図1は光偏向器1の概略斜視図である。光偏向器1は、MEMSの一種である。光偏向器1は、中心に回動自在に配置されるミラー部2、ミラー部2を外側から包囲する可動枠3、及び可動枠3を外側から包囲する固定枠4を備えている。
構造の説明の便宜上、X軸、Y軸及びZ軸から成る3軸座標系を定義する。3軸座標系の原点としての中心Oは、円形のミラー部2のミラー面2aの中心に設定する。X軸、Y軸及びZ軸は、中心Oにおいて相互に直交する。X軸及びY軸は、それぞれ矩形の固定枠4の長辺及び短辺に平行に設定する。Z軸は固定枠4の厚み方向に平行に設定する。
さらに、説明の便宜上、Z軸方向にミラー部2のミラー面2aが見える側を光偏向器1の正面側と定義し、さらに、光偏向器1の正面視の縦方向及び横方向がX軸方向及びY軸方向に揃うように、光偏向器1の正面視を定義する。
ミラー面2aの法線は、中心Oを通り、ミラー面2aに対して直角となる。ミラー部2は、後述の第1軸線及び第2軸線の回りに往復回動可能になっている。ミラー面2aの法線は、ミラー部2の往復回動に伴い、変動する。ただし、ミラー面2aの中心としての中心Oは、ミラー部2の往復回動中、不動を維持する。図1のミラー部2は、ミラー面2aの法線がZ軸に一致したときの状態で図示されている。
一対のトーションバー(弾性梁)5a,5bは、円形のミラー部2において正面視で縦方向の直径に沿ってミラー部2の両側から突出し、突出端において可動枠3の内周円に結合している。トーションバー5a,5bの軸線は、ミラー部2が回動する第1軸線を規定する。ミラー面2aの法線がZ軸に一致するとき、第1軸線はY軸に一致する。第1軸線の回りのミラー部2の往復回動に伴い、ミラー部2は、正面視で左右に首振りする。
内側アクチュエータ6a,6bは、正面視でミラー部2の左右に配設され、正面視で個々には半円周形状、全体で円周形状に形成されている。各内側アクチュエータ6a,6bは、上下の端部においてトーションバー5a,5bの中間部に結合している。
柄部12a,12bは、X軸に沿って延び、両端において内側アクチュエータ6a,6bの外側の半円周の中点と可動枠3の円形孔の内周円とを結合している。内側アクチュエータ6a,6bは、基板層の片面側に形成された圧電膜を有し、該圧電膜に供給されるユニポーラの駆動電圧で湾曲変形するユニポーラ型の圧電アクチュエータである。
柄部12a,12bの軸線は、第2軸線を規定する。光偏向器1の動作中、ミラー部2は、トーションバー5の軸線に一致する第1軸線の回りに往復回動するとともに、柄部12a,12bの軸線に一致する第2軸線の回りに往復回動する。
外側アクチュエータ7a,7bは、固定枠4の内側において正面視で可動枠3の左右に配設され、両端において可動枠3の外周縁と固定枠4の内周縁とに結合している。外側アクチュエータ7a,7bが可動枠3の外周縁に結合する結合点と固定枠4の内周縁に結合する結合点とは、中心OからY軸方向の−側に等しい距離離れている。外側アクチュエータ7a,7bは、基板層の片面側に形成された圧電膜を有し、該圧電膜に供給されるユニポーラの駆動電圧で湾曲変形するユニポーラ型の圧電アクチュエータである。
外側アクチュエータ7a,7bは、可動枠3をX軸の回りに往復回動させる。可動枠3がX軸の回りに往復回動することにより、ミラー部2は第2軸線の回りに往復回動する。第1軸線及び第2軸線は、共にミラー面2aを含む平面上に設定され、中心Oにおいて直交する。第2軸線は、ミラー面2aの法線がZ軸に一致したとき、X軸に一致する。
中心Oにおける第2軸線とX軸との交角は、第1軸線の回りのミラー部2の往復回動に伴い、変化する。第1軸線と可動枠3とは、X軸の回りに一体で往復回動するので、X軸の回りの可動枠3の回動角は、第2軸線の回りの第1軸線の回動角に等しく、換言すると、第2軸線の回りのミラー部2の回動角に等しくなる。
以下、トーションバー5a,5bを、特に区別しないときは、「トーションバー5」と総称する。内側アクチュエータ6a,6bを、特に区別しないときは、「内側アクチュエータ6」と総称する。外側アクチュエータ7a,7bを、特に区別しないときは、「外側アクチュエータ7」と総称する。柄部12a,12bを、特に区別しないときは、「柄部12」と総称する。
外側アクチュエータ7は、ミアンダパターンを形成するように折返し部16により結合された複数のカンチレバー15を備え、両端部において基端側結合部18及び先端側結合部19を介して固定枠4の内周及び可動枠3の外周にそれぞれ結合している。複数のカンチレバー15は、長手方向をY軸方向に揃えてX軸方向に配列されている。
