以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。以下の実施形態は、本発明の好適な具体例であって、種々の好ましい技術を開示しているが、本発明の技術範囲はこれらの態様に限定されるものではない。
本発明の実施形態による自律走行装置について説明する。図1に示すように、自律走行装置1は、各部を収容するための装置本体2と、装置本体2を走行させる走行部3と、走行部3の手動操作入力を受け付けるハンドル部4とを備える。自律走行装置1は、所定の作業を実行する作業機構(作業部)を装置本体2に搭載することができ、例えば、装置本体2の下方の床面の清掃作業を実行する床面洗浄機等の清掃部5を作業部として備える。
また、図2に示すように、自律走行装置1は、装置本体2とこの装置本体2の周囲の壁や置物等の障害物(物体)との位置関係(例えば、装置本体2の前進方向に対する角度や距離)等を計測する計測部6を備える。更に、自律走行装置1は、自律走行装置1の各部及び各種機能(走行部3による走行、清掃部5による清掃作業、計測部6による計測等)を統括制御する制御部7と、各種機能の操作や表示のためのコントロールパネル8と、各部に電力を供給するための電源装置9とを備える。
自律走行装置1は、手動操作入力に基づく走行、及び自動操作入力に基づく自律的な走行が可能な車両であって、手動走行モード、追従走行モード及び教示走行モードの何れかの動作モードで動作する。なお、本実施形態において、追従走行モードとは、走行エリアA(図3等参照)の一方側を追従基準側(例えば、追従すべき壁面側)とし、この追従基準側から走行エリアAの他方側へと所定距離Lを離して装置本体2(自律走行装置1)の位置を保ちつつ、装置本体2(自律走行装置1)を進行方向へと走行させる自動的な走行モードである。また、教示走行モードとは、走行エリアAの最初の走行経路(往復走行する際の1列目の走行経路)での自律走行装置1の走行を手動操作入力により行う走行モードであって、最初の走行経路及び追従基準側の基準線(例えば、不連続の壁面を繋げた線や、壁面に近接する障害物を回避した線)を教示させて走行基準ルートを作成するモードである。
上記の走行エリアAは、自律走行装置1の清掃等の作業対象の作業エリア(清掃エリア)となり、例えば、シネマコンプレックスやショッピングモール等の大型商業施設の床が作業エリアとなる。本実施形態では、ランドマーク10で指定された範囲(例えば、2つのランドマーク10で囲われたエリア)を走行エリアAとする。走行エリアAは、基本的には、ランドマーク10以外に壁面等で囲われるが、壁面の途中では、分岐した通路や店舗によって壁面が途切れや、柱等の障害物が存在する場合もある。
装置本体2は、追従走行モードで使用するランドマーク10を収納するためのランドマーク収納部2aを備える。例えば、ランドマーク収納部2aは、折り畳んだランドマーク10を収納可能な籠状や箱状に形成され、2つのランドマーク10を収納するように装置本体2の左右両側にそれぞれ設けられる。
ランドマーク10は、接近した自律走行装置1(例えば、ランドマーク10から所定の到達距離D(図3等参照)の範囲に達した自律走行装置1)に所定の走行動作の判定をさせるために走行エリアAに設置される。ランドマーク10に対する走行動作として、基本的には、自律走行装置1の進行方向を反転させる反転動作が設定される。なお、ランドマーク10に対する走行動作は、反転動作に限定されず、例えば、左折動作、右折動作や停止動作が設定されてもよい。
ランドマーク10は、少なくとも計測部6のセンサ位置(例えば、高さ300mm)から所定範囲(例えば、上下方向に±100mmの範囲)を含む寸法で構成され、接近した自律走行装置1の計測部6によって検出される。また、ランドマーク10は、水平方向に伸縮自在であり、少なくとも装置本体2の幅よりも端部間が広い寸法に成るように伸長可能に構成される。ランドマーク10は、走行エリアA(図3等参照)の範囲を指定するように設置され、一方向に長い距離(例えば、100m)の走行エリアAを指定することもできる。ランドマーク10は、走行エリアAを区切る位置に作業者によって設置されるので、持ち運び及び設置が容易な素材や形状で形成される。ランドマーク10は、自律走行装置1が自律走行中(作業中)であるかに拘らず、幅方向又は進行方向に伸長又は短縮したり、進行方向に移動して、走行エリアA(作業エリア)の幅又は長さを任意に拡大又は縮小できる。ランドマーク10の伸長及び短縮の方法としては、別個のランドマーク10を追加及び削除してもよく、作業者が実際のランドマーク10の伸縮や移動をしてもよい。
ランドマーク10は、自律走行装置1の進行方向を横断する方向に予め設定した繰り返し形状を有して構成され、例えば、図4に示すように、複数(例えば、6つ)の四角形の板の端部同士を連結した屏風形状に形成される。ランドマーク10の屏風形状は、上方から見て、連結部分を頂点とすると共に連結される2つの板を等辺とする二等辺三角形(底辺は省略する)が連なるように構成される。図4に示すランドマーク10の屏風形状は、7つの板によって3つの山または谷を有するパターンで構成されるが、屏風形状を構成する山や谷の数は3つに限定されず、任意に設定されてよい。
このような屏風型ランドマーク10は、隣り合う2つの板同士を連結部分を中心にして開閉自在に構成される。屏風型ランドマーク10は、それぞれの板の開き角度(頂角)を0°にすることで折り畳まれて収納状態となる一方、60°〜120°の許容範囲に開くことで設置状態となる。屏風型ランドマーク10は、各開き角度を調整することで、水平方向に伸縮され、設置状態で装置本体2の幅よりも広い幅を有して構成される。なお、各開き角度は、同じ角度で設定されてもよいが、許容範囲内であれば異なる角度で設定されてもよい。この屏風型ランドマーク10は、各板の開き角度を許容範囲に開いた状態で各板の開閉を固定できるように構成されてもよい。また、屏風型ランドマーク10は、許容範囲内での各板の開き角度を所定角度(例えば、5°や10°等)毎に調節可能な角度調節機構を連結部分に備えてもよい。
屏風型ランドマーク10は、軽量で、繰り返し使用可能な耐性を有し、且つ展開状態で大きく反り返らない素材、例えば、板厚4mmのプラスチック製段ボールで形成される。また、屏風型ランドマーク10は、計測部6のレーザーレンジファインダが捕捉し易い色、例えば、白をベースにして形成される。なお、屏風型ランドマーク10には、走行エリアAの周囲の歩行者等に対して、走行エリアA内で作業(清掃)中であることを明示するために、目立つ色で警告文10cを表示してもよい。例えば、赤色の文字で「自動作業(清掃)中」の警告文10cを記載したステッカー(黄色)を屏風型ランドマーク10に貼り付けてもよい。
