以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る防音階段Sを示し、この防音階段Sは、例えば2階建て賃貸用集合住宅等の建物内の階段室Rに設けられている。図示しないが、建物における2階の住戸の玄関は1階の住戸の玄関と並べられて配列されており、防音階段Sは、階段室Rにおいて2階の住戸とその1階に位置する玄関との間を接続するように施工され、階段室Rの周り側の界壁W,W,…は1階の住戸における居室の壁部を構成している。また、階段室Rの空間は、階段Sによって上下に仕切られ、図3に示すように、階段Sの下側には、階段Sを天井部とする、1階の住戸の収納空間R1(図3ではその天井位置をR1で示している)が形成されている。
防音階段Sは、建物の1階の床面Fから直線状に斜め上側に延びる例えば9段の直階段部S1と、この直階段部S1の上端に下端が接続され、直階段部S1に対し平面視で反時計回り方向に90°に折れ曲がって斜め上側に延びる例えば3段の廻り階段部S2とを有する。
以下の説明では、説明の便宜上、直階段部S1及び廻り階段部S2を含め、階段Sに関して、その上り方向に向かって左側及び右側をそれぞれ「左」及び「右」と言い、手前側(下段側)を「前」と言い、奥側(上段側)を「後」と言うこととする。従って、廻り階段部S2は上側に向かって左回りに折れ曲がっている。また、階段Sにおける段部を図面で丸数字にて示している。
上記直階段部S1の上段部(例えば下から7段〜9段)及び廻り階段部S2(同10段〜12段)の構造は、直階段部S1の下段部(同1段〜6段)と異なっている。
すなわち、図2及び図3に示すように、上記直階段部S1の上段部及び廻り階段部S2においては、階段室Rの左右両側にそれぞれ位置する左右の下地ユニット1,1が設けられている。
右側の下地ユニット1は、例えば図3に示すように、複数(図示例では7つ)の矩形状の枠体2,2,…が並べられて一体的に連結された枠組み構造とされ、複数の枠体2,2,…の高さは基本的に互いに異なっている。各枠体2は、例えば30mmの角材を用い、水平方向に延びる上下の横枠材2a,2a間に、上下方向に延びる同じ高さの2本の縦枠材2b,2bをビス等により連結一体化して矩形枠状にしたものであり、各枠体2の縦枠材2b,2bの高さを異ならせることで、高さの異なる枠体2,2,…が形成されている。そして、直階段部S1の上段部と廻り階段部S2の下半部(下から10段及び11段)とにおいては、高さの異なる例えば5つの枠体2,2,…が、各枠体2内の平面(枠体2を通る平面)を右側の界壁Wに沿って延びる同じ鉛直平面上に位置させるように高さの順に直列に並べられてビス等により一体的に連結されている。一方、廻り階段部S2の上半部(下から11段及び12段)においては、高さの異なる例えば2つの枠体2,2が、各枠体2内の平面(枠体2を通る平面)を後側の界壁Wに沿って延びる同じ鉛直平面上に位置させるように高さの順に直列に並べられてビス等により一体的に連結されている。上記廻り階段部S2における下半部の枠体2,2,…と上半部の枠体2,2とは平面視でL字状になるように直角にビス等により一体的に連結されており、このような複数の枠体2,2,…同士の連結により、階段室Rの右側及び後側の界壁W,Wに沿った下地ユニット1が形成されている。この下地ユニット1の廻り階段部S2に位置する4つの枠体2,2,…のうち、上下段の中間部に位置する、下半部の上段側の枠体2と上半部の下段側の枠体2とはいずれも同じ段(下から11段)を構成していて高さが同じであり、平面視で直角に交差している。
この下地ユニット1の枠組み構造においては、図3に示すように、互いに隣接する高さの異なる枠体2,2同士は、低い側の下段の枠体2にあっては、その隣接側の縦枠材2bの全体と上下の横枠材2a,2aの端面(木口面)とが高い側の枠体2に当接し、高い側の上段の枠体2にあっては、その隣接側の縦枠材2bの一部と下側の横枠材2aの端面とが低い側の枠体2に当接した状態で連結されている。
一方、左側の下地ユニット1において、その直階段部S1の上段部に位置する部分は、上記右側の下地ユニット1において直階段部S1の上段部に位置する部分と同じ枠組み構造であり、高さの異なる3つの枠体2,2,…が、各枠体2内の平面を左側の界壁Wに沿って延びる同じ鉛直平面上に位置させるように高さの順に直列に並べられてビス等により一体的に連結されている。
