JP2018023375A - 配向細胞集合体、その製造方法及びこれに使用するための支持ロッド - Google Patents

配向細胞集合体、その製造方法及びこれに使用するための支持ロッド Download PDF

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Abstract

【課題】細胞が配向性有し、可塑性が高い配向細胞集合体、その製造方法及びこれに使用するためのロッドを提供する。【解決手段】本発明は、細胞が所定の方向に配向されている配向細胞集合体において、配向細胞集合体の二つの端部のそれぞれが、2本の平行状に配置され、表面層が繊維糸で構成された支持ロッドのそれぞれに絡みついている配向細胞集合体に関する。本発明の配向細胞集合体は、支持ロッド(10a,10b)を2本平行状に保持し、前記2本の支持ロッド(10a,10b)に未配向細胞集合体(14)の端部を絡ませ、平行状に保持した状態で2本の支持ロッドの距離を離すことにより(17a、17b)、前記未配向細胞集合体(14)を伸展させ、その後2本の支持ロッド間(10a,10b)の距離を元に戻すことを繰り返すことで、細胞を所定の方向に配向させて作製することができる。【選択図】図5

Description

本発明は、細胞を所定の方向に配向させた配向細胞集合体、その製造方法及びこれに使用するための支持ロッドに関する。
胚性幹細胞(ES細胞)や人工多能性幹細胞(iPS)等の幹細胞、体細胞等の細胞は、培養によって増殖させることが一般的であるが、増殖後の細胞を回収しやすくするため、例えば、特許文献1では、温度応答性細胞培養基材を用いることで、増殖後の細胞をシート状の細胞シートとして回収することが行われている。通常、特許文献1のようにシート状に回収した細胞シートにおいて、細胞は未配向状態である。しかし、生体の組織において、細胞は配向した状態で機能しており、生体内に移植する際や疾患モデル等として用いる場合は、細胞シート中の細胞が所定の方向に配向しつつ、組織の動きに追従し得ることが求められる。例えば、特許文献2では、腱細胞を伸縮可能な細胞培養基材表面上で培養し、培養期間中、当該基材を延伸、収縮、或いはそれらを繰り返すことで配向性を有し、強度が高い腱細胞シートを得ることが記載されている。
特開平05−192138号公報 特開2013−94161号公報
しかし、特許文献2のように、細胞培養基材を延伸及び/又は収縮させても、基材上の細胞シートの延伸及び/又は収縮が直接的に行われず、細胞の配向及び強度の改善は十分ではない恐れがあった。
本発明は、前記従来の問題を解決するため、細胞が配向性有し、可塑性が高い配向細胞集合体、その製造方法及びこれに使用するためのロッドを提供する。
本発明は、細胞が所定の方向に配向されている配向細胞集合体において、前記配向細胞集合体の二つの端部のそれぞれが、2本の平行状に配置され、繊維糸で構成された支持ロッドのそれぞれに絡みついていることを特徴とする配向細胞集合体に関する。
本発明は、また、細胞が所定の方向に配向した配向細胞集合体の製造方法であって、繊維糸で構成された支持ロッドを2本平行状に保持し、前記平行状に保持された2本の支持ロッドのそれぞれに、未配向細胞集合体の二つの端部をそれぞれ絡ませ、平行状に保持した状態で、前記2本の支持ロッド間の距離を離すことにより、未配向細胞集合体を伸展させ、その後前記2本の支持ロッド間の距離を元に戻すことを繰り返すことで、細胞を所定の方向に配向させて配向細胞集合体を得ることを特徴とする配向細胞集合体の製造方法に関する。
本発明は、また、前記の配向細胞集合体の製造方法に使用するための支持ロッドであって、前記支持ロッドは、繊維糸で構成された多層構造ロッドであることを特徴とする支持ロッドに関する。
本発明は、細胞が配向性有し、可塑性が高い配向細胞集合体を提供できる。細胞が所定の方向に配向し、可塑性が高いことから、本発明の配向細胞集合体は、移植用又は疾患モデル用として好適に用いることができる。また、本発明の配向細胞集合体の製造方法及びこれに使用するための支持ロッドによると、未配向細胞集合体における細胞を所定の方向に効率よく配向させることができる。すなわち、繊維糸で構成された支持ロッド、好ましくは多層構造ロッドを使用するため、未配向細胞集合体が支持ロッドに絡みやすく、未配向細胞集合体が、2本の平行状に保持された支持ロッド間の距離を離すこと及び支持ロッド間の距離を元に戻すことを繰り返すことによる伸展刺激に耐えることができる。また2本の支持ロッドを平行状に保持して伸展刺激を付与するため、前記未配向細胞集合体は破れずに伸展刺激に耐えることができる。これにより、未配向細胞集合体における細胞を所定の方向に効率よく配向させ、且つ得られた配向細胞集合体の可塑性を高めることができる。
図1は本発明の一実施形態における支持ロッド(多層構造ロッド)の模式的側面図である。 図2は同、支持ロッド(多層構造ロッド)の製造装置を示す模式的説明図である。 図3は、支持ロッド(多層構造ロッド)と補助バーを連結した状態を示す模式的説明図である。 図4A−Fは、2枚以上の未配向細胞シートの積層と、2本の平行状に配置された支持ロッド(多層構造ロッド)に未配向細胞シートを絡ませた状態を示す模式的工程図である。 図5は、未配向細胞シートに伸展刺激を付与する状態を示す模式的説明図である。 図6は、本発明の一実施形態の配向細胞シートを光学カメラにて撮影した写真である。 図7は、比較例1の未配向細胞シートを光学カメラにて撮影した写真である。 図8は、本発明の一実施形態の配向細胞シートの共焦点顕微鏡観察写真(倍率200)であり、右下図に伸展方向を示す。 図9は同、トレース図である。 図10は、比較例1の未配向細胞シートの共焦点顕微鏡観察写真(倍率200)である。 図11は同、トレース図である。 図12は、各種被覆糸における細胞被覆率を示すグラフである。 図13は、実施例3〜4の配向細胞シート及び比較例3〜6の非配向細胞シートのヤング率を示すグラフである。 図14は、本発明の一実施形態の配向細胞シートの共焦点顕微鏡観察写真(倍率200)である。 図15は、同トレース図である。 図16は、比較例5の未配向細胞シートの共焦点顕微鏡観察写真(倍率200)である。 図17は、同トレース図である。 図18は、本発明の一実施形態のロール状の配向細胞集合体を光学カメラにて撮影した写真である。 図19は、本発明の一実施形態のロール状の配向細胞集合体の共焦点顕微鏡観察写真(倍率200)である。 図20は、同トレース図である。
本発明者らは、繊維糸で構成された支持ロッド、好ましくは多層構造ロッドを用い、該支持ロッドを2本平行状に配置し、前記平行状に保持された2本の支持ロッドのそれぞれに、未配向細胞集合体の両端部をそれぞれ絡ませた後、2本の支持ロッド間の距離を離すことと戻すことを繰り返して未配向細胞集合体に伸展刺激を付与することで、細胞が所定の方向に配向するとともに、得られた配向細胞集合体の可塑性が高まることを見出し、本発明に至った。本発明において、「細胞集合体」は、細胞同士が細胞間結合で連結された細胞集合体をいう。前記細胞集合体は、その形状は特に限定されず、例えば、シート状、ロール状、フィラメント状、ネット状等のいずれの形状であってもよい。本発明において、「細胞シート」は、細胞同士が細胞間結合で連結されたシート状の細胞集合体をいう。また、「未配向細胞集合体」は、細胞集合体中の細胞が配向性を有しないことを意味する。また、「配向細胞集合体」は、細胞集合体中の細胞が配向性を有することを意味する。また、「細胞集合体と支持ロッドが絡んでいる」とは、細胞が少なくとも支持ロッドの表面で増殖し、細胞集合体と支持ロッドが接着していることを意味する。本発明の実施形態において、細胞集合体を共焦点顕微鏡で観察することで、細胞集合体中の細胞の配向性を確認することができる。
