JP2018031971A - 非線形光学顕微鏡、空間位相変調器および非線形光学顕微鏡法 - Google Patents

非線形光学顕微鏡、空間位相変調器および非線形光学顕微鏡法 Download PDF

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Abstract

【課題】非線形光学顕微鏡の背景光除去と空間分解能向上を実現する。【解決手段】非線形光学顕微鏡は、第1の励起光を試料上に集光する第1の光学系と、第2の励起光を試料上に集光する第2の光学系と、第1の励起光の領域の光束の一部の領域について、所定の変調周波数の位相変調を与える空間位相変調手段と、第1の励起光と第2の励起光を試料上に集光する集光光学系と、試料から生じる信号光から、変調周波数に応じた周波数成分を抽出する信号抽出手段と、を備える。空間位相変調手段は、第1の励起光の位相変調を一部の領域の偏光方向を第1の方向とし、他の領域の偏光方向を第1の方向とは異なる第2の方向として出力する第1の液晶デバイスと、第1の方向と第2の方向の偏光の位相差を変調周波数で変調する電気光学位相変調器と、第1の励起光の全ての領域の偏光方向をそろえて出力する第2の液晶デバイスとを含んで構成することができる。【選択図】図5

Description

本発明は、非線形光学顕微鏡の空間分解能と観察可能な深さを向上させる手法に関する。
2光子蛍光顕微鏡は高解像度の深部イメージングに有用とされ、生物・医学の分野で広く使用されるようになっている。2光子蛍光強度は励起光強度の二乗に比例するため、励起光強度の高い領域でしか発生しない。このことを利用して、2光子蛍光顕微鏡では、励起光をきつく集光することによって、励起光強度の高い集光点近傍においてのみ2光子蛍光が発生するようにしている。
しかし、散乱や吸収の大きな試料では、試料表面から集光点までに励起光パワーが劇的に減衰するため、観察する深さが深くなるほど、集光点と試料表面の励起光強度差は相対的に小さくなる。そのため、深部の集光点において2光子蛍光が発生するように励起光パワーを増加させると、試料表面近傍でも2光子蛍光が発生してしまう。この蛍光が背景光となり、観察可能な深さが制限されてしまう。
また、励起光として、可視光より波長が長い近赤外光を用いるため、可視光を用いた1光子蛍光顕微鏡に比べると、空間分解能が低下するという問題もある。空間分解能をN倍
向上させようとすると、信号に寄与する体積から考えて、信号強度がN3倍低下するので、背景光に埋もれやすくなる。そのため、観察可能な深さと空間分解能はトレードオフの関係にある。
これらの問題を解決するための手法として、本発明者らは、空間重なり変調法(特許文献1、非特許文献1)を開発してきた。空間重なり変調法では、2波長が同時照射された場合に発生する2光子蛍光を用いる。また、2波長のうち、一方の集光点を固定したまま、他方の集光点を相対的にずらしたり重ねたりを周期的に繰り返す。このとき、試料表面では2つの励起光の重なりが大きく変化しないため、試料表面において発生する2光子蛍光強度に時間的な変化はない。一方、集光点では2つの励起光の重なりが大きく変化するため、集光点において発生する2光子蛍光強度が変調される。この変調成分を抽出することによって、集光点で発生する信号光を、試料表面で発生する背景光から分離することが可能となる。
また、焦点面においても、ビームスポット内の位置によって、発生する信号の時間的な変化が異なる。最適化した周波数や位相を用いて、信号解析を行えば、ビームスポット内の局所領域の信号を抽出できる。このことは、空間分解能の向上につながる。
しかしながら、市販されているデバイスを用いて実現できる空間重なり変調は、周波数が数100kHzと遅いという問題があった。変調周波数がMHzより低いと、レーザー光のパワ
ー揺らぎ雑音が大きくなるが、変調周波数がMHzを超えてくると、ショット雑音限界での
高感度測定が可能となる。また、変調周波数が高くなれば、イメージング速度も向上可能である。したがって、空間重なり変調を高速に行える手法の開発が望まれる。
また、1光子共焦点蛍光顕微鏡を対象としたものであるが、集光点近傍での励起光の空間強度分布を変調することで背景光の影響除去と空間分解能の向上が可能な手法(Focal Modulation Microscopy)が提案されている(特許文献2、非特許文献2)。この手法で
は、励起光の一部の領域に位相変調を与えることで、集光点近傍での空間強度分布を変調
する。試料表面近傍では空間強度分布は変化しないので、蛍光強度の周波数解析により試料表面で発生する背景光を分離することができる。しかしながら、マルチカラーイメージングを行う場合には、全ての多波長励起光の空間強度分布を変調しなければならない。そのため、各励起光に最適化した複数の変調器が必要である。
特許第5930220号公報 特許第5551069号公報
K. Isobe, H. Kawano, T. Takeda, A. Suda, A. Kumagai, H. Mizuno, A. Miyawaki, and K. Midorikawa, "Background-free deep imaging by spatial overlap modulation nonlinear optical microscopy," Biomed. Opt. Express, 3, 1594-1608 (2012). Nanguang Chen, Chee-Howe Wong, and Colin J. R. Sheppard, "Focal modulation microscopy," Opt. Express 16, 18764-18769 (2008).
