以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施形態について説明する。
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態について説明する。
図1は、第1の実施形態のレーザ加工装置10の構成を示す概略図である。
図1に示すように、第1の実施形態のレーザ加工装置10は、レーザ光源12と、Xθステージ14と、液体供給手段16と、加工ユニット30と、オートフォーカス装置(AF装置)70と、制御部72とを備えている。
レーザ光源12は、被加工物Wを加工するための加工用レーザ光L1を出射する。加工用レーザ光L1としては、水に吸収されにくい波長域のレーザ光が用いられる。本実施形態において、加工用レーザ光L1の好ましい条件としては、波長がUV波長域(400nm未満)、パルス幅が1μs以下、繰り返し周波数が1kHzよりも大きいもの、平均出力が0.01〜10W、直接集光方式の集光点でのスポット径が0.23〜10μmである。
Xθステージ14は、被加工物Wを吸着固定し、不図示のステージ駆動機構によりX方向に移動可能であるとともにθ方向に回転可能に構成される。ステージ駆動機構は、制御部72からの制御信号に基づき制御される。ステージ移動機構と後述する加工ユニット駆動機構は移動手段の一例である。
なお、図1において、X、Y、Z方向は互いに直交しており、X方向は水平方向、Y方向はX方向に直交する水平方向、Z方向は鉛直方向である。X方向は第1の方向の一例であり、Y方向は第2の方向の一例である。また、θ方向はZ方向周りの回転方向である。また、被加工物Wは、Xθステージ14側から順に、基材層20、中間層21、及び表面膜22で構成される(図2参照)。
液体供給手段16は、後述する加工ヘッド60(液体チャンバ66)内に加圧液体を供給するものである。液体供給手段16としては、特に制限はなく、公知の手段や公知の装置等を用いることができる。例えば、タンクに貯留した純水を高圧ポンプにより供給してもよい。
加工ユニット30は、Xθステージ14の上方に配置されており、不図示の加工ユニット駆動機構によりY方向及びZ方向に移動可能に構成される。加工ユニット駆動機構は、制御部72から出力される制御信号に基づき制御される。
加工ユニット30は、直接集光方式と液体ジェット方式とを併用するハイブリッド方式で構成される。この構成によれば、詳細を後述するように、直接集光方式と液体ジェット方式とのそれぞれのメリットを享受して、加工品質を向上させることが可能となる。
加工ユニット30は、光量調整手段32と、偏光調整手段34と、偏光ビームスプリッタ36と、ダイクロイックミラー38と、分岐集光手段40と、ミラー42と、ビーム形状整形手段44と、加工ヘッド60とを備えている。なお、本実施形態では、加工ユニット30にレーザ光源12及びAF装置70が設けられた構成を示したが、レーザ光源12やAF装置70は加工ユニット30とは別に設けられていてもよい。
レーザ光源12から出射された加工用レーザ光L1は、光量調整手段32、偏光調整手段34を順次通過して、偏光ビームスプリッタ36に入射する。
光量調整手段32は、レーザ光源12の出射側に配置され、レーザ光源12から出射された加工用レーザ光L1の光量を調整する。光量調整手段32としては、例えば光の通過範囲の大きさが可変であるアパーチャ、1/2波長板(λ/2板)と偏光素子の組み合わせ、あるいは光の透過効率が相違する可変NDフィルタなどを用いた構成とすることができる。
偏光調整手段34は、加工用レーザ光L1の偏光方向を調整するものであり、例えば1/2波長板などで構成される。
偏光ビームスプリッタ36は、入射した加工用レーザ光L1を偏向分離面(接合面)36aで偏光分離するものである。これにより、偏光ビームスプリッタ36に入射した加工用レーザ光L1は、偏光分離面36aで反射した第1加工光L1s(S偏光光)と、偏光分離面36aを透過した第2加工光(P偏光光)L1pとに分岐される(光分岐工程)。偏光ビームスプリッタ36は光分岐手段の一例である。また、第1加工光L1sは第1のレーザ光の一例であり、第2加工光L1pは第2のレーザ光の一例である。
偏光ビームスプリッタ36から出射された第1加工光L1sは、ダイクロイックミラー38を透過して、分岐集光手段40に入射する。