図2は外側アクチュエータ7の動作説明図である。図2は、左側の外側アクチュエータ7aについて示したものであるが、外側アクチュエータ7a,7bは、正面視で左右対称の構造を有し、作動も左右対称になっている。
図2(a)はカンチレバー15の平坦状態時を示す図、図2(b)はカンチレバー15の湾曲状態時を示す図である。
図2において、説明の便宜上、カンチレバー15について、基端側結合部18側から先端側結合部19側への並び順に番号No.1〜No.4を付ける。そして、奇数番号No.1,3のカンチレバー15をカンチレバー15o(“o”はoddを意味する)で指示し、偶数番号No.2,4のカンチレバー15はカンチレバー15e(“e”はevenを意味する)で指示する。
図2(a)では、全部のカンチレバー15は平坦状態にあり、基端側結合部18及び先端側結合部19は、X軸方向の回りの回動位置を揃えている。
図2(b)では、カンチレバー15o,15eは、それぞれZ軸方向に反対向きに凸に湾曲している。カンチレバー15o,15eをZ軸方向に反対向きに凸に湾曲させるために、カンチレバー15o,15eの圧電膜には、駆動電圧が逆位相で印加される。カンチレバー15o,15eが、Z軸方向に逆側に凸に湾曲する結果、全部のカンチレバー15において、先端側端部(ミアンダパターンの経路において可動枠3側の端部)は、基端側端部(ミアンダパターンの経路において固定枠4側の端部)に対して、Z軸方向に同一側に変位する。そして、この変位量が、外側アクチュエータ7全体で蓄積されて、X軸の回りの先端側結合部19の回動量は増大する。こうして、カンチレバー15o,15eの圧電膜への逆位相の駆動電圧の供給に伴って、先端側結合部19はX軸の回りに往復回動し、可動枠3は、左右両側の先端側結合部19を介する外側アクチュエータ7の駆動力によりX軸の回りに往復回動する。
図1に戻って、電極パッド8a,8bは、固定枠4の各短辺部の表面にそれぞれ形成され、所定の配線(図示せず)を介して、内側アクチュエータ6や外側アクチュエータ7の積層構造において圧電膜の上下に形成されている各電極層と接続されている。なお、典型的には、内側アクチュエータ6及び外側アクチュエータ7の下側電極層に接続されている電極パッド8a,8bは、アース電圧に維持される。
光偏向器1は、図示していないパッケージ内に装填され、該パッケージの各端子と電極パッド8a,8bの各々とはボンディングワイヤ(図示せず)により接続される。レーザ光源14は、光偏向器1のミラー部2のミラー面2aの中心Oに向かって、該パッケージの外から光偏向器1の入射光Laを出射する。
ミラー部2は、中心Oに入射して来た入射光Laを第1軸線及び第2軸線の回りの各回動角に応じた向きで反射し、走査光Lbとして所定の照射領域に出射する。図1では、入射光Laはレーザ光源14からミラー部2に直接入射し、照射領域へ直接向かっている。実際の製品では、パッケージの外側において光学系が配設され、光路を変更している。
光偏向器1単独の作動について概略的に説明する。光偏向器1において、ミラー部2は、内側アクチュエータ6の作動によりトーションバー5の軸線(第1軸線)の回りに往復回動する。ミラー部2は、また、外側アクチュエータ7の作動により、ミラー部2のミラー面2aに含まれかつミラー面2aの中心Oにおいて第1軸線と直交する柄部12a,12bの軸線(第2軸線)の回りに往復回動する。
典型的な光走査装置25では、第1軸線の回りのミラー部2の往復回動により走査光Lbは照射領域を縦方向に走査する。また、第2軸線の回りのミラー部2の往復回動により走査光Lbは照射領域を横方向に走査する。縦方向及び横方向は、光走査装置25が例えばプロジェクタ等の画像生成装置に装備される場合には、典型的には、それぞれ鉛直方向及び水平方向に揃えられる。
例えば、第1軸線の回りのミラー部2の往復回動の周波数は18kHzであり、第2軸線の回りのミラー部2の往復回動の周波数は60Hzである。第1軸線の回りのミラー部2の往復回動には、共振が利用される。第2軸線の回りのミラー部2の往復回動には、共振は利用されず、外側アクチュエータ7の作用力のみが利用される。
図3は光走査装置25のブロック図である。光走査装置25は、例えば、映像機器、プロジェクタ、又は車両前照灯等に装備される。光走査装置25は、光偏向器1、レーザ光源14及び制御装置27を備える。
