本発明は、炭化炉ケースと、炭化炉ケース内に収納された炭化室と、炭化炉ケース内側面と外周側面との間に形成した熱流路層と、熱流路層に形成したジグザグ状の熱流路と、熱流路に熱風供給路を介して連通した燃焼室と、炭化室と燃焼室との間に連通介設した乾留ガス移送管と、燃焼室に連通した燃焼ガス管と、炭化室を冷却するために熱流路に熱風にかわって冷風を送風するための送風機とより構成した炭化装置により500℃以下、最適には200℃〜450℃の範囲で木質バイオマス原料を半炭化処理し、次いで、半炭化処理された木質バイオマス原料と廃棄用の合成樹脂をそれぞれ粉砕して混練し、その後加圧成型してバイオマス燃料に適した形状に成型することを特徴とするバイオマス燃料の製造方法に関する。
ここで本発明者により既に特許された特許第6052649号では木質バイオマス原料は通常500℃以上の熱で炭化を行い結果としての炭化物をそのまま燃料として使用することを重要な技術構成としているが、本発明では炭化処理温度を500℃よりも低い温度、例えば200〜450℃、好適には250〜300℃で炭化処理を行う。
より具体的には200〜450℃の低炭化温度及び低酸素又は無酸素環境条件の下で炭化処理を行うと、木質バイオマス原料の主成分であるセルロースやリグニン、ヘミセルロース等の繊維質が熱分解を受け炭素成分が増加することで炭化物の破砕性が向上すると共に、木質バイオマス原料中の水分が蒸発して水分含有量が低下することで炭化物単位質量あたりの発熱量が増加する。
更には、原料組成中に一部完全炭化されない組織が残存したり熱分解に伴い生成される有機化合物等の可燃性成分が一部残留することで半炭化物の着火性を向上させる。
すなわち、かかる成果物としての低温処理炭化物を本発明では「半炭化物」と称し、本発明の要旨はかかる半炭化物の状態において廃棄用の合成樹脂と混練してバイオマス燃料に適した形状に成型化することにある。
また、炭化室内では木質バイオマス原料を網状の上方開口の箱型炭化トレイに収納して重ねて段積みして炭化室を密閉しエジェクタ―機能により炭化室内の空気を吸引して無酸素状態として熱流路層からの500℃以下、最適には200℃〜450℃の範囲の輻射熱により木質バイオマス原料を加熱して炭化する。
また、炭化室外周の五側面にそれぞれジグザグ状に形成した熱流路は、互いに一定間隔を保持して並設した多数の隔壁間により熱単体流路を多数平行して形成すると共に、隣接する各熱単体流路はそれぞれ始端と終端においてのみ連通してジグザグを形成するように構成している。
また、熱流路は、外気と遮断した熱流路層において炭化室外周の五側面にそれぞれジグザグ状に形成すると共に、五側面のうち三側面のジグザグ状の熱流路はそれぞれ一本に連続した第1流路とし、他の二側面のジグザグ状の熱流路はそれぞれ連続した第2流路とし、更には、第1流路の始端と第2流路の始端は共に炭化室の一側面に開口した燃焼室からの熱風供給路の終端開口部に連通して合流すると共に、第1流路の終端と第2流路の終端は共に熱風供給路の終端開口部と反対側の炭化室の一側面に設けた熱風排出路の始端開口部に連通して合流している。
また、半炭化処理された木質バイオマス原料と混練する廃棄用の合成樹脂は農業用廃棄ポリエチレン或いは塩化ビニルである。
また、半炭化処理された木質バイオマス原料と廃棄用の合成樹脂とは約3対1の重量割合でそれぞれ粉砕して混練している。
また、炭化炉ケースと、炭化室と、炭化炉ケース内側面と外周側面との間の熱流路層と、ジグザグ状の熱流路と、熱流路に連通した燃焼室と、炭化室と燃焼室との間のガス移送管と、燃焼室に連通した燃焼ガス管とより構成した炭化装置は、移動可能なトレーラのシャーシに積載可能とすることにより木質バイオマス原料の発生個所に赴いてバイオマス燃料をつくることができる。
以下、実施形態に係るバイオマス燃料の製造方法について図面を参照しながら説明する。図1は、バイオマス燃料の製造方法に使用する炭化装置の全体構成の概念を示す説明図である。また、図2は、炭化装置の外観を示す正面図である。図4は、炭化室2を囲繞する熱流路4の構成を一側面上方側からみた斜視図である。
〔1.炭化装置〕
本発明に係るバイオマス燃料の製造方法に使用する炭化装置Aは、図1及び図2に示すように、その中央部に熱風を発生する燃焼室6と、燃焼室6の上方両端側に熱風が流通する熱流路層3、3’で正面を除いた外周を囲まれた2つの炭化室2、2’と、を備えており、熱風を熱流路層3、3’全域に亘って送風循環させ、炭化室2、2’内部に収容した炭化処理対象物を炭化室2外部から間接的に加熱して炭化しようとするものである。
熱流路層3には、図4に示すように、蛇型構造の熱流路4が形成されており、炭化室2、2の外周で熱風を規則的に流通させて熱エネルギーを効果的に炭化室2、2’内部の炭化処理対象物に伝熱する。
すなわち、熱風や冷風といった気体の流体が炭化室2へ与える様々な影響、例えば熱交換に伴う炭化室2側壁の熱膨張や熱斑、伝熱効率、熱流路4内を流通する流体の流速を加味した上で、複数の隔壁41を炭化室2の外周に一定の規則性を有して配設し、ジグザグ状の熱流路4a、4bが形成される。
そして、このようなジグザグ状の熱流路4a、4b内を熱風が流通することにより、熱風の熱エネルギーが炭化室2、2’内部の炭化処理対象物に極めて効果的且つ効率よく伝わり、炭化処理速度や固定炭化率といった炭化装置Aとしての炭化処理機能を飛躍的に向上させている。
このように間接加熱方式の炭化装置Aは、熱媒流体や冷媒流体との間で加熱や冷却といった熱交換率を飛躍的に上昇させる熱流路4a、4bを炭化室2、2’に対し一定の規則性に従って備え、熱交換時に発生する弊害を防止ししている。
次に、本実施例に係る炭化装置Aの各構成について詳細に説明する。図5は、炭化室2を囲繞する熱流路4の構成を他側面下方側からみた斜視図である。なお、以下の説明において、左右対称構造を有する炭化室等について、炭化室2を中心に説明し、他方の炭化室等については説明を省略する。
炭化室2は、図4、図5及び図7に示すように、箱型方形状に形成しており、炭化室2と相似形の炭化炉ケース1内に収納されている。
すなわち、炭化炉本体11は炭化炉ケース1と炭化炉ケース1内に収納する炭化室2とで入れ子構造とし、炭化炉ケース1内側面と炭化室2の炭化処理対象物出入口2f側を除いた外周五側面との間に外気と遮断するように側板3aにより外周が閉塞された熱流路層3を形成し、この熱流路層3にジグザグ状の熱流路4を形成している。
更には、図1及び図7に示すように、熱流路層3の外側板3aと炭化炉ケース1の内側板との間には一定の間隙を形成して断熱空気層80としている。従って、炭化炉ケース1とその内部に入れ子構造で収納した炭化室2との間には扉部12と底面を除いて他の周側面間にこのような断熱空気層80が形成されていることになる。
