JP2018028139A - 自熔製錬炉およびその操業方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】熔体にフォーミングが発生することを抑制できる自熔製錬炉およびその操業方法を提供する。【解決手段】銅精鉱を含む製錬原料を供給する精鉱バーナー11と、製錬原料を熔融する反応塔12と、熔体を溜めてカラミとカワとに比重分離するセトラー13と、熔体の表面に還元剤を供給する供給配管20とを備える自熔製錬炉1。還元剤によりカラミが還元されるので、未燃精鉱がカラミにより酸化されにくくなりガスの発生が抑制されるとともに、カラミの粘性が低下する。そのため、熔体にフォーミングが発生することを抑制できる。【選択図】図1

Description

本発明は、自熔製錬炉およびその操業方法に関する。さらに詳しくは、銅精鉱を含む製錬原料を熔融し、熔体をカラミとカワとに比重分離するにあたり、熔体にフォーミングが発生することを抑制できる自熔製錬炉およびその操業方法に関する。
銅製錬に用いられる自熔製錬炉では、銅精鉱、フラックス、補助燃料などからなる製錬原料と、反応用空気とを精鉱バーナーから反応塔内に吹き込み、銅精鉱中の硫黄を燃焼させることで製錬原料を熔融する。そして、セトラーで熔体をカラミ(FeO・SiO2)とカワ(銅や鉄の硫化物)とに比重分離する。
反応塔内で燃焼反応が進み過ぎた場合、銅精鉱が過剰に酸化されてカラミ中の鉄分がマグネタイト(Fe34)となる。そうすると、カラミの粘性が高くなり、カラミの流動性が低下し、操業が困難となる。また、マグネタイトを主成分とする高融点物質がセトラーの底に堆積する底上がりが発生する。
特許文献1には、精鉱バーナーからコークスを供給し、未燃焼のコークスをカラミに滞留させることで、マグネタイトを還元することが開示されている。これにより、カラミの流動性を高くできるとともに、底上がりを防止できる。
特開2000−129368号公報
しかし、精鉱バーナーからコークスを供給すると、コークスが反応塔内で酸素を消費し、銅精鉱の燃焼反応を阻害する。その結果、反応塔内で銅精鉱の燃焼反応が完了しない場合がある。
反応塔内で銅精鉱の燃焼反応が完了しなかった場合、未燃精鉱はカラミ層上に堆積する。未燃精鉱はカラミよりも銅分に富み、高密度である。時間の経過とともに、一部の未燃精鉱はカラミ層に沈んで、カラミとともに排出されるため、未燃精鉱に含まれる銅分が失われてしまう。また、一部の未燃精鉱はカラミにより酸化され、二酸化硫黄(SO2)ガスを発生する。二酸化硫黄ガスが熔体内で発生すると、熔体が発泡して、ポーラス状で嵩比重が低いカラミが熔体表層に表れる。このように熔体が発泡する現象はフォーミングと称される。
フォーミングが過剰に発生すると、セトラー内の熔体表面の高さが上昇し、製錬ガスの通り道が塞がれる場合がある。製錬ガスの充満により炉内圧力が上昇し、負圧に維持できなくなると、セトラーに備えられている保温用のバーナー孔などから熔体や製錬ガスが漏れ出す恐れがある。これを防止するために、炉内圧力の上昇を検知して自熔製錬炉および周辺設備の操業を停止する必要があり、操業効率が低下するばかりか、人的負荷が大きいという問題がある。
本発明は上記事情に鑑み、熔体にフォーミングが発生することを抑制できる自熔製錬炉およびその操業方法を提供することを目的とする。
第1発明の自熔製錬炉は、銅精鉱を含む製錬原料を供給する精鉱バーナーと、前記精鉱バーナーから供給された前記製錬原料を熔融する反応塔と、前記製錬原料が熔融した熔体を溜めてカラミとカワとに比重分離するセトラーと、前記反応塔および前記セトラーで発生した製錬ガスを排出する排煙道と、前記セトラーに設けられ、前記セトラーに溜められた前記熔体の表面に還元剤を供給する供給配管と、を備えることを特徴とする。
第2発明の自熔製錬炉は、第1発明において、前記供給配管には逆流防止用ガスが流されていることを特徴とする。
第3発明の自熔製錬炉は、第1または第2発明において、前記供給配管と前記セトラーの構造体との隙間はガスシールされていることを特徴とする。
第4発明の自熔製錬炉は、第1、第2または第3発明において、前記セトラーに溜められた前記熔体の表面高さを測定する高さ測定手段と、前記供給配管の高さを調整する高さ調整手段と、を備えることを特徴とする。
