から、メチルメルカプタンに対して選択的に応答する嗅覚受容体としてOR4S2を同定した。OR4S2は、ヒト嗅細胞で発現している嗅覚受容体であり、GenBankにGI:116517324として登録されている。OR4S2は、ジメチルジスルフィド、ジメチルトリスルフィド等の特定の種類のスルフィド化合物のにおいの認識に関わる嗅覚受容体として知られていたが、メチルメルカプタンに応答することは知られていなかった(特許文献1)。しかし、本発明者の研究により、OR4S2が、銅イオン等の金属イオン存在下では、メチルメルカプタンに対して濃度依存的に応答すること、すなわちメチルメルカプタン受容体として働くことが見出された。また、動物の嗅粘液には金属イオンが含まれていることから、生きた動物の嗅上皮に存在するOR4S2は、メチルメルカプタン臭の認識に関与することが明らかにされた。
さらに本発明者らは、アセトフェノン、p-メンテン-8-チオール、p-メンタン-8-チオール-3-オン及びフルフリルメルカプタンが、金属イオン存在下でのOR4S2の応答を増強するOR4S2アゴニストであることを見出した。これらのOR4S2アゴニストは、動物におけるOR4S2のメチルメルカプタン臭応答に変化を生じさせることで、嗅覚受容体アゴニズムによるにおいの交差順応に基づいてメチルメルカプタン臭を選択的に抑制することができる。
本発明において、OR4S2アゴニストとは、アセトフェノン、p-メンテン-8-チオール、p-メンタン-8-チオール-3-オン及びフルフリルメルカプタンからなる群より選択される少なくとも1種を意味する。例えば、本発明において、OR4S2アゴニストとは、アセトフェノン、p-メンテン-8-チオール、p-メンタン-8-チオール-3-オン及びフルフリルメルカプタンのいずれか単独又はいずれか2つ以上の組み合わせを意味する。これらの物質は、これまで香料素材として知られていたが、OR4S2アゴニストとしての機能や、メチルメルカプタン臭を選択的に抑制する機能を有することは知られていなかった。
したがって本発明によれば、上述したOR4S2アゴニストは、メチルメルカプタン臭抑制のために使用される。より詳細には、該OR4S2アゴニストは、嗅覚受容体アゴニズムによるにおいの交差順応に基づくメチルメルカプタン臭の抑制のために使用される。該OR4S2アゴニストによれば、従来の消臭剤または芳香剤を用いる消臭方法において生じていた芳香剤の強いにおいに基づく不快感等や、他のにおいをも抑えてしまうという問題を生じることがなく、メチルメルカプタン臭を消臭することができる。
アセトフェノン、p-メンテン-8-チオール、p-メンタン-8-チオール-3-オン及びフルフリルメルカプタンは、いずれも市販のものを購入することができる。例えば、東京化成工業株式会社、高砂香料工業株式会社、Sigma-Aldrich、富士フイルム和光純薬株式会社などから入手することが可能である。
一実施形態において、本発明は、該OR4S2アゴニストを有効成分とする、メチルメルカプタン臭抑制剤を提供する。別の一実施形態において、該OR4S2アゴニストは、メチルメルカプタン臭抑制剤の製造のために使用され得る。一実施形態において、該メチルメルカプタン臭抑制剤は組成物であり、該OR4S2アゴニストは、該組成物に、メチルメルカプタン臭を抑制するための有効成分として含有される。該組成物は、該OR4S2アゴニストによるメチルメルカプタン臭抑制作用が損なわれない限り、該OR4S2アゴニストとともに、さらに他の消臭成分、防臭成分又は芳香成分、あるいは消臭剤又は防臭剤に一般的に添加される任意の成分を、その目的に応じて適宜含有していてもよい。あるいは、該メチルメルカプタン臭の抑制剤は、該OR4S2アゴニストから本質的に構成されていてもよい。