また、図2に示すように、炭化室2は、内部に炭化処理対象物を収容する空間と、正面側に炭化処理対象物の炭化室内部への装入及び炭化処理物の収集を可能とする正面開口の炭化処理対象物出入口2fを形成し、同炭化処理対象物出入口2fを閉塞して炭化室2内部に収容した炭化処理対象物と外気との接触を遮断する扉部12が開閉自在に枢支されている。
かかる扉部12と炭化炉ケース1のそれぞれの内部にはセラミックウール81などの断熱素材が充填されており、実際にはシート状のセラミックウールを数枚積層して貫通ボルトなどにより固定している。
また、炭化室2は、図1及び図4に示すように、その一側面の中央部上部で乾留ガス移送管7を介して燃焼室6内と連通連設し炭化室2内で生成した乾留ガスを燃焼室6内に還流して高燃焼効率化を図っている。
かかる炭化室2の内部には、炭化処理対象物として、例えば廃棄材木や日用品のうち有機材料でできている廃棄物などが収納される。そのために、炭化室2内には炭化処理対象物の収納機構を取り出し自在に収納する。
次に、図1〜図3を参照しつつ、燃焼室6の構成について説明する。図3(a)は、燃焼室6の全体構成を示す説明図であり、図3(b)は、燃焼室6内部における熱風の旋回流の発生状態を示す説明図である。
燃焼室6は、図1及び図2に示すように、直方体形状で前後二個の炭化室2の間に挟まれるように配設されている。燃焼室6は、前側壁6a略中央に熱風生成用のバーナー61が設けられ、上側壁6bの前部位置から燃焼室6内方に乾留ガス移送管7、7が突出され、上側壁6bの後部位置には2つの熱風流入管5a、5a’及びその上部で連通する熱風送気部62が配設され、熱風送気部62後方には混焼部63が形成されて構成している。なお、燃焼室6の全外周は耐火材料、例えば耐火煙瓦等で耐熱性壁体64で囲繞している。
バーナー61は、後述する灯油ガスを燃料として燃焼室6の内部で燃焼室6の後側壁6cに向かう火炎を噴射し、移送空気等を燃焼加熱して熱風を生成する。
また、一対の乾留ガス移送管7、7’は、燃焼室6の上側壁6bの前部位置から燃焼室6の内方にそれぞれ突出している。7c、7c’は乾留ガス移送管7、7’の先端開口部、6cは燃焼室6の後側壁を示す。
すなわち、一対の乾留ガス移送管7、7’の先端開口部7c、7c’は、図3(a)及び図3(b)に示すように、乾留ガス移送管7、7’から燃焼室6内部へ噴出供給される乾留ガスや燃焼用空気が左右両側壁6d、6d’に斜め方向に突き当たると共にバーナー61の火炎噴射方向両側に沿って互いに回転方向を違える2つの旋回流を発生させるように配設している。
混焼部63は、熱風送気部62の後方で、燃焼室6の後側壁6c、上下側壁及び左右両側壁6d、6d’で囲まれる所定空間として設けている。熱風送気部62は、燃焼室6の上側壁6bの後部位置から上方に向けて突設された所定空間を有する箱型部材であり、その上部で2つの熱風流入管5a、5a’を連設している。
このように燃焼室6を構成することにより、互いに旋回方向を違えた乾留ガスと燃焼空気とからなる2つの旋回流は、負圧となる中心部に更なる乾留ガスや燃焼用空気を引き込みつつ、バーナー61の火炎噴射方向に沿って燃焼しながら混焼部63に移動する。
そして混焼部63では、移動してきた旋回流が燃焼室6の後側壁6cや左右側壁6d、6d’に突き当たり乱流状態となることで混焼促進され乾留ガスを完全燃焼して高温の熱風を生起することを可能としている。
この熱風は、いったん燃焼室6の上側壁6b後部の熱風送気部62内に一定量が吹き溜まり一時的に滞留することで、燃焼室6の内圧や熱上昇付勢が滞留熱風に略均一化して働き、2つの熱風流入管5a、5a’に対して流入する熱風の分流量割合を一定としている。
このように、燃焼室6は、比較的小型でシンプルな構造を有しつつも乾留ガスの燃焼効率を飛躍的に向上して高温の熱風を生起することを可能としている。なお本実施形態の燃焼室6の内部容積は、約0.71m3となるように設計されており、燃焼室を大型化することなく上述の構成を備えることで、効果的な高温の熱風生成を可能としている。
また、燃焼室6は、熱風流入管5a、5a’を介して炭化室2、2’の外周に形成した熱流路4、4’と連通連設している。すなわち、燃焼室6で生成した熱風は、熱風流入管5a、5a’を介して、上述の炭化室2、2’の外周に形成した熱流路4、4’を炭化室2、2’と熱交換をしながら循環し、熱風排出路10である排出管10aを通じて煙突10bから排出されることとなる。
次に、熱流路4の基本的な構成について、図4〜図6を参照しながら説明する。図6は、2つの熱流路4a、4bの流通過程を示す展開図である。
熱流路4は、図4〜図6に示すように、外気と遮断した熱流路層3において炭化室2外周の五側面にそれぞれジグザグ状に形成すると共に、五側面のうち三側面のジグザグ状の熱流路層3はそれぞれ一本に連続した第1流路4aとし、他の二側面のジグザグ状の熱流路はそれぞれ連続した第2流路4bとして構成している。
更には、図4に示すように、第1流路4aの始端と第2流路4bの始端は共に炭化室2の一側面2aに開口した燃焼室6からの熱風供給路5の終端開口部5bに連通して合流すると共に、図5に示すように、第1流路4aの終端と第2流路4bの終端は共に熱風供給路5の終端開口部と反対側の炭化室2の一側面2aに設けた熱風排出路10の始端開口部10cに連通して合流する構成とし、ジグザグ形状を構成すると共に各流路間は複数の隔壁41で区画されている。
換言すれば、炭化室2の外周側面に複数の隔壁41を立設して炭化室2の外方をジグザグ形状に区画すると、この区画された通路が熱流路4となり、図4〜図6に示すようにその周囲を外側板3aにより外気と遮断した熱流路層3を形成することとなる。
第1流路4aと第2流路4bとは、熱風流入管5aの終端開口部5bを略半分にする位置で炭化室2の一側面2aに設けた分流壁40により区画される。分流壁40は、燃焼室6から送られてくる熱風を第1流路4aと第2流路4bとに分流する部位であり、熱風流入管5aが設けられた炭化室2の一側面2aの背面2d側近傍位置、すなわち熱風流入管5aの終端開口を半分に分割する位置に炭化室2の一側面2aに上下方向に連設している。
炭化室2外周の五側面の各熱流路4a、4bは、それぞれ各側面に所定間隔を隔てて複数の隔壁41を立設することにより熱流路層3に形成される。なお、各流路4a、4bのより具体的な構成は後述するとおりである。