ダイクロイックミラー38は、第1波長域の光を透過し、かつ第1波長域とは異なる第2波長域の光を反射する。本例では、第1波長域はレーザ光源12から出射される加工用レーザ光L1の波長(400nm未満)を含み、第2波長域はAF装置70から出射されるAF光L2の波長(400nm以上)を含む。これにより、偏光ビームスプリッタ36から出射された第1加工光L1sは、ダイクロイックミラー38を透過し、分岐集光手段40に入射する。そして、第1加工光L1sは分岐集光手段40により集光されて被加工物Wに照射される。また、AF装置70から出射されたAF光L2は、ダイクロイックミラー38で反射され、分岐集光手段40により集光されて被加工物Wに照射されるとともに、被加工物Wで反射したAF光L2の反射光は逆の経路を経由してAF装置70に戻されて検出される。
分岐集光手段40は、例えば回折格子及びレンズなどを含んで構成され、入射した第1加工光L1sを所定の高さ位置(Z方向位置)に集光し、かつその集光点を複数に分岐する。すなわち、分岐集光手段40は第1加工光L1sを分岐集光する。なお、本実施形態では、後述するように、分岐集光手段40は第1加工光L1sを2つの集光点P1、P2(図2参照)に分岐集光するが、分岐集光手段40によって分岐集光される集光点の数は3つ以上であってもよい。分岐集光手段40は直接集光手段の一例である。
分岐集光手段40は、不図示の回転移動機構により光軸に対してθ方向に回転及びZ方向に移動可能に構成される。回転移動機構は、制御部72から出力される制御信号に基づき制御され、分岐集光手段40をθ方向に回転又はZ方向(上下方向)に移動させるように駆動する。これにより、後述するように、被加工物Wと加工ユニット30との相対距離の変化に応じて分岐集光手段40をZ方向に移動させることが可能となり、それによって、被加工物Wと加工ユニット30との相対距離を一定に保つことが可能となる。また、分岐集光手段40をθ方向に回転させることにより、被加工物WのX方向に沿った加工予定領域R(図2参照)の加工幅(Y方向の幅)に応じて、分岐集光手段40により分岐集光した2つの集光点P1、P2の間隔(Y方向の距離)を調整することが可能となる。
一方、偏光ビームスプリッタ36から出射された第2加工光L1pは、ミラー42で反射され、ビーム形状整形手段44で所望のビーム形状に整形された後、加工ヘッド60に入射される。
ビーム形状整形手段44は、例えば、アーパーチャ(矩形アパーチャ、円形アパーチャ)やアキシコンレンズ、ビームホモジナイザ、回折格子、レンズなどを含んで構成され、第2加工光L1pのビーム形状、サイズ、強度分布、光線角度などを任意のものに整形する。
加工ヘッド60は、液体供給手段16から供給される加圧液体を液体ジェットJにて噴射するとともに、液体ジェットJを導波路として利用して第2加工光L1pを被加工物Wの加工予定領域Rに照射する。加工ヘッド60の具体的な構成は以下のとおりである。
加工ヘッド60は、集光レンズ62と、透過ガラス64と、液体チャンバ66と、液体ジェット噴射ノズル68とから構成される。
集光レンズ62は、加工ヘッド60に入射した第2加工光L1pを液体ジェット噴射ノズル68のオリフィス(ノズル孔)へ集光させるものである。
透過ガラス64は、集光レンズ62と液体チャンバ66との間に配置され、液体供給手段16から供給される加圧液体を液体チャンバ66の内側に密封する隔壁部として構成される。また、透過ガラス64は、第2加工光L1pを透過する光透過性部材(例えば、石英ガラス)で形成されている。これにより、集光レンズ62から出射された第2加工光L1pは、透過ガラス64を透過し、液体チャンバ66の内部に導かれる。
液体チャンバ66は、液体供給手段16から供給される加圧液体を密封する液体収容部であり、第2加工光L1pの入射面側(図1の上面側)の壁面が上述した透過ガラス64により構成されている。
液体ジェット噴射ノズル68は、加工ヘッド60において被加工物Wに対向する位置に配置され、液体チャンバ66に連通している。これにより、液体チャンバ66内に収容された加圧液体は液体ジェット噴射ノズル68から液体ジェットJとして被加工物Wに向けて噴射される。また、第2加工光L1pは集光レンズ62、透過ガラス64を経て液体ジェット噴射ノズル68のオリフィスに集光されるので、液体ジェット噴射ノズル68から噴射される液体ジェットJ内に第2加工光L1pが導光される。これにより、第2加工光L1pが液体ジェットJにより誘導されて被加工物Wに照射される。