さらなる実施形態において、本発明は、該OR4S2アゴニストを用いたメチルメルカプタン臭抑制方法を提供する。好ましくは、当該方法は、メチルメルカプタン臭の抑制を必要とする対象(個体)に、該対象がメチルメルカプタンに曝される前又はそれと同時に、該OR4S2アゴニストを適用することを含む。
本発明の一実施形態においては、メチルメルカプタン臭の抑制を必要とする対象に、該対象がメチルメルカプタンに曝される前に、該OR4S2アゴニストを適用する。適用された該OR4S2アゴニストは、該対象のOR4S2を活性化し、次いでその応答性を脱感作により低下させる。これにより、その後該対象がメチルメルカプタンに曝されても、該メチルメルカプタンに対するOR4S2の応答は抑制される。結果、嗅覚受容体アゴニズムによるにおいの交差順応に基づいて、メチルメルカプタン臭が選択的に抑制される。
好ましい実施形態において、該OR4S2アゴニストは、メチルメルカプタン臭の抑制を必要とする対象に携行される。これによって、該対象のOR4S2を予め該OR4S2アゴニストに曝し、それに対して脱感作させる。その後、該対象がメチルメルカプタンに曝されても、該OR4S2アゴニストに対して脱感作した該対象のOR4S2は該メチルメルカプタンに対して低い応答を示し、結果としてメチルメルカプタン臭は抑制される。
別の好ましい実施形態において、該OR4S2アゴニストは、メチルメルカプタン臭が発生する可能性のある環境に適用される。これによって、該環境にいるメチルメルカプタン臭の抑制を必要とする対象のOR4S2を予め該OR4S2アゴニストに曝し、それに対して脱感作させる。その後該環境にメチルメルカプタン臭が発生した場合でも、該OR4S2アゴニストに対して脱感作した対象のOR4S2はメチルメルカプタンに対して低い応答を示し、結果としてメチルメルカプタン臭は抑制される。
別の好ましい実施形態において、該OR4S2アゴニストは、メチルメルカプタン臭を発生する可能性のある物質に添加される。好ましくは、メチルメルカプタン臭を発生する可能性のある物質と、該OR4S2アゴニストとの組成物が調製され、該組成物は、メチルメルカプタン臭の抑制を必要とする対象に適用される。これによって、該対象のOR4S2は該OR4S2アゴニストに曝され、それに対して脱感作する。その後該組成物がメチルメルカプタン臭を発生した場合でも、該OR4S2アゴニストに対して脱感作した対象のOR4S2はメチルメルカプタンに対して低い応答を示し、結果としてメチルメルカプタン臭は抑制される。
本発明の別の一実施形態においては、メチルメルカプタン臭の抑制を必要とする対象に、該対象がメチルメルカプタンに曝されるのと同時に、該OR4S2アゴニストを適用する。適用された該OR4S2アゴニストは、OR4S2と結合してこれを活性化し、次いでその応答性を脱感作により低下させる。これにより、メチルメルカプタンに対するOR4S2の応答は抑制される。結果、嗅覚受容体アゴニズムによるにおいの交差順応に基づいて、メチルメルカプタン臭が選択的に抑制される。好ましい実施形態において、該OR4S2アゴニストは、メチルメルカプタンが存在する環境に、大気中での濃度がメチルメルカプタンよりも高濃度になるように適用される。別の好ましい実施形態において、該OR4S2アゴニストは、メチルメルカプタンを含有する物質に、該物質中にメチルメルカプタンよりも高濃度に含まれるように添加される。
