JP2018016733A - 長繊維強化熱可塑性樹脂線状物、及びその製造方法 - Google Patents

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奨 澤田
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奨 澤田
貴之 若原
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貴之 若原
木村 治男
Haruo Kimura
治男 木村
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【課題】熱賦形により長手方向に曲げ加工がし易く、取り扱いが容易な長繊維強化熱可塑性樹脂製線状物を提供すること。【解決手段】熱可塑性樹脂であるマトリックス樹脂からなる海と、長繊維状強化用繊維束からなる3個以上50以下の島とで構成される断面海島構造を有する長繊維強化熱可塑性樹脂線状物であって、該島を構成する強化用繊維束は、長手方向に直交する断面において、該マトリックス樹脂が含浸している含浸部と、該マトリックス樹脂が未含浸の未含浸部とを有する長繊維強化熱可塑性樹脂線状物である。【選択図】なし

Description

本発明は、長繊維状補強材と熱可塑性樹脂マトリックスからなる線状物に関し、特に曲げ加工がし易い長繊維強化熱可塑性樹脂線状物、及びその製造方法に関する。
強化用繊維を合成樹脂で結着した繊維強化熱硬化性樹脂製物品(以下、「FRP」と称することがある。)は強度が高くかつ軽量であるという点から、金属製物品に代わる材料として、自動車、電子、農林、建築材、家具等の多くの分野で利用されている。このFRP技術を使用した製品のひとつであるガラスロービング等の長繊維束を強化用繊維とし、熱硬化性樹脂をマトリックスとするパイプ、ロッド、線状物等も古くから各種産業分野で使用されている。
近年、この様な長繊維強化樹脂製の長尺材料を、製品内の個々の部材としても使用したいという要求が高まっている。この様な個々の部材として使用することを可能にするためには長尺材料が、その使用される製品を加工する時点で、その製品の形状に適合するべく、賦形できることが必要である。特に加熱による温度刺激によって目的の形状に賦形すると共にその形を安定化できることが求められている。
しかしながら、一般にFRPは、マトリックス樹脂としての熱硬化性樹脂が強化用繊維の内部まで完全に含浸し、硬化後においては、熱硬化性樹脂硬化物の特性から、加熱変形することによって所望の形状に塑性加工することが困難である。特に、長手方向の断面において繊維が均一に分散しているFRP線状物は、非常に高剛性で、曲げても真直状に復元し、塑性変形はしないので、曲げて使用する用途には適さない。
一方、強化用繊維に熱可塑性樹脂を含浸させた繊維強化熱可塑性樹脂製物品(以下、「FRTP」と称することがある。)は、加熱による塑性変形がある程度可能である。しかしながら、長繊維状の強化用繊維にマトリックス樹脂として熱可塑性樹脂を含浸したFRTP線状物においては、加熱賦形による曲げ加工が必ずしも容易ではない。
特許文献1には、連続した強化用繊維を引きながら溶融熱可塑性樹脂を含浸させる長繊維強化複合材料の製造方法において、繊維に溶融樹脂を含浸もしくは被覆させた後、スリットノズルで過剰量の樹脂を絞り込みながら連続的に引き抜き、次いで賦形ノズルを通して目的形状に整えることを特徴とする長繊維強化複合材料の製造方法が開示されている。そして、特許文献1の製造方法によれば、得られる複合材料中の繊維の分散および樹脂の含浸性も良好で、高品質の複合材料を効率よく安定して得ることができるという効果が挙げられている。
また、特許文献2には、長繊維状の炭素繊維束に熱可塑性樹脂を含浸した直径1〜5mmの炭素繊維強化複合材料を複数本撚合せてなる炭素繊維強化複合材料からなるロープ及びその製造方法が開示されている。特許文献2には、一般に熱可塑性樹脂の溶融粘度は高いので、炭素繊維束内に均一に樹脂を含浸するのは難しいが、熱可塑性樹脂をエクストルーダーで一定量の割合で吐出し、樹脂含浸部で炭素繊維束を開繊しながら加圧下で樹脂を含浸し、エクストルーダーとは分離して設置されたダイスで繊維束を円形に整形し巻き取り装置で巻き取る技術が開示されている。
上記の特許文献1及び2に記載のFRTPの製造方法は、いずれも長繊維状の強化用繊維束に溶融状の熱可塑性樹脂を均一に含浸させることを課題としており、特に長手方向に曲げた状態での熱賦形性についての開示はない。
特開平5−147116号公報 特開平5−33278号公報
本発明者らは、FRTP線状物の熱賦形性について検討した結果、長繊維状強化用繊維間の全体にマトリックス樹脂としての熱可塑性樹脂を含浸したものでは、曲げ剛性が高いFRTP線状物となり、熱賦形がし難く、賦形加工性が悪化することが確認された。
本発明は、長繊維状補強材と熱可塑性樹脂マトリックスからなる長繊維強化熱可塑性樹脂製線状物に関し、熱賦形により長手方向に曲げ加工がし易く、取り扱いが容易な長繊維強化熱可塑性樹脂製線状物を提供することを目的とする。