第5発明の自熔製錬炉の操業方法は、銅精鉱を含む製錬原料を熔融し、熔体をセトラーに溜めてカラミとカワとに比重分離するとともに、前記セトラーに溜められた前記熔体の表面に還元剤を直接供給することを特徴とする。
第1発明によれば、還元剤によりカラミが還元されるので、未燃精鉱がカラミにより酸化されにくくなりガスの発生が抑制されるとともに、カラミの粘性が低下する。そのため、熔体にフォーミングが発生することを抑制できる。
第2発明によれば、供給配管から、製錬ガスや未燃精鉱が逆流することを防止できる。
第3発明によれば、供給配管とセトラーの構造体との隙間から、製錬ガスが漏れ出ることを防止できる。
第4発明によれば、熔体の表面高さに基づき供給配管の高さを調整することで、供給配管が熔体に接触することを防止できる。
第5発明によれば、還元剤によりカラミが還元されるので、未燃精鉱がカラミにより酸化されにくくなりガスの発生が抑制されるとともに、カラミの粘性が低下する。そのため、熔体にフォーミングが発生することを抑制できる。
本発明の一実施形態に係る自熔製錬炉の説明図である。 コークスの供給量に対するフォーミング層の厚みの関係を示すグラフである。
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
(自熔製錬炉1)
まず、本発明の一実施形態に係る自熔製錬炉1の全体構成を説明する。
図1に示すように、自熔製錬炉1は、セトラー13と、セトラー13の一端の上面に立設した反応塔12と、セトラー13の他端の上面に立設した排煙道14と、反応塔12の上端に設けられた精鉱バーナー11とから構成されている。セトラー13の排煙道14側の壁面にはカラミ抜き口15が形成されており、セトラー13の側壁にはカワ抜き口16が形成されている。
自熔製錬炉1を用いた銅製錬操業は以下のように行なわれる。
精鉱バーナー11から粉状の製錬原料と、反応用空気(酸素富化空気)とが反応塔12内に吹き込まれる。製錬原料には少なくとも硫化銅精鉱(以下、単に「銅精鉱」と称する。)とフラックスとが含まれており、必要に応じて冷材などが含まれている。フラックスは良質のカラミを製造するために添加され、例えば珪砂である。
反応塔12内に吹きこまれた製錬原料は、補助バーナーの熱、反応塔12の炉壁内の輻射熱などにより昇温され、銅精鉱中の硫黄が燃焼することで熔融する。製錬原料が熔融した熔体はセトラー13内に溜められる。セトラー13内において熔体はカラミとカワとに比重分離する。
熔体上部のカラミはカラミ抜き口15から排出され、電気錬かん炉で処理される。熔体下部のカワは、次工程の転炉の要求に応じて適量がカワ抜き口16から抜き出される。反応塔12およびセトラー13内で発生した製錬ガスは、排煙道14を通って自熔製錬炉1から排出され、排熱ボイラーで熱が回収される。
(フォーミング)
上記の銅製錬において、セトラー13内の熔体が発泡して、ポーラス状で嵩比重が低いカラミが熔体表層に表れるフォーミングが発生する場合がある。本願発明者は、フォーミングが発生する理由が以下の通りであることを見出した。
反応塔12内で銅精鉱の燃焼反応が完了しなかった場合、未燃精鉱はカラミ層上に堆積する。一部の未燃精鉱はカラミにより酸化され、二酸化硫黄(SO2)ガスを発生する。二酸化硫黄ガスが熔体内で発生すると、熔体が発泡してフォーミングが発生する。
(供給配管20)
フォーミングの発生を抑制するため、本実施形態に係る自熔製錬炉1は、セトラー13に溜められた熔体の表面に還元剤を直接供給する供給配管20を備えている。供給配管20はセトラー13に設けられており、還元剤を自熔製錬炉1の外部からセトラー13の内部に導入できるようになっている。
供給配管20から供給された還元剤は、熔体表面に支えられ、カラミに接した状態となる。この還元剤によりカラミが還元される。そうすると、未燃精鉱がカラミ層上に堆積したとしても、未燃精鉱がカラミにより酸化されにくく、二酸化硫黄ガスの発生が抑制される。また、カラミが還元されることにより、カラミ中のマグネタイト(Fe34)が酸化鉄(FeO)となり、カラミの粘性が低下する。そのため、二酸化硫黄ガスが発生したとしても、ガスが気相に抜けやすく、熔体が発泡しにくい。そのため、熔体にフォーミングが発生することを抑制できる。