また、廻り階段部S2に位置する左側(内側)の下地ユニット1は、図4に示すように、高さの異なる2つの枠体2,2が、各枠体2内の平面を後側の界壁Wに沿って延びる同じ鉛直平面上に位置させるように高さの順に直列に並べられてビス等により一体的に連結されたものである。これら2つの枠体2,2の高さは、廻り階段部S2の下半部に位置する右側(外側)の下地ユニット1における対応する段(下から10段及び11段)の2つの枠体2,2の高さと同じとされている。また、これら2つの枠体2,2のうち、図2及び図4で左側に位置する上段側の枠体2の上面には、下段側の枠体2の反対側(図4で左側)に受け部材3が起立状に取付固定され、この受け部材3上面の高さは、廻り階段部S2の上半部に位置する右側(外側)の下地ユニット1における最上段(下から12段)の枠体1の高さと同じとされている。そして、図2に示すように、この廻り階段部S2の2つの枠体2,2は直階段部S1の上段部の枠体2,2,…に対し直角に平面視でL字状になるように配置され、両者は所定厚さの合板からなるスペーサ7(図2では塗りつぶして示している)を介してビス等により一体的に連結されており、このような連結によって左側の下地ユニット1が形成されている。
尚、各下地ユニット1の各枠体2は、上記のように横枠材2a,2aと縦枠材2b,2bとを矩形枠状に連結するだけでなく、その枠体2に例えば斜めに配置されて枠材2a,2bに連結される補強材を追加する等して、枠体2を補強するようにしてもよく、その補強によって下地ユニット1の剛性を高めることができる。
上記階段室Rの左右両側の下地ユニット1,1はいずれも階段室Rの左右両側ないし後側の界壁W,W,…に沿って配置され、各下地ユニット1は、該界壁Wに接触ないし固定されずに階段室Rの床面Fに自立している。各下地ユニット1の下端部は階段室Rの床面Fに、例えば各枠体2の下側の横枠材2aをビス止めすること等により固定され、各下地ユニット1と界壁Wとは所定寸法(例えば6mm)の隙間を空けた状態で離隔している。
尚、各下地ユニット1と床面Fの間に制振マット(図示せず)を両者で挟み込むように介在させてもよく、さらに高い制振効果や振動絶縁効果が得られる。この制振マットとしては、例えばゴム系、PVC系、アスファルト系、発泡ウレタン系等の制振効果の高い材料が用いられる。
さらに、左右の下地ユニット1,1は、その前端部(下段端部)において連結部材としての仮止め部材8により一体的に連結されている。この仮止め部材8は、図5にも示すように、左右水平方向に延びる上下の横枠材8a,8a間に上下方向に延びる左右及び中央の3本の縦枠材8b,8b,…をビス等により連結一体化して矩形枠状にしたもので、仮止め部材8の高さは左右の下地ユニット1,1の前端部の枠体2,2と同じ高さとされている。そして、それら左右の下地ユニット1,1の前端部の両枠体2,2間に仮止め部材8を挟むように配置して両枠体2,2と仮止め部材8とをビス等で連結することにより、左右の下地ユニット1,1が前端部で仮止め部材8により一体的に連結されている。尚、仮止め部材8も下側の横枠材8aにおいて床面Fにビス等により固定されて、床面F上に自立している。
上記左右の下地ユニット1,1の上部には、水平方向に延びる複数の踏板取付部4,4,…と、垂直方向に延びる複数の蹴込板取付部5,5,…とが交互に階段状(段差状)に形成されている。すなわち、直階段部S1の上段部においては、各下地ユニット1の各枠体2の上面に踏板取付部4が形成され、その枠体2の前面で該枠体2に隣接する下側の枠体2との間の段差部分に蹴込板取付部5が形成されている。
また、廻り階段部S2においては、その右側(外側)の下地ユニット1にあっては、直階段部S1の上段部と同様に、各枠体2の上面に踏板取付部4が形成され、その枠体2の前面で該枠体2に隣接する下側の枠体2との間の段差部分に蹴込板取付部5が形成されている。一方、左側(内側)の下地ユニット1にあっては、各枠体2及び受け部材3の上面に踏板取付部4が形成され、その枠体2及び受け部材3の前面で該枠体2に隣接する下段側の枠体2との間の段差部分に蹴込板取付部5が形成されている。