本発明者らは、熱賦形により長手方向に曲げ加工がし易く、取り扱いが容易な長繊維強化熱可塑性樹脂製線状物について鋭意研究した結果、熱可塑性樹脂であるマトリックス樹脂からなる海と、長繊維状強化用繊維(束)からなる3個以上50以下の島とで構成される断面海島構造を有する長繊維強化熱可塑性樹脂線状物であって、該島を構成する強化用繊維は、長手方向に直交する断面において、該マトリックス樹脂が含浸していない未含浸部を有する長繊維強化熱可塑性樹脂線状物とすることによって達成できることを知得して、本願発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の〔1〕〜〔8〕を提供する。
〔1〕熱可塑性樹脂であるマトリックス樹脂からなる海と、長繊維状強化用繊維束からなる3個以上50以下の島とで構成される断面海島構造を有する長繊維強化熱可塑性樹脂線状物であって、該島を構成する強化用繊維は、長手方向に直交する断面において、該マトリックス樹脂が含浸していない未含浸部を有することを特徴とする長繊維強化熱可塑性樹脂線状物。
〔2〕前記線状物の長手方向に直交する断面において、次式(1)で算出される、前記島の全断面積S0に対する前記未含浸部の全断面積Sn-iの割合が90%以上である、前記〔1〕に記載の長繊維強化熱可塑性樹脂線状物。
〔未含浸部の全断面積Sn−i/島の全断面積S0〕×100 (1)
〔3〕前記強化用繊維が熱可塑性樹脂からなり、前記マトリックス樹脂が該強化用繊維の融点又は軟化点よりも20℃以上低い融点を有するポリオレフィン系樹脂である、前記〔1〕又は〔2〕に記載の長繊維強化熱可塑性樹脂線状物。
〔4〕前記強化用繊維が、単繊維繊度が1.5dtex〜30dtexの繊維を80f〜1000f集束してなるマルチフィラメントである、前記〔1〕〜〔3〕のいずれか1に記載の長繊維強化熱可塑性樹脂線状物。
〔5〕前記強化用繊維がポリエチレンテレフタレート繊維である、前記〔4〕に記載の長繊維強化熱可塑性樹脂線状物。
〔6〕強化用繊維におけるマトリックス樹脂の未含浸部の割合が0%である長繊維強化熱可塑性樹脂線状物の曲げ強度をB0(MPa)、曲げ弾性率をM0(MPa)とし、長繊維強化熱可塑性樹脂線状物の曲げ強度をBi(MPa)、曲げ弾性率をMi(MPa)としたときに、次式(2)、(3)の関係を満足する、前記〔1〕〜〔5〕のいずれか1に記載の長繊維強化熱可塑性樹脂線状物。
(Bi/B0)×100=40〜70% (2)
(Mi/M0)×100=45〜85% (3)
〔7〕熱可塑性樹脂であるマトリックス樹脂からなる海と、長繊維状強化用繊維束からなる3個以上50以下の島とで構成される断面海島構造を有する長繊維強化熱可塑性樹脂線状物の製造方法であって、
(1)所要本数の長繊維状強化用繊維束を、クリールより引出し、熱可塑性樹脂の溶融押出機のクロスヘッドに装着される分離ガイド、溶融樹脂含浸部及び収束ガイドを備えるガイド芯金に挿通し、これをクロスヘッドダイに装着し、次いで押出ノズルを備えるダイ、冷却槽、及び引取装置に導く、長繊維状強化用繊維束群の予備引出し工程、
(2)該引取装置を駆動して、該長繊維状強化用繊維束群を所定速度で引取りながら、該溶融押出機を駆動して、該クロスヘッドに該熱可塑性樹脂を供給して、該ガイド芯金の溶融樹脂含浸部及びダイ内において分離状の各強化用繊維束と溶融した熱可塑性樹脂を接触させて、各強化用繊維束に熱可塑性樹脂を部分的に含浸させ、引き続き収束ガイドを経て、所定の断面形状の押出ノズルを備えるダイにて加圧下に線状物を押出被覆する工程、
(3)押出被覆された線状物を冷却固化し、引取る工程、
を有することを特徴とする長繊維強化熱可塑性樹脂線状物の製造方法。
〔8〕前記マトリックス樹脂に、メルトフローレート(230℃、21.18N)が20〜100g/10分であるポリプロピレンを使用する、前記〔7〕に記載の長繊維強化熱可塑性樹脂線状物の製造方法。
本発明によれば、長手方向に曲げる熱賦形が容易な長繊維強化熱可塑性樹脂線状物を提供できる。また、本発明の製造方法によれば、熱可塑性樹脂であるマトリックス樹脂からなる海と、長繊維状強化用繊維からなる3個以上50以下の島とで構成される断面海島構造を有する長繊維強化熱可塑性樹脂線状物を、再現性よく、安定して製造できる方法を提供できる。
本発明の長繊維強化熱可塑性樹脂線状物の製造工程の説明図である。 クロスヘッドダイに装着するガイド芯金を構成する強化用繊維束のガイド類の説明図であり、(A)分離ガイドの一例、(B)収束ガイドの一例の正面図、(C)(B)の側面図である。 本発明に使用する強化用繊維(束)のガイド類を保持するガイド芯金の説明図であり、(A)半割状ガイド芯金の片半分の断面図、(B)(A)の矢視図、(C)半割状ガイド芯金の片半分の正面図、(D)(C)の側面図、である。 本発明の長繊維強化熱可塑性樹脂線状物の製造の実施例に用いたダイスの構成を示す説明図であり、(A)内部のガイドに長繊維状強化用繊維(束)を挿通したガイド芯金をダイスに装着する前の上面視の状態を模式的に示す説明図、(B)ガイド芯金をダイスに装着した状態を模式的に示す説明図、(C)ダイス内での強化用繊維束の状況、マトリックス樹脂の流れを模式的示す説明図である。 本発明の(A)実施例1、(B)実施例2、(C)実施例3、(D)比較例1、(E)比較例2、により得られた長繊維強化熱可塑性樹脂線状物の断面を模式的に示す説明図である。 実施例1により得られた長繊維強化熱可塑性樹脂線状物についての、(A)略3本の強化用繊維束、(B)強化用繊維束の面積測定範囲を部分的に示すデジタルマイクロスコープ写真である。 図6の写真における、(A)未含浸部面積測定範囲、(B)未含浸部、(C)含浸部、を拡大したデジタルマイクロスコープ写真である。 本発明の長繊維強化熱可塑性樹脂線状物の他の実施の形態を示す模式断面図である。 長繊維強化熱可塑性樹脂線状物の曲げ加工用成形型の説明図である。
