JP2018030165A - プレス用金型 - Google Patents

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Abstract

【課題】プレス品の外板面に異物等による微小欠陥の発生を抑制できるとともに、プレス成形時に素材がポンチの成形面上を滑る素材のズレ方向が、同一外板面上で部位によって異なる場合であっても、成形面の輪郭がプレス品の外板面に転写されにくいプレス用金型を提供する。【解決手段】素材Sを狭圧して外板面を有するプレス品Wをプレス成形するポンチ1とダイス2とを備え、ポンチ及びダイスの少なくとも何れか一方の成形面が、互いに交差する複数の凹溝3により分断されて略四辺形の浮島状に形成されたプレス用金型10である。同一外板面をプレス成形する成形面11、12には、プレス成形時に素材がポンチ又はダイスの成形面上を滑る素材のズレ方向Q1、Q2と異なる方向m1、m2、m3に凹溝が形成されている。【選択図】図2

Description

本発明は、ポンチとダイスとの間に配置した素材を狭圧してプレス品を成形するプレス用金型に関し、特に、ポンチ及びダイスの少なくとも何れか一方の成形面に、プレス品の外板面に異物等の噛み込みによる微小欠陥が発生するのを防止する凹溝を設けたプレス用金型に関する。
一般に、自動車のルーフパネルやドアパネル等のプレス品は、比較的大きな外板面を有しており、ポンチとダイスとの間に配置した素材(鉄板、アルミ板など)を狭圧してプレス成形する際、ゴミや金属粉などの異物等の噛み込みにより、プレス品の外板面に微小欠陥を発生しやすい。かかる外板面に発生した微小欠陥は、塗装したときに目立つので、そのプレス品を組付けた自動車の商品性を著しく低下させることになる。そのため、プレス品の外板面に対して異物等による微小欠陥の発生を防止すべく、ポンチやダイスの成形面に異物等を落とし込み、収容できる凹溝や穴を形成したプレス用金型が考案されている。
例えば、特許文献1には、ポンチとダイスとの間に介在させた被加工部材(素材)を成形するためのプレス用金型であって、ポンチ及びダイスの少なくとも何れか一方の成形面に、断面が円弧形状の凹溝が格子状に形成されたプレス用金型が開示されている。具体的には、特許文献1のプレス用金型100には、図10、図11に示すように、上方に配置されたダイス101と、下方に配置されたポンチ102とを備え、ポンチ102の成形面102aに複数の凹溝102bが形成されている。複数の凹溝102bは、ある方向(図10の左右方向)に略平行に配置されるとともに、その方向と略直交する方向(図10の上下方向)に略平行に配置されている。したがって、互いに略直交する複数の凹溝102bは、格子状に形成され、素材103に接触するポンチ102の成形面102aは、凹溝102bにより分断されて正方形の浮島状に形成されている。
上記特許文献1のプレス用金型100において、ダイス101を下降させて素材103をプレス成形する際、ポンチ102と素材103との間に異物104や油だまり105が存在したとき、素材103がポンチ102の成形面102a上を滑るため、異物104等は凹溝102b内に落下、収容され、プレス品に異物104等の噛み込みによる微小欠陥が生じるのを防止することができる。
特開2005−334908号公報
しかしながら、上記特許文献1のプレス用金型100では、プレス成形時に素材103がポンチ102の成形面102a上を滑る素材のズレ方向が、同一外板面上で部位によって異なる場合、素材のズレ方向と略同一方向となる成形面102aの輪郭がプレス品に転写される問題があった。
例えば、図12に示すように、ドアパネルDPのベルトライン上部の外板面BLでは、取っ手部TBの前上方の外板面BL1における素材のズレ方向(矢印P1)と、取っ手部TBの後上方の外板面BL2における素材のズレ方向(矢印P2)とが、異なる方向を向いている。すなわち、取っ手部TBの前上方の外板面BL1における素材のズレ方向(矢印P1の方向)は、水平方向に対して略90度上方へ向き、取っ手部TBの後上方の外板面BL2における素材のズレ方向(矢印P2の方向)は、水平方向に対して略45度後上方へ向いている。
この場合、ポンチ102のベルトライン上部の成形面102aには、図13(a)に示すように、互いに略直交する凹溝102bを、溝方向n1、n2が水平方向に対してそれぞれ略45度傾斜するように配置することによって、図13(b)に示すように、取っ手部TBの前上方では、素材のズレ方向(矢印P1の方向)と成形面102aの対角線方向とが略一致する。そのため、素材を矢印P1の方向にズラしたとき、成形面102aの矢印P1の前方側に形成された輪郭t1、t2の痕跡が素材のズレ方向(矢印P1の方向)で前方側に隣接する他の成形面102aと交差し、また、成形面102aの矢印P1の後方側に形成された輪郭t3、t4の痕跡がその成形面102aと交差する。そのため、ポンチ102とダイス101とが素材103を狭圧するとき素材103に形成された成形面102aの各輪郭t1、t2、t3、t4の痕跡を、素材103が成形面102a上を滑るときに交差する成形面102aによって、滑らかに消し去ることができる。したがって、図14に示すように、取っ手部TBの前上方では、プレス品(ドアパネルDP)の外板面に対する成形面102aの輪郭の転写を、回避することができる。