上記のような現状を考慮して、本発明の目的は、従来技術とは異なる手法によって、背景光の除去が可能で高分解能な多光子励起顕微鏡を提供することにある。
本発明では、2波長以上の波長成分によって励起される非線形光学過程の信号光を測定する非線形光学顕微鏡において、相対的に異なる空間位相変調を与えた2つの励起光を集光することで、空間重なり変調を実現する。
より具体的には、本発明にかかる非線形光学顕微鏡は、第1の励起光を試料上に集光する第1の光学系と、第2の励起光を試料上に集光する第2の光学系と、前記第1の励起光の光束の一部の領域について、所定の変調周波数の位相変調を与える空間位相変調手段と、前記第1の励起光と前記第2の励起光の試料上に集光する集光光学系と、試料から生じる信号光から、前記変調周波数に応じた周波数成分を抽出する信号抽出手段と、を備える。なお、第1の励起光と第2の励起光が相対的に位相変調されればよく、第1の励起光だけでなく第2の励起光に対しても位相変調を与えても構わない。
第1の励起光の一部の領域に位相変調を与えると、集光点近傍においてのみ各領域のビームが重なり、干渉効果によって空間強度分布が変化する。このような第1の励起光を、別の第2の励起光と同時に照射することで空間重なり変調が実現できる。集光点以外では第1の励起光の空間強度分布は変化しないので、信号光から位相変調の周波数に応じた周波数成分を抽出することによって、集光点近傍において発生した信号を選択的に取得することができる。
本発明において、第1の励起光の一部の領域に位相変調を与える手法は特に限定されないが、空間強度分布を高速(MHzのオーダー)で変調するためには、空間位相変調手段を
、第1の液晶デバイス、電気光学位相変調器、第2の液晶デバイスによって構成することが好ましい。第1の液晶デバイスは、偏光方向がそろっている第1の励起光の一部の領域(位相変調を与える領域)の偏光方向と、その他の領域(位相変調を与えない領域)の偏光方向が異なるようにして出力する。電気光学位相変調器は、第1の方向と第2の方向の偏光の位相差を所定の変調周波数で変調する。第2の液晶デバイスは、第1の励起光の偏
光方向を揃えて出力する。このようにすれば、第1の励起光の一部の領域とその他の領域のあいだに相対的な位相変調を与えることができる。
例えば、第1の励起光の偏光が第2の方向に揃っているとする。このとき、まず、第1の液晶デバイスによって、第1の励起光のうち位相変調を与える領域の偏光方向を90度回転させて第1の方向とする。そして、電気光学位相変調器によって、第1の方向と第2の方向の偏光の位相差を変調する。そして、第2の液晶デバイスによって、位相変調を与える領域の偏光方向を−90度回転させて第1の方向から第2の方向とし、全ての領域の偏光方向を第2の方向に戻す。このようにすれば、選択領域のみに位相変調を与えることができる。また、電気光学位相変調器は、MHzのオーダーで変調が可能なため、高速な位
相変調すなわち空間重なり変調が実現できる。
第1の液晶デバイスによって、位相変調を与えない領域の偏光方向を回転させてもよいし、位相変調を与える領域と与えない領域の両方の偏光方向をそれぞれ異なる角度で回転させてもよい。また、第2の液晶デバイスによって全ての領域の偏光方向をそろえるために、第1の液晶デバイスによって偏光を回転させなかった方の領域の偏光方向を回転させてもよいし、両方の領域の偏光方向をそれぞれ回転させてもよい。第1の液晶デバイスに入力される第1の励起光の偏光方向と、第2の液晶デバイスから出力される第1の励起光の偏光方向は、同じであってもよいし異なっていてもよい。
なお、空間位相変調手段はその他の構成により実現されてもよい。例えば、高速性が必要なければ、1つの液晶デバイスのみを用いて、位相変調を加える領域のみ印加電圧を変化させることで、位相変調を実現してもよい。あるいは、デフォーマブルミラーや、圧電アクチュエータによって移動可能なミラーを用いても良い。また、電気光学位相変調器は、現状では小型化が困難であるが、ピクセル化が可能となれば電気光学位相変調器のアレイによって選択領域のみに位相変調を与えるようにしても良い。
第1の励起光に対して位相変調を与える領域は、どのような領域であっても良い。例えば、瞳面を扇形状に分割した領域の一部であっても良いし、同心円状に複数に分割した領域の一部であっても良い。もちろん、メッシュ形状など扇形や同心円状以外の分割方法もあり得る。また、分割数は2分割、4分割、8分割などが考えられるが、2の累乗個に分割する必要はなく分割数は任意である。
第1の励起光のどの領域に位相変調を与えるべきかは、測定における要求性能によって異なる。たとえば、面内方向の空間分解能を優先したり、光軸方向の空間分解能を優先したり、背景光除去を優先したりすることが考えられ、それに応じて適切な領域分割方法が定まる。したがって、本発明は、第1の励起光について位相変調を与える領域を選択可能(可変)とする領域選択手段を備えることが好ましい。領域選択手段は、典型的には液晶デバイスが相当する。