以下、本発明の長繊維強化熱可塑性樹脂線状物について、図1及び図5等を参照して説明する。なお、本発明において、図面は、本発明の技術思想を説明するためのものであり、各構成部材及び部材間の寸法上のバランスや、構成要素等が図面に表わされたものに限定されることはない。
図1に製造工程を略示するように、本発明の長繊維強化熱可塑性樹脂線状物は、長繊維状強化用繊維束Fに溶融押出機Eから溶融した熱可塑性樹脂を押出して接触させ、さらに熱可塑性樹脂で被覆し、冷却固化して長繊維強化熱可塑性樹脂線状物(以下、「FRTP線状物」と称することがある。)100として引取装置4で引き取られて製造される。得られる長繊維強化熱可塑性樹脂線状物としては、図5(A)で実施例1による断面の例を略示するように、熱可塑性樹脂であるマトリックス樹脂Mからなる海Sと、長繊維状強化用繊維束F(以下、単に「強化用繊維束」、「強化用繊維」と称することがある。)からなる島Iとで構成される長繊維強化熱可塑性樹脂線状物101(実施例1では、その外径から「FRTPロッド」と称している。)等を例示できる。本発明のFRTP線状物において、島Iを構成する強化用繊維束Fは、フィラメント状の単繊維が複数本集合されて束状の単位とされたものであり、長手方向に直交する断面において、図7(C)に示すように、熱可塑性樹脂であるマトリックス樹脂Mが強化用繊維の単繊維間に含浸している含浸部Fiと、図7(B)に示すように未含浸の未含浸部Fn-iとを有している。また、強化用繊維束の集合(収束)本数によって、FRTP線状物の島の数は調整できるが、本発明においては、分離ガイドへの挿通作業性や、FRTP線状物の熱賦形加工後の直線性(偏奇回避性)等の観点から、島の数は3個以上50個以下であり、好ましくは5〜40個、さらに好ましくは15〜30個である。
なお、本発明において、「繊維束」の用語は、主として島を構成するために分離配置して使用される繊維の単位を指称し、最小単位はマルチフィラメントの束としての1本の場合であり、単繊維フィラメントの集合体の単位の意味で「繊維束」と呼称しているものである。繊維束がさらに集合した場合は、「繊維束群」を用いることとするが、「繊維束」を、単に「繊維」と称する場合もあるものとし、これらの用語の違いによって、字義通りに限定的に解釈されることはないものとする。また、「島」とは繊維束又は繊維束群がひとつの集合体として密集した領域を示し、「密集」とは単繊維同士が互いに接触している状態か、又は接触せずとも極めて近距離に隣接している状態で存在していることを示し、本発明のFRTP線状物の断面全体を眺めたときに、海であるマトリックス樹脂の存在をもって別の島との間の距離の大きさから、視覚的に認識される状態を意味するものとする。
また、本発明のFRTP線状物において、島を構成する強化用繊維の全断面積S0に対する未含浸部の全面積Sn−iの割合、〔(Sn−i/S0)×100〕が90%以上であることが、FRTP線状物の曲げ加工性(熱賦形性)の観点から好ましく、90〜98%であることがさらに好ましく、90〜97%であることが特に好ましい。
強化用繊維において、かかる比率の含浸部を有するFRTP線状物は、以下に述べる、本発明の長繊維強化熱可塑性樹脂線状物の製造方法によって得ることができる。
すなわち、本発明の長繊維強化熱可塑性樹脂線状物の製造方法は、
(1)所要本数の長繊維状強化用繊維束を、クリールより引出し、熱可塑性樹脂の溶融押出機のクロスヘッドに装着される分離ガイド、溶融樹脂含浸部及び収束ガイドを備えるガイド芯金に挿通し、これをクロスヘッドダイに装着して、次いで押出ノズルを備えるダイ、冷却槽、及び引取装置迄導く、長繊維状強化用繊維束群の予備引出し工程(以下、「予備引出し工程」と称する。)、
(2)前記引取装置を駆動して、該長繊維状強化用繊維束群を所定速度で引取りながら、該溶融押出機を駆動して、該クロスヘッドに該熱可塑性樹脂を供給して、ガイド芯金の溶融樹脂含浸部及びダイ内において分離状の各該強化用繊維束を溶融状熱可塑性樹脂と接触させて、各強化用繊維束に熱可塑性樹脂を部分的に含浸させ、引き続き収束ガイドを経て、所定の断面形状の押出ノズルを備えるダイにて加圧下に押出被覆する工程(以下、「部分含浸、被覆工程」と称する。)、
(3)押出被覆された線状物を冷却固化し、引取る工程、
を有している。
以下、各工程について順次説明する。
<予備引出し工程>