なお、詳細は省略するが、液体ジェットJを包含するようにガス流体を供給することで、加工性能が向上することが知られている(特許第5437578号公報参照)。
AF装置70は、加工用レーザ光L1とは異なる波長域(第2波長域)の光をAF光として出射するオートフォーカス用光源(AF用光源)(不図示)を備えている。本実施形態では、AF光として、400nm以上の波長の光が用いられる。AF用光源から出射されたAF光L2は、ダイクロイックミラー38で反射され、分岐集光手段40により集光されて被加工物Wに照射される。そして、被加工物WからのAF光L2の反射光は逆の経路を経由してAF装置70に入射する。AF装置70は、被加工物WからのAF光L2の反射光を複数の受光素子を備えた光検出器で検出して、被加工物Wと加工ユニット30との相対距離(高さ)に応じた検出信号(オートフォーカス信号)を制御部72に出力する。なお、このようなAF装置70の構成については周知であるため、詳細な説明を省略する。
制御部72は、CPU、メモリ、入出力回路部、及び各種制御回路部等からなり、レーザ加工装置10の各部の動作を制御する。すなわち、制御部72は、レーザ光源12の発光制御、Xθステージ14や加工ユニット30の移動制御、液体供給手段16の液体供給制御等などのレーザ加工装置自体の各種制御を行う。
また、制御部72は、分岐集光手段40の集光点制御(フォーカス制御)を行う。具体的には、制御部72は、AF装置70から出力される検出信号に基づき、被加工物Wと加工ユニット30との相対距離(高さ)が一定となるように分岐集光手段40の回転移動機構を制御する。また、制御部72は、図示しない入力部から入力された加工条件(加工予定領域の加工幅を含む)に基づき、分岐集光手段40により分岐集光される2つの集光点P1、P2の間隔(Y方向の距離)が加工予定領域Rの加工幅に対応した間隔となるように分岐集光手段40の回転移動機構を制御して分岐集光手段40をθ方向に回転させる。
以上の構成により、第1の実施形態のレーザ加工装置10を用いたレーザ加工方法では、被加工物Wに対し、第1加工光L1sを用いて直接集光方式による加工(直接集光方式加工)が行われた後、第2加工光L1pを用いて液体ジェット方式による加工(液体ジェット方式加工)が行われる。
図2は、第1の実施形態における直接集光方式加工において被加工物Wに第1加工光L1sが照射されたときの様子を示した概略図である。なお、被加工物Wの加工予定領域RはX方向に沿って形成されているものとする。
図2に示すように、第1の実施形態における直接集光方式加工では、Xθステージ14により被加工物WをX方向に加工送りしながら、分岐集光手段40に入射した第1加工光L1sを、分岐集光手段40により被加工物Wの内部(すなわち、被加工物Wの表面よりも下側の位置)において互いに異なる2つの集光点P1、P2に分岐集光させる。具体的には、分岐集光手段40により被加工物Wの加工予定領域RのうちY方向の両側の外縁部における表面膜22の内部に2つの集光点P1、P2を分岐集光させる。これにより、加工予定領域Rの両側の外縁部における表面膜22の内部に所定深さの改質層24a、24bが形成される。なお、第1加工光L1sの光量は、光量調整手段32により所望の光量(表面膜22の内部に改質層24a、24bを形成可能な光量)となるように調整されているものとする。
図3は、分岐集光手段40をθ方向に回転させたときの効果を説明するための図である。
分岐集光手段40をθ方向に回転させた場合、図3に示すように、分岐集光手段40(図3では不図示)により分岐集光される第1加工光L1sの2つの集光点P1、P2の位置関係が変化する。これに伴い、2つの集光点P1、P2のY方向の間隔(幅)Mが変化し、図3(a)に示すようにY方向の間隔Mが相対的に広い条件や、図3(b)に示すようにY方向の間隔Mが相対的に狭い条件を作り出すことができる。
