JP2018031724A - 磁界センサとバイアス方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】伝送線路型薄膜磁界センサにおいて、従来は外部に設置したコイルによりセンサへバイアス磁界を印加する必要があった。センサシステムが大規模であり、またコイルの大きな時定数等によりセンサシステムの低周波ノイズを増大させる恐れがあった。【解決手段】薄膜プロセスを用いて、バイアスを印加するためのバイアス用薄膜と当該薄膜に通電するためのバイアス用電極端子を設け、当該バイアス用電極端子は、磁性薄膜の困難軸方向にバイアス磁界を発生させるように配置する。【選択図】図1

Description

本発明は、薄膜磁界センサのバイアス印加手段に関する。
高度情報化の急速な進展にともない、携帯電子機器、コンピュータ、情報通信機器、医療機器やメカトロニクス機器などで、機器の小形化・軽量化、インテリジェント化が進められており、これらの中にあって、磁界センサはモータ等の制御、非破壊検査、方位センサ、生体磁気計測等、多岐の用途で用いられている。
小型の薄膜磁界センサとして、絶縁基板上に、誘電体薄膜SrTiO薄膜(チタン酸ストロンチウム)を介して、磁性薄膜とコプレーナ形状の導体を積層したセンサが提案されている(特許文献1)。コプレーナ形状の伝送路に高周波キャリア電流を通電し、さらに外部磁界を印加した場合に、磁界の関数として磁性薄膜の透磁率、表皮効果が変化し、その結果、抵抗、インダクタンスおよびインピーダンスが変化する現象を利用している。
特開2015−227866
特許文献1においては、前記小型薄膜磁界センサの磁性薄膜へのバイアス印加手段は、コイルに直流電源を用いて直流磁界を印加していた。バイアス印加手段としては、この他に、センサ周辺に永久磁石を設置する方法が考えられる。
しかし直流電源の出力の温度安定性やドリフト、コイルに電流を流すことによる応答性の悪化等により、センサシステムの低周波ノイズ(1/f)を増大させ、センサのSN比を悪化させるとともに、センサシステムのコンパクト化が難しい等の課題があった。また、永久磁石を用いるとコストの増大を招く等の課題があった。
そこで、本発明は、誘電体薄膜、磁性薄膜及び伝送線路と同じ薄膜プロセスを用いて、バイアス磁界を発生させるバイアス印加手段を、センサ素子内に一体的に形成した小型薄膜磁界センサを提供することを目的とする。
(請求項1)
請求項1記載の発明は、絶縁基板上に誘電体薄膜を介して磁性薄膜とコプレーナ導体を積層する構造を有する磁界センサにおいて、バイアスを印加するためのバイアス用薄膜と当該薄膜に通電するためのバイアス用電極端子を備え、当該バイアス用電極端子は、前記磁性薄膜の困難軸方向にバイアス磁界を発生させるように配置されていることを特徴とする。
本発明において、センサ素子内にバイアス用薄膜と当該薄膜に通電するためのバイアス用電極端子が設けられ、前記バイアス用電極端子は、センサ素子の磁性薄膜の困難軸方向にバイアス磁界が発生するように配置されており、従来の外部コイルを代替えするものである。
本発明によれば、センサ素子内に薄膜プロセスを用いて一体的にバイアス印加手段が形成されるので、製造コストを大きく増加させることなく、コンパクトな薄膜磁界センサを提供することができる。
(請求項2)
請求項2記載の発明は、請求項1記載の磁界センサであって、前記バイアス用薄膜は前記磁性薄膜であり、前記バイアス用電極端子の端部は、前記磁性薄膜の一部の領域の表面に積層するように形成されていることを特徴とする。
本発明においては、センサ素子の磁性薄膜がバイアス用薄膜を兼ねるものであり、バイアス用電極端子は、磁性薄膜の一部の領域の表面に積層するように形成され、バイアス電流が通電されるものである。