これに対して、直階段部S1の下段部は力桁階段部12で構成されており、このことで防音階段Sは下部に力桁階段部12が配置されている。すなわち、直階段部S1の前側(下段側)には力桁支持部材11が上記仮止め部材8と当接した状態で一体的に取付固定されている。この力桁支持部材11は、仮止め部材8と同様に連結部材を構成するもので、図6にも示すように、左右水平方向に延びる上下の横枠材11a,11a間に上下方向に延びる左右両端の2本の縦枠材11b,11bをビス等により一体的に連結して矩形枠状に形成されている。上下の横枠材11a,11aの左右両側寄り間にはそれぞれ上下方向に延びる2本の支持用縦枠材11c,11cが重ねられた状態で連結されている。力桁支持部材11の高さは左右の下地ユニット1,1の前端の枠体2,2よりも低い高さとされており、力桁支持部材11は左右の下地ユニット1,1前端の両枠体2,2前面に配置されて該両枠体2,2及び仮止め部材8とビス等により一体的に連結されている。このことで、左右の下地ユニット1,1は前端部で力桁支持部材11によっても一体的に連結されている。尚、力桁支持部材11も下側の横枠材11aにおいて床面Fにビス等により固定されて、床面F上に自立している。
力桁階段部12は、階段室Rの床面Fから直階段部S1の前端部前面まで後上がりに傾斜して互いに平行に延びる左右の力桁13,13を備えている。両力桁13,13は互いに同じもので、幅方向が上下方向に沿うように配置される細長い角材からなり、その上端部下面にはL字状に切り欠かれた上側係止部13aが形成されている。各力桁13の下端部には、下面の角部を斜めに切り欠いてなる床面当接部13bが形成され、その床面当接部13bの前端部にはL字状に切り欠かれた下側係止部13cが設けられている。そして、各力桁13を力桁支持部材11と床面Fとの間に架け渡し、上側係止部13aを力桁支持部材11における2本の支持用縦枠材11c,11cの位置の上側横枠材11aに載置係合して固定し、床面当接部13bを床面Fに当接させ、かつ下側係止部13cを床面F上に固定した係止桟25に係合してビス等で固定することにより、力桁階段部12の力桁13,13の上端部が力桁支持部材11を介して下地ユニット1,1に連結固定されている一方、下端部は階段室Rの床面Fに固定されている。
各力桁13の上部には、前後水平方向に延びる複数(図示例では6つ)の踏板取付部15,15,…と、上下垂直方向に延びる複数(図示例では6つ)の蹴込板取付部16,16,…とが交互に階段状(段差状)に形成されている。
上記左右の下地ユニット1,1において、左右に対応する同じ高さの踏板取付部4,4間に踏板21が架け渡されて固定され、左右に対応する同じ高さの蹴込板取付部間5,5に蹴込板22が架け渡されている。また、左右の力桁13,13においても、左右に対応する同じ高さの踏板取付部15,15間に踏板21が架け渡されて固定され、左右に対応する同じ高さの蹴込板取付部16,16間に蹴込板22が架け渡されている。この踏板21及び蹴込板22の各々の左右端部と各界壁Wとの間に所定寸法(例えば3mm)の隙間が形成されている。
具体的には、図7に例示するように、上記直階段部S1の上段部及び廻り階段部S2における各踏板21、並びに直階段部S1の下段部の力桁階段部12における各踏板21は、いずれも該踏板21の上側に隣接する蹴込板22とビス等により連結一体化されて断面L字状の踏板ユニット20を構成している。すなわち、踏板21は左右方向に延びる板状のものであり、その後端部(幅方向の一端部)が、左右方向に延びる矩形板状の蹴込板22の下端部前面に直角に当接した状態で配置され、その状態で踏板21と蹴込板22とがビス等で一体的に固定されて踏板ユニット20が形成されている。尚、図7は直階段部S1の上段部における踏板ユニット20を示しており、廻り階段部S2での踏板ユニット20は、図示しないが踏板21の形状が異なっているだけである。
直階段部S1の上段部における各踏板21、及び直階段部S1の下段部の力桁階段部12における各踏板21は矩形状の板材であり、その幅は、下地ユニット1及び力桁13の対応する踏板取付部4,15の前後長さよりも所定寸法だけ大きくなっている。また、図1に示すように、廻り階段部S2における下段及び上段(下から10段及び12段)の踏板21はそれぞれ直角三角形の板材で、中段(同11段)の踏板21は略菱形状の板材であり、やはり下地ユニット1の対応する踏板取付部4の前後長さよりも所定寸法だけ大きくなっている。