以下、図1及び図4により説明する。図1に示すように所要本数の長繊維状強化用繊維束Fを、クリール1より引出し、マトリックス樹脂Mとなる熱可塑性樹脂を強化用繊維束Fに含浸、被覆する溶融押出機Eのクロスヘッドダイ部2に導くが、先ず、定常の製造状態としては、図4(C)に示すように、ガイド芯金20に保持された分離ガイド201と収束ガイド202の間に形成される溶融樹脂含浸部203に強化用繊維束Fを案内する前段階として、所要本数に対応した孔数を有する図2に示す分離ガイド201の各孔に強化用繊維を導通する。次いで、それらを収束して、収束ガイド202の中央の透孔に通した状態で、図3に示す半割り状の一方のガイド芯金20の内周面に設けられた固定溝204、205に分離ガイド201及び収束ガイド202を嵌入し、他方の半割り状ガイド芯金の相対する溝とも合致させて、内部に強化用繊維束Fが配列された円筒状ガイド芯金20を図4(A)に示すように、クロスヘッドダイ部2の上流側に準備し、かつ、収束ガイド202を通した収束強化用繊維束F群は、押出ノズル23を通して、引取装置4側へ導出可能としておく。
次いで、図4(B)に示すように、ガイド芯金20をクロスヘッドダイ部2のサヤ芯21のフランジ211に装着する。クロスヘッドダイ部2へのガイド芯金20の装着は、サヤ芯21のフランジ211の取り付ネジ孔(図示省略)に、図3に示すガイド芯金20のフランジ206に設けられた取付孔207に通したボルトを螺着させることにより行われる。なお、フランジ206のネジ孔210は、使用後にサヤ芯からガイド芯金を取外す際に用いるものである。
クロスヘッドダイ本体22に装着されたガイド芯金20及び押出ノズル23から導出された収束強化用繊維束F群は、冷却水槽3、引取装置4に案内され、引取装置の駆動により連続的に走行可能な状態とする。
<強化用繊維束への部分含浸、被覆工程>
次いで、引取装置4を駆動して、収束された長繊維状強化用繊維束F群を所定速度で引取りながら、溶融押出機を駆動して、図4(C)に示すように、クロスヘッドダイ部2に熱可塑性樹脂を供給して、ダイ内樹脂流路223からガイド芯金20の溶融樹脂含浸部203に溶融状熱可塑性樹脂を流入させ、分離状の各強化用繊維束Fを溶融状熱可塑性樹脂と接触させて、または接触の上、各強化用繊維束Fに熱可塑性樹脂を部分的に含浸させ、引き続き収束ガイド202を経て、ダイ内樹脂流路223、及び所定の断面形状を有する押出ノズル23の孔部内において溶融樹脂を加圧下に押出被覆する工程を経て、冷却,引取の次工程に供される。
(ガイド芯金の溶融樹脂含浸部)
本発明の長繊維強化熱可塑性樹脂線状物の長手方向に直交する断面において島成分を構成する強化用繊維束Fに、マトリックス樹脂が含浸していない未含浸部を形成するには、図4(C)に示すように、溶融樹脂が充填されたガイド芯金20において、分離ガイド201に挿通された強化用繊維束Fを溶融樹脂含浸部内の含浸始点203Sより分離状で走行させ、収束ガイド202の壁面側を溶融樹脂含浸部内の含浸終点203Eとする溶融樹脂含浸部203で、強化用繊維束Fの外周部等に樹脂が保持された状態とし、最終的に複数本の強化用繊維束Fを収束ガイド202によりいわば絞り成形して、各強化用繊維束Fの主として外周部に含浸部Fiが形成され、強化用繊維束の内部には未含浸部Fn−iが形成される。
なお、ガイド芯金20の溶融樹脂含浸部203への溶融樹脂の充填は、図4(C)に溶融樹脂の流れを矢印で示しているように、溶融押出機から供給される樹脂はクロスヘッドダイ内の樹脂流路221、傾斜部樹脂流路222、含浸部向き樹脂流路223を通じて、収束ガイド202に向かって連続的に供給され、定常運転時には、強化用繊維束Fによる樹脂の持ち出しと、供給の収支がバランスするように、溶融押出機の押出量が制御される。
ガイド芯金20の溶融樹脂含浸部203への収束ガイド202側からの樹脂の導入は、図2(B)に示す収束ガイド202において、透孔となっている3個の肉抜き部208、及びガイド芯金の強化用繊維束Fの挿通下流域に位置する収束ガイド用溝に交差して全周に4個設けられている強化用繊維束Fの挿通方向に長さが長いスリット状の樹脂流入孔209(図3参照)から行われる。
また、溶融樹脂含浸部の容積は、ガイド保持用溝204、205を複数設けることによって、強化用繊維束との接触長さ(時間)を微調整できる構成として、溶融樹脂の粘度等に応じて、強化用繊維束へのマトリックス樹脂の含浸度合いを調整することができる。
<冷却,引取り工程>
図1に示すように、押出被覆された線状物を、冷却水を入れた水冷槽3に導いて冷却しつつ、引取装置4により引取り、FRTP線状物が得られ、次いで、適宜、巻取りボビン等(図示省略)に巻取られ、もしくは切断機等で所定の長さに切断される。
<長繊維強化熱可塑性樹脂線状物(FRTP線状物)の強化用繊維(束)へのマトリックス樹脂の含浸状態>
本発明のFRTP線状物は、島Iを構成する強化用繊維(束)Fは、長手方向に直交する断面において、該マトリックス樹脂が含浸している含浸部Fiと、該マトリックス樹脂が未含浸の未含浸部Fn−iとを有している。本発明においては、線状物の長手方向に直交する断面における島の全断面積S0に対する未含浸部の全断面積Sn-iの割合が90%以上であることが、曲げて熱賦形がし易い等の特性を有する観点から好ましい。
(FRTP線状物の断面観察及び未含浸率の算出)
本発明のFRTP線状物について、強化用繊維(束)へのマトリックス樹脂の未含浸率は以下の手順で求める。
(i)FRTP線状物を長手方向に直交する方向で長さ1cm程度に切断し、切断面が上になるように、デジタルマイクロスコープ(キーエンス製、製品名:VHX‐5000)の台上に粘土等で固定する。