本発明におけるメチルメルカプタン臭抑制のための該OR4S2アゴニストの適用例としては、トイレの前又は中への該アゴニストの載置や噴霧;病棟又は介護施設などで排泄の処置に関わる者に、該アゴニストを携行させたり、該処置の前に該アゴニストに曝露したりする方法;該アゴニストを含んだ紙おむつ又は生理用品;パーマネント剤を用いる美容室等への該アゴニストの載置や噴霧;該アゴニストを含んだパーマネント剤;該アゴニストを含んだ肌着、下着、リネン類等の服飾類、布製品、又は織物;該アゴニストを含んだ洗濯用洗剤又は柔軟剤;該アゴニストを含んだ香粧品、洗浄剤、デオドラント等の外用剤、医薬品、食品、等;メチルメルカプタン臭を有する製品の製造ラインもしくはメチルメルカプタン臭を発生する環境への該アゴニストの適用、などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
本発明において、メチルメルカプタン臭の抑制を必要とする対象(個体)の例としては、特に限定されないが、パーマネント剤による悪臭の知覚を低減したい者、トイレでの糞便臭の知覚を低減したい者、家庭、病棟、介護施設などで排泄の処置に関わる者、排泄物の処理や清掃に関わる者、排水管や汚水処理施設の点検、清掃又は工事に従事する者、などが挙げられる。該対象は、哺乳動物であれば特に限定されないが、好ましくはヒトである。
本発明の例示的実施形態として、さらに以下の物質、製造方法、用途、方法等を本明細書に開示する。ただし、本発明はこれらの実施形態に限定されない。
〔1〕アセトフェノン、p-メンテン-8-チオール、p-メンタン-8-チオール-3-オン、及びフルフリルメルカプタンからなる群より選択される少なくとも1種の物質を有効成分とする、メチルメルカプタン臭抑制剤。
〔2〕メチルメルカプタン臭に曝される前の対象者に適用される、〔1〕記載のメチルメルカプタン臭抑制剤。
〔3〕前記メチルメルカプタン臭に曝される前の対象者に携行される、〔2〕記載のメチルメルカプタン臭抑制剤。
〔4〕メチルメルカプタン臭を発生する可能性のある環境に適用されるか、又はメチルメルカプタン臭を発生する可能性のある物質に添加される、〔1〕記載のメチルメルカプタン臭抑制剤。
〔5〕メチルメルカプタン臭抑制剤の製造のための、アセトフェノン、p-メンテン-8-チオール、p-メンタン-8-チオール-3-オン、及びフルフリルメルカプタンからなる群より選択される少なくとも1種の物質の使用。
〔6〕前記メチルメルカプタン臭抑制剤が、メチルメルカプタン臭に曝される前の対象者に適用される、〔5〕記載の使用。
〔7〕前記メチルメルカプタン臭抑制剤が、前記メチルメルカプタン臭に曝される前の対象者に携行される、〔6〕記載の使用。
〔8〕前記メチルメルカプタン臭抑制剤が、メチルメルカプタン臭を発生する可能性のある環境に適用されるか、又はメチルメルカプタン臭を発生する可能性のある物質に添加される、〔5〕記載の使用。
〔9〕メチルメルカプタン臭抑制のための、アセトフェノン、p-メンテン-8-チオール、p-メンタン-8-チオール-3-オン、及びフルフリルメルカプタンからなる群より選択される少なくとも1種の物質の使用。
〔10〕前記物質が、メチルメルカプタン臭に曝される前の対象者に適用される、〔9〕記載の使用。
〔11〕前記物質が、前記メチルメルカプタン臭に曝される前の対象者に携行される、〔10〕記載の使用。
〔12〕前記物質が、メチルメルカプタン臭を発生する可能性のある環境に適用されるか、又はメチルメルカプタン臭を発生する可能性のある物質に添加される、〔9〕記載の使用。
〔13〕メチルメルカプタン臭抑制方法であって、それを必要とする対象に、アセトフェノン、p-メンテン-8-チオール、p-メンタン-8-チオール-3-オン、及びフルフリルメルカプタンからなる群より選択される少なくとも1種の物質を適用することを含む、方法。
〔14〕前記物質が、メチルメルカプタン臭に曝される前の前記対象に適用される、〔13〕記載の方法。
〔15〕前記物質が、メチルメルカプタン臭を発生する可能性のある環境に適用されるか、又はメチルメルカプタン臭を発生する可能性のある物質に添加される、〔13〕記載の方法。
以下、実施例を示し、本発明をより具体的に説明する。