本発明において、信号抽出手段は、前記信号光から前記変調周波数の整数倍の周波数成分を抽出するとよい。第1の励起光にどのような範囲で位相変調を与えるか、あるいは集光点近傍におけるどの位置から信号光を抽出するかによって信号光の周波数成分は変わるが、変調周波数の整数倍(奇数倍あるいは偶数倍)の周波数成分を抽出すればよい。
なお、励起光の数は非線形光学過程や標的分子種類の数に応じて2つ以上である。励起光を3つ以上用いる場合は、位相変調を加える励起光は1つのみ(第1の励起光)でよく、その他の励起光には位相変調を加える必要はない。
標的分子種類が複数の場合に、以下の構成によってマルチカラーイメージングを実現す
ることができる。すなわち、本発明において、前記第1の励起光と前記第2の励起光は異なる波長を有し、前記信号抽出手段は、前記第1の励起光のみから生じる非線形光から前記変調周波数に応じた周波数成分を抽出するとともに、前記第1の励起光と前記第2の励起光から生じる非線形光から前記変調周波数に応じた周波数成分を抽出することで多色イメージングを行えばよい。
あるいは、本発明において、第3の励起光を試料上に集光する第3の光学系をさらに備え、前記第1、第2および第3の励起光はいずれも異なる波長を有し、前記信号抽出手段は、前記第1の励起光と前記第2の励起光から生じる非線形光から前記変調周波数に応じた周波数成分を抽出するとともに、前記第1の励起光と前記第3の励起光から生じる非線形光から前記変調周波数に応じた周波数成分を抽出することで多色イメージングを行ってもよい。この場合、第1の励起光と第2の励起光、および第1の励起光と第3の励起光のあいだで相対的な空間位相変調が加えられればよい。したがって、第1の励起光のみに空間位相変調を与え、第2および第3の励起光に空間位相変調を与えないという簡単な構成でマルチカラーイメージングが実現できる。さらに、上述のように第1の励起光のみによって生じる非線形光からの周波数成分も抽出することで、3つの励起光によって3色のイメージングも可能である。一般にはN個の励起光を用いてN色のイメージングが可能である。
本発明は、上記手段の少なくとも一部を有する非線形光学顕微鏡として捉えることができる。また、本発明は、上記処理の少なくとも一部を含む非線形光学顕微鏡法として捉えることもできる。上記手段および処理の各々は可能な限り互いに組み合わせて本発明を構成することができる。
例えば、本発明は、偏光がそろっている光を、一部の領域の偏光方向を第1の方向とし、他の領域の偏光方向を前記第1の方向とは異なる第2の方向として出力する第1の液晶デバイスと、第1の方向と第2の方向の位相差を所定の変調周波数で変調する電気光学位相変調器と、前記光の全ての領域の偏光方向をそろえて出力する第2の液晶デバイスと、を含む、空間位相変調器として捉えることもできる。
また、本発明は、第1の励起光の領域のうち、一部の領域について、所定の変調周波数の位相変調を与える空間位相変調工程と、前記第1の励起光と第2の励起光を試料上に集光する集光工程と、試料から生じる信号光から、前記変調周波数に応じた周波数成分を抽出する抽出工程と、を含む、非線形光学顕微鏡法として捉えることもできる。
本発明に係る非線形光学顕微鏡によれば、背景光の除去と空間分解能の向上が実現できる。
空間重なり変調法を説明する図。 空間位相変調による空間強度分布変調を説明する図。 空間強度分布変調における領域分割の変形例を示す図。 空間強度分布変調における領域分割の別の例を示す図。 実施形態における(A)非線形光学顕微鏡および(B)空間位相変調ユニットの構成を示す図。 実施形態における空間位相変調ユニットによる位相変調を説明する図。 (A)空間位相変調による空間強度分布変調の与え方と(B)発生する非線形光を説明する図。 (A)空間位相変調による空間強度分布変調の与え方と(B)発生する非線形光を説明する図。 (A)従来手法および(B)−(D)本手法(それぞれ2分割、4分割、8分割)による蛍光ビーズの2光子蛍光像と、(E)各種法による面内方向の信号光の強度分布を示す図。 本手法(8分割)と従来手法による光軸方向の信号光強度プロファイルを示す図。 本手法(8分割)と従来手法による深部イメージングの結果を示す図。 本手法(8分割)と従来手法による深部イメージングの結果を示す図。 本手法が適用可能な非線形光学過程の例を説明する図。 本手法が適用可能な非線形光学過程の例を説明する図。
<空間重なり変調法の原理>
本発明に係る空間重なり変調非線形光学顕微鏡(SPOM-NOM: SPatial Overlap Modulation Nonlinear Optical Microscopy)は、2波長以上の励起光によって誘起される非線形
光学過程の信号光を検出する。このような非線形光学過程にはいくつかの種類があるが、ここでは和周波発生(SFG: Sum Frequency Generation)顕微鏡を例にして、本発明の基
礎となる空間重なり変調法の原理を説明する。
SFG顕微鏡では、励起光として周波数ω1、ω2を有する2つのパルスを用いる。SFG顕微鏡における信号光の時間平均光強度分布ISFG(r)は、集光点における2つの励起光パルス
の光強度分布Iω1(r,t), Iω2(r,t)を用いて、

