JP2018018581A - リチウムイオン電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】入力特性および寿命特性に優れるリチウムイオン電池を提供する。【解決手段】正極、負極、および電解液、を備えるリチウムイオン電池を次のように構成する。上記正極は、集電体と上記集電体上に形成された正極合剤とを有し、上記正極合剤は、リチウム・ニッケル・マンガン・コバルト複合酸化物を正極活物質として含む。そして、上記リチウム・ニッケル・マンガン・コバルト複合酸化物は、メジアン径(d50)が5μm〜7μmおよび90%径(d90)が7μm〜14μmであり、上記正極合剤の密度は、2.5g/cm3〜2.8g/cm3である。さらに、上記正極合剤は、少なくとも一種以上の導電剤を含み、上記正極活物質と上記導電剤の質量比(導電剤/正極活物質)をS、上記正極合剤の厚みをTとしたとき、次の、以下の関係式“S<0.044T−4.1 ・・・(1)、(但し、130<T<200、3.5<S<6.5)”を満たす。【選択図】図2
Description
本発明は、リチウムイオン電池に関するものである。
リチウムイオン二次電池は、ノートパソコンや携帯電話等のポータブル機器の電源に使用されている。近年、リチウムイオン二次電池は、ポータブル機器用等にとどまらず、太陽光や風力発電といった自然エネルギー向け大規模蓄電システム用途への展開が期待されている。大規模蓄電システムにおいては、システムあたりの電力量が数MWhのオーダーで必要な場合がある。
そこで、例えば、特許文献1には、リチウム二次電池を高容量化するために、正極活物質として、ニッケル、マンガン、コバルトのうち少なくとも2種類以上を含んだリチウム含有遷移金属酸化物を用いる技術が開示されている。そして、特許文献1には、このリチウム含有遷移金属酸化物の粒度分布を好適なものとすることで、極板の巻回時の正極板の切れを抑制する技術が開示されている。
しかしながら、本発明者の検討によれば、上記特許文献1に記載の粒度分布の正極活物質を用いたリチウムイオン電池であっても、以下の点が懸念されることが判明した。
即ち、電極の作製工程の正極活物質の混練において、平均粒径が小さい正極活物質の方が、平均粒径が大きい正極活物質より凝集しやすい。このため混練物の塗布時に、塗布膜にかたよりが生じ得る。このようなかたよりが生じた電極では、電池の直流抵抗値(DCR)が高くなり、入出力特性が低下してしまう。
本発明の目的は、上記課題に鑑みてなされたものであり、高入力特性および優れた寿命特性を有するリチウムイオン電池を提供することにある。
本発明の一実施の形態に係るリチウムイオン電池は、正極、負極、および電解液、を備えるリチウムイオン電池であって、上記正極が、集電体と上記集電体上に形成された正極合剤とを有し、上記正極合剤が、リチウム・ニッケル・マンガン・コバルト複合酸化物を正極活物質として含み、上記リチウム・ニッケル・マンガン・コバルト複合酸化物のメジアン径(d50)が5μm〜7μmであり、90%径(d90)が7μm〜14μmであり、かつ、上記正極合剤の密度が2.5g/cm3〜2.8g/cm3である。
例えば、上記正極合剤の厚みは、130μm〜190μmである。
例えば、上記正極合剤は、少なくとも一種以上の導電剤を含み、上記正極活物質と上記導電剤の質量比(導電剤/正極活物質)は、3.5〜6.5である。
例えば、上記リチウムイオン電池は、上記正極活物質と上記導電剤の上記質量比(導電剤/正極活物質)をS、上記正極合剤の厚みをTとしたとき、次の関係式(1)を満たす。
S<0.044T−4.1 ・・・(1)
(但し、130<T<200、3.5<S<6.5である。)
S<0.044T−4.1 ・・・(1)
(但し、130<T<200、3.5<S<6.5である。)
本発明の一実施の形態に係るリチウムイオン電池によれば、入力特性および寿命特性に優れるリチウムイオン電池を提供することができる。
以下の実施の形態において、A〜Bとして範囲を示す場合には、特に明示した場合を除き、A以上B以下を示すものとする。
(実施の形態)
まず、リチウムイオン電池の概要について簡単に説明する。リチウムイオン二次電池は、電池容器と、その内部に収容されている、正極、負極、セパレータおよび電解液とを有している。正極と負極との間にはセパレータが配置されている。
まず、リチウムイオン電池の概要について簡単に説明する。リチウムイオン二次電池は、電池容器と、その内部に収容されている、正極、負極、セパレータおよび電解液とを有している。正極と負極との間にはセパレータが配置されている。
リチウムイオン電池を充電する際には、正極と負極との間に充電器を接続する。充電時においては、正極活物質内に挿入されているリチウムイオンが脱離し、電解液中に放出される。電解液中に放出されたリチウムイオンは、電解液中を移動し、微多孔質膜からなるセパレータを通過して、負極に到達する。この負極に到達したリチウムイオンは、負極を構成する負極活物質内に挿入される。
放電する際には、正極と負極の間に外部負荷を接続する。放電時においては、負極活物質内に挿入されていたリチウムイオンが脱離して電解液中に放出される。このとき、負極から電子が放出される。そして、電解液中に放出されたリチウムイオンは、電解液中を移動し、微多孔質膜からなるセパレータを通過して、正極に到達する。この正極に到達したリチウムイオンは、正極を構成する正極活物質内に挿入される。このとき、正極活物質にリチウムイオンが挿入することにより、正極に電子が流れ込む。このようにして、負極から正極に電子が移動することにより放電が行われる。
このように、リチウムイオンを正極活物質と負極活物質との間で挿入・脱離することにより、充放電することができる。なお、実際のリチウムイオン電池の構成例については、後述する(例えば、図1参照)。
次いで、本実施の形態のリチウムイオン二次電池の構成要素である正極、負極、電解液、セパレータおよびその他の構成部材に関し順次説明する。
1.正極
本実施の形態においては、以下に示す正極を有する。本実施の形態の正極(正極板)は、集電体およびその表面に形成された正極合剤よりなる。
本実施の形態においては、以下に示す正極を有する。本実施の形態の正極(正極板)は、集電体およびその表面に形成された正極合剤よりなる。
正極合剤は、少なくとも正極活物質を含む層であり、本実施の形態においては、正極活物質として、層状型リチウム・ニッケル・マンガン・コバルト複合酸化物(NMC)を含む。このNMCを用いることで、高容量であり、かつ安全性にも優れるリチウムイオン二次電池とすることができる。
NMCの含有量は、電池の高容量化の観点から、正極合剤全量に対して65質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることが更に好ましい。
また、NMCとしては、以下の組成式(化1)で表されるものを用いることが好ましい。
Li(1+δ)MnXNiYCo(1−X−Y−Z)MZO2 ・・・(化1)
上記組成式(化1)において、(1+δ)はLi(リチウム)の組成比、XはMn(マンガン)の組成比、YはNi(ニッケル)の組成比、(1−X−Y−Z)はCo(コバルト)の組成比を示す。Zは、元素Mの組成比を示す。O(酸素)の組成比は2である。
Li(1+δ)MnXNiYCo(1−X−Y−Z)MZO2 ・・・(化1)
上記組成式(化1)において、(1+δ)はLi(リチウム)の組成比、XはMn(マンガン)の組成比、YはNi(ニッケル)の組成比、(1−X−Y−Z)はCo(コバルト)の組成比を示す。Zは、元素Mの組成比を示す。O(酸素)の組成比は2である。
元素Mは、Ti(チタン)、Zr(ジルコニウム)、Nb(ニオブ)、Mo(モリブデン)、W(タングステン)、Al(アルミニウム)、Si(シリコン)、Ga(ガリウム)、Ge(ゲルマニウム)およびSn(錫)よりなる群から選択される少なくとも1種の元素である。
上記組成比について、−0.15<δ<0.15、0.1<X≦0.5、0.6<X+Y+Z≦1.0、0≦Z≦0.1である。