前記細胞は、動物細胞であればよく、その由来は特に限定されない。動物としては、ヒト、サル、チンパンジー等の霊長類、マウス、ラット、ハムスター等の齧歯類、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ブタ等の有蹄類等が挙げられる。前記細胞の種類も特に限定されず、例えば、血管内皮細胞等の内皮細胞、骨格筋細胞、平滑筋細胞、心筋細胞、神経細胞、腱細胞等の体細胞や、iPS細胞、ES細胞等の幹細胞等が挙げられる。また、前記細胞は、ES細胞及びiPS細胞等の幹細胞から分化誘導された種々の細胞等を用いても良い。前記細胞シート等の細胞集合体は、二種以上の細胞を含む組織シート等の組織集合体であってもよい。組織シートとしては、例えば、心筋細胞、血管内皮細胞及び血管壁細胞を含む心臓組織シート等が挙げられる。前記心臓組織シートは、心臓を構成する細胞に分化する効率が高い観点から、ヒトiPS細胞由来心臓組織シートであることが好ましい。
本発明の一実施形態において、前記配向細胞集合体(配向細胞シート等)は、前記支持ロッドに絡みついている端部の幅がその他の部分の幅より大きい。また、前記配向細胞集合体は、前記支持ロッドに絡みついていない二つの端部は、それぞれ、中央部分が凹んでいる湾曲状であってもよい。このような形状を有することにより、前記配向細胞集合体は、前記支持ロッド間を離す方向に引っ張る際の破断伸展率が高く、可塑性が高まっている。前記配向細胞集合体は、細胞が配向性を有し、可塑性が高いことにより、例えば、生体内に移植した際に、移植先の組織の動きに追従しやすく、移植先の組織に生着しやすい。本発明において、細胞集合体の幅方向は、支持ロッドの長軸方向に平行する方向をいい、細胞集合体の長さ方向は、支持ロッドの長軸方向に直交する方向をいう。前記配向細胞集合体は、特に限定されないが、前記支持ロッドに絡みついていない二つの端部から中央に向かって幅が徐々に小さくなってもよく、中央部の幅が最も小さくてもよい。また、特に限定されないが、前記支持ロッドに絡みついている二つの端部の幅(Wt)は、中央部の幅(Wc)の1〜5倍であってもよく、1.1〜4.5倍であることが好ましく、1.1〜4倍であることがより好ましい。
前記配向細胞集合体(配向細胞シート等)は、前記支持ロッド間を離す方向に引っ張る際の破断伸展率が70%以上であることが好ましく、より好ましくは100%以上である。破断伸展率が前述の範囲内であると、生体内に移植した際に、移植先の組織の動きに追従しやすく、移植先の組織に生着しやすい。本発明の実施形態において、破断伸展率は後述するとおりに測定することができる。
前記配向細胞集合体が配向細胞シートの場合、前記配向細胞シートは、一層の細胞シートであってもよく、二層以上の細胞シートを含む多層細胞シートであってもよい。強度を高める観点、及び移植先において、長期にわたって十分な細胞が生着しやすい観点から、多層細胞シートであることが好ましい。多層細胞シートの場合、全ての細胞シートに酸素や栄養分が行きわたりやすい観点から、細胞シートの間には、生体吸収性物質で構成されたスペーサーが配置されていることが好ましい。前記生体吸収性物質は、生体吸収性及び生体適合性を有する物質であればよく、特に限定されない。例えば、ゼラチンハイドロゲル、コラーゲンゲル、フィブリンゲル、PLGA(乳酸・グリコール酸共重合体)ナノ粒子等を用いることができる。ゼラチンハイドロゲルは、特に限定されないが、例えば、Tabata, Y. & Nagano, A(Biodegradation of hydrogel carrier incorporating fibroblast growth factor. Tissue Eng. 5, 127-138,1999)に記載の方法で作製したゼラチンハイドロゲル粒子を用いることができる。
前記配向細胞シートが心筋細胞、血管内皮細胞及び血管壁細胞を含む心臓組織シートである場合、少なくとも心筋細胞が所定の方向に配向していることが好ましく、心筋細胞、血管内皮細胞及び血管壁細胞が所定の方向に配向していることがより好ましい。移植先において、心臓の動きに追従しやすい。また、前記心臓組織シートは、移植した後、長期にわたって十分な細胞が心臓に生着する観点から、二層以上の細胞シートを含むことが好ましく、三層以上の細胞シートを含むことがより好ましく、五層以上の細胞シートを含むことがさらに好ましい。
本発明の配向細胞集合体(配向細胞シート等)は、繊維糸で構成された支持ロッドを2本平行状に保持し、前記平行状に保持された2本の支持ロッドのそれぞれに、未配向細胞集合体(未配向細胞シート等)の二つの端部をそれぞれ絡ませ、平行状に保持した状態で、前記2本の支持ロッド間の距離を離すことと戻すこと(以下において、「往復運動」とも記す。)を繰り返して、未配向細胞集合体(未配向細胞シート等)に伸展刺激を付与することで、細胞を所定の方向に配向させることで作製することができる。
前記支持ロッドは、繊維糸で構成されていればよく、特に限定されない。例えば、組紐、編物、ロープ等を用いることができる。細胞との接着を高める観点から、前記支持ロッドは、多層構造ロッドであることが好ましく、芯糸の周囲に被覆糸を製紐した組紐及び芯糸の周囲に被覆糸を編成した編物からなる群から選ばれる少なくとも一つの多層構造ロッドであることがより好ましい。また、芯糸と被覆糸が一体化されていることが好ましい。このような構成であることにより、細胞が多層構造ロッドの表面のみではなく、内部までに侵入して増殖しやすく、細胞集合体(細胞シート等)と多層構造ロッドの接合が強固になる。また、この構成により、曲げ弾性が高く、たわみにくくなり、細胞集合体(細胞シート等)に均一な伸展刺激を付加でき、細胞集合体(細胞シート等)が切れる等の不都合を防ぐことができる。前記繊維糸、芯糸及び被覆糸は、フィラメント糸を使用するのが好ましい。フィラメント糸は毛羽等の脱落が無く、汚染を防止できる。芯糸は、特に限定されないが、例えば、モノフィラメントを用いることができる。芯糸に用いるモノフィラメント糸の好ましい直径は0.06〜0.35mmである。これにより、芯糸と被覆糸を強力に一体化できる。被覆糸に用いるフィラメントには、モノフィラメント及び/又はマルチフィラメントを使用できる。例えば、単糸直径0.001〜0.040mmのモノフィラメントを10〜100本束ねたマルチフィラメント、単糸直径0.06−0.35mmのモノフィラメント、或いは、単糸直径0.001〜0.040mmのモノフィラメントを10〜100本束ねたマルチフィラメントと単糸直径0.06〜0.35mmのモノフィラメントを組み合わせて用いることができる。マルチフィラメントの場合、多層構造ロッドの表面積が増え、より強固に細胞集合体(細胞シート等)が多層構造ロッドに絡み付くため好ましい。また、モノフィラメントの場合、細胞が多層ロッド内部まで侵入できる隙間をもたせることができるため好ましい。