参考例1 ヒト嗅覚受容体発現細胞の調製
1)嗅覚受容体発現細胞の作製
GenBankに登録されている配列情報を基に、表1~2に記載のヒト嗅覚受容体をコードする遺伝子をクローニングした。各遺伝子は、human genomic DNA female(G1521:Promega)を鋳型としたPCR法によりクローニングした。PCR法により増幅した各遺伝子をpENTRベクター(Invitrogen)にマニュアルに従って組み込み、pENTRベクター上に存在するNotI、AscIサイトを利用して、pME18Sベクター上のFlag-Rhoタグ配列の下流に作製したNotI、AscIサイトへと組換えた。
Figure 0007158192000001
Figure 0007158192000002
2)pME18S-ヒトRTP1Sベクターの作製
ヒトRTP1Sをコードする遺伝子をpME18SベクターのEcoRI、XhoIサイトへ組み込んだ。
3)嗅覚受容体発現細胞の作製
実施例1の1)では、ヒト嗅覚受容体405種をそれぞれ発現させたHEK293細胞を作製した。表3に示す組成の反応液を調製しクリーンベンチ内で15分静置した後、384ウェルプレート(BioCoat)の各ウェルに4.4μLずつ添加した。次いで、HEK293細胞(20×104細胞/cm2)を40μLずつ各ウェルに播種し、37℃、5%CO2を保持したインキュベータ内で24時間培養した。
Figure 0007158192000003
実施例1の2)及び実施例2では、実施例1の1)で見出されたメチルメルカプタン応答性を有する嗅覚受容体を発現させたHEK293細胞を作製した。表4に示す組成の反応液を調製しクリーンベンチ内で15分静置した後、96ウェルプレート(BioCoat)の各ウェルに10μLずつ添加した。次いで、HEK293細胞(3×105細胞/cm2)を90μLずつ各ウェルに播種し、37℃、5%CO2を保持したインキュベータ内で24時間培養した。対照区として用いるために、嗅覚受容体を発現させない条件の細胞(Mock)も用意し、同様に実験に用いた。
Figure 0007158192000004
参考例2 ルシフェラーゼアッセイ
HEK293細胞に発現させた嗅覚受容体は、細胞内在性のGαsと共役しアデニル酸シクラーゼを活性化することで、細胞内cAMP量を増加させる。本研究でのにおい応答測定には、細胞内cAMP量の増加をホタルルシフェラーゼ遺伝子(fluc2P-CRE-hygro)由来の発光値としてモニターするルシフェラーゼレポータージーンアッセイを用いた。また、CMVプロモータ下流にウミシイタケルシフェラーゼ遺伝子を融合させたもの(hRluc-CMV)を同時に遺伝子導入し、遺伝子導入効率又は細胞数の誤差を補正する内部標準として用いた。ルシフェラーゼの活性測定には、Dual-GloTMluciferase assay system(Promega)を用い、製品の操作マニュアルに従って測定を行った。各種刺激条件について、ホタルルシフェラーゼ由来の発光値をウミシイタケルシフェラーゼ由来の発光値で除した値fluc/hRlucを算出した。におい物質刺激により誘導されたfluc/hRlucを、におい物質刺激を行わない細胞でのfluc/hRlucで割った値をfold increaseとして算出し、応答強度の指標とした。
参考例3 におい物質
におい物質としては、以下を使用した。
メチルメルカプタンナトリウム(約15%水溶液)(東京化成工業(株))、
Acetophenone(Sigma-Aldrich)、
p-Menthene-8-thiol(1%Alc)(高砂香料工業(株))、
p-Menthane-8-thiol-3-one(東京化成工業(株))、
Furfuryl mercaptan(Sigma-Aldrich)