このように、正極活物質として、NMCを用いることで、高容量かつ安全性に優れた電池を提供することができる。
ここで、本実施の形態においては、上記NMCは、特定の粒径を有する。この粒径については、後述する。
また、正極活物質としては、上記NMCに加え、スピネル型リチウム・マンガン酸化物(sp−Mn)等のリチウム含有複合金属酸化物、オリビン型リチウム塩、カルコゲン化合物、二酸化マンガン等を含んでいてもよい。これらの中でも、リチウム含有複合金属酸化物を併用することが好ましい。
リチウム含有複合金属酸化物は、リチウムと遷移金属とを含む金属酸化物または該金属酸化物中の遷移金属の一部が異種元素によって置換された金属酸化物である。ここで、異種元素としては、例えば、Na、Mg、Sc、Y、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Al、Cr、Pb、Sb、V、Bが挙げられ、Mn、Al、Co、Ni、Mgが好ましい。異種元素は1種でもよくまたは2種以上でもよい。リチウム含有複合金属酸化物としては、例えば、LiXCoO2、LiXNiO2、LiXMnO2、LiXCoyNi1−yO2、LiXCoyM1−yOz、LiXNi1−yMyOz、LiXMn2O4、LiXMn2−yMyO4、LiMPO4、Li2MPO4F(上記各組成式中、MはNa、Mg、Sc、Y、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Al、Cr、Pb、Sb、VおよびBよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を示す。X=0〜1.2、Y=0〜0.9、Z=2.0〜2.3である。)等が挙げられる。ここで、リチウムのモル比を示すXの値は、充放電により増減する。
また、オリビン型リチウム塩としては、例えば、LiFePO4等が挙げられる。カルコゲン化合物としては、例えば、二硫化チタン、二硫化モリブデンが挙げられる。正極活物質は1種を単独で使用してもよく、また、上記のように2種以上を併用してもよい。
ここで、本実施の形態においては、リチウムイオン二次電池を構成する正極合剤の密度が、2.5g/cm3〜2.8g/cm3である。
正極合剤の密度が2.5g/cm3未満では、正極の抵抗が高くなり、入出力特性が低下する可能性がある。一方、正極合剤の密度が2.8g/cm3を超えると安全性の低下が懸念され、他の安全対策の強化が必要となる可能性がある。このような観点から、正極合剤密度は、2.55g/cm3以上、2.75g/cm3以下がより好ましい。
このような正極合剤の密度とするには、正極合剤の正極集電体への片面塗布量を、165g/m2〜280g/m2とすることが好ましい。
正極合剤の塗布量が165g/m2未満では、充放電に寄与する活物質の量が低下し、電池のエネルギー密度が低下する可能性がある。一方、正極合剤の塗布量が280g/m2を超えると、正極合剤の抵抗が高くなり、入出力特性が低下する可能性がある。上記のような観点から、正極合剤の正極集電体への片面塗布量は、175g/m2以上、270g/m2以下であることが好ましく、185g/m2以上、260g/m2以下であることがより好ましい。
上記したような正極合剤の正極集電体への片面塗布量および正極合剤密度を考慮すると、正極合剤の正極集電体への片面塗布膜の厚み([正極の厚み−正極集電体の厚み]/2)は、65μm〜100μmであることが好ましく、70μm〜96μmがより好ましく、74μm〜93μmが更に好ましい。
このように、正極合剤において、正極合剤密度を2.5g/cm3〜2.8g/cm3とするため正極合剤の正極集電体への片面塗布量および正極合剤の正極集電体への片面塗布膜厚みを上記範囲とすることで、高容量のリチウムイオン二次電池を実現することができる。
以下に、正極合剤および集電体について詳細に説明する。正極合剤は、正極活物質や結着材等を含有し、集電体上に形成される。その形成方法に制限はないが例えば次のように形成される。(a)正極活物質、(b)必要に応じて用いられる導電剤、(c)結着材、(d)必要に応じて用いられる増粘材、およびその他の添加材を、混合してシート状にし、これを集電体に圧着する(乾式法)。また、正極活物質、導電剤、結着材、必要に応じて用いられる増粘材、およびその他の添加材を、分散溶媒に溶解または分散させてスラリーとし、これを集電体に塗布し、乾燥する(湿式法)。
(a)正極活物質(上記NMCや併用する各物質)の粒子としては、塊状、多面体状、球状、楕円球状、板状、針状、柱状等のものが用いられる。中でも、一次粒子が凝集して、二次粒子を形成して成り、その二次粒子の形状が球状ないし楕円球状であるものが好ましい。
電池のような電気化学素子においては、その充放電に伴い、電極中の活物質が膨張収縮をするため、そのストレスによる活物質の破壊や導電パスの切断等の劣化が生じやすい。そのため一次粒子のみの単一粒子を用いるよりも、一次粒子が凝集して、二次粒子を形成したものを用いる方が、膨張収縮のストレスを緩和し、上記劣化を防ぐことができるため好ましい。また、板状等の軸配向性の粒子よりも球状ないし楕円球状の粒子を用いる方が、電極内における配向が少なくなるため、充放電時の電極の膨張収縮が小さくなり好ましい。また、電極の形成時において、導電剤等の他の材料とも均一に混合されやすいため好ましい。
正極活物質の粒子の平均粒子径d50(一次粒子が凝集して二次粒子を形成している場合には二次粒子の平均粒子径d50)について、一般的な範囲は次のとおりである。範囲の下限は、0.1μm以上、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上、さらに好ましくは3μm以上であり、上限は、20μm以下、好ましくは18μm以下、より好ましくは16μm以下、さらに好ましくは15μm以下である。上記下限未満では、タップ密度(充填性)が低下し、所望のタップ密度が得られなくなる恐れがあり、上記上限を超えると粒子内のリチウムイオンの拡散に時間がかかるため、電池性能の低下を招く恐れがある。また、上記上限を超えると、電極の形成時において、結着材や導電剤等の他の材料との混合性が低下する恐れがある。よって、この混合物をスラリー化し塗布する際に、均一に塗布できず、スジを引く等の問題を生ずる場合がある。
ここで、本実施の形態においては、後述の実施例から分かるように、正極活物質として用いられるNMCの粒子のメジアン径d50(一次粒子が凝集して二次粒子を形成している場合には二次粒子のメジアン径d50)は、5〜7μmである。また、NMCの粒子の90%径(d90)(一次粒子が凝集して二次粒子を形成している場合には二次粒子のd90)は、7〜14μmである。
なお、メジアン径(50%径、平均粒子径、d50ともいう)および90%径(d90)は、レーザー回折・散乱法により求めた粒度分布から算出することができる。レーザー回折・散乱法を用いて測定される、粒子径を横軸に、体積累積を縦軸にとった体積累積粒子径分布曲線で、メジアン径(d50)は、小粒径側からの累積が50%となる粒子径で、90%径(d90)は、小粒径側からの累積が90%となる粒子径である。
NMC等の正極活物質の粒子のBET比表面積について、その範囲は次のとおりである。範囲の下限は、0.2m2/g以上、好ましくは0.3m2/g以上、より好ましくは0.4m2/g以上であり、上限は、4.0m2/g以下、好ましくは2.5m2/g以下、より好ましくは1.5m2/g以下である。上記下限未満では、電池性能が低下する恐れがある。上記上限を超えるとタップ密度が上がりにくくなり、結着材や導電剤等の他の材料との混合性が低下する恐れがある。よって、この混合物をスラリー化し塗布する際の塗布性が劣化する恐れがある。BET比表面積は、BET法により求められた比表面積(単位gあたりの面積)である。
(b)正極用の導電剤(導電剤)としては、例えば、銅、ニッケル等の金属材料;天然黒鉛、人造黒鉛等の黒鉛(グラファイト);アセチレンブラック等のカーボンブラック;ニードルコークス等の無定形炭素等の炭素質材料等が挙げられる。なお、これらのうち、1種を単独で用いてもよく、2種以上のものを組み合わせて用いてもよい。