と表される。2つの励起光パルスの空間的重なり面積が大きいほど和周波光強度が高く発生分布も狭くなる。2つのパルスの集光位置が時間的に揺らぐと、和周波光の時間平均光強度分布は空間的に広がり、信号光強度にも揺らぎが生じる。従来のSFG顕微鏡では、
空間的な重なり面積が大きくなるように2つの励起光パルスの集光位置を固定した状態で使用し、かつ、時間的に揺らぎが生じないようにしている。これに対して、空間重なり変調非線形光学顕微鏡では、2つのパルスの集光位置を時間的に変調し、変調により揺らいだ信号成分を検出する。このように、本発明では、パルスの集光位置を積極的に移動させて、和周波光の揺らぎ成分を測定対象とする。
例えば、図1(A)に示すように、励起光パルス1(実線)の集光位置を周期的に動かし、励起光パルス2(破線)の集光位置を固定する場合を考える。試料の深部を観察する場合には、励起光パワーを強くする必要があり、したがって試料表面でも和周波光が発生する。しかしながら、試料表面では2つの励起光の重なりが大きくは変化しないため、発生する和周波光に時間的な変化はない。一方、集光点では2つの励起光の重なりが大きく変化するため、和周波光の強度が変調される。そのため、この変調成分を抽出することにより、集光点で発生する信号光を試料表面で発生する背景光から分離することができ、深部イメージングが可能となる。
また、この手法によれば、励起光の集光スポットサイズよりも空間的に狭い領域からの信号を抽出することが可能であり、空間分解能が向上する。
<空間位相変調による空間強度分布変調>
本発明者らによる先行技術(特許文献1、非特許文献1)では、ビームポインティング
変調ユニットや波面変調ユニットを用いて励起光の集光位置を動かしている。これに対して、本発明では、励起光の一部の領域のみを位相変調することで、集光点での励起光の空間強度分布を変化させる。
図2(A)―(C)は、空間位相変調による空間強度分布変調を説明する図である。図2(A)は励起光を光軸と垂直な方向から見た模式図であり、図2(B)は励起光を光軸方向から見た模式図である。ここでは、励起光の光束を、対物レンズ23の瞳面の領域21を透過する部分と領域22を透過する部分に分割し、一方の領域22を透過する光束のみを位相変調する場合を例に説明する。
分割された2つの領域のうち一方の領域22に対して相対的に位相分布を変調する。すなわち、領域21と領域22を透過する光束のあいだの相対的な位相シフトの量を時間的に周期的に変化させる。すると、集光点24近傍でのみ分割された光束が重なり、干渉効果によって集光点24での空間強度分布が周期的に変化する。図2(C)は、集光点24での励起光の空間強度分布の変化を示す図である。
本発明では、励起光の一方に対してこのような相対的な位相変調を行って空間強度分布を変化させ、空間強度分布を固定した励起光との重ね合わせによって、空間重なり変調法を実現する。
なお、図2(A)−(C)では、励起光の領域を2分割する例を示しているが、分割方法はこれに限られない。例えば、図3(A)に示すように扇形状に4分割したり、図3(B)に示すように扇形状に8分割したりしてもよい。いずれの場合も、位相変調に伴って集光点での空間強度分布が変化する。あるいは、図4(A)に示すように、励起光の領域を同心円状に複数の領域に分割してもよいし、図4(B)に示すように、励起光の領域をメッシュ状に分割してもよい。すなわち、領域の分割法や分割数は特に限定されない。なお、図3,図4において「φ」と記されている領域は相対的に位相変調され、「0」と記されている領域は相対的に位相変調されない領域を意味する。
<本手法が適用可能な非線形光学過程の例>
以下、本手法が適用可能な非線形光学過程の例を説明する。
(1)非縮退2光子励起蛍光(nondegenerate two-photon excitation fluorescence: TPEF)
図13(A)に示すように、分子は、周波数ω1, ω2の2個の光子を同時に吸収し、基底状態から励起状態へ遷移する。その後、励起状態から蛍光を発し、基底状態へ遷移する。このとき発せられる蛍光が非縮退2光子励起蛍光である。2光子励起蛍光強度は励起光強度の2乗に比例するため,励起光をきつく集光することにより光軸方向の分解能が得られる。そのため,共焦点ピンホールなしで3次元イメージングが可能である。光褪色や光損傷も集光点近傍に抑制される。1光子励起蛍光顕微鏡では励起光として紫外光や可視光の励起光を用いるのに対して2光子励起蛍光顕微鏡では近赤外光を用いる。近赤外光は生体試料中における散乱や1光子吸収が小さいため、励起光が試料の深部まで到達でき、深部イメージングが可能である。また、励起光と蛍光の波長が大きく異なることから励起光と蛍光の分離も容易である。
(2)和周波発生(Sum frequency generation: SFG)と第2高調波発生(Second harmonic generation: SHG)
2光子励起のSFGとは,図13(B)に示すように周波数ω1, ω2の2個の光子が和の
周波数ω312をもつ1個の光子に変換される2次の非線形光学過程であり、反転対
称性のない分子・媒質でのみ生じる現象である。そのため、SFG顕微鏡では生体組織中に
おける配向構造や組織構造を可視化することが可能である。
