JP2018024584A - ボルテゾミブを含有する医薬製剤 - Google Patents
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例えば、特許文献1には、ボルテゾミブのボロン酸とマンニトール等の糖類とのボロン酸エステル誘導体を開示しており、これを用いた医薬製剤が教唆されている。これは、ボルテゾミブ及びマンニトールのtert−ブタノール溶液又はtert−ブタノール含水溶液を凍結乾燥することで調製されている。また、特許文献2には、ボルテゾミブとトロメタミンを含む凍結乾燥製剤が記載されている。これは、強いB−N結合を有するボルテゾミブのトロメタミン塩であることが記載されている。特許文献3には、ボルテゾミブ誘導体の凍結乾燥製剤であって、シクロデキストリン及び単糖を有する増量剤と界面活性剤とからなる群から選択される医薬製剤が記載されている。
ボルテゾミブは安定性に問題があるため、通常は凍結乾燥製剤を検討されているが、特許文献4には、プロピレングリコールを添加することにより安定化された水溶液製剤が開示されている。また、特許文献5には、クエン酸等のα‐ヒドロキシ‐β‐カルボン酸とボルテゾミブとの酸無水物‐エステル誘導体が開示されており、それを医薬製剤にできることが記載されている。
このように、ボロン酸はアルコールやカルボン酸と反応してボロン酸エステルや酸無水物を形成することが知られている。このようなボロン酸エステルや酸無水物は、水溶液中で加水分解を受けてボルテゾミブが再構成される。また現在販売されているボルテゾミブ凍結乾燥製剤は凍結乾燥ケーキの濡れ性が悪く、非特許文献1には溶解に最大120秒程度要することが記載されている。そのため安定であり、再溶解性が良好である医薬製剤が望まれている。
[1] (A)ボルテゾミブ又はその医薬的に許容される塩、若しくはボルテゾミブの誘導体、及び(B)グリセリン、を含有する医薬製剤。
[2] (C)ニコチン酸アミドを含有する、[1]に記載の医薬製剤。
[3] (D)pH調整剤を含み、その(D)pH調整剤が塩基性化合物と酸性化合物からなり、塩基性化合物が1当量のとき酸性化合物の当量が1〜4当量である[1]又は[2]に記載の医薬製剤。
[4] (D)pH調整剤を含み、(A)ボルテゾミブ濃度として1〜2.5mg/mLとしたときの医薬製剤水溶液のpHが4.0〜7.0である、[1]〜[3]に記載の医薬製剤。
[5] 凍結乾燥製剤である、[1]〜[4]の何れか一項に記載の医薬製剤。
本発明のボルテゾミブは、医薬的に許容される適当な塩であっても良い。医薬的に許容される塩とは、例えば、アルカリ金属塩(ナトリウム、カリウムなど)、アルカリ土類金属塩(マグネシウム、カルシウムなど)、アンモニウム塩及び医薬的に許容可能なアミンの塩(テトラメチルアンモニウム、トリエチルアミン、メチルアミン、ジエチルアミン、シクロペンチルアミン、ベンジルアミン、フェネチルアミン、ピペリジンモノエタノールアミン、トリス(ヒドロキシメチル)アミン、リジン、アルギニン及びN−メチル−D−グルカン)が含まれる。
本発明において、ボルテゾミブ又はその医薬的に許容される塩、若しくはボルテゾミブの誘導体(A)は、ボルテゾミブ、ボルテゾミブの塩、又はボルテゾミブの誘導体の何れか1種の化学種であっても良く、2種以上の混合物であっても良い。また、一部が、ボルテゾミブの3量体等の自己脱水縮合体を含んでいても良い。しかしながら、該3量体は難溶性であり、水溶液として投与する際に不溶性異物となるため、該3量体等の自己脱水縮合物は含まないことが好ましい。当該(A)成分としては、医薬品用の有効成分として用いることができる品質レベルである事が好ましい。
本発明の医薬製剤にグリセリン(B)を用いる場合、有効成分である(A)ボルテゾミブ又はその医薬的に許容される塩、若しくはボルテゾミブの誘導体が1質量部に対し、(B)グリセリンが0.01〜10質量部を含有することが好ましい。好ましくは、(A)成分が1質量部に対して、(B)グリセリンは0.1〜2質量部である。
本発明の医薬製剤にニコチン酸アミド(C)を用いる場合、有効成分である(A)ボルテゾミブ又はその医薬的に許容される塩、若しくはボルテゾミブの誘導体が1質量部に対し、(C)ニコチン酸アミドが0.1〜30質量部を含有することが好ましい。好ましくは、(A)成分が1質量部に対して、(C)ニコチン酸アミドは1〜15質量部である。