導電剤の含有量(添加量、割合、量)について、正極合剤の全量に対する導電剤の含有量の範囲は次のとおりである。範囲の下限は、0.01質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上であり、上限は、50質量%以下、好ましくは30質量%以下、より好ましくは15質量%以下である。上記下限未満では、導電性が不充分となる可能性がある。また、上記上限を超えると、電池容量が低下する可能性がある。
(c)正極活物質の結着材としては、特に限定されず、塗布法により正極合剤を形成する場合には、分散溶媒に対する溶解性や分散性が良好な材料が選択される。具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリイミド、SBR(スチレン−ブタジエンゴム)、NBR(アクリロニトリル−ブタジエンゴム)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化ポリフッ化ビニリデン、等が挙げられる。なお、これらのうち、1種を単独で用いてもよく、2種以上のものを組み合わせて用いてもよい。正極の安定性の観点から、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)やポリテトラフルオロエチレン・フッ化ビニリデン共重合体等のフッ素系高分子を用いることが好ましい。
結着材の含有量(添加量、割合、量)について、正極合剤の全量に対する結着材の含有量の範囲は次のとおりである。範囲の下限は、0.1質量%以上、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上であり、上限は、80質量%以下、好ましくは60質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。結着材の含有量が低すぎると、正極活物質を充分に結着できず、正極の機械的強度が不足し、サイクル特性等の電池性能を劣化させてしまう可能性がある。逆に、高すぎると、電池容量や導電性が低下する可能性がある。
スラリーを形成するための分散溶媒としては、正極活物質、結着材、導電剤および必要に応じて用いられる増粘材などを溶解または分散することが可能な溶媒であれば、その種類に制限はなく、例えば、有機系溶媒を用いることができる。有機系溶媒の例としては、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、アクリル酸メチル、ジエチルトリアミン、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン、テトラヒドロフラン(THF)、トルエン、アセトン、ジエチルエーテル、ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルホスファルアミド、ジメチルスルフォキシド、ベンゼン、キシレン、キノリン、ピリジン、メチルナフタレン、ヘキサン等が挙げられる。なお、上記分散溶媒は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(d)増粘材は、スラリーの粘度を調製するために使用される。分散溶媒として、水系溶媒を用いる場合、増粘材を用いることが好ましいが、有機系溶媒を用いる場合には、用いなくてもよい。
上記湿式法や乾式法を用いて集電体上に形成された層は、正極活物質の充填密度を向上させるため、ハンドプレスやローラープレス等により圧密化することが好ましい。
正極用の集電体の材質としては特に制限はなく、具体例としては、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケルメッキ、チタン、タンタル等の金属材料;カーボンクロス、カーボンペーパー等の炭素質材料が挙げられる。中でも金属材料、特にアルミニウムが好ましい。
集電体の形状としては特に制限はなく、種々の形状に加工された材料を用いることができる。具体例としては、金属材料については、金属薄膜、金属箔を用いることが好ましい。なお、金属薄膜、金属箔は適宜メッシュ状に形成してもよい。金属薄膜、金属箔の厚さは任意であるが、その範囲は次のとおりである。範囲の下限は、1μm以上、好ましくは3μm以上、より好ましくは5μm以上であり、上限は、1mm以下、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下である。上記下限未満では、集電体として必要な強度が不足する場合がある。また、上記上限を超えると可撓性が低下し、加工性が劣化する恐れがある。
2.負極
本実施の形態においては、以下に示す負極を有する。本実施の形態の負極(負極板)は、集電体およびその表面に形成された負極合剤よりなる。負極合剤は、電気化学的にリチウムイオンを吸蔵・放出可能な負極活物質を含有する。また、この負極合剤は、例えば、集電体の表面に形成(塗布)される。この負極合剤は、例えば、集電体の両面に形成(塗布)されていてもよい。
本実施の形態においては、以下に示す負極を有する。本実施の形態の負極(負極板)は、集電体およびその表面に形成された負極合剤よりなる。負極合剤は、電気化学的にリチウムイオンを吸蔵・放出可能な負極活物質を含有する。また、この負極合剤は、例えば、集電体の表面に形成(塗布)される。この負極合剤は、例えば、集電体の両面に形成(塗布)されていてもよい。
以下に、負極合剤および集電体について詳細に説明する。負極合剤は、負極活物質や結着材等を含有し、集電体上に形成される。その形成方法に制限はないが例えば次のように形成される。(a)負極活物質、(b)導電剤、(c)結着材、(d)必要に応じて用いられる増粘材、およびその他の添加材を、混合してシート状にし、これを集電体に圧着する(乾式法)。また、正極活物質、導電剤、結着材、必要に応じて用いられる増粘材、およびその他の添加材を、分散溶媒に溶解または分散させてスラリーとし、これを集電体に塗布し、乾燥する(湿式法)。
(a)負極活物質としては、炭素材料を用いることが好ましい。炭素材料は、結晶構造がそろった黒鉛系のものと、結晶構造が乱れた非黒鉛系のものに大別される。黒鉛系には、天然黒鉛、人造黒鉛がある、非黒鉛系では非晶質炭素があり、結晶構造が乱れてはいるものの、2000〜3000℃の加熱によって黒鉛になりやすい易黒鉛化炭素と、黒鉛になりにくい難黒鉛化炭素がある。非晶質炭素は、例えば、石油ピッチ、ポリアセン、ポリパラフェニレン、ポリフルフリルアルコール、ポリシロキサンを熱処理することにより製造することが可能であり、焼成温度を変えることによって、難黒鉛化炭素としたり、易黒鉛化炭素としたりすることが可能である。例えば、500〜800℃程度の焼成温度は難黒鉛化炭素の製造に適しており、800〜1000℃程度の焼成温度は易黒鉛化炭素の製造に適している。難黒鉛化炭素は、X線広角回折法により得られるC軸方向の面間隔d002値が、0.36nm以上、0.40nm以下であると定義する。易黒鉛化炭素は、X線広角回折法により得られるC軸方向の面間隔d002値が、0.34nm以上、0.36nm未満であることが好ましく、0.341nm以上、0.355nm以下であることがより好ましく、0.342nm以上、0.35nm以下であることが更に好ましい。黒鉛系の炭素材料は、X線広角回折法により得られるC軸方向の面間隔d002値が、0.33nm以上、0.34nm未満であることが好ましく、0.335nm以上、0.337nm以下であることがより好ましい。
炭素材料の含有量(添加量、割合、量)は、負極活物質の全量に対して、20質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、70質量%以上が更に好ましい。
