以下、本発明の実施態様について詳細に説明するが、本発明は、以下の実施態様に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
本明細書において、例えば「ポリイミド及び/又はポリアミドイミド」等のように「P及び/又はQ」との記載、また、例えば「カルボキシ基、塩型カルボキシ基及び/又は−NH−結合」等のように「P、Q及び/又はR」との記載は、それぞれ「P及びQからなる群より選択される少なくとも1つ」、「P、Q及びRからなる群より選択される少なくとも1つ」を意味し、「及び/又は」を用いる他の記載もこれに準じる。ここでP、Q及びRは任意の用語である。
<BET法による平均孔径が15nm以下である多孔質体>
第1の態様に係る多孔質体は、BET法による平均孔径が15nm以下である。BET法による平均孔径が12nm以下であることが好ましく、BET法による平均孔径が10nm以下であることがより好ましい。
BET法による平均孔径の下限値としては特に制限はないが、1nm以上であることが好ましく、2nm以上であることがより好ましく、3nm以上であることが更に好ましい。
上記範囲内のBET法による平均孔径を有する多孔質体は、レジストパターンの欠陥の原因となり得る高分子量体(例えば、分子量分布における分子量3万以上の分子)を、半導体製造工程に用いられる樹脂において効果的に低減することができる。これは、BET法による平均孔径が上記範囲内であることにより高分子量体を除去する篩い分けに適した孔径の連通孔等の孔を供することができることによるものと推定される。
上記欠陥が生じる理由は、上記高分子量体が、経時的に液中において凝集して疑似的に粒子を形成し易く、また、高分子量体同士が疑似的に架橋を形成し易いためと本発明者は推定している。
また、本発明者は従来のナイロンからなる膜では、上記レジスト膜形成用の樹脂からの上記高分子量体の除去能が不十分であることを見出している。
本明細書において質量平均分子量(Mw)はゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)のポリスチレン換算による測定値である。
第1の態様に係る多孔質体は、かかる高分子量体を効果的に除去できるので、上記欠陥を抑制することができる。
第1の態様に係る多孔質体は、連通孔を有することが好ましい。かかる連通孔の孔径は、連通孔の直径である。
第1の態様に係る多孔質体は、BET法による平均孔径が15nm以下である連通孔を含むものであることが好ましい。
ここで、BET法とは、多孔質体に吸着分子(例えば、窒素)を吸脱着させることにより吸着等温線を測定し、測定したデータを式(1)で表されるBET式に基づき解析する方法であり、この方法に基づき比表面積A及び全細孔容積Vを算出することができ、更に、得られた比表面積A及び全細孔容積Vに基づき式[4V/A]から平均孔径を算出することができる。
具体的には、まず、多孔質体に吸着分子を吸脱着させることにより、吸着等温線を求める。そして、得られた吸着等温線から、下記式(1)に基づき[P/{Va(P0−P)}]を算出し、平衡相対圧(P/P0)に対してプロットする。そして、このプロットを直線と見なし、最小二乗法に基づき、傾きs(=[(C−1)/(Vm・C)])及び切片i(=[1/(Vm・C)])を算出する。そして、求められた傾きs及び切片iから式(2−1)、式(2−2)に基づき、Vm及びCを算出する。更には、Vmから、式(3)に基づき比表面積Aを算出することができる。
更に、求められた吸着等温線の吸着データを直線補間し、細孔容積算出相対圧で設定した相対圧での吸着量を求める。この吸着量から全細孔容積Vを算出することができる。
なお、このBET法は、JIS R 1626−1996「ファインセラミックス粉体の気体吸着BET法による比表面積の測定方法」に準じた測定方法である。
BET法による測定装置としては特に制限はないが、マイクロメリティックス(島津社製)等が挙げられる。
[P/{Va(P0−P)}]
=[1/(Vm・C)]+[(C−1)/(Vm・C)](P/P0) (1)
Vm=1/(s+i) (2−1)
C=(s/i)+1 (2−2)
A=(Vm・L・σ)/22414 (3)
但し、
Va:吸着量
Vm:単分子層の吸着量
P:吸着分子の平衡時の圧力
P0:吸着分子の飽和蒸気圧
L:アボガドロ数
σ:吸着分子の吸着断面積
である。
第1の態様に係る多孔質体は、該多孔質体の外部表面に開口を有する連通孔が該多孔質体の内部を連通して多孔質体の反対側(裏側)の外部表面にも開口を有するように、該多孔質体を通過させる流体の流路が確保されるような連通孔を有することが好ましい。第1の態様に係る多孔質体がかかる連通孔を有することは、例えば、ガーレー透気度により表すことができ、ガーレー透気度としては、例えば10〜1000秒とすることができる。
第1の態様に係る多孔質体のガーレー透気度は、例えば1000秒以内とすることができ、600秒以内が好ましく、500秒以内が更に好ましく、300秒以内であることが最も好ましい。低いほど好ましいので下限は特に設定されないが、第1の態様に係る多孔質体を通過する流体の流速をある程度高く維持しつつアクリル系ポリマーの精製を効率よく行う点で、10秒以上が好ましく、30秒以上がより好ましい。ガーレー透気度が1000秒以内であれば、多孔質の程度が十分高いため、アクリル系ポリマーの精製の効果を高めることができる。
第1の態様に係る多孔質体は、連通孔の孔径を小さくする観点から、空隙率が50〜90質量%であることが好ましく、55〜80質量%であることがより好ましく、60〜80質量%であることが更に好ましい。
上記空隙率は、例えば、多孔質体の製造において使用した樹脂と微粒子との合計質量に対する、微粒子の質量を空隙率(質量%)として算出することができる。
第1の態様に係る多孔質体の膜厚は特に限定されるものではないが、5μm以上500μm以下であることが好ましく、10μm以上100μm以下であることが更に好ましく、10μm以上40μm以下が特に好ましい。上記の膜厚は、例えばマイクロメータ等で複数の箇所の厚さを測定し平均することで求めることができる。
第1の態様に係る多孔質体は、BET法による平均孔径が15nm以下である限り、ポリイミド及び/又はポリアミドイミド多孔質膜、ポリエーテルサルフォン(PES)多孔質膜、ポリエチレン多孔質膜等いかなる多孔質膜を含んでいてもよいが、ポリイミド及び/又はポリアミドイミド多孔質膜を含むことが好ましい。
また、第1の態様に係る多孔質体は、ポリイミド及び/又はポリアミドイミド多孔質膜のみからなっていてもよいが、ポリイミド及び/又はポリアミドイミド多孔質膜と、その他の多孔質膜とを重ねて併用するものであってもよい。
第1の態様に係る多孔質体は、同種又は複数種の多孔質膜を複数枚重ねて用いることが好ましく、ポリイミド及び/又はポリアミドイミド多孔質膜を複数枚(例えば、2枚)重ねて用いることがより好ましい。
[ポリイミド及び/又はポリアミドイミド多孔質膜]
ポリイミド及び/又はポリアミドイミド多孔質膜は、連通孔を有することが好ましい。連通孔は、ポリイミド及び/又はポリアミドイミド多孔質膜に多孔質性を付与する個々の孔(以下、単に「孔」と略称することがある。)が形成しているものであってよく、かかる孔は、後述の内面に曲面を有する孔であることが好ましく、後述の略球状孔であることがより好ましい。ポリイミド及び/又はポリアミドイミド多孔質膜においては、かかる個々の孔同士が隣接して形成される部分が連通孔となり、かかる孔が相互に連通した構造を有し、通常、かかる孔が複数繋がって全体として、精製される液体の流路を形成していることが好ましい。「流路」は、通常、個々の「孔」及び/又は「連通孔」が連続することにより形成されている。個々の孔は、後述のポリイミド系樹脂多孔質膜の製造方法においてポリイミド系樹脂−微粒子複合膜中に存在する個々の微粒子が後工程で除去されることにより形成される孔であるともいえる。また、連通孔は、後述のポリイミド系樹脂多孔質膜の製造方法においてポリイミド系樹脂−微粒子複合膜中に存在する個々の微粒子同士が接していた部分に、該微粒子が後工程で除去されることにより形成される、隣接する個々の孔同士であるともいえる。
ポリイミド及び/又はポリアミドイミド多孔質膜は、BET法による平均孔径が15nm以下である連通孔を含むものであることが好ましい。1つの連通孔は、後述の製造方法より、通常2つの隣り合う粒子から形成されるので、該直径は、例えば、連通孔を構成する個々の孔が2つ分連続する方向を長手方向とすると、該長手方向に垂直な方向における直径である場合がある。かかる連通孔の孔径は、ポリイミド及び/又はポリアミドイミド多孔質膜に多孔質性を付与する個々の孔の孔径の分布がブロードな方が、かかる個々の孔同士が隣接して形成される連通孔自体の径が小さくなる傾向にある。
ポリイミド及び/又はポリアミドイミド多孔質膜が連通孔を有する場合、かかる多孔質膜に流体を通過させると、流体が多孔質膜の内部を通過できる。該ポリイミド及び/又はポリアミドイミド多孔質膜は、内面に曲面を有する個々の孔が連通孔により連続してなる流路を内部に有することが好ましい。
ポリイミド及び/又はポリアミドイミド多孔質膜は、上記のように、内面に曲面を有する孔を含有する多孔質膜であることが好ましく、多孔質膜における孔の多く(好ましくは実質的に全部)が曲面で形成されていることがより好ましい。本明細書において、孔について「内面に曲面を有する」とは、多孔質をもたらす孔の少なくとも内面が、該内面の少なくとも一部に曲面を有することを意味する。
本発明における多孔質膜における孔は、少なくともその内面の実質的にほぼ全部が曲面であることが好ましく、このような孔を以下、「略球状孔」ということがある。本明細書において「略球状孔」とは、その内面が略球状の空間を形成している孔を意味する。略球状孔は、好適には、後述のポリイミド系樹脂多孔質膜の製造方法において用いる微粒子が略球状である場合に形成される孔であるともいえる。本明細書において「略球状」とは、真球を含む概念であるが必ずしも真球のみに限定されず、実質的に球状であるものを含む概念である。本明細書において「実質的に球状である」とは、粒子の長径を短径で除した値で表される真球度によって定義される真球度が1±0.3以内であるものを意味する。本発明におけるポリイミド及び/又はポリアミドイミド多孔質膜が有する略球状孔は、かかる真球度が1±0.1以内であるものが好ましく、1±0.05以内であるものがより好ましい。
多孔質膜における孔が内面に曲面を有することにより、ポリイミド及び/又はポリアミドイミド多孔質膜に流体を通過させる際に該流体が多孔質膜における孔の内部に十分に行き渡り、孔の内面に十分接触することができ、場合によっては該内面の曲面に沿って対流を起こしている可能性も考えられる。略球状孔は、内面に更に凹部を有していてもよい。該凹部は、例えば、略球状孔の内面に開口を有する、該略球状孔よりも孔径が小さい孔により形成されている場合がある。
ポリイミド及び/又はポリアミドイミド多孔質膜は、平均球径が2000nm以下である略球状孔が相互に連通した構造を含むものであることが好ましい。かかる略球状孔の平均球径は、600nm以下であることが好ましく、500nm以下であることがより好ましい。平均球形が、600nm〜2000nmの範囲の場合、後述の微粒子の粒径分布指数(d25/75)が、1.6〜5が好ましく、2〜4の範囲がより好ましい。平均球形が、600nm以下の場合、後述の微粒子の粒径分布指数(d25/75)は、1〜5が好ましく、1.1〜4がより好ましい。かかる略球状孔の平均球径は、後述のケミカルエッチング処理を行ったものはポロメーターにより平均の連通孔のサイズ変化量を求め、その値から実際の略球状孔の平均球径を求める値であるが、ポリアミドイミドのように上述のケミカルエッチングを行わないものは、多孔質膜の製造に使用した微粒子の平均粒径を略球状孔の平均球径とすることができる。
ポリイミド及び/又はポリアミドイミド多孔質膜は、樹脂を含有するものであり、実質的に樹脂のみからなるものであってもよく、具体的には、95質量%以上、好ましくは98質量%以上、より好ましくは99質量%以上が樹脂であるものである。ポリイミド及び/又はポリアミドイミド多孔質膜に含有される樹脂としては、ポリイミド及び/又はポリアミドイミドが好ましく、ポリイミドを含有する樹脂がより好ましく、ポリイミドのみであってもよい。本明細書において、ポリイミド及び/又はポリアミドイミドを「ポリイミド系樹脂」ということがある。
ポリイミド及び/又はポリアミドイミド多孔質膜(以下、「ポリイミド系樹脂多孔質膜」又は「多孔質膜」と略称することがある。)に含有されるポリイミド及び/又はポリアミドイミドは、カルボキシ基、塩型カルボキシ基及び−NH−結合からなる群より選択される少なくとも1つを有するものであってもよい。該ポリイミド及び/又はポリアミドイミドは、カルボキシ基、塩型カルボキシ基及び/又は−NH−結合を、ポリイミド及び/又はポリアミドイミドの主鎖末端以外に有していてもよい。