該(D)pH調整剤に使用される塩基性化合物及び酸性化合物は、医薬製剤において一般的に使用されているものであり、本発明の医薬製剤に悪影響を及ぼさないものであれば特に限定されない。塩基性化合物としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、リン酸二水素ナトリウム、リン酸一水素二ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等の無機酸のアルカリ土類金属塩等を挙げることができる。また塩基性化合物として添加剤を使用してもよく、その添加剤としてはグアニジノ基を有する化合物、例えばグアニジン又はその塩、クレアチン、クレアチニン、アルギニン等を挙げることができる。酸性化合物としては、塩酸、リン酸、ホウ酸、炭酸等の無機酸、クエン酸、酒石酸、アスコルビン酸、乳酸及び酢酸等の有機酸が挙げられる。また、前記塩基性化合物と酸性化合物を混合してpH調整した緩衝剤を用いても良い。緩衝剤としては、リン酸緩衝剤、酢酸緩衝剤、クエン酸緩衝剤、酒石酸緩衝剤、乳酸緩衝剤、コハク酸緩衝剤、TRIS緩衝剤、グリシン緩衝剤及びヒスチジン緩衝剤等が挙げられる。これらのpH調整剤は単独で用いても良く、また二種以上を組み合わせて用いても良い。
本発明における(D)pH調整剤としては、好ましくは水酸化ナトリウム、アルギニン、塩酸、リン酸又はその塩(リン酸二水素ナトリウム、リン酸一水素二ナトリウム等)である。
(D)pH調整剤は、医薬製剤を製造する際に、溶液のpHを目的のpHに調整することができればよく、適量で使用される。本発明の医薬製剤の製造に使用されるpH調整剤の配合量は、pHを上記の範囲に調整できれば特に限定されない。通常、pH調整剤はpHを目的の範囲に調整できるように適量使用される。
等張化剤としては塩化ナトリウム等の塩類、マンニトール、ラクトース、スクロース、マルトース、トレハロース、キシリトール、ソルビトール、イノシトール、グルコン酸ナトリウム、メグルミン、シクロデキストリン等の糖又は糖アルコール及び尿素等が挙げられる。
また、賦形剤としても、塩化ナトリウム等の塩類、マンニトール、ラクトース、スクロース、マルトース、トレハロース、キシリトール、ソルビトール、イノシトール、グルコン酸ナトリウム、メグルミン、シクロデキストリン等の糖又は糖アルコールを用いることができる。
溶解補助剤としては、チオグリセリン、プロピレングリコール等のポリオール類、ポリソルベート、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレンヒマシ油等のポリエーテル系化合物等を挙げることができる。
抗酸化剤としては、没食子酸プロピル、アスコルビン酸、トコフェロールポリエチレングリコールスクシナート、L‐システイン等が挙げられる。
他の添加剤の含有量は、ボルテゾミブの安定性を考慮して適切な量を適宜設定して用いられるが、有効成分であるボルテゾミブ又はその誘導体(A)1質量部に対し、それぞれ30質量部以下で添加して用いることが好ましい。より好ましくは、ボルテゾミブ1質量部に対し、それぞれ15質量部以下の適用量である。
前記成分(A)及び(B)、並びに任意の成分(C)、(D)及びその他の添加剤を含有する溶液を調製するための溶剤は、これらの成分を溶解できて、医薬的に許容される溶剤であれば特に限定されるものではなく、適宜選択して適当な溶剤を用いて良い。例えば、水、エタノール、イソプロパノール、tert−ブタノール、グリセリン、プロピレングリコール、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、ポリエチレングリコール(マクロゴール)、ポリソルベート(Tween)、クレモホール等が挙げられ、これらの単独使用若しくは、2種以上の混合溶剤として用いても良い。
凍結乾燥製剤を調製する場合、本発明の医薬製剤を含む溶液を調製するための前記溶剤は、製剤調製工程を考慮すると融点−40℃以上であることが好ましい。例えば、水、tert−ブタノール、グリセリン、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド等を用いることが好ましい。水又は水と有機溶剤の水系混合溶剤を用いることがより好ましい。この溶剤を用いた当該溶液を凍結乾燥し、無菌的に封止することで凍結乾燥製剤を調製することができる。
グリセリン18mg、ニコチン酸アミド460mgを24mLの注射用水に溶解し、アルギニン40mgを加えて溶解し、水溶液のpHを約10.5としたものにボルテゾミブ60mgを加えて溶解した。0.5Mのリン酸溶液を480μL加えてpH5.6に調整し、注射用水を加えて全量を60mLとした。その溶液はpH5.6であった。
この溶液を孔径0.22μmのメンブレンフィルターを用いて無菌ろ過を行い、バイアルにろ過した液を3mL充填し、凍結乾燥を行い、実施例1に係る凍結乾燥製剤を調製した。
グリセリン18mg、尿素1000mgを24mLの注射用水に溶解し、5Mの水酸化ナトリウムを100μL加えて水溶液のpHを11.0とした液にボルテゾミブ60mgを加えて溶解した。この水溶液を0.5Mのリン酸溶液を400μL加えてpH5.3に調整し、注射用水を加えて全量を60mLとした。その溶液はpH5.3であった。