第1流路4aは、図4〜図6に示すように、炭化室2の一側面2aに形成した第1流路上流部4a−1と、炭化室2の上面2bに形成した第1流路中流部4a−2と、炭化室2の他側面2cに形成した第1流路下流部4a−3とで構成している。同様にして、第2流路4bは、炭化室2の背面2dに形成した第2流路上流部4b−1と、炭化室2の下面2eに形成した第2流路下流部4b−2とで構成している。
第1流路4aは長流路とし第2流路4bは短流路とし、五側面に形成した熱流路長さを可及的長く形成することで、各流路内部を流通する熱風の流通時間を引き延ばしつつも2つの流路に熱風を分流させて炭化室2内部への熱交換効率を向上させている。
第1流路4aや第2流路4bは、それぞれ上流側と下流側にかけて、各流路部の始端と終端でのみ連通している。また、第1流路4aと第2流路4bのそれぞれの終端は、図5に示すように、炭化室2の分流壁40を設けた一側面2aと反対側の側壁6dに、熱風排出路10である排出管10aの始端開口部10cで連通して合流するように構成している。
すなわち、熱流路4は、最上流端に分流壁40による分流部を形成して2つの流路に分けることで熱風の上流側と下流側の熱エネルギー差を可及的なくして熱斑の発生を抑制すると共に、2つの流路の最下流端には排出管10aの始端開口部10cによる合流部を形成して一方の流路の熱風排出速度に応じて他方の流路の熱風を引き込むエジェクション効果を生起し、分流部にて各流路の体積に応じた熱風流入量を一定とすることを可能としている。
次いで、図1及び図3を参照しながら、燃焼室6の燃焼機構について説明する。燃焼室6のバーナー61は、灯油ガス、または炭化処理対象物から熱分解時に発生する乾留ガスを燃料として燃焼し、熱流路4に熱風を供給して炭化室2を間接加熱する。
燃焼室6のバーナー61の基部は、図1に示すように、灯油供給管14aを介して灯油タンク14と、また、燃焼空気送管13を介して燃焼用空気送風用の送風機9aと、それぞれ連通連設している。
また、炭化室2と燃焼室6とを連通する乾留ガス移送管7の中途部7bには、送風機9bからの燃焼用空気を乾留ガスに混入する燃焼空気送管16が連結している。より具体的には、乾留ガス移送管7の膨出形状の中途部7b内で、送風機9bと連結した燃焼空気送管16を、その終端開口を下流側に向けて(燃焼室6側方向)配設している。
すなわち、送風機9bは、乾留ガス移送管7に供給する空気流量に応じて、乾留ガス混焼用の空気を燃焼室6内へ吹き込むとともに、炭化室2で発生した乾留ガスを炭化室2から乾留ガス移送管7へ引き込むエジェクターとして機能する。
また、燃焼空気送管13、灯油供給管14a、燃焼空気送管16、乾留ガス移送管7の中途部には、自動開閉バルブ13a、16a、14b、7aが設けられ制御盤15で制御される。
このうち乾留ガス移送管7の自動開閉バルブ7aは、乾留ガス移送管7において燃焼空気送管16の連結部位よりも上流側の中途部に装着しており燃焼室6への乾留ガスの過剰供給を防止している。
そして、燃焼室6のバーナー61の燃焼調整は、炭化炉本体11の外部に独立に配置した制御盤15のタッチパネルディスプレーを通じて行う。例えば、バーナー61の燃焼温度が燃焼室6に配設した温度センサー15b(望ましくはUVセンサー)からの情報を制御盤15に内蔵されたバーナー制御ユニット15aを介して外部出力される。
燃焼室6への灯油ガスや乾留ガスの供給の自動調節は、制御盤15に内蔵されたバーナー制御ユニット15aや図示しない炭化室制御ユニットを通じて、炭化室2の温度上昇に伴い炭化室2内部で発生した乾留ガスの供給量に応じて行う。なお、制御盤15は、開閉バルブVや炭化室温度を検出する熱電帯Tとも連絡している。
すなわち、制御盤15は、バーナー61の燃焼出力を40000kcl/h〜460000kcl/hとし、炭化室2の温度を0℃以上1000℃以下として燃焼室6への灯油ガスや乾留ガスの供給量を自動制御し、炭化室2内部に収容した炭化処理対象物を無酸素又は低酸素状態で高熱炭化を可能とする。
このように、本実施形態に係る炭化装置Aの燃焼室6の燃焼機構は、制御盤15を介して炭化室2、2’の情報と燃焼室6の情報とを連携することにより、炭化作業中の不意の事故を回避することができ、しかも低燃費化することができ、作業負担を軽減すると共に、極めて効率的で安定した炭化処理作業を実現可能としている。
次に、図4〜図6を参照しながら、2つの熱流路4a、4bの具体的な構成について説明する。燃焼室6で発生した高温の熱風は、炭化室2外周の五側面にそれぞれジグザグ状に形成した第1流路4aと第2流路4bとを流通し、炭化室2と熱交換する。
第1流路4aと第2流路4bは、図4〜図6に示すように、互いに一定間隔を保持して並設した多数の隔壁41間により熱単体流路42を多数平行して形成すると共に、隣接する各熱単体流路42はそれぞれ始端43と終端44においてのみ連通してジグザグを形成するように構成している。
炭化室2の五側面に立設する隔壁41は、長手を炭化室2の各互側面の幅員よりも短く且つ短手を炭化室2と炭化炉ケース1との幅員と略同じ長さに形成した平板であり、炭化室2各五側面において、それぞれ上下、左右、前後を互いにずらして所定間隔を隔てて平行に配設することで隣接する熱単体流路42同士の始端43や終端44を連通する。また、隣接する隔壁41の互いの間隔幅は、約200mmとしている。
そして、図6に示すように、第1流路上流部4a−1や第1流路下流部4a−3は、炭化室2の一側面2aや他側面2cにおいて熱単体流路42の長手方向を上下方向に沿うようにジグザグ状に複数の熱単体流路42を多数平行して形成している。一方で、第1流路中流部4a−2は、炭化室2の上面で第1流路上流部4a−1や第1流路下流部4a−3の熱単体流路42の長手方向に直交する方向でジグザグ状に熱単体流路42を多数平行にして形成している。
また、第2流路上流部4b−1は炭化室2の背面で熱風流通方向を上部から下部にかけて左右方向にジグザグ状に降下するように熱単体流路42を多数平行して形成している。一方で、第2流路下流部4b−2は炭化室2の底面で第2流路上流部4b−1の熱単体流路42の長手方向に直交する方向で、一端から他端にかけてジグザグ状にして熱単体流路42を多数平行して形成している。
このように形成した熱流路4は、炭化処理対象物の炭化処理後に炭化室2を冷却する冷却流路として兼用することができる。すなわち、炭化室2の冷却は、図1に示すように、バーナー61の燃焼を停止して送風機9aや送風機9bの他に、送風機9cから供給される大容量の冷風を熱風供給路5を介して熱流路4に流通させることにより行う。