(3)差周波発生(Difference frequency generation: DFG)
DFGとは,図13(C)に示すように周波数ω1, ω2の2個の光子が差の周波数ω3 =
ω1 - ω2をもつ1個の光子に変換される2次の非線形光学過程であり、反転対称性のな
い分子・媒質でのみ生じる現象である。周波数差をラマン振動数に一致させることにより、試料の化学成分や熱力学的状態に由来する振動コントラストが得られる。
(4)第3高調波発生(Third harmonic generation: THG)
3光子励起のSFGとは図13(D)に示すように周波数ω1, ω2, ω3の3個の光子が和の周波数ω41 + ω2 + ω3をもつ1個の光子に変換される3次の非線形光学過程であ
り、全ての分子・媒質で生じる現象である。ただし、励起光と信号光の波長が大きく異なり屈折率が大きく異なるために、位相整合条件を満たすことが困難である。そのため、一般的に屈折率が一様な分布の媒質中ではTHGは発生せず、屈折率分布が不均一な媒質中(
屈折率の異なる媒質の境界)で発生する。入射光である3個の光子の周波数が同じ周波数の場合をTHGと呼ぶ。
(5)4光波混合(Four-wave mixing: FWM)
周波数ω1, ω2, ω3の3つの入射場と媒質の相互作用により、新しい周波数ω4 = ω1 - ω2 + ω3の光が発生する3次の非線形光学過程をFWM過程と呼ぶ。相互作用を行う場の順番により、FWM過程には図13(E)(F)に示す2つの過程がある。非共鳴FWM顕微鏡
では、屈折率の分布を測定することが可能である。
(6)コヒーレント反ストークスラマン散乱(Coherent anti-Stokes Raman scattering: CARS)
図14(A)のようにFWM過程において2つの励起光の周波数差ω12がラマン振動数
ΩRに近づくとFWM過程が増強される。振動共鳴により増強されたFWM過程をCARS過程と呼
ぶ。CARS強度は周波数ω1のポンプ光と周波数ω2のストークス光の周波数差ω12がラ
マン振動数ΩRに近づくほど強くなる。そのため、CARS顕微鏡では、試料の化学成分や熱
力学的状態に由来する振動コントラストが得られる。
(7)誘導パラメトリック発光(Stimulated parametric emission: SPE)
図14(B)のようにFWM過程において2つの励起光の周波数和ω13が電子共鳴振動
数Ωeに近づくとFWM過程が増強される。2光子電子共鳴により増強されたFWM過程をSPE過
程と呼ぶ。SPE強度は周波数和ω13が電子共鳴振動数Ωeに近づくほど強くなる。その
ため、SPE顕微鏡では,試料の吸収に基づくコントラストが得られる。
(8)非縮退2光子吸収(nondegenerate two-photon absorption: TPA)
TPAは超短光パルスの強度自身に誘起された吸収係数の変化に起因する。TPAは、2個の光子が同時に吸収され、基底状態から励起状態へ遷移する。TPA顕微鏡では吸収による励
起光強度の微小な変化量を測定するために、図14(C)に示すように、第1光子と第2光子の周波数が異なる2波長励起を行う。TPAが生じると、励起光強度は周波数ω2の光強度が減少した量だけ周波数ω1の光強度が減少する。従来は、ω2の励起光を強度変調して、ω1の励起光に生じる周波数fの信号を測定するが、本手法を適用する場合は強度変調を行う必要はない。ω1とω2の両方の励起光に生じる空間重なり変調周波数に応じた周波数成分のどちらか、または両方を測定すればよい.TPA顕微鏡では吸収コントラストが得ら
れる。
(9)誘導ラマン散乱(Stimulated Raman scattering: SRS)
ラマン活性媒質に周波数ω1のポンプ光と周波数ω2のストークス光を入射したとき、ラ
マン散乱によりポンプ光がストークス光に変換され、ストークス光が増幅される過程がSRS過程である(図14(D))。空間重なり変調を用いない従来のSRS顕微鏡では、SRSに
よるストークス光強度とポンプ光強度の微小な変化量を測定するために、TPA顕微鏡と同
様に一方の励起光に強度変調を行う。空間重なり変調法では、励起光の強度変調を行う必要は無く一方の励起光の強度分布を変化させればよい。SRS顕微鏡では振動コントラスト
が得られる。
<非線形光学顕微鏡のシステム概要>
本実施形態にかかる非線形光学顕微鏡では、2波長以上の励起光によって誘起する非線形光学過程を用いる。非線形光学過程としては、多光子励起蛍光、和周波発生(第2高調波発生)、差周波発生、第3高調波発生、4光波混合、コヒーレント反ストークス散乱、誘導パラメトリック発光、多光子吸収、誘導ラマン散乱などがある。
図5(A)に、本実施形態にかかる非線形光学顕微鏡の装置構成を示す。ここで示す構成は一例に過ぎず、本発明の技術的思想の範囲内で種々の変形が可能である。
本実施形態では、光源として波長830nmのチタンサファイアレーザー発振器11を用い
てレーザーパルスを発振する。薄膜偏光板(ビームスプリッター)12でこのレーザーパルスを分割し、一方をそのまま励起光パルス2として用い、他方をパラメトリック発振器(波長変換手段)13により波長1080nmに変換して励起光パルス1として用いる。