(ii)倍率200倍として、反射光でサンプルを観察し、強化用繊維束(島)の数を数え、各繊維束を撮影する(図6(A)参照)。
(iii)デジタルマイクロスコープに内蔵されている面積算出機能を用いて、撮影した強化用繊維束の外側に存在する単糸をたどって多角形とした図形を指定し(図6(B)参照)、その面積を算出する(繊維束面積:S0)。
(iv)マトリックス樹脂が入り込んでいない部分をたどった多角形の面積を測定する(未含浸部面積:Sn-i)(図7(A)参照)。なお、含浸部は、単糸の周りにマトリックス樹脂が入り込み、単糸同士の間隔が広がっているのに対し、未含浸部は単糸が隙間なく詰まっているので、この違いをもとに未含浸部を指定する(図7(B)、(C)参照)。
(v)島を1区画として、その繊維束における樹脂の未含浸率を、下記の式により算出する。
〔(未含浸部面積)/(島の断面積)〕×100
(vi)FRTP線状物の全強化用繊維束(島)の50%の本数について上記の測定を行い、その平均をもって含浸率とする。
また、本発明においては、強化用繊維におけるマトリックス樹脂の未含浸部の割合が0%である長繊維強化熱可塑性樹脂線状物の曲げ強度をB0(MPa)、曲げ弾性率をM0(MPa)とし、長繊維強化熱可塑性樹脂線状物の曲げ強度をBi(MPa)、曲げ弾性率をMi(MPa)としたときに、次式(2)、(3)の関係を満足する長繊維強化熱可塑性樹脂線状物とすることができる。
(Bi/B0)×100=40〜70% (2)
(Mi/M0)×100=45〜85% (3)
長繊維強化熱可塑性樹脂線状物の曲げ強度及び曲げ弾性率が未含浸部の割合が0%、すなわち、マトリックス樹脂が完全に含浸している場合と比較して、曲げ強度が40〜70%で、曲げ弾性率が45〜85%であれば、熱賦形性と機械的物性を備えた長繊維強化熱可塑性樹脂線状物として好適である。
以下に、本発明のFRTP線状物に用いられる材料について説明する。
(強化用繊維束)
本発明のFRTP線状物の強化用繊維束に用いられる繊維としては、特に限定されないが、ガラス繊維、炭素繊維等の融点のない無機繊維や、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリアミド繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維等の熱可塑性樹脂からなる長繊維状の熱可塑性繊維が用いられる。汎用されていることによる生産コストの観点からポリエチレンテレフタレート繊維やポリプロピレン繊維が有利に選択できる。熱可塑性繊維の融点(Tfm)は、マトリックス樹脂の融点(Tmx)より高い必要がある。低いと押出ダイ内部で繊維が溶融して、切れてしまう恐れがある。これらの融点差 Tfm −Tmx は、概ね20℃以上であることが好ましい。
本発明のFRTP線状物の強化用繊維(束)には、単繊維繊度が1.5dtex〜30dtexの繊維を80f〜1000f集束してなるマルチフィラメントを用いることが好ましい。
単繊維繊度が1.5dtex〜30dtexの範囲であれば、得られるFRTP線状物の引張強度が満足でき、また製造工程での強化用繊維束の取り扱いにおいて困難性もない。
また、本発明においては、強化用繊維束には、長繊維による連続繊維状であるマルチフィラメントであって、前記の単繊維繊度のものを、フィラメント数が80f〜1000fの範囲で集束されたものを好適に使用することができる。フィラメント数が80f〜1000fの範囲であれば、クリールからの引出し時にケバが発生したり、マトリックス樹脂の未含浸率の調整がし難い等の問題の発生がなく用いることができる。
(マトリックス樹脂)
海成分のマトリックス樹脂として用いられる熱可塑性樹脂は、特に限定されないが、強化用繊維束Fに用いる熱可塑性繊維の融点又は軟化点よりも低い融点を有する熱可塑性樹脂から選択される。より具体的には、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブチレン等のポリオレフィンや、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリエチレンナフタレート(PENp)、液晶ポリエステル等のポリエステル系樹脂や、スチレン系樹脂、ウレタン樹脂、ポリオキシメチレン(POM)、ポリアミド(PA)、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、変性PPE、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリスルホン(PSU)、変性PSU、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリケトン(PK)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリアリレート(PAR)、ポリエーテルニトリル(PEN)、フェノール系樹脂およびフェノキシ樹脂が挙げられる。また、熱可塑性樹脂は、上記の樹脂の共重合体や変性体および/または2種類以上ブレンドした樹脂などであってもよい。これらの中でも成形性および軽量性の観点から、該強化用繊維の融点又は軟化点よりも20℃以上低い融点を有するポリオレフィン系樹脂が好ましく、例えば、ポリプロピレン樹脂が特に好ましい。