前記多層構造ロッドは、芯糸の周囲に被覆糸を製紐した角打ち紐であるのが好ましい。これにより、芯糸と被覆糸を強力に一体化できる。角打ち紐の場合、被覆糸は4〜12本で組紐を構成するのが好ましく、さらに好ましくは4〜8本である。前記の範囲であれば、フィラメント糸の密度の高い紐が得られ、芯糸と被覆糸が強力に一体化した紐が得られる。前記被覆糸としては、上述したとおり、モノフィラメントを用いても良く、マルチフィラメントを用いても良く、モノフィラメント及びマルチフィラメントを併用しても良い。
前記支持ロッドは、直径0.4〜2mmであるのが好ましく、より好ましくは0.5〜1.5mmである。前記の範囲であると未配向細胞集合体(未配向細胞シート等)が絡みやすい。また、前記支持ロッドのたわみ量は、0〜1mmであることが好ましい。本発明において、たわみ量とは、長さ22mmの支持ロットを、無張力となるよう両端を固定し、支持ロットの中心部に10gの荷重をかけた際のたわみ量を、M型標準ノギスノ(株式会社ミツトヨ製:530−100 N10R)で測定したものである。
前記支持ロッドは、特に限定されず、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、6ナイロン、6,6ナイロン、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン及びポリジオキサノン等で構成することができる。ポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等が挙げられる。前記配向細胞集合体(配向細胞シート等)を移植に用いる場合は、前記支持ロッドは、生体吸収性高分子で構成されることが好ましい。すなわち、前記支持ロッドを構成するフィラメント糸は、生体吸収性高分子で構成された生体吸収性糸であることが好ましい。生体吸収性高分子としては、特に限定されないが、例えば、ポリグリコール酸、ポリL−乳酸(PLLA)、ポリカプロラクトン、ポリジオキサノン及び乳酸とグリコール酸の共重合体などの生体吸収性合成高分子や、コラーゲン、ゼラチン、グリコサミノグリカン、キチン、キトサン、ヒアルロン酸及びシルク等のポリペプチド等の生体吸収性天然高分子が挙げられる。このような生体吸収性高分子は、医療用途で販売される材料であるため、コンタミネーションが少なく、安全性が高い。また生体吸収性であることから、支持ロッドに絡んでいる配向細胞集合体(細胞シート等)をそのまま体内に移植することが可能である。また、生体吸収性高分子で構成された生体吸収性糸は、細胞との親和性が高く、細胞集合体(細胞シート等)が絡みやすい。
前記支持ロッドは、細胞との親和性を高める観点から、表面に細胞外マトリックス成分や血清をコーティングされていることが好ましい。細胞外マトリックス成分としては、特に限定されないが、例えば、コラーゲン、ゼラチン、グリコサミノグリカン、キチン、キトサン、ヒアルロン酸、フィブロネクチン、ポリリジン、フィブリン、アルギン酸等の生体吸収性天然高分子を用いることができる。血清としては、特に限定されないが、例えば、胎仔ウシ血清(ウシ胎児血清とも称される。)等を用いることができる。これにより支持ロッドに細胞集合体(細胞シート等)がさらに絡みやすくなる。細胞外マトリックス成分や血清のコーティング量は、支持ロッド全体を100質量部としたとき、1〜10質量部が好ましい。
前記平行状に保持された2本の支持ロッドにおいて、一方の支持ロッドの両端部は、他方の支持ロッドの両端部と、2本の平行状に保持された補助バーによって連結されていることが好ましい。これにより、前記2本の支持ロッドを平行状態に保ちやすい。補助バーの材質は、支持ロッドとの接着性の観点から、同素材であることが好ましい。補助バーは、モノフィラメントが好ましい。モノフィラメントであることにより、2本の支持ロッドを往復運動させる際には、補助バーを容易に取り外し又はカットできる。
未配向細胞集合体は、細胞を培養し、培養後の細胞集合体を回収する方法で作製することができる。未配向細胞シートは、細胞を培養し、培養後の細胞をシート状に回収する方法で作製することができる。例えば、細胞を温度応答性材料が被覆された培養皿等の細胞培養基材を用いて培養することで、培養後の細胞をシート状の回収することができる。温度応答性材料としては、特に限定されず、例えば、ポリ−N−イソプロピルアクリルアミド(PIPAAm)、ポリ−N−n−プロピルアクリルアミド、ポリ−N−n−プロピルメタクリルアミド、ポリ−N−エトキシエチルアクリルアミド、ポリ−N−テトラヒドロフルフリルアクリルアミド、ポリ−N−テトラヒドロフルフリルメタクリルアミド、及び、ポリ−N,N−ジエチルアクリルアミド等が挙られる。細胞への悪影響がなく、細胞シートの形成及びその剥離が容易である観点から、PIPAAm、ポリ−N−n−プロピルメタクリルアミド、ポリ−N,N−ジエチルアクリルアミドを好ましく用いることができ、特に、PIPAAmを好ましく用いることができる。前記温度応答性材料は、一種を単独で用いても良く、二種以上を組合わせて用いても良い。細胞の付着を良好にする観点から、温度応答性材料が被覆された細胞培養基材は、さらに表面に上述した生体吸収性天然高分子がコーティングされていてもよい。培地及び培養条件とは、細胞の種類に合わせて適宜決めればよい。例えば、未配向細胞シートがヒトiPS細胞由来心臓組織シートの場合、特に限定されないが、例えば、Masumotoら(SCIENTIFIC REPORTS, 2014, 4:6716)に記載の方法で作製することができる。また、未配向細胞シートをロール状に丸めることで、ロール状の非配向細胞集合体とすることができ、未配向細胞シートを細長く伸ばすことや、任意の大きさに切ることでフィラメント状の非配向細胞集合体とすることができる。さらにフィラメント状にした未配向細胞シートを編み目状に積層することで、フィラメント状の未配向細胞シートの接点同士が接着し、ネット状の非配向細胞集合体とすることができる。
前記未配向細胞シートが一層の細胞シートである場合、前記未配向細胞シート上に2本の支持ロッドを平行になるように配置し、未配向細胞シートの二つの端部のそれぞれを、平行状に保持されている2本の支持ロッドのそれぞれに巻き付け、適切な培地中で、例えば、35〜40℃で、15〜75分間培養することで、前記未配向細胞シートの二つの端部のそれぞれを、平行状に保持されている2本の支持ロッドのそれぞれに絡ませることができる。その後、適切な培地中で、例えば、35〜40℃で、72〜192時間培養しながら、伸展刺激によるトレーニングを行うことができる。非配向細胞集合体がロール状又はフィラメント状である場合も、非配向細胞集合体上に2本の支持ロッドを平行になるように配置し、非配向細胞集合体の二つの端部のそれぞれを、平行状に保持されている2本の支持ロッドのそれぞれに巻き付け、適切な培地中で、例えば、35〜40℃で、15〜75分間培養することで、非配向細胞集合体の二つの端部のそれぞれを、平行状に保持されている2本の支持ロッドのそれぞれに絡ませることができる。その後、適切な培地中で、例えば、35〜40℃で、72〜192時間培養しながら、伸展刺激によるトレーニングを行うことができる。