励起光パルス1については空間位相変調ユニット14によって一部の領域に対してのみ位相変調を加えた後に、励起光パルス2については時間遅延ステージ15を通過させた後に、ダイクロイックミラー16を用いて空間的に重ね合わせられてレーザー走査顕微鏡17に入射される。重ね合わされた励起光パルス1,2は、対物レンズにより試料の内部(深部)に集光される。なお、試料が固定されたスライドガラスは3軸ピエゾステージによって移動可能であり、試料を3次元的に走査可能である。
レーザー走査顕微鏡17は、試料から生じた光信号から光電子増倍管(PMT)によって
試料検出する。この際、励起光は励起光カットフィルターによって除去する。PMTによって検出された信号から特定の周波数成分を抽出するために、ロックインアンプを用いて空間位相変調の周波数に応じた周波数成分を抽出する。ロックインアンプによって抽出された信号は、例えばコンピュータに送られて表示・記憶等の処理が成される。なお、周波数成分の抽出はデジタル信号処理によって行ってもよい。
<空間位相変調ユニット>
図5(B)は、空間位相変調ユニット14の詳細構成を示す図である。空間位相変調ユニット14の詳細構成は、主に、第1の8ゾーン液晶デバイス141、電気光学位相変調器(EOM)144,第2の8ゾーン液晶デバイス147を含む。
図6は、液晶デバイス141,147と電気光学位相変調器144による空間強度分布の変調を説明する図である。
符号61は、空間位相変調ユニット14に入力される励起光1の偏光方向を示す。励起光1の偏光方向は揃っており、ここではその方向をx方向とする。空間位相変調ユニット14に入力された励起光は、まず液晶デバイス141に入射される。
符号62は、液晶デバイス141を示す図である。液晶デバイス141は、8つのゾーンに分割されており、その一部の領域(「π」と示されている領域)のみ偏光方向をx方向から90度回転させてy方向とする。その他の領域(「0」と示されている領域)は偏
光方向は変化させない。符号63は、液晶デバイス141から出力される励起光1の偏光方向を示す。このように、液晶デバイス141によって選択された領域のみ、偏光の方向がy方向となる。液晶デバイス141から出力された励起光1は、レンズ142,143を介して電気光学位相変調器144に入射される。
符号64は、電気光学位相変調器144による位相変調を示す。電気光学位相変調器144は、y方向に印加する電圧をV=V0cos(2πfmt)のように周波数fで変化させる。こ
れにより、電気光学位相変調器144におけるy方向の屈折率がny=n0+Δncos(2πfmt)のように変化する。なお、x方向には電圧を印加せず、したがってx方向の屈折率はnxで固定である。
符号65は、電気光学位相変調器144から出力される励起光1の状態を示す。電気光学位相変調器144によって、y方向の偏光成分の位相がx方向の偏光成分の位相からΔφだけずれる。ここでΔφは周波数fで時間と共に変化する。電気光学位相変調器144から出力された励起光1は、レンズ145,146を介して第2の液晶デバイス147に入射される。
符号66は、液晶デバイス147を示す図である。液晶デバイス147は、8つのゾーンに分割されており、その一部の領域(「π」と示されている領域)のみ偏光方向をy方向から−90度回転させてx方向とする。その他の領域(「0」と示されている領域)は偏光方向は変化させない。これにより励起光1の偏光方向が全てx方向に揃えられる。
符号67は、液晶デバイス147から出力される励起光1の状態を示す。以上の操作によって、励起光1の領域のうち液晶デバイス141(147)によって選択された領域のみΔφの位相変調が加えられる。
液晶素子は応答速度が遅く、電気光学位相変調器は空間分割(ピクセル化)が実現されていないが、本実施形態の構成を採用することで、励起光1の一部の領域に対してMHzオーダーの高速な位相変調を加えられる。現時点において15MHzで変調可能な電気光学位相変調器が入手可能である。
上記の構成は液晶デバイスを用いているため、位相シフトを与える領域を変更可能という利点もある。すなわち、測定の際に、励起光ビームを2分割、4分割、8分割などを選択可能である。なお、測定中に液晶素子を切り替える必要はないので、液晶素子の応答速度の遅さは問題とはならない。
<位相変調の与え方>
位相変調の与え方には幾通りかの方法がある。例えば、与える位相シフトの量を、1周期のあいだで0からθ(0<θ≦π)のあいだとしてもよいし、−θからθのあいだとして
もよい。
図7(A)は、励起光1に対して、1周期(1/f)のあいだに0からπの範囲の位相シフトを与えた場合の、集光点近傍における励起光1と励起光2の強度分布を示す図である。各位置で生じる非線形光の強度は、励起光1と励起光2の強度の積に比例する(I〜I)。したがって、図7(B)に示すように、集光点(r=0)では位相変調の1周期のあいだに非線形光強度に1周期の変化があり、集光点から離れた位置(r=+δ,−δ)では位相変調の1周期のあいだに非線形光強度に2周期の変化がある。
この場合、検出される非線形光から周波数fの成分を抽出すれば、集光点位置(r=0)において発生した非線形光を選択的に抽出できる。また、検出される非線形光から周