ところが、図13(c)に示すように、取っ手部TBの後上方では、素材を矢印P2の方向にズラしたとき、成形面102aの輪郭t2の痕跡が素材のズレ方向(矢印P2の方向)で前方側に隣接する他の成形面102aと交差し、成形面102aの輪郭t3の痕跡がその成形面102aと交差するが、成形面102aの輪郭t1、t4の痕跡は素材のズレ方向(矢印P2の方向)で隣接する他の成形面102aの輪郭t1、t4と同一直線状で重なるだけで交差しない。そのため、ポンチ102とダイス101とが素材103を狭圧するとき素材103に形成された成形面102aの輪郭t2、t3、の痕跡は、素材103が成形面102a上を滑るときに消し去ることができるが、素材のズレ方向と同一方向の輪郭t1、t4の痕跡は消し去ることができない。したがって、図14に示すように、取っ手部TBの後上方では、素材のズレ方向(矢印P2の方向)と同じ方向の輪郭t1、t4に基づく直線状痕跡KNが、プレス品(ドアパネルDP)の外板面に形成されることになる。
以上のように、特許文献1のプレス用金型100では、プレス成形時に素材103がポンチ102の成形面102a上を滑る素材のズレ方向が、同一外板面上で部位によって異なる場合、素材のズレ方向と略同一方向となる成形面102aの輪郭t1、t4がプレス品(ドアパネルDP)の外板面BLに転写される問題を回避できなかった。
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、プレス品の外板面に異物等による微小欠陥の発生を抑制できるとともに、プレス成形時に素材がポンチの成形面上を滑る素材のズレ方向が、同一外板面上で部位によって異なる場合であっても、成形面の輪郭がプレス品の外板面に転写されにくいプレス用金型を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明に係るプレス用金型は、次のような構成を有している。
(1)素材を狭圧して外板面を有するプレス品をプレス成形するポンチとダイスとを備え、前記ポンチ及び前記ダイスの少なくとも何れか一方の成形面が、互いに交差する複数の凹溝により分断されて略四辺形の浮島状に形成されたプレス用金型であって、
同一外板面をプレス成形する前記成形面には、プレス成形時に前記素材が前記ポンチ又は前記ダイスの成形面上を滑る素材のズレ方向と異なる方向に前記凹溝が形成されていることを特徴とする。ここで、「同一外板面」とは、プレス品を組み付けたときに外部から視認でき、デザイン上の折れ線や段差等によって分割されず、断面の曲率が略一定又は連続状に変化しているプレス品の板面を意味する。
本発明においては、同一外板面をプレス成形する成形面には、プレス成形時に素材がポンチ又はダイスの成形面上を滑る素材のズレ方向と異なる方向に凹溝が形成されているので、同一外板面をプレス成形時に素材がポンチ又はダイスの成形面上を異なる方向に滑るとき、各成形面の輪郭の痕跡がその成形面又は周辺に位置する他の成形面と交差することができる。そのため、ポンチとダイスとが素材を狭圧するとき素材に形成された各成形面の輪郭の痕跡を、素材が成形面上を滑るときに交差する成形面によって、滑らかに消し去ることができる。その結果、プレス成形時に素材がポンチ又はダイスの成形面上を滑る素材のズレ方向が、同一外板面上で部位によって異なる場合であっても、プレス品の外板面に対する成形面の輪郭の転写を、回避することができる。
よって、本発明によれば、プレス品の外板面に異物等による微小欠陥の発生を抑制できるとともに、プレス成形時に素材がポンチの成形面上を滑る素材のズレ方向が、同一外板面上で部位によって異なる場合であっても、成形面の輪郭がプレス品の外板面に転写されにくいプレス用金型を提供することができる。
(2)(1)に記載されたプレス用金型において、
前記同一外板面をプレス成形する成形面は、前記凹溝により分断されて形成された複数種類の平面形状からなることを特徴とする。
本発明においては、同一外板面をプレス成形する成形面は、凹溝により分断されて形成された複数種類の平面形状からなるので、プレス成形時に素材がポンチ又はダイスの成形面上を異なる方向に滑るとき、素材のズレ方向に対応して、各成形面の輪郭の痕跡がその成形面又は周辺に位置する他の成形面と交差しやすい平面形状の成形面を配置することができる。そのため、ポンチとダイスとが素材を狭圧するとき素材に形成された各成形面の輪郭の痕跡を、素材が成形面上を滑るときに交差しやすい平面形状の成形面によって、より確実に消し去ることができる。その結果、プレス成形時に素材がポンチ又はダイスの成形面上を滑る素材のズレ方向が、同一外板面上で部位によって異なる場合であっても、プレス品の外板面に対する成形面の輪郭の転写を、より確実に回避することができる。
(3)(2)に記載されたプレス用金型において、
前記複数種類の平面形状からなる成形面の対角線方向は、当該成形面上を滑る前記素材のズレ方向にそれぞれ略対応して配置されていることを特徴とする。