負極活物質の平均粒子径は、2.0μm〜50μmであることが好ましい。平均粒子径が5μm以上の場合、比表面積を適正な範囲とすることができ、リチウムイオン二次電池の初回充放電効率が優れると共に、粒子同士の接触が良く、入出力特性に優れる傾向がある。一方、平均粒子径が30μm以下の場合、電極面に凸凹が発生しにくく電池の短絡を抑制できると共に、粒子表面から内部へのLiの拡散距離が比較的短くなるためリチウムイオン二次電池の入出力特性が向上する傾向がある。この観点から負極活物質の平均粒子径は、5μm〜30μmであることがより好ましく、10〜20μmであることが更に好ましい。なお、例えば、粒度分布は界面活性剤を含んだ精製水に試料を分散させ、レーザー回折式粒度分布測定装置(例えば、株式会社島津製作所製SALD−3000J)で測定することができ、平均粒子径はメジアン径(d50)として算出される。
また、負極活物質として、炭素材料以外の負極活物質を用いてもよい。炭素材料以外の負極活物質としては、酸化錫や酸化ケイ素等の金属酸化物、金属複合酸化物、リチウム単体やリチウムアルミニウム合金等のリチウム合金、SnやSi等のリチウムと合金形成可能な材料等が挙げられる。上記炭素材料や炭素材料以外の負極活物質のうち、1種を単独で用いてもよく、2種以上のものを組み合わせて用いてもよい。
金属複合酸化物としては、リチウムを吸蔵、放出可能なものであれば特に制限はないが、Ti(チタン)、Li(リチウム)またはTiおよびLiの双方を含有するものが、高電流密度充放電特性の観点で好ましい。
また、負極活物質として、リチウムと化合物を形成することでリチウムを吸蔵放出できるリチウム金属や、リチウムと化合物を形成し、結晶間隙に挿入されることでリチウムを吸蔵放出できる珪素、ゲルマニウム、錫など第四族元素の酸化物もしくは窒化物を、上記炭素材料と併用したものを用いてもよい。
(b)導電剤として、第2炭素質材料を用いてもよい。この第2炭素質材料(導電剤)として、体積基準の粒度分布がメジアン径を中心としたときに左右対称とならない炭素材料を用いてもよい。また、第2炭素質材料(導電剤)として、負極活物質として用いる上記炭素材料とラマンR値が異なる炭素材料を用いてもよい。また、第2炭素質材料(導電剤)として、負極活物質として用いる上記炭素材料とX線パラメータが異なる炭素材料を用いてもよい。
第2炭素質材料(導電剤)としては、黒鉛質、非晶質、活性炭などの導電性の高い炭素質材料を用いることができる。具体的には、天然黒鉛、人造黒鉛等の黒鉛(グラファイト)、アセチレンブラック等のカーボンブラック、ニードルコークス等の無定形炭素等を用いることができる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上のものを組み合わせて用いてもよい。このように、第2炭素質材料(導電剤)を添加することにより、電極の抵抗を低減するなどの効果を奏する。
負極用の集電体の材質としては特に制限はなく、具体例としては、銅、ニッケル、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼等の金属材料が挙げられる。中でも、加工のし易さとコストの観点から銅が好ましい。
集電体の形状としては特に制限はなく、種々の形状に加工された材料を用いることができる。具体例としては、金属材料については、金属薄膜、金属箔を用いることが好ましく、銅箔がより好ましい。銅箔には、圧延法により形成された圧延銅箔と、電解法により形成された電解銅箔とがあり、どちらも集電体として用いて好適である。集電体の厚さに制限はないが、厚さが25μm未満の場合、純銅よりも強銅合金(リン青銅、チタン銅、コルソン合金、Cu−Cr−Zr合金等)を用いることでその強度を向上させることができる。
リチウムイオン二次電池を構成する負極合剤の密度の範囲は次のとおりである。負極合剤密度の下限は、好ましくは0.7g/cm3以上、より好ましくは0.8g/cm3以上、更に好ましくは0.9g/cm3以上であり、上限は、2g/cm3以下、好ましくは1.9g/cm3以下、より好ましくは1.8g/cm3以下、更に好ましくは1.7g/cm3以下である。
上記上限を超えると、負極活物質の粒子が破壊されやすくなり、初期の不可逆容量の増加や、集電体と負極活物質との界面付近への非水系電解液の浸透性の低下による高電流密度充放電特性の劣化を招く可能性がある。また、上記下限未満では、負極活物質間の導電性が低下するため電池抵抗が増大し、単位容積あたりの容量が低下する可能性がある。
(c)負極活物質の結着材としては、非水系電解液や電極の形成時に用いる分散溶媒に対して安定な材料であれば、特に制限はない。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、SBR(スチレン−ブタジエンゴム)、NBR(アクリロニトリル− ブタジエンゴム)、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化ポリフッ化ビニリデン等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
結着材の含有量は、負極合剤の全量に対して、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは0.6質量%以上である。結着材の含有量の上限は、20質量%以下、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは8質量%以下である。
上記上限を超えると、電池容量に寄与しない結着材の割合が増加し、電池容量の低下を招く可能性がある。また、上記下限未満では、負極合剤の強度の低下を招く可能性がある。
特に、結着材として、SBRに代表されるゴム状高分子を主要成分として用いる場合の負極合剤の質量に対する結着材の含有量の範囲は次のとおりである。範囲の下限は、0.1質量%以上、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは0.6質量%以上であり、上限は、5質量%以下、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%以下である。
また、結着材として、ポリフッ化ビニリデンに代表されるフッ素系高分子を主要成分として用いる場合の負極合剤の質量に対する結着材の含有量の範囲は次のとおりである。範囲の下限は、1質量%以上、好ましくは2質量%以上、より好ましくは3質量%以上であり、上限は、15質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは8質量%以下である。
スラリーを形成するための分散溶媒としては、負極活物質、結着材、および必要に応じて用いられる導電剤や増粘材などを溶解または分散することが可能な溶媒であれば、その種類に制限はなく、水系溶媒と有機系溶媒のどちらを用いてもよい。水系溶媒の例としては、水、アルコールと水との混合溶媒等が挙げられ、有機系溶媒の例としては、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、アクリル酸メチル、ジエチルトリアミン、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン、テトラヒドロフラン(THF)、トルエン、アセトン、ジエチルエーテル、ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルホスファルアミド、ジメチルスルフォキシド、ベンゼン、キシレン、キノリン、ピリジン、メチルナフタレン、ヘキサン等が挙げられる。特に水系溶媒を用いる場合、増粘材を用いることが好ましい。この増粘材に併せて分散材等を加え、SBR等のラテックスを用いてスラリー化する。なお、上記分散溶媒は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(d)増粘材は、スラリーの粘度を調製するために使用される。増粘材としては、特に制限はないが、具体的には、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、酸化スターチ、リン酸化スターチ、カゼインおよびこれらの塩等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