また、熱可塑性樹脂は、強化用繊維束への含浸性の観点から、メルトフローレイト(MFR)(230℃、21.18N荷重)が20〜100 g/10minの範囲であることが好ましい。
MFRが20 g/10min以上であれば、強化用繊維束への含浸が可能で、強化用繊維束同士が一つに纏まる傾向も少なく、強化用繊維束による補強効果が発現される。また、MFRが100 g/10min以下であれば、樹脂の物性が低下も少なく、FRTP線状物の曲げ加工に際して、折れ易くなることもない。
マトリックス樹脂として用いられる熱可塑性樹脂には、必要に応じて、タルク等の無機充填材、難燃剤、導電性付与剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、熱安定剤、帯電防止剤、着色剤、顔料、染料等を配合してもよい。
<FRTP線状物の断面形状等>
FRTP線状物の断面形状としては、真円とは限らず、楕円、凹凸のある形など様々な形をとりうる。例えば、図8には、FRTP線状物は、島としての強化用繊維束Fを外周側に5個(本)、中央部に1個(本)配した場合を示している。
また、FRTP線状物の断面における、繊維束の断面形状としては、図6(A)に外周側の部分断面を示しているように、真円とは限らず、楕円、多角形などをとり得る。
さらに、FRTP線状物の断面における、島(繊維束)の分布は均一とは限らないが、FRTP線状物断面の中心を基準になるべく点対称であることが好ましい。断面における繊維束分布に極端な偏りがあると、先述のようにFRTP線状物を曲げる向きによって曲がりやすさが変わり、扱いづらくなるだけでなく、特定の方向に折れやすくなる恐れがある。
また、繊維束どうしは必ずしもマトリックス樹脂によって明確に分かれているとは限らず、隣どうしが部分的に接触していても構わない。
島(繊維束)の数は3以上50以下である必要がある。これより少ないと比較例1のように曲げた際に折れやすくなってしまい、これより多いと比較例2のように熱賦形性が下がってしまう。
島(繊維束)の大きさは均一とは限らず、最大の島面積が最小の島面積の5倍程度あってもよい。すなわち、繊維束の繊度が異なるもの、繊維束の種類が異なるものを使用してもよい。
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例になんら限定されるものではない。
実施例及び比較例の評価は以下の手順、測定方法等により行った。
(強化用繊維の体積含有率)
得られたFRTP線状物(ロッド)の強化用繊維の体積含有率(Vf)%は、次式(2)を用い、ポリエチレンテレフタレートの密度を1.38g/cmとして計算した。
Vf(%)=(繊度[dtex]/1000000/密度[g/cm]×本数)/FRTP断面積[cm]×100 (2)
(FRTP線状物(ロッド)の断面観察及び未含浸率の算出)
得られたFRTPロッドの断面観察は前述の方法、すなわち、FRTPロッドの断面をマイクロスコープを用いて、倍率200倍で観察した。また、繊維束における樹脂の未含浸率も前述の方法により算出した。
(常温曲げ加工性評価)
得られたFRTP線状物(ロッド)を長さ30cmにカットし、曲げ半径5cm、4cm及び3cmで90°に屈曲させた状態で常温(室温)にて保持し、折れ、ひび割れ等の破損の有無を観察した。折れ、ひび割れ等の破損が発生しない曲げ半径を最小曲げ半径とした。
(熱賦形性評価)長さ30cmのFRTPロッドを、専用の治具型を用いて曲げ半径5cmで直角に屈曲させた状態で150℃のオーブンに1分間置いた後、常温下に治具ごとに取り出し、1分間置いた後、冶具からFRTPロッドを取り外し、すぐさま分度器でFRTPロッドの曲がった角度を測定した。
(三点曲げ試験)JIS K7017に準ずる形で、試料長120mm、支点間64mm、圧子及び支持台半径5mm、ロードセル50kg、試験速度5mm/min、n=5にて三点曲げ試験を行った。
実施例1
(予備引出工程)
強化用繊維束Fとして、1670dtex/144fのポリエチレンテレフタレートマルチフィラメント(東レ製、単繊維繊度11.6dtex)25本を、円形の金属プレートに直径1mmの25個の孔があけられた分離ガイド201の一個の孔に1本ずつ通し、続いて25本の繊維全てを、円形の金属プレートに直径2.5mmの孔が1個中央にあけられた収束ガイド202に通した。
次いで、強化用繊維束Fを通した分離ガイド201及び収束ガイド202を、クロスヘッドダイ内部に取り付けるための半割り状の一方のガイド芯金の溝204、205に嵌め、相対する他方の半割り状のガイド芯金と重ね合わせて円筒状のガイド芯金20とし、収束ガイドに通した強化用繊維束群をダイス先端に取着された直径3.2mmの円形押出ノズル23に通した上で、ガイド芯金(ガイドホルダー)20をクロスヘッドダイ本体2の後方へ取り付けた。
(FRTPロッドの成形)