前記未配向細胞シートが二層以上の細胞シートを含む多層細胞シートの場合、2枚以上の未配向細胞シートの積層は、特に限定されないが、例えば、Matsuoら(SCIENTIFIC REPORTS, 2015, 5:16842)に記載の方法に準じて行うことができる。具体的には、2枚の未配向細胞シートの積層と未配向細胞シートの端部を支持ロッドに絡ませることは、下記のように行うことができる。まず、一層目の未配向細胞シート上にゼラチンハイドロゲル等の生体吸収性物質を配置して、例えば、35〜40℃で、15〜75分間放置することでスペーサーを形成する。次に、スペーサーの上に2本の支持ロッドを平行になるように配置し、一層目の未配向細胞シートの両端部を平行状に保持されている2本の支持ロッドのそれぞれに巻き付ける。次に、その上に、二層目の未配向細胞シートを培地とともに加え、細胞シートが広がった後、培地を除去する。次に、一層目と二層目の未配向細胞シートの両端部を平行状に保持されている2本の支持ロッドのそれぞれに巻き付け、適切な培地中で、例えば、35〜40℃で、15〜75分間培養することで、二層目の細胞シートの二つの端部のそれぞれを、平行状に保持されている2本の支持ロッドのそれぞれに絡ませる。その後、適切な培地中で、例えば、35〜40℃で、72〜192時間培養しながら、伸展刺激によるトレーニングを行うことができる。
3枚の未配向細胞シートの積層と未配向細胞シートの端部を支持ロッドに絡ませることは、下記のように行うことができる。まず、2枚の未配向細胞シートを、スペーサーを介して積層する。スペーサーは、上述したとおり、ゼラチンハイドロゲル等の生体吸収性物質で構成する。次に、二層目の未配向細胞シート上にスペーサーを介して2本の支持ロッドを平行になるように配置し、二枚の未配向細胞シートの二つの端部のそれぞれを、平行状に保持されている2本の支持ロッドのそれぞれに巻き付け、適切な培地中で、例えば、35〜40℃で、15〜75分間培養することで、前記2枚の未配向細胞シートの二つの端部のそれぞれを、平行状に保持されている2本の支持ロッドのそれぞれに絡ませる。次に、その上に、スペーサーを介して1枚の未配向細胞シートを積層し、三層目の未配向細胞シートの両端部を、平行状に保持されている2本の支持ロッドのそれぞれに巻き付け、適切な培地中で、例えば、35〜40℃で、15〜75分間培養することで、三層目の未配向細胞シートの端部を支持ロッドに絡ませる。なお、4枚以上の未配向細胞シートの積層と、未配向未配細胞シートの端部を支持ロッドに絡ませることは、層の数が目的の値になるまで、スペーサーを介して細胞シートを積層することを繰り返し、細胞シートの端部を支持ロッドに絡ませることで行う。支持ロッドの両側の未配向細胞シートの枚数の差が出来るだけ少なくなるように複数枚の未配向細胞シートと支持ロッドを配置することが好ましい。目的とする数の細胞シートを積層した後、適切な培地中で、例えば、35〜40℃で、72〜192時間培養しながら、伸展刺激によるトレーニングを行うことができる。
前記支持ロッドによる細胞シート等の繊維集合体の伸展は、適切な培地中で、例えば、35〜40℃で、72〜192時間培養しながら、細胞シート等の繊維集合体が破断しない伸展率の範囲内で行えばよく、その条件は特に限定されない。例えば、前記2本の平行状に保持されている支持ロッドの距離の変化による細胞シート等の繊維集合体の伸展は、伸展率2.5〜100%、頻度1〜60回/分の条件で行うことが好ましく、伸展率3〜80%、頻度10〜60回/分の条件で行うことがより好ましい。細胞の生存率を高める観点から、最初の三日間は、伸展率を25%以下にすることが好ましい。前記未配向細胞集合体が多層細胞シートの場合、伸展刺激は、伸展率と頻度を徐々に上げながら、2〜7日間、1日当たり18〜24時間行うことが好ましい。これにより、細胞を所定の方向に効率よく配向させることができ、かつ得られた配向細胞シートの可塑性を高めることができる。また、伸展刺激によって、細胞の成熟が促進される。細胞の成熟は、例えば、定量PCR法によるカルシウムチャネル、カリウムイオンチャネル又は筋小胞体構成蛋白をコードする遺伝子の発現上昇等を測定することで確認することができる。本発明において、伸展率とは、伸展前の2本の支持ロッド間の細胞シートの長さをLaとし、伸展時の2本の支持ロッド間の細胞シートの長さをLbとした場合、下記式で算出する。
伸展率(%)=(Lb−La)/La×100
以下図面を用いて説明する。以下の図面において、同一符号は同一物を示す。図1は本発明の一実施形態における支持ロッド10の模式的側面図である。この支持ロッド10は、多層構造ロッドであり、詳細には芯糸11の周囲に被覆糸12を製紐した角打ち紐である。
図2は本発明の一実施形態における角打ち紐の製造工程を示す模式的説明図である。糸巻体(キャリヤ)1a〜1dは軌道3のように動き、糸巻体(キャリヤ)2a〜2dは軌道4のように動いて多層構造ロッド(組紐)10を組み上げる。糸巻体1a〜1d及び2a〜2dは、被覆糸12を供給する。6はガイドロール、7は基板、8は角打ち紐製造装置である。被覆糸12の糸巻体(キャリヤ)2a〜2dは左右に十字型に進むことで製紐される。通常は中央に空洞ができないため、偏平にならず角形に仕上がる。このため角打ち紐といわれる。本発明においては、芯糸の巻糸体9からパイプ5を通過させて芯糸11が組紐の中央部に供給される。このようにして多層構造ロッド(組紐)10が製紐される。
図3は、支持ロッド(多層構造ロッド)と補助バーを連結した状態を示す模式的説明図である。平行状に保持された2本の多層構造ロッド10a、10bにおいて、多層構造ロッド10aの両端部と、多層構造ロッド10bの両端部が、2本の平行状に保持された補助バー13a,13bによって連結されている。補助バー13a,13bによって連結されていることにより、多層構造ロッド10a,10bは平行状態に保たれる。多層構造ロッド10a,10bと補助バー13a,13bは、例えば、それぞれの先端を電気ゴテで熱溶融させ、それぞれの端部を繋げた後に冷やして固化することで、接続することができる。また、多層構造ロッド10a,10bと補助バー13a,13bは、超音波接着や熱プレスにより、接着しても良い。
図4A−Fは、2枚以上の未配向細胞シートの積層と、2本の平行状に保持された支持ロッド(多層構造ロッド)に未配向細胞シートを絡ませた状態を示す模式的工程図である。
(1)まず図4Aは、1枚の未配向細胞シート14aを準備した状態を示している。1枚の未配向細胞シートの大きさは、例えば厚さ25〜100μm、直径3〜50mmの円形シートである。
(2)図4Bは、一層目の未配向細胞シート14aに、二層目の未配向細胞シート14bを2枚重ねた状態を示す。
(3)図4Cは、前記2枚重ねた未配向細胞シート(14a,14b)上に、2本の多層構造ロッド10a,10bを平行になるように配置した状態を示す。
(4)図4Dは、前記2枚重ねた未配向細胞シート(14a,14b)の端部を、平行状に保持された多層構造ロッド10a,10bの上に巻き付けた状態を示す。この状態で、例えば、35〜40℃で、15〜75分間、適切な培地中で培養することで、多層構造ロッドに未配向細胞シートを絡ませることができる。
(5)図4Eは、前記2枚重ねた未配向細胞シート(14a,14b)の上に3枚目の未配向細胞シート14cを重ねた状態を示す。