本発明によれば、磁性薄膜がバイアス用薄膜を兼ねているので、構成がきわめてシンプルである。
(請求項3)
請求項3記載の発明は、請求項2記載の磁界センサであって、前記絶縁基板がガラスであり、かつ磁性薄膜はアモルファスCoNbZr(コバルトニオブジルコニウム)であり、かつ誘電体薄膜はチタン酸ストロンチウムであり、かつ積層されるコプレーナ導体及びバイアス用電極端子は、クロム薄膜と銅薄膜を構成要素に含む積層膜であり、かつ前記コプレーナ導体は、直線型またはミアンダ型であることを特徴とする。
本発明によれば、センサを構成する絶縁基板はガラスであり、磁性薄膜は広く用いられるアモルファスCoNbZrであり、取扱いが容易である。また、チタン酸ストロンチウムは誘電率が高く、センサの小型化に有利である。積層されるコプレーナ導体及びバイアス用電極端子には、クロム薄膜と銅薄膜を構成要素に含むので、下地との接合が良好であり、抵抗率も低い。従って、バイアス用電極端子ではバイアス電流の通電に有利であり、コプレーナ線路においては、センサのゲイン低下を抑制できる。
(請求項4)
請求項4記載の発明は、請求項1記載の磁界センサであって、前記バイアス用薄膜は導電性薄膜であって、前記磁性薄膜の下層に形成され、前記バイアス用電極端子の端部は、前記バイアス用薄膜の一部の領域の表面に積層するように形成されていることを特徴とする。
本発明において、バイアス用薄膜は磁性薄膜とは別の薄膜プロセスで形成されるもので、その材質、寸法、膜厚は独立して設計される。また、当該バイアス用薄膜は、センサ素子の磁性薄膜と電気的に接続している必要はなく、バイアス用薄膜と磁性薄膜の間に絶縁膜があっても良い。尚、バイアス用電極端子も磁性薄膜と接続している必要はない。
前記バイアス用薄膜は、磁性薄膜の上側、例えば、コプレーナ線路の上に絶縁膜を介して配置することは可能である。しかしこの場合は、バイアス用薄膜の形成にあたり、コプレーナ線路の膜の段差を吸収するための平坦化処理を必要とし、薄膜プロセス上複雑である。この理由によって本発明では、バイアス用薄膜は磁性薄膜の下層に形成されると限定した。
本発明によれば、バイアス用薄膜は磁性薄膜とは独立した別の薄膜プロセスで形成されるので、バイアス用薄膜の材質や膜厚を適切に設定することで、バイアス電流値の上限を拡大させ、より大きなバイアス磁界の設定が可能になる。
(請求項5)
請求項5の発明は、請求項4記載の磁界センサであって、前記絶縁基板がガラスであり、かつ前記バイアス用薄膜はクロム薄膜と銅薄膜を構成要素に含む積層膜であり、かつ磁性薄膜はアモルファスCoNbZrであり、かつ誘電体薄膜はチタン酸ストロンチウムであり、積層されるコプレーナ導体及びバイアス用電極端子は、クロム薄膜と銅薄膜を構成要素に含む積層膜であり、かつ前記コプレーナ導体は、直線型またはミアンダ型であることを特徴とする。
本発明によれば、センサを構成する絶縁基板はガラスであり、磁性薄膜は広く用いられるアモルファスCoNbZrであり、取扱いが容易である。また、チタン酸ストロンチウムは誘電率が高く、センサの小型化に有利である。バイアス用薄膜はクロム薄膜と銅薄膜を構成要素に含む積層膜であり、ガラスとの接合が良好であり、抵抗率も低い。従って、バイアス通電に有利である。
また、積層されるコプレーナ導体及びバイアス用電極端子には、クロム薄膜と銅薄膜を構成要素に含むので、下地との接合が良好であり、抵抗率も低い。従って、バイアス用電極端子ではバイアス電流の通電に有利であり、コプレーナ線路においては、センサのゲイン低下を抑制できる。