廻り階段部S2においては、下地ユニット1の蹴込板取付部5は下地ユニット1の前面に形成されるのに対し、蹴込板22は、その下地ユニット1の前面に対しそれと平行にならずに所定の角度で傾斜して配置され、この下地ユニット1の前面と蹴込板22との間に両者間の角度差を埋めるようにスペーサ(図示せず)が配置されている。
そして、このような踏板ユニット20は、その踏板21において表側(上面側)から下地ユニット1,1及び力桁13,13にビス等により固定されている。具体的には、直階段部S1の上段部及び廻り階段部S2においては、各踏板ユニット20の蹴込板22が後面(裏面)で左右の下地ユニット1,1の蹴込板取付部5,5に当接し、その状態で踏板21の左右端部が表側から下地ユニット1,1の踏板取付部4,4にビス等で固定されている。また、直階段部S1の下段部の力桁階段部12では、各踏板ユニット20の蹴込板22が後面(裏面)で左右の力桁13,13の蹴込板取付部16,16に当接し、その状態で踏板21の左右端部寄り部分が表側から力桁13,13の踏板取付部15,15にビス等で固定されている。このとき、図3に示すように、踏板ユニット20は踏板21の前端部が、下側に隣接する踏板ユニット20の蹴込板22の上端部の位置よりも所定寸法(例えば30mm)だけ前側に突出した状態で固定されている。左右の力桁13,13における最下段の蹴込板取付部16,16には、踏板ユニット20の蹴込板22ではなく、板状の蹴込板22が架け渡されてビス等により固定されている。
さらに、図8に示すように、上記各踏板ユニット20における踏板21の前端部(段鼻部)には、階段Sを昇降する人が踏板上で滑らないようにするための段鼻部材28が固定されている。
この段鼻部材28について詳細に説明すると、段鼻部材28は、踏板21に直接固定されるベース部29と、このベース部29に取り外し可能に組み付けられるカバー部39とを有する。ベース部29は、例えばPVC樹脂の他、ABS、PP、PS等の硬質樹脂の押出成形材からなっている。
上記ベース部29は、下面が踏板21の上面前端部に固定される平板状のもので、このベース部29の上面において、その幅方向の一端側である後端部(図8で右端部)には、ベース部29の長さ方向に延びる第1凹溝部31が、また幅方向の略中央に同様の第2凹溝部32が、さらに幅方向の他端側である前端部(図8で左端部)に同様の第3凹溝部33がそれぞれベース部29の長さ方向の全体に亘って形成されている。第1〜第3凹溝部31〜33の各々の開口部の前後両側には、それぞれ開口部中央に向かって突出する板状の突出部35,35が各凹溝部31〜33の長さ方向全体に亘って一体に形成されており、この開口部で両突出部35,35が突出していることで、第1〜第3凹溝部31〜33は、開口部の溝幅が溝深さ方向の中間部よりも狭くなっていて中拡がりの溝に形成されている。そして、両側の第1及び第3凹溝部31,33と中央の第2凹溝部32との間で異なる部分は開口部を含んだ溝幅だけで他の部分は同じであり、前後に位置する第1及び第3溝部31,33は溝幅が互いに同じである一方、前後中央の第2凹溝部32の溝幅は第1及び第3凹溝部31,33よりも大きくなっている。尚、第3凹溝部33は、カバー部39の組み付けには関与しない。
上記カバー部39も樹脂の押出成形材からなっているが、このカバー部39は例えばPVC樹脂の他、TPE(例えばTPO、TPU)等の軟質樹脂からなる。この軟質樹脂製のカバー部39は、例えばPVC基材であってアニール処理が施されており、温度による伸縮を抑えるため、押し出し成形後に加熱処理を加えて強制的に収縮させている。軟質樹脂製のカバー部39は、押出成形の原料としての軟質材料に100度未満の硬度のものが好適に使用され、例えば85度のものが使用されている。
カバー部39は、下面(ベース部29との対向面)において上記ベース部29の上面に取り外し可能に組み付けられる平板状の装着部40と、この装着部40の前端部(幅方向の一端)に連続して一体に形成され、装着部40と直交する方向の下方に延びる平板状の前面部41とを有し、この前面部41と装着部40とによりカバー部39は断面略L字状とされている。そして、前面部41裏面の上下中間部には両面テープ(図示せず)が貼着されるようになっており、段鼻部材28が踏板5に取り付けられ、そのベース部29が踏板5上面の前端部に固定され、ベース部29にカバー部39が後述の凸条部47,49の凹溝部31,32との嵌合によって組み付けられた組み付け状態では、カバー部39の前面部41が踏板5の踏板基材6前端面を覆い、その状態で前面部41が踏板基材6前端面に両面テープにより固定されるようになっている。