増粘材を用いる場合の負極合剤の質量に対する増粘材の含有量の範囲は次のとおりである。範囲の下限は、0.1質量%以上、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは0.6質量%以上であり、上限は、5質量%以下、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%以下である。
上記下限未満では、スラリーの塗布性が低下する恐れがある。また、上記上限を超えると、負極合剤に占める負極活物質の割合が低下し、電池容量の低下や負極活物質間の抵抗の上昇の恐れがある。
3.電解液
本実施の形態の電解液は、リチウム塩(電解質)と、これを溶解する非水系溶媒から構成される。このような電解液を、非水系電解液という場合がある。この非水系電解液に、必要に応じて、添加材を加えてもよい。
本実施の形態の電解液は、リチウム塩(電解質)と、これを溶解する非水系溶媒から構成される。このような電解液を、非水系電解液という場合がある。この非水系電解液に、必要に応じて、添加材を加えてもよい。
リチウム塩としては、リチウムイオン電池用の非水系電解液の電解質として使用可能なリチウム塩であれば特に制限はないが、例えば、無機リチウム塩、含フッ素有機リチウム塩やオキサラトボレート塩等が挙げられる。
リチウム塩は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、溶媒に対する溶解性、二次電池とした場合の充放電特性、入出力特性、サイクル特性等を総合的に判断すると、無機リチウム塩であるヘキサフルオロリン酸リチウム(6フッ化リン酸リチウム、LiPF6)を用いることが好ましい。
非水系電解液中の電解質の濃度に特に制限はないが、電解質の濃度範囲は次のとおりである。濃度の下限は、0.5mol/L以上、好ましくは0.6mol/L以上、より好ましくは0.7mol/L以上である。また、濃度の上限は、2mol/L以下、好ましくは1.8mol/L以下、より好ましくは1.7mol/L以下である。濃度が低すぎると、電解液の電気伝導率が不充分となる恐れがある。また、濃度が高すぎると、粘度が上昇するため電気伝導度が低下する恐れがある。このような電気伝導度の低下により、リチウムイオン電池の性能が低下する恐れがある。
非水系溶媒としては、リチウムイオン電池用の電解質の溶媒として使用可能な非水系溶媒であれば特に制限はないが、例えば次の環状カーボネート、鎖状カーボネート、鎖状エステル、環状エーテルおよび鎖状エーテル等が挙げられる。
非水系溶媒は単独で用いても、2種類以上を併用してもよいが、2種以上の化合物を併用した混合溶媒を用いることが好ましい。例えば、環状カーボネート類の高誘電率溶媒と、鎖状カーボネート類や鎖状エステル類等の低粘度溶媒とを併用するのが好ましい。好ましい組み合わせの一つは、環状カーボネート類であるエチレンカーボネートと、鎖状カーボネートであるジメチルカーボネートおよびエチルメチルカーボネートとの組み合わせである。中でも、非水系溶媒に占める環状カーボネート類と鎖状カーボネート類との合計が、80容量%以上、好ましくは85容量%以上、より好ましくは90容量%以上であり、かつ環状カーボネート類と鎖状カーボネート類との合計に対する環状カーボネート類の容量が次の範囲であるものが好ましい。環状カーボネート類の容量の下限は、5容量%以上、好ましくは10容量%以上、より好ましくは15容量%以上であり、上限は、50容量%以下、好ましくは35容量%以下、より好ましくは30容量%以下である。このような非水系溶媒の組み合わせを用いることで、電池のサイクル特性や高温保存特性(特に、高温保存後の残存容量および高負荷放電容量)が向上する。
添加材としては、リチウムイオン電池の非水系電解液用の添加材であれば特に制限はないが、例えば、窒素、硫黄または窒素および硫黄を含有する複素環化合物、環状カルボン酸エステル、フッ素含有環状カーボネート、ビニレンカーボネート等が挙げられる。
また、上記添加材以外に、求められる機能に応じて過充電防止材、負極皮膜形成材、正極保護材、高入出力材等の他の添加材を用いてもよい。
上記他の添加材により、過充電による異常時の急激な電極反応の抑制、高温保存後の容量維持特性やサイクル特性の向上、入出力特性の向上等を図ることができる。
4.セパレータ
セパレータは、正極および負極間を電子的には絶縁しつつもイオン透過性を有し、かつ、正極側における酸化性および負極側における還元性に対する耐性を備えるものであれば特に制限はない。このような特性を満たすセパレータの材料(材質)としては、樹脂、無機物、ガラス繊維等が用いられる。
セパレータは、正極および負極間を電子的には絶縁しつつもイオン透過性を有し、かつ、正極側における酸化性および負極側における還元性に対する耐性を備えるものであれば特に制限はない。このような特性を満たすセパレータの材料(材質)としては、樹脂、無機物、ガラス繊維等が用いられる。
樹脂としては、オレフィン系ポリマー、フッ素系ポリマー、セルロース系ポリマー、ポリイミド、ナイロン等が用いられる。具体的には、非水系電解液に対して安定で、保液性の優れた材料の中から選ぶのが好ましく、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンを原料とする多孔性シートまたは不織布等を用いることが好ましい。
無機物としては、アルミナや二酸化珪素等の酸化物類、窒化アルミニウムや窒化珪素等の窒化物類、硫酸バリウムや硫酸カルシウム等の硫酸塩類が用いられる。例えば、繊維形状または粒子形状の上記無機物を、不織布、織布、微多孔性フィルム等の薄膜形状の基材に付着させたものをセパレータとして用いることができる。薄膜形状の基材としては、孔径が0.01〜1μm、厚さが5〜50μmのものが好適に用いられる。また、例えば、繊維形状または粒子形状の上記無機物を、樹脂等の結着材を用いて複合多孔層としたものをセパレータとして用いることができる。さらに、この複合多孔層を、正極または負極の表面に形成し、セパレータとしてもよい。例えば、90%粒子径が1μm未満のアルミナ粒子を、フッ素樹脂を結着材として用いて結着させた複合多孔層を、正極の表面に形成してもよい。
5.その他の構成部材
上記正極、負極、セパレータおよび電解液は、電池外装体の内部に収容されている。この電池外装体(電池容器や外装フィルムなど)に、開裂弁を設けてもよい。開裂弁が開放することで、電池内部の圧力上昇を抑制でき、安全性を向上させることができる。
上記正極、負極、セパレータおよび電解液は、電池外装体の内部に収容されている。この電池外装体(電池容器や外装フィルムなど)に、開裂弁を設けてもよい。開裂弁が開放することで、電池内部の圧力上昇を抑制でき、安全性を向上させることができる。
また、電池容器の内部に、温度上昇に伴い不活性ガス(例えば、二酸化炭素など)を放出する構成部を設けてもよい。このような構成部を設けることで、電池内部の温度が上昇した場合に、不活性ガスの発生により速やかに開裂弁を開けることができ、安全性を向上させることができる。上記構成部に用いられる材料としては、炭酸リチウムやポリアルキレンカーボネート樹脂等が挙げられる。
(リチウムイオン二次電池の放電容量)
本実施の形態のリチウムイオン二次電池は、放電容量が40Ah以上の大容量のものに適している。安全性を担保しつつ、高入出力で、高エネルギー密度という観点から、45Ah以上であることが好ましく50Ah以上であることがより好ましい。実用的な観点からは100Ah以下であることが好ましい。
本実施の形態のリチウムイオン二次電池は、放電容量が40Ah以上の大容量のものに適している。安全性を担保しつつ、高入出力で、高エネルギー密度という観点から、45Ah以上であることが好ましく50Ah以上であることがより好ましい。実用的な観点からは100Ah以下であることが好ましい。