本明細書において、「塩型カルボキシ基」とは、カルボキシ基における水素原子が陽イオン成分に置換した基を意味する。本明細書において、「陽イオン成分」とは、完全にイオン化した状態である陽イオン自体であってもよいし、−COO−とイオン結合して事実上電荷のない状態である陽イオン構成要素であってもよいし、これら両者の中間的な状態である部分電荷を有する陽イオン構成要素であってもよい。「陽イオン成分」がn価の金属MからなるMイオン成分である場合、陽イオン自体としてはMn+と表され、陽イオン構成要素としては「−COOM1/n」において「M」で表される要素である。
本発明において、「塩型カルボキシ基」及び「陽イオン成分」がどのような状態であるかは特に限定されず、通常、ポリイミド及び/又はポリアミドイミドが存在する環境、例えば水溶液中であるか、有機溶媒中であるか、乾燥しているか、等に依存してよい。陽イオン成分がナトリウムイオン成分である場合、例えば、水溶液中であれば、−COO−とNa+とに解離している可能性があり、有機溶媒中であるか又は乾燥していれば、−COONaが解離していない可能性が高い。
本発明におけるポリイミド及び/又はポリアミドイミドは、具体的には、下記式(3)〜(6)で表される構成単位からなる群より選択される少なくとも1つを有するものであってもよい。ポリイミドである場合、下記式(3)及び/又は(4)で表される構成単位を有するものであってよく、ポリアミドイミドである場合、下記式(5)及び/又は(6)で表される構成単位を有するものであってよい。
上記式中、Xは同一若しくは異なって、水素原子又は陽イオン成分である。Arはアリール基であり、後述のポリアミド酸を構成する式(1)で表される繰り返し単位又は芳香族ポリイミドを構成する式(2)で示される繰り返し単位においてそれぞれカルボニル基が結合しているArで表されるアリール基と同じであってよい。Yはジアミン化合物のアミノ基を除いた2価の残基であり、後述のポリアミド酸を構成する式(1)で表される繰り返し単位又は芳香族ポリイミドを構成する式(2)で示される繰り返し単位においてそれぞれNが結合しているArで表されるアリール基と同じであってよい。
本発明におけるポリイミド及び/又はポリアミドイミドは、一般のポリイミド及び/又はポリアミドイミドが有するイミド結合([−C(=O)]2−N−)の一部が開環して、ポリイミドの場合は上記式(3)及び/又は(4)で表される構成単位、ポリアミドイミドの場合は上記式(5)で表される構成単位をそれぞれ有することとなったものであってもよい。ポリアミドイミドにおいても、ポリアミドイミドが本来有するイミド結合の一部が開環して上記(5)で表される構成単位を有していてもよい。
本発明におけるポリイミド及び/又はポリアミドイミドは、イミド結合の一部を開環させることで、カルボキシ基、塩型カルボキシ基及び−NH−結合からなる群より選択される少なくとも1つを有するポリイミド及び/又はポリアミドイミド多孔質膜としてもよい。
(ポリイミド系樹脂多孔質膜の製造方法)
ポリイミド系樹脂多孔質膜の製造方法は、ポリアミド酸及び/又はポリイミドからなる樹脂と、微粒子と、溶剤とを含有するワニスを用いて、未焼成複合膜を成膜する未焼成複合膜成膜工程と、上記未焼成複合膜を焼成してポリイミド系樹脂−微粒子複合膜を得る焼成工程と、上記ポリイミド−微粒子複合膜から微粒子を取り除く微粒子除去工程とを上記の順序で含む。
(ワニスの製造)
ワニスの製造は、予め微粒子が分散した有機溶剤とポリアミド酸、ポリイミド又はポリアミドイミドを任意の比率で混合するか、微粒子を予め分散した有機溶剤中でテトラカルボン酸二無水物及びジアミンを重合してポリアミド酸とするか、更にイミド化してポリイミドとすることで製造でき、最終的に、その粘度を300〜2000cP(0.3〜2Pa・s)とすることが好ましい。ワニスの粘度がこの範囲内であれば、均一に成膜をすることが可能である。
上記ワニスには、微粒子を、焼成(焼成が任意の場合は乾燥)してポリイミド系樹脂−微粒子複合膜とした際に微粒子/ポリイミド系樹脂の比率が1〜4(質量比)となるように樹脂微粒子とポリアミド酸又はポリイミド若しくはポリアミドイミドとを混合でき、微粒子/ポリイミド系樹脂の比率は1.1〜3.5(質量比)であることが好ましい。更に、ポリイミド系樹脂−微粒子複合膜とした際に、微粒子/ポリイミド系樹脂の体積比率が1.1〜5となるように、微粒子とポリアミド酸又はポリイミド若しくはポリアミドイミドとを混合するとよい。また、微粒子/ポリイミド系樹脂の比率を1.1〜4.5(体積比)とすることが、更に好ましい。微粒子/ポリイミド系樹脂の質量比又は体積比が下限値以上であれば、多孔質膜として適切な密度の孔を得ることができ、上限値以下であれば、粘度の増加や膜中のひび割れ等の問題を生じることなく安定的に成膜をすることができる。なお、本明細書において、体積%及び体積比は、25℃における値である。
(微粒子)
上記微粒子の材質は、ワニスに使用する有機溶剤に不溶で、成膜後選択的に除去可能なものなら、特に限定されることなく使用することができる。例えば、無機材料としては、シリカ(二酸化珪素)、酸化チタン、アルミナ(Al2O3)、炭酸カルシウム等の金属酸化物、有機材料としては、高分子量オレフィン(ポリプロピレン、ポリエチレン等)、ポリスチレン、アクリル系樹脂(メタクリル酸メチル、メタクリル酸イソブチル、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等)、エポキシ樹脂、セルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリエステル、ポリエーテル、ポリエチレン等の有機高分子微粒子(樹脂微粒子)が挙げられる。
具体的に微粒子としては、例えば、コロイダルシリカ、中でも単分散球状シリカ粒子を選択することが、均一な孔を形成できるために好ましい。
また、上記微粒子は、真球率が高く、粒径分布指数の小さいものが好ましい。これらの条件を備えた微粒子は、ワニス中での分散性に優れ、互いに凝集しない状態で使用することができる。
使用する微粒子の粒径(平均直径)としては、例えば、5nm〜2000nm、好ましくは10nm〜600nmのものを用いることができる。また、微粒子の粒径(平均直径)が600nm〜2000nmの範囲の場合、粒径分布指数(d25/75)が、1.6〜5が好ましく、2〜4の範囲がより好ましい。微粒子の粒径(平均直径)が、600nm以下の場合、後述の微粒子の粒径分布指数(d25/75)は、1〜5が好ましく、1.1〜4がより好ましい。なお、d25、d75は、粒度分布の累積度数がそれぞれ25%、75%の粒子径の値であり、本明細書においては、d25が粒径の大きい方となる。
微粒子は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、後述の製造方法において、未焼成複合膜を2層状の未焼成複合膜として形成する場合、第一のワニスに用いる微粒子(B1)と第二のワニスに用いる微粒子(B2)とは、同じものを用いてもよいし、互いに異なったものを用いてもよい。基材に接する側の孔をより稠密にするには、(B1)の微粒子は、(B2)の微粒子よりも粒径分布指数が小さいか同じであることが好ましい。あるいは、(B1)の微粒子は、(B2)の微粒子よりも真球率が小さいか同じであることが好ましい。また、(B1)の微粒子は、(B2)の微粒子よりも微粒子の粒径(平均直径)が小さいことが好ましい。
ワニス中の微粒子を均一に分散することを目的に、上記微粒子とともに更に分散剤を添加してもよい。分散剤を添加することにより、ポリアミド酸、ポリイミド又はポリアミドイミドと微粒子とを一層均一に混合でき、更には、成形又は成膜した前駆体膜中の微粒子を均一に分布させることができる。その結果、最終的に得られるポリイミド系樹脂多孔質膜の表面に稠密な開口を設け、且つ、ポリイミド系樹脂多孔質膜の透気度が向上するように、該多孔質膜の表裏面を効率よく連通させる連通孔を形成することが可能となる。
分散剤は、特に限定されることなく、公知のものを使用することができる。例えば、やし脂肪酸塩、ヒマシ硫酸化油塩、ラウリルサルフェート塩、ポリオキシアルキレンアリルフェニルエーテルサルフェート塩、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホサクシネート塩、イソプロピルホスフェート、ポリオキシエチレンアルキルエーテルホスフェート塩、ポリオキシエチレンアリルフェニルエーテルホスフェート塩等のアニオン界面活性剤;オレイルアミン酢酸塩、ラウリルピリジニウムクロライド、セチルピリジニウムクロライド、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ベヘニルトリメチルアンモニウムクロライド、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド等のカチオン界面活性剤;ヤシアルキルジメチルアミンオキサイド、脂肪酸アミドプロピルジメチルアミンオキサイド、アルキルポリアミノエチルグリシン塩酸塩、アミドベタイン型活性剤、アラニン型活性剤、ラウリルイミノジプロピオン酸等の両性界面活性剤;ポリオキシエチレンオクチルエーテル、ポリオキシエチレンデシルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルアミン、ポリオキシエチレンオレイルアミン、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンポリスチリルフェニルエーテル等、ポリオキシアルキレン一級アルキルエーテル又はポリオキシアルキレン二級アルキルエーテルのノニオン界面活性剤、ポリオキシエチレンジラウレート、ポリオキシエチレンラウレート、ポリオキシエチレン化ヒマシ油、ポリオキシエチレン化硬化ヒマシ油、ソルビタンラウリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンラウリン酸エステル、脂肪酸ジエタノールアミド等のその他のポリオキアルキレン系のノニオン界面活性剤;オクチルステアレート、トリメチロールプロパントリデカノエート等の脂肪酸アルキルエステル;ポリオキシアルキレンブチルエーテル、ポリオキシアルキレンオレイルエーテル、トリメチロールプロパントリス(ポリオキシアルキレン)エーテル等のポリエーテルポリオールが挙げられるが、これらに限定されない。また、上記分散剤は、2種以上を混合して使用することもできる。
(ポリアミド酸)
ポリアミド酸は、任意のテトラカルボン酸二無水物とジアミンを重合して得られるものが、特に限定されることなく使用できる。テトラカルボン酸二無水物及びジアミンの使用量は特に限定されないが、テトラカルボン酸二無水物1モルに対して、ジアミンを0.50〜1.50モル用いるのが好ましく、0.60〜1.30モル用いるのがより好ましく、0.70〜1.20モル用いるのが特に好ましい。
テトラカルボン酸二無水物は、従来からポリアミド酸の合成原料として使用されているテトラカルボン酸二無水物から適宜選択することができる。テトラカルボン酸二無水物は、芳香族テトラカルボン酸二無水物であっても、脂肪族テトラカルボン酸二無水物であってもよいが、得られるポリイミド樹脂の耐熱性の点から、芳香族テトラカルボン酸二無水物を使用することが好ましい。テトラカルボン酸二無水物は、2種以上を組合せて用いてもよい。
芳香族テトラカルボン酸二無水物の好適な具体例としては、ピロメリット酸二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2,6,6−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−へキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、4,4−(p−フェニレンジオキシ)ジフタル酸二無水物、4,4−(m−フェニレンジオキシ)ジフタル酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8−フェナントレンテトラカルボン酸二無水物、9,9−ビス無水フタル酸フルオレン、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。脂肪族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、エチレンテトラカルボン酸二無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、シクロへキサンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−シクロへキサンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。これらの中では、価格、入手容易性等から、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物及びピロメリット酸二無水物が好ましい。また、これらのテトラカルボン酸二無水物は、単独あるいは二種以上混合して用いることもできる。