レーザ光源14は、前述した内側アクチュエータ6a,6b及びカンチレバー15o,15eの他に、共振振れ角センサ30及び非共振振れ角センサ31を有する。共振振れ角センサ30及び非共振振れ角センサ31は、図1に図示されていない。典型的には、共振振れ角センサ30は、内側アクチュエータ6a,6bの一方に設けられ、非共振振れ角センサ31は、外側アクチュエータ7a,7bの一方の複数のカンチレバー15のうちの1つのカンチレバー15に設けられる。
共振振れ角センサ30及び非共振振れ角センサ31の具体的な構造は次のとおりである。内側アクチュエータ6やカンチレバー15等において共通の基板層の表面側(Z軸方向+側)に形成された圧電膜がスリットで分離される。分離された圧電膜の一方は、そのまま圧電アクチュエータの圧電膜として作用する。他方は、共振振れ角センサ30又は非共振振れ角センサ31となって、歪みを検出する圧電センサとして、基板層の湾曲変形量を検出するようになっている。基板層の湾曲変形量の増大に連れて、第1軸線及び第2軸線の回りのミラー部2の回動角は増大する。
制御装置27は、レーザ光源14のオンオフ(点灯及び消灯)と共に、レーザ光源14の通電流を制御する。入射光La(図1)の強さは、レーザ光源14の通電流に関係する。制御装置27は、内側アクチュエータ6a,6b及びカンチレバー15o,15eに供給する駆動電圧を生成する。制御装置27から内側アクチュエータ6a,6bに供給される駆動電圧は、相互に逆位相になる。制御装置27からカンチレバー15o,15eに供給される駆動電圧も相互に逆位相になる。
制御装置27は、共振振れ角センサ30からの検出電流に基づいて第1軸線の回りのミラー部2の回動角及び往復回動周波数を検出する。制御装置27は、また、非共振振れ角センサ31からの検出電流に基づいて第2軸線の回りのミラー部2の回動角及び往復回動周波数を検出する。制御装置27は、第1軸線及び第2軸線の回りのミラー部2の検出回動角及び往復回動周波数をフィードバック信号として使用して、内側アクチュエータ6及び外側アクチュエータ7の駆動電圧をフィードバック制御する。
図4は、外側アクチュエータ7のカンチレバー15のユニポーラ駆動電圧(以下、単に「駆動電圧」という)を示している。以下、内側アクチュエータ6の駆動電圧と外側アクチュエータ7の駆動電圧とを区別するために、外側アクチュエータ7の駆動電圧は「駆動電圧Vin」で指示する。図4において、横軸は駆動電圧Vinの位相を示し、縦軸は駆動電圧Vinの値を示している。
図4の駆動電圧Vinは、周期振動電圧Vpeにオフセットバイアス電圧Vbを重畳したものであるが、後述の線形性補正電圧Vli(具体的には後述の二次高調波電圧Vks。ただし、Vli=+Vksのときと、Vli=−Vksのときがある)を含んでいないものである。すなわち、Vin=Vpe+Vbである。この実施形態では、Vb=0Vは、VinがVliを含むか含まないかに関係なく、駆動電圧Vinの最小値を0Vにするオフセットバイアス電圧として定義する。
図4の例では、周期振動電圧Vpeは、振幅が20Vで、周波数が60Hzである正弦波に設定される。また、オフセットバイアス電圧Vbは、0Vである。
図5は、外側アクチュエータ7の駆動電圧Vinが図4の駆動電圧Vin、すなわち線形性補正電圧Vliを含まないときの該駆動電圧Vin(=Vpe+Vb)とミラー部2の回動角Aroとの関係を示すグラフである。なお、Vb=0Vであるので、実質的にはVin=Vpeである。「理想応答特性」とは、外側アクチュエータ7の駆動電圧Vinを変化させた場合に、ミラー部2の回動角Aroが理想的に変化するときの駆動電圧Vinと回動角Aroとの関係と定義し、理想応答特性は直線となる。
以下、回動角Aro=0°は、オフセットバイアス電圧Vbに関係なく、周期振動電圧Vpeが最小値になる時の第2軸線の回りのミラー部2の回動角と定義する。周期振動電圧Vpeの増大に伴い、ミラー部2が正面視で下向きから上向きに変化するものとすると、駆動電圧Vinが最小値である時、ミラー部2が正面視で最も下向きになっている。
実際の製品としての光偏向器1では、駆動電圧Vinの最小値及び最大値が、回動角Aroの最小値及び最大値に合わせられる。したがって、駆動電圧Vinの制御範囲の両端における回動角Aroは、理想応答特性上に存在する。しかしながら、駆動電圧Vinの制御範囲の中間における実際の回動角Aroは、理想値から低い方へずれる。図5の特性では、駆動電圧Vin=20Vのときに、すなわち、ミラー部2が真正面を向いた時に、実際の回動角Aroと理想値の回動角との差が最大値(以下、「最大線形誤差」という。)になっている。