(リチウムイオン二次電池の負極と正極の容量比)
本実施の形態において、負極と正極の容量比(負極容量/正極容量)は、安全性とエネルギー密度の観点から1以上、1.5未満であることが好ましく、1.05〜1.3がより好ましく、1.1〜1.2が更に好ましい。1.3を超えると充電時に正極電位が4.2Vよりも高くなることがあるため、安全性が低下する可能性がある(このときの正極電位は対Li電位をいう)。
本実施の形態において、負極と正極の容量比(負極容量/正極容量)は、安全性とエネルギー密度の観点から1以上、1.5未満であることが好ましく、1.05〜1.3がより好ましく、1.1〜1.2が更に好ましい。1.3を超えると充電時に正極電位が4.2Vよりも高くなることがあるため、安全性が低下する可能性がある(このときの正極電位は対Li電位をいう)。
ここで、負極容量とは、[負極の放電容量]を示し、正極容量とは、[正極の初回充電容量−負極又は正極のどちらか大きい方の不可逆容量]を示す。ここで、[負極の放電容量]とは、負極活物質に挿入されているリチウムイオンが脱離されるときに充放電装置で算出されるものと定義する。また、[正極の初回充電容量]とは、正極活物質からリチウムイオンが脱離されるときに充放電装置で算出されるものと定義する。
負極と正極の容量比は、例えば、「負極の放電容量/リチウムイオン二次電池の放電容量」からも算出することができる。リチウムイオン二次電池の放電容量は、例えば、4.2V、0.1〜0.5C、終止時間を2〜5時間とする定電流定電圧(CCCV)充電を行った後、0.1〜0.5Cで2.7Vまで定電流(CC)放電したときの条件で測定できる。
負極の放電容量は、リチウムイオン二次電池の放電容量を測定した負極を所定の面積に切断し、対極としてリチウム金属を用い、電解液を含浸させたセパレータを介して単極セルを作製し、0V、0.1C、終止電流0.01Cで定電流定電圧(CCCV)充電を行った後、0.1Cで1.5Vまで定電流(CC)放電したときの条件で所定面積当たりの放電容量を測定し、これをリチウムイオン電池の負極として用いた総面積に換算することで算出できる。この単極セルにおいて、負極活物質にリチウムイオンが挿入される方向を充電、負極活物質に挿入されているリチウムイオンが脱離する方向を放電、と定義する。
尚、Cとは“電流値(A)/電池の放電容量(Ah)”を意味する。
以下、実施例に基づき本実施の形態をさらに詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施例によって限定されるものではない。
[正極板の作製]
正極板の作製を以下のように行った。正極活物質として、メジアン径(d50)が6μmであり、かつ、90%径(d90)が11μmである、層状型リチウム・ニッケル・マンガン・コバルト複合酸化物(NMC)を用い、これに、導電剤としてアセチレンブラックと、結着材としてポリフッ化ビニリデン(PVDF)とを順次添加し、混合することにより正極材料の混合物を得た。各材料の重量比は、正極活物質:導電剤:結着材=91:4:5とした。
正極板の作製を以下のように行った。正極活物質として、メジアン径(d50)が6μmであり、かつ、90%径(d90)が11μmである、層状型リチウム・ニッケル・マンガン・コバルト複合酸化物(NMC)を用い、これに、導電剤としてアセチレンブラックと、結着材としてポリフッ化ビニリデン(PVDF)とを順次添加し、混合することにより正極材料の混合物を得た。各材料の重量比は、正極活物質:導電剤:結着材=91:4:5とした。
さらに上記混合物に対し、分散溶媒であるN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を添加し、混練することによりスラリーを形成した。このスラリーを正極用の集電体である厚さ20μmのアルミニウム箔の両面に実質的に均等かつ均質に塗布した。その後、乾燥処理を施し、所定密度までプレスにより圧密化した。正極合剤密度は2.5g/cm3とし、正極合剤の厚みを188μmとした。
[負極板の作製]
負極板の作製を以下のように行った。負極活物質として易黒鉛化炭素を(d002=0.35nm、メジアン径(d50)=10μm、リチウム電位に対して0.1Vとなる電位におけるSOC(State Of Charge、充電率)=70%)を用いた。この負極活物質に結着材としてポリフッ化ビニリデンを添加した。これらの重量比は、負極活物質:結着材=92:8とした。これに分散溶媒であるN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を添加し、混練することによりスラリーを形成した。このスラリーを負極用の集電体である厚さ10μmの圧延銅箔の両面に実質的に均等かつ均質に所定量塗布した。その後、乾燥処理を施し、所定密度までプレスにより圧密化した。負極合剤密度は1.15g/cm3とした。
負極板の作製を以下のように行った。負極活物質として易黒鉛化炭素を(d002=0.35nm、メジアン径(d50)=10μm、リチウム電位に対して0.1Vとなる電位におけるSOC(State Of Charge、充電率)=70%)を用いた。この負極活物質に結着材としてポリフッ化ビニリデンを添加した。これらの重量比は、負極活物質:結着材=92:8とした。これに分散溶媒であるN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を添加し、混練することによりスラリーを形成した。このスラリーを負極用の集電体である厚さ10μmの圧延銅箔の両面に実質的に均等かつ均質に所定量塗布した。その後、乾燥処理を施し、所定密度までプレスにより圧密化した。負極合剤密度は1.15g/cm3とした。
[リチウムイオン二次電池の作製]
上記正極板と上記負極板とを、これらが直接接触しないように厚さ30μmのポリエチレン製のセパレータを挟んで捲回する。このとき、正極板のリード片と負極板のリード片とが、それぞれ捲回群の互いに反対側の両端面に位置するようにする。また、正極板、負極板、セパレータの長さを調整し、捲回群径は64±0.5mmとした。
上記正極板と上記負極板とを、これらが直接接触しないように厚さ30μmのポリエチレン製のセパレータを挟んで捲回する。このとき、正極板のリード片と負極板のリード片とが、それぞれ捲回群の互いに反対側の両端面に位置するようにする。また、正極板、負極板、セパレータの長さを調整し、捲回群径は64±0.5mmとした。
次いで、図1に示すように、正極板から導出されているリード片9を変形させ、その全てを正極側の鍔部7の底部付近に集合し、接触させる。正極側の鍔部7は、捲回群6の軸芯のほぼ延長線上にある極柱(正極外部端子1)の周囲から張り出すよう一体成形されており、底部と側部とを有する。その後、超音波溶接によりリード片9を鍔部7の底部に接続し固定する。負極板から導出されているリード片9と負極側の鍔部7の底部も同様に接続し固定する。この負極側の鍔部7は、捲回群6の軸芯のほぼ延長線上にある極柱(負極外部端子1’)周囲から張り出すよう一体成形されており、底部と側部とを有する。
その後、粘着テープを用い、正極外部端子1側の鍔部7の側部および負極外部端子1’の鍔部7の側部を覆い、絶縁被覆8を形成した。同様に、捲回群6の外周にも絶縁被覆8を形成した。例えば、この粘着テープを、正極外部端子1側の鍔部7の側部から捲回群6の外周面に亘って、さらに、捲回群6の外周面から負極外部端子1’側の鍔部7の側部に亘って、何重にも巻くことにより絶縁被覆8を形成する。絶縁被覆(粘着テープ)8としては、基材がポリイミドで、その片面にメタクリレート系粘着材を塗布した粘着テープを用いた。捲回群6の最大径部がステンレス製の電池容器5の内径よりも僅かに小さくなるように絶縁被覆8の厚さ(粘着テープの巻き数)を調整し、捲回群6を電池容器5内に挿入した。なお、電池容器5の外径は67mm、内径は66mmのものを用いた。