本発明においては、複数種類の平面形状からなる成形面の対角線方向は、当該成形面上を滑る素材のズレ方向にそれぞれ略対応して配置されているので、プレス成形時に素材がポンチ又はダイスの成形面上を異なる方向に滑るとき、各成形面の輪郭の痕跡がその成形面又は素材のズレ方向で隣接する他の成形面と交差することができる。そのため、ポンチとダイスとが素材を狭圧するとき素材に形成された各成形面の輪郭の痕跡を、素材が成形面上を滑るときに交差する、より近い成形面によって、より正確に消し去ることができる。その結果、プレス成形時に素材がポンチ又はダイスの成形面上を滑る素材のズレ方向が、同一外板面上で部位によって異なり、また素材のズレ量が少ない場合であっても、プレス品の外板面に対する成形面の輪郭の転写を、より一層正確に回避することができる。
(4)(2)又は(3)に記載されたプレス用金型において、
前記複数種類の平面形状からなる成形面が分布する領域は、その境界部が共通の方向に形成された凹溝により分断されていることを特徴とする。
本発明においては、複数種類の平面形状からなる成形面が分布する領域は、その境界部が共通の方向に形成された凹溝により分断されているので、共通の方向に形成された凹溝を連続して加工した後、その共通の凹溝と交差する他の凹溝を領域毎に加工することによって、複数種類の平面形状からなる成形面の領域同士の境界部に微小な成形面を残すことなく、各成形面を簡単に形成することができる。また、複数種類の平面形状からなる成形面の領域同士の境界部に微小な成形面を残すことがないので、当該微小な成形面によるプレス品への微小傷等を回避させることができる。
(5)(4)に記載されたプレス用金型において、
前記複数種類の平面形状からなる成形面は、前記境界部を構成する凹溝を挟んで菱形の内角が互いに異なるように形成されていることを特徴とする。
本発明においては、複数種類の平面形状からなる成形面は、境界部を構成する凹溝を挟んで菱形の内角が互いに異なるように形成されているので、素材のズレ方向、ズレ量の大きさ、又は成形するプレス品の外板面の曲率等に適した成形面の平面形状(正方形の菱形〜偏平な菱形)を領域毎に選択することができる。そのため、素材のズレ方向、ズレ量の大きさ、又は成形するプレス品の外板面の曲率等を総合的に勘案して、プレス品の外板面に対する成形面の輪郭の転写を、より確実に回避することができる。
(6)(2)乃至(5)のいずれか1つに記載されたプレス用金型において、
前記複数種類の平面形状からなる成形面は、それぞれの内角が少なくとも45度以上であることを特徴とする。
本発明においては、複数種類の平面形状からなる成形面は、それぞれの内角が少なくとも45度以上であるので、各成形面の角部によるプレス品の擦り傷等を防止できるとともに、各成形面の角部の摩耗を低減させることができる。
(7)(6)に記載されたプレス用金型において、
前記複数種類の平面形状からなる成形面には、各内角を略90度とした菱形状に形成された第1の成形面と、一方の対向する内角を略135度とし他方の対向する内角を略45度とした異形ダイヤ状に形成された第2の成形面と、を備えたことを特徴とする。
本発明においては、複数種類の平面形状からなる成形面には、各内角を略90度とした菱形状に形成された第1の成形面と、一方の対向する内角を略135度とし他方の対向する内角を略45度とした異形ダイヤ状に形成された第2の成形面と、を備えたので、例えば、素材のズレ方向が水平方向又は垂直方向に対してゼロ度から略20度未満の範囲内であれば、第1の成形面を選択し、素材のズレ方向の傾斜角が水平方向に対して略20度から略70度の範囲内であれば、第2の成形面を選択することができる。そのため、素材のズレ方向が所定の範囲で異なる場合であっても、成形面を2種類の平面形状に限定することによって、凹溝加工の簡素化を図ることができる。
本発明によれば、プレス品の外板面に異物等による微小欠陥の発生を抑制できるとともに、プレス成形時に素材がポンチの成形面上を滑る素材のズレ方向が、同一外板面上で部位によって異なる場合であっても、成形面の輪郭がプレス品の外板面に転写されにくいプレス用金型を提供することができる。
本発明の実施形態に係るプレス用金型の概略断面図である。 図1に示すプレス用金型のC部詳細断面図である。 図2に示すポンチのD矢視図である。 図3に示す第1の成形面及び凹溝の詳細平面図である。 図3に示す第2の成形面及び凹溝の詳細平面図である。 図3に示す第1の成形面及び第2の成形面を形成する凹溝の加工手順を表す平面図である。(a)は共通の方向に形成された第1の凹溝を加工した状態を示し、(b)は第1の凹溝と直交する方向に形成された第2の凹溝を加工した状態を示し、(c)は第1の凹溝と略45度で交差する方向に形成された第3の凹溝を加工した状態を示す。 図3に示す第1の成形面及び第2の成形面と素材のズレ方向との関係を表す平面図である。(a)は素材のズレ方向の傾斜角が水平方向に対してゼロ度から略20度未満の範囲内であれば、第1の成形面を選択することを示し、(b)は素材のズレ方向の傾斜角が水平方向に対して略20度から略70度の範囲内であれば、第2の成形面を選択することを示し、(c)は素材のズレ方向の傾斜角が垂直方向に対してゼロ度から略20度未満の範囲内であれば、第1の成形面を選択することを示す。 図3に示す凹溝及び成形面の他の実施例(1)を表す詳細平面図である。 図3に示す凹溝及び成形面の他の実施例(2)を表す詳細平面図である。 特許文献1に記載されたプレス用金型の概略断面図である。 図10に示すポンチの成形面及び凹溝を表す部分断面図である。 自動車のドアパネルを表す概略平面図である。 図12に示すドアパネルのベルトライン上部の外板面に図11に示すポンチの成形面を適用した部分平面図である。(a)はポンチの成形面を形成する凹溝の溝方向と素材のズレ方向との関係を示し、(b)はA部詳細図を示し、(c)はB部詳細図を示す。 図13に示すポンチの成形面の輪郭がプレス品の外板面に転写された状態を表すドアパネルの部分平面図である。