ジアミンは、従来からポリアミド酸の合成原料として使用されているジアミンから適宜選択することができる。このジアミンは、芳香族ジアミンであっても、脂肪族ジアミンであってもよいが、得られるポリイミド樹脂の耐熱性の点から、芳香族ジアミンが好ましい。これらのジアミンは、2種以上を組合せて用いてもよい。
芳香族ジアミンとしては、フェニル基が1個あるいは2〜10個程度が結合したジアミノ化合物を挙げることができる。具体的には、フェニレンジアミン及びその誘導体、ジアミノビフェニル化合物及びその誘導体、ジアミノジフェニル化合物及びその誘導体、ジアミノトリフェニル化合物及びその誘導体、ジアミノナフタレン及びその誘導体、アミノフェニルアミノインダン及びその誘導体、ジアミノテトラフェニル化合物及びその誘導体、ジアミノヘキサフェニル化合物及びその誘導体、カルド型フルオレンジアミン誘導体である。
フェニレンジアミンはm−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン等であり、フェニレンジアミン誘導体としては、メチル基、エチル基等のアルキル基が結合したジアミン、例えば、2,4−ジアミノトルエン、2,4−トリフェニレンジアミン等である。
ジアミノビフェニル化合物は、2つのアミノフェニル基がフェニル基同士で結合したものである。例えば、4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル等である。
ジアミノジフェニル化合物は、2つのアミノフェニル基が他の基を介してフェニル基同士で結合したものである。結合はエーテル結合、スルホニル結合、チオエーテル結合、アルキレン又はその誘導体基による結合、イミノ結合、アゾ結合、ホスフィンオキシド結合、アミド結合、ウレイレン結合等である。アルキレン結合は炭素数が1〜6程度のものであり、その誘導体基はアルキレン基の水素原子の1以上がハロゲン原子等で置換されたものである。
ジアミノジフェニル化合物の例としては、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルケトン、3,4’−ジアミノジフェニルケトン、2,2−ビス(p−アミノフェニル)プロパン、2,2’−ビス(p−アミノフェニル)へキサフルオロプロパン、4−メチル−2,4−ビス(p−アミノフェニル)−1−ペンテン、4−メチル−2,4−ビス(p−アミノフェニル)−2−ぺンテン、イミノジアニリン、4−メチル−2,4−ビス(p−アミノフェニル)ペンタン、ビス(p−アミノフェニル)ホスフィンオキシド、4,4’−ジアミノアゾベンゼン、4,4’−ジアミノジフェニル尿素、4,4’−ジアミノジフェニルアミド、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフォン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフォン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン等が挙げられる。
これらの中では、価格、入手容易性等から、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン、及び4,4’−ジアミノジフェニルエーテルが好ましい。
ジアミノトリフェニル化合物は、2つのアミノフェニル基と1つのフェニレン基が何れも他の基を介して結合したものであり、他の基は、ジアミノジフェニル化合物と同様のものが選ばれる。ジアミノトリフェニル化合物の例としては、1,3−ビス(m−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(p−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(p−アミノフェノキシ)ベンゼン等を挙げることができる。
ジアミノナフタレンの例としては、1,5−ジアミノナフタレン及び2,6−ジアミノナフタレンを挙げることができる。
アミノフェニルアミノインダンの例としては、5又は6−アミノ−1−(p−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダンを挙げることができる。
ジアミノテトラフェニル化合物の例としては、4,4’−ビス(p−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2’−ビス[p−(p’−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2’−ビス[p−(p’−アミノフェノキシ)ビフェニル]プロパン、2,2’−ビス[p−(m−アミノフェノキシ)フェニル]ベンゾフェノン等を挙げることができる。
カルド型フルオレンジアミン誘導体の例としては、9,9−ビスアニリンフルオレン等を挙げることができる。
脂肪族ジアミンは、例えば、炭素数が2〜15程度のものがよく、具体的には、ペンタメチレンジアミン、へキサメチレンジアミン、へプタメチレンジアミン等が挙げられる。
なお、これらのジアミンの水素原子がハロゲン原子、メチル基、メトキシ基、シアノ基、フェニル基等の群より選択される少なくとも1種の置換基により置換された化合物であってもよい。
本発明で使用されるポリアミド酸を製造する手段に特に制限はなく、例えば、有機溶剤中で酸、ジアミン成分を反応させる方法等の公知の手法を用いることができる。
テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの反応は、通常、有機溶剤中で行われる。テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの反応に使用される有機溶剤は、テトラカルボン酸二無水物及びジアミンを溶解させることができ、テトラカルボン酸二無水物及びジアミンと反応しないものであれば特に限定されない。有機溶剤は単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの反応に用いる有機溶剤の例としては、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N−メチルカプロラクタム、N,N,N’,N’−テトラメチルウレア等の含窒素極性溶剤;β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、ε−カプロラクトン等のラクトン系極性溶剤;ジメチルスルホキシド;アセトニトリル;乳酸エチル、乳酸ブチル等の脂肪酸エステル類;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチルセルソルブアセテート、エチルセルソルブアセテート等のエーテル類;クレゾール類等のフェノール系溶剤が挙げられる。これらの有機溶剤は単独あるいは2種以上を混合して用いることができる。なかでも、上記含窒素極性溶剤とラクトン系極性溶剤の組み合わせが好ましい。有機溶剤の使用量に特に制限はないが、生成するポリアミド酸の含有量が5〜50質量%とするのが望ましい。
これらの有機溶剤の中では、生成するポリアミド酸の溶解性から、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N−メチルカプロラクタム、N,N,N’,N’−テトラメチルウレア等の含窒素極性溶剤が好ましい。また、成膜性等の観点から、γ−ブチロラクトン等のラクトン系極性溶剤を添加した混合溶剤としてもよく、有機溶剤全体に対し1〜20質量%添加されていることが好ましく、5〜15質量%がより好ましい。
重合温度は一般的には−10〜120℃、好ましくは5〜30℃である。重合時間は使用する原料組成により異なるが、通常は3〜24Hr(時間)である。また、このような条件下で得られるポリアミド酸溶液の固有粘度は、好ましくは1000〜100000cP(センチポアズ)、より一層好ましくは5000〜70000cPの範囲である。
(ポリイミド)
ポリイミドは、上記ワニスに使用する有機溶剤に溶解可能な可溶性ポリイミドなら、その構造や分子量に限定されることなく、公知のものが使用できる。ポリイミドについて、側鎖にカルボキシ基等の縮合可能な官能基又は焼成時に架橋反応等を促進させる官能基を有していてもよい。
有機溶剤に可溶なポリイミドとするために、主鎖に柔軟な屈曲構造を導入するためのモノマーの使用、例えば、エチレジアミン、ヘキサメチレンジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン等の脂肪族ジアミン;2−メチル−1,4−フェニレンジアミン、o−トリジン、m−トリジン、3,3’−ジメトキシベンジジン、4,4’−ジアミノベンズアニリド等の芳香族ジアミン;ポリオキシエチレンジアミン、ポリオキシプロピレンジアミン、ポリオキシブチレンジアミン等のポリオキシアルキレンジアミン;ポリシロキサンジアミン;2,3,3’,4’−オキシジフタル酸無水物、3,4,3’,4’−オキシジフタル酸無水物、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジベンゾエート−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物等の使用が有効である。また、有機溶剤への溶解性を向上する官能基を有するモノマーの使用、例えば、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル、2−トリフルオロメチル−1,4−フェニレンジアミン等のフッ素化ジアミンを使用することも有効である。更に、上記ポリイミドの溶解性を向上するためのモノマーに加えて、溶解性を阻害しない範囲で、上記ポリアミド酸の欄に記したものと同じモノマーを併用することもできる。
有機溶剤に溶解可能なポリイミドを製造する手段に特に制限はなく、例えば、ポリアミド酸を化学イミド化又は加熱イミド化させ、有機溶剤に溶解させる方法等の公知の手法を用いることができる。そのようなポリイミドとしては、脂肪族ポリイミド(全脂肪族ポリイミド)、芳香族ポリイミド等を挙げることができ、芳香族ポリイミドが好ましい。芳香族ポリイミドとしては、式(1)で示す繰り返し単位を有するポリアミド酸を熱又は化学的に閉環反応によって取得したもの、若しくは式(2)で示す繰り返し単位を有するポリイミドを溶媒に溶解したものでよい。式中Arはアリール基を示す。
(ポリアミドイミド)
ポリアミドイミドは、上記ワニスに使用する有機溶剤に溶解可能な可溶性ポリアミドイミドであれば、その構造や分子量に限定されることなく、公知のものが使用できる。ポリアミドイミドについて、側鎖にカルボキシ基等の縮合可能な官能基又は焼成時に架橋反応等を促進させる官能基を有していてもよい。
また、ポリアミドイミドは、任意の無水トリメリット酸とジイソシアネートとを反応させて得られるものや、任意の無水トリメリット酸の反応性誘導体とジアミンとの反応により得られる前駆体ポリマーをイミド化して得られるものを特に限定されることなく使用できる。
上記任意の無水トリメッと酸又はその反応性誘導体としては、例えば、無水トリメリット酸、無水トリメリット酸クロライド等の無水トリメリット酸ハロゲン化物、無水トリメリット酸エステル等が挙げられる。
上記任意のジイソシアネートとしては、例えば、メタフェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、o−トリジンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、4,4’−オキシビス(フェニルイソシアネート)、4,4’−ジイソシアネートジフェニルメタン、ビス[4−(4−イソシアネートフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2′−ビス[4−(4−イソシアネートフェノキシ)フェニル]プロパン、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメチルジフェニル−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジエチルジフェニル−4,4’−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、m−キシレンジイソシアネート、p−キシレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等が挙げられる。
上記任意のジアミンとしては、上記ポリアミド酸の説明において例示したものと同様のものが挙げられる。
(溶剤)
ワニスに用いられる溶剤としては、ポリアミド酸及び/又はポリイミド系樹脂を溶解することができ、微粒子を溶解しないものであれば、特に限定されず、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの反応に用いる溶剤として例示したものが挙げられる。溶剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ワニス中の全成分のうち、溶剤の含有量は、好ましくは50〜95質量%、より好ましくは60〜85質量%となる量である。ワニスにおける固形分濃度が好ましくは5〜50質量%、より好ましくは15〜40質量%となる量である。