第1の実施形態における直接集光方式加工では、分岐集光手段40をθ方向に回転させることにより、2つの集光点P1、P2のY方向の間隔Mを加工予定領域Rの加工幅に応じて調整することが可能となっている。これにより、加工予定領域Rの加工幅が異なる場合でも、分岐集光手段40をθ方向に回転させて2つの集光点P1、P2のY方向の間隔Mを変化させることにより、図2に示すように、加工予定領域Rの両側の外縁部における表面膜22の内部に所定深さの改質層24a、24bを形成することが可能となる。
図4は、第1の実施形態における液体ジェット方式加工において被加工物Wに対して液体ジェットJが噴射されるときの様子を示した概略図である。図5は、液体ジェットJにより誘導された第2加工光L1pにより被加工物Wが加工された後の状態を示した概略図である。
図4に示すように、第1の実施形態における液体ジェット方式加工は、上述した直接集光式加工が行われた後に実施される。すなわち、直接集光方式加工により加工予定領域Rの両側の外縁部における表面膜22の内部に所定深さの改質層24a、24bを形成した後、Xθステージ14により被加工物WをX方向に加工送りしながら、加工予定領域Rの両側の外縁部に挟まれた内側領域に向けて加工ヘッド60から液体ジェットJを噴射する。これにより、加工予定領域Rの内側領域には、液体ジェットJにより誘導された第2加工光L1pが照射される。その結果、図5に示すように、加工予定領域Rの内側領域における表面膜22及び中間層21が除去され、被加工物Wには加工予定領域Rに沿って所定深さ(基材層20まで達する深さ)の加工溝26が形成される。
図6は、第1の実施形態におけるレーザ加工方法の効果を説明するための図であり、直接集光方式加工と液体ジェット方式加工とを組み合わせたときの加工結果を示した図である。なお、ここでは、第1の実施形態におけるレーザ加工方法の効果を分かりやすく説明するため、分岐集光手段40に代えて単一の集光レンズを用いて、加工予定領域Rの両側の外縁部のうち一方の外縁部のみにおける表面膜22の内部に第1加工光L1sを集光させて直接集光方式加工を行った場合について説明する。
図6(a)に示すように、加工予定領域Rの両側の外縁部のうち一方の外縁部のみに対して直接集光方式加工により表面膜22の内部に所定深さの改質層24aを形成した後に、加工予定領域Rの内側領域に対して液体ジェット方式加工を行った場合、図6(b)に示すような加工結果となる。すなわち、改質層24aが形成された側(縁切りあり側)では改質層24aによって縁切りされているため、加工予定領域Rより外側での膜の剥離が塞ぎとめられているが、その反対側(縁切りなし側)では上記のような改質層がなく縁切りされていないため、加工予定領域Rより外側での膜の剥離が大きく広がっている。
図6に示した加工結果から分かるように、加工予定領域Rの両側の外縁部に直接集光方式加工により表面膜22の内部に所定深さの改質層24a、24bを形成してから、液体ジェット方式加工により加工予定領域Rの内側領域を加工することにより、レーザ加工に伴って生じる膜の剥離、デブリ、熱の影響を効果的に抑え、加工品質を向上させることが可能となる。
図7は、第1の実施形態のレーザ加工装置10を用いたレーザ加工方法を示したフローチャートである。なお、特に断らない限り、各処理は制御部72の制御により実行される。
まず、被加工物Wの加工を開始する前に、レーザ加工装置10において直接集光方式加工を行うための直接集光方式加工用調整工程が行われる(ステップS10)。なお、ここでは、レーザ加工装置10の動作モードは直接集光方式加工に設定されているものとする。
直接集光方式加工用調整工程では、偏光ビームスプリッタ36により偏光分離される第1加工光L1s及び第2加工光L1pがそれぞれ所望の光量となるように、光量調整手段32を操作してレーザ光源12から出射される加工用レーザ光L1の光量を調整するとともに、偏光調整手段34を操作して加工用レーザ光L1の偏光方向を調整する。
また、分岐集光手段40により集光される第1加工光L1sの2つの集光点P1、P2のY方向の間隔Mが加工予定領域Rの加工幅に対応した間隔となるように調整する。例えば、制御部72は、図示しない入力部を介して入力された加工予定領域Rの加工幅に基づき、2つの集光点P1、P2のY方向の間隔Mが加工予定領域Rの加工幅に対応した間隔となるように回転移動機構により分岐集光手段40をθ方向に回転させるようにしてもよい。また、分岐集光手段40をθ方向に手動により回転させて、2つの集光点P1、P2のY方向の間隔Mが加工予定領域Rの加工幅に対応した間隔となるように調整するようにしてもよい。これにより、2つの集光点P1、P2のY方向の間隔Mが加工予定領域Rの加工幅に対応した間隔に設定される。