次いで、図1に示すように、セラミックワッシャ3’を、先端が正極外部端子1を構成する極柱および先端が負極外部端子1’を構成する極柱にそれぞれ嵌め込む。セラミックワッシャ3’は、アルミナ製であり、電池蓋4の裏面と当接する部分の厚さが2mm、内径16mm、外径25mmである。次いで、セラミックワッシャ3を電池蓋4に載置した状態で、正極外部端子1をセラミックワッシャ3に通し、また、他のセラミックワッシャ3を他の電池蓋4に載置した状態で、負極外部端子1’を他のセラミックワッシャ3に通す。セラミックワッシャ3は、アルミナ製であり、厚さ2mm、内径16mm、外径28mmの平板状である。
その後、電池蓋4の周端面を電池容器5の開口部に嵌合し、双方の接触部の全域をレーザー溶接する。このとき、正極外部端子1および負極外部端子1’は、それぞれ電池蓋4の中心にある穴(孔)を貫通して電池蓋4の外部に突出している。電池蓋4には、電池の内圧上昇に応じて開裂する開裂弁10が設けられている。なお、開裂弁10の開裂圧は、13〜18kgf/cm2(1.27〜1.77MPa)とした。
次いで、図1に示すように、金属ワッシャ11を、正極外部端子1および負極外部端子1’にそれぞれ嵌め込む。これによりセラミックワッシャ3上に金属ワッシャ11が配置される。金属ワッシャ11は、ナット2の底面より平滑な材料よりなる。
次いで、金属製のナット2を正極外部端子1および負極外部端子1’にそれぞれ螺着し、セラミックワッシャ3、金属ワッシャ11、セラミックワッシャ3’を介して電池蓋4を鍔部7とナット2と間で締め付けることにより固定する。このときの締め付けトルク値は70kgf・cm(686N・cm)とした。なお、締め付け作業が終了するまで金属ワッシャ11は回転しなかった。この状態では、電池蓋4の裏面と鍔部7との間に介在させたゴム(EPDM)製のOリング12の圧縮により電池容器5の内部の発電要素は外気から遮断されている。
その後、電池蓋4に設けられた注液口13から電解液を所定量電池容器5内に注入し、その後、注液口13を封止することにより円筒形リチウムイオン二次電池20を完成させた。
電解液としては、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとエチルメチルカーボネートを、それぞれの体積比2:3:2で混合した混合溶液中へ、6フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を1.2mol/L溶解し、添加材としてビニレンカーボネート(VC)を0.8質量%添加したものを用いた。
<実施例1>
上記のとおり、NMCのメジアン径(d50)=6μm、90%径(d90)=11μm、正極合剤密度=2.5g/cm3、正極合剤の厚み=188μm、導電剤/正極活物質=4/91≒4.4として、電池を作成し、これを実施例1とした。
上記のとおり、NMCのメジアン径(d50)=6μm、90%径(d90)=11μm、正極合剤密度=2.5g/cm3、正極合剤の厚み=188μm、導電剤/正極活物質=4/91≒4.4として、電池を作成し、これを実施例1とした。
<実施例2〜16>
また、上記の、NMCのメジアン径(d50)、90%径(d90)、正極合剤密度、正極合剤の厚み、導電剤/正極活物質を、表1に示す値として、それぞれ電池を作製し、それぞれ、実施例2〜16とした。
また、上記の、NMCのメジアン径(d50)、90%径(d90)、正極合剤密度、正極合剤の厚み、導電剤/正極活物質を、表1に示す値として、それぞれ電池を作製し、それぞれ、実施例2〜16とした。
<比較例1〜4>
また、上記の、NMCのメジアン径(d50)、90%径(d90)、正極合剤密度、正極合剤の厚み、導電剤/正極活物質を、表1に示す値として、それぞれ電池を作製し、それぞれ、比較例1〜4とした。
また、上記の、NMCのメジアン径(d50)、90%径(d90)、正極合剤密度、正極合剤の厚み、導電剤/正極活物質を、表1に示す値として、それぞれ電池を作製し、それぞれ、比較例1〜4とした。
上記実施例1〜16の電池および比較例1〜4の電池について、電池特性を評価した。
[電池特性(初期放電容量、入力特性、サイクル試験)の評価]
(初期放電容量)
25℃の環境下において、充電、放電ともに電流値は40Aとした。充電は4.2Vを上限電圧とする定電流定電圧(CCCV)充電で、終止条件を3時間とした。放電は定電流(CC)放電で、2.7Vを終止条件とした。また、充放電間には30分の休止を入れた。これを3サイクル実施し、3サイクル目の放電容量を「初期放電容量(Ah)」とした。
(初期放電容量)
25℃の環境下において、充電、放電ともに電流値は40Aとした。充電は4.2Vを上限電圧とする定電流定電圧(CCCV)充電で、終止条件を3時間とした。放電は定電流(CC)放電で、2.7Vを終止条件とした。また、充放電間には30分の休止を入れた。これを3サイクル実施し、3サイクル目の放電容量を「初期放電容量(Ah)」とした。
(入力特性)
入力特性は、上記3サイクル目の放電容量を測定後、0.5Cの電流値で4.2Vを上限電圧とする定電流定電圧(CCCV)で終止条件を3時間とする充電を行い、この時の充電容量を「電流値0.5Cにおける充電容量」とした。次に、0.5Cの電流値で終止電圧2.7Vの定電流放電を行った後、3Cの電流値で4.2Vを上限電圧とする定電流(CC)で充電を行い、この時の充電容量を「電流値3Cにおける充電容量」とし、以下の式により入力特性を算出した。この後、0.5Cの電流値で終止電圧2.7Vの定電流放電を行った。
入力特性=電流値3Cにおける充電容量/電流値0.5Cにおける充電容量
入力特性が80%以上を〇(丸)とし、80%未満70%以上を△(三角)、70%未満を×(バツ)とした。
入力特性は、上記3サイクル目の放電容量を測定後、0.5Cの電流値で4.2Vを上限電圧とする定電流定電圧(CCCV)で終止条件を3時間とする充電を行い、この時の充電容量を「電流値0.5Cにおける充電容量」とした。次に、0.5Cの電流値で終止電圧2.7Vの定電流放電を行った後、3Cの電流値で4.2Vを上限電圧とする定電流(CC)で充電を行い、この時の充電容量を「電流値3Cにおける充電容量」とし、以下の式により入力特性を算出した。この後、0.5Cの電流値で終止電圧2.7Vの定電流放電を行った。
入力特性=電流値3Cにおける充電容量/電流値0.5Cにおける充電容量
入力特性が80%以上を〇(丸)とし、80%未満70%以上を△(三角)、70%未満を×(バツ)とした。
(サイクル試験)
サイクル試験は、上記入力特性を測定後、80Aの電流値で4.2Vを上限電圧とする定電流定電圧で終止条件を1.5時間とする充電を行い、20分の休止後、80Aの定電流で、2.7Vを終止条件とし放電し、20分の休止を実施した。この充放電を1サイクルとして1000サイクルの充放電を実施した。1000サイクル後、40Aの電流値で4.2Vを上限電圧とする定電流定電圧で終止条件を3時間とする充電を行い、30分の休止後、40Aの定電流で、2.7Vを終止条件とし放電し、30分の休止を実施し、この時の放電容量を「サイクル後放電容量(Ah)」とした。そして、以下の式のように、初期放電容量に対するサイクル後放電容量を「サイクル容量維持率」として算出した。
サイクル容量維持率=[サイクル後放電容量(Ah)/初期放電容量(Ah)]
サイクル容量維持率が90%以上を〇(丸)とし、90%未満80%以上を△(三角)、80%未満を×(バツ)とした。
サイクル試験は、上記入力特性を測定後、80Aの電流値で4.2Vを上限電圧とする定電流定電圧で終止条件を1.5時間とする充電を行い、20分の休止後、80Aの定電流で、2.7Vを終止条件とし放電し、20分の休止を実施した。この充放電を1サイクルとして1000サイクルの充放電を実施した。1000サイクル後、40Aの電流値で4.2Vを上限電圧とする定電流定電圧で終止条件を3時間とする充電を行い、30分の休止後、40Aの定電流で、2.7Vを終止条件とし放電し、30分の休止を実施し、この時の放電容量を「サイクル後放電容量(Ah)」とした。そして、以下の式のように、初期放電容量に対するサイクル後放電容量を「サイクル容量維持率」として算出した。