次に、本発明の実施形態に係るプレス用金型について、図面を参照して詳細に説明する。はじめに、本実施形態に係るプレス用金型の構造を説明し、その後、本プレス用金型の成形面を形成する凹溝の加工方法を説明する。また、本プレス用金型の成形面の種類と素材のズレ方向との関係を説明する。また、凹溝及び成形面の他の実施例を説明する。
<プレス用金型の構造>
まず、本実施形態に係るプレス用金型の構造を、図1〜図5を用いて説明する。図1に、本発明の実施形態に係るプレス用金型の概略断面図を示す。図2に、図1に示すプレス用金型のC部詳細断面図を示す。図3に、図2に示すポンチのD矢視図を示す。図4に、図3に示す第1の成形面及び凹溝の詳細平面図を示す。図5に、図3に示す第2の成形面及び凹溝の詳細平面図を示す。
図1に示すように、本実施形態に係るプレス用金型10は、素材Sを狭圧して外板面を有するプレス品Wをプレス成形するポンチ1とダイス2とを備えたプレス用金型である。ポンチ1とダイス2には、それぞれ型台4、5が装着されている。また、本プレス用金型10には、ポンチ1の外周縁に沿って形成され、ダイス2の外周部との間で素材Sを挟持するしわ押え6と、しわ押え6を上昇させるクッションピン61とを備えている。クッションピン61は、プレス機械側に装着されたダイクッションピン41に当接するように配置されている。しわ押え6の上面には、素材Sのポンチ側への流入を調整するビードが形成され、素材Sの投入位置を規制する位置決めガイド62が装着されている。
また、図2に示すように、ポンチ1の成形面11、12は、互いに交差する複数の凹溝3(31、32、33)により分断されて略四辺形の浮島状に形成されている。なお、ポンチ1及びダイス2の少なくとも何れか一方の成形面11、21が、互いに交差する複数の凹溝3(31、32、33)により分断されて略四辺形の浮島状に形成されてもよい。凹溝3(31、32、33)は、ダイス2を下降させて素材Sをプレス成形する際、ポンチ1と素材Sとの間に異物Z等が存在したとき、素材Sがポンチ1の成形面11、12上を滑るため、異物Z等は凹溝3(31、32、33)内に落下、収容され、プレス品Wの外板面に異物Z等の噛み込みによる微小欠陥が生じるのを防止するために設けられている。凹溝3(31、32、33)は、断面が略円弧状に形成されている。
また、図3に示すように、プレス品Wの同一外板面をプレス成形する成形面11、12には、プレス成形時に素材Sがポンチ1又はダイス2の成形面上を滑る素材Sのズレ方向Q1、Q2と異なる方向に凹溝3(31、32、33)が形成されている。凹溝3は、3種類の方向m1、m2、m3にそれぞれ平行かつ等間隔に形成された第1の凹溝31と、第2の凹溝32と、第3の凹溝33とから構成されている。ここで、「同一外板面」とは、プレス品Wを組み付けたときに外部から視認でき、デザイン上の折れ線や段差等によって分割されず、断面の曲率が略一定又は連続状に変化しているプレス品の板面を意味する。
また、素材Sのズレ方向Q1は、図3の図面右から左へ向かう方向(水平方向)であり、素材Sのズレ方向Q2は、図3の図面右下方から左上方へ向き、水平方向に対して略45度傾斜する方向である。これに対して、第1の凹溝31は、図3の図面右上方から左下方へ向き、水平方向に対して略45度傾斜する方向m1に形成されている。第2の凹溝32は、図3の図面右下方から左上方へ向き、水平方向に対して略45度傾斜する方向m2に形成されている。第3の凹溝33は、図3の図面下方から上方へ向き、水平方向に対して略直交する方向(上下方向)m3に形成されている。第1の凹溝31と第2の凹溝32と第3の凹溝33とは、溝幅が略同一に形成されている。
第1の成形面11は、第1の凹溝31と第2の凹溝32とにより分断されて略四辺形(菱形:正方形の菱形)の浮島状に形成され、第2の成形面12は、第1の凹溝31と第3の凹溝33とにより分断されて略四辺形(異形ダイヤ:偏平な菱形)の浮島状に形成されている。したがって、同一外板面をプレス成形する成形面11、12は、凹溝3(31、32、33)により分断されて形成された複数種類(ここでは、2種類)の平面形状(菱形、異形ダイヤ)からなる。また、複数種類の平面形状(菱形、異形ダイヤ)からなる成形面11、12が分布する領域Y1、Y2は、その境界部が共通の方向m1に形成された第1の凹溝31により分断されている。すなわち、第1の成形面11のみが分布する領域Y1と第2の成形面12のみが分布する領域Y2とが、その境界部において第1の凹溝31により分断されている。また、複数種類の平面形状(菱形、異形ダイヤ)からなる成形面11、12は、領域Y1、Y2の境界部を構成する第1の凹溝31を挟んで菱形の内角が互いに異なるように形成されている。