上記した成分のほかに、帯電防止、難燃性付与、低温焼成化、離型性、塗布性等を目的とし、帯電防止剤、難燃剤、化学イミド化剤、縮合剤、離型剤、表面調整剤等、適宜、公知の成分を必要に応じて含有させることができる。
(未焼成複合膜の製造(未焼成複合膜成膜工程))
ポリアミド酸又はポリイミド系樹脂と微粒子とを含有する未焼成複合膜の成形は、成膜の場合、基板上へ上記のワニスを塗布し、常圧又は真空下で0〜120℃(好ましくは0〜100℃)、より好ましくは常圧下60〜95℃(更に好ましくは65〜90℃)で乾燥して行う。塗布膜厚は、例えば、1〜500μmであり、5〜50μmが好ましい。なお、基板上には必要に応じて離型層を設けてもよい。また、未焼成複合膜の製造において、後述のポリイミド系樹脂−微粒子複合膜の製造(焼成工程)の前に、水を含む溶剤への浸漬工程、プレス工程、当該浸漬工程後の乾燥工程をそれぞれ任意の工程として設けてもよい。
上記離型層は、基板上に離型剤を塗布して乾燥あるいは焼き付けを行って作製することができる。ここで使用される離型剤は、アルキルリン酸アンモニウム塩系、フッ素系又はシリコーン等の公知の離型剤が特に制限なく使用可能である。上記乾燥したポリアミド酸又はポリイミド系樹脂と微粒子とを含有する未焼成複合膜を基板より剥離する際、未焼成複合膜の剥離面にわずかながら離型剤が残存する。この残存した離型剤は、ポリイミド系樹脂多孔質膜表面の濡れ性や不純物混入に影響し得るため、これを取り除いておくことが好ましい。
そこで、上記基板より剥離した未焼成複合膜を、有機溶剤等を用いて洗浄することが好ましい。洗浄の方法としては、洗浄液に未焼成複合膜を浸漬した後取り出す方法、シャワー洗浄する方法等の公知の方法から選択することができる。更に、洗浄後の未焼成複合膜乾燥するために、洗浄後の未焼成複合膜を室温で風乾する、恒温槽中で適切な設定温度まで加温する等、公知の方法が制限されることなく適用できる。例えば、未焼成複合膜の端部をSUS製の型枠等に固定し変形を防ぐ方法を採ることもできる。
一方、未焼成複合膜の成膜に、離型層を設けず基板をそのまま使用する場合は、上記離型層形成の工程や未焼成複合膜の洗浄工程を省くことができる。
また、2層状の未焼成複合膜として形成する場合、まず、ガラス基板等の基板上にそのまま、上記第一のワニスを塗布し、常圧又は真空下で0〜120℃(好ましくは0〜90℃)、より好ましくは常圧10〜100℃(更に好ましくは10〜90℃)で乾燥して、膜厚1〜5μmの第一未焼成複合膜の形成を行う。
続いて、形成した第一未焼成複合膜上に、上記第二のワニスを塗布し、同様にして、0〜80℃(好ましくは0〜50℃)、より好ましくは常圧10〜80℃(更に好ましくは10〜30℃)で乾燥を行い、膜厚5〜50μmの第二未焼成複合膜の形成を行い、2層状の未焼成複合膜を得る。
(ポリイミド系樹脂−微粒子複合膜の製造(焼成工程))
上記乾燥後の未焼成複合膜(又は2層状の未焼成複合膜、以下同様)に加熱による後処理(焼成)を行ってポリイミド系樹脂と微粒子とからなる複合膜(ポリイミド系樹脂−微粒子複合膜)とすることができる。ワニスにポリアミド酸を含む場合、焼成工程においてはイミド化を完結させることが好ましい。なお、焼成工程は任意の工程である。特にワニスにポリイミド又はポリアミドイミドが用いられる場合、焼成工程は行わなくてもよい。
焼成温度は、未焼成複合膜に含有されるポリアミド酸又はポリイミド系樹脂の構造や縮合剤の有無によっても異なるが、120〜400℃が好ましく、更に好ましくは150〜375℃である。
焼成を行うには、必ずしも乾燥工程と明確に工程を分ける必要はなく、例えば、375℃で焼成を行う場合、室温〜375℃までを3時間で昇温させた後、375℃で20分間保持させる方法や室温から50℃刻みで段階的に375℃まで昇温(各ステップ20分保持)し、最終的に375℃で20分保持させる等の段階的な乾燥−熱イミド化法を用いることもできる。その際、未焼成複合膜の端部をSUS製の型枠等に固定し変形を防ぐ方法を採ってもよい。
できあがったポリイミド系樹脂−微粒子複合膜の厚さは、例えば膜の場合、マイクロメータ等で複数の箇所の厚さを測定し平均することで求めることができる。どのような平均厚さが好ましいかは、ポリイミド系樹脂−微粒子複合膜又はポリイミド系樹脂多孔質膜の用途によって異なるが、例えば、分離材、吸着材等に使用する場合は、薄い方が好ましく、例えば1μm以上であってもよく、5〜500μmであることが好ましく、8〜100μmであることが更に好ましい。
(微粒子除去工程(ポリイミド系樹脂−微粒子複合膜の多孔質化))
ポリイミド系樹脂−微粒子複合膜から、微粒子を適切な方法を選択して除去することにより、微細孔を有するポリイミド系樹脂多孔質膜を再現性よく製造することができる。例えば、微粒子として、シリカを採用した場合、ポリイミド系樹脂−微粒子複合膜を低濃度のフッ化水素水(HF)等によりシリカを溶解除去することで、多孔質とすることが可能である。また、微粒子が樹脂微粒子の場合は、上述のような樹脂微粒子の熱分解温度以上で、ポリイミド系樹脂の熱分解温度未満の温度に加熱し、樹脂微粒子を分解させてこれを取り除くことができる。
(ポリイミド系樹脂除去工程)
ポリイミド系樹脂多孔質膜の製造方法は、微粒子除去工程前に、ポリイミド系樹脂−微粒子複合膜のポリイミド系樹脂部分の少なくとも一部を除去するか、又は、微粒子除去工程後にポリイミド系樹脂の少なくとも一部を除去するポリイミド系樹脂除去工程を含んでもよい。微粒子除去工程前に、ポリイミド系樹脂−微粒子複合膜のポリイミド系樹脂部分の少なくとも一部を除去することにより、続く微粒子除去工程で微粒子が取り除かれ空孔が形成された場合に、上記ポリイミド系樹脂部分の少なくとも一部を除去しないものに比べて、最終製品のポリイミド系樹脂多孔質膜の開孔率を向上させることが可能となる。また、微粒子除去工程後にポリイミド系樹脂多孔質膜の少なくとも一部を除去することにより、上記ポリイミド系樹脂多孔質膜の少なくとも一部を除去しないものに比べて、最終製品のポリイミド系樹脂多孔質膜の開孔率を向上させることが可能となる。
上記のポリイミド系樹脂部分の少なくとも一部を除去する工程、あるいは、ポリイミド系樹脂多孔質膜の少なくとも一部を除去する工程は、通常のケミカルエッチング法若しくは物理的除去方法、又は、これらを組み合わせた方法により行うことができる。
ケミカルエッチング法としては、無機アルカリ溶液又は有機アルカリ溶液等のケミカルエッチング液による処理が挙げられる。無機アルカリ溶液が好ましい。無機アルカリ溶液として、例えば、ヒドラジンヒドラートとエチレンジアミンを含むヒドラジン溶液、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物の溶液、アンモニア溶液、水酸化アルカリとヒドラジンと1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンを主成分とするエッチング液等が挙げられる。有機アルカリ溶液としては、エチルアミン、n−プロピルアミン等の第一級アミン類;ジエチルアミン、ジ−n−ブチルアミン等の第二級アミン類;トリエチルアミン、メチルジエチルアミン等の第三級アミン類;ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルコールアミン類;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド等の第四級アンモニウム塩;ピロール、ピペリジン等の環状アミン類等のアルカリ性溶液が挙げられる。
上記の各溶液の溶媒については、純水、アルコール類を適宜選択できる。また界面活性剤を適当量添加したものを使用することもできる。アルカリ濃度は、例えば0.01〜20質量%である。
また、物理的な方法としては、例えば、プラズマ(酸素、アルゴン等)、コロナ放電等によるドライエッチング、研磨剤(例えば、アルミナ(硬度9)等)を液体に分散し、これを芳香族ポリイミドフィルムの表面に30〜100m/sの速度で照射することでポリイミドフィルム表面を処理する方法等が使用できる。
上記した方法は、微粒子除去工程前又は微粒子除去工程後のいずれのポリイミド系樹脂除去工程にも適用可能であるので好ましい。
一方、微粒子除去工程後に行うポリイミド系樹脂除去工程にのみ適用可能な物理的方法として、対象表面を液体で濡らした台紙フィルム(例えばPETフィルム等のポリエステルフィルム)に圧着後、乾燥しないで又は乾燥した後、ポリイミド系樹脂多孔質膜を台紙フィルムから引きはがす方法を採用することもできる。液体の表面張力あるいは静電付着力に起因して、ポリイミド系樹脂多孔質膜の表面層のみが台紙フィルム上に残された状態で、多孔質ポリイミド膜が台紙フィルムから引きはがされる。
また、ポリイミド系樹脂多孔質膜の表面の有機溶媒への濡れ性向上及び残存有機物除去のため、ポリイミド系樹脂多孔質膜の再度焼成工程を行ってもよい。焼成条件は、(ポリイミド系樹脂−微粒子複合膜の製造(焼成工程))における焼成条件と同様、適宜設定すればよい。
(多孔質体の用途)
第1の態様に係る多孔質体は、アクリル系ポリマーの精製に用いることができる。
上記精製により、上記アクリル系ポリマーの分子量分布における分子量3万以上の高分子量体、具体的には、上記アクリル系ポリマーの質量平均分子量(Mw)が3万以上である高分子量体を除去することができ、好ましくはMw5万以上の高分子量体を除去することができる。
アクリル系ポリマーの精製方法としては、<アクリル系ポリマーの精製方法>にて後述する。
上記アクリル系ポリマーは、半導体製造工程に用いられる樹脂であることが好ましく、レジスト膜形成に用いられる樹脂であることがより好ましい。
上記レジスト膜形成に用いられる樹脂としては、極性基含有樹脂であることが好ましい。極性基含有樹脂としては、後述の構成単位(a3)を有する樹脂が挙げられる。上記極性基含有樹脂は、後述の構成単位(a1)を含んでいても含んでいなくてもよい。また、上記レジスト膜形成に用いられる樹脂としては、酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解性が増大する樹脂、アルカリ可溶性樹脂等も挙げられ、酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解性が増大する樹脂、アルカリ可溶性樹脂等は上記極性基含有樹脂であってもよい。
上記酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解性が増大する樹脂として、親水基(水酸基、カルボキシ基等)を有する樹脂の親水性基を、酸解離性の保護基により保護された「酸分解性基」とした樹脂であることが好ましい。
親水基を有する樹脂としては、(メタ)アクリル酸エステルから誘導される構成単位を有するアクリル系樹脂が挙げられる。
ここで本明細書において、「酸分解性基」は、酸の作用により、酸分解性基の構造中の少なくとも一部の結合が開裂し得る酸分解性を有する基である。
「(メタ)アクリル酸エステルから誘導される構成単位」とは、(メタ)アクリル酸エステルのエチレン性二重結合が開裂して構成される構成単位を意味する。「(メタ)アクリル酸エステル」は、α位の炭素原子((メタ)アクリル酸のカルボニル基が結合する炭素原子)に水素原子が結合している(メタ)アクリル酸エステルのほか、α位の炭素原子に置換基(水素原子以外の原子又は基)が結合しているものも含む。α位の炭素原子に結合する置換基としては、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基、ヒドロキシアルキル基等が挙げられる。なお、(メタ)アクリル酸エステルのα位の炭素原子とは、特に断りがない限り、(メタ)アクリル酸のカルボニル基が結合している炭素原子のことである。
酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解性が増大する樹脂としては、酸分解性基を有する(メタ)アクリル酸エステルから誘導される構成単位を含むアクリル酸エステル樹脂(以下、樹脂(a)ともいう。)が好ましい。
(樹脂(a))
樹脂(a)は酸分解性基を有する。樹脂(a)は、酸分解性基を含む(メタ)アクリル酸エステルから誘導される構成単位(a1)を有するのが好ましい。また、樹脂(a)は、構成単位ラクトン含有環式基を含み(メタ)アクリル酸エステルから誘導される構成単位(a2)を有するのが好ましい。さらに、樹脂(a)は、極性基含有脂肪族炭化水素基を含む(メタ)アクリル酸エステルから誘導される構成単位(a3)、及び/又は脂肪族炭化水素基を含む(メタ)アクリル酸エステルから誘導される構成単位(a4)を有するのが好ましい。なお、樹脂(a)は、本発明の目的を阻害しない範囲で、構成単位(a1)〜(a4)の他に、従来使用されているレジスト組成物用の(メタ)アクリル酸エステル誘導樹脂に含まれる、種々の構成単位を含んでいてもよい。以下、構成単位(a1)〜(a4)について説明する。