次に、図示しないアライメント装置により、Xθステージ14に載置(吸着固定)された被加工物Wと加工ユニット30との相対的な位置合わせを行うアライメント工程が行われる(ステップS12)。
次に、加工ユニット30を被加工物Wに対する所定の高さ位置(Z方向位置)に移動した後、加工ユニット30の分岐集光手段40が加工対象となる加工予定領域Rに対向する位置となるように、加工ユニット30をY方向に割り出し送りする(ステップS14)。
次に、Xθステージ14をX方向に加工送りしながら被加工物Wに対して第1加工光L1sによる直接集光方式加工工程が行われる(ステップS16)。直接集光方式加工工程は第1のレーザ加工工程の一例である。
直接集光方式加工工程では、偏光ビームスプリッタ36の偏光分離面36aで反射された第1加工光L1sがダイクロイックミラー38を経て分岐集光手段40に入射する。そして、第1加工光L1sは分岐集光手段40より表面膜22の内部においてY方向に互いに異なる2つの集光点P1、P2に集光する(分岐集光工程)。これにより、加工予定領域Rの両側の外縁部における表面膜22の内部に所定深さの改質層24a、24bが形成される。このように液体ジェット方式加工が行われる前に、直接集光方式加工によって加工予定領域Rの両側の外縁部における表面膜22に対して縁切り加工することにより、液体ジェット方式加工においてデメリットであった膜の剥離を効果的に抑えることが可能となる。
本実施形態では、第1加工光L1sは分岐集光手段40によりY方向に互いに異なる2つの集光点P1、P2に同時に集光するので、加工予定領域Rの両側の外縁部を1つのパス(1回の加工送り)で加工することができるので、加工効率を向上させることができる。
また、本実施形態では、直接集光方式加工が行われるのと同時に、AF装置70及び制御部72により、加工ユニット30と被加工物Wとの相対距離が一定となるように制御が行われる。すなわち、AF装置70は、ダイクロイックミラー38、分岐集光手段40を介して被加工物Wに照射されたAF光L2の反射光を検出して、加工ユニット30と被加工物Wとの相対距離に応じた検出信号を制御部72に出力する。制御部72は、加工ユニット30と被加工物Wとの相対距離が一定となるように、分岐集光手段40の回転及び上下移動機構をフィードバック制御する。これにより、加工ユニット30と被加工物Wとの相対距離が一定となるので、加工ユニット30と被加工物Wとの相対距離の変化に影響されることなく、第1加工光L1sは一定の集光状態が維持されるので、直接集光方式において高精度かつ高品質な加工が可能となる。
このようにして1つの加工予定領域Rに対する直接集光方式加工を終えたら、全ての加工予定領域Rの加工が終了したか否か判断する判断工程が行われる(ステップS18)。
ステップS18の判断工程において、全ての加工予定領域Rの加工が終了していないと判断された場合には、加工予定領域Rの間隔に対応する割り出し送り量で加工ユニット30をY方向に割り出し送りして(ステップS14)、加工ユニット30の分岐集光手段40を隣接する加工予定領域Rに対向する位置に位置付けた状態で、Xθステージ14をX方向に加工送りしながら直接集光方式加工が行われる(ステップS16)。また、Y方向の割り出し送りとX方向の加工送りとを交互に繰り返して、X方向と平行な加工予定領域Rの全てに対して直接集光方式加工が行われたら、Xθステージ14をθ方向に90°回転し、先程の加工予定領域Rと直交する加工予定領域Rも同様にして直接集光方式加工が行われる。
一方、ステップS18の判断工程において、全ての加工予定領域Rの加工が終了したと判断された場合には、レーザ加工装置10の動作モードが直接集光方式加工から液体ジェット方式加工に変更される(ステップS20)。
次に、加工ユニット30を被加工物Wに対する所定の高さ位置(Z方向位置)に移動した後、加工ユニット30の加工ヘッド60(液体ジェット噴射ノズル68)が加工対象となる加工予定領域Rに対向する位置となるように、加工ユニット30をY方向に割り出し送りする(ステップS22)。