(6)図4Fは、前記3枚目の未配向細胞シート14cの端部を、平行状に保持されたロッド10a,10bの上に巻き付けた状態を示す。この状態で、例えば、35〜40℃で、15〜75分間、適切な培地中で培養することで、多層構造ロッドに未配向細胞シートを絡ませることができる。
このようにして、次の伸展刺激を付与する工程に進む。
図5は、未配向細胞シートに伸展刺激を付与する状態を示す模式的説明図である。未配向細胞シート14を絡めた支持ロッド(多層構造ロッド)10a,10bをフック15a,15bで固定し、補助バー13a,13bをカット又は取り外し、2本の多層構造ロッド10a及び10bを平行状に保持した状態で、矢印17a及び17bに示すように、2本の多層構造ロッド10a及び10b間の距離を離すことで、未配向細胞シート14を所定の伸展率で伸展させ、その後、2本の多層構造ロッド10a及び10b間の距離を元に戻す。このように、2本の多層構造ロッド10a及び10b間の距離を離すことと戻すことを、所定の頻度で繰り返すことで、未配向細胞シート14に伸展刺激を付与し、細胞を所定の方向に配向させる。また、伸展刺激により、細胞が成熟するとともに、得られる配向細胞シートの可塑性も高まる。2本の多層構造ロッド10a及び10b間の距離を離すことと戻すことを繰り返すことで、2本の多層構造ロッド10a及び10bは矢印16に示すように往復運動を繰り返すことになる。
図6は、本発明の一実施形態の配向細胞シートを光学カメラにて撮影した写真である。図6から分かるように、該配向細胞シートは、支持ロッド、具体的には多層構造ロッドに絡みついている端部の幅がその他の部分の幅より大きい。また、該配向細胞シートは、支持ロッド、具体的には多層構造ロッドに絡みついていない二つの端部は、それぞれ、中央部分が凹んでいる湾曲状となっている。
図8は、本発明の一実施形態の配向細胞シートの共焦点顕微鏡観察写真(倍率200)であり、右下図に伸展方向を示す。図9は、同トレース図である。図8及び図9に示されているように、該配向細胞シートにおいて、細胞が伸展方向に沿って配向している。
図14は、本発明の一実施形態の配向細胞シートの共焦点顕微鏡観察写真(倍率200)である。図15は、同トレース図である。図14及び図15に示されているように、該配向細胞シートにおいて、細胞が伸展方向に沿って配向している。
図18は、本発明の一実施形態のロール状の配向細胞集合体を光学カメラにて撮影した写真である。図18から分かるように、該配向細胞集合体は、支持ロッド、具体的には多層構造ロッドに絡みついている端部の幅がその他の部分の幅より大きい。また、該配向細胞集合体は、支持ロッド、具体的には多層構造ロッドに絡みついていない二つの端部は、それぞれ、中央部分が凹んでいる湾曲状となっている。
図19は、本発明の一実施形態のロール状の配向細胞集合体の共焦点顕微鏡観察写真(倍率200)である。図20は、同トレース図である。図19及び図20に示されているように、該配向細胞集合体において、細胞が伸展方向に沿って配向している。
以下実施例及び比較例を用いて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
まず、実施例で用いたゼラチンハイドロゲル粒子の作製方法を説明する。
(ゼラチンハイドロゲル粒子(GHM)の作製方法)
ゼラチンハイドロゲル粒子は、Tabata, Y. & Nagano, A.( Biodegradation of hydrogel carrier incorporating fibroblast growth factor. Tissue Eng. 5, 127-138, 1999)に記載の方法に準じ、下記のように油エマルジョン(油乳濁液)内でのゼラチン粒子の脱水加熱架橋により作製した。
10w/w%ゼラチン水溶液(等電点5.0、分子量100000、新田ゼラチン)20mLを40℃とし、200〜400rpmにて10分間撹拌することにより油エマルジョン(油乳濁液)を得た。油エマルジョンの温度を4℃に下げ、ゲル化することにより、非架橋粒子を得た。その非架橋粒子をアセトン(4℃)にて3回遠心洗浄(5000rpm、4℃、5分)し、油分を除去した。20〜32μmの漉し器(飯田製作所)を用いて濾した後、4℃にて空気乾燥した。これにより得られた非架橋乾燥ゼラチン粒子(200mg)を140℃、0.1Torrの真空オーブンにて脱水加熱架橋し、ゼラチンハイドロゲル粒子を得た。
(実施例1)
<多層構造ロッドの製造>
生体吸収性高分子として、生体適合性のポリ−L−乳酸(分子量110000)を使用し、温度180〜200℃で溶融紡糸し、延伸倍率5〜6倍に延伸することでモノフィラメントを得た。得られたモノフィラメント糸の直径は0.125mmであった。
このモノフィラメント糸を芯糸及び被覆糸に使用し、図2に示す装置で8本角打ちの紐を作成した。この角打ち紐の直径は0.7mm、単位長さ当たりの質量は0.019g/100mmであった。この角打ち紐にゼラチン(10w/w%ゼラチン水溶液を純水で0.1質量%に希釈したもの)を塗布し、室温で5分間放置した。ゼラチン塗布量は乾燥後の質量で、角打ち紐100質量部に対して2質量部であった。ゼラチン塗布後の角打ち紐のたわみ量を上述したとおりに測定したところ、0.65mmであった。
ゼラチン塗布後の角打ち紐を21.4mmの長さにカットし、2本平行状に並べ、補助バーとして直径0.6mm長さ6mmのポリ乳酸の糸を2本使用した。二本の角打ち紐の端部と、補助バーの先端を熱溶融させて、図3に示すように角打ち紐と補助バーが90度で交わる状態で冷却し、固化させることで接着させて、長方形のフレーム(以下において、「PLLAフレーム」と記す。)を作製した。
<ヒトiPS細胞由来積層化心臓組織シートのトレーニング>
(1)ヒトiPS細胞由来心臓組織シートの作製
Masumotoら(SCIENTIFIC REPORTS, 2014, 4:6716)に記載の方法に準じて行った。具体的には、以下のようにヒトiPS細胞由来心臓組織シートを作製した。
(I)iPS細胞(未分化のヒトiPS細胞株201B6、以下において「hiPS」と記す。)を、マトリゲル(成長因子を少なくした製品、1:60希釈、Invitrogen)コートのファルコン培養皿(10cm)にて、マウス胎児性線維芽細胞(MEF細胞)からの培養上清(conditioned medium)(以下、「MEF−CM)」とも記す。)に4ng/mLのヒト繊維芽細胞成長因子(hbFGF、WAKO)を添加した培地10mLを用いて37℃で培養・維持した。培養上清の基礎培地は、ノックアウトDMEM(GIBCO)471mL、ノックアウト血清代替品(GIBCO、以下、「KSR」とも記す。)20mL、非必須アミノ酸(以下、「NEAA」とも記す。)6mL、200mMのL−グルタミン3mL、55mMの2−メルカプトエタノール(2−ME、GIBCO)、及び4ng/mLのhbFGFにて調製した。なお、MEFはマイトマイシンC(以下、「MMC」とも記す、和光)にて2.5時間処理されたのちに使用した。
(II)細胞は4〜6日毎に細胞塊(small clump)の状態にて継代培養した。この際CTK溶液(0.1%IV型コレゲナーゼ、0.25%トリプシン、20%KSR及び1mMCaCl2がリン酸緩食塩水中に溶解した)にて細胞コロニー周囲を剥離したのち、セルストレーナーで細胞塊の状態にした。