また、還元剤は反応塔12を通ることなく、セトラー13に直接供給される。そのため、還元剤が反応塔12内で酸素を消費することがない。すなわち、反応塔12における銅精鉱の燃焼反応を阻害することがない。還元剤が反応用空気に含まれる酸素を消費しないので、製錬原料を効率よく反応させることができる。還元剤自体が消費されることもないので、還元剤の供給量を抑えることができる。
供給配管20の取り付け方法は特に限定されず、セトラー13の天井を貫通するように設ければよい。セトラー13の天井に設けられた点検孔から供給配管20を挿入してもよい。供給配管20の開口端は熔体の上方に位置させればよい。供給配管20の取り付け位置は特に限定されないが、反応塔12の直下および排煙道14の直下を避けることが好ましい。反応塔12の直下の空間は反応用空気の流れが強く、還元剤が舞い上がる恐れがあるからである。また、排煙道14の直下の空間は製錬ガスの流れが強く、還元剤が舞い上がる恐れがあるからである。供給配管20は反応塔12と排煙道14との間に設けることが好ましく、反応塔12寄りに設けることがより好ましい。セトラー13内のカラミは反応塔12側から排煙道14側へ流れているため、反応塔12寄りの位置に還元剤を供給すれば、還元剤がカラミの全体に行き渡るからである。供給配管20の本数は1本でもよいし、複数本でもよい。還元剤の供給は、自由落下による方法のほか、空気による圧送により行えばよい。
還元剤としては炭素系固形還元剤を用いることが好ましい。炭素系固形還元剤としてはコークスや木炭が挙げられる。コークスの中でも低水分品を用いることが好ましい。コークスの水分率が低ければ、水蒸気爆発が起きる可能性が低いからである。
炭素系固形還元剤の粒径は、篩の目開き径で100μm〜40mmであることが好ましく、200μm〜10mmであることがより好ましい。このような粒径であれば、小さすぎないため、炭素系固形還元剤が製錬ガスの流れの影響を受けにくく、意図した位置に炭素系固形還元剤を供給できる。また、粒径が大きすぎないため、炭素系固形還元剤が熔体の表面に広がりやすい。
炭素系固形還元剤の供給量C(kg/h)は、セトラー13内の熔体の表面積A(m2)に対する比率C/Aが0.5以上とすることが好ましい。そうすれば、炭素系固形還元剤が熔体の表面に広がって高い効果を発揮できる。また、炭素系固形還元剤が熔体の表面を埋め尽くす以上に供給してもカラミの還元に寄与しないので、操業コスト低減の観点からC/Aを5以下とすることが好ましい。
還元剤は、フォーミングの予防の観点からは常時供給することが好ましい。ただし、フォーミングの発生状況を観察しながら、供給量を調整してもよい。
セトラー13の気相の酸素分圧は10-10atm以上が好ましく、10-9atm以上がより好ましい。この条件であれば、反応塔12において銅精鉱の燃焼反応が適正に進行し、未燃精鉱の発生が少なくなるからである。供給配管20の開口端を熔体に近づけて還元剤を供給することで、還元剤が反応塔12内に混入しにくくなり、酸素分圧を上記の条件に維持できる。
また、セトラー13の気相の酸素分圧は10-8atm以下が好ましい。この条件であれば、還元剤が気相中の酸素により酸化されて、消費されるのを抑制できるからである。また、カラミが過酸化されることも抑制できる。反応塔12において銅精鉱と酸素とがよく接触するように精鉱バーナー11を調整したり、酸素の供給量を銅精鉱の量に見合った量に調整することで、酸素分圧を上記の条件に維持できる。
供給配管20に逆流防止用ガスを流してもよい。逆流防止用ガスはセトラー13の内部に向かって流される。これにより、供給配管20の開口端から、製錬ガスや未燃精鉱が逆流することを防止できる。逆流防止用ガスは還元剤を圧送するガスとして用いてもよい。逆流防止用ガスとしては、空気、窒素、酸素、二酸化炭素、一酸化炭素、製錬ガスなどを用いることができる。
供給配管20とセトラー13の構造体(例えば天井)との隙間をガスシールしてもよい。これにより、供給配管20とセトラー13の構造体との隙間から、製錬ガスが漏れ出ることを防止できる。シールガスとしては、空気、窒素、アルゴンなどを用いることができる。ガスシールに代えて、供給配管20とセトラー13の構造体との隙間に粘土などを詰めてシールしてもよい。