次に、Xθステージ14をX方向に加工送りしながら被加工物Wに対して第2加工光L1pによる液体ジェット方式加工工程が行われる(ステップS24)。液体ジェット方式加工工程は第2のレーザ加工工程の一例である。
液体ジェット方式加工工程では、液体供給手段16から供給された液体チャンバ66内の加圧液体が液体ジェット噴射ノズル68から液体ジェットJとして噴射される。また、偏光ビームスプリッタ36の偏光分離面36aを透過した第2加工光L1pがミラー42、ビーム形状整形手段44を経て加工ヘッド60に入射する。加工ヘッド60に入射した第2加工光L1pは、集光レンズ62、透過レンズ64、液体チャンバ66を経て、液体ジェット噴射ノズル68のオリフィスに入射する。これにより、第2加工光L1pは、液体ジェット噴射ノズル68に導光され、液体ジェットJを導波路として利用して液体ジェットJ内で全反射を繰り返しながら被加工物Wに誘導され、被加工物Wの加工予定領域Rの内側領域に照射される。その結果、図5に示したように、加工予定領域Rの内側領域における表面膜22及び中間層21が除去され、被加工物Wには加工予定領域Rに沿って所定深さ(基材層20まで達する深さ)の加工溝26が形成される。
このようにして1つの加工予定領域Rに対する液体ジェット方式加工を終えたら、全ての加工予定領域Rの加工が終了したか否か判断する判断工程が行われる(ステップS26)。
ステップS26の判断工程において、全ての加工予定領域Rの加工が終了していないと判断された場合には、加工予定領域Rの間隔に対応する割り出し送り量で加工ユニット30をY方向に割り出し送りして(ステップS22)、加工ユニット30の加工ヘッド60(液体ジェット噴射ノズル68)を隣接する加工予定領域Rに対向する位置に位置付けた状態で、Xθステージ14をX方向に加工送りしながら液体ジェット方式加工が行われる(ステップS24)。このようにしてY方向の割り出し送りとX方向の加工送りとを交互に繰り返して、X方向と平行な加工予定領域Rの全てに対して液体ジェット方式加工が行われた後、Xθステージ14をθ方向に90°回転し、先程の加工予定領域Rと直交する加工予定領域Rも同様にして液体ジェット方式加工が行われる。
一方、ステップS26の判断工程において、全ての加工予定領域Rの加工が終了したと判断された場合には、本フローチャートは終了となる。
次に、第1の実施形態の効果について説明する。
第1の実施形態によれば、加工予定領域Rの両側の外縁部を直接集光方式で加工してから、加工予定領域Rの両側の外縁部に挟まれた内側領域を液体ジェット方式で加工する。その際、直接集光方式での加工において、被加工物Wの表面へのアブレーション加工を行うのではなく、被加工物Wの表面よりも下側の位置となる被加工物Wの内部(表面膜22の内部)に改質層24a、24bを形成しているため、デブリの発生を抑えることが可能となる。また、縁切り後に液体ジェット方式で加工するため、レーザ加工に伴って生じる膜の剥離、熱の影響を効果的に抑え、加工品質を向上させることが可能となる。
また、第1の実施形態では、レーザ光源12から出射された加工用レーザ光L1を偏向ビームスプリッタ9により第1加工光L1s及び第2加工光L1pに分岐し、第1加工光L1sによる直接集光方式加工と第2加工光L1pによる液体ジェット方式加工と1つの装置で実現した構成となっている。したがって、装置の小型化、コストダウンを図ることができるとともに、直接集光方式加工において1度だけアライメントを行えば、その後の液体ジェット方式加工ではアライメントを省略することができ、全体のスループットを向上させることができる。
また、第1の実施形態では、分岐集光手段40により第1加工光L1sを2つの集光点P1、P2に分岐集光させているので、加工予定領域Rの両側の縁部を1つのパスで加工することができ、加工効率を向上させることできる。
また、第1の実施形態では、分岐集光手段40はθ方向(光軸周りの回転方向)に回転自在に構成され、分岐集光手段40により分岐集光される2つの集光点P1、P2のY方向の間隔Mを加工予定領域Rの加工幅に対応した間隔となるように調整することができる。これにより、加工予定領域Rの加工幅に左右されることなく、任意の加工予定領域Rを1つのパスで加工することができ、加工効率とともに加工自由度を高めることが可能となる。