本発明により、誘電体薄膜、磁性薄膜及び伝送線路と同じ薄膜プロセスを用いて、バイアス磁界を発生させるバイアス印加手段をセンサ素子内に一体的に形成することが出来る。従って、コストの上昇を抑え、かつコンパクトな小型薄膜磁界センサを提供することが可能となる。
実施例1に係るセンサの構造(平面図) 実施例1に係るセンサの構造(断面図) 実施例1に係るセンサの作成方法を示すフローチャート 実施例1に係るセンサの測定方法の構成図 実施例1に係るセンサのバイアス磁界に対する、キャリアの位相変化および変化感度を示す図 実施例1の変形例に係るセンサの構造(平面図) 実施例2に係るセンサの構造(平面図) 実施例2に係るセンサの構造(断面図) 実施例2に係るセンサの作成方法の一部を示すフローチャート 実施例2に係るセンサのバイアス磁界に対する位相変化感度を示す図
本発明の実施の形態として実施例を、図1〜図10に基づいて説明する。
まず実施例1について述べる。実施例1は、バイアス用薄膜が磁性薄膜である場合である。図1及び2は試作したセンサ素子1の構造を示した模式図である。図1においては、薄膜を透明体として表示した。
磁性薄膜はアモルファスCoNbZrを用いた。このアモルファスCoNbZr薄膜3は矩形状とし、センサ作成工程おいて、長辺方向に容易軸、短辺方向が困難軸になるように異方性を付与してある。当該薄膜の両端に配置された一対のバイアス用電極端子4a、4bには、直流バイアス電流が印加され、図1の矢印方向に流れる。すると磁化困難軸方向へバイアス磁界が発生する。バイアス電流値をゆっくり変化させながら、バイアス磁界を静的に変化させる。このバイアス磁界が異方性磁界と近い際に、キャリアの位相変化及び振幅変化値が最大値になると考えられる。
図2は、図1のAB断面を示す。薄膜の膜厚方向の寸法が拡大されて描かれている。センサ素子1の層構造は、ガラス基板2の表面に形成されたアモルファスCoNbZr薄膜3、その直上にSrTiO薄膜5、更にその直上にCu(銅)薄膜7(下地はCr(クロム)薄膜8)によるミアンダコプレーナ線路6からなっている。
前述の様に、アモルファスCoNbZr薄膜3の長辺方向の両端にはバイアス用電極端子4a、4bが設けられている。その膜層は下地をCr薄膜8とするCu薄膜8である。以下、積層膜は層を/で区切って、例えば、Cr/Cuの様に表示する。膜層を下層から順に示す。
バイアス用電極端子4a,4bのそれぞれの寸法は1.1mm×0.25mmの矩形型であり、厚みは2μmである。バイアス用電極端子4は、アモルファスCoNbZr薄膜3の表面と0.15mmの重なり領域を有して接続し、アモルファスCoNbZr膜3にバイアス電流を流す端子の役割を果たしている。
SrTiO薄膜5は、その膜厚を0.5μmとした。SrTiO薄膜5は、ミアンダコプレーナ線路6の下層に成膜されるが、バイアス用電極端子4が形成される領域には成膜されないようにする必要がある。本実施例では、後述の様に金属マスクを用いた。
ミアンダコプレーナ線路6の膜厚は2μmでり、信号線幅は110μmで、アース線とのギャップ長は20μmである。ミアンダコプレーナ線路6と先のバイアス用電極端子4は、本実施例においては、便宜上同一の膜構造に設計した。後述の様に同時に形成されている。両者の膜構造は異なって良い。
図2において、ミアンダコプレーナ線路の信号線はSで表示されており、キャリア電流の瞬間的な方向も図示されている。本明細書においては、本実施例の場合はミアンダ数を4と定義する。後述する図6のミアンダコプレーナ線路では、ミアンダ数は5である。ミアンダ数が1の場合を直線のコプレーナ線路とする。コプレーナ線路のミアンダ数、信号線幅、アース線幅、ギャップ長、膜厚等の数値は設計的事項であり、センサ素子の性能を勘案して決める。