上記前面部41の下端部には、後側に向かって延びる係止部42が一体に形成されている。この係止部42は、フリー状態では後側に向かって上側に向かうように後上がりに傾斜しており、図8に示すように、段鼻部材28が踏板5に取り付けられ、カバー部39の前面部41が踏板5の踏板基材6前端面を覆うと、その下端部の係止部42が弾性によって踏板基材6の下面に圧接して係止されるようになっている。
さらに、上記装着部40の上面には、その長さ方向に互いに平行に延びる複数(図示例では3つ)の滑り止め用凹溝44,44,…が幅方向に前後に並んで形成されている。装着部40の幅方向の他端である後端部(図8で右端部)には、先端に向かって厚さが薄くなる被覆部45が装着部40の長さ方向の全体に亘り一体に形成されている。この被覆部45は、段鼻部材28が踏板5に取り付けられていないフリー状態では先端部が下方に向かって湾曲しており、図8に示すように、段鼻部材28が踏板5に取り付けられると、弾性により先端部が踏板5の表面材7上面に圧接して該前部を覆うようになっている。
上記装着部40の下面には、前面部41と反対側の後端部に、カバー部39(装着部40)の長さ方向に延びる1枚の板状の第1凸条部47が、また幅方向略中央部に、カバー部39(装着部40)の長さ方向に延びる1つの第2凸条部49がそれぞれ下方に向かって突出するように一体に形成されており、これら凸条部47,49は、装着部40の長さ方向の全体に亘って設けられている。
上記第1凸条部47は先端側部の断面が先細りテーパ形状のもので、その前後方向(図8で左右方向)の寸法である厚さは上記ベース部29の第1凹溝部31の開口部の溝幅よりも小さく、かつ下方への突出高さは第1凹溝部31の溝深さよりも小さく設定されており、第1凸条部47をベース部29の第1凹溝部31の内部にその開口部から嵌合可能となるように構成されている。
また、第1凸条部47の先端部には断面く字状の抜け止め部48が一体に形成されており、この抜け止め部48により第1凸条部47全体の断面形状が矢印状をなしている。抜け止め部48での第1凸条部47の厚さは第1凹溝部31の開口部の溝幅よりも大きく設定されており、第1凸条部47を第1凹溝部31に嵌合したときに、抜け止め部48が、その抜け止め部48での第1凸条部47の厚さが小さくなるように変形しながら第1凹溝部31の開口部を潜ってその内部に嵌合され、その嵌合状態で抜け止め部48が第1凹溝部31の開口部両側の突出部35,35に引っ掛かることにより、第1凸条部47が第1凹溝部31から抜け出るのを阻止するようにしている。
一方、第2凸条部49は第1凸条部47とは異なり、第1凸条部47の厚さ(前後方向の寸法)よりも厚くかつ第1凸条部47の突出高さよりも低い断面矩形の角材状のもので、第1凸条部47に比べて大きな断面積及び低い突出高さを有する。第2凸条部49の厚さは上記ベース部29の第2凹溝部32の開口部の溝幅よりも小さく、かつ突出高さは第2凹溝部32の溝深さよりも小さく設定されていて、第2凸条部49をベース部29の第2凹溝部32の内部にその開口部から嵌合することが可能となっている。そして、この第2凸条部49を第2凹溝部32に嵌合したときに、第2凸条部49の厚さ方向の両側面と第2凹溝部32の開口部両側縁の突出部35,35との間にそれぞれ隙間が空けられるようになっている。
尚、図8において、51はカバー部39の装着部40、前面部41、被覆部45及び係止部42の外表面の全面に亘り一体に形成された化粧被覆層で、この化粧被覆層51はカバー部39の押出成形の際にそれと一体に押し出されて形成される。
以上の構造により、カバー部39の第1及び第2凸条部47,49がそれぞれベース部29の第1及び第2凹溝部31,32に嵌合することによってカバー部39がベース部29に取り外し可能に組み付けられるようになっている。
また、この段鼻部材28よりも後側(奥側)で蹴込板22までの範囲の踏板21上面には、クッション性を有する表面仕上げ材53が接着剤等により取付固定されている。このことで、踏板21上面が表面仕上げ材53に覆われることとなり、踏板ユニット20を踏板21において表側(上面側)から下地ユニット1及び力桁13に固定するためのビス等が隠蔽される。このクッション性を有する表面仕上げ材53としては、例えばシート化粧MDF+PVCマット+不織布(又はウレタン発泡体)等が用いられる。