波数2fの成分を抽出すればr=+δまたはr=−δにおいて発生した非線形光を抽出できる。ここで、r=+δおよびr=−δで生じる非線形光の位相は異なるので、対応する位相を有する信号を抽出すればr=+δまたはr=−δにおいて発生した非線形光を抽出できる。なお、非線形光は完全な正弦波とはならないので、それぞれ高調波成分を抽出してもよい。r=0において発生した非線形光を抽出するには変調周波数の奇数倍の成分を取得すればよく、r=±δにおいて非線形光を抽出するには変調周波数の偶数倍の成分を取得すればよい。
図8(A)は、励起光1に対して、1周期(1/f)のあいだに−π/2からπ/2の範囲の位相シフトを与えた場合の、集光点近傍における励起光1と励起光2の強度分布を示す図である。各位置で生じる非線形光の強度は、励起光1と励起光2の強度の積に比例する(I〜I)。したがって、図8(B)に示すように、集光点(r=0)では位相変調の1周期のあいだに非線形光強度に2周期の変化があり、集光点から離れた位置(r=+δ,−δ)では位相変調の1周期のあいだに非線形光強度に1周期の変化がある。
この場合、検出される非線形光から周波数2fの成分を抽出すれば、集光点位置(r=0)において発生した非線形光を選択的に抽出できる。また、検出される非線形光から周波数fの成分を抽出すればr=+δまたはr=−δにおいて発生した非線形光を抽出できる。なお、非線形光は完全な正弦波とはならないので、それぞれ高調波成分を抽出してもよい。r=0において発生した非線形光を抽出するには変調周波数の偶数倍の成分を取得すればよく、r=±δにおいて非線形光を抽出するには変調周波数の奇数倍の成分を取得すればよい。
<実験結果>
上述の構成の空間重なり変調顕微鏡を用いて、200nmの蛍光ビーズの2光子蛍光像を取得した。図9(A)−(D)はそれぞれ、従来の2光子蛍光顕微鏡を用いて測定した場合、および本手法において励起光1の領域を2分割、4分割、8分割して測定した場合の2光子蛍光像を示す。また、図9(E)は、それぞれの手法の面内方向(光軸と垂直な面)の信号光の強度分布を示す。領域分割数によらず、従来の手法と比較して空間分解能が向上していることが分かる。
図10はローダミンB溶液とカバーガラスの境界近傍の光軸(深さ)方向の2光子蛍光強度分布を測定した結果を示す。ここでは、励起光1の領域を8分割して測定している。また、比較のために従来の2光子蛍光顕微鏡を用いて測定した場合の結果も示している。本手法によって、深さ方向の空間分解能も向上していることが分かる。
また、上記の構成の空間重なり変調顕微鏡は2色イメージングが可能である。すなわち、位相変調を加えた光(励起光1)のみから発生する2光子蛍光信号と、2つの励起光の空間重なり変調による2光子蛍光信号を同時に取得することで2色イメージングができる。図11および図12は、アガロースゲルの中に蛍光ビーズを封入した模擬生体組織の深部イメージング結果を示す。図11は、従来手法と本手法によって測定した光軸と垂直な方向から見た投影図を色ごとに分けて示した図である。図中のCH1は励起光1と励起光2によって発生する2光子蛍光信号であり、CH2は励起光1のみから発生する2光子蛍光信号である。図12は従来手法と本手法によって測定したz=436, 471, 516, 567, 592
μmにおける断面図(2色カラー図)が示されている。本手法により2色同時イメージン
グが可能となっていること、および深部観察で発生する背景光を除去することにより観察可能な深さが向上していることが分かる。
<本実施形態の有利な効果>
以上のように、非線形光学過程による信号光を測定する非線形光学顕微鏡において一方の励起光の位相を部分的に変調して励起光の強度分布を変化させることで空間重なり変調が達成され、空間分解能を光軸に垂直な面内方向および光軸方向の両方について向上させることができる。また、集光点以外から発生する信号光を抑制できるので、従来よりも深い部分のイメージングができるようになる。
また、空間位相変調を液晶デバイスと電気光学位相変調器を用いて実現しているので、MHzオーダーの高速な位相変調が行える。位相変調の高速化によって、レーザー光のパワー揺らぎ雑音を低減でき、ショット雑音限界での高感度測定が可能となる。また、位相変調の高速化によって、測定時間も短縮される。さらに、液晶デバイスを制御することによって、励起光に対して位相変調を与える領域を容易に変更することができる。
<変形例>
励起光の一部の領域に対して位相変調を与える際に領域をどのように分割するかは、適宜決定すればよい。分割の形状は、扇形状、同心円状、メッシュ状などが考えられ、また分割数も2分割、4分割、8分割などが考えられるが、これらに限定されるわけではない。
また、励起光に位相変調を与えるための空間位相変調ユニットの構成は上述の構成に限られない。液晶デバイスと電気光学位相変調器を用いた構成において、途中の過程でどのように偏光を回転させるかは適宜変更可能である。また空間位相変調ユニットの構成は、上述のような液晶デバイスと電気光学位相変調器の組み合わせに限られない。変調速度は遅くなるが、液晶デバイスのみによって空間位相変調を行ったり、圧電アクチュエータによって移動可能なミラーやデフォーマブルミラーによって空間位相変調を行っても構わない。また、電気光学位相変調器の小型化が進みピクセル化が可能となれば、電気光学位相変調器のアレイによって空間位相変調を行ってもよい。