送風機9cは、炭化室2を強制冷却するために増量空気を送風する主力ブロアとして機能し、冷却空気送管17を介して熱風流入管5aの膨出状中途部で熱風流入管5aと連結している。なお、冷却空気送管17には自動開閉バルブ17aが装着されており、炭化加熱時は制御盤15により自動開閉バルブ17aを閉鎖状態とする。
このような炭化処理後の冷風の流通により、熱流路4、4’を備えた炭化室2、2’の強制空冷機能を付与し、炭化室2の冷却時間を短縮することができる。
このように、本発明による炭化装置Aは、炭化処理の際には少ない熱エネルギー源で優れた炭化処理機能を有しつつも、炭化処理後には冷却機能をも兼用できる流路構造を有しているためコンパクト化が可能であり、1つの燃焼室6に対して2つの炭化室2、2’を備えて大容量の炭化処理対象物を一度に炭化処理するこが可能としている。なお、本実施形態に係る炭化装置Aおいて、上述のごとく内部容積を約0.71m3とした燃焼室6は、内部容積(収容部)を約4m3とした炭化室2と熱風供給路5を介して連通連設している。
すなわち、熱風生成空間を小型化した燃焼室6であるにも関わらず高温の熱風を生起するとともに、炭化室が熱交換効率を飛躍的に上昇させた構造を備えることで、2つの炭化室2、2’の内部に十分に熱を行き渡らせ、収納した炭化処理対象物を炭化することを可能としている。
このように構成した炭化室2の内部には、炭化処理対象物を直接装入して炭化処理に供することは勿論、図2及び図7に示すように、炭化処理対象物を収納した状態の収納機構90として炭化トレイ20を装入して炭化処理対象物を炭化処理することもできる。
すなわち炭化トレイ20は、図2や図8に示すように、炭化室2内部空間よりやや小さくした方形状に形成し上方開放の箱型にして周壁は金網20aで構成し、底部四隅には脚体20bを垂設して炭化トレイ20を数段に重ねたときに脚体20bを介して上下段の炭化トレイ20の間にフォークリフトの爪が差し込まれる空間Sが形成されている。
このような構成により、炭化室2内において炭化トレイ20に収納した任意に不整列に積層した不定形状の炭化処理対象物に可及的均一迅速にかつ万遍なく輻射熱が照射されるとともに、炭化処理対象物の間隙を熱分解に伴い生じる熱乾留ガスが効率よく流通して不定形状の炭化処理対象物の全面に可及的に熱風を接触させ炭化処理の効率化を行うことができる。
また、本発明による炭化装置Aは、図9〜図12に示すように、炭化処理車両30に搭載可能な構造としている。図9及び図10は、炭化室を炭化室ケースへ収容する際の載置構造を示す説明図である。図11及び図12は、炭化装置Aを搭載する炭化処理車両30を示す説明図である。
炭化炉本体11は、図9及び図10に示すように、炭化室2の底面の所定箇所、例えば、炭化室2の下方に敷設するレール34、34’に対応する位置の4か所に支持突起21、21’を突設し、炭化炉ケース1の底部にH鋼35、35’を介して敷設したレール34、34’上に載置可能に構成している。
しかも、炭化室2の支持突起21、21’はレール34、34’に穿設した突起支持孔34a、34a’に一定のクリアランスを保持して遊嵌されるように構成しており、熱膨張による構成部材の伸縮から生じる炭化室2の変形変位を突起支持孔34a、34a’のクリアランスで吸収すべく構成している。
このように炭化炉本体11を構成することにより、炭化室2、2’の熱膨張によって生起する構成部材の伸縮を、突起支持孔34a、34a’と支持突起21、21’との間のクリアランスで吸収することを可能としている。
そして、図11及び図12に示すように、このように構成した二個の炭化炉本体11、11’と炭化炉本体11、11’の間の燃焼室6を、車載用のトレーラ31のシャーシ33に炭化炉本体11、11’の各部材や構造セクションの重量負荷を可及的に軽減できるような重量配分を行うように配設して炭化処理車両30を構成している。
すなわち、トレーラ31のシャーシ33の後半部33bを前半部33aをよりやや下方位置に形成し、図12に示すように、後半部33bのシャーシ33には二個の炭化炉本体11、11’を前後に配設すると共にその間に燃焼室6を介設し、前半部33aのシャーシ33には操作及び作動関係の付属関連部材91として制御盤15を備える操作制御装置19や発電装置18、灯油タンク14、灯油ポンプ14cを配設している。
このように構成することでシャーシ33の後半部33bに、前半部33aより下位置で二個の炭化炉本体11の大重量負荷をかけてトラクター32とトレーラ31との連結部分における重量負荷の軽減を図ることができ、可及的に牽引動力の伝達を円滑に行うことができるために炭化装置の路上走行移動に伴う牽引に何ら支障がない。
更には、トレーラ31とトラクター32とを連結して車両全体を長大化させて路上走行を行う場合に路上カーブのハンドリングに際し、シャーシ33の後半部33bでシャーシ33の前半部33aより下位置において二個の炭化炉本体11、11’の重量負荷をかけているので、シャーシ33の最後尾が振れる状態を可及的に防止することができることになりより安全な走行を行うことができる。
また、シャーシ33前半部33aに操作及び作動関係の付属関連部材91を配設したことにより、装置の点検やメンテナンス作業が行い易く、また路上走行時の路面の凹凸に伴う走行振動が前半部33aが後半部33bより高い位置にあるため振動衝撃を直接に受けることなく計器類の誤作動や故障を可及的に防止することができる。
〔2.炭化処理車両の使用方法〕
次に、炭化装置A及び同炭化装置Aを搭載した炭化処理車両30の使用方法について説明する。
間接加熱方式の炭化装置Aを搭載した炭化処理車両30は、空の炭化トレイ20を複数積んで廃棄物発生地を巡回し、廃棄物排出地で炭化処理対象物、すなわち、木質バイオマス原料、例えば木材の材部分を除く未利用の木質資源(バーク、枝条、草木類、竹、剪定枝、林地残材、植林の針葉樹、広葉樹、灌木、早生樹としてのユーカリ、ポプラ、コヨウザン、チャンチンモドキ、センダンなど、樹皮、建築廃材、稲わら、バガス、家畜用の敷き藁、野菜くず等)を炭化トレイ20に収容する。ここで用いる木質バイオマス原料は廃棄物由来の砂、釘や植物本体の含有するシリカ等の含有量が少なくリグニン含有量の高いものが望ましい。
木質バイオマス原料の収集後、二個の炭化室2、2’またはいずれか一方の炭化室2、2’に炭化トレイ20を装入して扉部12にて密閉し、炭化処理車両30に搭載した制御盤15を通じて燃焼室6のバーナー61を作動させる。
制御盤15には、各種スイッチ(未図示)が装着されており、バーナー61を自動で点火して、最初に灯油ガス燃料を利用してバーナー61を燃焼させる。すなわち、燃焼空気送管13の自動開閉バルブ13a及び灯油供給管14aの自動開閉バルブ14bの開放し、送風機9aからの移送空気や灯油タンク14からの灯油ガスがバーナー61に供給し、燃焼室6内にバーナー61の火炎噴射を発生させる。