(構成単位(a1))
構成単位(a1)は、酸分解性基を含む(メタ)アクリル酸エステルから誘導される構成単位である。構成単位(a1)における酸分解性基は、露光により酸の作用により分解して、樹脂(a)のアルカリ現像液に対する溶解性を増大させるものである。構成単位(a1)は、下記式(a1−0−1)又は(a1−0−2)で表される酸分解性基を含む(メタ)アクリル酸エステルから誘導される構成単位であるのが好ましい。
[式(a1−0−1)〜(a1−0−2)中、Rは水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基であり、X
a1は酸解離性基であり、Y
a1は2価の連結基であり、X
a2は酸解離性基である。]
構成単位(a1)において酸分解性基を形成する酸解離性基としては、
(i)酸の作用により、当該酸解離性基と該酸解離性基に隣接する原子との間の結合が開裂し得る酸解離性を有する基、又は、
(ii)酸の作用により一部の結合が開裂した後、さらに脱炭酸反応が生じることにより、当該酸解離性基と該酸解離性基に隣接する原子との間の結合が開裂し得る基、
の双方をいう。
(i)として第3級アルキルエステル型酸解離性基又はアセタール型酸解離性基が挙げられる。(ii)として、第3級アルキルオキシカルボニル基が挙げられる。
第3級アルキルエステル型酸解離性基としては例えば、下記式(1−1)〜(1−9)で表される基、下記式(2−1)〜(2−6)で表される基等が挙げられる。
[式(1−1)〜(1−9)中、R
a4はアルキル基であり、gは0〜8の整数である。]
[式(2−1)〜(2−6)中、R
a5及びR
a6は、それぞれ独立してアルキル基である。]
上記Ra4のアルキル基としては、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が好ましい。直鎖状のアルキル基の炭素数は、1〜5が好ましく、1〜4がより好ましく、1又は2が特に好ましい。直鎖状のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、及びn−ペンチル基等が挙げられる。これらの中でも、メチル基、エチル基又はn−ブチル基が好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましい。
分岐鎖状のアルキル基の炭素数は、3〜10が好ましく、3〜5がより好ましい。分岐鎖状のアルキル基の具体例としては、イソプロピル基、イソブチル基、tert−ブチル基、イソペンチル基、及びネオペンチル基等が挙げられ、イソプロピル基がより好ましい。
gは0〜3の整数が好ましく、1〜3の整数がより好ましく、1又は2がさらに好ましい。
Ra5〜Ra6のアルキル基としては、Ra4のアルキル基と同様のものが挙げられる。
上記式(1−1)〜(1−9)、及び(2−1)〜(2−6)中、環を構成する炭素原子の一部がエーテル性酸素原子(−O−)で置換されていてもよい。また、上記式(1−1)〜(1−9)、及び(2−1)〜(2−6)中、環を構成する炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよい。置換基としては、炭素数1〜5のアルキル基、フッ素原子、フッ素化アルキル基が挙げられる。
アセタール型酸解離性基としては、例えば、下記式(p1)で表される基が挙げられる。
[式(p1)中、R
a7,R
a8はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を表し、nは0〜3の整数を表し、Yは炭素数1〜5のアルキル基又は脂肪族環式基を表す。]
上記式(p1)中、nは、0〜2の整数であることが好ましく、0又は1がより好ましく、0が最も好ましい。Ra7,Ra8のアルキル基としては、メチル基又はエチル基が好ましい。
Yのアルキル基としては、上記アクリル酸エステルについての説明で、α位の置換基として挙げたアルキル基と同様のものが挙げられる。なお、Ra7と結合してもよく、この場合、Ra7と、Yと、Yが結合した酸素原子と、酸素原子及びRa7が結合した炭素原子とにより環式基が形成されている。環式基としては、4〜7員環が好ましく、4〜6員環がより好ましい。環式基の具体例としては、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロフラニル基等が挙げられる。
Yの脂肪族環式基としては、例えば、炭素数1〜5のアルキル基、フッ素原子又はフッ素化アルキル基で置換されているか、されていないモノシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基、ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、及びテトラシクロアルカン等のポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基等が挙げられる。より具体的には、シクロペンタン、シクロヘキサン等のモノシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基や、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等のポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基等が挙げられる。また、これらのモノシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基又はポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基の環を構成する炭素原子の一部がエーテル性酸素原子(−O−)で置換されたものであってもよい。
第3級アルキルオキシカルボニル基としては、例えば、下記式(a1−r−3)で表される基が挙げられる。
[式(a1−r−3)中、Ra’
7〜Ra’
9はアルキル基である。]
式(a1−r−3)中、Ra’7〜Ra’9は炭素数1〜5のアルキル基が好ましく、1〜3がより好ましい。
前述の通り、構成単位(a1)として、下記式(a1−0−1)で表される構成単位、下記式(a1−0−2)で表される構成単位等が挙げられる。
[式(a1−0−1)〜(a1−0−2)中、Rは水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基であり、X
a1は酸解離性基であり、Y
a1は2価の連結基であり、X
a2は酸解離性基である。]
式(a1−0−1)において、Rのアルキル基、ハロゲン化アルキル基は、それぞれ、上記アクリル酸エステルについての説明で、α位の置換基として挙げたアルキル基、ハロゲン化アルキル基と同様のものが挙げられる。Rとしては、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜5のフッ素化アルキル基が好ましく、水素原子又はメチル基がより好ましい。
Xa1は、酸解離性基であれば特に限定されることはなく、例えば上述した第3級アルキルエステル型酸解離性基、アセタール型酸解離性基等を挙げることができ、第3級アルキルエステル型酸解離性基が好ましい。
式(a1−0−2)において、Rは上記と同様である。Xa2は、アセタール型酸解離性基、上記式(a1−r−3)で表される基が挙げられる。Ya1の2価の連結基としては、特に限定されず、例えばアルキレン基、2価の脂肪族環式基、2価の芳香族環式基、ヘテロ原子を含む2価の連結基等が挙げられる。
Ya1がアルキレン基である場合、その炭素数は、1〜10が好ましく、1〜6がより好ましく、1〜4が特に好ましく、1〜3が最も好ましい。
Ya1が2価の脂肪族環式基である場合、脂肪族環式基としては、シクロペンタン、シクロヘキサン、ノルボルナン、イソボルナン、アダマンタン、トリシクロデカン又はテトラシクロドデカンから水素原子が2個以上除かれた基が特に好ましい。
Ya1が2価の芳香族環式基である場合、芳香族環式基としては、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環から2個の水素原子を除いた基が挙げられる。芳香族炭化水素環の炭素数は、6〜15が好ましい。芳香族炭化水素環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、及びアントラセン環等が挙げられる。これらの中でもベンゼン環又はナフタレン環が特に好ましい。
Ya1がヘテロ原子を含む2価の連結基である場合、ヘテロ原子を含む2価の連結基としては、−O−、−C(=O)−O−、−C(=O)−、−O−C(=O)−O−、−C(=O)−NH−、−NH−(Hはアルキル基、アシル基等の置換基で置換されていてもよい。)、−S−、−S(=O)2−、−S(=O)2−O−、式−A−O−B−で表される基、式−[A−C(=O)−O]m’−B−、−A−O−C(=O)−B−で表される基等が挙げられる。ここで、式−A−O−B−、[A−C(=O)−O]m’−B−、又は−A−O−C(=O)−B−中、A及びBは、それぞれ独立して置換基を有していてもよい2価の炭化水素基であり、−O−は酸素原子であり、m’は0〜3の整数である。
Ya1が−A−O−B−、[A−C(=O)−O]m’−B−、又は−A−O−C(=O)−B−である場合、A及びBは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基である。炭化水素基が「置換基を有する」とは、炭化水素基における水素原子の一部又は全部が、水素原子以外の基又は原子で置換されていることを意味する。
Aにおける炭化水素基は、脂肪族炭化水素基であってもよく、芳香族炭化水素基であってもよい。脂肪族炭化水素基は、芳香族性を持たない炭化水素基を意味する。Aにおける脂肪族炭化水素基は、飽和であってもよく、不飽和であってもよく、通常は飽和であることが好ましい。
Aにおける脂肪族炭化水素基として、具体的には、直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素基、脂肪族環式基等が挙げられる。直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素基の炭素数は、1〜10が好ましく、1〜8がより好ましく、2〜5がさらに好ましく、2が最も好ましい。
直鎖状の脂肪族炭化水素基としては、直鎖状のアルキレン基が好ましく、具体的には、メチレン基、エチレン基[−(CH2)2−]、トリメチレン基[−(CH2)3−]、テトラメチレン基[−(CH2)4−]、ペンタメチレン基[−(CH2)5−]等が挙げられる。
分岐鎖状の脂肪族炭化水素基としては、分岐鎖状のアルキレン基が好ましい。具体的には、−CH(CH3)−、−CH(CH2CH3)−、−C(CH3)2−、−C(CH3)(CH2CH3)−、−C(CH3)(CH2CH2CH3)−、−C(CH2CH3)2−等のアルキルメチレン基;−CH(CH3)CH2−、−CH(CH3)CH(CH3)−、−C(CH3)2CH2−、−CH(CH2CH3)CH2−等のアルキルエチレン基;−CH(CH3)CH2CH2−、−CH2CH(CH3)CH2−等のアルキルトリメチレン基;−CH(CH3)CH2CH2CH2−、−CH2CH(CH3)CH2CH2−等のアルキルテトラメチレン基等のアルキルアルキレン基等が挙げられる。アルキルアルキレン基におけるアルキル基としては、炭素数1〜5の直鎖状のアルキル基が好ましい。
これら直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素基は、置換基を有していてもよく、有していなくてもよい。置換基としては、フッ素原子、フッ素原子で置換された炭素数1〜5のフッ素化アルキル基、酸素原子(=O)等が挙げられる。
環状の脂肪族炭化水素基は、多環式基であってもよく、単環式基であってもよい。単環式基としては、炭素数3〜6のモノシクロアルカンから2個の水素原子を除いた基が好ましく、モノシクロアルカンとしてはシクロペンタン、シクロヘキサン等が例示できる。多環式基としては、炭素数7〜12のポリシクロアルカンから2個の水素原子を除いた基が好ましく、ポリシクロアルカンとして具体的には、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等が挙げられる。
Aとしては、直鎖状の脂肪族炭化水素基が好ましく、直鎖状のアルキレン基がより好ましく、炭素数1〜5の直鎖状のアルキレン基がさらに好ましく、メチレン基又はエチレン基が特に好ましい。
Bとしては、直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素基が好ましい。
また、式−[A−C(=O)−O]m’−B−で表される基において、m’は0〜3の整数であり、0〜2の整数であることが好ましく、0又は1がより好ましく、1が最も好ましい。
以下に、上記式(a1−0−1)で表される構成単位の具体例を示す。以下の各式中、Rαは、水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を示す。