また、図3、図4に示すように、第1の成形面11は、各内角θ1を略90度とした菱形状(正方形の菱形)に形成されている。また、第1の成形面11の各輪郭T1、T2、T3、T4は、水平方向に対して傾斜角θ2が略45度となるように形成されている。第1の成形面11の対角線方向D1は、その成形面11上を滑る素材Sのズレ方向(矢印Q1の方向)と略一致している。
また、第1の成形面11が分布する領域Y1において、素材Sを矢印Q1の方向にズラしたとき、第1の成形面11の矢印Q1の前方側に形成された輪郭T1、T2の痕跡が、素材Sのズレ方向(矢印Q1の方向)で前方側に隣接する他の第1の成形面11と交差する。また、第1の成形面11の矢印Q1の後方側に形成された輪郭T3、T4の痕跡が、その第1の成形面11と交差する。そのため、ポンチ1とダイス2とが素材Sを狭圧するとき素材Sに形成された第1の成形面11の各輪郭T1、T2、T3、T4の痕跡を、素材Sが第1の成形面11上を滑るときに交差する第1の成形面11によって、滑らかに消し去ることができる。したがって、プレス品Wの外板面に対する第1の成形面11の輪郭T1、T2、T3、T4の転写を、回避することができる。
また、図3、図5に示すように、第2の成形面12は、一方の対向する内角θ3を略135度とし、他方の対向する内角θ4を略45度とした異形ダイヤ状(偏平な菱形)に形成されている。また、第2の成形面12の輪郭T5、T6、T7、T8の内、一方の対向する輪郭T6、T8は水平方向に形成され、他方の対向する輪郭T5、T7は水平方向に対して傾斜角θ4が略45度となるように形成されている。第2の成形面12の対角線方向D2は、その成形面12上を滑る素材Sのズレ方向(矢印Q2の方向)と略一致している。
また、第2の成形面12が分布する領域Y2において、素材Sを矢印Q2の方向にズラしたとき、第2の成形面12の矢印Q2の前方側に形成された輪郭T5、T6の痕跡が、素材Sのズレ方向(矢印Q2の方向)で前方側に隣接する他の第2の成形面12と交差する。また、第2の成形面12の矢印Q2の後方側に形成された輪郭T7、T8の痕跡が、その第2の成形面12と交差する。そのため、ポンチ1とダイス2とが素材Sを狭圧するとき素材Sに形成された第2の成形面12の各輪郭T5、T6、T7、T8の痕跡を、素材Sが第2の成形面12上を滑るときに交差する第2の成形面12によって、滑らかに消し去ることができる。したがって、プレス品Wの外板面に対する第2の成形面12の輪郭T5、T6、T7、T8の転写を、回避することができる。
<凹溝の加工方法>
次に、本プレス用金型の成形面を形成する凹溝の加工方法を、図6を用いて説明する。図6に、図3に示す第1の成形面及び第2の成形面を形成する凹溝の加工手順を表す平面図を示す。(a)は共通の方向に形成された第1の凹溝を加工した状態を示し、(b)は第1の凹溝と直交する方向に形成された第2の凹溝を加工した状態を示し、(c)は第1の凹溝と略45度で交差する方向に形成された第3の凹溝を加工した状態を示す。
図6(a)に示すように、プレス品Wの同一外板面をプレス成形する成形面の領域全体に対して、共通の方向m1に形成された第1の凹溝31を、それぞれ平行かつ等間隔に加工する。第1の凹溝31は、図6(a)の図面右上方から左下方へ向き、水平方向に対して略45度傾斜する方向m1に形成されている。
次に、図6(b)に示すように、プレス成形時に素材Sが図6(b)の図面右から左へ向かう方向(水平方向)でポンチ1又はダイス2の成形面上を滑る領域では、図6(b)の図面右下方から左上方へ向き、水平方向に対して略45度傾斜する方向m2に形成された第2の凹溝32を、それぞれ平行かつ等間隔に加工する。第2の凹溝32の加工は、境界部を構成する第1の凹溝31と交差した状態で止める。これによって、素材Sのズレ方向(矢印Q1の方向)に対応する第1の成形面11のみが分布する領域Y1(図3を参照)を形成する。
次に、図6(c)に示すように、プレス成形時に素材Sが図6(c)の図面右下方から左上方へ向き、水平方向に対して略45度傾斜する方向でポンチ1又はダイス2の成形面上を滑る領域では、図6(c)の図面下方から上方へ向き、水平方向に対して直交する方向m3に形成された第3の凹溝33を、それぞれ平行かつ等間隔に加工する。第3の凹溝33の加工は、境界部を構成する第1の凹溝31と交差した状態から始める。これによって、素材Sのズレ方向(矢印Q2の方向)に対応する第2の成形面12のみが分布する領域Y2(図3を参照)を形成する。
なお、第1〜第3の凹溝3(31、32、33)は、それぞれ断面が略円弧状に形成され、その幅寸法は1.2mm程度で、その深さは0.2mm程度が好ましい。また、第1〜第3の凹溝3(31、32、33)は、底刃の先端が略円弧状に形成されたエンドミルを回転させながらm1、m2、m3の方向に移動して加工したうえで、成形面11、12周辺に残る切削バリを砥石研磨等によって除去し、仕上げる。
<成形面の種類と素材のズレ方向との関係>