図3は、センサ素子1の作成方法を示すフローチャートである。センサ素子1はガラス基板2の表面にリフトオフプロセスにより積層した。以下に、このフローチャートに基づいて、作成方法を説明する。
まず、ガラス基板2を洗浄する(S1、ここでSはステップの略とした。以下同様)。本実施例では、厚みが1mmで、約25mm角のカリガラスを準備し、無リン石鹸液及び有機溶剤で洗浄した。
続いて、磁性膜用のレジストパターンをガラス基板2の表面に形成する(S2)。本例では、基板中に16個の磁性膜用のレジストパターンを配置した。レジストは、ネガレジストを用いた。
次に、磁性膜を成膜する(S3)。ここでは、アモルファスCoNbZr薄膜3をRFスパッタ法(高周波スパッタ法)により成膜した。膜厚は1μmした。
成膜後、レジスト剥離を実施する(S4)。アセトン溶液中に浸漬後、不要な膜を剥離し、磁性膜のパターンを得た。
次に、磁界中熱処理を行う(S5)。熱処理の条件として、回転磁界中熱処理を300 ℃で2時間後,静磁界中熱処理を200℃で1時間とした。磁界強度は0.3Tに設定した。これにより、数Oe程度の弱い一軸磁気異方性を付与した。必要に応じて、この段階で、磁性膜の特性をモニタンリング出来る。尚、本ステップの静磁界熱処理は省略可能である。
続いて、絶縁層として強誘電体膜であるSrTiO膜を成膜する(S6)。本実施例では、RFスパッタにより成膜した。本薄膜は、バイアス用電極端子4が形成される領域(アモルファスCoNbZr薄膜3の両端部近傍)には成膜されないように金属マスクを用いた。
金属マスクは厚み0.2mmのステンレス板で、成膜が必要な部分はレーザーでくり抜いて製作した。成膜に当たっては、本金属マスクを基板に密着させて取り付けた。
次に、ミアンダコプレーナ線路とバイアス用電極端子のレジストパターンを製作する(S7)。本実施例では、ミアンダコプレーナ線路とバイアス用電極端子の膜構造を同一に設計したので、プロセスを簡略化できる。レジストは、S2と同一のネガレジストを用いた。
続いて、導電性薄膜を形成する(S8)。ここでは、膜の密着性向上のため下地として、Crを用いた。Cr薄膜8を0.1μmの厚さにRFスパッタで形成した後、連続して、RFスパッタでCu薄膜7を約2μm成膜した。
次に、レジスト剥離を実施する(S9)。ここでは、アセトン溶液に浸漬後、不要な膜を剥離し、ミアンダコプレーナ線路6とバイアス用電極端子4のパターンを得た。
続いて、基板の磁界中熱処理を行う(S10)。熱処理の条件として、回転磁界中熱処理を300℃で2時間、静磁界中熱処理を200℃で1時間とし、磁界強度は0.3Tに設定した。
本磁界中熱処理の目的は、磁性膜成膜後に実施されるSrTiO薄膜5の形成(S6)と導電性薄膜形成(S8)が、磁場中で実施されることで受ける影響を取り去り、再度、0.3Tの磁界強度で最終的に一軸異方性を付与することである。本熱処理では、図1に示されたアモルファスCoNbZr薄膜3の長辺方向に容易軸、短辺方向に困難軸が形成される。
更に、300℃の温度で熱処理を実施することで、ミアンダコプレーナ線路6及びバイアス用電極端子4を形成する下地のCr薄膜8と上層のCu薄膜7が拡散して、CrとCuの界面に合金層が形成されることで両者の密着性を向上させる効果を併せ持っている。
次に、複数の磁界センサ1が形成されたガラス基板を、所定の寸法に切断する(S11)。これにより、本実施例では、約25mm角のガラス基板から16個のセンサ素子1を得た。
以上がセンサ素子1の基本的な作成方法であるが、作成方法は、適宜選択可能である。例えば、成膜法はスパッタ成膜に限定されない。また、リフトオフプロセスでなく、ドライエッチング等のプロセスを採用しても良い。