(III)コンフルエントになったhiPS細胞をバーゼン液(Versene、Invitrogen)での37℃、3〜5分間インキュベーションして剥離した。バーゼン液を吸引したのち、MEF−CMにてピペッティングし、単一細胞にて回収し、遠心して細胞数をカウントした。10cm培養皿一枚につき約300万細胞を回収したが、10万細胞/cm2の目安にて、マトリゲルコート6ウェルプレート(1ウェルあたり約100万細胞)にまき直した。MEF−CMに4ng/mLのhbFGF添加した培地を使用した。培地は、この後、ゼラチン(Sigma−Aldrich)コートした温度感受性培養皿(UpCell)への再播種まで6ウェルプレート1枚に対して5mLを使用した。
(IV)培地交換なしに37℃で2〜3日培養した。コンフルエントになった段階で、マトリゲル(1:60希釈、invitrogen)及び4ng/mLのhbFGFを含んだMEF−CMにて培地交換を行った(マトリゲルサンドイッチ)。
(V)0日目:24時間後にRPMI/B27培地(RPMI1640(GIBCO)、2mMのL−グルタミン、x1B27サプリメント(インスリンなし、GIBCO))に100ng/mLのアクチビンA(ActA;R&D Systems)を添加した培地に交換した。
(VI)1日目:24時間後に、10ng/mLの骨形成タンパク質4(BMP4、R&D)と10ng/mLのhbFGFを含むRPMI/B27培地に交換した、その後4日間培地交換なしに培養を継続した。
(VII)5日目:血管内皮細胞増殖因子(rhVEGF、和光)を50〜100nM含むRPMI/B27培地に交換した。rhVEGF添加量はその時の培養状態・継代数などにより、上記の範囲内で調節した。その後2日置きに同様の培地にて培地を交換した。9〜12日目に拍動が観察された。
(VIII)15日目:細胞は細胞分離/分散溶液(AccuMax、Innovative Cell Technologies)を使用して剥離し、回収した。細胞をカウントし、100万細胞/ウェルになるように、αMEM/FBS/rhVEGF/Y−27632培地(1mlのαMEM/FBS培地(α最少必須培地(αMEM、GIBCO)、10%ウシ胎児血清(FBS)、5.5mMの2−ME)にrhVEGFを50nMとY−27632(ROCK阻害剤、和光)を10μM添加したもの)で、ゼラチン(Sigma−Aldrich)コートした温度感受性培養皿(UpCell、和光)12−マルチウェルプレートに播種し、37℃で培養した。
(IX)17日目(シート2日目):RPMI1640に2mMのL−グルタミン及び10%のFBSを加え、さらにrhVEGFを50nMを加えた培地にて培地交換した。
(X)19日目(シート4日目):温度感受性培養皿を37℃から室温(約20℃)にもどすことにより、心筋細胞、血管内皮細胞及び血管壁細胞を含む未配向細胞シート(心臓組織シート)を回収した。得られた未配向細胞シートは、心筋細胞16.5%及び血管壁細胞72.2%を含んでいた。
(2)未配向細胞シートの積層及び多層構造ロッドとの結合
Matsuoら(SCIENTIFIC REPORTS, 2015, 5:16842)に記載の方法に準じて行った。具体的には、下記のように未配向細胞シートの積層及び多層構造ロッドとの結合を行った。
(I)一層目の未配向細胞シートをαMEM/FBS培地とともにマトリゲル(1:60希釈、Invitrogen)コートのファルコン培養皿(6cm)に移し、未配向細胞シートが広がった状態でαMEM/FBS培地を除去した。
(II)上記のように作製したゼラチンハイドロゲル粒子(GHM)2mgをPBS(−)20μLに溶解させ、よく撹拌して、GHM溶液を作製して37℃に保存した。
(III)GHM溶液5μL(500μg相当)を一層目の未配向細胞シートの上に滴下し広げた。
(IV)37℃の保湿下のインキュベータにて30〜45分間静置した。
(V)二層目の未配向細胞シートをαMEM/FBS培地とともに加え、二層目の未配向細胞シートが広がった状態でαMEM/FBS培地を除去し、GHM溶液5μL(500μg相当)を二層目の未配向細胞シートの上に滴下し広げた。
(VI)PLLAフレームをその上におき、図4Dに示すように、平行状に保持された2本の多層構造ロット(角打ち紐)に一層目と二層目の2枚の細胞シートの端部を巻き付けた後、37℃の保湿下のインキュベータにて30〜45分間静置した。
(VII)三層目の未配向細胞シートをαMEM/FBS培地とともに加え、三層目の未配向細胞シートが広がった状態でαMEM/FBS培地を除去し、GHM溶液5μL(500μg相当)を三層目の未配向細胞シートの上に滴下し広げた。
(VIII)37℃の保湿下のインキュベータにて30〜45分間静置した。
(IX)上記VII及びVIIIの操作を未配向細胞シートが五層になるまで繰り返した。
(X)三層目、四層目及び五層目の3枚の未配向細胞シートの端部を、図4Fに示すように、平行状に保持された2本の多層構造ロット(角打ち紐)に巻き付けた後、37℃の保湿下のインキュベータにて30〜45分間静置した。
(XI)細胞が多層構造ロット(角打ち紐)によって行き、表面及び内部で増殖することで、未配向細胞シートが多層構造ロット(角打ち紐)に絡まり、未配向細胞シートと多層構造ロット(角打ち紐)が接着することで、PLLA付け積層化細胞シートを得た。PLLA付け積層化細胞シートにおいて、積層化細胞シートの厚みは0.3mmであり、多層構造ロット(角打ち紐)間の細胞シートの長さは4mmであった。
(XII)対照群では、PLLA付け積層化細胞シートを37℃で、7日間aMEM/FBS培地中に保存した(比較例1)。実験群では、PLLA付け積層化細胞シートに伸展刺激を付与した(実施例1)。
(3)(伸展刺激によるトレーニング)
細胞培養用伸展装置(ストレックス社製、「CS−1700−15−KI」及び細胞シート伸展フックセット(ストレックス社製、STB−CH−F−15)を用いて、細胞シートに伸展刺激を与えた。具体的には、図5に示すように、PLLA付積層化細胞シートの多層構造ロット(角打ち紐)10a及び10bをフック15a及び15bにアプライし、アプライの後、PLLAフレームの補助バー13a及び13bをカットし、多層構造ロット(角打ち紐)10a及び10bを平行に保った状態で、細胞培養用伸展装置(図示なし)でフック15a及び15bを矢印17a及び17bに示すように互いに離れる方向に引っ張って、多層構造ロット(角打ち紐)10a及び10bの距離を離すことで、非配向細胞シートを伸展させ、その後、多層構造ロット(角打ち紐)10a及び10bの距離を元に戻すことで、非配向細胞シートをトレーニングした。毎回伸展刺激が終了すると、多層構造ロット(角打ち紐)10a及び10bは最初の位置に戻り、非配向細胞シートは矢印16で示すように往復運動をしていた。トレーニング培養は、37℃、aMEM/FBS培地中で、下記の表1に示す内容で一日あたり24時間伸展刺激を付与しながら7日間行われた。なお、補助バー13a及び13bによって、トレーニング培養中のPLLA付積層化細胞シートの平行方向の脱落を防ぐことができた。
実施例1の細胞シート及び比較例1の細胞シートを、デジタルHDDビデオカメラレコーダー(ソニー社製、型番「HDR−CX520V」)にて観察し、その結果を図6及び図7に示した。図6から分かるように、伸展刺激によるトレーニングを行った実施例1の細胞シートは、多層構造ロット(角