また、第1の実施形態では、AF装置70及び制御部72によって加工ユニット30と被加工物Wとの相対距離が一定となるように制御されるので、加工品質を加工領域内で一定に保つことができる。
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。
図8は、第2の実施形態のレーザ加工装置10Aを示した概略図である。図8において、図1と共通又は類似する構成要素には同一の符号を付して、その説明を省略する。
第1の実施形態では、分岐集光手段40により第1加工光L1sを互いに異なる2つの集光点P1、P2に分岐集光させているのに対し、第2の実施形態では、分岐集光手段40に代えて、単一の集光レンズ46を備えている。
なお、第2の実施形態のレーザ加工装置10Aは、分岐集光手段40の代わりに集光レンズ46を備える点を除けば、第1の実施形態と基本的に同様である。
図8に示すように、第2の実施形態における集光レンズ46は、不図示の移動機構によりZ方向に移動可能に構成されている。移動機構は、制御部72から出力される制御信号に基づき制御され、集光レンズ46をZ方向(上下方向)に移動させるように駆動する。これにより、第1の実施形態と同様に、AF装置70及び制御部72により、加工ユニット30と被加工物Wとの相対距離が一定となるように制御が行われる。
また、第2の実施形態における集光レンズ46は、第1加工光L1sを1つの集光点に集光する。そのため、第2の実施形態のレーザ加工装置10Aを用いたレーザ加工方法では、加工予定領域Rに対して直接集光方式加工を行う場合、加工予定領域Rの両側の外縁部のうち、一方の外縁部における表面膜22の内部に集光レンズ46の集光点をあわせて改質層24aを形成した後、他方の外縁部における表面膜22の内部に集光レンズ46の集光点をあわせて改質層24bを形成する必要がある。
すなわち、第2の実施形態においては、直接集光方式加工により加工予定領域Rの両側の外縁部にそれぞれ改質層24a、24bを形成するためには1つのパスではなく2つのパスが必要とされる。しかしながら、第2の実施形態においても、直接集光方式加工により加工予定領域Rの両側の外縁部における表面膜22の内部にそれぞれ改質層24a、24bを形成してから、液体ジェット方式加工により加工予定領域Rの内側領域を加工するため、第1の実施形態と同様に、レーザ加工に伴って生じる膜の剥離、デブリ、熱の影響を効果的に抑え、加工品質を向上させることが可能となる。
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。
図9は、第3の実施形態のレーザ加工装置10Bを示した概略図である。図9において、図8と共通又は類似する構成要素には同一の符号を付して、その説明を省略する。
第3の実施形態は、第2の実施形態の構成に加えてさらに、偏光ビームスプリッタ36とダイクロイックミラー38との間に配置されたAOD(音響光学素子)48を備えている。
AOD48は、入射した第1加工光L1sを特定角度、特定周波数で偏向するものである。AOD48では入力する音響周波数を変調させることによって光の出射角を変化させることができるので、第1加工光L1sを空間的に移動させて高速に走査することができる。すなわち、AOD48は、第1加工光L1sが加工予定領域Rの両側の外縁部を時間的にずれたタイミングで交互に走査するように、第1加工光L1sを偏向することができる。AOD48は、光偏向手段の一例である。
第3の実施形態のレーザ加工装置10Bを用いたレーザ加工方法では、加工予定領域Rに対して直接集光方式加工が行われる場合、Xθステージ14により被加工物WをX方向に加工送りしながら、AOD48により第1加工光L1sを特定周波数で微小角度だけY方向に高速走査しながら、集光レンズ46により、その走査角度(前述の微小角度)に応じた間隔をあけた状態(Y方向の距離が離れた状態)で被加工物Wの表面上に第1加工光L1sを集光する(光偏向工程)。これにより、集光レンズ46により集光される第1加工光L1sの集光点が加工予定領域Rの両側の外縁部を交互に高速に移動しながら直接集光方式による加工が行われる。