以下に、上記式(a1−0−2)で表される構成単位の具体例を示す。以下の各式中、Rαは、水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を示す。
樹脂(a)中、構成単位(a1)の割合は、樹脂(a)を構成する全構成単位に対し、10〜80モル%が好ましく、20〜70モル%がより好ましく、25〜50モル%がさらに好ましい。構成単位(a1)の割合をかかる範囲とすることにより、パターンの形成が容易であるレジスト組成物を調製しやすい。
(構成単位(a2))
構成単位(a2)は、ラクトン含有環式基を含む(メタ)アクリル酸エステルから誘導される構成単位であって、下記式(a2−1)又は(a2−2)で表される酸分解性基を含む(メタ)アクリル酸エステルから誘導される構成単位である。ここで、ラクトン含有環式基とは、−O−C(=O)−構造を含むひとつの環(ラクトン環)を含有する環式基を示す。ラクトン環をひとつの目の環として数え、ラクトン環のみの場合は単環式基、さらに他の環構造を有する場合は、その構造に関わらず多環式基と称する。
構成単位(a2)のラクトン環式基は、樹脂(a)をレジスト膜の形成に用いた場合に、レジスト膜の基板への密着性を高められる点で有効である。
[式(a2−1)〜(a2−2)中、Rは水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基であり、X
a5はラクトン含有環式基であり、Y
a4は2価の連結基であり、X
a6はラクトン含有環式基である。]
式(a2−1)〜(a2−2)において、Ya4の具体例としては、前述のYa1と同様のものが挙げられる。
式(a2−1)〜(a2−2)において、Xa5、又はXa6のラクトン環式基としては、特に限定されることなく任意のものが使用可能である。具体的には、ラクトン含有単環式基としては、4〜6員環ラクトンから水素原子を1つ除いた基、例えばβ−プロピオノラクトンから水素原子を1つ除いた基、γ−ブチロラクトンから水素原子1つを除いた基、δ−バレロラクトンから水素原子を1つ除いた基等が挙げられる。また、ラクトン含有多環式基としては、ラクトン環を有するビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカンから水素原子を1つ除いた基が挙げられる。
構成単位(a2)の具体例を以下に示す。以下の各式中、Rαは、水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を示す。
樹脂(a)において、構成単位(a2)としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。樹脂(a)中、構成単位(a2)の割合は、樹脂(a)を構成する全構成単位の合計に対し、5〜60モル%が好ましく、10〜50モル%がより好ましく、20〜50モル%がさらに好ましい。
(構成単位(a3))
構成単位(a3)は、極性基含有炭化水素基を含む(メタ)アクリル酸エステルから誘導される構成単位(a3)である。極性基含有炭化水素基は、極性基含有脂肪族炭化水素基又は極性基含有芳香族炭化水素基であり、極性基含有脂肪族炭化水素基が好ましい。樹脂(a)が構成単位(a3)を有することにより、樹脂(a)の親水性が高まり、感度、解像性、リソグラフィー特性等が向上する。なお、構成単位(a3)は、上記構成単位(a1)、及び(a2)には該当しない構成単位である。すなわち、「極性基含有炭化水素基を含む(メタ)アクリル酸エステルから誘導される構成単位」あっても、上記構成単位(a1)、及び(a2)の何れかに該当する構成単位は、構成単位(a3)には該当しない。
極性基としては、水酸基、シアノ基、カルボキシ基、フッ素化アルコール基(アルキル基の水素原子の一部がフッ素原子で置換されたヒドロキシアルキル基)等が挙げられる。これらの中でも、水酸基、カルボキシ基が好ましく、水酸基が特に好ましい。
構成単位(a3)において、脂肪族炭化水素基に結合する極性基の数は、特に限定されないが、1〜3個が好ましく、1個が最も好ましい。
構成単位(a3)としては、下記式(a3−1)で表される構成単位が好ましい。
[式(a3−1)中、Rは水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基であり、X
a7は1+m価の脂肪族炭化水素基であり、mは1〜3の整数である。]
Xa7としての1+m価の脂肪族炭化水素基は、飽和であってもよく、不飽和であってもよく、飽和であることが好ましい。また、脂肪族炭化水素基として、具体的には、直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素基、構造中に環を含む脂肪族炭化水素基等が挙げられる。
「直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素基」は、炭素数が1〜12であることが好ましく、1〜10がより好ましく、1〜8がより好ましく、1〜6がさらに好ましい。直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素基は、水素原子の一部又は全部が、極性基以外の置換基で置換されていてもよい。極性基以外の置換基としては、フッ素原子、フッ素原子で置換された炭素数1〜5のフッ素化アルキル基、酸素原子(=O)等が挙げられる。また、直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素基は、炭素原子間にヘテロ原子を含む2価の基が介在してもよい。「ヘテロ原子を含む2価の基」としては、上記構成単位(a1)の説明で、式(a1−0−2)中のYa1の2価の連結基として挙げた「ヘテロ原子を含む2価の連結基」と同様のものが挙げられる。
「構造中に環を含む脂肪族炭化水素基」としては、環状の脂肪族炭化水素基、環状の脂肪族炭化水素基が前述した鎖状の脂肪族炭化水素基の末端に結合するか又は鎖状の脂肪族炭化水素基の途中に介在する基等が挙げられる。環状の脂肪族炭化水素基の炭素数は、3〜30が好ましい。また、環状の脂肪族炭化水素基は、多環式であってもよく、単環式であってもよく、多環式が好ましい。
環状の脂肪族炭化水素基として、具体的には、例えばArFエキシマレーザー用レジスト組成物用の樹脂において、多数提案されているものの中から適宜選択して用いることができる。例えば単環式の脂肪族炭化水素基としては、炭素数3〜20のモノシクロアルカンから2個の水素原子を除いた基が好ましく、モノシクロアルカンとしてはシクロペンタン、シクロヘキサン等が例示できる。多環式の脂肪族炭化水素基としては、炭素数7〜30のポリシクロアルカンから2個の水素原子を除いた基が好ましく、ポリシクロアルカンとして具体的には、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等が挙げられる。
環状の脂肪族炭化水素基は、水素原子の一部又は全部が、前述の極性基以外の置換基で置換されていてもよい。極性基以外の置換基としては、炭素数1〜5のアルキル基、フッ素原子、フッ素原子で置換された炭素数1〜5のフッ素化アルキル基、酸素原子(=O)等が挙げられる。
樹脂(a)が含有する構成単位(a3)は1種であってもよく2種以上であってもよい。樹脂(a)が構成単位(a3)を有する場合、樹脂(a)中の構成単位(a6)の割合は、樹脂(a)を構成する全構成単位の合計に対して1〜50モル%が好ましく、5〜40モル%がより好ましく、5〜25モル%がさらに好ましい。
〔構成単位(a4)〕
構成単位(a4)は、脂肪族炭化水素基を含むアクリル酸エステルから誘導される構成単位(a4)である。構成単位(a4)に含まれる脂肪族炭化水素基は、構成単位(a3)において説明した極性基を含まない。樹脂(a)が構成単位(a4)を有することにより、樹脂のガラス転移温度(Tg)を変化させることができ、形成されるレジスト膜の特性を向上させることができる。
構成単位(a4)としては、下記式(a4−1)で表される構成単位が好ましい。
[式(a4−1)中、Rは水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基であり、X
a8は脂肪族炭化水素基である。]
Xa8としての脂肪族炭化水素基は、飽和であってもよく、不飽和であってもよく、飽和であることが好ましい。また、脂肪族炭化水素基として、具体的には、直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素基、構造中に環を含む脂肪族炭化水素基等が挙げられる。
「直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素基」は、炭素数が1〜12であることが好ましく、1〜10がより好ましく、1〜8がより好ましく、1〜6がさらに好ましい。直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素基は、水素原子の一部又は全部が、極性基以外の置換基で置換されていてもよい。極性基以外の置換基としては、フッ素原子、フッ素原子で置換された炭素数1〜5のフッ素化アルキル基、酸素原子(=O)等が挙げられる。また、直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素基は、炭素原子間にヘテロ原子を含む2価の基が介在してもよい。「ヘテロ原子を含む2価の基」としては、上記構成単位(a1)の説明で、式(a1−0−2)中のYa1の2価の連結基として挙げた「ヘテロ原子を含む2価の連結基」と同様のものが挙げられる。
「構造中に環を含む脂肪族炭化水素基」としては、環状の脂肪族炭化水素基、環状の脂肪族炭化水素基が前述した鎖状の脂肪族炭化水素基の末端に結合するか又は鎖状の脂肪族炭化水素基の途中に介在する基等が挙げられる。環状の脂肪族炭化水素基の炭素数は、3〜30が好ましい。また、環状の脂肪族炭化水素基は、多環式であってもよく、単環式であってもよく、多環式が好ましい。
環状の脂肪族炭化水素基として、具体的には、例えばArFエキシマレーザー用レジスト組成物用の樹脂において、多数提案されているものの中から適宜選択して用いることができる。例えば単環式の脂肪族炭化水素基としては、炭素数3〜20のモノシクロアルカンから1個の水素原子を除いた基が好ましく、モノシクロアルカンとしてはシクロペンタン、シクロヘキサン等が例示できる。多環式の脂肪族炭化水素基としては、炭素数7〜30のポリシクロアルカンから1個の水素原子を除いた基が好ましく、ポリシクロアルカンとして具体的には、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等が挙げられる。
環状の脂肪族炭化水素基は、水素原子の一部又は全部が、前述の極性基以外の置換基で置換されていてもよい。極性基以外の置換基としては、炭素数1〜5のアルキル基、フッ素原子、フッ素原子で置換された炭素数1〜5のフッ素化アルキル基、酸素原子(=O)等が挙げられる。
樹脂(a)が含有する構成単位(a4)は1種であってもよく2種以上であってもよい。樹脂(a)が構成単位(a4)を有する場合、樹脂(a)中の構成単位(a6)の割合は、樹脂(a)を構成する全構成単位の合計に対して5〜60モル%が好ましく、10〜50モル%がより好ましく、20〜50モル%がさらに好ましい。
酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解性が増大する樹脂のポリスチレン換算質量平均分子量は、好ましくは1000〜600000であり、より好ましくは5000〜400000であり、更に好ましくは7000〜300000である。このような質量平均分子量とすることにより、基材との剥離性が低下することなく樹脂膜の十分な強度を保持できる。
また、樹脂(B)は、分散度が1.05以上の樹脂であることが好ましい。ここで、分散度とは、質量平均分子量を数平均分子量で除した値のことである。このような分散度とすることにより、所望とする応力耐性を得ることができる。
上記アクリル系ポリマーはアルカリ可溶性樹脂であってもよい。
ここで、アルカリ可溶性樹脂とは、樹脂濃度20質量%の樹脂溶液(溶媒:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)により、膜厚1μmの樹脂膜を基板上に形成し、2.38質量%のTMAH水溶液に1分間浸漬した際、0.01μm以上溶解するものをいう。
上記アクリル系ポリマーは、アルカリ可溶性樹脂である場合、エーテル結合を有する重合性化合物から誘導された構成単位、及びカルボキシル基を有する重合性化合物から誘導された構成単位を含むことが好ましい。