次に、本プレス用金型の成形面の種類と素材のズレ方向との関係を、図7を用いて説明する。図7に、図3に示す第1の成形面及び第2の成形面と素材のズレ方向との関係を表す平面図を示す。(a)は素材のズレ方向の傾斜角が水平方向に対してゼロ度から略20度未満の範囲内であれば、第1の成形面を選択することを示し、(b)は素材のズレ方向の傾斜角が水平方向に対して略20度から略70度の範囲内であれば、第2の成形面を選択することを示し、(c)は素材のズレ方向の傾斜角が垂直方向に対してゼロ度から略20度未満の範囲内であれば、第1の成形面を選択することを示す。
図7(a)に示すように、素材のズレ方向の傾斜角α1が水平方向に対してゼロ度から略20度未満の範囲内であれば、第1の成形面11を選択することができる。この場合においても、素材Sを傾斜角α1の範囲でズラしたとき、第1の成形面11の輪郭の痕跡が、その第1の成形面11又は素材Sのズレ方向で前方側に位置する周辺の第1の成形面11と交差する。そのため、ポンチ1とダイス2とが素材Sを狭圧するとき素材Sに形成された第1の成形面11の各輪郭の痕跡を、素材Sが第1の成形面11上を滑るときに交差する第1の成形面11によって、滑らかに消し去ることができる。したがって、プレス品Wの外板面に対する第1の成形面11の輪郭の転写を、回避することができる。
また、図7(b)に示すように、素材のズレ方向の傾斜角α3(α2−α1)が水平方向に対して略20度(α1)から略70度(α2)の範囲内であれば、第2の成形面12を選択することができる。この場合においても、素材Sを傾斜角α3(α2−α1)の範囲でズラしたとき、第2の成形面12の輪郭の痕跡が、その第2の成形面12又は素材Sのズレ方向で前方側に位置する周辺の第2の成形面12と交差する。そのため、ポンチ1とダイス2とが素材Sを狭圧するとき素材Sに形成された第2の成形面12の各輪郭の痕跡を、素材Sが第2の成形面12上を滑るときに交差する第2の成形面12によって、滑らかに消し去ることができる。したがって、プレス品Wの外板面に対する第2の成形面12の輪郭の転写を、回避することができる。
また、図7(c)に示すように、素材のズレ方向の傾斜角α4が垂直方向に対してゼロ度から略20度未満の範囲内であれば、第1の成形面11を選択することができる。この場合においても、素材Sを傾斜角α4の範囲でズラしたとき、第1の成形面11の輪郭の痕跡が、その第1の成形面11又は素材Sのズレ方向で前方側に位置する周辺の第1の成形面11と交差する。そのため、ポンチ1とダイス2とが素材Sを狭圧するとき素材Sに形成された第1の成形面11の各輪郭の痕跡を、素材Sが第1の成形面11上を滑るときに交差する第1の成形面11によって、滑らかに消し去ることができる。したがって、プレス品Wの外板面に対する第1の成形面11の輪郭の転写を、回避することができる。
以上のように、素材のズレ方向が所定範囲の傾斜角(α1、α3、α4)で異なる場合であっても、プレス品Wの外板面に対する成形面11、12の輪郭の転写を、回避することができるとともに、成形面11、12を2種類の平面形状(内角略90度の菱形、内角略45度と内角略135度の異形ダイヤ)に限定することによって、凹溝31、32、33の加工の簡素化を図ることができる。
<凹溝及び成形面の他の実施例>
次に、本プレス用金型における凹溝及び成形面の他の実施例について、図8、図9を用いて説明する。図8に、図3に示す凹溝及び成形面の他の実施例(1)を表す詳細平面図を示す。図9に、図3に示す凹溝及び成形面の他の実施例(2)を表す詳細平面図を示す。
他の実施例(1)では、図8に示すように、プレス品Wの同一外板面をプレス成形する第1の成形面11と第3の成形面13が形成されている。第1の成形面11は、各内角θ1が略90度の菱形状に形成され、第3の成形面13は、一方の対向する内角θ5を略120度とし、他方の対向する内角θ6を略60度とした異形ダイヤ状に形成されている。図8に示す第1の成形面11は、図3に示すものと同一である。第3の成形面13は、方向m2の第2の凹溝32を境界部で略30度折り曲げた方向m4の第4の凹溝34と共通の方向m1の第1の凹溝31とにより分断されて略四辺形(異形ダイヤ)の浮島状に形成されている。したがって、同一外板面をプレス成形する成形面11、13は、凹溝により分断されて形成された複数種類(ここでは、2種類)の平面形状(菱形、異形ダイヤ)からなる点で、図3に示す成形面11、12と類似しているが、第3の成形面13の他方の対向する内角θ6を略60度に形成したことで、第3の成形面13の角部によるプレス品Wの擦り傷等を更に防止できるとともに、各成形面13の角部の摩耗を更に低減させることができる。
なお、素材Sのズレ方向Q3、Q4は、凹溝31、32、34の方向m1、m2、m4と相違するので、ポンチ1とダイス2とが素材Sを狭圧するとき素材Sに形成された第1の成形面11及び第3の成形面13の各輪郭の痕跡を、素材Sが第1の成形面11上を滑るとき、及び第3の成形面13上を滑るときに、滑らかに消し去ることができる。したがって、プレス品Wの外板面に対する第1の成形面11及び第3の成形面13の各輪郭の転写を、回避することができる。