実施例1 におい物質に対する嗅覚受容体応答
1)メチルメルカプタンに応答する嗅覚受容体の同定
参考例1に従って作製した嗅覚受容体発現細胞の培養物から培地を取り除き、メチルメルカプタンナトリウムを含む300μM CuCl2添加DMEM培地(10mM HEPESでpH6.5に調整)を、該培養物を含む384ウェルプレートの各ウェルに30μLずつ添加した(最終濃度:メチルメルカプタン 3mM)。細胞をCO2インキュベータ内で2.5~3時間培養し、ルシフェラーゼ遺伝子を細胞内で十分に発現させた後、参考例2の手法でルシフェラーゼアッセイを行い、メチルメルカプタンに対する嗅覚受容体の応答強度(fold increase)を測定した。同様の手順で、CuCl2非添加培地中で培養した細胞での嗅覚受容体の応答強度を測定した。
結果を図1に示す。図は、銅イオン存在下(上図)及び非存在下(下図)での、各受容体発現細胞における、におい刺激なしの条件での応答強度を1としたときの、におい刺激に対する相対応答強度を表す。405種類の嗅覚受容体それぞれを発現させた細胞について、銅イオン存在下でメチルメルカプタンに対する応答を測定した結果、メチルメルカプタンに対して最も高い応答性をもたらした受容体としてOR4S2が同定された。また、メチルメルカプタンに対して応答性をもたらした受容体として、他にOR2T11、OR2W1、OR2T1及びOR13C1が同定された。一方、銅イオン非存在下では、いずれの受容体もメチルメルカプタンに応答しなかった。
2)嗅覚受容体応答のにおい物質濃度依存性
参考例1、2記載の方法に従って、異なる濃度のメチルメルカプタンに対するOR4S2、OR2T11、OR2W1、OR2T1及びOR13C1の応答を測定した。その結果、OR4S2、OR2T11及びOR2W1はメチルメルカプタン濃度依存的な応答を示し、メチルメルカプタン受容体であることが確認された(図2)。このうち、OR4S2が最も応答性が高くメチルメルカプタンに特に高感度な受容体であることが分かった。
実施例2 嗅覚受容体応答に基づくメチルメルカプタン臭抑制剤の探索
1)嗅覚受容体応答の測定
参考例1に従って作製したOR4S2発現細胞の培養物から、培地を取り除き、300μM CuCl添加DMEM培地に試験物質(培地中最終濃度:60ppm又は200ppm)を含む溶液を75μL添加した。細胞をCOインキュベータ内で3~4時間培養し、ルフェラーゼ遺伝子を細胞内で十分に発現させた後、参考例2の手法でルシフェラーゼアッセイを行い、試験物質に対する嗅覚受容体の応答強度(Fold increase)を測定した。試験物質として126種のにおい物質を用いた。
2)結果
その結果、OR4S2の応答を活性化させる物質として、Acetophenone、p-Menthene-8-thiol、p-Menthane-8-thiol-3-one及びFurfuryl mercaptanが見出された。これらの物質に対するOR4S2の応答をさらに調べた。結果を図3に示す。なお、図3における試験物質の濃度は、p-Menthene-8-thiol及びp-Menthane-8-thiol-3-oneは30μM、Furfuryl mercaptan及びAcetophenoneは300μMである(p-Menthene-8-thiol及びp-Menthane-8-thiol-3-oneは300μMで細胞毒性を有するため、30μMで刺激した)。これらの試験物質に対する応答は、OR4S2を発現させない細胞(Mock)では認められなかったことから、OR4S2に依存したものであった。したがって、これらの物質は、OR4S2アゴニストであり、嗅覚受容体アゴニズムによるにおいの交差順応に基づくメチルメルカプタン臭抑制剤として機能すると考えられた。すなわち、これらの物質を嗅ぎ続けることで、鼻でOR4S2の脱感作が引き起こされ、メチルメルカプタンを認識できない状況が生じると期待された。