上記エーテル結合を有する重合性化合物としては、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等のエーテル結合及びエステル結合を有する(メタ)アクリル酸誘導体等を例示することができる。上記エーテル結合を有する重合性化合物は、好ましくは、2−メトキシエチルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレートである。これらの重合性化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記カルボキシル基を有する重合性化合物としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等のモノカルボン酸類;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等のジカルボン酸類;2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸、2−メタクリロイルオキシエチルマレイン酸、2−メタクリロイルオキシエチルフタル酸、2−メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸等のカルボキシル基及びエステル結合を有する化合物;等を例示することができる。上記カルボキシル基を有する重合性化合物は、好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸である。これらの重合性化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
アルカリ可溶性樹脂の質量平均分子量(Mw:ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)のポリスチレン換算による測定値。本明細書において同じ。)は、2000〜200000が好ましく、2000〜18000がより好ましく、3000〜15000が特に好ましい。
<フィルタ、上記フィルタを備えたフィルターメディア又はフィルターデバイス>
第2の態様に係るフィルタ、フィルターメディア、又はフィルターデバイスは、第1の態様に係る多孔質体を含む。
フィルタは、例えば、アクリル系ポリマー(好ましくは半導体製造分野において用いられるアクリル系ポリマー)の精製に用いるフィルタとして使用できる。
フィルターメディアは、例えば、アクリル系ポリマー(好ましくは半導体製造分野において用いられるアクリル系ポリマー)の精製に用いるフィルターメディアとして使用することができ、また、該フィルターメディアと他の濾材とを含む積層体としても使用することができ、フィルターデバイスとしても使用することができる。
フィルタ又はフィルターメディアの膜厚は特に限定されるものではないが、5μm以上500μm以下であることが好ましく、10μm以上100μm以下であることが更に好ましく、10μm以上40μm以下が特に好ましい。上記の膜厚は、例えばマイクロメータ等で複数の箇所の厚さを測定し平均することで求めることができる。
フィルターデバイスとしては特に限定されないが、フィルターデバイスにおいて、第1の態様に係る多孔質体は、供給液と濾過液とが交差するように配置される。液体流路との関係においては、流路と並行に配置してもよいし交差するように配置してもよい。供給液が濾過液と分離されるように、第1の態様に係る多孔質体を通液する前後の領域は、適宜シーリングされる。例えば、シーリングの方法として、第1の態様に係る多孔質体を、必要に応じて、光(UV)硬化による接着若しくは熱による接着(アンカー効果による接着(熱溶着等)を含む))、若しくは接着剤を用いた接着等により加工してもよく、又は第1の態様に係る多孔質体と他の濾材(フィルタ)とを例えば組み込み法等により接着して用いることができ、これらの第1の態様に係る多孔質体を更に、ポリエチレン、ポリプロピレン、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリイミド、ポリアミドイミド等の熱可塑性樹脂等からなる外側容器に備えて用いることができる。
<アクリル系ポリマーの精製方法>
第3の態様に係るアクリル系ポリマーの精製方法は、アクリル系ポリマーを含有する液体を第1の態様に係る多孔質体又は第2の態様に係るフィルタ、フィルターメディア若しくはフィルターデバイスにより濾過することを含む。
リソグラフィープロセスにおける欠陥発生の改善の点で、精製されるアクリル系ポリマーが極性基含有樹脂である場合、その効果が大きくなると考えられる。
アクリル系ポリマーを含有する液体に含まれる溶媒としては、従来公知のものが挙げられ、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコール−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、ブタンジオールモノメチルエーテル、ブタンジオールモノエチルエーテル、ブタンジオールモノプロピルエーテル等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン等の他のエーテル類;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン等のケトン類;2−ヒドロキシプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、乳酸ブチル等の乳酸アルキルエステル類;2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−3−メチル部炭酸メチル、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルプロピオネート、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、蟻酸n−ペンチル、酢酸イソペンチル、プロピオン酸n−ブチル、酪酸エチル、酪酸n−プロピル、酪酸イソプロピル、酪酸n−ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸n−プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2−オキソブタン酸エチル等の他のエステル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類、β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、ε−カプロラクトン等のラクトン系極性溶剤等の有機溶剤が挙げられる。また水溶性溶剤を用いてもよく、水溶性溶剤としては、上記で水溶性を示すものの他、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール等のアルコール溶剤やアセトン、アセトニトリル等も挙げられる。これらは単独でも2種以上を組み合わせてもよい。
これらの中でも、(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル類;(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;シクロヘキサノンを除くケトン類;乳酸アルキルエステル類;からなる群から選択される少なくとも1種を含んでいることが、高分子量体の精製の観点で好ましい。より好ましくは、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、2−ヘプタノンからなる群から選択される少なくとも1種である。
上記濾過により、上記液体に含有される上記アクリル系ポリマーのMwが好ましくは3万以上である高分子量体の一部又は全部を上記液体から除去することができる。
除去されるアクリル系ポリマーとしてはMw5万以上の高分子量体であることが好ましく、Mw60万以上の高分子量体であることがより好ましく、Mw120万以上の高分子量体であることが更に好ましく、Mw150万以上の高分子量体であることが特に好ましい。
除去されるアクリル系ポリマーのMwの上限値としては特に制限はないが、1500万以下であることが好ましく、1000万以下であることがより好ましく、500万以下であることが更に好ましく、300万以下であることが特に好ましい。
第3の態様に係る精製方法による、アクリル系ポリマーの除去率(%)は、濾過前の液中のアクリル系ポリマーの含有量に対して、濾過により除去されたアクリル系ポリマーの液中の含有量から算出することができる。
Mw60万以上のアクリル系ポリマーの除去率(%)は例えば、50%以上とすることができ、好ましくは60%以上とすることができる。
Mw120万以上のアクリル系ポリマーの除去率(%)は例えば、75%以上とすることができ、好ましく80%以上とすることができ、より好ましく85%以上とすることができる。
第3の態様に係るアクリル系ポリマーの精製方法において、上記濾過は、アクリル系ポリマーを含有する液体の一部又は全部を、第1の態様に係る多孔質体又は第2の態様に係るフィルタ、フィルターメディア若しくはフィルターデバイスの一方の側から他方の側へ差圧により透過させることが好ましい。
第1の態様に係る多孔質体又は第2の態様に係るフィルタ若しくはフィルターメディアを第3の態様に係るアクリル系ポリマーの精製方法において使用する形態については、平面状又は第1の態様に係る多孔質体又は第2の態様に係るフィルタ若しくはフィルターメディアの相対する辺を合わせたパイプ状が挙げられる。パイプ状の第1の態様に係る多孔質体又は第2の態様に係るフィルタ若しくはフィルターメディアは更にヒダ状にすることが供給液と接触する面積が増えるため好ましい。第1の態様に係る多孔質体又は第2の態様に係るフィルタ若しくはフィルターメディアは、後述のとおり供給液と濾液とが混在しないように適宜封止処理が施される。
アクリル系ポリマーを含有する液体の精製は、上述の第1の態様に係る多孔質体又は第2の態様に係るフィルタ若しくはフィルターメディアを用いて、差圧なし、即ち、重力による自然濾過によっても行うことができるが、差圧により行うことが好ましい。差圧としては、第1の態様に係る多孔質体又は第2の態様に係るフィルタ若しくはフィルターメディアの一方の側と他方の側との間に圧力差を設けるものであれば特に限定されないが、通常、第1の態様に係る多孔質体又は第2の態様に係るフィルタ若しくはフィルターメディアの片方の側(供給液側)に圧力を加える加圧(陽圧)、第1の態様に係る多孔質体又は第2の態様に係るフィルタ若しくはフィルターメディアの片方の側(濾液側)を負圧にする減圧(陰圧)等が挙げられる。濾液側を減圧する場合、精製後のアクリル系ポリマーを含有する液体に残存または溶存する気体の除去を兼ねる点でも好ましい。
加圧は、第1の態様に係る多孔質体又は第2の態様に係るフィルタ若しくはフィルターメディアを透過させる前の液体(本明細書において「供給液」ということがある)が存在する側(供給液側)に圧力を加えるものであり、例えば、供給液の循環若しくは送液で生じる流液圧の利用又はガスの陽圧を利用することにより圧力を加えるものが好ましい。流液圧は、例えば、ポンプ(送液ポンプ、循環ポンプ等)等の積極的な流液圧付加方法により発生させることができ、具体的に、ロータリーポンプ、ダイヤフラムポンプ、定量ポンプ、ケミカルポンプ、プランジャーポンプ、ベローズポンプ、ギアポンプ、真空ポンプ、エアーポンプ、液体ポンプ等が挙げられる。流液圧としては、例えば、重力のみに従って液体を透過させる際に該液体により第1の態様に係る多孔質体又は第2の態様に係るフィルタ若しくはフィルターメディアに加えられる圧力であってもよいが、上記積極的な流液圧付加方法により圧力が加えられるものが好ましい。加圧に用いるガスとしては、供給液に対し不活性又は非反応性のガスが好ましく、具体的には、窒素、又はヘリウム、アルゴン等の希ガス等が挙げられる。電子材料、特に、半導体等の製造分野においては、第1の態様に係る多孔質体又は第2の態様に係るフィルタ若しくはフィルターメディアを透過した液体を集める側は減圧しない大気圧でよく、加圧としては、ガスによる陽圧が好ましい。なお、上記加圧方法において、加圧バルブ又は加圧弁若しくは三方弁等の弁を介してもよい。
減圧は、第1の態様に係る多孔質体又は第2の態様に係るフィルタ若しくはフィルターメディアを透過した液体を集める側(濾液側)を減圧するものであり、例えば、ポンプによる減圧であってもよいが、真空にまで減圧することが好ましい。
ポンプによる供給液の循環若しくは送液を行う場合、通常、ポンプは、供給液漕(又は循環漕)と、第1の態様に係る多孔質体又は第2の態様に係るフィルタ若しくはフィルターメディアとの間に配置される。
加圧は、流液圧とガスの陽圧との両方を利用するものであってもよい。また、差圧は、加圧と減圧とを組合せてもよく、例えば、流液圧と減圧との両方を利用するもの、ガスの陽圧と減圧との両方を利用するもの、流液圧及びガスの陽圧と減圧とを利用するものであってもよい。差圧を設ける方法を組み合せる場合、製造の簡便化等の点で、流液圧とガスの陽圧との組合せ、流液圧と減圧との組合せが好ましい。