この溶液を孔径0.22μmのメンブレンフィルターを用いて無菌ろ過を行い、バイアルにろ過した液を3mL充填し、凍結乾燥を行い、実施例2に係る凍結乾燥製剤を調製した。
ニコチン酸アミド500mgを24mLの注射用水に溶かし、アルギニン40mgを加えて溶解し、水溶液のpHを10.5とした液にボルテゾミブ60mgを加えて溶解した。この水溶液を0.5Mのリン酸溶液を480μL加えてpH5.5に調整し、注射用水を加えて全量を60mLとした。その溶液はpH5.5であった。
この溶液を、孔径0.22μmのメンブランフィルターを用いて無菌ろ過を行い、バイアルにろ過した液を3mL充填し、凍結乾燥を行い、比較例1に係る凍結乾燥製剤を調製した。
PEG4000 800mgとニコチン酸アミド420mgを24mLの注射用水に溶解し、アルギニン40mgを加えて溶解し、水溶液のpHを約10.5とした液にボルテゾミブ60mgを加え溶解した。この水溶液を0.5Mのリン酸溶液を450μL加えてpH5.6に調整し、注射用水を加えて全量を60mLとした。その溶液はpH5.6であった。
この溶液を孔径0.22μmのメンブレンフィルターを用いて無菌ろ過を行い、バイアルにろ過した液を3mL充填し、凍結乾燥を行い、比較例2に係る凍結乾燥製剤を調製した。
EDTA2Na180mg、ニコチン酸アミド420mgを24mLの注射用水に溶解し、アルギニン40mgを加えて溶解し、5Mの水酸化ナトリウム溶液を200μL加えてpH11.5とした液にボルテゾミブ60mgを加え溶解した。この溶液を0.5Mのリン酸溶液を1.5mL加えてpH5.0に調整し、注射用水を加えて全量を60mLとした。その溶液はpH5.0であった。
この溶液を孔径0.22μmのメンブレンフィルターを用いて無菌ろ過を行い、バイアルにろ過した液を3mL充填し、凍結乾燥を行い、比較例3に係る凍結乾燥製剤を調製した。
安息香酸Na6mg、ニコチン酸アミド420mgを24mLの注射用水に溶解し、アルギニン40mgを加えて溶解し、pH10.5とした液にボルテゾミブ60mgを加え溶解した。この溶液を0.5Mのリン酸溶液を480μL加えてpH5.2に調整し、注射用水を加えて全量を60mLとした。その溶液はpH5.6であった。
この溶液を孔径0.22μmのメンブレンフィルターを用いて無菌ろ過を行い、バイアルにろ過した液を3mL充填し、凍結乾燥を行い、比較例4に係る凍結乾燥製剤を調製した。
ポリソルベート80 60mg、ニコチン酸アミド420mgを24mLの注射用水に溶解し、アルギニン40mgを加えて溶解し、pH10.5とした液にボルテゾミブ60mgを加え溶解した。この溶液を0.5Mのリン酸溶液を480μL加えてpH5.6に調整し、注射用水を加えて全量を60mLとした。その溶液はpH5.7であった。
この溶液を孔径0.22μmのメンブレンフィルターを用いて無菌ろ過を行い、バイアルにろ過した液を3mL充填し、凍結乾燥を行い、比較例5に係る凍結乾燥製剤を調製した。
実施例1、比較例1〜5で得られた凍結乾燥製剤を用いて溶解性試験を行った。
それぞれのサンプルに生理食塩水1.2mLをバイアルに加え、凍結乾燥ケーキが液になじむように優しく振り混ぜ、静置し、完全に溶解するまでの時間を測定した。結果を表2に示す。
[表2]
実施例1及び実施例2、比較例1〜5の注射用凍結乾燥製剤を、60℃の条件下にて1週間保存した。各製剤について、ボルテゾミブ由来の類縁物質をHPLCにて分析した。ボルテゾミブ類縁物質のHPLC分析条件を下に示した。
実施例及び比較例のボルテゾミブ分解由来の類縁物質を、以下の液体クロマトグラフィー(HPLC)条件にて分析した。
カラム:Waters Symmetry Shield RP18 5μm,4.6mm×250mm
カラム温度:35℃
移動相A:水/アセトニトリル/ギ酸混液(715:285:1)
移動相B:メタノール/水/ギ酸混液(800:200:1)
送液量:1.0mL/min.
波長:270nm
移動相の送液:表3に示す条件で送液した。
Claims (5)
- (A)ボルテゾミブ又はその医薬的に許容される塩、若しくはボルテゾミブの誘導体、及び(B)グリセリンを含有する医薬製剤。
- (C)ニコチン酸アミドを含有する請求項1に記載の医薬製剤。
- (D)pH調整剤を含み、その(D)pH調整剤が塩基性化合物と酸性化合物からなり、塩基性化合物が1当量のとき酸性化合物の当量が1〜4当量である請求項1又は2に記載の医薬製剤。
- (D)pH調整剤を含み、(A)ボルテゾミブ濃度として1〜2.5mg/mLとしたときの医薬製剤水溶液のpHが4.0〜7.0である、請求項1〜3に記載の医薬製剤。
- 凍結乾燥製剤である、請求項1〜4の何れか一項に記載の医薬製剤。
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