また、励起光に位相変調を与える際に、光束の一部の領域に対して位相変調を与え他の領域に対しては位相変調を与えていないが、それぞれの領域のあいだに位相差が設けられればよいので、それぞれの領域に対して異なる位相の位相変調を加えても構わない。
上記の実施形態では2つの励起光を用いているが、3つ以上の異なる波長の励起光を利用しても構わない。この場合、空間位相変調を加える励起光は1つのみで十分である。第1の励起光に空間位相変調を加えた場合、第1の励起光のみから発生する非線形光、および第1の励起光と第2から第N(Nは3以上の整数)の励起光の空間重なり変調による非線形光を取得することで、N色の同時イメージングが可能となる。空間位相変調を加える必要がある励起光は1つだけであるので、装置構成の複雑化を避けることができる。
11 チタンサファイア発振器
12 ビームスプリッター
13 光パラメトリック発振器
14 空間位相変調ユニット
15 時間遅延ステージ
16 ダイクロイックミラー
141,147 8ゾーン液晶デバイス
144 電気光学変調器
142,143,145,146 レンズ

Claims (9)

  1. 第1の励起光を試料上に集光する第1の光学系と、
    第2の励起光を試料上に集光する第2の光学系と、
    前記第1の励起光の光束の一部の領域について、所定の変調周波数の位相変調を与える空間位相変調手段と、
    前記第1の励起光と前記第2の励起光を試料上に集光する集光光学系と、
    試料から生じる信号光から、前記変調周波数に応じた周波数成分を抽出する信号抽出手段と、
    を備える非線形光学顕微鏡。
  2. 前記第1の励起光について位相変調を与える領域を選択する領域選択手段をさらに備える、
    請求項1に記載の非線形光学顕微鏡。
  3. 前記第1の励起光の偏光方向はそろっており、
    前記空間位相変調手段は、
    前記第1の励起光の一部の領域の偏光方向を第1の方向とし、他の領域の偏光方向を第1の方向とは異なる第2の方向として出力する、第1の液晶デバイスと、
    第1の方向と第2の方向の偏光の位相差を前記変調周波数で変調する電気光学位相変調器と、
    前記第1の励起光の全ての領域の偏光方向をそろえて出力する、第2の液晶デバイスと、
    を含む、
    請求項1または2に記載の非線形光学顕微鏡。
  4. 前記第1の励起光に変調を与える領域は、複数に分割された領域のうちの一部である、
    請求項1から3のいずれか1項に記載の非線形光学顕微鏡。
  5. 前記信号抽出手段は、前記信号光から前記変調周波数の整数倍の周波数成分を抽出する、
    請求項1から4のいずれか1項に記載の非線形光学顕微鏡。
  6. 前記第1の励起光と前記第2の励起光は異なる波長を有し、
    前記信号抽出手段は、前記第1の励起光のみから生じる非線形光から前記変調周波数に応じた周波数成分を抽出するとともに、前記第1の励起光と前記第2の励起光から生じる非線形光から前記変調周波数に応じた周波数成分を抽出することで多色イメージングを行う、
    請求項1から5のいずれか1項に記載の非線形光学顕微鏡。
  7. 第3の励起光を試料上に集光する第3の光学系をさらに備え、
    前記第1、第2および第3の励起光はいずれも異なる波長を有し、
    前記信号抽出手段は、前記第1の励起光と前記第2の励起光から生じる非線形光から前記変調周波数に応じた周波数成分を抽出するとともに、前記第1の励起光と前記第3の励起光から生じる非線形光から前記変調周波数に応じた周波数成分を抽出することで多色イメージングを行う、
    請求項1から6のいずれか1項に記載の非線形光学顕微鏡。
  8. 偏光がそろっている光を、一部の領域の偏光方向を第1の方向とし、他の領域の偏光方向を前記第1の方向とは異なる第2の方向として出力する第1の液晶デバイスと、
    第1の方向と第2の方向の位相差を所定の変調周波数で変調する電気光学位相変調器と、
    前記光の全ての領域の偏光方向をそろえて出力する第2の液晶デバイスと、
    を含む、空間位相変調器。
  9. 第1の励起光の光束の一部の領域について、所定の変調周波数の位相変調を与える空間位相変調工程と、
    前記第1の励起光と第2の励起光を試料上に集光する集光工程と、
    試料から生じる信号光から、前記変調周波数に応じた周波数成分を抽出する抽出工程と、
    を含む、非線形光学顕微鏡法。
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CN114153061A (zh) * 2021-12-01 2022-03-08 天津大学 一种基于光片成像的激发光轴向强度可调拼接方法

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