差圧を設けることにより第1の態様に係る多孔質体又は第2の態様に係るフィルタ若しくはフィルターメディアの前後に付与される圧力差は、使用する第1の態様に係る多孔質体又は第2の態様に係るフィルタ若しくはフィルターメディアの膜厚、空隙率若しくは平均孔径、又は所望の精製度、流量、流速、又は供給液の濃度若しくは粘度等により適宜設定すればよいが、例えば、いわゆるクロスフロー方式(第1の態様に係る多孔質体又は第2の態様に係るフィルタ若しくはフィルターメディアに対して平行に供給液を流す)の場合は、例えば3MPa以下であり、いわゆるデッドエンド方式(第1の態様に係る多孔質体又は第2の態様に係るフィルタ若しくはフィルターメディアに対して交差するように供給液を流す)の場合、例えば、1MPa以下である。下限値は特に限定されず、例えば、10Paである。
第3の態様に係るアクリル系ポリマーの精製方法において、第1の態様に係る多孔質体又は第2の態様に係るフィルタ若しくはフィルターメディアの一方の側から他方の側へ液体の一部又は全部を透過させる際、希釈液により供給液を適宜希釈してもよい。
第3の態様に係るアクリル系ポリマーの精製方法において、供給液を透過させる前に、第1の態様に係る多孔質体又は第2の態様に係るフィルタ若しくはフィルターメディアの洗浄又は供給液に対する濡れ性向上又は供給液との表面エネルギー調整のためにメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール又はアセトン、メチルエチルケトン等のケトン、水、供給液に含まれる溶媒又はそれらの混合物等の溶液を、第1の態様に係る多孔質体又は第2の態様に係るフィルタ若しくはフィルターメディアに接触させて通液させてもよい。
第1の態様に係る多孔質体又は第2の態様に係るフィルタ若しくはフィルターメディアと供給液を透過させる前の上記溶液との接触においては、第1の態様に係る多孔質体又は第2の態様に係るフィルタ若しくはフィルターメディアを上記溶液に含浸ないし浸漬させてもよく、第1の態様に係る多孔質体又は第2の態様に係るフィルタ若しくはフィルターメディアを溶液と接触させることによって、例えば、第1の態様に係る多孔質体又は第2の態様に係るフィルタ若しくはフィルターメディアの内部の孔にも溶液を浸透させることができる。第1の態様に係る多孔質体又は第2の態様に係るフィルタ若しくはフィルターメディアと供給液を透過させる前の上記溶液との接触は、上述の差圧により行ってもよく、特に、第1の態様に係る多孔質体又は第2の態様に係るフィルタ若しくはフィルターメディアの内部の孔にも溶液を浸透させる場合、加圧下により行ってもよい。
第3の態様に係るアクリル系ポリマーの精製方法において、第1の態様に係る多孔質体は、上記のとおりBET法による平均孔径が15nm以下であるので、主として分離により、また、多孔質体を構成する樹脂の種類によっては更に吸着により、アクリル系ポリマーのMw3万以上の高分子量体の一部又は全部を処理前の液体から取り除くものと考えられる。本明細書において、「分離」とは、ろ過、単離、除去、捕捉、精製及び篩いからなる群より選択される少なくとも1つを含むものであってよい。
第3の態様に係るアクリル系ポリマーの精製方法において第1の態様に係る多孔質体は、例えば、フィルターメディアその他の濾材として使用することができ、具体的には、単独で用いてもよいし、濾材として用いて他の機能層(メンブレン)を付与してもよいし、また、他の濾材に組み合わせるメンブレンとして用いてもよく、例えば、フィルターデバイス等に用いられるメンブレンとして使用することもできる。第1の態様に係る多孔質体と組み合わせて用いることができる機能層としては特に限定されず、例えば、ナイロン膜、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)膜、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)膜又はこれらを修飾した膜等の化学的又は物理化学的な機能を備えるもの等が挙げられる。
第3の態様に係るアクリル系ポリマーの精製方法において、フィルターデバイスとしては特に限定されないが、フィルターデバイスにおいて、第1の態様に係る多孔質体又は第2の態様に係るフィルタ若しくはフィルターメディアは、供給液と濾過液とが交差するように配置される。液体流路との関係においては、流路と並行に配置してもよいし交差するように配置してもよい。供給液が濾過液と分離されるように、第1の態様に係る多孔質体又は第2の態様に係るフィルタ若しくはフィルターメディアを通液する前後の領域は、適宜シーリングされる。例えば、シーリングの方法として、第1の態様に係る多孔質体又は第2の態様に係るフィルタ若しくはフィルターメディアを、必要に応じて、光(UV)硬化による接着若しくは熱による接着(アンカー効果による接着(熱溶着等)を含む))、若しくは接着剤を用いた接着等により加工してもよく、又は第1の態様に係る多孔質体又は第2の態様に係るフィルタ若しくはフィルターメディアと他の濾材(フィルタ)とを例えば組み込み法等により接着して用いることができ、これらの第1の態様に係る多孔質体又は第2の態様に係るフィルタ若しくはフィルターメディアを更に、ポリエチレン、ポリプロピレン、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリイミド、ポリアミドイミド等の熱可塑性樹脂等からなる外側容器に備えて用いることができる。
第3の態様に係るアクリル系ポリマーの精製方法は、液体を常時循環しながら第1の態様に係る多孔質体又は第2の態様に係るフィルタ若しくはフィルターメディアを透過させる、循環型の精製にも好適に適用することができる。
<アクリル系ポリマーの製造方法>
第4の態様に係るアクリル系ポリマーの製造方法は、第3の態様に係るアクリル系ポリマーの精製方法を用いる。
第3の態様に係るアクリル系ポリマーの精製方法が上述のように精製能に優れた方法であるので、第4の態様に係る製造方法は、Mw3万以上である高分子量体(好ましくはMw5万以上の高分子量体)が低減されたアクリル系ポリマーを製造することができる。
上記製造されたアクリル系ポリマーは、極性基含有樹脂、酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解性が増大する樹脂又はアルカリ可溶性樹脂であることが好ましい。
<感光性樹脂組成物の製造方法>
第5の態様に係る感光性樹脂組成物の製造方法は、第3の態様に係るアクリル系ポリマーの精製方法又は第4の態様に係るアクリル系ポリマーの製造方法を用いる。
上記製造されたアクリル系ポリマーである酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解性が増大する樹脂又はアルカリ可溶性樹脂を感光性樹脂組成物に用いてパターン(例えば、レジストパターン等)を形成した場合、現像後の残渣及び現像欠陥等を低減することができる。
感光性樹脂組成物の製造方法としては、上記精製後のアクリル系ポリマーである酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解性が増大する樹脂又はアルカリ可溶性樹脂を、他の任意成分(例えば、溶剤、光酸発生剤等)とともに通常の方法で混合、撹拌するだけでよく、必要に応じ、ディゾルバー、ホモジナイザー、3本ロールミル等の分散機を用いて分散、混合してもよい。また、混合した後で、さらにメッシュ、メンブランフィルタ等を用いて濾過してもよい。
上記精製後のアクリル系ポリマーである酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解性が増大する樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記精製後のアクリル系ポリマーであるアルカリ可溶性樹脂も、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
感光性樹脂組成物中、アルカリ現像液に対する溶解性が増大する樹脂、アルカリ可溶性樹脂の含有量は、特に限定されず、形成しようとするレジスト膜厚等に応じて適宜調整される。
製造される感光性樹脂組成物としては、活性光線又は放射線露光用(例えば波長300〜500nmの紫外線又は可視光線を選択的に照射又は露光用)の感光性樹脂組成物であることが好ましい。
活性光線又は放射線には、マイクロ波、赤外線、可視光線、紫外線、X線、γ線、電子線、陽子線、中性子線、イオン線等が挙げられ、ArF露光であることが好ましい。
以下、実施例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明の範囲は、これらの実施例に限定されるものではない。
<実施例1及び2>
ポリアミド酸とシリカ微粒子とを含むワニスを用いて、上記多孔質体の製造方法により、表1に示すBET法による平均孔径を有するポリイミド多孔質体を得た。なお、実施例1と実施例2とでは、アルカリ溶液によるケミカルエッチング条件を変更してある。
実施例1及び2の多孔質ポリイミドフィルムについて上述のBET法(吸着分子:窒素)により平均孔径を算出した。
また、比較例1として市販品のナイロンフィルム(バブルポイント法による孔径10nmとカタログに表記)、比較例2として市販品の超高分子量ポリエチレンフィルム(孔径3nmとカタログに表記)についてもBET法により平均孔径を算出した。
結果を下記表1に示す。
<アクリル系ポリマーの濾過試験1>
実施例1の多孔質ポリイミドフィルム及び比較例1のナイロンフィルムを用いてアクリル系ポリマーの濾過試験を行った。
アクリル系ポリマーとして、Mw120万及びMw60万の下記式で表されるアクリル系ポリマーをそれぞれ用意した。下記式中組成比はモル比である。
Mw120万の上記アクリル系ポリマーの動的光散乱法による平均粒径は53.8nmであり、Mw60万の上記アクリル系ポリマーの動的光散乱法による平均粒径は9.8nmであった。
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)とプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)との混合溶媒(PGMEA:PGME=6:4(質量比))に、50ppmになるようにMw120万の上記アクリル系ポリマーを混合した液、及び50ppmになるようにMw60万の上記アクリル系ポリマーを混合した液の各50mLを、それぞれ、実施例1の多孔質ポリイミドフィルム及び比較例1のナイロンフィルムにより1時間減圧(20kPa)濾過した。
実施例1の多孔質ポリイミドフィルムは直径47mm、膜厚20μmのフィルムを2枚重ねして用い、比較例1のナイロンフィルムは直径47mm、膜厚40μmのフィルムを用いた。
得られた濾液から上記混合溶媒を減圧留去し不揮発成分の重量を測定し、その結果から実施例1の多孔質ポリイミドフィルム及び比較例1のナイロンフィルムについて、Mw120万及び60万のアクリル系ポリマーそれぞれの除去率(%)を算出した。
結果を表2に示す。
表2に示した結果から明らかなように、比較例1のナイロンフィルムに比べ、実施例1の多孔質ポリイミドフィルムは、Mw120万、Mw60万いずれのアクリル系ポリマーについても除去率が高いことが分かる。
<アクリル系ポリマーの濾過試験2>
実施例1の多孔質ポリイミドフィルム及び比較例2の市販品の多孔質フィルムによる高分子量のアクリル系ポリマーの選択的除去を試験した。
アクリル系ポリマーとして、Mw150万、Mw5万及びMw1万の上記式で表されるアクリル系ポリマーをそれぞれ用意した。
上記混合溶媒(PGMEA:PGME=6:4(質量比))50mL中、Mw150万、Mw5万及びMw1万の上記アクリル系ポリマーを1:1:1の質量比で合計50ppmになるように混合した液を、それぞれの多孔質フィルムにより1時間減圧(80kPa)濾過した。
濾過前後で上記混合液についてゲル濾過クロマトグラフィー(GPC)を行った。
ゲル濾過条件としては、検出器:RI(屈折率)、溶離液:テトラヒドロフラン、流速:1mL/分、カラム:アジレントテクノロジーズ Plgel MIXED−D×2本で行った。
上記試験の結果、実施例1の多孔質ポリイミドフィルム及び比較例2の市販品の多孔質フィルムにおいて、Mw1万以下のアクリル系ポリマーは除去されなかった。
また、実施例1の多孔質ポリイミドフィルムにおいてはMw3万付近以上の高分子量からMwの値が高くなるにつれ徐々に除去され、Mw3万付近のアクリル系ポリマーも除去され、Mw150万付近のアクリル系ポリマーは実質的に完全に除去されることが分かった。
一方、比較例2では、Mw150万、Mw5万及についても除去されていないこと(濾過前のGPCの波形(分子量分布)と比較した場合の差異がほとんどないこと)が確認された。
<アクリル系ポリマーの濾過試験3>
実施例1の多孔質ポリイミドフィルムについて、混合溶媒(PGMEA:PGME=6:4(質量比))を、2−ヘプタノン単独とPGME単独に変更した他は、上記濾過試験2と同様にして、それぞれ評価を行った。
上記試験の結果、いずれの単独溶媒でも、Mw1万以下のアクリル系ポリマーは除去されなかったが、Mw3万の除去率が向上しており、分散度が狭くなっている(Mw1万を頂点としたピークの半値幅が約1/2まで減少した)ことが確認できた。