打ち紐)に絡んでいる部分の端部の幅は他の部分の幅よりより大きく、多層構造ロット(角打ち紐)に絡んでいない二つの端部の中央部分が凹んでいる湾曲状であった。具体的には、実施例1の細胞シートにおいて、多層構造ロット(角打ち紐)に絡んでいる部分の端部の幅(Wt)は7mmであり、中央部の幅(Wc)は2.6mmであった。一方、図7から分かるように、比較例1の未配向細胞シートは、全体にわたってほぼ同等の幅であった。
また、実施例1の細胞シート及び比較例1の細胞シートを、共焦点顕微鏡(株式会社ニコン製、「A1R MP」で観察し、その結果を図8〜図11に示した。図8は、実施例1の細胞シートを共焦点レーザー顕微鏡で観察した写真であり、図9は、同トレース図である。図8は、元々心筋細胞を緑色で可視化し、血管壁細胞を赤色で可視化し、細胞核を青色で可視化して観察したカラー写真であるが、白黒にしたことにより、これらの区分が困難であったため、異なる色が確認できるようにトレース図(図9)を用いた。図8及び9から明らかなように、伸展刺激によるトレーニングを行った実施例1の細胞シートでは、心筋細胞及び血管壁細胞が細胞シートの伸展方向に沿って配向していた。図10は、比較例1の細胞シートを共焦点レーザー顕微鏡で観察した写真であり、図11は、同トレース図である。図10は、元々心筋細胞を緑色で可視化し、血管壁細胞を赤色で可視化し、細胞核を青色で可視化して観察したカラー写真であるが、白黒にしたことにより、これらの区分が困難であったため、異なる色が確認できるようにトレース図(図11)を用いた。図10及び11から分かるように、伸展刺激によるトレーニングを行っていない比較例1の細胞シートは、非配向細胞シートであり、心筋細胞及び血管壁細胞のいずれも配向性を有せず、ランダムに分布していた。
実施例1の細胞シート(配向細胞シート)及び比較例1の細胞シート(未配向細胞シート)の可塑性を下記のように破断伸展率を測定することで確認した。
(破断伸展率)
細胞培養用伸展装置(ストレックス社製、「CS−1700−15−KI」及び細胞シート伸展フックセット(ストレックス社製、STB−CH−F−15)を用い、細胞シートの多層構造ロット(角打ち紐)を平行状にフックにアプライし、概ね0.1mm/秒の速度で用手的にフックを互いに離れる方向に引っ張ることで次第に過伸展させ、最初に細胞シートに破損が生じた時の多層構造ロット(角打ち紐)間の細胞シートの長さ(L1)を測定し、下記の式で破断伸展率を算出した。下記式において、L0は、フックを引っ張る前の多層構造ロット(角打ち紐)間の細胞シートの長さである。
破断伸展率(%)=(L1−L0)/L1×100
比較例1の細胞シート(未配向細胞シート)の破断伸展率は68%であるのに対し、実施例1の細胞シート(配向細胞シート)の破断伸展率は115%であり、可塑性が高かった。実施例1の細胞シートは、可塑性が高いことにより、例えば、生体内に移植した際に、移植先の組織の動きに追従しやすく、移植先の組織に生着しやすい。
(多層ロッドに用いる被覆糸の検討)
多層ロッドに用いる被覆糸を検討するため、実施例1と同様の手法で、心筋細胞20%及び血管壁細胞80%を含む未配向細胞シート(心臓組織シート)を得た後、下記表2に示す被覆糸を未配向細胞シート上に置き、5日間培養した。被覆糸の中、PET及びPLLAで構成された被覆糸は、未配向細胞シート上に静置する前に、あらかじめ、ウシ胎児血清に浸して、コーティングした。培養後、共焦点レーザー顕微鏡で被覆糸への細胞被覆率を算出した。得られた観察像より、被覆糸周囲の細胞被覆率を、Image Jより算出した。その結果を下記表2及び図12に示した。
表2及び図12の結果から分かるように、被覆糸がPLLAモノフィラメント(直径90μm)及びPETモノフィラメント(直径92μm)である場合よりも、被覆糸がPETマルチフィラメント(単糸直径9μm)、PETマルチフィラメント(単糸直径24μm)及びSilk(シルク)マルチフィラメント(直径7μm)の場合が、有意に細胞被覆率が高かった。
(実施例2)
未配向細胞シート内の細胞の比率を心筋細胞40%、血管内皮細胞2.8%、血管壁細胞9.4%とし、PLLA付積層化細胞シートへの伸縮刺激を、伸展率25%にて3日間行った以外は、実施例1と同様の方法で細胞シートに伸縮刺激を与えた。同細胞比率にて、PLLA付積層化細胞シートに伸縮刺激を与えていない細胞シートを比較例2とした。実施例2及び比較例2の細胞シートに、生細胞が青色に蛍光染色されるHoechst 33342、死細胞が赤色に蛍光染色されるEthidium homodimer 1を標準量添加し、蛍光顕微鏡(キーエンス社製、型番「BZ-9000」)で観察したところ、実施例2及び比較例2のいずれにおいても、死細胞がほとんど見られなかった。伸縮率25%以下では、細胞死を起こしにくく、良好であった。
(実施例3)
未配向細胞シート内の細胞の比率を心筋細胞75%、血管壁細胞24.6%とし、PLLA付積層化細胞シートへの伸縮刺激を、伸展率13%にて7日間行った以外は、実施例1と同様の方法で細胞シートに伸縮刺激を与えた。同細胞比率にて、伸縮刺激を与えていないPLLA付積層細胞シートを比較例3、PLLAフレームに搭載していない積層化細胞シートを比較例4とした。
(実施例4)
未配向細胞シート内の細胞の比率を心筋細胞27%、血管壁細胞66%とし、細胞シートへの伸縮刺激を、伸展率25%にて7日間行った以外は、実施例1と同様の方法で細胞シートに伸縮刺激を与えた。同細胞比率にて、伸縮刺激を与えていないPLLA付積層細胞シートを比較例5、PLLAフレームに搭載していない積層化細胞シートを比較例6とした。
<弾性率の評価>
実施例3〜4、及び比較例3〜6の細胞シートについて、収縮力測定器(Small ointact muscle test system, Aurora Scientific社)を用いて、電圧10V下での組織のヤング率を測定した。本測定器では、心筋組織が追従できる周波数、組織応力、収縮力、ヤング率を測定することが可能である。その結果を表3及び図13に示した。
表3及び図13の結果から分かるように、伸展刺激を受けた実施例3の細胞シートは、伸展刺激を受けていない同じ細胞比率の比較例3及び比較例4に比べてヤング率(弾性率)が向上していた。同様に、伸展刺激を受けた実施例4の細胞シートは、伸展刺激を受けていない同じ細胞比率の比較例5及び比較例6に比べてヤング率(弾性率)が向上していた。
<配向性の評価>
実施例4及び比較例5の細胞シートを、共焦点顕微鏡(株式会社ニコン製、「A1R MP」で観察し、その結果を図14〜図17に示した。図14は、実施例4の細胞シートを共焦点レーザー顕微鏡で観察した写真であり、図15は、同トレース図である。図14は、元々心筋細胞を緑色で可視化し、血管壁細胞を赤色で可視化し、細胞核を青色で可視化して観察したカラー写真であるが、白黒にしたことにより、これらの区分が困難であったため、異なる色が確認できるようにトレース図(図15)を用いた。図14及び図15から明らかなように、伸展刺激によるトレーニングを行った実施例4の細胞シートでは、心筋細胞及び血管壁細胞が細胞シートの伸展方向に沿って配向していた。図16は、比較例5の細胞シートを共焦点レーザー顕微鏡で観察した写真であり、図17は、同トレース図である。図16は、元々心筋細胞を緑色で可視化し、血管壁細胞を赤色で可視化し、細胞核を青色で可視化して観察したカラー写真であるが、白黒にしたことにより、これらの区分が困難であったため、異なる色が確認できるようにトレース図(図17)を用いた。図16及び図17から分かるように、伸展刺激によるトレーニングを行っていない比較例5の細胞シートは、非配向細胞シートであり、心筋細胞及び血管壁細胞のいずれも配向性を有せず、ランダムに分布していた。