これに対して、他の実施例(2)では、図9に示すように、プレス品Wの同一外板面をプレス成形する第1の成形面11と第2の成形面12が形成されている。第1の成形面11と第2の成形面12は、図3に示すものと同一である。方向m1の第1の凹溝31、方向m2の第2の凹溝32、方向m3の第3の凹溝33は、図3に示すものと同一である。ただし、第2の成形面12は、第1の凹溝31の方向m1と同一方向m5であるが幅寸法が第1の凹溝31より狭い第5の凹溝35と方向m3の第3の凹溝33とにより分断されて、略四辺形(異形ダイヤ)の浮島状に形成されている。
したがって、同一外板面をプレス成形する成形面11、12は、凹溝により分断されて形成された複数種類(ここでは、2種類)の平面形状(菱形、異形ダイヤ)からなる点で、図3に示す成形面11、12と類似しているが、図9に示す第2の成形面12は、水平方向の間隔を狭くすることによって、成形面12の面積比率を高めることができる。そのため、ポンチ1とダイス2とが素材Sを狭圧するとき素材Sに形成された第2の成形面12の各輪郭の痕跡を、素材Sが第2の成形面12上を滑るときに交差する第2の成形面12によって、より一層滑らかに消し去ることができる。したがって、プレス品Wの外板面が平坦面に近い場合(断面の曲率が小さい場合)であって、素材Sのズレ量が少ない場合でも、第2の成形面12の輪郭の転写を、確実に回避することができる。
<作用効果>
以上、詳細に説明したように、本実施形態のプレス用金型によれば、同一外板面をプレス成形する成形面11、12、13には、プレス成形時に素材Sがポンチ1又はダイス2の成形面上を滑る素材のズレ方向Q1、Q2、Q3、Q4と異なる方向m1、m2、m3、m4、m5に凹溝3(31、32、33、34、35)が形成されているので、同一外板面をプレス成形時に素材Sがポンチ1又はダイス2の成形面上を異なる方向に滑るとき、各成形面11、12、13の輪郭の痕跡がその成形面又は周辺に位置する他の成形面と交差することができる。そのため、ポンチ1とダイス2とが素材Sを狭圧するとき素材Sに形成された各成形面11、12、13の輪郭の痕跡を、素材Sが成形面上を滑るときに交差する成形面によって、滑らかに消し去ることができる。その結果、プレス成形時に素材Sがポンチ1又はダイス2の成形面上を滑る素材Sのズレ方向Q1、Q2、Q3、Q4が、同一外板面上で部位によって異なる場合であっても、プレス品Wの外板面に対する成形面11、12、13の輪郭の転写を、回避することができる。
よって、本実施形態によれば、プレス品Wの外板面に異物等による微小欠陥の発生を抑制できるとともに、プレス成形時に素材Sがポンチ1の成形面上を滑る素材のズレ方向Q1、Q2、Q3、Q4が、同一外板面上で部位によって異なる場合であっても、成形面11、12、13の輪郭がプレス品Wの外板面に転写されにくいプレス用金型10を提供することができる。
また、本実施形態によれば、同一外板面をプレス成形する成形面11、12、13は、凹溝3(31、32、33、34、35)により分断されて形成された複数種類の平面形状(菱形、異形ダイヤ)からなるので、プレス成形時に素材Sがポンチ1又はダイス2の成形面上を異なる方向に滑るとき、素材Sのズレ方向Q1、Q2、Q3、Q4に対応して、各成形面11、12、13の輪郭の痕跡がその成形面又は周辺に位置する他の成形面と交差しやすい平面形状の成形面を配置することができる。そのため、ポンチ1とダイス2とが素材Sを狭圧するとき素材Sに形成された各成形面11、12、13の輪郭の痕跡を、素材Sが成形面上を滑るときに交差しやすい平面形状の成形面によって、より確実に消し去ることができる。その結果、プレス成形時に素材Sがポンチ1又はダイス2の成形面上を滑る素材のズレ方向Q1、Q2、Q3、Q4が、同一外板面上で部位によって異なる場合であっても、プレス品Wの外板面に対する成形面11、12、13の輪郭の転写を、より確実に回避することができる。
また、本実施形態によれば、複数種類の平面形状からなる成形面の対角線方向D1、D2、D3は、当該成形面上を滑る素材Sのズレ方向Q1、Q2、Q3、Q4にそれぞれ略対応して配置されているので、プレス成形時に素材Sがポンチ1又はダイス2の成形面上を異なる方向に滑るとき、各成形面11、12、13の輪郭の痕跡がその成形面又は素材Sのズレ方向Q1、Q2、Q3、Q4で隣接する他の成形面と交差することができる。そのため、ポンチ1とダイス2とが素材Sを狭圧するとき素材Sに形成された各成形面11、12、13の輪郭の痕跡を、素材Sが成形面上を滑るときに交差する、より近い成形面によって、より正確に消し去ることができる。その結果、プレス成形時に素材Sがポンチ1又はダイス2の成形面上を滑る素材のズレ方向Q1、Q2、Q3、Q4が、同一外板面上で部位によって異なり、また素材Sのズレ量が少ない場合であっても、プレス品Wの外板面に対する成形面11、12、13の輪郭の転写を、より一層正確に回避することができる。