押出ノズルを通した強化用繊維束群を、冷却水槽3を通した上で、ベルト式引取装置4を用いて3m/minの速度で引取りながら、溶融押出機を起動し、押出温度220℃で溶融状態のポリプロピレン樹脂(プライムポリマー製、MFR:55g/10min:230℃、21.18N)をダイ内部に供給し、強化用繊維束Fへの部分含浸をガイド芯金20及びダイ内で行い、最後に押出ノズル23により被覆して、これを冷却水を満たした冷却水槽3で冷却しつつ引取ることで直径3.4mmのFRTP線状物(ロッド)を得た。得られたFRTPロッドの断面の模式図を図5(A)に示す。
本実施例1により得られたFRTPロッドの強化用繊維の体積含有率(Vf)%は、34体積%であった。また、強化用繊維束におけるマトリックス樹脂の未含浸率は95%であり、最小曲げ半径が5cm、熱賦形後の角度は90°であり設定通りに熱賦形ができた。三点曲げ試験による曲げ強度は65MPa、曲げ弾性率は4500MPaでありFRTP部材として利用する上で問題のない物性を備えていた。これらの結果をまとめて表1に示す。
実施例2
繊維分離ガイドを直径2mmの5個の孔があけられたものに変更して、一つの孔に5本の強化用繊維束を通した以外は実施例1と同様にして、直径3.4mmのFRTPロッドを得た。得られたFRTPロッドの断面の模式図を図5(B)に示す。FRTP含有率(Vf)は34%であった。
FRTPロッドの断面をマイクロスコープ(200倍)で観察したところ、繊維束は5本確認された。樹脂未含浸率は97%、最小曲げ半径は5cm、熱賦形後の角度は90°であり設定通りに熱賦形ができた。三点曲げ試験による曲げ強度は51MPa、曲げ弾性率は3500MPaでありFRTP部材として利用する上で問題のない物性を備えていた。これらの結果をまとめて表1に示す。
実施例3
実施例1において、強化用繊維を1056dtex/91fのポリエチレンテレフタレートマルチフィラメント(東レ製、単繊維繊度11.6dtex)40本に変えて、分離ガイドを直径1mm×40孔のものに変更した以外は実施例1と同様にして、直径3.5mm、直径3.4mmのFRTPロッドを得た。得られたFRTPロッドの断面の模式図を図5(c)に示す。強化用繊維の体積含有率(Vf)%は、34体積%であった。FRTPロッドの断面をマイクロスコープ(200倍)で観察したところ、繊維束は40本確認された。樹脂未含浸率は91%、最小曲げ半径は4cmで、熱賦形後の角度は90°であり、設定通りに熱賦形できた。三点曲げ試験による曲げ強度は81MPa、曲げ弾性率は5500MPaであり、FRTP部材として利用するにあたり問題ない物性を備えていた。これらの結果をまとめて表1に示す。
比較例1
分離ガイドを直径2.5mmで1孔の収束ガイドに変更した以外は実施例1と同様にして、直径3.4mmのFRTPロッドを得た。得られたFRTPロッドの断面の模式図を図5(D)に示す。強化用繊維の体積含有率(Vf)は34%であった。FRTPロッドの断面をマイクロスコープ(200倍)で観察したところ、島としての強化用繊維束が1本確認された。強化用繊維束におけるマトリックス樹脂の未含浸率は97%であった。実施例1同様に諸項目を評価した結果、最小曲げ半径は8cmであった。また、熱賦形性を確認するため専用の冶具型を用いて、長さ30cmのFRTPロッドを曲げ半径5cmで90°に屈曲させた状態で常温にて保持したところ、FRTPロッドは、湾曲した箇所の中央部付近で断面が扁平化し、座屈して折れており、実施例と比較して曲げに対する追従性が劣っていた。
比較例2
この比較例2においては、強化用繊維を単繊維状でマトリックス樹脂中に分散させ、繊維による補強効果を最大限発現させることを目的とした。
強化用繊維束として、実施例1と同一の1670dtex/144fのポリエチレンテレフタレートマルチフィラメントを25本用い、クリールとガイド芯金の入口間で25本の各強化用繊維束(マルチフィラメント)にダンサーローラーにより1.4g/dtexのテンションを付与し、該強化用繊維束群を、厚さ2mm、幅20mmのスリット状の分散ガイドを通して、ガイド芯金20内部の溝に2本のジグザク配置した段差状の開繊バーをセット(図示省略)した溶融樹脂含浸部を走行させる一方、収束ガイドには、直径2.5mmの丸孔に変えて、幅4mm、厚さ2mmのスリットを有するガイドを用い、押出ノズル23(φ3.2mm)、水冷槽3、引取装置4まで導く、予備引出し工程を経た後は、実施例1と同様にして、直径3.4mmのFRTPロッドを得た。得られたFRTPロッドの断面の模式図を図5(E)に示す。強化用繊維の体積含有率(Vf)は34%であった。このFRTPロッドの断面をマイクロスコープで観察したところ、繊維は束状にはまとまっておらず、単糸(単繊維)が分散した状態を呈していた。単糸の間に完全に樹脂が入り込んでいるため、樹脂未含浸率は0%(100%含浸)であった。
得られたFRTPロッドを長さ30cmにカットし、図9に示す専用の冶具型を用いて曲げ半径5cmで90度に屈曲させた状態で常温にて保持したところ、折れ、ひび割れ等の破損は見られなかった。同様の試験を曲げ半径4cmで行っても破損はなく、曲げ半径3cmでの試験ではFRTPロッドは折れたので、最小曲げ半径は4cmであった。