バーナー61の燃焼により燃焼室6内に熱風を発生させ、炭化室2、2’を加熱すると、炭化室2、2’内部で可燃性の乾留ガスが発生する。炭化室2、2’内部で発生した乾留ガスの主な成分は、木質バイオマス原料の主成分であるセルロースやリグニン、ヘミセルロース等の繊維質が熱分解を受けて生成されたフェノール類等の可燃性有機化合物である。すなわち、木質バイオマス原料は炭化処理に伴い繊維質が熱分解されることで揮発性有機化合物や不揮発性有機化合物といった可燃性成分を生成する。
そして、送風機9bの燃焼空気送管16の自動開閉バルブ16aが開放され、送風機9bからの移送空気を乾留ガス移送管7内に導入して炭化室2内部で発生した乾留ガスを乾留ガス移送管7に吸引し、乾留ガスと燃焼用空気が燃焼室6に供給される。なお、外気と遮断された炭化室2内部は、木質バイオマス原料の熱分解の進行に伴い炭化室2内部に残存する酸素が消費されて無酸素状態となる。
また、バーナー61への灯油ガスの供給量は、乾留ガスの燃焼室6への供給量に応じて、制御盤15により燃焼空気送管13の自動開閉バルブ13aや灯油供給管14aの自動開閉バルブ14bを閉鎖方向に絞ることで少なく調節する。
一方で、炭化室2内部における乾留ガスの発生量が多い場合には、乾留ガス移送管7の自動開閉バルブ7aを閉鎖方向に絞ることにより、燃焼室6内への乾留ガスの過剰供給による不意の事故を防止している。また、乾留ガスが不足した場合には、燃焼室6の温度低下を防止するため、灯油ガス燃料を供給してバーナー61を追加的に燃焼させて発生する熱量を安定させている。
すなわち、乾留ガスや灯油ガスの供給量は、各熱電帯Tや温度センサー15bにより検出した燃焼室6や炭化室2内部の温度情報を元に、燃焼室6を40000kcl/h〜460000kcl/hで、且つ、それぞれの炭化室2、2’を0℃以上1000℃以下の温度となるように、制御盤15により流量を自動調節している。
また、炭化室2、2’の熱流路4、4’内の熱風と炭化室2、2’との間では、以下のような熱交換が行われる。
まず、分流壁40により第1流路4aと第2流路4bにそれぞれ分流して流入した熱風は、第1流路4aにおいてはジグザグ状の流路に沿って炭化室2の一側面2a、上面2b、他側面2cを順次流通する一方、第2流路4bにおいてはジグザグ状の流路に沿って炭化室2の背面2d、下面2eを順次流通して排出管10aの始端開口部10cで合流する。
つまり各側面に形成した第1流路4aや第2流路4bをジグザグ状に順次なぞるようにして熱風が流通することで、各側面を均一な温度分布となるように加熱し、熱斑の発生を抑制している。
より具体的には、図6に示すように、第1流路4aを流通する熱風は、送風機9aや送風機9bの熱風付勢圧と熱風の熱上昇も相俟って、第1流路上流部4a−1を背面2d側から正面側に向けて上下ジグザグ状に流通して第1流路中流部4a−2に至る。
次いで、第1流路中流部4a−2の熱風は、第1流路上流部4a−1や第1流路下流部4a−3の熱単体流路42の長手方向に対して直交する方向で多数平行とした熱単体流路42を前後ジグザグ状に流通し、第1流路下流部4a−3に至る。すなわち、第1流路中流部4a−2内の熱風の流通方向は、第1流路上流部4a−1内の流通方向と直交する方向であるため、炭化室2の上面2bでの熱風の対流時間を長くすると共に第1流路上流部4a−1への熱風の逆流を防止している。
そして、第1流路下流部4a−3に至った熱風は、正面側から背面2d側へ向けて第1流路下流部4a−3をジグザグ状に上下流通して排出管10aに至る。また、第2流路上流部4b−1内の熱風は、送風機9aや送風機9bの送気付勢圧により、上面2b側から下面2e側に向けて左右ジグザグ状に降下流通し、第2流路下流部4b−2に至る。
次いで、第2流路下流部4b−2に至った熱風は、第2流路上流部4b−1の熱単体流路42の長手方向に対して直交する方向に多数平行した熱単体流路42を前後ジグザグ状に流通し、第1流路下流部4a−3に至る。すなわち、第2流路下流部4b−2内の熱風の流通方向は、第2流路上流部4b−1内の流通方向と直交する方向であるため、炭化室2の下面2eでの熱風の対流時間を要すると共に第2流路上流部4b−1への熱風の逆流を防止している。
しかも、各熱流路4を形成する各隔壁41が、熱風との接触面積を拡大して炭化室2、2’の各側面に熱伝導しているだけでなく、各熱単体流路42の始端43や終端44の隔壁41端部がフィンとして機能することで熱流路4内で熱風の旋回流を生起し、熱風と炭化室2との熱交換率を飛躍的に上昇させて、炭化室2内部に向けた輻射熱エネルギーを向上している。
そして、熱風が各熱流路4a、4bを順次流通することにより、扉部12で密閉した炭化室2、2’の六側面には僅かながら温度差が生起している。図13(a)は、炭化室内部における熱ガス対流の側面図を示し、図13(b)は、炭化室内部における熱ガス対流の正面図を示す。
すなわち、炭化室2、2’の六側面における温度の関係は、背面2d≧熱風供給路5が配設される一側面2a>下面2e>上面2b>熱風排出路10は配設される他側面2c>扉部12で炭化処理対象物出入口2fを閉塞して形成される正面2gの順となる。
このような炭化室2の各側面の熱温度差により炭化室2内部に充満する乾留ガスの熱ガス対流現象が起こる。すなわち、比較的他の側面よりも高温状態の下面2eで加熱された乾留ガスは、図13(a)に示すように、炭化室2内部の側面視において、背面2d側→上面2b側→正面2g側→下面2e側へと還流するように熱ガス対流を生起する。
一方、図13(b)に示すように、炭化室2内部の正面視において、乾留ガスは、下面2e側→一側面2a側→上面2b側→他側面2cへと還流するように熱ガス対流を生起する。
また、炭化トレイ20に収納した任意に不整列に積層した不定形状の木質バイオマス原料に可及的均一迅速にかつ万遍なく輻射熱が照射されるとともに、木質バイオマス原料の間隙を熱ガスである乾留ガスが効率よく流通して木質バイオマス原料の全面に可及的に熱風を接触させる。
このように炭化室2内部で乾留ガスの対流現象が起こることにより、炭化室2内部空間の温度分布を略均一にしている。すなわち、炭化トレイ20に積載した炭化処理対象物としての木質バイオマス原料は、炭化室2からの輻射熱と炭化室2内の乾留ガスの対流熱とによって熱分解が助長されて短時間で極めて固定炭化率の高い炭化物となる。