また、ランドマーク10は、識別性(固有のID)を有し、例えば、複数種類の繰り返し形状の何れかを採用することで識別される。例えば、屏風型ランドマーク10は、自律走行装置1と対向する際の向きによって繰り返し形状が異なり、図5(1)に示すように、自律走行装置1の進行方向に向かって両端が拡がるように設置された屏風型ランドマーク10をW型ランドマーク10a(第1の屏風型ランドマーク)とし、図5(2)に示すように、自律走行装置1の進行方向に向かって両端が狭まる(進行方向とは逆方向に向かって両端が拡がる)ように設置された屏風型ランドマーク10をM型ランドマーク10b(第2の屏風型ランドマーク)として識別される。即ち、屏風型ランドマーク10は、その向きが識別情報となる。なお、W型ランドマーク10aの向きを反転させることで、M型ランドマーク10bとすることもでき、警告文10cは、屏風型ランドマーク10の表裏両面に表示しておくことにより、反転された場合でも走行エリアAの周囲に明示される。
自律走行装置1は、後述するメモリ24等に複数種類の繰り返し形状を予め設定された状態の形状として記憶していて、後述するランドマーク認識部29によって、計測部6で検出されたランドマーク10の繰り返し形状と比較することで、ランドマーク10を識別可能となる。また、繰り返し形状は、コントロールパネル8及びその表示器40を用いた設定によってメモリ24等に記憶させてもよい。また、屏風型ランドマーク10は各辺の長さおよび各開き角度が所定の数値範囲内で複数繰り返されていることを検出して識別されてもよい。
あるいは、ランドマーク10は、ランドマーク10毎に異なるQRコード(登録商標)等の識別情報を自律走行装置1と対向する表面に表示して構成される。自律走行装置1は、後述するメモリ24等に識別情報を記憶していて、後述するランドマーク認識部29によって、計測部6に搭載されるカメラ等でランドマーク10から読み取った識別情報と比較することで、ランドマーク10を識別可能となる。
走行部3は、装置本体2の下部に一体的に設けられていて、水平方向に固定式とした駆動輪として2つの左右前輪11、12(図2参照、図1では右前輪12のみ図示する)と、水平方向に自在式とした補助輪として左右1対の後輪13と、2つの前輪11、12をそれぞれ駆動する2つの左右モータ14、15とを備える。前輪11、12は、装置本体2の下面前側で左右方向両側にそれぞれ設けられ、後輪13は、装置本体2の下面後側で左右方向中央に設けられる。各モータ14、15は、装置本体2内に設けられ、駆動ギア(図示せず)を介して各前輪11、12の回転軸(図示せず)に接続されている。走行部3では、2つのモータ14、15が2つの前輪11、12を同時に回転させることで装置本体2を前進又は後退させることができる一方、左前輪11又は右前輪12を停止させると同時に右前輪12又は左前輪11を回転させることで装置本体2を左旋回又は右旋回させることができる。なお、左前輪11および右前輪12を夫々逆方向に回転させることで、その場で転回させることもできる。
ハンドル部4は、装置本体2の上面後側において左右方向中央に設けられる。ハンドル部4は、動作モードが手動走行モード又は教示走行モードに設定されている間、図示しないスロットル等から手動操作入力を受け付ける。
清掃部5は、初期設定された清掃条件、コントロールパネル8を介して設定された清掃条件、又は自動操作入力によって設定された清掃条件に従って床面を清掃するように構成される。清掃部5は、例えば、液体を用いた湿式の清掃手法によって床面を清掃する機構であり、洗浄パッドや洗浄ブラシ等の洗浄用部材17と、洗浄用部材17へと洗浄液を供給する洗浄液供給部18(図2参照)と、洗浄用部材17での使用後の洗浄液、即ち、汚水を吸引する吸引部19とを備える。
洗浄用部材17は、装置本体2の下面中央に回転可能に設けられ、床面に接触すると共に回転することで床面を清掃する。洗浄用部材17は、装置本体2に対して着脱可能であり、即ち、交換可能な部材である。例えば、洗浄用部材17は、洗浄パッド17a、パッドカバー17b及び回転駆動部17cからなる。洗浄パッド17aは、回転駆動部17bによって回転駆動され、パッドカバー17cは、洗浄パッド17aで使用された洗浄液の飛散を防止する。
洗浄液供給部18は、洗浄液を貯蔵する洗浄液タンク(図示せず)、洗浄液タンクと洗浄用部材とを連通する給水ホース(図示せず)、及び給水ポンプ(図示せず)等を備える。洗浄液供給部18は、給水ポンプによって洗浄液タンクから給水ホースを介して洗浄用部材17へと洗浄液を供給する。
吸引部19は、床面上の汚水を吸引するスキージ19a、汚水を回収する汚水タンク(図示せず)、スキージ19aと汚水タンクとを連通する吸引パイプ(図示せず)、吸引パイプ内を負圧にする吸引モータ(図示せず)等を備える。スキージ19aは、左右方向に長い部材であり、装置本体2の下面において洗浄用部材17よりも後方に設けられ、床面に接触して洗浄用部材17からの汚水を装置本体2の後方に逃がすことなく吸引する。吸引部19は、吸引モータによって吸引パイプ内を負圧にすることで、スキージ19aから吸引パイプを介して汚水を吸引すると共に汚水タンクへと回収する。なお、吸引部19は、吸引ブロアによって汚水を吸引するように構成されてもよい。
上記のような清掃部5における清掃条件には、洗浄用部材17の回転の作動/停止、洗浄液供給部18による洗浄液供給の作動/停止、吸引部19による吸引の作動/停止、洗浄用部材17の床面に対する接地圧の強度、洗浄液供給部18による洗浄液供給量、吸引部19による吸引強度等がある。
計測部6は、図2に示すように、走行部3による装置本体2の物理的な移動量を計測する移動量センサ21と、装置本体2の前部の周囲の障害物(物体)との距離及び角度を計測する周囲障害物センサ22(図3等も参照)を備える。なお、計測部6は、周囲障害物センサ22に加えて、装置本体2の後部の周囲の障害物(物体)との距離及び角度を計測する後方障害物センサ(図示せず)を備えていてもよい。また、計測部6は、超音波センサや慣性計測装置を備えてもよい。更に、計測部6は、カメラ等を備えて、ランドマーク10に表示されたQRコード(登録商標)等の識別情報を読み取り可能に構成されてもよい。
移動量センサ21は、例えば、左右の前輪11、12のそれぞれに対応する一対のエンコーダや、加速度センサ等から構成される。周囲障害物センサ22は、装置本体2の前面に設けられ、例えば、レーザーレンジファインダ(LRF:Laser Range Finder)等から構成され、床面から所定の計測可能高さ(例えば、30cm)以内で、図8や図9に示すように、周囲障害物センサ22から所定の計測可能範囲22a以内に存在するランドマーク10や障害物等の物体を検出する。周囲障害物センサ22の計測可能範囲22aは、死角を除いた所定の半径R(例えば、半径20m)の範囲に及ぶ。計測部6は、制御部7に接続されていて、計測結果を制御部7へと送信する。
制御部7は、CPU(Central Processing Unit)等で構成される。制御部7は、図2に示すように、メモリ24に対してバス25を介して接続され、バス25は、更にインターフェース26に接続されている。また、制御部7は、バス25及びインターフェース26を介して、上記の走行部3、ハンドル部4、清掃部5、計測部6、コントロールパネル8及び電源装置9に接続される。メモリ24は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、ハードディスク、フラッシュメモリ等からなり、自律走行装置1の各部及び各種機能を制御するためのプログラムやデータが格納される。制御部7は、メモリ24に格納されたプログラムやデータを読み取り、このプログラムを実行することにより、各部及び各種機能を制御する。
更に、制御部7は、モード切換部28と、ランドマーク認識部29と、追従走行制御部30と、教示走行制御部31と、地図作成部32とを備える。なお、モード切換部28、ランドマーク認識部29、追従走行制御部30、教示走行制御部31及び地図作成部32は、メモリ24に記憶されて制御部7に実行されるプログラムで構成されていてよい。制御部7に備わる各部(モード切換部28、ランドマーク認識部29、追従走行制御部30、教示走行制御部31及び地図作成部32)の詳細は後述する。
また、制御部7は、自律走行装置1を作業者の外部端末(図示せず)と無線又は有線で通信可能に接続させる通信機能を有してもよい。制御部7は、自律走行装置1の自律走行や作業(清掃)に関するデータを外部端末に送信したり、外部端末から自律走行装置1の自律走行や作業に関する操作入力を受け付けたりする。これにより、作業者は、外部端末を用いて自律走行装置1の状況を確認することができる。
コントロールパネル8は、装置本体2の上面においてハンドル部4の前側に設けられ、図6に示すように、メインスイッチ37と、学習スイッチ38と、清掃運転スイッチ39と、表示器40と、十字キー41と、清掃条件設定キー42とを備える、コントロールパネル8の各部は、制御部7に接続されている。
メインスイッチ37は、「切」、「手動」、「自動」を切換可能に構成されている。メインスイッチ37を「手動」に切り換えることで、モード切換部28によって自律走行装置1の動作モードが手動走行モードに切り換えられる一方、メインスイッチ37を「自動」に切り換えることで、モード切換部28によって自律走行装置1の動作モードが追従走行モードに切り換えられる。
学習スイッチ38は、メインスイッチ37が「手動」に設定されている状態で操作可能に構成されている。学習スイッチ38を操作(例えば、長押し)することで、モード切換部28によって自律走行装置1の動作モードが教示走行モードに切り換えられて、教示走行モードの実行が開始される。また、学習スイッチ38を再度操作することで、教示走行モードの実行が終了し、モード切換部28によって自律走行装置1の動作モードが手動走行モードに切り換えられる。
清掃運転スイッチ39は、「入」、「切」を切換可能に構成されている。清掃運転スイッチ39を「入」に切り換えることで、清掃部5が清掃条件に従って作動する。
表示器40は、液晶パネル等で構成され、制御部7からの制御信号に応じて自律走行装置1の運転状況(動作モード)や運転時間、追従走行モードや教示走行モードでの走行の各種設定項目(走行設定項目)、清掃部5の清掃条件、警告やエラーコード等を表示する。十字キー41は、表示器40に表示される各種設定項目の選択操作を受け付けて、その選択操作に関する信号を制御部7へと送信する。
清掃条件設定キー42は、清掃部5の各部の動作の切り換え等の清掃条件の設定操作を受け付けて、その設定操作に関する信号を制御部7へと送信する。清掃条件設定キー42は、例えば、回転スイッチ44、散水スイッチ45、吸引スイッチ46、接地圧スイッチ47、散水量スイッチ48、吸引強度スイッチ49等を有する。
回転スイッチ44は、洗浄用部材17の回転の作動及び停止を切り換えるもので、操作する毎に「入」、「切」が切り換えられる。散水スイッチ45は、洗浄液供給部18による洗浄液供給の作動及び停止を切り換えるもので、操作する毎に「入」、「切」が切り換えられる。吸引スイッチ46は、吸引部19による吸引の作動及び停止を切り換えるもので、操作する毎に「入」、「切」が切り換えられる接地圧スイッチ47は、洗浄用部材の床面に対する接地圧の強度を複数段階の何れかに切り換えるもので、操作する毎に強度が循環的に切り換えられる。散水量スイッチ48は、洗浄液供給部18からの洗浄液供給量を複数段階の何れかに切り換えるもので、操作する毎に供給量が循環的に切り換えられる。吸引強度スイッチ49は、吸引部19の吸引強度を複数段階の何れかに切り換えるもので、操作する毎に強度が循環的に切り換えられる。
電源装置9は、装置本体2内部に搭載されたバッテリー(電源)を備え、外部電源に接続することで充電可能に構成される。電源装置9は、バッテリーの残量が少ないために追従走行が不可能な場合には、制御部7に対して追従走行不可を示すエラー信号を出力してもよい。
次に、制御部7に備わる各部(モード切換部28、ランドマーク認識部29、追従走行制御部30、教示走行制御部31及び地図作成部32)について説明する。
モード切換部28は、コントロールパネル8のメインスイッチ37及び学習スイッチ38の操作に応じて、自律走行装置1の動作モードを手動走行モード、追従走行モード及び教示走行モードの何れかに切り換える。モード切換部28によって動作モードが手動走行モード又は教示走行モードに設定されている間、ハンドル部4の手動操作入力が可能となる。
ランドマーク認識部29は、計測部6の計測結果に基づいて、装置本体2の進行方向(周囲)に存在するランドマーク10を認識する。例えば、計測部6の周囲障害物センサ22によって装置本体2と前方の各方向の物体との距離を計測し、ランドマーク認識部29は、各方向の物体までの距離に基づいて、装置本体2の前方の繰り返し形状の有無を判定する。そして、繰り返し形状を検出できた場合、ランドマーク認識部29は、この繰り返し形状をランドマーク10として認識する。
例えば、ランドマーク認識部29は、周囲障害物センサ22によって装置本体2の前方の物体を検出したとき、周囲障害物センサ22による計測結果に基づいて、この物体を上方から見たときの装置本体2側の外郭を認識する。そして、ランドマーク認識部29は、この物体の外郭が、予め設定した長さの複数の辺で構成された二等辺三角形(頂角60°〜120°)の等辺の集合である場合に、この物体を屏風型ランドマーク10であると認識する。
また、ランドマーク認識部29は、この繰り返し形状に基づいてランドマーク10を識別する。例えば、ランドマーク認識部29は、装置本体2側の周囲障害物物センサ22から見た繰り返し形状の外郭の形状に基づいて、検出されたランドマーク10の両端が進行方向に向かって拡がっているか狭まっているかを判定する。そして、ランドマーク認識部29は、この判定結果に基づいて、検出されたランドマーク10がW型ランドマーク10a(第1の屏風型ランドマーク)かM型ランドマーク10b(第2の屏風型ランドマーク)かを判定する。そして、ランドマーク認識部29は、屏風型ランドマーク10の向きを識別情報として識別する。なお、ランドマーク認識部29は、計測部6が搭載カメラによってランドマーク10に表示された識別情報を読み取る場合には、その読み取り結果の識別情報に基づいてランドマーク10を識別する。
追従走行制御部30は、追従走行モードの実行時に、走行エリアA(図3等参照)の一方側を追従基準側とし、計測部6の計測結果に基づいて追従基準側から走行エリアAの他方側へと所定距離Lを離して装置本体2の位置を保ちつつ、ランドマーク10の間で装置本体2を往復走行させるように自動的に走行部3を動作させる。追従走行の詳細については後述する。
教示走行制御部31は、教示走行モードの実行時に、走行エリアAの最初(1列目)の走行経路での装置本体2の走行について、ハンドル部4の手動操作入力により走行部3を動作させる教示走行を制御する。教示走行制御部31は、教示走行において、最初の走行経路及びその周囲を含む環境地図を作成させると共に、2列目以降の走行経路の基準となる基準線を決定する。教示走行の詳細については後述する。
地図作成部32は、リアルタイムで自己位置の推定と環境地図の作成とを行うSLAM(Simultaneous Localization and Mapping)等の技術を用いる。地図作成部32は、所定位置の装置本体2について、計測部6で計測された障害物(物体)からの距離及び角度を座標変換して装置本体2の周囲の局所地図を作成すると共に、各位置の局所地図を合成して環境地図を作成する。例えば、地図作成部32は、上記したように最初の走行経路及びその周辺の環境地図を作成する。
次に、追従走行の詳細を、図7及び図10のフローチャートを参照しながら説明する。図7は、後述の位置認識制御による追従走行の動作例を示し、図10は、後述の識別認識制御による追従走行の動作例を示す。位置認識制御及び識別認識制御に共通の処理について説明しつつ、異なる処理について随時説明する。
追従基準側は、自律走行装置1が追従すべき基準であり、基本的には自律走行装置1の側方の壁面等の物体側である。追従基準側は、追従走行前に決定され(図7のステップS1、図10のステップS11)、その決定手法には、手動決定と自動決定とがある。なお、一の追従走行について決定された追従基準側は、その追従走行中は維持され、自律走行装置1を反転しても変更されない。
追従基準側の手動決定又は自動決定の選択は、走行設定項目であり、例えば、コントロールパネル8及びその表示器40を用いて選択される。追従基準側の手動決定が選択された場合、その選択時点(走行開始時点)での自律走行装置1の向きに対して左側及び右側の何れかが、追従基準側として選択される。追従基準側の左側又は右側の選択も、走行設定項目であり、例えば、コントロールパネル8及びその表示器40を用いて自律走行装置1の左側又は右側が追従基準側として選択されて決定される。一方、追従基準側の自動決定が選択された場合、その選択時点での自律走行装置1の向きに対して左側及び右側の物体を計測部6によって検出し、自律走行装置1のより近くで物体が検出された側が追従基準側として決定される。
また、追従走行制御部30は、計測部6の計測結果に基づいて、追従基準側に存在する壁面等の物体を検出し、この追従基準側の物体から走行エリアAの他方側へと所定距離Lを離して装置本体2の位置(中心位置、即ち、計測部6のセンサ位置)を保つように走行部3を制御する離間制御を行う(図7のステップS2、図10のステップS12)。なお、この所定距離Lは、走行エリアAの最初(1列目)の走行経路では、図3等に示すように、安全距離L1(障害物や壁面に近接できる最小の距離)に設定され、走行エリアAにおいて装置本体2がランドマーク10に達して反転する際に、他方側へと所定のオフセット距離L2ずつ伸ばされ、即ち、2列目以降の走行経路では、繰り返しオフセットされる(L1+L2+・・・)。ここで、安全距離L1及びオフセット距離L2は、走行設定項目であり、例えば、初期設定値が用いられてもよく、あるいは、追従走行前に、コントロールパネル8及びその表示器40を用いて設定可能としてもよい。なお、安全距離L1は、少なくとも装置本体2の最大幅の半分よりも大きい値に設定される。
追従走行制御部30は、上記の離間制御と共に、装置本体2を進行方向へと走行させるように走行部3を制御する進行制御を行う(図7のステップS3、図10のステップS13)。ここで、進行制御の走行速度は、走行設定項目であり、例えば、初期設定値が用いられてもよく、あるいは、追従走行前に、コントロールパネル8及びその表示器40を用いて設定可能としてもよい。
追従走行制御部30は、上記の離間制御及び進行制御による追従走行(自律走行)に伴って、作業を行うように各部を制御する。例えば、追従走行制御部30は、装置本体2の下方の床面の清掃作業を実行するように清掃部5を制御する。ここで、追従走行時の清掃作業における清掃条件は、走行設定項目であり、例えば、初期設定値が用いられてもよく、あるいは、追従走行前に、コントロールパネル8及びその表示器40を用いて設定可能としてもよい。
また、追従走行制御部30は、上記の離間制御及び進行制御による追従走行に伴って、ランドマーク認識部29によるランドマーク10の認識結果に基づいて装置本体2を走行させるように走行部3を制御する。例えば、追従走行制御部30は、ランドマーク10の位置情報に基づく位置認識制御(簡易追従)や、ランドマーク10の位置情報及び識別情報に基づく識別認識制御(詳細追従)を行う。位置認識制御又は識別認識制御の選択は、走行設定項目であり、例えば、追従走行前に、コントロールパネル8及びその表示器40を用いて選択可能とする。
なお、識別認識制御が選択された場合には、追従走行におけるランドマーク10の検出順序を走行設定項目としてコントロールパネル8及びその表示器40を用いて設定することができる。例えば、第1の屏風型ランドマーク10aと第2の屏風型ランドマーク10bとの間で往復走行を繰り返すために、第1の屏風型ランドマーク10a、第2の屏風型ランドマーク10bの順で検出順序を設定することができる。また、装置本体2がランドマーク10の終端に達した場合の走行動作として、第1の屏風型ランドマーク10a及び第2の屏風型ランドマーク10bの何れか一方に対して停止動作を設定すると共に、他方に対して継続動作を設定することもできる。あるいは、これら両方のランドマーク10に対して停止動作を設定してもよい。
なお、本実施形態では、自律走行装置1のランドマーク10に対する位置情報に応じて自律走行装置1の走行動作を判定する例を説明するが、各ランドマーク10に対応付けて走行動作を予め設定し、ランドマーク10認識時に対応付けられた走行動作を行ってもよい。
位置認識制御及び識別認識制御において、追従走行制御部30は、ランドマーク10の位置情報として、装置本体2からランドマーク10までの距離や、装置本体2の幅とランドマーク10との装置本体2の進行方向に直交する方向の位置関係等を判定する。例えば、追従走行制御部30は、ランドマーク認識部29でランドマーク10を検出していない場合(図8(1)参照)や、ランドマーク認識部29で検出したランドマーク10と装置本体2との間の距離が所定の到達距離Dに達していない場合(図8(2)参照)には(図7のステップS4:NO、図10のステップS14:NO)、上記の離間制御及び進行制御を継続する。
また、位置認識制御において、追従走行制御部30は、ランドマーク認識部29で検出したランドマーク10と装置本体2との間の距離が所定の到達距離Dに達した場合(図8(3)参照)には(図7のステップS4:YES)、装置本体2の進行方向に直交する方向(以下、幅方向)とランドマーク10の両端部との位置関係に応じて装置本体2の走行動作を判定する(図7のステップS5)。例えば、ランドマーク10の幅方向の両端を認識すると共に、装置本体2の幅方向の中心(例えば、LRFの搭載位置)からランドマーク10の他方側(追従基準側とは逆側)の終端までの幅方向の寸法Eを算出する(図9等参照)。なお、幅方向は、さらに言い換えれば追従基準側壁面に直交する方向とも言えるが、ランドマーク10が必ずしも追従基準側面に直交せずに置かれた場合も、追従基準側面に直交する方向でのランドマーク10の端部の位置から、上記寸法Eを算出すればよい。
この寸法Eが、所定の動作限界値(例えば0以上)以上の場合(図9(1)参照)には(図7のステップS5:YES)、装置本体2の走行動作を反転動作と判定する。そして、上記の進行制御を停止して装置本体2の走行方向を180°反転するように走行部3を制御し(図7のステップS6)、離間制御の所定距離Lをオフセットした後(図7のステップS7)、離間制御及び進行制御を再開する。なお、この反転動作の間、清掃部5による清掃等の作業を継続していてよい。
一方、この寸法Eが、所定の動作限界値未満の場合(図9(2)や図9(3)参照)には(図7のステップS5:NO)、装置本体2の走行動作を停止動作と判定して、上記の離間制御及び進行制御を停止すると共に、清掃部5による清掃等の作業を停止する(図7のステップS8)。ここで、所定の到達距離Dや所定の動作限界値は、走行設定項目であり、例えば、初期設定値が用いられてもよく、あるいは、追従走行前に、コントロールパネル8及びその表示器40を用いて設定可能としてもよい。なお、追従走行制御部30は、所定の到達距離Dや所定の動作限界値の設定変更について、プログラム制御を用いたり、作業者の外部端末から通信によって受け付けたりすることにより、ランドマーク10に対する自律走行装置1の反転位置や、ランドマーク10の幅方向に対する自律走行装置1の停止位置を、延長又は短縮させてもよい。
識別認識制御において、追従走行制御部30は、ランドマーク認識部29で検出したランドマーク10と装置本体2との間の距離が所定の到達距離Dに達した場合(図8(3)参照)には、ランドマーク認識部29による認識結果に基づいてランドマーク10の識別情報を得る。そして、追従走行制御部30は、ランドマーク10の識別情報と識別認識制御について設定した検出順序とに基づいて、追従走行が検出順序通りに行われているかを判定する(図10のステップS15)。
追従走行が検出順序通りでない場合には(図10のステップS15:NO)、制御部7に対して追従走行不可を示すエラー信号を出力して(図10のステップS16)、上記の離間制御及び進行制御を停止すると共に、清掃部5による清掃等の作業を停止する(図10のステップS17)。
一方、追従走行が検出順序通りである場合には(図10のステップS15:YES)、上記の位置認識制御と同様にして、装置本体2とランドマーク10の端部の幅方向の位置関係を算出する。例えば、ランドマーク10の幅方向の両端を認識すると共に、装置本体2の幅方向の中心からランドマーク10の他方側の終端までの寸法Eを算出する。
この寸法Eが、所定の動作限界値以上の場合には(図10のステップS18:YES)、装置本体2の走行動作を反転動作と判定する。そして、上記の進行制御を停止して装置本体2の走行方向を180°反転するように走行部3を制御し(図10のステップS19)、離間制御の所定距離Lをオフセットした後(図10のステップS20)、離間制御及び進行制御を再開する。
一方、この寸法Eが、所定の動作限界値未満の場合には(図10のステップS18:NO)、上記の位置認識制御とは異なり、ランドマーク10に対して設定された走行動作を判定する(図10のステップS21)。
ここで、ランドマーク10に対する走行動作として継続動作が設定されている場合には(図10のステップS21:NO)、上記のステップS19、S20と同様にして進行制御を停止して装置本体2の走行方向を180°反転するように走行部3を制御した後、離間制御及び進行制御を再開する。
また、ランドマーク10に対する走行動作として停止動作が設定されている場合には(図10のステップS21:YES)、上記の離間制御及び進行制御を停止すると共に、清掃部5による清掃等の作業を停止する(図10のステップS17)。
次に、教示走行の詳細を、図11の教示走行動作例及び図12のフローチャートを参照しながら説明する。なお、教示走行モードにおける追従基準側の決定は、上記した追従走行モードと同様に行われる。
また、教示走行制御部31は、コントロールパネル8のメインスイッチ37が手動に切り換えられると共に学習スイッチ38が操作されたとき(ステップS31)、教示走行を開始する。この教示走行では、手動操作モードと同様にして、図11(1)に示すように、作業者の手動操作入力に基づいて走行部3が装置本体2を走行させる(ステップS32)。
教示走行制御部31は、教示走行の間に、計測部6及び地図作成部32を作動させて、計測部6の計測結果に基づいて地図作成部32によって最初の走行経路(教示走行ルート)及びその周囲を含む環境地図を作成させると共に、最初の走行経路に沿う追従基準側の基準線を決定する(ステップS33)。追従基準側の基準線は、基本的には、追従基準側の壁面等の連続した物体に沿う線を基準とし、図11(2)に示すように、追従基準側に不連続の壁面がある場合には、不連続の壁面を繋げた線を設け、追従基準側に壁面に近接する障害物(例えば、柱等の凸部や置物等)がある場合には、障害物を回避した線を設けて構成される。あるいは、追従基準側の基準線は、追従基準側の壁面等の連続した物体に沿う線を基準とし、この線を手動操作による最初の走行経路に基づいて補正して構成してもよい。
更に、教示走行制御部31は、教示走行の間に、手動操作入力に基づいて清掃部5による清掃等の作業が行われる場合、コントロールパネル8の清掃条件設定キー42の手動操作入力に応じて設定された清掃部5の清掃条件を、最初の走行経路における位置と対応付けてメモリ24に記憶させる。
教示走行制御部31は、教示走行において、計測部6による周辺環境の計測結果及びランドマーク認識部29によるランドマーク10の認識結果に基づいて、装置本体2の走行を教示走行から追従走行モードと同様の追従走行へと移行する移行制御を行う。
この移行制御において、教示走行制御部31は、ランドマーク認識部29がランドマーク10を認識していない場合には(ステップS34:NO)、教示走行制御部31は、手動操作による教示走行を継続する(ステップS32、S33)。
一方、教示走行制御部31は、ランドマーク認識部29がランドマーク10を認識すると(ステップS34:YES)、計測部6による計測結果に基づいて、装置本体2からランドマーク10までの追従基準側の壁面等の環境情報を取得する。教示走行制御部31は、取得した環境情報に基づいて、追従基準側における分岐や曲率の有無及び障害物等による壁面の凸凹の状況等を総合的に判断し、自律走行装置1が自動操作切換許可通知エリア内にあるか否かを判定する(ステップS35)。換言すれば、教示走行制御部31は、装置本体2とランドマーク10との間の自律走行が可能か否か、例えば、装置本体2とランドマーク10との間の追従基準側に、基準にできる壁面等の物体があるか否かを判定する。なお、ランドマーク10よりも所定の到達距離Dだけ装置本体2側の位置を到達位置とするとき、この自動操作切換許可通知を発することができる点(自律走行が可能と判定した位置)から到達位置までのエリアを自動操作切換許可通知エリアとする(図11(3)参照)。
そして、教示走行制御部31は、自動操作切換許可通知エリア内と判定した場合には(ステップS35:YES)、コントロールパネル8の表示器40等を用いて作業者に自動操作切換許可通知を発行する(ステップS36)。
一方、教示走行制御部31は、自動操作切換許可通知エリア内と判定していない場合には(ステップS35:NO)、ランドマーク10と装置本体2との間の距離が所定の到達距離Dに達していなければ(ステップS37:NO)、手動操作による教示走行を継続する(ステップS32、S33)。
しかし、自動操作切換許可通知エリア内と判定できずに(ステップS35:NO)、ランドマーク10と装置本体2との間の距離が所定の到達距離Dに達した場合には(ステップS37:YES)、手動操作によって自律走行装置1を180°反転させた後(ステップS38)、教示走行を継続する(ステップS32、S33)。なお、手動操作による反転がない場合には、エラー信号を出力してもよく、あるいは、強制的に自動操作による反転を行ってもよい。
また、上記の自動操作切換許可通知の発行後(ステップS36)、自動操作切換許可通知エリア内でコントロールパネル8のメインスイッチ37が「自動」に切り換えられると(ステップS39:YES)、教示走行制御部31は、装置本体2の走行を教示走行から追従走行モードの離間制御及び進行制御による追従走行へと移行する(図7のステップS2又は図10のステップS12)。
例えば、追従走行制御部30は、メインスイッチ37が「自動」に切り換えられた後、最初の走行経路において、上記のような進行制御を行い、ランドマーク10と装置本体2との間の距離が所定の到達距離Dに達すると、進行制御を停止して装置本体2の走行方向を180°反転するように走行部3を制御した後、離間制御及び進行制御を再開する。また、この移行後の追従走行(教示走行後の追従走行モードでの追従走行)では、追従走行制御部30は、離間制御については、基準線から他方側へと所定距離Lを離して装置本体2の位置を保つように行う。更に、追従走行制御部30は、教示走行後の追従走行において、教示走行ルートに対応付けてメモリ24に記憶した清掃条件に基づいて清掃作業を行うように清掃部5を制御する。これにより、自律走行装置1は、図11(3)の基準線に基づく追従走行ルートに示すように、第1の屏風型ランドマーク10aと第2の屏風型ランドマーク10bとの間で往復走行を繰り返す。
一方、上記の自動操作切換許可通知の発行後(ステップS36)、自動操作切換許可通知エリア内でコントロールパネル8のメインスイッチ37が「自動」に切り換えられない場合には(ステップS39:NO)、手動操作によって自律走行装置1を180°反転させた後(ステップS38)、教示走行を継続する(ステップS32、S33)。なお、手動操作による反転がない場合には、エラー信号を出力してもよく、あるいは、強制的に自動操作による反転を行ってもよい。
また、追従基準側の壁面に近接する障害物を回避するために最初の走行経路が蛇行して障害物前後の壁面よりも膨らんでいる場合、追従走行制御部30は、図11(4)に示すように、離間制御において、この蛇行による2列目以降の走行経路の膨らみを抑制してもよい。例えば、追従走行制御部30は、2列目以降の走行経路の離間制御において、蛇行に対応する箇所でフィルター等をかけてオフセットする(オフセット距離L2よりも短い距離を伸ばす)ことで、蛇行による膨らみが抑制される。
あるいは、教示走行において障害物を回避中であることをコントロールパネル8等によって入力可能にしてもよい。作業者が障害物の回避を自律走行装置1に入力した場合、教示走行制御部31は、障害物を回避したときの基準線の蛇行箇所の開始点と終了点を直線で結んで、障害物前後の壁面が連続した代替基準線を作成する。そして、追従走行制御部30は、2列目以降の走行経路の離間制御を代替基準線に基づいて行うことで、蛇行による膨らみが抑制される。
なお、この代替基準線は、2列目以降の走行経路と障害物との間で安全距離L1が確保されてから採用される。例えば、代替基準線に基づく離間制御による2列目の走行経路と障害物との距離が安全距離L1未満である場合には、代替基準線の作成はエラーとなり、2列目の走行経路の離間制御は、基準線に基づいて又はフィルターをかけて行われる。3列目以降の走行経路についても、同様に安全距離L1の判定が行われる。
更に、上記の代替基準線は、コントロールパネル8によって作成可能にしてもよい。例えば、コントロールパネル8において、環境地図や最初の走行経路及び基準線を表示し、この基準線に対して蛇行箇所の開始点と終了点の入力、又は開始点と終了点を結んだ直線を入力可能とする。そして、教示走行制御部31は、これらの入力に基づいて、上記と同様に代替基準線を作成する。なお、このような代替基準線の入力作成は、コントロールパネル8に限定されず、自律走行装置1と無線又は有線で接続された外部端末を用いて可能にしてもよい。
上述のように、本実施形態によれば、自律的な走行が可能な自律走行装置1は、装置本体2と、装置本体2を走行させる走行部3と、装置本体2の走行経路上で作業を行う清掃部5(作業部)と、装置本体2とこの装置本体2の周囲の物体との位置関係を計測する計測部6と、計測部6による計測結果に基づいて、走行経路上の予め設定された繰り返し形状を、走行エリアAを区切るランドマーク10として認識するランドマーク認識部29と、走行エリアAの一方側を追従基準側とし、計測部6の計測結果に基づいて追従基準側から走行エリアAの他方側へと所定距離Lを離して装置本体2の位置を保ちつつ、装置本体2を進行方向へと走行させるように自動的に走行部3を動作させる追従走行を行う制御部7(追従走行制御部30、教示走行制御部31)と、を備える。そして、制御部7は、追従走行においてランドマーク認識部29がランドマーク10を認識した場合に、装置本体2の幅方向(進行方向に直交する方向)のランドマーク10の幅方向の端部との位置関係に応じて装置本体2の走行動作を判定する。この走行動作の判定が反転の場合には、進行方向を反転させると共に、所定距離Lを他方側にオフセットして装置本体2を走行させるように走行部3を制御する。この走行動作の判定が停止の場合には、装置本体2を停止させるように走行部3を制御する。
このような構成により、本実施形態に係る自律走行装置1では、走行エリアAの事前入力や、環境地図の作成及び自己位置の把握を伴う高度なシステムを用いることなく、走行エリアAを随時把握して確実に自動的な作業を行うことができる。また、自律走行装置1は、ランドマーク10の位置に合わせて走行するため、作業エリアのレイアウト変動があった場合でも、作業者は、ランドマーク10の位置を変えるという簡易な手法で即座に走行エリアAを変えることができ、作業エリアのレイアウト変動に対応することができる。
また、本実施形態に係る自律走行装置1において、ランドマーク認識部29は、所定間隔で頂点を有する屏風形状に構成されると共に進行方向を横断する方向に延びて走行経路上に配置されてこの横断する方向に繰り返し形状を有するランドマーク10を認識する。
このような構成により、ランドマーク認識部29は、他の形状との誤認識が生じ難い繰り返し形状をランドマーク10として認識するため、明確に走行エリアAを認識することが可能となる。また、ランドマーク10は、移動可能且つ伸縮自在に構成できるため、走行エリアAの範囲を容易且つ任意に調整する事ができる。
なお、本実施形態では、ランドマーク認識部29が屏風型ランドマーク10を認識する例を説明したが、ランドマーク認識部29は、自律走行装置1の進行方向を横断する方向に延びて走行経路上に配置されることで横断する方向に繰り返し形状であれば、屏風形状に限定されず、ランドマーク10として認識する。
例えば、他の実施形態では、ランドマーク認識部29は、図13に示すように、所定間隔で目印51aを有するスクリーン状に構成されたスクリーン型ランドマーク50を認識する。スクリーン型ランドマーク50は、スクリーン部材51と、2つの支持部材52とによって、所謂バリアリール、ベルトパーテーション等のように構成される。
スクリーン部材51は、薄く細長い、柔軟性を有するシートやテープ、ベルト等からなり、その長手方向に所定間隔で開口や反射材等からなる複数の目印51aを設ける。スクリーン部材51は、目印51aを有する短いシートを複数つなげて構成されてもよい。図13では、四角形状の目印51aを備えるが、目印51aの形状は四角形に限定されず、円形や他の形状でもよい。スクリーン部材51は、周囲障害物センサ22から投射された赤外線等のレーザーに対して、目印51aと他の部分とで異なる反射を生じることにより、周囲障害物センサ22が反射を検知したときに、複数の目印51aからなる繰り返し形状として検出する。
各支持部材52は、取付部52aと、柱部52bと、台座52cとからなり、柱部52bの下端を台座52cの上面に取り付けることで直立して設定される。2つの支持部材52の取付部52aは、スクリーン部材51の両端をそれぞれ取り付けるものであり、スクリーン部材51が計測部6のセンサ位置(例えば、高さ300mm)に配置されるように、柱部52bに取り付けられる。取付部52aは、スクリーン部材51を巻尺のように内部に自動巻き取り可能に構成される。例えば、一方の支持部材52の取付部52aは、スクリーン部材51の基端を固定して支持すると共にスクリーン部材51を巻き取り可能に構成され、他方の支持部材52の取付部52aは、スクリーン部材51の先端を取り外し可能に支持する。
なお、スクリーン型ランドマーク50は、ランドマーク50毎に異なるQRコード(登録商標)等の識別情報(例えば、識別情報を貼付又は表示したボード等)を、支持部材52(例えば、取付部52aの上端等)に取り付け可能に構成されてもよい。自律走行装置1は、計測部6に搭載されるカメラ等でランドマーク50から識別情報を読み取り可能に構成され、また、メモリ24等に識別情報を記憶していて、両者を比較することで、ランドマーク50を識別可能となる。
このようなスクリーン型ランドマーク50でも、屏風型ランドマーク10と同様に、他の形状と誤認識が生じ難い繰り返し形状がランドマーク認識部29によってランドマーク50として認識されるため、明確に走行エリアAを認識することが可能となる。
また、本実施形態に係る自律走行装置1において、ランドマーク認識部29は、複数種類の繰り返し形状を識別することで、複数種類の繰り返し形状のそれぞれに対応する複数種類のランドマーク10を識別する。
このような構成により、走行エリアAの各位置でのランドマーク10を識別することができる。例えば、走行開始側の第1の屏風型ランドマーク10aと折り返し側の第2の屏風型ランドマーク10bとを配置した場合、ランドマーク認識部29は、第1の屏風型ランドマーク10aと第2の屏風型ランドマーク10bとを識別して認識する。そのため、ランドマーク認識部29による検出順序を、第1の屏風型ランドマーク10a、第2の屏風型ランドマーク10bの交互の順序に設定しておくことにより、この検出順序で検出されなかった場合に、走行経路に問題があると判断することができ、自律走行装置1の自動的な作業が問題なく実行されているかを判断することができる。
更に、本実施形態に係る自律走行装置1において、制御部7は、複数種類の繰り返し形状毎に異なる走行動作の判定を識別して認識する。
このような構成により、走行エリアAにおける自律走行装置1の走行動作を任意に決めることができる。例えば、第1の屏風型ランドマーク10aと第2の屏風型ランドマーク10bとの内、自律走行装置1を停止させる側のランドマーク10を指定して事前に設定することができ、作業者の便宜に応じた位置で自律走行装置1を停止させることができる。また、ランドマーク認識部29は、表面と裏面とで異なる繰り返し形状を有する1つのランドマーク10を識別することもできる。例えば、走行エリアA(作業エリア)が体育館等の単純な長方形の場合、ランドマーク認識部29がランドマーク10の表側を識別した場合に、制御部7にランドマーク10の表側をスタート側と識別され、一方、ランドマーク認識部29がランドマーク10の裏側を識別した場合に、制御部7にランドマーク10の裏側を停止側と識別させることもできる。これによって、1つのランドマーク10のみを使用して、自律走行装置1は、作業エリア内での壁面に対する追従走行を繰り返し行い、作業エリアを塗りつぶすように作業を実施することが可能となる。
また、本実施形態に係る自律走行装置1において、制御部7は、追従走行において、計測部6の計測結果に基づいて装置本体2より追従基準側の物体を検出し、追従基準側の物体から他方側へと所定距離を離して装置本体2の位置を保つように制御する。
このような構成により、自律走行装置1から見て追従基準側にある壁面等の物体に沿った追従走行となって、追従走行が蛇行等せずに安定する。
更に、本実施形態に係る自律走行装置1において、制御部7は、走行エリアAの最初の走行経路での装置本体2の走行を、手動操作入力により走行部3を動作させて行うと共に、計測部6の計測結果に基づいて最初の走行経路及びその周囲を含む環境地図を作成し、環境地図に基づいて追従基準側の基準線を定める教示走行を行う。そして、制御部7は、教示走行の後で追従走行へと移行し、移行後の追従走行では、基準線から他方側へと所定距離を離して装置本体の位置を保つように制御する。
このような構成により、自律走行装置1から見て追従基準側で、壁面が凸凹やカーブのある不規則な形状を有したり途中の通路等で途切れたりする場合でも、走行エリアAの1列目の走行経路のみを手動操作で走行させるだけで、2列目移行の走行経路では、このような不規則な壁面に合わせて自律走行装置1を自律走行させることができ、自動的な作業を行うことができる。これにより、不規則な壁面に起因するエラー停止を回避して、自律走行装置1による自律走行及びそれに伴う自動的な作業を継続することができる。また、走行経路が不規則となる場合でも、複雑な走行経路や環境地図の入力をする必要がない。
なお、本実施形態では、不規則な壁面の場合に、2列目以降の走行経路における自律走行及びそれに伴う自動的な作業を、上記したような基準線に基づいて行う例を説明したが、これに限定されない。例えば、手動操作による1列目の走行経路、即ち、教示走行ルート又は不規則な壁面に基づいて補正した教示走行ルートに基づいて、2列目以降の走行経路における自律走行及びそれに伴う自動的な作業を行ってもよい。
また、本実施形態に係る自律走行装置1において、上記した作業部は、手動操作入力及び自動操作入力に基づく清掃作業が可能な清掃部5であり、制御部7は、追従走行において、自動操作入力によって清掃作業を行うように清掃部5を制御する。
このような構成により、自律走行装置1は清掃作業を自律的に行うことで、速く正確に床面を清掃することができ、床面清掃にかかる人手を減らすことができる。本実施形態では、清掃部5は、洗浄用部材17、洗浄液供給部18及び吸引部19を有する湿式の清掃機構で構成される例を説明したが、清掃部5は、この例に限定されず、乾式の清掃機構で構成されてもよい。乾式の清掃機構の清掃部5は、例えば、洗浄パッドや洗浄ブラシ等の洗浄用部材と、床面より塵埃をバケットに回収する吸込み口と、吸引ブロアからなる塵埃回収部とで構成される。
このように、本発明の実施形態による自律走行装置1によれば、不規則なフロアレイアウトや走行ルートについて事前入力や変動に伴う再入力等の煩雑な操作を必要とせずに、所望の作業エリア内の自律走行及びそれに伴う作業を簡単な取り扱いによって継続することができ、且つ安価に構成することができる。
また、本発明は、請求の範囲及び明細書全体から読み取ることのできる発明の要旨又は思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う自律走行装置もまた本発明の技術思想に含まれる。