また、熱賦形性を評価するため、長さ30cmのFRTPロッドを、専用の治具型を用いて曲げ半径5cmで直角に屈曲させた状態で150℃のオーブンに1分間置いた後、常温下に取り出して、治具からFRTPロッドを取り出し、分度器でFRTPロッドの曲がった角度を測定したところ、120°であり、設定した90°の角度から戻ってしまい、熱賦形性に劣るものであった。また、曲げ強度は126MPa、曲げ弾性率7000MPaであった。これらの物性値から本比較例2のFRTPロッドは、強化用繊維がほぼ100%の補強効果を発現しているものと思われ、熱賦形性に劣るのは、曲げ弾性率の向上等と相俟って、弾性が増して塑性変形がし難くなったためと思われる。結果を表1に示す。
本発明による長繊維強化熱可塑性樹脂線状物は、長手方向に曲げる賦形加工が容易なので、従来金属ワイヤを曲げ加工して使用されていた用途に代替できる非金属部材として有効に利用できる。また、本発明の製造方法は、熱可塑性樹脂であるマトリックス樹脂からなる海と、長繊維状強化用繊維束からなる3個以上50以下の島とで構成される断面海島構造を有する長繊維強化熱可塑性樹脂線状物を、再現性よく、安定して製造できる方法として有効に利用できる。
1 クリール
2 溶融押出機クロスヘッドダイ部
3 水冷槽
4 引取装置
20 ガイド芯金
21 サヤ芯
22 クロスヘッドダイ本体
23 押出ノズル
100 長繊維強化熱可塑性樹脂線状物(FRTP線状物)
101〜106 長繊維強化熱可塑性樹脂線状物(FRTPロッド)
201 分離ガイド
202 収束ガイド
203 溶融樹脂含浸部
203S 溶融樹脂含浸部内の含浸始点
203E 溶融樹脂含浸部内の含浸終点
204、205 ガイド保持用溝
206 フランジ
207 取付孔
208 収束ガイド肉抜(透孔)部
209 樹脂流入孔
221 ダイ内樹脂流路
222 ダイ内傾斜部樹脂流路
223 含浸部向樹脂流路
E 溶融押出機
F 長繊維状強化用繊維束
F’ 単繊維(糸)状強化用繊維
M マトリックス樹脂
S 海
I 島

Claims (8)

  1. 熱可塑性樹脂であるマトリックス樹脂からなる海と、長繊維状強化用繊維束からなる3個以上50以下の島とで構成される断面海島構造を有する長繊維強化熱可塑性樹脂線状物であって、
    該島を構成する強化用繊維は、長手方向に直交する断面において、該マトリックス樹脂が含浸していない未含浸部を有することを特徴とする長繊維強化熱可塑性樹脂線状物。
  2. 前記線状物の長手方向に直交する断面において、次式(1)で算出される、前記島の全断面積S0に対する前記未含浸部の全断面積Sn-iの割合が90%以上である、請求項1に記載の長繊維強化熱可塑性樹脂線状物。
    〔未含浸部の全断面積Sn−i/島の全断面積S0〕×100 (1)
  3. 前記強化用繊維が熱可塑性樹脂からなり、前記マトリックス樹脂が該強化用繊維の融点又は軟化点よりも20℃以上低い融点を有するポリオレフィン系樹脂である、請求項1又は2に記載の長繊維強化熱可塑性樹脂線状物。
  4. 前記強化用繊維が、単繊維繊度が1.5dtex〜30dtexの繊維を80f〜1000f集束してなるマルチフィラメントである、請求項1〜3のいずれかに記載の長繊維強化熱可塑性樹脂線状物。
  5. 前記強化用繊維がポリエチレンテレフタレート繊維である、請求項4に記載の長繊維強化熱可塑性樹脂線状物。
  6. 強化用繊維におけるマトリックス樹脂の未含浸部の割合が0%である長繊維強化熱可塑性樹脂線状物の曲げ強度をB0(MPa)、曲げ弾性率をM0(MPa)とし、長繊維強化熱可塑性樹脂線状物の曲げ強度をBi(MPa)、曲げ弾性率をMi(MPa)としたときに、次式(2)、(3)の関係を満足する、請求項1〜5のいずれかに記載の長繊維強化熱可塑性樹脂線状物。
    (Bi/B0)×100=40〜70% (2)
    (Mi/M0)×100=45〜85% (3)
  7. 熱可塑性樹脂であるマトリックス樹脂からなる海と、長繊維状強化用繊維束からなる3個以上50以下の島とで構成される断面海島構造を有する長繊維強化熱可塑性樹脂線状物の製造方法であって、
    (1)所要本数の長繊維状強化用繊維束を、クリールより引出し、熱可塑性樹脂の溶融押出機のクロスヘッドに装着される分離ガイド、溶融樹脂含浸部及び収束ガイドを備えるガイド芯金に挿通し、これをクロスヘッドダイに装着し、次いで押出ノズルを備えるダイ、冷却槽、引取装置に導く、長繊維状強化用繊維束群の予備引出し工程、
    (2)該引取装置を駆動して、該長繊維状強化用繊維束群を所定速度で引取りながら、該溶融押出機を駆動して、該クロスヘッドに該熱可塑性樹脂を供給して、該ガイド芯金の溶融樹脂含浸部及びダイ内において分離状の各強化用繊維束と溶融した熱可塑性樹脂を接触させて、各強化用繊維束に熱可塑性樹脂を部分的に含浸させ、引き続き収束ガイドを経て、所定の断面形状の押出ノズルを備えるダイにて加圧下に線状物を押出被覆する工程、
    (3)押出被覆された線状物を冷却固化し、引取る工程、
    を有することを特徴とする長繊維強化熱可塑性樹脂線状物の製造方法。
  8. 前記マトリックス樹脂に、メルトフローレート(230℃、21.18N)が20〜100g/10分であるポリプロピレンを使用する、請求項7に記載の長繊維強化熱可塑性樹脂線状物の製造方法。
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