実施例3 OR4S2アゴニストのメチルメルカプタン臭抑制効果の官能評価
1)方法
実施例2で見出されたOR4S2アゴニストによるメチルメルカプタン臭抑制効果を、官能試験により評価した。官能試験では、該アゴニストの交差順応によるにおい抑制作用を評価した。
(メチルメルカプタンサンプルの調製)
メチルメルカプタンナトリウム(15%水溶液)と10%クエン酸水溶液を等量混ぜた混合液を調製した。該混合液30μLを直径約14mmの綿球(アズワン株式会社、No.14)に染み込ませ、テルモシリンジSS-50ESZ(東京硝子器械株式会社)に封入し、1.5時間放置した。シリンジ内の気体25mL分を横にシリンジの先が刺さる程度の穴を開けたミニカップ500(株式会社ビッグ、500mL)に注入し、メチルメルカプタンサンプルを調製した。
(試験サンプルの調製)
床から91cm-139cmの位置に窓(縦48cm×横43.5cm)が付いた密閉空間(縦×横×高さ=110cm×110cm×225cm)を用意した。噴霧器(ノズル:マイクロフォグMINI MF0005(ノズルネットワーク株式会社)、ポンプ:ミニエアポンプ(SITO MOTOR社))を用いて、におい物質を該密閉空間内にその窓から噴霧し、窓を閉め、1分間放置して該密閉空間内ににおい物質を充満させた。これを試験サンプルとした。におい物質は次のいずれかを用いた:10%Acetophenoneを含むエタノール溶液を100μL、0.2%p-Menthene-8-thiolを含むエタノール溶液を50μL、0.1%p-Menthane-8-thiol-3-oneを含むエタノール溶液を50μL、及び、0.01%Furfuryl mercaptanを含むエタノール溶液を50μL。
(官能試験)
官能試験はパネラー3名で行った。試験では、試験サンプル適用前後でのメチルメルカプタン臭の強度の変化を評価した。詳細には、パネラーは、まずメチルメルカプタンサンプルを呈示され、そのにおい強度を評価した。次に、該密閉空間に充満させた試験サンプルを窓から2分間嗅いだ。その後、改めてメチルメルカプタンサンプルを呈示され、そのにおい強度を評価した(図4参照)。これを1セットとして試験を行った。各セット間には少なくとも3分間以上の休憩を設けた。
メチルメルカプタン臭の強度については、次の5段階の基準「対象の悪臭が、1:やっと感知できる(検知閾値付近)、2:わずかににおう(認知閾値付近)、3:はっきりにおう、4:強くにおう、5:非常に強くにおう」を設定した。試験サンプル適用前のメチルメルカプタン臭の強度を3としたときの試験サンプル適用後のメチルメルカプタン臭の強度を、1.0から0.5刻みで5.0までの9段階で評価した。
2)結果
官能試験の結果を図5に示す。試験されたOR4S2アゴニストは、いずれも、嗅覚受容体アゴニズムによるにおいの交差順応に基づくメチルメルカプタン臭抑制効果を示した。本実施例の結果から、これらの物質がメチルメルカプタン臭の抑制に有効であることが示された。

Claims (3)

  1. -メンテン-8-チオール、及びp-メンタン-8-チオール-3-オンからなる群より選択される少なくとも1種の物質を有効成分とする、メチルメルカプタン臭抑制剤。
  2. メチルメルカプタン臭に曝される前の対象者に適用される、請求項1記載のメチルメルカプタン臭抑制剤。
  3. メチルメルカプタン臭を発生する可能性のある環境に適用されるか、又はメチルメルカプタン臭を発生する可能性のある物質に添加される、請求項1記載のメチルメルカプタン臭抑制剤。
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