ここで上述の如く、炭化室2内に収容された木質バイオマス原料は、熱分解に伴い炭化室2、2内に充満する可燃性乾留ガスにより蒸し焼きされたような状態で熱分解を受けて炭化が行われる。
その結果、木質バイオマス原料の熱分解により生成される可燃性成分が、既に炭化した多孔質の炭素分に吸着、具体的には炭化組成物の多孔質に由来する微細孔に吸着されたり、熱分解されない一部の組織内部に留まったりすることで高濃度となる。特に、500℃以下の低温度焼成を行うことで炭化処理された木質バイオマス原料中の可燃性成分の残留性を向上させる。
なお、炭化室2内において、上述の送風機9bの非稼働時には乾留ガスの自然対流が発生しやすい状態となり、送風機9bの稼働時には乾留ガス吸引により熱ガスの強制対流が発生しやすい状態となる。
そして、炭化処理対象物の炭化処理の終了後には、上述の強制冷却機構を稼働させることで炭化装置Aを急冷し、炭化室2内部の炭化物を短時間で取出すことを可能としている。
特に乾留ガス中の可燃性成分は、強制冷却機構により急冷されることで気体から固体へ可及的速やかに相転移し、炭素成分や熱分解されない一部の組織中だけなくその全表面に付着して確実に残存することで含有量を高め、半炭化物或いは炭化物の発熱量や着火性を飛躍的に向上させている。
このように本発明に係る炭化装置Aは、燃焼室で生成した熱風と炭化室内空間との間の熱交換効率を飛躍的に上昇させる構造を有し、熱風の有する熱エネルギーを最大限利用して比較的低い熱エネルギーであっても短時間で安定して、且つ、極めて高い固定炭化率の炭化処理対象物の炭化処理を実現できる。
ここで参考に炭化原料として杉の木を使用してその炭化生成物の分析試験結果報告書の内容を示す。
分析項目(分析の方法 JIS M 8814 8812 8819)
・高位発熱量 34500 J/g
・低位発熱量 33900 J/g
・水分 6.0 %
・水素 2.49 %
これらの分析結果をカロリー換算で通常の杉の木の発熱量と比較すると通常の杉の木の炭化物は6000カロリーであるが、本炭化装置による炭化物では約8000カロリーであり、それだけ炭化率が高く石炭やコークス同様の発熱量を実現することができる。
すなわち、炭化装置Aによれば、コンパクト化されてトレーラに積載することができるので木質バイオマス原料を収集することができる場所に移動してその現場で炭化処理が可能となり、しかも完全な半炭化処理をすることができるように原料と極めて優れた熱交換効率を保持することができる構造を備えており、従って炭化処理対象物を収集すると同時に即時に炭化処理作業ができることは勿論、省エネルギー化、省スペース化を実現し、炭化処理対象物の減容化、減量化、再エネルギー化を簡易にかつコスト上も有利に行うことができる。
ここで、かかる炭化装置Aの実施において、通常の木炭や竹炭を製造する場合は低酸素又は無酸素条件の下で約500℃以上の熱で原料を完全炭化処理するが、半炭化物を製造する場合はこれよりも低温度の熱で木質バイオマス原料を低温乾留処理、すなわち半炭化処理する。
より具体的には、半炭化処理の炭化温度は、炭化装置の容量や炭化処理工程、木質バイオマス原料の種類や炭化処理工程の変化、バイオマス燃料のユーザーの要望などによって200℃〜450℃までの範囲の温度に設定できる。なお、約350〜500℃で約2〜3時間炭化処理して得られた半炭化物においては、含水率約0〜5%、固定炭素率69〜76%、灰率1〜4%、残分は揮発分であった。
好適には、250℃〜300℃の炭化温度がエネルギー利用効率面から良好であり、かかる加熱条件で炭化処理を行うと木質バイオマス原料の乾燥と10〜40%の単位発熱量の改善が行われながらも熱損失は30%以下に押さえることができるという成果を得ることができる。なお、約250〜300℃で約2〜3時間炭化処理して得られた半炭化物においては、含水率約4〜8%、固定炭素率約65〜72%、灰率約3〜5%、残分は揮発分であった。
すなわち炭化装置Aによれば、木質バイオマス原料の半炭化物において、水分含量を0%〜8%と低くすることができ、灰分を可及的に抑えて固定炭素率65%〜76%と高炭化率を実現できる。
また、本発明に係る炭化装置Aを搭載した炭化処理車両30を使用するため廃棄物排出地を巡回して木質バイオマス原料を炭化トレイ20に収納して車両走行中に炭化処理も可能であり、木質バイオマス原料の回収作業の場所的障害と炭化処理作業の時間的弊害にとらわれずに自由に場所の制約なくバイオマス原料の炭化処理作業を行うことができる効果がある。
このように本発明に係る炭化装置Aは炭化処理車両30に搭載して廃棄物排出地を巡回して木質バイオマス原料を収集してその現場で、或いは車両走行中に炭化処理ができるが、剪定草木等の木質バイオマス原料おいては炭化装置を設置した工場まで容易に原料を搬送することができるため炭化装置による炭化処理は車両による移動式ではなく据置型として炭化処理作業が行える。
特に木質バイオマス原料をカゴ詰めにしてそのまま炭化処理するように構成した据置型炭化装置にあっては原料の形状に制約が少なくバークやイネ科植物のように粉砕が困難な原料やピンチップのような不定形のものや未破砕の大きな原料等も炭化処理することができる。
このように、本発明に係る炭化装置Aは、バイオマス原料発生の現場における木質バイオマス原料の効率的な回収と簡易な半炭化処理を実現し、再資源化を図ると共に、木質バイオマス原料により惹起される環境汚染の問題、処理装置の設置や炭化処理に要するエネルギー、木質バイオマス原料処理等のコストの問題を根本的に解消することができるものである。
〔3・バイオマス燃料の成型方法〕
次に、図14に示すのは、上記した本発明に係る炭化装置Aにより半炭化処理された木質バイオマス原料である半炭化物と、廃棄用合成樹脂とをそれぞれ粉砕して混練し、その後成型してバイオマス燃料に適した形状とするまでの過程を説明した図である。
混練する廃棄用合成樹脂Xは通常農業用マルチや農業用ビニールハウス、プラスチック製の農業用具などの廃棄物を利用するものである。なお、農業用マルチの廃棄物は畑の畝に敷設する一定幅長尺のビニール製の農業用素材であり、マルチとしての使用後は丸めて廃棄処分される。また、廃棄用合成樹脂Xは、その形状において限定されるものではなく、例えば固形状、フィルム状であってもよい。
