JP2018031091A - 炭素繊維束の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】糸切れ、毛羽の発生の少ない、高品位、高品質である炭素繊維束を、高い生産性で製造する。【解決手段】(1)梱包容器内に収納された、単繊維繊度0.7dtex以上1.5dtex以下、総フィラメント数が40000本以上50000本以下の小トウの2本以上で構成される総フィラメント数100000本以上150000本以下の炭素繊維前駆体アクリル繊維束の集合トウを、該梱包容器から、0.1gf以上2.5gf以下の張力F及び10m/分以上30m/分以下の引出速度Vで引き出す工程;(2)該集合トウが最初のガイドを通過する前に該集合トウに水を付与してトウ水分率を10質量%以上30質量%以下の範囲内に制御する工程;(3)該集合トウを耐炎化炉内に導入し、耐炎化処理中に発生する張力により該集合トウを前記小トウに分割する、耐炎化工程;を含む、炭素繊維束の製造方法。【選択図】図1

Description

本発明は、炭素繊維前駆体アクリル繊維束を用いた炭素繊維束の製造方法に関する。
従来、炭素繊維前駆体用のアクリロニトリル系繊維束(以下、「炭素繊維前駆体アクリル繊維束」、または単に、「前駆体繊維束」という)としては、高強度、高弾性率の炭素繊維を得るために、糸切れや毛羽の発生の少ない、品質に優れた3,000フィラメントから20,000フィラメントの、いわゆるスモールトウが、主にボビン巻きで製造されていた。そして、この前駆体繊維束から製造された炭素繊維が航空・宇宙、スポーツ分野等の多くの分野に用いられてきた。
炭素繊維製造用の前駆体繊維束は、炭化処理に先だって、200〜350℃の酸化性雰囲気中で加熱する耐炎化処理が行われる。耐炎化処理は反応熱を発生することから繊維束の内部に蓄熱されやすい。繊維束の内部に過剰の蓄熱がなされると、フィラメント切れや繊維間の融着が発生しやすくなる。この反応熱の蓄熱を抑えるには、耐炎化炉に供給する前駆体繊維束の太さを所定の値以下とする必要があり、これが炭素繊維の生産性を低下させ、製造コストを押し上げる要因ともなっている。
こうした問題を解決するため、特許文献1は、例えば捲縮が付与されていない複数の前駆体繊維束の小トウからなる、ストレートなラージトウ(前駆体繊維束の集合トウ)を用いて、容器内へのラージトウの梱包時及び、容器からラージトウを引き出して焼成工程に導入する際には、集合トウの形態を保持し、焼成処理中に発生する繊維の張力により、集合トウが元の複数の小トウ単位に分割される、幅方向の分割能を有する前駆体繊維束の製造方法を開示している。
この分割能を有する集合トウを製造するには、扁平矩形断面を有する糸道と、該扁平矩形の長辺方向に所定の間隔をおいて配された該糸道に開口する複数のエア噴出孔とを有する交絡付与装置に、複数の小トウを並列して隣接させながら供給し、前記エア噴出孔からエアを噴出させることにより、隣接する小トウ間に物理的な交絡を付与させる。集合トウの水分率は10質量%未満で、孔径0.5mmのエア噴出孔のエア噴出圧は、200kPa〜300kPaであり、フックドロップ法で測定された小トウ間の交絡値が1m−1未満(測定下限値未満)で、焼成処理中に発生する張力により、自然に元の複数の小トウ単位に分割される。
特許文献2は、容器内への梱包時には1本のトウの形態を保ちながら、容器から引き出して使用するときに、複数の小トウ単位に分割可能な幅方向に分割能を有する炭素繊維前駆体アクリル繊維束を開示している。この分割能を有する繊維束を製造するには、紡糸された複数の繊維を、各群が所定の本数となるように複数の群に分割し、その分割状態にて複数の群を並列して走行させ、製糸工程、仕上油剤付与工程を通過させたのち、クリンパを備えた捲縮付与工程に供する方法が採用される。この捲縮付与により所定数の複数の群が1本のトウの形態に集束される。前記捲縮付与工程を通さない時は、各小トウに10%以上50%以下の水分を含ませる。