上記直階段部S1の上段部及び廻り階段部S2における左右の下地ユニット1,1と階段室Rの界壁W,W,…との間、その各踏板ユニット20の踏板21及び蹴込板22の左右端部と界壁W,W,…との間、及び直階段部S1の下段部の力桁階段部12における各踏板ユニット20の踏板21及び蹴込板22の左右端部と界壁W,W,…との間はいずれも隙間が空けられているが、各界壁Wには、この隙間を上側(外部)から見て隠蔽するための巾木(図示せず)が下地ユニット1,1や各踏板ユニット20の踏板21及び蹴込板22と非接触状態で取付固定されている。
次に、上記構成の防音階段Sを施工する方法について説明する。まず、例えば階段Sの施工現場において、直階段部S1の上段部及び廻り階段部S2の左右の下地ユニット1,1を組み立てる。この下地ユニット1,1は、高さの異なる複数の枠体2,2,…からなるものであるので、それらの枠体2,2,…を高さ順に並べてビス止め等により一体的に連結し、上部に階段状の踏板取付部4,4,…及び蹴込板取付部5,5,…を有する下地ユニット1,1を形成する。
次いで、このようにして組み立てられた左右の下地ユニット1,1を階段室Rに配置し、その下地ユニット1,1を階段室Rの床面Fに下端部が横枠材2aにてビス等により固定されかつ階段室Rの界壁W,W,…と隙間を空けた状態で自立させる。
そのとき、各下地ユニット1における各枠体2の界壁W側の側面(左側下地ユニット1では枠体2の左側面、右側下地ユニット1では枠体2の右側面)の角部や中間部に一定厚さの隙間調整材(図示せず)を取り付けておき、その隙間調整材が界壁Wに当接するように下地ユニット1を起立させる。こうすることで、下地ユニット1と界壁Wとの間に一定の隙間を空けることができる。
尚、隙間調整材は、下地ユニット1が床面Fに固定された後に除去してもよく、下地ユニット1が自立状態で界壁Wと接触することはなくなるが、隙間調整材として、例えばゴム系、PVC系、アスファルト系、発泡ウレタン系等の制振効果の高い材料を用いれば、除去せずにそのまま残しておいてもよい。すなわち、例えば下地ユニット1をビス等により界壁Wと固定した場合、そのビス等を介して下地ユニット1(階段S)の振動が界壁Wに伝達されるようになるが、それとは異なり、下地ユニット1と界壁Wとの間に介在されるものが制振効果の高い隙間調整材であれば、階段Sの振動は殆ど界壁Wに伝達され難くなるためである。このように隙間調整材を残すことで施工性は向上する。
また、左右の下地ユニット1,1の高い部分の間を棒状の部材の架け渡しにより固定し、各下地ユニット1と界壁Wとの間に一定の隙間が形成されるように振れ止めするようにしてもよい。
そして、左右の下地ユニット1,1を、その前端部(下端部)において仮止め部材8により一体的に連結する。具体的には、左右の下地ユニット1,1前端の両枠体2,2間に仮止め部材8を挟むように配置し、両枠体2,2と仮止め部材8とをビス等で連結するとともに、仮止め部材8も下側の横枠材8aにおいて床面Fにビス等により固定する。このことにより、左右の下地ユニット1,1が前端部で仮止め部材8により一体的に連結されることとなり、下地ユニット1,1が左右方向に傾倒するのを防止できる。
この後、左右の下地ユニット1,1の前端部に力桁支持部材11を配置し、その力桁支持部材11を左右の下地ユニット1,1前端の両枠体2,2前面にビス等により一体的に連結し、下側の横枠材11aで床面Fに固定する。
次いで、この力桁支持部材11上端の上側横枠材11aと床面Fとの間に左右の力桁13,13を斜めに架け渡し、各力桁13の上側係止部13aを力桁支持部材11における2本の支持用縦枠材11c,11cの位置の上側横枠材11aに載置係合して固定し、床面当接部13bを床面Fに当接させ、下側係止部13cを床面F上の係止桟25に係合してビス等で固定する。このことにより、力桁13,13の上端部を力桁支持部材11を介して下地ユニット1,1に連結固定し、下端部を階段室Rの床面Fに固定する。
このような下地ユニット1,1及び力桁13,13の施工と並行して、予め、各踏板21と、該踏板21の下側に隣接する各蹴込板22とを連結により一体化して断面L字状の複数の踏板ユニット20,20,…を形成しておく。