サイクル容量維持率=[サイクル後放電容量(Ah)/初期放電容量(Ah)]
サイクル容量維持率が90%以上を〇(丸)とし、90%未満80%以上を△(三角)、80%未満を×(バツ)とした。
上記実施例1〜16の電池および比較例1〜4の電池について、初期放電容量、入力特性およびサイクル試験の評価結果を表1に示す。
実施例1〜16と比較例1〜4との対比から分かるように、NMCのメジアン径(d50)が5〜7μmであり、90%径(d90)が7〜14μmの実施例1〜16においては、初期放電容量を維持し、入力特性およびサイクル容量維持率が良好であることが分かった。このように、NMCのメジアン径(d50)および90%径(d90)を特定の範囲とすることで、高入力特性および優れた寿命特性を有するリチウムイオン電池を提供することができる。
但し、実施例1〜13と実施例14〜16との対比から分かるように、NMCのメジアン径(d50)が5〜7μmであり、90%径(d90)が7〜14μmの範囲であっても、正極合剤の厚みや正極活物質と導電剤の質量比(導電剤/正極活物質)が異なると、入力特性およびサイクル容量維持率が少し低下することが分かった。
そこで、正極合剤の厚みを“T”と、正極活物質と導電剤の質量比(導電剤/正極活物質)を“S”として、実施例1〜13と実施例14〜16について、SとTの関係を調べた。その結果を、図2に示す。図2は、正極合剤の厚みと、正極活物質と導電剤の質量比との関係を示す図である。横軸は、正極合剤の厚み[T(μm)]であり、縦軸は、正極活物質と導電剤の質量比[S(%)]である。白丸が実施例1〜13であり、黒丸が実施例14〜16である。図中の直線は、以下の関係式(2)を満たす直線である。
S=0.044T−4.1 ・・・(2)
図2から、関係式(2)より上側の領域で、高入力特性および優れた寿命特性を有するリチウムイオン電池となることが分かった。関係式(2)より上側の領域は、次の関係式(1)で表される。
S<0.044T−4.1 ・・・(1)
(但し、130<T<200、3.5<S<6.5である。)
このように、NMCのメジアン径(d50)や90%径(d90)の条件に加え、正極合剤の厚みTと、正極活物質と導電剤の質量比(導電剤/正極活物質)Sとの間に、所定の関係を要する理由は次のように考察される。
S=0.044T−4.1 ・・・(2)
図2から、関係式(2)より上側の領域で、高入力特性および優れた寿命特性を有するリチウムイオン電池となることが分かった。関係式(2)より上側の領域は、次の関係式(1)で表される。
S<0.044T−4.1 ・・・(1)
(但し、130<T<200、3.5<S<6.5である。)
このように、NMCのメジアン径(d50)や90%径(d90)の条件に加え、正極合剤の厚みTと、正極活物質と導電剤の質量比(導電剤/正極活物質)Sとの間に、所定の関係を要する理由は次のように考察される。
比較例1、2と比較例3、4の対比から分かるように、比較例1、2のように、NMCのメジアン径(d50)や90%径(d90)が小さい場合には、正極活物質と導電剤の質量比(導電剤/正極活物質)Sが5.0程度であっても、力特性に与える影響は小さいが、比較例3、4のように、NMCのメジアン径(d50)や90%径(d90)が大きくなると、正極活物質と導電剤の質量比(導電剤/正極活物質)Sが5.0程度では、入力特性が低下してしまう。なお、比較例1、2のように、NMCのメジアン径(d50)や90%径(d90)が小さい場合には、反応面積が、平方関数的に大きくなり、サイクル容量維持率(寿命)が低下しやすい。
即ち、実施例15、16のように、NMCのメジアン径(d50)や90%径(d90)が、上記特定の範囲に入っていても、正極活物質と導電剤の質量比(導電剤/正極活物質)Sが小さすぎると、入力特性が低下してしまう。
また、実施例14のように、NMCのメジアン径(d50)や90%径(d90)が、上記特定の範囲に入り、かつ、正極活物質と導電剤の質量比(導電剤/正極活物質)Sが4.4程度であっても、正極合剤の厚みTが厚いと、入力特性が少し低下してしまう。
以上の考察から、NMCのメジアン径(d50)および90%径(d90)を特定の範囲とすることで、高入力特性および優れた寿命特性を有するリチウムイオン電池を提供することができる。さらに、NMCのメジアン径(d50)および90%径(d90)を特定の範囲としつつ、正極合剤の厚みTと、正極活物質と導電剤の質量比(導電剤/正極活物質)Sとの間に、所定の関係式を満たすように、正極合剤を構成することで、より高入力特性およびより優れた寿命特性を有するリチウムイオン電池を提供することができる。
1…正極外部端子、1’…負極外部端子、2…ナット、3…セラミックワッシャ、3’…セラミックワッシャ、4…電池蓋、5…電池容器、6…捲回群、7…鍔部、8…絶縁被覆、9…リード片、10…開裂弁、11…金属ワッシャ、12…Oリング、13…注液口、20…円筒形リチウムイオン二次電池
Claims (4)
- 正極、負極、および電解液、を備えるリチウムイオン電池であって、
前記正極は、集電体と前記集電体上に形成された正極合剤とを有し、
前記正極合剤は、リチウム・ニッケル・マンガン・コバルト複合酸化物を正極活物質として含み、
前記リチウム・ニッケル・マンガン・コバルト複合酸化物は、メジアン径(d50)が5μm〜7μmおよび90%径(d90)が7μm〜14μmであり、
前記正極合剤の密度は、2.5g/cm3〜2.8g/cm3である、リチウムイオン電池。 - 請求項1記載のリチウムイオン電池において、
前記正極合剤の厚みは、130μm〜190μmである、リチウムイオン電池。 - 請求項1または2記載のリチウムイオン電池において、
前記正極合剤は、少なくとも一種以上の導電剤を含み、
前記正極活物質と前記導電剤の質量比(導電剤/正極活物質)が3.5〜6.5である、リチウムイオン電池。 - 請求項1記載のリチウムイオン電池において、
前記正極合剤は、少なくとも一種以上の導電剤を含み、
前記正極活物質と前記導電剤の質量比(導電剤/正極活物質)をS、前記正極合剤の厚みをTとしたとき、以下の関係式(1)
S<0.044T−4.1 ・・・(1)
(但し、130<T<200、3.5<S<6.5)
を満たす、リチウムイオン電池。
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JP2016145106A JP2018018581A (ja) | 2016-07-25 | 2016-07-25 | リチウムイオン電池 |
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US20230069776A1 (en) * | 2021-08-26 | 2023-03-02 | GM Global Technology Operations LLC | Lithiation additive for a positive electrode |
-
2016
- 2016-07-25 JP JP2016145106A patent/JP2018018581A/ja active Pending
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US20230069776A1 (en) * | 2021-08-26 | 2023-03-02 | GM Global Technology Operations LLC | Lithiation additive for a positive electrode |
US11799083B2 (en) * | 2021-08-26 | 2023-10-24 | GM Global Technology Operations LLC | Lithiation additive for a positive electrode |
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