また、本実施形態によれば、複数種類の平面形状からなる成形面11、12が分布する領域Y1、Y2は、その境界部が共通の方向m1に形成された凹溝31により分断されているので、共通の方向m1に形成された凹溝31を連続して加工した後、その共通の凹溝31と交差する他の凹溝32、33を加工することによって、複数種類の平面形状からなる成形面の領域Y1、Y2同士の境界部に微小な成形面を残すことなく、各成形面11、12を簡単に形成することができる。また、複数種類の平面形状からなる成形面の領域Y1、Y2同士の境界部に微小な成形面を残すことがないので、当該微小な成形面によるプレス品Wへの微小傷等を回避させることができる。
また、本実施形態によれば、複数種類の平面形状からなる成形面11、12は、境界部を構成する凹溝31を挟んで菱形の内角θ1、θ3、θ4が互いに異なるように形成されているので、素材Sのズレ方向Q1、Q2、ズレ量の大きさ、又は成形するプレス品Wの外板面の曲率等に適した成形面の平面形状(正方形の菱形〜偏平な菱形)を、領域Y1、Y2毎に選択することができる。そのため、素材Sのズレ方向、ズレ量の大きさ、又は成形するプレス品Wの外板面の曲率等を総合的に勘案して、プレス品Wの外板面に対する成形面11、12の輪郭の転写を、より確実に回避することができる。
また、本実施形態によれば、複数種類の平面形状からなる成形面11、12、13は、それぞれの内角が少なくとも45度以上であるので、各成形面11、12、13の角部によるプレス品Wの擦り傷等を防止できるとともに、各成形面11、12、13の角部の摩耗を低減させることができる。
また、本実施形態によれば、複数種類の平面形状からなる成形面11、12には、各内角θ1を略90度とした菱形状(正方形の菱形)に形成された第1の成形面11と、一方の対向する内角θ3を略135度とし他方の対向する内角θ4を略45度とした異形ダイヤ状(偏平な菱形)に形成された第2の成形面12と、を備えたので、例えば、素材Sのズレ方向の傾斜角α1、α4が水平方向又は垂直方向に対してゼロ度から略20度未満の範囲内であれば、第1の成形面11を選択し、素材Sのズレ方向の傾斜角α3が水平方向に対して略20度から略70度の範囲内であれば、第2の成形面12を選択することができる。そのため、素材Sのズレ方向が所定の範囲で異なる場合であっても、成形面11、12を2種類の平面形状に限定することによって、凹溝加工の簡素化を図ることができる。
<変形例>
上述した実施形態は、本発明の要旨を変更しない範囲で、適宜変更することができる。例えば、本実施形態によれば、ポンチ1の成形面11、12、13に凹溝3を形成したが、ダイス2の成形面21に凹溝を形成してもよい。
本発明は、ポンチとダイスとの間に配置した素材を狭圧してプレス品を成形するプレス用金型に関し、特に、ポンチ及びダイスの少なくとも何れか一方の成形面に、プレス品の外板面に異物等の噛み込みによる微小欠陥が発生するのを防止する凹溝を設けたプレス用金型として利用できる。
1 ポンチ
2 ダイス
3 凹溝
10 プレス用金型
11、12、13 成形面
21 成形面
31、32、33、34、35 凹溝
S 素材
W プレス品
Y1、Y2 領域
Q1、Q2、Q3、Q4 ズレ方向
D1、D2、D3 対角線方向
m1、m2、m3、m4、m5 方向
θ1、θ3、θ4 内角

Claims (7)

  1. 素材を狭圧して外板面を有するプレス品をプレス成形するポンチとダイスとを備え、前記ポンチ及び前記ダイスの少なくとも何れか一方の成形面が、互いに交差する複数の凹溝により分断されて略四辺形の浮島状に形成されたプレス用金型であって、
    同一外板面をプレス成形する前記成形面には、プレス成形時に前記素材が前記ポンチ又は前記ダイスの成形面上を滑る素材のズレ方向と異なる方向に前記凹溝が形成されていることを特徴とするプレス用金型。
  2. 請求項1に記載されたプレス用金型において、
    前記同一外板面をプレス成形する成形面は、前記凹溝により分断されて形成された複数種類の平面形状からなることを特徴とするプレス用金型。
  3. 請求項2に記載されたプレス用金型において、
    前記複数種類の平面形状からなる成形面の対角線方向は、当該成形面上を滑る前記素材のズレ方向にそれぞれ略対応して配置されていることを特徴とするプレス用金型。
  4. 請求項2又は請求項3に記載されたプレス用金型において、
    前記複数種類の平面形状からなる成形面が分布する領域は、その境界部が共通の方向に形成された凹溝により分断されていることを特徴とするプレス用金型。
  5. 請求項4に記載されたプレス用金型において、
    前記複数種類の平面形状からなる成形面は、前記境界部を構成する凹溝を挟んで菱形の内角が互いに異なるように形成されていることを特徴とするプレス用金型。
  6. 請求項2乃至請求項5のいずれか1項に記載されたプレス用金型において、
    前記複数種類の平面形状からなる成形面は、それぞれの内角が少なくとも45度以上であることを特徴とするプレス用金型。
  7. 請求項6に記載されたプレス用金型において、
    前記複数種類の平面形状からなる成形面には、各内角を略90度とした菱形状に形成された第1の成形面と、一方の対向する内角を略135度とし他方の対向する内角を略45度とした異形ダイヤ状に形成された第2の成形面と、を備えたことを特徴とするプレス用金型。
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