廃棄用合成樹脂Xは、ポリエチレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂のいずれか又は2以上を混合して採用することができる。より具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル、アクリル、メタクリル、PET、ポリエチレンテフタレート、PVA、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン、ポリアミド、アセタール、ポリアセタール、ポリブチレンテフタレート、フェノール、ユリア、メラミン、ポリエステル、エポキシ、エチルセルロース等での素材である。なお、環境と需要によっては本や新聞紙類等の紙を原料として採用することとしてもよいし、上述の合成樹脂と混合して用いてもよい。
畑の現場でこれらの廃棄用合成樹脂Xの回収をするが、畑の土壌が付着しているので予め水で洗浄して木質バイオマス原料との混練時に土が混入するのを防止する。その後裁断し、或いは取扱いに便利なように適当な大きさに切断してそのまま半炭化物と混練装置に投入する。
混練するための廃棄用合成樹脂Xは洗浄前の低位発熱量が9000kcal/kg(37.7MJ/kg)であるが、これを水で洗浄して計測すると低位発熱量は10000kcal/kg(41.8MJ/kg)まで上昇した。従って、農業用マルチの廃棄物を回収して木質バイオマス原料と破砕混練する場合は水洗した方が発熱量を増加することができる。
なお、バイオマス燃料Fのコスト低減化のためには水洗過程を省略して少々の土壌の混入にもかかわらずコストを優先したバイオマス燃料Fの製造方法とすることができるが、マルチ洗浄のための水洗設備を安価に購入することができる場合はコスト的にも負担にならず農業用マルチの廃棄物を洗浄して使用することができる。また、洗浄する場合は農業用マルチの廃棄物は洗浄後自然乾燥してその後裁断破砕して木質バイオマス原料と混練する。
半炭化物Yは、上述の如く炭化装置Aにより半炭化処理S10されて含水率を約0%とした一定の小塊に形成されており、その後の農業用マルチの廃棄物である廃棄用合成樹脂Xとの混練を行い易くしている。
半炭化物Yにおいて木質バイオマス原料の種類などにより含水率が異なるものが複数存在する場合には、炭化装置Aにより500℃以上の炭化温度で完全炭化処理した含水率ほぼ0%の炭化物を所定容量添加して半炭化物Yの全体的な含水率を低下させることで発熱量を向上させることができる。
半炭化物Yと廃棄用合成樹脂Xとは混練する前に予めそれぞれ破砕処理S11する。半炭化物Yは、木質バイオマス原料中の繊維質が熱分解されて破砕性が向上した大小の塊となっているのでこれを圧着ローラ等の破砕機で機械的に粉砕して小片又は粒状、粉状体とする。
特に本実施形態にかかる半炭化物Yは、炭化装置Aを使用した半炭化処理により、その繊維組織のほとんどが分解され含水率をほぼ0%としていることから良好な破砕性を具備しており、破砕処理S11では可及的速やかに粉状或いは粒状に破砕される。また、粉状、粒状、片状に破砕された半炭化物Yは、それぞれ微細孔を有した多孔質であり、粉砕前に比べて着火性を向上させている。
混合する農業用マルチの廃棄物、すなわち廃棄用合成樹脂Xは、半炭化物Yと同様に裁断された破砕状態とする。破砕状態とするためには裁断機で数5mmから数100mmレベル、好ましくは10〜50mmレベルの裁断片まで裁断する。
また、半炭化物Yと廃棄用合成樹脂Xとの混合比は材料の種類や半炭化物の炭化状況に応じて適宜変更することができ、例えば重量割合で約1対1から約6対1とすることができる。換言すれば、重量部換算で半炭化物1重量部あたり廃棄用合成樹脂約0.1〜1重量部の混合比にすることができる。
ここで半炭化物1重量部あたり1重量部以上の廃棄用合成樹脂を添加混合することとすると、発熱量や着火性を低下させるだけでなく合成樹脂の燃焼に伴うダイオキシン等の有害物質が大量に発生する虞があるため好ましくない。
また半炭化物1重量部あたり0.1重量部未満の廃棄用合成樹脂を添加混合することすると、成型されるバイオマス燃料の保形性が低下する。
従って半炭化物Yと廃棄用合成樹脂Xとの重量割合は重量割合で約1対1から約6対1、好適には約3:1〜4:1とすることで混練性、着火性、発熱量を向上することができる。
半炭化物Yと廃棄用合成樹脂Xとの混練処理S12及び圧縮処理S13はスクリュウ撹拌機を使用して行われる。スクリュウの回転に伴い廃棄用合成樹脂Xは、強制破断されて半炭化物Yと混練され一体化されると共に、スクリュウの回転による強制的な撹拌混練作動でスクリュウ表面と摩擦して生成される摩擦熱や混合原料がスクリュウの押出端へ押圧圧縮される過程で原料自体から生成される圧縮熱よって一部軟化し、より迅速に半炭化物Yと一体的に混練された混練一体原料を生成する。
すなわち摩擦熱や圧縮熱により混合原料中で完全溶融状態又は一部溶融状態となった廃棄用合成樹脂Xが、混練処理S12及び圧縮処理S13を受ける過程で、混合原料中に複雑に張り巡らせ、片状、粒状、又は粉状の半炭化物Y中に一部含浸されたり他の廃棄用合成樹脂Xと結着するなどし、廃棄用合成樹脂Xを中心に半炭化物Yを結着集合させる。
より具体的には、摩擦熱や圧縮熱により混合原料の温度を70℃〜200℃以上、好適には90〜160℃以上とすることで、混合原料中の合成樹脂Xが溶融する。なお、廃棄用合成樹脂Xの熱変形温度(融点温度帯を含む)は、ポリエチレン系樹脂でおおよそ45〜170℃、塩化ビニル系樹脂でおおよそ80〜220℃、ポリオレフィン系樹脂でおおよそ100〜140℃である。
混練処理S12においては、半炭化物Yと廃棄用合成樹脂Xが混練された混合原料が生成される。混合原料温度は処理過程で生成される摩擦熱により廃棄用合成樹脂Xの熱変形温度帯である約40〜60℃に達する。熱変形温度帯の廃棄用合成樹脂Xは軟化して粘稠性を生起し混練過程で捩られ歪を生じつつ粉砕状態の半炭化物Yに複雑に絡みあうことで混練された混合原料を生成する。
圧縮処理S13では、混練された混合原料を加圧圧縮して混練一体原料を生成する。熱変形温度帯に加熱された混合原料の温度は、圧縮処理S13における圧縮熱によりさらに加熱されて廃棄用合成樹脂Xの融点温度帯約70〜200℃に達する。
融点温度帯の廃棄用合成樹脂Xは、圧縮処理S13において一部溶融して圧縮に伴い徐々に密着してくる半炭化物Yの多数の微細孔に吸着含浸されたり、溶融により粘着性を有した樹脂表面に半炭化物Yを付着させたり他の廃棄用合成樹脂Xと融着することで半炭化物Yと共に混練一体原料となる。
一方、半炭化物Yは、上述の摩擦熱と圧縮熱とが相俟って温度が上昇する。特に、半炭化物Yは、そのほとんどが粉状、粒状の炭素成分であるため、各処理で生成された熱を可及的拡大した表面積で優先的に吸収し、その温度を上昇させる。
その結果、混合原料中で高温状態となった半炭化物Yは、廃棄用合成樹脂Xを加熱しつつ融解軟化を助長させると共に、溶融した廃棄用合成樹脂Xを含浸したり廃棄用合成樹脂Xへの付着が助長される。また、半炭化物Y自体に残存する可燃性成分の一部が融解、揮発して微細孔から離脱し、廃棄用合成樹脂Xと相乗的に一体混練された混練一体原料となる。