(実施例5)
非配向細胞シート内の細胞が血管壁細胞のみの非配向細胞シート用いて、細胞シートを1枚のみ作製し、ロール状に丸めて、ゼラチンハイドロゲル微粒子を含めずにPLLAフレームに塔載した以外は、実施例1と同様の方法でロール状の細胞集合体に対して伸展刺激によるトレーニングを行った。図18は、実施例5のロール状の細胞集合体を光学カメラ(デジタルHDDビデオカメラレコーダー、ソニー社製、型番「HDR−CX520V」)で撮影した写真である。図18から分かるように、伸展刺激によるトレーニングを行った実施例5のロール状の細胞集合体は、多層構造ロット(角打ち紐)に絡んでいる部分の端部の幅は他の部分の幅よりより大きく、多層構造ロット(角打ち紐)に絡んでいない二つの端部の中央部分が凹んでいる湾曲状であった。具体的には、実施例1のロール状の細胞集合体において、多層構造ロット(角打ち紐)に絡んでいる部分の端部の幅(Wt)は4.3mmであり、中央部の幅(Wc)は1.61mmであった。
実施例5のロール状の細胞集合体を、共焦点顕微鏡(株式会社ニコン製、「A1R MP」で観察し、その結果を図19及び図20に示した。図19は実施例5のロール状の細胞集合体を共焦点レーザー顕微鏡で観察した写真であり、図20は同トレース図である。図19は、元々血管壁細胞を赤色で可視化し、細胞核を青色で可視化して観察したカラー写真であるが、白黒にしたことにより、これらの区分が困難であったため、異なる色が確認できるようにトレース図(図20)を用いた。図19及び図20から明らかなように、伸展刺激によるトレーニングを行った実施例5のロール状の細胞集合体では、血管壁細胞が細胞シートの伸展方向に沿って配向していた。実施例5の結果より、本発明で用いる細胞集合体の形状は、平面のシート状のみに制限されず、ロール状や、フィラメント状の種々3次元形状においても、使用できることが明らかである。
本発明の配向細胞シートは、移植用又は疾患モデル用として用いることができる。本発明の配向細胞シートの作製方法は、あらゆる細胞シートの配向に用いることができる。
1a〜1d,2a〜2d 糸巻体(キャリヤ)
3,4 軌道
5 パイプ
6 ガイドロール
7 基板
8 角打ち紐製造装置
9 芯糸の巻糸体
10,10a,10b ロッド(組紐)
11 芯糸
12 被覆糸
13a,13b 補助バー
14,14a,14b,14c 未配向細胞シート
15a,15b フック
16 往復運動
17a、17b 離す方向

Claims (21)

  1. 細胞が所定の方向に配向されている配向細胞集合体において、
    前記配向細胞集合体の二つの端部のそれぞれが、2本の平行状に配置され、繊維糸で構成された支持ロッドのそれぞれに絡みついていることを特徴とする配向細胞集合体。
  2. 前記配向細胞集合体において、前記支持ロッドに絡みついている端部の幅がその他の部分の幅より大きい請求項1に記載の配向細胞集合体。
  3. 前記配向細胞集合体において、前記支持ロッドに絡みついていない二つの端部は、それぞれ、中央部分が凹んでいる湾曲状である請求項1又は2に記載の配向細胞集合体。
  4. 前記支持ロッドは、多層構造ロッドである請求項1〜3のいずれか1項に記載の配向細胞集合体。
  5. 前記支持ロッドは、芯糸の周囲に被覆糸を製紐した組紐及び芯糸の周囲に被覆糸を編成した編物からなる群から選ばれる少なくとも一つの多層構造ロッドであり、芯糸と被覆糸が一体化されている請求項1〜4のいずれか1項に記載の配向細胞集合体。
  6. 前記配向細胞集合体は、シート状、ロール状、フィラメント状又はネット状である請求項1〜5のいずれか1項に記載の配向細胞集合体。
  7. 細胞が所定の方向に配向した配向細胞集合体の製造方法であって、
    繊維糸で構成された支持ロッドを2本平行状に保持し、
    前記平行状に保持された2本の支持ロッドのそれぞれに、未配向細胞集合体の二つの端部をそれぞれ絡ませ、
    平行状に保持した状態で、前記2本の支持ロッド間の距離を離すことにより、未配向細胞集合体を伸展させ、その後前記2本の支持ロッド間の距離を元に戻すことを繰り返すことで、
    細胞を所定の方向に配向させて配向細胞集合体を得ることを特徴とする配向細胞集合体の製造方法。
  8. 前記支持ロッドは、芯糸の周囲に被覆糸を製紐した組紐及び芯糸の周囲に被覆糸を編成した編物からなる群から選ばれる少なくとも一つの多層構造ロッドであり、芯糸と被覆糸が一体化されている請求項7に記載の配向細胞集合体の製造方法。
  9. 前記支持ロッドは、芯糸の周囲に被覆糸を製紐した角打ち紐である請求項7又は8に記載の配向細胞集合体の製造方法。
  10. 前記支持ロッドは、直径が0.4〜2mmである請求項7〜9のいずれか1項に記載の配向細胞集合体の製造方法。
  11. 前記支持ロッドは、生体吸収性高分子及び/又はポリエステルで構成されている請求項7〜10のいずれか1項に記載の配向細胞集合体の製造方法。
  12. 前記支持ロッドは、表面に細胞外マトリックス成分又は血清がコーティングされている請求項7〜11のいずれか1項に記載の配向細胞集合体の製造方法。
  13. 前記平行状に保持された2本の支持ロッドにおいて、一方の支持ロッドの両端部は、他方の支持ロッドの両端部と、2本の平行状に保持された補助バーによって連結されている請求項7〜12のいずれか1項に記載の配向細胞集合体の製造方法。
  14. 前記未配向細胞集合体は、シート状、ロール状、フィラメント状又はネット状である請求項7〜13のいずれか1項に記載の配向細胞集合体の製造方法。
  15. 前記支持ロッドによる細胞集合体の伸展は、伸展率2.5〜100%、頻度1〜60回/分の条件で行う請求項7〜14のいずれか1項に記載の配向細胞集合体の製造方法。
  16. 請求項7〜15のいずれか1項に記載の配向細胞集合体の製造方法に使用するための支持ロッドであって、
    前記支持ロッドは、繊維糸で構成された多層構造ロッドであることを特徴とする支持ロッド。
  17. 前記支持ロッドは、芯糸の周囲に被覆糸を製紐した組紐及び芯糸の周囲に被覆糸を編成した編物から選ばれる少なくとも一つの多層構造ロッドであり、芯糸と被覆糸が一体化されている請求項16に記載の支持ロッド。
  18. 前記支持ロッドは、芯糸の周囲に被覆糸を製紐した角打ち紐である請求項16又は17に記載の支持ロッド。
  19. 前記支持ロッドは、直径が0.4〜2mmである請求項16〜18のいずれか1項に記載の支持ロッド。
  20. 前記支持ロッドは、生体吸収性高分子及び/又はポリエステルで構成されている請求項16〜19のいずれかに記載の支持ロッド。
  21. 前記支持ロッドは、表面に細胞外マトリックス成分又は血清がコーティングされている請求項16〜20のいずれかに記載の支持ロッド。
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