また、追加的な工程を設けて、信頼性を向上させることができる。例えば、ミアンダコプレーナ線路6及びバイアス用電極端子4は、Cu表面の上にメッキ法によりニッケル下地金メッキを実施することができる。また、RFスパッタ法により、Cu薄膜7を形成後に、真空を破ることなく、連続してCrとAu(金)薄膜を成膜することができる。これらの方法により、ミアンダコプレーナ線路6及びバイアス用電極端子4の酸化を防止し、プローブ等との接触抵抗を低減できる。また、センサ素子を基板に実装する際のワイヤボンディング等の歩留りを向上させ、接続の信頼性を高めることが出来る。
センサの設計的事項においても、本発明の趣旨の範囲で変更や選択が可能である。例えば、バイアス用電極端子の膜材料としてアルミニウムやアルミニウム合金等の導電性材料も選択可能である。
基板であるガラスはソーダライムガラスであっても良い。本作成方法で示された熱処理温度にも十分な強度を有し、また、熱膨張係数もカリガラスと近似している。
また、磁性薄膜は、アモルファスCoNbZrに限定されず、他の磁性薄膜であって良い。例えば、アモルファスCoFeSiB(コバルト鉄シリコンボロン)が挙げられる。
続いて測定方法と測定結果について述べる。図4はネットワークアナライザ21によるセンサ素子1の位相差測定方法を表した図である。従来外部に設置されたコイルはもはや必要でない。センサ素子1のミアンダコプレーナ線路の端部にはウエハプローブ(ピコプローブ製GSG−40−150)を電気的に接触させ,同軸ケーブルを介してネットワークアナライザ21(HP8722ES)と接続した。キャリア信号はミアンダコプレーナ線路の中心導体を流れ、アモルファスCoNbZr薄膜3には導通しない。
一方、アモルファスCoNbZr薄膜3の両端に配置された一対のバイアス用電極端子4a、4bには、直流電源20(アドバンテスト製R6243) に接続された針状プローブを接触させた。図1に示すように、直流バイアス電流は図1の矢印方向に流れ、磁化困難軸方向へバイアス磁界が発生する。バイアス電流値をゆっくり変化させながら、バイアス磁界を静的に変化させた。このバイアス磁界が異方性磁界と近い際に、キャリアの位相変化及び振幅変化値が最大値になると考えられる。
ネットワークアナライザ21の透過係数(S21)の振幅および位相差を磁界変化に応じて測定した。ネットワークアナライザ21はパソコン22を介してGP−IBで制御した。ネットワークアナライザ21の周波数範囲は10MHzから10GHzまで変化させた。バンド幅は1kHz、平均化回数は16回,各バイアス磁界において10MHz〜10GHzまでを周波数スキャンして,保存した。以下に測定結果を示す。
図5は、図1及び図2のセンサ素子1において、バイアス磁界に対する、キャリアの位相変化および変化感度を示したものである。図5の横軸は、バイアス磁場の値であり、その範囲は0から15Oeの値である。左側縦軸は位相を示しており、単位はdegreeである。一方、右側縦軸は、位相の変化感度を示し、単位はdegree/Oeである。
キャリア周波数は、2.85GHzとした。図5のグラフの黒塗りの●で示される実線は位相を示している。位相はバイアス磁場が0Oeから5Oe付近までは変化せずほぼ一定であるが、6Oe付近から10Oeで大きく変化した。
この変化に伴い、グラフの白塗りの○で示される位相変化感度は、バイアス磁場が約9Oeで、47gegree/Oeの値が得られた。前述の様に、磁性薄膜の異方性磁界がバイアス磁界と近い値で位相変化感度は最大にると考えられる。このバイアス磁界と最高位相感度の数値は、別途行った外部に設けたコイルによりバイアス磁界を与えた場合の数値とほぼ対応した。
一般的に電流通電によるバイアス磁場は、均一性に劣ると考えられるが、本センサの場合は、キャリア電流によるRF磁界が表皮効果により磁性薄膜の表面に偏るため、良好な感度が得られたと推察される。
続いて、実施例1の変形例について図6を用いて説明する。バイアス用電極端子4のパターンは、図1に示した様な磁性薄膜の両端の小領域に配置しただけに留める必要はない。ミアンダコプレーナ線路のミアンダ数が5で、バイアス用電極端子を延長した例を図6に示した。
バイアス用電極端子4aのパターンをL字状に延長して、バイアス印加位置を一方の側(4bの側)に揃えた。このようなパターンにすることで、バイアス印加用プローブの配置が容易になる。また、センサ素子をプリント基板に実装する際のワイヤボンディング等の接続工程においても、ワイヤ長が揃い、ボンディングが効率化できる。
続いて実施例2について述べる。実施例2は、バイアス用薄膜が磁性薄膜とは独立し、磁性薄膜の下層に設けられた場合である。図7及び図8は、構造を示した模式図である。図7の平面図では、薄膜を透明体で表示した。図8は、図7のAB断面であり、膜厚方向の寸法が拡されて描かれている。
本センサ素子においても、ガラス基板2の表面に構成され、アモルファスCoNbZr薄膜3、SrTiO薄膜5、ミアンダコプレーナ線路6等の基本構造は実施例1と同様であり、アモルファスCoNbZr薄膜3には、長辺方向に容易軸、短辺方向が困難軸になるように異方性が付与されている。
そして、本センサ素子では、アモルファスCoNbZr薄膜3の直下に、新たにバイアス用薄膜10が設けられ、当該薄膜の両端には、バイアス電流を通電させるためのバイアス用電極端子4a、4bが積層されている。
バイアス用薄膜10は、本実施例では、Cr/Cu/Crの積層膜とした。最初のCr薄膜は基板のガラス面との間で界面を形成し、後のCr薄膜はアモルファスCoNbZr薄膜3と界面を形成する。それぞれの膜厚は、Cr薄膜は0.1μm、Cu薄膜は2μmとした。本実施例では、バイアス用薄膜10とアモルファスCoNbZr薄膜3が電気的に接続されている。尚、前述の様に、バイアス用薄膜と磁性薄膜は電気的に接続されている必要はない。
このバイアス用薄膜10は、1.1mm×3.05mmの矩形パターンである。アモルファスCoNbZr薄膜3の寸法は、実施例1と同一(1mm×2.25mmの矩形で、膜厚は1μm)であり、バイアス用薄膜10の寸法の中に納まるように配置されている。尚、バイアス用薄膜10の膜厚は、通電させるバイアス電流の値を勘案して決定される。
バイアス用薄膜10のパターンの両端に配置されたバイアス用電極端子4a、4bは、ミアンダコプレーナ線路6の端子部とは反対方向に、対称的な形状で延長され、両パターンは0.1mmの隙間を持って終端している。
尚、本実施例では、バイアス用電極端子4は、アモルファスCoNbZr薄膜3のパターンの両端にも積層されているが、これも必須なことではなく、バイアス用薄膜10にかかっていれば良い。
バイアス用電極端子4は、実施例2においても、ミアンダコプレーナ線路6と同一の膜構造に設計し、便宜上、両者は同一の工程、すなわち図3のS8で形成されている。本実施例では、Cr/Cu/Cr/Auの4層からなる積層膜である。その膜厚は、順に、0.1μm/3.5μm/0.1μm/0.3μmである。バイアス用電極端子4及びミアンダコプレーナ線路6の最表面層がAu薄膜であるので、耐環境性に優れ、プリント基板への実装工程等で使われるワイヤボンディングとの相性も良い。SrTiO薄膜5は、本実施例では0.75μmとした。
図9は、実施例2に係るセンサ素子の作成方法の一部を示すフローチャートである。実施例2に係るセンサ素子は、実施例1の図3で示したセンサ素子の作成方法のS1(基板の洗浄)の後に、図9で示した3つの工程Sa、Sb、Scが挿入され、Scの後に、図3のS2(磁性膜レジストパターンの形成)以下の工程が実施される。