なお、破砕処理S11や混練処理S12、圧縮処理S13の際に電気ヒータなどにより追加加熱処理を同時に行うことで、廃棄用合成樹脂Xや半炭化物Yの成分の溶融性を高めて両原料の混練性をさらに向上させることができる。
このような処理によりバイオマス燃料Fは、着火性の高い半炭化物Yを廃棄用合成樹脂X周囲に結着させることでバイオマス燃料Fの着火性と発熱量を向上させると共に歪形を保持したまま再硬化した廃棄用合成樹脂Xを形状保持骨格として有する。
また、半炭化物Yと廃棄用合成樹脂Xとの混練により木質バイオマス原料の欠点である収集した時の嵩高さや高含水率を解消することができる。例えばピンチップ状の破砕物やイネ科草木等の取扱いについても半炭化処理を行うことで破砕性が良好となる。
このようにして半炭化物Yと農業用マルチの廃棄用合成樹脂Xとの混練処理S12、及び圧縮処理S13が完了した後、混練一体原料は成型機により成型処理S14してバイオマス燃料Fの使用に便宜な一定の形状とする。
成形機による成型処理S14で成型されるバイオマス燃料Fの形状は限定されるものではなく、例えば平板状の小型円盤燃料とする場合や粒状燃料とする場合や球状燃料とする場合等燃料として使用する状況に応じて適宜変形することができる。特に上述の廃棄用合成樹脂Xの形状保持骨格機能により多種多様な形状に成型することが可能である。
なお他の変形実施例として、廃棄用合成樹脂Xの代わりに産業系廃棄物の古紙やプラスチックを採用した場合には、さらに成型性を良好とし、燃焼時の発熱量を従来の建築廃材や紙類を用いた場合よりも高くすることができ、匂いや吸湿性も少なくなる。
〔4.バイオマス燃料製造装置〕
次にバイオマス燃料の製造過程を実施するためのバイオマス燃料製造装置について具体的に詳説する。図15(a)は半炭化物と廃棄用合成樹脂とを混練するバイオマス燃料製造装置の平面図、図15(b)はその側断面図を示す。
バイオマス燃料製造装置Bは、炭化物或いは半炭化物Yと、廃棄用合成樹脂Xとの両原料を破砕し、混練、圧縮、成型する機能を具備している。すなわち、半炭化処理された木質バイオマス原料と廃棄用の合成樹脂を粉砕する破砕部と、破砕された前記木質バイオマス原料と前記廃棄用の合成樹脂を混練する混練部と、混練された混合原料を加圧圧縮する圧縮部と、圧縮部で加圧圧縮された混練一体原料をバイオマス燃料に適した形状に成型する成型部を備える。
より具体的には、図15(b)に示すように、バイオマス燃料製造装置Bの基枠100の最上部には半炭化物バイオマス原料と廃棄用の合成樹脂とを投入する破砕部としてのホッパー部110を設け、ホッパー部110内には投入原料を破砕混練するための撹拌羽根111が回転自在に収納されており、該ホッパー部110の下方出口には混練部としてのスクリューコンベア121を収納したコンベア通路120を介して圧縮部130を設けており、圧縮部130には加圧シリンダ131の作動により破砕混合原料を連続圧縮するピストン(図示せず)が内蔵されており、ピストンの進出方向には成形部140としての押出アダプタ141が設けられて、この押出アダプタ141を取り替えることにより出口径のサイズの異なる成型物が数パターン成型される。なお基枠100の最下部には各機能部の作動・停止を行うための制御部150が設けられている。
この装置Bでは、破砕処理S11として半炭化物Y或いは炭化物と廃棄用の合成樹脂Xとをホッパー部110に投入すると、ホッパー部110の撹拌羽根111の回転作動により各投入原料は砕断状態となる。なお、撹拌羽根111はホッパー部110内に軸架した回転軸112に砕断刃として一定間隔で複数取付けられている。次いで、粉砕された両原料はホッパー部110内で混合される。
次いで、砕断された混合原料は、コンベア通路120をスクリューコンベア121によりさらに混練処理S12されながら通過し、下方の圧縮部130へ搬送されて加圧シリンダ131により連続圧縮されて混練一体原料となる。なお、圧縮圧力は、加圧シリンダ131の油圧調整で行い、油圧調整は駆動モータの回転と圧力バルブで調整を行い、最大圧力は約100tonとする。
コンベア通路120での通過混練過程ではスクリューコンベア121表面との摩擦熱により、また、加圧シリンダ131による連続圧縮過程では混合原料自体から生成される圧縮熱により、合成樹脂Xと半炭化物Yとの混練性が増す。すなわち、廃棄用合成樹脂Xの樹脂成分や半炭化物Yに残存する可燃性成分の一部が、処理工程中の摩擦熱や圧縮熱により互いに溶融して一体化することで着火性と発熱量を向上している。
より具体的には、各工程における生成熱が混合原料における半炭化物や炭化物に残存する可燃性成分の一部を液化又は気化させると共に溶融した廃棄用合成樹脂との親和性を一層高め、成分レベルでの混練一体化を促す。その結果、バイオマス燃料Fの着火性や発熱量の向上を堅実とするだけでなく、成型後の保形性の向上を可能としている。
なお、上述の破砕処理S11や混練処理S12、圧縮処理S13の際に廃棄用合成樹脂Xの溶融性を高め半炭化物Yとの混練性を向上する追加加熱処理用のヒータを、ホッパー部110やコンベア通路120、圧縮部130に付設することができる。
圧縮された混練一体原料は、押出アダプタ141により所定形状に成型されたバイオマス燃料Fとして排出される。押出アダプタ141による成型としては、例えばペレット状に成型される。すなわち破砕処理S11、混練処理S12、圧縮処理S13の各工程で発生した摩擦熱や圧縮熱により加熱された半炭化物Yと廃棄用合成樹脂Xとの混練一体原料は、成型処理S14でバイオマス燃料Fの形状に成型される。成型に際しては円筒状の金型内に混合原料を圧入し押出しながら短円柱型に形成し搬送しやすく取扱いに便利でかつ着火しやすくしておく。
このようにして製造されたバイオマス燃料は製紙会社や火力発電所等の大規模施設や農業用のハウスボイラーのような小規模施設等のボイラの燃料として使用されることが多く、前述したように半炭化された木質バイオマス原料の発熱量の数値は高く通常の炭化物に比し高発熱量を得ることができると共にこれに農業用マルチの廃棄物が混練されるため更に熱効率を向上することができる。
世界的に燃料資源の枯渇化が叫ばれている作今において、従来廃棄するために多大の経費をかけていた木質バイオマス原料をこのような半炭化処理と廃棄樹脂との混練成型技術によってバイオマス燃料として再生することができれば環境保全と共に資源の有効活用を推進することができ世界的な省エネルギー化の風潮にかなうものである。