そして、最初に力桁階段部12の左右の力桁13,13における最下段の蹴込板取付部16,16に単独の蹴込板22を架け渡してビス等により固定した後、各踏板ユニット20を階段Sの下部から上側に向かって順に施工する。すなわち、左右の力桁13,13の下から2段目の踏板取付部15,15及び蹴込板取付部16,16に踏板ユニット20を配置し、その踏板ユニット20の蹴込板22を後面(裏面)で蹴込板取付部16,16に当接させた状態で、踏板21を表側(上面側)から力桁13,13の踏板取付部15,15にビス等により固定する。以後は同様にして、力桁13,13の上端部まで順に踏板ユニット20を取付固定する。そのとき、最下段の蹴込板22や、踏板ユニット20の踏板21及び蹴込板22は、いずれも左右端部が界壁W,Wに間隙をあけた状態で取り付ける。
このようにして力桁13,13に踏板ユニット20,20,…を取り付けた後、今度は左右の下地ユニット1,1の最下段の踏板取付部4,4及び蹴込板取付部5,5に踏板ユニット20を配置し、その踏板ユニット20の蹴込板22を後面(裏面)で蹴込板取付部5,5に当接させた状態で、踏板21をやはり表側(上面側)から踏板取付部4,4にビス等により固定する。以後は同様にして、下地ユニット1,1の上端部の廻り階段部S2まで順に踏板ユニット20,20,…を取付固定する。そのとき、各踏板ユニット20の踏板21及び蹴込板22は、いずれも左右端部が界壁W,Wに間隙をあけた状態で取り付ける。
階段Sの全てに踏板ユニット20,20,…(踏板21及び蹴込板22)が取り付けられると、その後、各踏板21の前端部に段鼻部材28のベース部29を両面テープとステープルやビス等とによって取り付けるとともに、その段鼻部材28後側(奥側)の踏板21上面にクッション性を有する表面仕上げ材53を固定し、次いで、段鼻部材28のベース部29にカバー部39を取り付ける。
最後に、界壁Wに巾木を取り付けて、下地ユニット1や踏板ユニット20と界壁Wとの間の隙間を上側(外部)から見て隠蔽する。以上により階段Sの施工が完了する。
したがって、この実施形態においては、階段室Rに施工される階段Sの直階段部S1の上段部及び廻り階段部S2の部分に、左右の下地ユニット1,1が各々の下端部を階段室Rの床面Fに固定して自立した状態で設けられ、各下地ユニット1は界壁Wに固定されずに両者間に隙間が空けられ、左右の下地ユニット1,1の踏板取付部4,4間に踏板21が架け渡されて固定され、蹴込板取付部5,5間に蹴込板22が架け渡され、各踏板21及び各蹴込板22の左右端部と界壁W,Wとの間にも隙間が形成されている。また、直階段部S1の下段部における力桁階段部12の左右の力桁13,13の踏板取付部15,15間に踏板21が架け渡されて固定され、また蹴込板取付部15,15間に蹴込板22が架け渡され、この各踏板21及び各蹴込板22の左右端部と界壁W,Wとの間にも隙間が形成されている。そのため、左右の下地ユニット1,1、踏板21及び蹴込板22を含む階段Sは階段室Rの床面F上に固定支持され、左右両側の界壁W,Wに対し完全に分離された構造となって、下地ユニット1,1、踏板21及び蹴込板22を含む階段Sが界壁W,Wから完全に絶縁されることとなる。その結果、階段Sを人が昇降するときの騒音や振動が、界壁W,Wに隣接する1階の居室に対し界壁W,Wを通して伝達するのが可及的に少なくなり、その居室に対する十分な防音性能を確保することができる。
しかも、各踏板21の上面にクッション性を有する表面仕上げ材53が取付固定されているので、歩行者が踏板21を踏むときの歩行音を低減することができる。
さらに、こうして各踏板21の上面が、その上面に固定された表面仕上げ材53により覆われるので、踏板ユニット20を踏板21において表側(上面側)からビス等により下地ユニット1及び力桁13に固定するようにしていても、そのビス等を表面仕上げ材53によって隠蔽でき、ビス等が各踏板21上面に露出することはなく、階段Sの美観性が保たれる。
また、下地ユニット1,1に踏板取付部4,4,…と蹴込板取付部5,5,…とが階段状に形成され、これら踏板取付部4に踏板21が取付固定され、蹴込板取付部5に蹴込板22が配置されるので、別途に雛段や側板を界壁W,Wに固定する必要がなく、その分、階段Sの施工を容易に行うことができる。
さらに、左右の下地ユニット1,1は両者間に架け渡された踏板21により連結されているので、階段Sの剛性を確保することができる。