製錬ガスの流れの影響を受けにくくして、還元剤を意図した位置に供給するには、供給配管20の開口端を熔体の表面に近づけることが求められる。しかしこの場合、熔体の表面高さが変化して、供給配管20が熔体に接触する恐れがある。そこで、セトラー13に溜められた熔体の表面高さを測定する高さ測定手段と、供給配管20の高さを調整する高さ調整手段とを備えることが好ましい。熔体の表面高さに基づき供給配管20の高さを調整することで、供給配管20が熔体に接触することを防止できる。
高さ測定手段としては、マイクロ波レベル計などの非接触式のレベル計や、検尺棒(長尺の鉄棒)を用いることができる。
検尺棒を用いたセトラー13内の熔体の厚みの測定は、例えば以下のように行われる。
セトラー13の天井から検尺棒を挿入する。検尺棒の先端がセトラー13の底に達したら、検尺棒を抜き出す。検尺棒がセトラー13に挿入された長さから、セトラー13の底の高さが分かる。また、検尺棒に付着した熔体の長さから、熔体の厚みが分かる。さらに、検尺棒に付着した熔体の性状からカラミとカワとの境界を判別して、カラミとカワの各層の厚みを求める。カラミ層のうち、フォーミング層は泡が含まれておりポーラス状であるのに対して、フォーミングの無いカラミ層は緻密な組成である。この性状の違いからフォーミング層を判別して、フォーミング層の厚みを求める。
高さ調整手段としては、例えば供給配管20をウインチまたは電動ブロックで昇降させる構成が挙げられる。
つぎに、実施例を説明する。
(実施例1)
自熔製錬炉を用いて銅製錬を行った。反応塔の内法寸法は直径6m、高さ6.5mである。セトラーの内法寸法は幅6m、長さ20mである。したがって、熔体の表面積は120m2である。セトラーの天井に設けられた点検孔から供給配管を挿入した。供給配管の開口端と熔体との距離を約300mmとした。供給配管から炭素系固形還元剤としてコークスを供給量100〜150kg/hで供給した。
操業中、マイクロ波レベル計で熔体の表面高さを測定したところ、熔体の表面高さは安定していた。また、検尺棒でフォーミング層の厚みを1時間ごとに測定した。その結果を図2に示す。図2より、フォーミング層の厚みを約200mm以下に抑えられることが分かる。
(比較例1)
供給配管からコークスを供給せずに、実施例1と同様の条件で銅製錬を行った。
操業中、マイクロ波レベル計で熔体の表面高さを測定したところ、熔体の表面高さが上昇することが度々あった。また、検尺棒でフォーミング層の厚みを1時間ごとに測定した。その結果を図2に示す。図2より、フォーミング層の厚みが200mmを超えることがあり、最大で約400mmとなることが分かる。
以上より、熔体にコークスを供給することで、フォーミングの発生を抑制できることが確認された。
1 自熔製錬炉
11 精鉱バーナー
12 反応塔
13 セトラー
14 排煙道
20 供給配管

Claims (5)

  1. 銅精鉱を含む製錬原料を供給する精鉱バーナーと、
    前記精鉱バーナーから供給された前記製錬原料を熔融する反応塔と、
    前記製錬原料が熔融した熔体を溜めてカラミとカワとに比重分離するセトラーと、
    前記反応塔および前記セトラーで発生した製錬ガスを排出する排煙道と、
    前記セトラーに設けられ、前記セトラーに溜められた前記熔体の表面に還元剤を供給する供給配管と、を備える
    ことを特徴とする自熔製錬炉。
  2. 前記供給配管には逆流防止用ガスが流されている
    ことを特徴とする請求項1記載の自熔製錬炉。
  3. 前記供給配管と前記セトラーの構造体との隙間はガスシールされている
    ことを特徴とする請求項1または2記載の自熔製錬炉。
  4. 前記セトラーに溜められた前記熔体の表面高さを測定する高さ測定手段と、
    前記供給配管の高さを調整する高さ調整手段と、を備える
    ことを特徴とする請求項1、2または3記載の自熔製錬炉。
  5. 銅精鉱を含む製錬原料を熔融し、熔体をセトラーに溜めてカラミとカワとに比重分離するとともに、
    前記セトラーに溜められた前記熔体の表面に還元剤を直接供給する
    ことを特徴とする自熔製錬炉の操業方法。
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