したがって、第3の実施形態によれば、AOD48により第1加工光L1sを空間的に移動させて高速に走査しながら直接集光方式加工が行われるので、1つのパスで加工予定領域Rの両側の外縁部に対する直接集光方式加工を行うことが可能となり、第1の実施形態と同様な効果を得ることができる。
なお、第3の実施形態では、光偏向手段の一例としてAOD48を備えた構成を示したが、これに限らず、例えば、ガルバノスキャナ、ポリゴンスキャナーなどの光走査手段や他の光学素子を用いた構成としてもよい。
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態について説明する。
図10は、第4の実施形態のレーザ加工装置10Cを示した概略図である。図10において、図9と共通又は類似する構成要素には同一の符号を付して、その説明を省略する。
第4の実施形態は、第2の実施形態に加えてさらに、空間光変調器50及び複数のミラー52A〜52Cを備えている。
空間光変調器50としては、例えば、反射型液晶(LCOS:Liquid Crystal on Silicon)の空間光変調器(SLM:Spatial Light Modulator)が用いられる。空間光変調器50の動作、及び空間光変調器50で呈示されるホログラムパターンは、制御部72によって制御される。なお、空間光変調器50の具体的な構成や空間光変調器50で呈示されるホログラムパターンについては既に公知であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
制御部72は、空間光変調器50の動作を制御し、所定のホログラムパターンを空間光変調器50に呈示させる。具体的には、被加工物Wの表面上において第1加工光L1sが集光レンズ46により互いに異なる2つの集光点P1、P2(図2参照)に集光されるように、第1加工光L1sを変調するためのホログラムパターンを空間光変調器50に呈示させる。なお、ホログラムパターンは、第1加工光L1sの波長や集光レンズ46等に基づいて予め導出され、制御部72に記憶されている。
かかる構成により、空間光変調器50に入射された第1加工光L1sは、空間光変調器50に呈示された所定のホログラムパターンに従って変調される。その際、制御部72は、被加工物Wの表面よりも下側の位置となる被加工物Wの内部(表面膜22の内部)において第1加工光L1sが集光レンズ46により互いに異なる2つの集光点P1、P2に集光されるように、第1加工光L1sを変調するためのホログラムパターンを空間光変調器50に呈示させる制御を行う。
空間光変調器50から出射された第1加工光L1sは、ミラー52A〜52Cによって順次反射された後、ダイクロイックミラー38を透過し、集光レンズ46に入射される。そして、集光レンズ46に入射された第1加工光L1sは、集光レンズ46により表面膜22の内部において第1加工光L1sが集光レンズ46により互いに異なる2つの集光点P1、P2に集光される。
第4の実施形態のレーザ加工装置10Cを用いたレーザ加工方法では、空間光変調器50により第1加工光L1sが被加工物Wの内部(表面膜22の内部)において集光レンズ46により互いに異なる2つの集光点P1、P2に集光されるので、1つのパスで加工予定領域Rの両側の外縁部に対する直接集光方式加工を行うことが可能となり、第1の実施形態と同様な効果を得ることができる。
なお、上述した各実施形態では、Xθステージ14により被加工物WをX方向に移動可能かつθ方向に回転可能とし、加工ユニット30をY方向及びZ方向に移動可能とした構成を示したが、被加工物Wと加工ユニット30とがX方向、Y方向、Z方向、及びθ方向に相対的に移動または回転可能に構成されていればよく、本実施形態とは異なる他の態様を適宜採用することができる。
また、上述した各実施形態では、1つの装置で直接集光方式加工と液体ジェット方式加工とを実現した構成を示したが、これらの加工は別の装置で実現されていてもよい。その場合、直接集光方式に使用するレーザ光源は、よりパルス幅の短いピコ秒或いはフェムト秒レーザを用いることも可能である。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、以上の例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはもちろんである。