JP6074205B2 - 自律移動体 - Google Patents

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Description

本発明は、自らの位置・姿勢を検知できる装置を搭載した移動体の移動経路における位置・姿勢を推定するシステムを搭載した自律移動体に関する。
特に、本発明は、搬送物を搬送する移動体を提供することができる移動体に関し、特に線路パターン環境を自律的に移動することが可能な自律移動体に関する。
本発明は、具体的実施例としては、自律移動ロボットを実施例として説明するものであるが、自律移動を行わないロボットにも適用できるものであり、さらには、カメラやGPSを実装した自動車のカーナビ等の移動体への適用も容易なものであり、発明思想の範囲内での当業者が容易になし得る設計変更は発明の技術的範囲として含まれる。
従来から、予め施設されたレールや磁気テープ等規定の移動経路に沿って移動する移動ロボットは多く開発されていたが、近年になって、規定の移動経路は持たずに、コンピュータ内で設定された移動経路に沿って自律的に移動するロボットが開発されている。このような自律移動ロボットにおいて、自律的な移動を実現するためには、ロボットの現在位置と姿勢を認識する自己位置・姿勢推定機能が不可欠であり、例えば自律移動ロボットが周囲状態を検知し、そのデータを基に自己位置を推定しながら、かつ、同時に地図を生成する方法が提案されている。この方法はSLAM(Simultaneous Localization and Mapping)と呼ばれる技術で、得られるセンサ情報の範囲でロボットが自己位置・姿勢を求めると同時に環境地図の生成・更新を行い、これをもとに環境内を自律的に移動する特徴を有している。
このような自律移動ロボットに関して、例えば、特許文献1(特開2005−332204号公報)には、GPS(Global Positioning System)などの自己位置検知手段と、周囲の物体との距離と方向を検知する物体検知手段と、それらの検知データを基に移動する方向の環境地図を生成する機能を備えた移動制御装置が知られている。この特許文献1の課題は、GPS衛星からの電波を受信していなくても目標経路に沿って移動体を正確に移動させ、目標経路上の予期しない障害物を回避するように制御するものである。そして、その解決手段は、予め設定された目標経路情報に従って自律移動する移動体に、その移動を制御する移動制御装置が設けられている。移動制御装置は、移動体の現在位置及び方位を検知する自己位置検知手段と、移動体とその周囲に存在する物体との距離を検知するALR(Area
Laser Rader)と、自己位置検知手段及びALRのデータに基づいて移動体の進路を決定するとともに、当該進路に沿って移動体を移動させるように移動体を制御する制御手段とを備えている。制御手段は、移動体の移動に伴い物体の存在を考慮した移動体周囲の環境地図を移動方向に累積的に生成し、目標経路情報及び環境地図に基づいて物体に非干渉となる移動体の進路を決定する。
また、特許文献2(特開2004−276168号公報)の移動ロボットは、移動センサと認識手段により、物体間の相対姿勢で表わされる地図情報とロボットの姿勢の同時推定を行うことで、新規地図情報を作成していく方法が示されている。この特許文献2の課題は、精度の高い移動ロボット用地図を作成することができる地図作成システムの提供である。その解決手段のステップでは、まず、移動ロボットにより新規地図情報を作成する。次に、既存地図情報を読み込んで、既存地図のもつ相対姿勢を1つずつ取り出す。そして、同じ相対姿勢が新規地図情報にもあるかを調べる。新規地図情報にも同じ相対姿勢があれば、新規地図情報と既存地図情報が共通に持つ相対姿勢を確率的に融合する。新規地図情報に同じ相対姿勢がなければ、その相対姿勢を新規地図情報に追加する。その後、新規地図情報の相対姿勢集合の中にループを構成するものがある場合には、そのずれを解消するループ解決処理を行う。
さらに、特許文献3(特開2007−94743号公報)においては、マップデータ生成部と位置推定部が自律移動型ロボット、あるいは、サーバ装置に配置されていることが示されている。この特許文献2の課題は、ユーザが任意に選択した位置情報を容易に教示することができ、かつ、この教示された位置情報に基いて移動先を指定することで、指定された移動先に自律移動する自律移動型ロボットとそのシステムを提供するものである。その解決手段としては、ユーザからの位置情報及び移動先情報の入力を受ける情報入力部と、情報入力部から入力された位置情報と位置推定部で推定した位置とを関連付けてテーブルに記憶する位置情報記憶部とを備え、情報入力部に対して移動先情報の入力があると、移動経路計画部が、入力された移動先情報と位置情報記憶部に記憶されているテーブルとを対応させ、ロボットの移動空間内の障害物情報であるマップデータを参照して、位置推定部で推定された位置からの移動経路を求め自律移動する。
また、特許文献4(特開2005−242489号公報)には、搬送物を搬送する移動体に関する背景技術として、「自律移動体が走行するルートの制約を低減して最短距離のルートを設定可能とし、複数台の自律移動体が同時に走行しても衝突や渋滞が生じないようにする」ものが開示されている。
また、特許文献5(特開2007−133891号公報)、特許文献6(特開特開2006−293975号公報)には、壁面に沿って移動する自立移動体に関する発明の開示がある。
特許文献5では、壁面に沿って移動する「壁面追従モード」が記載されているが、これは、「壁面追従、すなわち清掃ロボットの場合には縁端清掃により、部屋の縁端や室内の物体の縁端のみを清掃可能である。」との記載(段落番号0053)があり、清掃ロボットとして、部屋の縁端や室内の物体の縁端のみを清掃すること狙った動作モードの説明が行われているに過ぎないものである。
また、特許文献6では、「壁面が不連続である場合には壁面からの距離が得られないため、境界に沿った適切な移動が行われないという問題がある」との問題の指摘(特許文献6、段落番号0003)に対して、「特定領域の境界が離散的に配置されている物体で形成されている場合においても、境界に沿った適切な移動を実現できる自律移動装置を提供することを目的とする」(特許文献6、段落番号0004)との開示がある。
特開2005−332204号公報 特開2004−276168号公報 特開2007−94743号公報 特開2005−242489号公報 特開2007−133891号公報 特開2006−293975号公報
以上のように、従来技術においては、移動体の移動に伴い物体の存在を考慮した移動体周囲の環境地図を移動方向に累積的に生成し、目標経路情報及び環境地図に基づいて物体に非干渉となる移動体の進路を決定する等の技術は開示されている。しかしながら、このような従来技術は、幾何的特徴(凹凸等)が多数ある一般的な環境においては可能なものである。しかしながら、幾何的特徴に乏しい環境が混在する環境においては、ロボットが自位置を周囲の幾何学的特徴から判断することが困難となる。本発明は、正にこのような幾何的特徴に乏しい環境においても自動走行が可能なロボットの実現を課題とするものである。
そこで、本願明細書では、工作機械や収納棚等の設備が多数設置された工場や倉庫等のように、自律移動体周辺の環境において凹凸等の幾何的特徴が十分に有ることで、センサデータと地図とのマッチングを行った際に位置・姿勢のすべてのパラメータが一意に求められる環境を「一般環境」と呼ぶものとする。また、通路両側に平坦な壁が続くような幾何的特徴に乏しく、センサデータと地図とのマッチングを行っても、マッチする個所が複数現れ、位置・姿勢のパラメータの解の候補が複数現れてしまう環境を、幾何的特徴のパターンが一様に続くことから「一様パターン環境」と呼ぶものとする。なお、本発明明細書においては、経路の両側に壁が続くような環境、即ち地図として環境を表現した場合に地図上に平行な二本線が線路のように続く環境については特に線路環境という用語にて説明することがあるが「一様パターン環境」の下位概念の意義である。
本発明の自律移動体は、自らの位置・姿勢を判定して走行指令を出力するコントローラ部と、自装置と周囲にある障害物等の外壁面との距離を検知する距離センサ部と、移動機構部を備えており、
予め設定された経路に沿って、前記距離センサからの検知結果を受けて自装置の位置・姿勢を推定する位置姿勢推定部により自律的に走行する一般環境(つまり一様でない環境)での一般走行モードと、進行方向に前進を行う壁ならい走行モードとの2つの運転モードを備えたことを特徴とする。
また、本発明の自律移動体は、自らの位置・姿勢を判定して走行指令を出力するコントローラ部と、自装置と周囲にある障害物等の外壁面との距離を検知する距離センサ部と、移動機構部を備えており、
予め設定された経路に沿って、前記距離センサからの検知結果を受けて自装置の位置・姿勢を推定する位置姿勢推定部により自律的に走行する一般環境での一般走行モードと、前記位置姿勢推定部の推定処理により、自装置の周囲の環境が一様なパターン環境であると判断された場合は、進行方向に前進を行う壁ならい走行モードとの2つの運転モードを備え、
自装置が一般環境から一様パターン環境に入ったと判断すると、前記一般走行モードから前記壁ならい走行モードに運転モードを変更することを特徴とする。
また、本発明の自律移動体は、自らの位置・姿勢を判定して走行指令を出力するコントローラ部と、自装置と周囲にある障害物等の外壁面との距離を検知する距離センサ部と、移動機構部を備えており、
予め設定された経路に沿って、前記距離センサからの検知結果を受けて自装置の位置・姿勢を推定する位置姿勢推定部により自律的に走行する一般環境での一般走行モードと、前記位置姿勢推定部の推定処理により、自装置の周囲の環境が一様なパターン環境であると判断された場合は、進行方向に前進を行う壁ならい走行モードとの2つの運転モードを備え、
自装置が一様パターン環境を出て一般環境に入ったと判断すると、前記壁ならい走行モードから前記一般走行モードに運転モードを変更することを特徴とする。
本発明の自律移動体は、走行環境たる地図データを記憶する地図データ記憶部と、自装置を所望の経路で走行させるための経路データを記憶する経路データ記憶部と、前記地図データにおいて特定のパターンが連続する環境(一様パターン環境)の始点と終点とを管理する一様パターン環境終端データ記憶部と、所定の範囲内における走行の障害となり得る障害物と、自装置から該障害物までの距離と方向を検出する距離センサ部と、該距離センサ部から得られる自装置から該障害物までの距離と方向から、周囲の障害物の位置情報たる幾何形状データに変換するとともに、前記距離センサ部の動作を制御する距離センサ制御部と、前記幾何形状データと前記地図データとをマッチングして自装置の地図上における現在位置と進行方向を推定する位置姿勢推定部と、前記位置姿勢推定部における現在位置推定の結果と、前記一様パターン終端データ記憶部に記憶される一様パターン終端データとを比較し、自装置の現在位置が一様パターン環境の終点であるか否かを判定する一様パターン環境終端判定部と、を備え、前記位置姿勢推定部によって前記幾何形状データと地図データとをマッチングして現在位置を推定しながら経路データに基づいて自律移動をする一般走行モードと、前記距離センサ部によって検出した障害物に接触しないように進行方向に前進を行う壁ならい走行モードと、を具備することを特徴とする。
また、本発明の自律移動体は、前記前記壁ならい走行モード中に、前記一様パターン環境終端判定部によって自装置の現在位置が一様パターン環境の終端であると判定された場合、前記位置推定姿勢部によって現在位置を推定した後、当該現在位置から地図データ及び経路データに基づいて一般走行モードによる走行を開始することを特徴とする。
更に、本発明の自律移動体は、前記一般走行モード中に前記位置姿勢推定部によって現在位置の推定ができなくなった場合、前記壁ならい走行モードによる走行を開始することを特徴とする。
なお、前述の特許文献5、特許文献6には、壁面に沿って移動する自立移動体に関する発明の開示があるが、特許文献5は、清掃ロボットに部屋の縁端や室内の物体の縁端のみを清掃させる為に、単に壁面に沿って移動するに留まるものである。
また、特許文献6では、「壁面が不連続である場合には壁面からの距離が得られないため、境界に沿った適切な移動が行われないという問題がある」ことに対して、その解決策を提示しているものである。
本発明においては、「一様パターン環境」と称して、幾何的特徴に乏しい環境が混在する環境である場合には、ロボットが自位置を周囲の幾何学的特徴から判断することが困難となることを問題としているが、この点に対して、特許文献6では、何ら関連する技術を開示しているものではない。
上記構成により、凹凸等の幾何的特徴が多数存在することで、センサデータと地図とのマッチングにより、位置・姿勢のすべてのパラメータが高い確度で求められる環境においては、すべてのパラメータを用いる一般走行モードでの自動走行を行い、幾何的特徴が乏しく、センサデータと地図とのマッチングを行っても位置・姿勢のすべてのパラメータが高い確度で求められない環境においては、確度が高いパラメータのみを用いる壁ならい走行モードでの自動走行を行うことができる。また、壁ならい走行モードから一般走行モードに切り替えるためには、位置・姿勢のすべてのパラメータが求められる環境に到達したことを判定する必要がある。このため、幾何的特徴が乏しい環境から幾何的特徴が多数存在する環境への切り替わる場所の地図とセンサデータとのマッチングにより、マッチングの確度が高い場合は、切り替え可能な場所に到達したものと判定し、運転モードを切り替え、目的地までの走行を行うことができる。これにより、設備などにより幾何的特徴が多数存在する工場などの環境と幾何的特徴に乏しい廊下などの環境が混在する環境での移動体の自律移動が可能となる。
本発明の実施例の線路パターン環境を自律移動可能な移動体の、構成を示すブロック図である。 同上、ソフトウェア構成を示すブロックである。 同上、距離センサ部による現在位置の推定処理を示す説明図である。 同上、移動体の自律移動処理の概要を示すフローチャート図である。 同上、経路データ及び一様パターン環境終端データのデータ構造の一例を示す説明図である。 同上、位置姿勢推定処理を示す説明図である。 同上、図6に示す範囲Cの拡大図である。 同上、移動体の一般走行モード及び壁ならい走行モードの処理を示すフローチャートである。 同上、一般走行モード及び壁ならい走行モードの互いのモードの切り替えの一例を示す説明図である。 同上、壁ならい走行モードから一般走行モードへの切り替えの詳細な処理の一例を示す説明図である。
以下、本発明の実施例を自律移動体に限定して、添付図面を参照して説明する。以下、前述の「一般環境」及び「一様パターン環境」の分類定義のもと、一般環境と一様パターン環境とを自動走行する移動体について、本実施例で想定する移動体の機能の構成・主な処理内容について始めに述べ、続いて、より具体的なハードウェア・ソフトウェアの構成とこれらの動作について述べる。
自律移動体10の機能の構成図を図1に示す。自律移動体10は、この自律移動体10の位置・姿勢を判定して走行指令を出力するコントローラ部11、自律移動体10と周囲にある障害物等の外壁面との距離を検知する距離センサ部12、及び車輪を含めた移動機構部21,21を備えている。また、コントローラ部11は、距離センサ12を制御する距離センサ制御部13を備えており、距離センサ12からの検知結果を受けて自律移動体10の位置・姿勢を推定する位置姿勢推定部14を備えている。
位置姿勢推定部14は、2つの推定部を備えることが望ましい。この点に関しては、本願発明の課題ではなく、同一出願人の先願(特願2011−156452)として既に出願しているが、これ等は本願出願時の公知の技術ではない。簡単に説明しておくが、この2つの位置・姿勢推定部は通常位置・姿勢推定部と初期位置・姿勢推定部である。障害物は自律移動体の動作領域内に複数配置されており、先願発明においては、地図データ上におけるそれら障害物を配置させた際の障害物の外周輪郭形状を障害物の配置形状と称して説明する。通常位置・姿勢推定部は、従前技術による位置・姿勢の推定を行うものであり、先願発明における主要な課題ではない。先願発明においては、初期位置・姿勢推定部を設けたことを特徴としており、この初期位置・姿勢推定部は、位置姿勢候補表示・設定部を備えている。先願発明の実施例の自律移動体は、通常位置・姿勢推定部又は初期位置・姿勢推定部により推定された位置・姿勢に基づいて自らが走行する領域の経路を設定する経路計画部を設け、この経路計画部で計画された経路に沿うように車輪を駆動して自律移動体を自律移動させる移動機構制御部を設けている。
それに対して、本発明の自律移動体10のコントローラ部11は、さらに、移動体10の現在位置が一様パターン環境の終端であるか否かを判定する一様パターン環境終端判定部15、移動体10の現在の位置・姿勢から追従すべき経路上の目標位置・姿勢の算出を行う動作計画部16、算出された目標位置・姿勢と移動体10の現在の位置・姿勢とのずれを小さくするように制御する移動機構制御部17、及び前部キャスタと後部駆動輪を有した移動機構部21を備えている。また、各種データの記憶部は、地図データ記憶部18、経路データ記憶部19、一様パターン環境終端データ記憶部20から構成される。また、ここでは図示していないが、各部を支持する筐体、電源・配線など、各部が連携し、動作するために必要なものは備わっているものとする。
本発明の実施例の自律移動体10は、距離センサ制御部13により、距離センサ部12を制御し、周囲の環境中の設備等の物体外周縁までの距離と方向の計測からなる距離データを得る。ここでは距離センサ部12として、レーザ距離センサを用いるものとする。このレーザ距離センサは、レーザを照射してから、照射したレーザが環境中の物体により反射してセンサに返ってくるまでの時間を計測することで、センサから物体外周縁までの距離を計測するレーザ照射部を備えており、このレーザ照射部を一定の回転角毎に回転させながら計測することで、回転角度の範囲内にある物体外縁までの距離の計測(以下、「スキャン」との用語を用いる)が可能であるとする。このような機能を備えたレーザ距離センサは、従来公知であるので、具体的測距方法はこれ以上の説明はしない。今、このスキャンが平面内で行われるとすると、スキャンによりレーザがなす平面(以下、「スキャン面」との用語を用いる)上におけるセンサから物体外縁のまでの距離と方向が得られることとなる。このときに得られる各方向におけるセンサと物体外縁間の距離のデータとレーザを照射した方向データを組としたデータをここでは単に距離データと呼ぶものとする。この距離データの1つ1つは距離と方向のデータを組として記録されているため、センサを基準とした位置のデータに変換することができる。このようにして距離データを位置のデータに変換したものをここでは幾何形状データと呼ぶものとする。今、レーザ距離センサのスキャン面が床面に平行となるように移動体10に取り付けられており、レーザ距離センサのスキャン面の高さでの幾何形状データが得られるものとする。
以上で得られた幾何形状データは位置姿勢推定部14に送られる。位置姿勢推定部14には、スキャン面の高さでの環境の幾何形状を画像として記録した地図データ記憶部18が予め読み込まれており、この地図データ記憶部18の物体が存在することを示す画素(以下、「物体存在画素」との用語を用いる)に対して画像と見なした幾何形状データの物体存在画素が最も重なり合うときの地図データ上での幾何形状データの位置・姿勢を探索する処理(以下、当該処理に「マッチング(マッチング処理)」との用語を用いる)が行われる。これにより、幾何形状データと地図データ記憶部18が最も重なりあうときの地図データ記憶部18の座標系での幾何形状データの位置・姿勢が求まる。これは、直接的には距離センサ部12のレーザ照射部の位置・姿勢に相当するが、移動体10の位置・姿勢を表す際には移動体10の筐体のどこの位置を基準としてもよいため、ここで得られた距離センサ部12の位置・姿勢をもって移動体10の位置・姿勢とする。
本発明の実施例の自律移動体10が一般環境を走行中の場合は、動作計画部16での処理に進む。動作計画部16は、一般走行モードで動作し、予め読み込んでおいた移動体10の経路データ記憶部19と位置姿勢推定部14で得られた移動体10の現在の位置・姿勢から追従すべき経路上の目標位置・姿勢の算出が行われる。
そして、移動機構制御部17では、算出された目標位置・姿勢と移動体10の現在の位置・姿勢とのずれを小さくするように移動機構部21の制御をする。すなわち、車輪(一般的には後部駆動輪)の回転速度やステアリング(一般的には前部キャスタ)の切れ角などを求めてモータなどへの指示が行われる。これらにより、移動体10の予め設定された経路に沿った追従、ひいては目的地までの自動走行が実現される。
本発明の実施例の自律移動体10は、一般環境での走行の際には、距離センサ12からの検知結果を受けて移動体10の位置・姿勢を推定する位置姿勢推定部14により自律的に予め設定された経路に沿って走行する。位置姿勢推定部14の推定処理により、一般環境から一様パターン環境に入ったと推定された時点で、移動体10は、距離センサ部によって検出した障害物に接触しないように進行方向に前進を行う壁ならい走行モードの運転に入る。このように、移動体10が壁ならい走行モードで一様パターン環境を走行中の場合は、位置姿勢推定部14に続いて一様パターン環境終端判定部15にて判定処理が行われる。一様パターン環境終端判定部15には、予め地図データ記憶部18と、一様パターン環境の終端位置におけるデータである一様パターン環境終端データ記憶部20からのデータが読み込まれている。この一様パターン環境終端データ記憶部20には、幾何形状データと地図データ記憶部18とのマッチングを行った場合に、一様パターン環境の行程中でのマッチングのように複数の解の候補が現れることなしに、一意に位置・姿勢が求められるマッチングの探索範囲の位置・姿勢、探索範囲の形状(一様パターン環境終端での位置・姿勢、探索範囲の形状)が記録されている。マッチングの探索範囲とは、マッチングにおいて解の候補を探索する範囲(解のとり得る値の範囲)を示す。ここでは位置・姿勢の3つのパラメータに関する範囲となる。
一様パターン環境終端判定部15では、この一様パターン環境終端データ記憶部20に記録されたマッチングの探索範囲の位置・姿勢等をもとに、位置姿勢推定部14と同様に地図データ記憶部18と幾何形状データとのマッチングを行う。移動体10が一様パターン環境を自動走行している間は、位置姿勢推定部14でのマッチングと一様パターン環境終端判定部15でのマッチングを行いながら移動する。より具体的には、長い廊下等の線路パターン環境では、両方の壁から所定距離だけ離れて直線的に走行する。このとき、動作計画部16は、一様パターン環境における壁ならい走行モードで動作し、予め読み込んでおいた移動体10の経路データ記憶部19と位置姿勢推定部14で部分的に得られた移動体10の現在の位置・姿勢、そして周囲にある壁面までの距離・姿勢といった環境との相対的位置・姿勢より、壁面などの環境に沿って移動するための移動体10の姿勢と速度が算出される。
そして、移動機構制御部17では、算出された姿勢・速度と移動体10の現在の姿勢・速度とのずれを小さくするように移動機構部21の制御、すなわち、車輪の回転速度やステアリングの切れ角などを求めてモータなどへの指示が行われる。これらにより、移動体10の経路への追従、ひいては目的地までの自動走行が実現される。
一様パターン環境での走行から、やがて一様パターン環境の終端付近に移動体10が到達したとき、そのときの幾何形状データと地図データ記憶部18とのマッチングが一様パターン環境終端判定部15により行われ、マッチすると一様パターン環境の終端に到達したと判定される。これに伴い、一様パターン環境終端判定部15で求められた位置・姿勢を次の位置姿勢推定部14でのマッチングの初期位置・姿勢とし、位置姿勢推定を行う。これにより、一様パターン環境の走行中に位置・姿勢の3つのパラメータのいずれか、もしくはすべてが推定できない状態に陥っている位置姿勢推定部14が再びすべてのパラメータを推定できる状態に復帰する。
一様パターン環境の終端へ到達したと判定されると同時に、移動体10は、一様パターン環境用の壁ならい走行モードから一般環境用の一般走行モードに切り替え、目的地への自動走行を続ける。以上が、移動体10で行われる処理の流れの概要となる。
続いて、移動体10のハードウェアとソフトウェアの構成について述べ、移動体が一般環境と一様パターン環境の両方の環境で自動走行する例を通して、ハードウェアとソフトウェア全体の処理の流れについて述べる。なお、以下では移動体が平面内を動作することを想定し、移動体10が取りうる位置についての2つのパラメータ、姿勢についての1つのパラメータを推定する場合を想定して述べる。
本発明の実施例の自律移動体10のハードウェアとこれに格納されるソフトウェアの構成を図2に示す。移動体10は、コントローラ11、距離センサ12たるレーザ距離センサ(同じく符号12とする)、移動機構21、ディスプレイ25、入力機器26、これらの機器同士が通信するための通信線27より構成される。なお、図2では処理の流れに直接関わる要素のみを表記しており、各要素の動作に必要な電源等は当然備わっているものとする。
距離センサ12には、ここでは前述の距離センサ部12で挙げたレーザ距離センサと同じ方式のセンサを用いるものとする。ここでは、例として、レーザ距離センサ12がスキャンする角度範囲を180度とし、この角度範囲において0.5度毎にレーザを照射し、物体までの距離を計測することを想定するが、スキャンする角度範囲やレーザを照射する角度の刻み幅、距離の最大計測範囲などは異なっていてもよい。
図3に移動体10に取り付けられたレーザ距離センサ12により、一般環境中での設備等の物体外縁を計測する様子を示す。図3は図示の環境において物体が存在することを示す領域(以下、物体存在領域)32(幅広のハッチング部分)と、移動体10(図2の移動体10に相当)を上から見下ろした様子を表す平面図である。ここで、例として図中の位置・姿勢にある移動体10がレーザ距離センサ12(図2のレーザ距離センサ12に相当)により180度の角度範囲をスキャンしたとする。このとき、レーザ距離センサ12では幾何形状データ34(破線部が幾何形状データ,破線部同士をつなぐ細線はスキャンした範囲を示すための補助線,幅狭のハッチング部分がスキャン範囲)が得られることとなる。本実施例では、以上のようなレーザ距離センサの使用を想定しているが、同様に物体の幾何形状の計測が可能なセンサであればセンサの方式は異なっていてもよい。例えばステレオカメラや、赤外線を面状に物体に照射することで画素毎の物体までの距離計測が可能なデプスカメラなどであってもよい。
移動体10は、前部のキャスタ及び後部に駆動輪が備えられており、移動機構部21は、この後部の駆動輪及び前部のキャスタであり、回転角速度の差を制御することで直進・旋回を行えるようになっているものとする。本実施例ではこのような移動機構の使用を想定しているが、同様に環境内を移動する効果が得られるのであれば移動機構の方式は異なっていてもよい。例えば、無限軌道を備える車両、脚を備える移動体、船舶、航空機、飛行船など他の移動機構であってもよい。また、本実施例においては、移動体10が自動走行するようになっているが、本発明を実施した上で人が搭乗して移動体を操縦するようになっていてもよいし、また、搭乗せずに遠隔からの通信によって人が操縦するようになっていてもよい。
また、コントローラ11は、図2に示すように、プロセッサ22、メモリ23、記憶装置24を備えている。記憶装置24は、オペレーティングシステム(OS)24a、BIOS読み込みやOSの起動を行うコントローラ初期化プログラム24b、レーザ距離センサ制御プログラム24c、位置姿勢推定プログラム24d、動作計画プログラム24e、移動機構制御プログラム24f、一様パターン終端判定プログラム24g、一様パターン環境終端データ記憶部20、地図データ記憶部18及び経路データ記憶部19から構成されている。
レーザ距離センサ制御プログラム24cは、レーザ距離センサ12から距離データを取得する。
位置姿勢推定プログラム24dは、幾何形状データと地図データ記憶部18に記憶される地図データとのマッチングによって位置・姿勢を算出する。
動作計画プログラム24eは、経路データ記憶部19に記憶された経路データをもとに目的地に辿り着くための経路を算出する。
移動機構制御プログラム24fは、経路に沿って車体が移動するように車輪の回転速度などを算出する。
一様パターン終端判定プログラム24gは、移動体10が一様パターン環境を走行中に、一様パターン環境の終端付近に到達したことを検出する。
一様パターン環境終端データ記憶部20には、一様パターン終端判定プログラム24gが一様パターン環境の終端付近への到達を判定する際に用いる一様パターン環境終端データが記憶されている。
なお、図2に図示した実施例のプログラムやデータは、メモリ23にロードされた上で、プロセッサ22により処理されることを想定しているが、これと同様の効果が得られるのであれば、実装は異なっていてもよい。例えば、FPGA(Field Programmable Grid Array)やCPLD(Complex Programmable Logic Device)などのプログラマブルなハードウェアで以上の処理を実現してもよい。なお、プログラムやデータは、CD-ROM等の記憶媒体から移してもよいし、ネットワーク経由で他の装置からダウンロードしてもよい。
また、プロセッサ22や記憶装置24、移動機構21など、移動体10を構成する各デバイスは、ここでは有線の通信線27により互いに通信することを想定しているが無線であってもよく、また、通信が可能であれば、コントローラ11、ディスプレイ25、入力装置26の各デバイスが物理的に遠隔にあってもよい。また、以上のハードウェアやソフトウェアは、実施形態に応じて、取捨選択してもよい。
続いて、移動体10で行われる処理の流れについて述べる。移動体10に搭載されるコントローラでの処理の流れのうち、主に自動走行前の準備に関する処理を図4に示し、主に自動走行そのものに関する処理を図7に示す。コントローラ11が起動されると(401)、コントローラ初期化プログラム24bにより、OS24aの読み込み、各プログラム24c〜24gの起動が行われる(402)。次に、位置姿勢推定プログラム24dにより、地図データが地図データ記憶部18(以降単に地図データ18と称呼する)より読み込まれる(403)。なお、ここでの地図データ18は画像データとなっており、画素毎に環境中の物体の有無が画素値として記録されているものとする。次に、レーザ距離センサ制御プログラム24cがレーザ距離センサ12を制御し、環境をスキャンすることによって、環境の幾何形状データが得られる(404)。次に、初期位置姿勢推定が行われる(405)。初期位置姿勢推定は、位置姿勢推定プログラム24dを用いて行われる処理で、特に移動体10の動作開始時に行われる位置姿勢推定の処理を指す。この意味で、位置姿勢推定と初期位置姿勢推定の基本原理は同じであるため、ここでは、まず位置姿勢推定についてまず述べる。
位置姿勢推定プログラム24dには、幾何形状データと地図データ18のマッチングにもとづく位置・姿勢の算出機能が備えられている。この機能について図6を用いて説明する。
今、地図データ18が、図6の60で表される物体存在画素(物体の外縁を示すデータ)による画像データとして記録されており、これに対して図3の移動体10が同図中の位置・姿勢でスキャンすることで得た幾何形状データ34のマッチングを行い、移動体10の位置・姿勢を推定する場合を考える。また、このとき、移動体10の前回の位置姿勢推定による推定位置が図6の62で、推定姿勢は62から伸びた矢印の方向とするとき、マッチングの探索範囲が推定位置62を中心としてXのように設けられたとする。
なお、簡単のため、探索範囲Xでは、その範囲のうち、位置の探索範囲のみを記しているが、実際はさらに姿勢の探索範囲が設定されているものとする。ここでは、前回の推定位置62から伸びた矢印を中心として±30度の角度範囲の幾何形状データが、姿勢に関する探索範囲として設定されているものとするが、探索範囲はより広くても狭くてもよい。
この探索範囲において、幾何形状データがとりうる位置・姿勢で幾何形状データと地図データ18である物体存在画素60との重なり具合を評価し、重なり具合が最も大きくなるときの位置・姿勢を求める。具体的には、例えば、移動体10の推定位置63にて、推定位置63から伸びる矢印の姿勢において、幾何形状データを地図データ18の物体存在画素60に重ね合わせたとすると、幾何形状データ34のような重なり方となる。図6は、物体存在画素60と幾何形状データ34に食い違いがある状態を示している。
このとき、例えば図6に示すCの範囲に着目する。図6のCに示す範囲の拡大図が図7である。地図データ18は、物体存在画素67(黒色の画素)と物体が存在しないことを示す画素69(白抜きの画素)からなる画像で表されており、また、この画像に対して幾何形状データ34をなす物体存在画素68(ハッチングされた画素)で表される。このとき、幾何形状データ34をなす物体存在画素68は、画素66の位置にて地図データ18の物体存在画素67と重なり合っており、この場合、この画素はマッチしたものとみなされる。ただし、移動体10のレーザ距離センサ12が、図7の右側にあるとすると、物体存在画素67(黒色の画素)で構成された線より左側の白抜きの画素は直ちに物体が存在しないことを示すものではない。図6に示す実施例通りに、物体存在画素67(黒色の画素)で構成された線は物体の外縁であり、左側の白抜きの画素部分は物体の内面の位置を意味しているものかもしれない。
以上のような画素単位のマッチング方法によって、幾何形状データ34と地図データ18の物体存在画素60とがマッチする物体存在画素の数をあらゆるパターンにおいて総当たりで求める。
この図6においては、幾何形状データ34が位置63において、この位置63から伸びる矢印の姿勢をとるときに幾何形状データ34と地図データ18の物体存在画素60との重なり具合が最大となり、マッチングの解、つまりは移動体10の位置・姿勢が位置63である求められることとなる。以上が位置姿勢推定の処理となるが、初期位置姿勢推定では基本的にはこの位置姿勢推定と同じ処理を行うが、位置姿勢推定では前回の推定位置姿勢をもとに探索範囲を設定していたのに対し、初期位置姿勢推定では、前回の推定位置姿勢を用いず、地図データ全体を探索範囲と設定し、姿勢の探索範囲も360度としてマッチングを行い、移動体10が起動された場所での詳細な位置・姿勢を求める。なお、位置姿勢推定プログラム24dにて位置・姿勢を算出する処理としては前述のようなマッチングの処理をここでは想定しているが、同様の効果が得られるならば他の方法であってもよい。例えばICP(Iterative Closest Point)等を用いてもよい。
また、前述のとおり、本実施例では、地図データ18全体を探索範囲としたときに、幾何形状データが地図データ18に対して最もマッチするときの位置・姿勢を初期位置姿勢として求めることを想定しているが、この場合、探索に時間を要するため、例えば、ディスプレイ25に表示された地図データ18上で操作者が指定した位置・姿勢周辺でマッチングを行ったり、あるいは予め決まっている移動体10の駐車場があれば、その周辺でマッチングを行うなどして初期位置姿勢を求めてもよい。
続いて、目的地の設定を終了するかどうかの確認画面がディスプレイ25に表示される。移動体10に自動走行を行わせる場合、操作者は目的地の設定を行うことを入力装置26により選択する(406)。もし、移動体10の自動走行を行わないのであれば終了を選択する。この場合、直ちにプログラムは終了となる(407)。今、移動体10に自動走行を行わせるため、操作者が目的地の設定を行う方を選択した場合、処理はAに進み、つまりは図8の処理801に進む。
続いて、操作者は、ディスプレイ25に表示される搬送先の候補のリスト上で目的地を確認し、入力装置26により目的地を設定する(801)。次に、初期位置姿勢推定の処理405で得られた位置・姿勢をもとに、動作計画プログラム24eにより、経路データ19が読み込まれる(802)。次に、一様パターン環境終端判定プログラム24gにより、一様パターン環境終端データ記憶部20から一様パターン環境終端データ(以降、一様パターン環境終端データ20と称呼する)が読み込まれる(803)。このデータは先に述べたように、一様パターン環境の走行中に位置・姿勢の3つのパラメータのいずれか、もしくはすべてが推定できない状態に陥っている移動体10が、位置・姿勢の3つのパラメータのすべてが推定可能な状態に復帰するために、幾何形状データと地図データとのマッチングを行う際に必要なマッチングの探索範囲の位置・姿勢、探索範囲の形状が記録されたデータである。
図5に一様パターン環境終端データ20と経路データ19の構造を示す。一様パターン環境終端データは経路セグメントデータと組になって記録されている。経路セグメントデータは、経路始点から経路終点を構成する線分(以下、セグメント)の情報として、セグメント始点とセグメント終点についての地図データの座標系における座標、終点に到達したときの判定基準(以下、単に到達判定基準と称する)、及びセグメントの種類(以下、セグメント種別)が記録されている。セグメント種別とは、そのセグメントが一般環境でのセグメントなのか、或いは一様パターン環境でのセグメントなのかのいずれかが記録されている。また、到達判定基準とは、移動体10が経路始点から経路終点に向かって走行し、経路終点の座標に到着したと判定するための基準である。ここでは単純に経路終点の座標から半径rの範囲内に移動体10の位置の座標が入っていれば到着と見なすとしているが、移動体10の運用状況に応じて変更してもよい。この経路セグメントデータが集まることで図2での経路データ19が構成されている。
また、経路セグメントデータと共に記録される一様パターン環境終端データとしては、復帰時探索範囲位置姿勢と復帰時探索範囲形状がある。復帰時探索範囲位置姿勢とは、一様パターン環境の走行中に位置・姿勢の3つのパラメータのいずれか、もしくはすべてが推定できない状態からすべてのパラメータを推定できる状態に復帰するために幾何形状データと地図データとのマッチングを行う際のマッチングの探索範囲の位置と姿勢を指す。また、復帰時探索範囲形状は、このマッチングの探索範囲の形状を指す。ここでは単純に横方向の長さがh、高さ方向の長さがvの長方形としているが、移動体10の運用状況に応じて変更してもよい。
次に、経路データ19の中から最初に追従するセグメントが選択される(804)。次に、処理405と同様にレーザ距離センサ制御プログラム24cがレーザ距離センサ12を制御し、環境をスキャンすることで幾何形状データが得られる(805)。次に、処理405のところで述べた処理の流れに従い、位置姿勢推定が行われる(806)。次に、読み込んだ経路データ19をなすセグメントのうち、最後のセグメントの終点に到達したかどうかの判定が行われる(807)。この判定で終点に到達したと判定された場合、処理はBに進み、つまりは図4の処理406に進む。また、この判定で終点に到達したと判定されなかった場合、処理808に進む。次に、移動体10が追従しようとしているセグメントの種別の判定が行われ、セグメントが一般環境セグメントの場合は処理816に、セグメントが一様パターン環境セグメントの場合は処理817に進む(808)。
このセグメントの種別の判定にもとづき、一般環境と一様パターン環境が混在する環境を移動体10が自動走行する様子について、図9を用いて述べる。ここでは、物体存在領域60で表される環境において、移動体10が点91と92とを結ぶセグメント95a、点92と点93とを結ぶセグメント95b、そして点93と点94とを結ぶセグメント95cからなる経路データを用いて、スタート地点91から目的地94まで走行するものする。また、セグメント95aと95cは一般環境セグメント、セグメント95bは一様パターン環境セグメントであることが経路データ19に記録されているものとする。なお、物体存在領域60の表面部分の形状と同じ形の地図データ18が既に得られているものとする。
この状況のもと、移動体10が最初のセグメント95aを走行中で、例えば移動体10が10aの位置・姿勢にあるとき、レーザ距離センサ12の計測範囲12a内のスキャンによって得られる幾何形状データ34aには、通路両側の壁以外に正面の壁や角などの幾何的特徴が含まれることから、地図データ18と幾何形状データ34aのマッチングにおいては互いが最も重なり合うときの位置・姿勢の解が一意に求められる。移動体10がこのセグメント95aを選択中のとき、経路データ19のセグメント種別より、一般環境セグメントであることから、一般走行モード816で走行する。このとき、処理806で得られた位置・姿勢と経路データ19をもとに、選択中のセグメント(このケースではセグメント95a)のセグメント終点に到達したかが判定される(809)。セグメント終点に到達していない場合は、求められた位置・姿勢とセグメント終点とのずれが小さくなるように移動機構の制御を行う(810)。セグメント終点に到達した場合は、選択中のセグメントを走行済みとして記録し、次のセグメントを選択する(811)。図9の場合、移動体10が点92の位置に到達したと判定された場合には、次にセグメント95bが選択される。
移動体10がセグメント95bを走行中で、例えば移動体10が10bの位置・姿勢にあるとき、レーザ距離センサ12の計測範囲12b内のスキャンによって得られる幾何形状データ34bには、通路両側の壁のデータのみであり、それ以外に正面の壁や角などの幾何的特徴が含まれていないことから、地図データ18と幾何形状データ34bのマッチングにおいては互いが最も重なり合う位置が複数箇所あるため、解が一意に求められない。より具体的には、幾何形状データ34b・位置・姿勢の3つのパラメータのうち、通路に対して長手方向(即ち進行方向或いは線路方向)の位置は一意に求められず、通路長手方向に解の候補が複数得られてしまう。よって、移動体10が一様パターン環境でのセグメントを選択して走行するときは、位置・姿勢の3つのパラメータが一意に求まっている状態での運転モードである一般走行モード816を行うことはできない。このことから、通路の長手方向の位置以外のパラメータとして、壁に対する位置、壁に対する姿勢の2つは求めることができることから、これを用いて一様パターン環境における壁ならい走行モード817による壁倣い走行を行う。壁倣い走行とは壁との距離、姿勢を一定に保つようにして一様パターン環境の終端に向かって移動する運転モードである。この一様パターン環境における壁ならい走行モード817においては、走行中に一様パターン環境セグメントの終端の検出処理が行われる(812)。ここでは、位置姿勢推定の処理806と同様の処理が行われる。
今、一様パターン環境終端データ20による復帰時探索範囲が96に示す破線のように設定されていたとする。なお、復帰時探索範囲96の向きは図面上向きに設定されているものとする。ここで、10bの位置・姿勢にあった移動体10が、一様パターン環境における壁ならい走行モード817で走行していくうちに、やがて10cの位置・姿勢になったものとする。この時点では、まだ一様パターン環境セグメント95bが選択されているため、一様パターン環境終端判定プログラム24gにより、幾何形状データ34cと物体存在領域60に対応する地図データ18との位置姿勢推定と同様のマッチングが行われる。ただし、このマッチングに際しては通常の位置姿勢推定時の探索範囲ではなく、復帰時探索範囲96をもとにマッチングが行われる。
今、復帰時探索範囲96が図10に示すDの位置を中心にEに示すような正方形の形状・範囲で設けられ、セグメントF(図9におけるセグメント95b)の矢印の姿勢に設定されており、復帰時探索範囲での一様パターン環境の姿勢の探索範囲についてはGに示す角度の範囲として設定されていたとする。このとき、マッチングの解の探索時に幾何形状データが取りうる位置・姿勢は、復帰時探索範囲Eの各々の頂点から半円状のセグメントFが示す方向から左右G/2の角度で回転させた範囲、即ちおよそ図10に描かれている各半円を重ね合わせた範囲となる。つまりは、この範囲内に含まれる物体存在画素60と実際の環境をスキャンすることで得られる幾何形状データ34とのマッチングが行われることとなる。移動体10が10cの位置・姿勢でスキャンして得た幾何形状データ34c(図9)は、図10に示した各半円を重ね合わせた範囲内に入っており、加えて、正面の壁や角などの幾何的特徴があることから位置・姿勢の3つのパラメータが一意に求められる。
このように、一様パターン環境の終端部分の地図データ18と幾何形状データ34cとのマッチングを行い、マッチングが成立した場合、より具体的には、幾何形状データ34cを一様パターン環境の終端部分の地図データ18に重ね合わせたときに幾何形状データ34cをなすデータの個数のうち、マッチしたデータの個数の割合が閾値以上になった場合は、移動体10が一様パターン環境の終端に到達したものと判定する(813)。この判定において一様パターン環境の終端に到達していないと判定された場合は、前述の壁倣い走行を行うための移動機構の制御を継続して行う(814)。また、一様パターン環境の終端に到達した場合は、選択中のセグメントを走行済みとして記録し、経路データ19より次のセグメントを選択する(815)。図9の場合、移動体10が点93に到達したと判定された場合、次にセグメント95cが選択される。
以上の処理によって移動体10が走行し、目的地に到着したと判定されたならば(807)、前述の通り、目的地の設定確認の処理406に戻る。以上が、移動体10が通常動作を行っている際の処理の流れとなる。
10 移動体
11 コントローラ部
12 距離センサ部
13 距離センサ制御部
14 位置姿勢推定部
15 一様パターン環境終端判定部
16 動作計画部
17 移動機構制御部
18 地図データ記憶部
19 経路データ記憶部
20 一様パターン環境終端データ記憶部
21 移動機構部

Claims (6)

  1. 自律移動体であり、該自律移動体は、自らの位置・姿勢を判定して走行指令を出力するコントローラ部と、自装置と周囲にある障害物の外壁面との距離を検知する距離センサ部と、移動機構部を備えており、
    予め設定された経路に沿って、前記距離センサからの検知結果を受けて自装置の位置・姿勢を推定する位置姿勢推定部により自律的に走行する一般環境での一般走行モードと、
    進行方向に前進を行う壁ならい走行モードとの2つの運転モードを備えた自律移動体であって、
    前記一般走行モード中に前記位置姿勢推定部によって現在位置の推定ができなくなったと判断した場合には、前記壁ならい走行モードによる走行を開始することを特徴とする自律移動体。
  2. 請求項1記載の自律移動体であって、該自律移動体は、
    走行環境たる地図データを記憶する地図データ記憶部と、
    自装置を所望の経路で走行させるための経路データを記憶する経路データ記憶部と、
    前記地図データにおいて特定のパターンが連続する環境である一様パターン環境の始点と終点とを管理する一様パターン環境終端データ記憶部と、
    所定の範囲内における走行の障害となり得る障害物と、自装置から該障害物までの距離と方向を検出する前記距離センサ部と、
    該距離センサ部から得られる自装置から該障害物までの距離と方向から、周囲の障害物の位置情報たる幾何形状データに変換するとともに、前記距離センサ部の動作を制御する距離センサ制御部と、
    前記幾何形状データと前記地図データとをマッチングして自装置の地図上における現在位置と進行方向を推定する前記位置姿勢推定部と、
    前記位置姿勢推定部における現在位置推定の結果と、前記一様パターン終端データ記憶部に記憶される一様パターン終端データとを比較し、自装置の現在位置が一様パターン環境の終点であるか否かを判定する一様パターン環境終端判定部と、を備えており、
    前記位置姿勢推定部によって前記幾何形状データと地図データとをマッチングして現在位置を推定しながら経路データに基づいて自律移動をする前記一般走行モードと、前記距離センサ部によって検出した障害物に接触しないように進行方向に前進を行う前記壁ならい走行モードと、を具備することを特徴とする自律移動体。
  3. 自律移動体であり、該自律移動体は、自らの位置・姿勢を判定して走行指令を出力するコントローラ部と、自装置と周囲にある障害物の外壁面との距離を検知する距離センサ部と、移動機構部を備えており、
    予め設定された経路に沿って、前記距離センサからの検知結果を受けて自装置の位置・姿勢を推定する位置姿勢推定部により自律的に走行する一般環境での一般走行モードと、前記位置姿勢推定部の推定処理により、自装置の周囲の環境が一様なパターン環境であると判断された場合は、進行方向に前進を行う壁ならい走行モードとの2つの運転モードを備え、
    自装置が一般環境から一様パターン環境に入ったと判断すると、前記一般走行モードから前記壁ならい走行モードに運転モードを変更する自律移動体であって、
    前記一般走行モード中に前記位置姿勢推定部によって現在位置の推定ができなくなったと判断した場合には、前記壁ならい走行モードによる走行を開始することを特徴とする自律移動体。
  4. 請求項3記載の自律移動体であって、該自律移動体は、
    走行環境たる地図データを記憶する地図データ記憶部と、
    自装置を所望の経路で走行させるための経路データを記憶する経路データ記憶部と、
    前記地図データにおいて特定のパターンが連続する環境である一様パターン環境の始点と終点とを管理する前記一様パターン環境終端データ記憶部と、
    所定の範囲内における走行の障害となり得る障害物と、自装置から該障害物までの距離と方向を検出する前記距離センサ部と、
    該距離センサ部から得られる自装置から該障害物までの距離と方向から、周囲の障害物の位置情報たる幾何形状データに変換するとともに、前記距離センサ部の動作を制御する距離センサ制御部と、
    前記幾何形状データと前記地図データとをマッチングして自装置の地図上における現在位置と進行方向を推定する前記位置姿勢推定部と、
    前記位置姿勢推定部における現在位置推定の結果と、前記一様パターン終端データ記憶部に記憶される一様パターン終端データとを比較し、自装置の現在位置が一様パターン環境の終点であるか否かを判定する一様パターン環境終端判定部と、を備えており、
    前記位置姿勢推定部によって前記幾何形状データと地図データとをマッチングして現在位置を推定しながら経路データに基づいて自律移動をする一般走行モードと、前記距離センサ部によって検出した障害物に接触しないように進行方向に前進を行う壁ならい走行モードと、を具備し、
    前記壁ならい走行モード中に、前記一様パターン環境終端判定部によって自装置の現在位置が一様パターン環境の終端であると判定された場合、前記位置推定姿勢部によって現在位置を推定した後、当該現在位置から地図データ及び経路データに基づいて一般走行モードによる走行を開始することを特徴とする自律移動体。
  5. 自律移動体であり、該自律移動体は、自らの位置・姿勢を判定して走行指令を出力するコントローラ部と、自装置と周囲にある障害物の外壁面との距離を検知する距離センサ部と、移動機構部と、一様パターン終端データ記憶部と、前記距離センサからの検知結果を受けて自装置の位置・姿勢を推定する位置姿勢推定部と、を備えており、
    予め設定された経路に沿って、前記距離センサからの検知結果を受けて自装置の位置・姿勢を推定する前記位置姿勢推定部により自律的に走行する一般環境での一般走行モードと、前記位置姿勢推定部の推定処理により、自装置の周囲の環境が一様なパターン環境であると判断された場合は、進行方向に前進を行う壁ならい走行モードとの2つの運転モードを備え、
    自装置が一様パターン環境を出て一般環境に入ったと判断すると、前記壁ならい走行モードから前記一般走行モードに運転モードを変更する自律移動体であって、
    前記一般走行モード中に前記位置姿勢推定部によって現在位置の推定ができなくなったと判断した場合には、前記壁ならい走行モードによる走行を開始することを特徴とする自律移動体。
  6. 自律移動体であり、該自律移動体は、自らの位置・姿勢を判定して走行指令を出力するコントローラ部と、自装置と周囲にある障害物の外壁面との距離を検知する距離センサ部と、移動機構部を備えており、
    予め設定された経路に沿って、前記距離センサからの検知結果を受けて自装置の位置・姿勢を推定する位置姿勢推定部により自律的に走行する一般環境での一般走行モードと、前記位置姿勢推定部の推定処理により、自装置の周囲の環境が一様なパターン環境であると判断された場合は、進行方向に前進を行う壁ならい走行モードとの2つの運転モードを備え、
    自装置が一様パターン環境を出て一般環境に入ったと判断すると、前記壁ならい走行モードから前記一般走行モードに運転モードを変更する自律移動体であって、該自律移動体は、
    走行環境たる地図データを記憶する地図データ記憶部と、
    自装置を所望の経路で走行させるための経路データを記憶する経路データ記憶部と、
    前記地図データにおいて特定のパターンが連続する環境であり一様パターン環境の始点と終点とを管理する一様パターン環境終端データ記憶部と、
    所定の範囲内における走行の障害となり得る障害物と、自装置から該障害物までの距離と方向を検出する前記距離センサ部と、
    該距離センサ部から得られる自装置から該障害物までの距離と方向から、周囲の障害物の位置情報たる幾何形状データに変換するとともに、前記距離センサ部の動作を制御する距離センサ制御部と、
    前記幾何形状データと前記地図データとをマッチングして自装置の地図上における現在位置と進行方向を推定する前記位置姿勢推定部と、
    前記位置姿勢推定部における現在位置推定の結果と、前記一様パターン終端データ記憶部に記憶される一様パターン終端データとを比較し、自装置の現在位置が一様パターン環境の終点であるか否かを判定する一様パターン環境終端判定部と、を備えており、
    前記位置姿勢推定部によって前記幾何形状データと地図データとをマッチングして現在位置を推定しながら経路データに基づいて自律移動をする前記一般走行モードと、前記距離センサ部によって検出した障害物に接触しないように進行方向に前進を行う前記壁ならい走行モードと、を具備し、
    前記一般走行モード中に前記位置姿勢推定部によって現在位置の推定ができなくなったと判断した場合には、前記壁ならい走行モードによる走行を開始することを特徴とする自律移動体。
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