以下に、新たに挿入された3つの工程を簡潔に述べる。基板を洗浄後に、バイアス用薄膜のパターンを成膜する目的で、バイアス用薄膜のレジストパターンを形成する(Sa)。続いて、バイアス用薄膜を成膜する(Sb)。実施例2では、下地層としてCr薄膜7を成膜後にCu薄膜8を成膜し、その後更にCr薄膜7を成膜した。成膜はいずれもRFスパッタを用いた。次にアセトン溶液中に浸漬してレジストを剥離し(Sc)、バイアス用薄膜10のパターンを得た。
これ以降の工程は、図3に示したフローチャトに従って実施した。実施例1と異なるのは、SrTiO薄の成膜(S6)では、0.75μmの膜厚としたこと、及びS8の導電性薄膜の形成において、前述の様に4層構造の積層膜としたことである。その他の工程は同一であるので、割愛する。
図10に、実施例2に係るセンサ素子のバイアス磁界に対する位相変化感度を示す。測定方法は、実施例1の場合と同様である。キャリア周波数が約3.6GHz(図の×のマーカーで示される)でバイアス磁界が3.3Oe近傍において、位相感度変化は100degree/Oe以上となった。
以上、2つの実施例で示した様に、誘電体薄膜、磁性薄膜及び伝送線路と同じ薄膜プロセスを用いて、バイアス磁界を発生させるバイアス印加手段をセンサ素子内に一体的に形成し、コストの上昇を抑制したコンパクトな小型薄膜磁界センサを実現することが出来る。
1 センサ素子、センサ
2 ガラス基板
3 アモルファスCoNbZr薄膜
4 バイアス用電極端子
5 SrTiO薄膜
6 コプレーナ線路
7 Cu薄膜
8 Cr薄膜
9 Au薄膜
10 バイアス用薄膜
20 直流電源(DC)
21 ネットワークアナライザ(NA)
22 パソコン(PC)


Claims (5)

  1. 絶縁基板上に誘電体薄膜を介して磁性薄膜とコプレーナ導体を積層する構造を有する磁界センサにおいて、バイアスを印加するためのバイアス用薄膜と当該薄膜に通電するためのバイアス用電極端子を備え、当該バイアス用電極端子は、前記磁性薄膜の困難軸方向にバイアス磁界を発生させるように配置されていることを特徴とする磁界センサ。
  2. 請求項1記載の磁界センサであって、前記バイアス用薄膜は前記磁性薄膜であり、前記バイアス用電極端子の端部は、前記磁性薄膜の一部の領域の表面に積層するように形成されていることを特徴とすると磁界センサ。
  3. 請求項2記載の磁界センサであって、前記絶縁基板がガラスであり、かつ磁性薄膜はアモルファスCoNbZr(コバルトニオブジルコニウム)であり、かつ誘電体薄膜はチタン酸ストロンチウム(SrTiO)であり、かつ積層されるコプレーナ導体及びバイアス用電極端子は、クロム薄膜と銅薄膜を構成要素に含む積層膜であり、かつ前記コプレーナ導体は、直線型またはミアンダ型であることを特徴とする磁界センサ。
  4. 請求項1記載の磁界センサであって、前記バイアス用薄膜は導電性薄膜であって、前記磁性薄膜の下層に形成され、前記バイアス用電極端子の端部は、前記バイアス用薄膜の一部の領域の表面に積層するように形成されていることを特徴とする磁界センサ。
  5. 請求項4記載の磁界センサであって、前記絶縁基板がガラスであり、かつ前記バイアス用薄膜はクロム薄膜と銅薄膜を構成要素に含む積層膜であり、かつ磁性薄膜はアモルファスCoNbZrであり、かつ誘電体薄膜はチタン酸ストロンチウムであり、積層されるコプレーナ導体及びバイアス用電極端子は、クロム薄膜と銅薄膜を構成要素に含む積層膜であり、かつ前記コプレーナ導体は、直線型またはミアンダ型であることを特徴とする磁界センサ。



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