前記集束形態にあっては、小トウ形態を有する各糸条群の耳部における糸条同士を1mm程度斜交させて互いに弱く交絡させ、複数の糸条群から構成される1本のトウ形態を保持させる。各糸条群の耳部における糸条の斜交による交絡は弱い為、1本のトウ形態に保持された後に、炭素繊維製造工程に供されて使用される際にも、容易に耳部から各糸条群毎に分割可能となっており、この集束された繊維束を小トウに分割可能な形態で容器内に収容する。
この容器内に収容された炭素繊維用アクリル前駆体繊維束は、耐炎化炉内への導入前の分割工程にて、前述の小トウ単位に分割される。この分割は、たとえば溝付ロールや分割用ガイドバーを用いて行うとされている。小トウ同士は、それらの耳部で弱い交絡によって集束されているため、この分割は極めて容易に行うことができ、分割に際しても毛羽の発生や糸切れが殆ど生じないというものである。こうした所定サイズ以下の小トウ形態に分割された各小トウは、耐炎化炉内に導入されて耐炎化処理がなされる。このとき、分割された状態で小トウに耐炎化処理がなされるため、過剰蓄熱が発生せず、糸切れやフィラメント間の融着も防止されると記載されている。
特許文献2による集束された繊維束に対する小トウへの分割能の付与機構は、小トウにおける耳部に存在する繊維単位の斜行による交絡であるとされている。しかしながら、小トウ分割部における交絡度が1〜10m−1では、耐炎化炉内に導入される以前に分割手段によって小トウに分割すると、単糸切れを生じてしまい炭素繊維の品質に影響を与える可能性がある。さらに特許文献2には、小トウ同士を交絡する手段としては、各小トウの耳部における糸条同士が斜行されて互いに弱く交絡し1本のトウ形態に維持される捲縮付与による方法しか示されていない。このような捲縮トウを耐炎化炉内へそのまま供給すると、トウ全域に亘って均等に捲縮を引き伸ばして所定の伸張を付与することが難しい。その結果、得られる炭素繊維の目付け(単位長さあたりの質量)、繊度に斑が生じ、得られる炭素繊維の品質に影響を及ぼす可能性がある。そのため耐炎化工程以前に捲縮除去手段が必要となるが、設備空間が増大するとともに省力化が難しく、生産性にも大きな影響を与える。
一方、特許文献2では、捲縮が付与されていないストレートトウの形態の場合、その生産時の水分率が10〜50%であることが望ましいと記載されている。すなわち、水分による表面張力によって小トウが集束されて1本のトウ形態を保持する機構が記載されている。しかしながら、この水分率ではトウ内の水による表面張力で、容器に梱包された際の折り返し部の折癖などは元に戻らず、結果として炭素繊維の製造工程に供給する際に折癖やそれに起因するトウ内のフィラメントの斜行などがそのままの状態で供給され、得られる炭素繊維の品位が損なわれ、或いは場合によっては折癖が捩れとなって、その部分に耐炎化工程での過剰な蓄熱が発生する恐れがある。
また特許文献1に記載の方法では、集合トウの分割能を重視するあまり、小トウ間の物理的な交絡が弱く、焼成工程における梱包容器から引き出す際に集合トウが分割されてしまうことがあった。梱包容器から引き出す際に集合トウが分割されると、小トウの間に張力差が発生し、低張力の小トウは弛んだまま耐炎化炉内に供給され、隣接する小トウとの縺れ、絡まりが発生する原因となる。このような縺れた集合トウは、そのまま焼成工程に供給されると、耐炎化工程において蓄熱し、束切れの原因となり、大きなトラブルに繋がる。製造コストを下げるために焼成速度を上げると梱包容器から引き出す際に集合トウに掛かる張力が高くなるため、このようなトラブルが頻発する。
現在、炭素繊維の利用は、自動車、土木、建築、エネルギー等の一般産業分野への拡大が著しく、より安価で生産性の優れる太繊度の炭素繊維の供給が強く求められている。炭素繊維製造工程における繊維束の太さの制約を考慮しつつ、前駆体繊維束の製造時にはより太くて生産性が良く製造コストを安価とし、炭素繊維の製造時には必要な太さの小トウに容易に分割可能とすることで焼成効率を高めて、製造コストを削減する方法は、従来実施されてきた。
ただし、特許文献1が開示する焼成工程で発生する張力で自然に分割されるよう調整された小トウ間の交絡によるラージトウでは、梱包容器から引き出す段階でラージトウが小トウに分割されてしまう場合があった。ここで問題となるのは、既存のフックドロップ法による小トウ間の交絡評価である。特許文献1では、小トウ間の交絡度は1m−1未満(正確には、試長1mで実施し、10gの荷重は1m以上落下したため、測定不可能であった)であり、正確に交絡を測定できていない。また、特許文献2においては、交絡度は1m−1〜10m−1と、小トウ間の交絡度を高くし、その分割にはガイド等を用いるとしているが、分割の際に毛羽等が発生することが問題とされている。特許文献2における交絡度の範囲は非常に大きな値に設定されており、これはフックドロップによる交絡度の測定は、繊維間の強い交絡しか測定出来ないことを示している。
:WO2005/078173号 :特開平10−121325号公報
本発明の目的は、簡単な操作によって、複数本の小トウを1本の集合トウに収束させることが可能であって、梱包容器内への梱包時及び梱包容器から引き出して耐炎化炉内に導入する際には確実に1本の集合トウの形態を保持していながら、耐炎化処理工程において発生する繊維の張力によって、複数の小トウに分割可能な幅方向の分割能を備え、製造コストが低く、生産性に優れ、糸切れ、毛羽の発生の少ない、高品位、高品質である炭素繊維束の製造方法を提供することにある。
前記課題は以下の本発明によって解決される。
下記(1)〜(3)の工程を含む、炭素繊維束の製造方法。
(1)梱包容器内に収納された、単繊維繊度0.7dtex以上1.5dtex以下、総フィラメント数が40000本以上50000本以下の炭素繊維前駆体アクリル繊維束の小トウの2本以上で構成される総フィラメント数100000本以上150000本以下の集合トウを、該梱包容器から0.1gf以上2.5gf以下の張力F及び10m/分以上30m/分以下の引出速度Vで鉛直方向に引き出す工程。
(2)前記梱包容器から引き出された前記集合トウが最初のガイドに接触する前に、該集合トウに水を付与して、下記の式(1)で算出される値Wが10以上30以下の範囲内になるよう集合トウの水分率を制御する工程。
(3)前記所定の水分率とされた集合トウを耐炎化炉内に導入し、耐炎化処理中に発生する繊維束の張力により前記小トウに分割することを含む耐炎化工程。
Figure 2018031091
ここで、Xは乾燥状態にある集合トウの線密度である。
本発明は、水を付与した後の前記集合トウが、下記(a)及び(b)に示す条件を満足することが好ましい。
(a)P/C対応型テンションメーターのセラミックピンを、水分率を制御する工程後で耐炎化炉内に導入する前の前記集合トウにおける前記小トウ間部分に差し込み、該セラミックピンにかかる抵抗力の平均値として測定した小トウ間の平均交絡強度Yが1.2cN以上3.5cN以下である。
(b)フックドロップ法によって測定される小トウ間の交絡値が1m−1未満である。
本発明の炭素繊維束の製造方法によれば、糸切れ、毛羽の発生の少ない、高品位、高品質である炭素繊維束を、高い生産性で製造することができる。
炭素繊維前駆体アクリル繊維束を梱包容器から耐炎化炉に搬送する態様の一例を示す図である。
以下、本発明の実施形態の一例について、図1を用いて詳細に説明する。
図1は、本発明の炭素繊維の製造方法に用いる装置の一例を示す概略図である。この例の炭素繊維の製造装置は、梱包容器1内に収納された炭素繊維前駆体アクリル繊維束の集合トウ2を鉛直方向に引き上げる引き出し手段3と、引き出された集合トウに水を付与する水分付与装置5と、前駆体繊維束を酸化性雰囲気下で加熱して耐炎化する耐炎化炉6とを有する。
梱包容器としては、集合トウを、例えば、前駆体繊維束をトラバースしつつつづら折りに振り込み収納できるものであれば、特に限定されない。前駆体繊維束は梱包容器に収納されて、焼成工程を含む炭素繊維の製造段階へ移送されて用いられる。
本発明の製造方法で用いられる炭素繊維前駆体アクリル繊維束は、単繊維繊度0.7dtex以上1.5dtex以下、総フィラメント数が40000本以上50000本以下の小トウの2本以上で構成される総フィラメント数100000本以上150000本以下の集合トウである。この繊維束は、アクリロニトリル共重合体を紡糸して得られる。アクリロニトリル共重合体の共重合組成は限定されないが、例えば、アクリロニトリル単位90質量%以上99.9質量%以下と他の単量体単位0.1質量%以上10質量%以下からなる共重合体である。
本発明の製造方法に用いられる炭素繊維前駆体アクリル繊維束は、耐炎化処理工程で発生する繊維の張力で元の小トウ単位に分割できる集合トウであって、所定数の複数の糸条群が並行してなる小トウを、各小トウの側端部(耳部)で互いに弱く交絡し合い、シート状の形態を保持させた集合トウであることが好ましい。
小トウから集合トウを得る際の交絡のかけ方としては公知の方法が挙げられる。例えば、偏平短形断面を有する糸道と、該偏平短形の長辺方向(幅方向)に所定の間隔をおいて配された該糸道に開口する複数のエア噴出孔と、を有する交絡付与装置に、小トウを複数並列して隣接させて供給し、前記エア噴出孔からエアを噴出させることにより、隣接する小トウ間の交絡を行うことができる。
この交絡処理は、例えば、前記エア噴出孔の孔径0.5mmで、小トウ間の接合部におけるエア流量は225〜300NL/minで行われる。このような交絡条件で得られる小トウ間の交絡値が1m−1未満(フックドロップ法で測定下限未満)であれば、耐炎化処理工程において発生する張力によって、集合トウは小トウに自然に分割可能である。
集合トウの製造時の水分率が10質量%未満であれば、梱包容器内に振り込む際に静電気を抑制することができ、タンプによる折癖がつかない。また輸送コストも抑えることが可能である。
集合トウの梱包容器への収納方法は特に限定されないが、トラバースされつづら折りに収納されることが好ましい。「トラバースされつづら折りに収納される」とは、収納容器の前後方向に振りながら収納容器内に振り込む際に左右方向に徐々にずらして往復運動することを意味する。
引き出し手段3は、1つ以上のガイドを備え、引き上げられた集合トウが最初に接触するガイド3a(すなわち、最上流に位置するガイド)まで鉛直方向に引き上げる。収納容器の上端の位置から、収納容器から引き上げられた集合トウが最初に接するガイド3aまでの高さは特に限定されないが、下限は、撚りや厚み斑を均一化するために梱包容器の上端から2m以上が好ましい。また、上限は、工程を過剰に長くしないために10m以下が好ましい。
収納容器から引き出された集合トウは、ガイド3aに到達するまでに水分付与装置5によって水分を付与される。水分を付与する方法は特に限定されない。水分付与装置としてはタッチロールや霧吹きなどの噴霧器などが挙げられるが、タッチロールは、集合トウの長手方向に均一に水分を付与しやすいので好ましい。また、水分を付与する位置については、梱包容器の上端の位置から1m以内の間が好ましい。
集合トウが収納容器から引き出されて最初のガイド3aに到達するまでに、集合トウに水分を付与して、集合トウの水分率は下記式(1)で得られるWが10以上30以下の範囲内に設定される。式(1)において、Fは収納容器から引き出した際にトウにかかる張力、Xは乾燥状態での集合トウの線密度、Vは集合トウを引き出す速度である。
Wは水を付与した後の集合トウの水分率の目安となる。
Figure 2018031091
本発明の炭素繊維束の製造方法において、Wは10以上30以下である。Wが30超では集合トウは水を内部に保持し続けることができず、集合トウがガイドを通過する際に集合トウから水滴が落下する。集合トウは、通常、乾燥工程や耐炎化工程で糸同士の接着を防止するために生産時に油剤が付与されている。集合トウから水滴が脱落する際には集合トウに付着している油剤も脱落する為、耐炎化工程のロールガイドの表面が汚染され、毛羽や束切れが発生することがある。またWが10未満では生産性を上げるために引出速度Vを例えば11m/分以上とする場合、集合トウに掛かる張力Fに対して小トウ間の交絡強度が不十分となるため、集合トウはガイド3aに到達するまでに小トウに分割されることがある。
本発明の炭素繊維束の製造方法において、梱包容器から集合トウを引き出す速度は10m/分以上30m/分以下である。引出速度Vが30m/分超では、梱包容器から引き出した集合トウに水分付与装置5で水分を付与させてWを30にしても、集合トウにかかる張力によって整トウガイド3aに入るまでに小トウに分割されることがある。また、引出速度Vが10m/分未満では生産性が低くなる。
本発明の炭素繊維束の製造方法において、梱包容器から集合トウを引き出す際の張力Fは、0.1gf以上2.5gf以下である。
ガイド3は、梱包容器1から引き上げた集合トウを整え、耐炎化炉6を含む焼成手段に送るものである。ガイド3を構成するガイドとしては、ガイドバーやガイドロールなどが挙げられる。ガイドバーとしては、直円柱状の平ガイドバーや、湾曲した糸道規制ガイドバー等が挙げられる。ガイド3は平ガイドバーと糸道規制ガイドバーを併用することが好ましい。最上流に位置するガイド3aは平ガイドバーであることが好ましい。ガイド3aが平ガイドバーであれば、耐炎化炉6に集合トウを安定して送ることができる。
ガイド3のガイドの数は、図1に示すものに限定されず、集合トウの走行状態等から適宜その構成本数を決定すればよい。各ガイドの材質は特に限定されないが、耐久性、及びコストを考慮すれば、鉄、ステンレス鋼等の金属、セラミックが好ましい。また、各ガイドの大きさについては特に限定されないが、直径が10〜50mm程度のものが好適である。
ガイドを通過した集合トウは耐炎化処理炉内に導入され、耐炎化処理中に発生する繊維束の張力により集合トウは前記小トウに分割される。耐炎化処理条件としては、公知の条件を採用できる。例えば、耐炎化炉の温度は、ゾーン毎に200℃〜250℃、耐炎化炉内の滞在時間は、30分〜120分、トウの走行速度は、10m/分〜30m/分である。
焼成手段は、梱包容器1から引き出された集合トウを焼成する手段である。焼成手段としては、炭素繊維束の製造において用いられる公知の焼成手段を使用でき、通常、耐炎化炉6および炭素化炉(図示略)を備える。焼成方法としては、耐炎化炉で耐炎化処理し、ついで炭素化炉で前炭素化処理および炭素化処理する方法を用いることができる。
焼成手段により得られた炭素繊維束の炭素繊維を表面処理する工程を設けてもよい。表面処理することで、マトリックス樹脂に対して優れた接着性を炭素繊維に付与できる。表面処理の方法としては、オゾン酸化等の乾式法や、電解液中で電解表面処理する湿式法などが挙げられる。さらに、必要に応じて、表面処理した炭素繊維をサイジング剤でコート処理する工程を設けてもよい。コート処理することで、炭素繊維束の取り扱い性や炭素繊維とマトリックス樹脂との親和性を向上させることができる。サイジング剤としては、エポキシ樹脂、ポリエーテル樹脂、エポキシ変性ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられる。
このように、本発明によれば、集合トウを梱包容器から引き出して1本目のガイドに入るまでの間に水を付与して、小トウ間の交絡強度を高めることで、焼成速度が速い場合であっても梱包容器から引き出す際は1本の集合トウの形態を維持し、耐炎化処理工程に導入後に小トウに分割可能である。その結果、集合トウは、梱包容器から引き上げ時には、小トウに分かれることなく、また、ガイドバーを複数回通過時もしくは通過後においても、耐炎化炉に導入されるまでは小トウに分割されることはない。また工程トラブルを発生させることなく焼成速度を速めることができるので、炭素繊維束を生産性良く製造できる。
前記炭素繊維束の製造方法により製造された、炭素繊維束は、小トウ間の交絡強度を水によって強化しているため、耐炎化工程で分割される際に過剰な力を加えずとも分割され、毛羽などのダメージが抑制された高品質なものが得られる。
以下、本発明について実施例を挙げて具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、各実施例および比較例で用いた炭素繊維の製造装置、および各評価方法は以下の通りである。
1.炭素繊維の製造装置
製造装置としては、図1に示す炭素繊維の製造装置を用いた。梱包容器1の上端から最初のガイド3aまでの引き上げ高さは2mとし、水分付与装置5としてはタッチロールを用いた。
2.トウ水分率の測定
トウ水分率は、ウェット状態にある集合トウの質量wと、これを熱風乾燥器内で温度105℃で2時間乾燥した後の質量wとから、式(3)によって求めた。
トウ水分率(質量%)=(w−w)×100/w (3)。
3.平均交絡強度の測定
P/C対応型テンションメーター(インテック社、IT−NP)のセラミックピンを、図1の符号4に示す位置で集合トウにおける小トウ間部分に差し込み、セラミックピンにかかる抵抗力として交絡強度を測定した。交絡強度の検出頻度を0.1秒/回とし、40秒間に測定される400点のデータの平均値を平均交絡強度とした。
4.フックドロップ法による交絡値の測定
集合トウの形態を崩さないようにして、その先端に10g/3000デニール(10g/330Tex)の荷重を掛け、吊るした。先端から20mmが直角に折り曲げられた直径1mmの針金に10gの重りを吊り下げ、この重りを集合トウの小トウ間部分に引っ掛けて自由落下させたときの落下長をLmとして、式(4)によって交絡値を求めた。
交絡値=1/L (4)
測定は30回繰り返して行い、得られた30個の数値のうち大きい数値5点と小さい数値5点を除外した、中間値20点の平均値を採用した。
5.集合トウの工程通過性
図1に示す炭素繊維束の製造装置で全長1000mの集合トウを梱包容器から引き出し、最初のガイド3aに到達する前に集合トウの小トウへの分割が生じた回数を測定し以下の基準でランク付けした。
ランクA:0回、
ランクB:1〜10回、
ランクC:11回以上。
6.耐炎化工程の通過性
図1に示す炭素繊維束の製造装置で全長1000mの集合トウを梱包容器から引き出し、耐炎化工程に入る際の集合トウの小トウへの分割が生じた回数を測定し以下の基準でランク付けした。
ランクA:0回、
ランクB:1〜3回、
ランクC:4回以上。
7.生産性
図1に示す炭素繊維の製造装置で集合トウを容器から引き出す速度より生産性を評価した。
ランクA:引出速度10m/分以上、
ランクC:引出速度10m/分未満。
〔実施例1〕
図1に示す炭素繊維製造装置において、単繊維繊度1.2dtex、小トウのフィラメント数50000本、前記小トウ2本から成る総フィラメント数が120000dtexで小トウ間の交絡値がフックドロップ法で1m−1(測定下限値未満)の集合トウを、梱包容器から鉛直方向に引き出して、炭素繊維束を製造した。張力0.8gf及び引出速度は20m/分で、梱包容器の上端から1mの部分でWが20となるようにタッチロールでトウに水を付与して、ゾーン毎に200℃〜250℃に設定した耐炎化炉へ給糸し70分間耐炎化処理し、さらに炭素化工程にて3分間の炭化処理を行った。集合トウは、梱包容器から引き上げ時から耐炎化炉内に導入されるまでの間は、集合トウから小トウへのバラケは一切発生せず、耐炎化炉内において小トウに分割された。
この間、トウの走行に用いたすべてのガイド及びロールはフラットであり、表面に溝を有するロールなどで集合トウを強制的に小トウに分割したり、トウの断面形状を強制的に変更したりすることはまったく行わず、特に分割ガイドなどを用いなかったが、集合トウは耐炎化炉内で自然に小トウへ分割した。炭化処理後に得られた炭素繊維束は毛羽がなく品位の優れるものであった。
〔実施例2〜4〕
梱包容器から引き出す速度とガイド3aに送るまでに集合トウに付与する水を増減して式(1)で求められるWの値を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして炭素繊維束を製造した。結果を表1に示す。いずれの条件においても、梱包容器からの引き上げ時から耐炎化炉内に導入されるまでの間は、集合トウから小トウへのバラケは一切発生せず、耐炎化炉内において小トウに分割された。
〔比較例1〜4〕
梱包容器から引き出す速度とガイド3aに送るまでに集合トウに付与する水を増減して式(1)で求められるWの値を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして炭素繊維束を製造した。結果を表1に示す。比較例1及び4では、梱包容器からの引き上げ時から集合トウが小トウへとバラケてしまい、隣接する小トウとの縺れ、絡まりが発生し、耐炎化処理工程で蓄熱して糸が切れる等のトラブルが発生した。比較例2及び3では、上記トラブルは発生しなかったが、生産性が極めて低かった。
〔比較例5〜8〕
梱包容器から集合トウを引き出す速度と、ガイド3aに送るまでに集合トウに付与する水を増減して式(1)で求められるWの値と、集合トウの小トウ間のフックドロップ法による交絡値とを、表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして炭素繊維束を製造した。比較例5〜8では梱包容器からの引き上げ時から、耐炎化炉内に導入されるまでに集合トウが小トウに分割されず、耐炎化工程にて蓄熱して、糸が切断するトラブルが発生した。
〔比較例9〕
集合トウを製造する際、梱包容器内に収納する前に集合トウの水分率が20質量%になるようにし、梱包容器から引き上げて焼成工程に送る際にはトウに水を付与しなかった。その他の製造方法は実施例と同様にして炭素繊維を製造した。集合トウの製造時に付与した大量の水分により、梱包容器内への収納時に集合トウをタンプした際に、集合トウに折癖がついてしまい焼成工程で折れ部分が毛羽や束切れとなった。
Figure 2018031091
1:梱包容器
2:炭素繊維用アクリル前駆体繊維束
3:ガイド
3a:最初のガイド
4:交絡強度の測定位置
5:水分付与装置
6:耐炎化炉

Claims (2)

  1. 下記(1)〜(3)の工程を含む、炭素繊維束の製造方法。
    (1)梱包容器内に収納された、単繊維繊度0.7dtex以上1.5dtex以下、総フィラメント数が40000本以上50000本以下の炭素繊維前駆体アクリル繊維束の小トウの2本以上で構成される総フィラメント数100000本以上150000本以下の集合トウを、該梱包容器から0.1gf以上2.5gf以下の張力F及び10m/分以上30m/分以下の引出速度Vで鉛直方向に引き出す工程。
    (2)前記梱包容器から引き出された前記集合トウが最初のガイドに接触する前に、該集合トウに水を付与して、下記の式(1)で算出される値Wが10以上30以下となるよう集合トウの水分率を制御する工程。
    (3)前記所定の水分率とされた集合トウを耐炎化炉内に導入し、耐炎化処理中に発生する繊維束の張力により前記小トウに分割することを含む耐炎化工程。
    Figure 2018031091
    〔Xは乾燥状態にある集合トウの線密度である。〕
  2. 水を付与した後の前記集合トウが、下記(a)及び(b)に示す条件を満足する、請求項1に記載の炭素繊維束の製造方法。
    (a)P/C対応型テンションメーターのセラミックピンを、水分率を制御する工程後で耐炎化炉内に導入する前の前記集合トウにおける前記小トウ間部分に差し込み、該セラミックピンにかかる抵抗力の平均値として測定した小トウ間の平均交絡強度Yが1.2cN以上3.5cN以下である。
    (b)フックドロップ法によって測定される小トウ間の交絡値が1m−1未満である。
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