また、直階段部S1の上段部及び廻り階段部S2の下地ユニット1,1は、高さの異なる複数の矩形状の枠体2,2,…が、枠体2内の平面を同じ平面上に位置させるように高さの順に直列に並べられて一体的に連結された枠組み構造とされ、各枠体2の上面に踏板取付部4が形成されているので、複数の枠体2,2,…の組み合わせによって下地ユニット1が構成されることとなり、下地ユニット1を容易に作製できるとともに、その施工現場での施工も容易となる。
さらに、左右の下地ユニット1,1は、その前端部において仮止め部材8及び力桁支持部材11(いずれも連結部材)により一体的に連結されているので、階段Sの左右方向の剛性を大に確保することができる。しかも、直階段部S1の上段部に位置する下地ユニット1と、廻り階段部S2に位置する下地ユニット1とが平面視で直交して連結されているので、この交差構造によっても階段Sの剛性が大に確保される。
そして、階段Sの直階段部S1の下段部は、左右の力桁13,13に踏板21,21,…及び蹴込板22,22,…(踏板ユニット20)が固定された力桁階段部12で構成され、この力桁階段部12の力桁13,13の上端部は下地ユニット1,1に連結されている一方、下端部は階段室Rの床面Fに固定されているので、階段Sの直階段部S1の上段部における左右の下地ユニット1,1に力桁階段部12の左右の力桁13,13の上端部を連結し、力桁13,13の下端部を床面Fに固定するだけで、階段Sを施工することができる。そのため、階段Sの全体を下地ユニット1,1を有するものと比べ、階段Sの施工時の作業性を高めることができる。
この実施形態では、各踏板21は、該踏板21の上側に隣接する蹴込板22と連結一体化されて断面L字状の踏板ユニット20とされ、この踏板ユニット20が、踏板21において表側から下地ユニット1,1及び力桁13,13に固定されているので、踏板ユニット20を下地ユニット1,1及び力桁13,13に固定するだけで、踏板21と共に蹴込板22をも同時に施工することができる。しかも、踏板ユニット20を踏板21の表側から固定すればよいので、裏側から固定する手間が不要となり、これらによって施工性を高めることができる。
(実施形態2)
図8及び図9は本発明の実施形態2を示し(尚、図1〜図7と同じ部分については同じ符号を付してその詳細な説明は省略する)、階段Sの直階段部S1及び廻り階段部S2の全てを、下地ユニット1,1を有するものとしたものである。
すなわち、この実施形態では、実施形態1とは異なり、直階段部S1の下段部に力桁階段部11及び力桁支持部材11が設けられておらず、この直階段部S1の下段部には枠組み構造の下地ユニット1,1が上段部から連続するように設けられている。この直階段部S1の下段部における下地ユニット1,1は上段部と同様に、複数(図示例では6つ)の矩形状の枠体2,2,…が並べられて一体的に連結された枠組み構造とされ、複数の枠体2,2,…の高さは互いに異なっている。このような枠組み構造は、実施形態1と同様であるので、その詳細な説明を省略する。
また、その他の構成は実施形態1と同じであり、従って、この実施形態でも実施形態1と同様の作用効果を奏することができる。
(その他の実施形態)
上記各実施形態では、左右の下地ユニット1,1を枠体2,2,…が並べられた枠組み構造としているが、そのような枠組み以外の構造、例えばパネル体を採用することもでき、そのパネル体を床面Fに固定して自立させればよい。しかし、下地ユニット1,1の作製が容易となる点では枠組み構造を利用するのが好ましい。
また、上記各実施形態では、踏板21と蹴込板22とを一体化して踏板ユニット20を構成し、その踏板ユニット20を踏板で固定するようにしているが、踏板ユニット20を設けずに踏板21及び蹴込板22をそれぞれ独立して下地ユニット1,1及び力桁13,13の踏板取付部及び蹴込板取付部に取付固定するようにすることもできる。しかし、施工性を高め得る点では踏板ユニット20を設けるのがよい。
さらに、上記各実施形態では、階段Sは直階段部S1と廻り階段部S2とが組み合わされているが、直階段部S1のみの階段であっても本発明を適用することができる。また、下地ユニット1,1の上部に踏板21及び蹴込板22(踏板ユニット20)を架け渡すのではなく、下地ユニット1,1の対向面に架け渡すようにしてもよい。