図6は、オフセットバイアス電圧Vbが図4のオフセットバイアス電圧Vbとは異なる別の駆動電圧Vinの波形図である。図6に図示されている2つの駆動電圧Vinに含まれるオフセットバイアス電圧Vbはそれぞれ10V,20Vである。該2つの駆動電圧Vinには、図4の駆動電圧Vinと同様に、線形性補正電圧Vliは含まれておらず、Vin=Vpe+Vbであり、駆動電圧Vinに含まれる周期振動電圧Vpeは、振幅が20Vで周波数が60Hzの正弦波となっている。
このように、駆動電圧Vinに含まれる周期振動電圧Vpeは、振幅が20Vで周波数が60Hzの正弦波で共通にしつつ、オフセットバイアス電圧Vbを変更して、種々の駆動電圧Vinを設定することができる。なお、オフセットバイアス電圧Vbの値に関係なく、駆動電圧Vinがその平均値にあるときに対して、ミラー部2は正面視で第2軸線の回りの往復回動角の中心位置、換言すると、上下方向の首振り回動角の中心位置に設定される。
図7は、オフセットバイアス電圧Vbをパラメータとして駆動電圧Vinとミラー部の回動角Aroとの関係を示したグラフである。図7の各駆動電圧Vinは、線形性補正電圧Vliを含んでおらず、Vin=Vpe+Vbである。
図7のグラフから、駆動電圧Vinと回動角Aroとの関係の線形性は、オフセットバイアス電圧Vbが0V,3.5V,10V,20V,30Vと、高くなるに連れて、改善されていくこと、すなわち駆動電圧Vinと回動角Aroとの関係は、理想応答特性に近づいていくことが分かる。
図8は、駆動電圧Vinに含めるオフセットバイアス電圧Vbと最大線形誤差との関係を示すグラフである。図8では、Vin=Vpe+Vbとして、オフセットバイアス電圧Vbと最大線形誤差との関係が調べられた。駆動電圧Vinが含む周期振動電圧Vpeは、オフセットバイアス電圧Vbに関係なく、振幅が20Vで周波数が60Hzの正弦波としている。
図8のグラフから、最大線形誤差は、オフセットバイアス電圧Vbの増大に連れて、減少していくことが分かる。また、図7及び図8のグラフから、駆動電圧Vinに含めるオフセットバイアス電圧Vbを増大すれば、駆動電圧Vinと回動角Aroとの線形関係が改善されることが推測できる。
しかしながら、ここで問題が生じる。外側アクチュエータ7のカンチレバー15に形成する圧電膜の耐電圧を考慮する必要があることである。すなわち、該圧電膜に、耐電圧以上の駆動電圧Vinを印加すると、該圧電膜が絶縁破壊等により損傷する。一方、駆動電圧Vinを耐電圧以下に保持しつつ、オフセットバイアス電圧Vbを増大する場合には、オフセットバイアス電圧Vbの増大分に応じて周期振動電圧Vpeの振幅を減少させる必要がある。しかしながら、周期振動電圧Vpeの振幅の減少は、回動角Aroの回動角範囲の減少につながり、好ましくない。
本発明者は、オフセットバイアス電圧Vbを増大することなく、すなわち、回動角Aroの回動角範囲を十分に確保しつつ、駆動電圧Vinと回動角Aroとの関係の線形性を改善する知見を得た。以下、その知見について、詳説する。
図9は、図4のユニポーラの駆動電圧Vin(=Vpe+Vb)とその線形性補正電圧Vliとしての二次高調波電圧Vksとの関係を示す図である。図9において、横軸は駆動電圧Vinの位相(=二次高調波電圧Vksの位相の1/2の位相)を示し、縦軸は駆動電圧Vin及び二次高調波電圧Vksを示す。
ここで、二次高調波電圧Vks、フーリェ級数展開周波数成分、第1倍周波数成分、第2倍周波数成分及びフーリェ級数展開正弦波成分について説明する。
周期関数としての周期振動電圧Vpeは、フーリェ級数で展開したフーリェ級数展開周波数成分で表わすことができる(例:後述の(式2)及び(式4a))。周期振動電圧Vpeが奇関数である場合は、周期振動電圧Vpeは、フーリェ級数展開正弦波成分のみで表わすことができる(例:後述の(式2))。また、周期振動電圧Vpeが、偶関数か、奇関数と偶関数とを重ね合わせた関数であっても、余弦波は、π/2の位相変更により、同一周波数の正弦波に置き換えることができる。したがって、すべての周期振動電圧Vpeは、フーリェ級数展開正弦波成分で表わすことができる。
また、周期振動電圧Vpeをフーリェ級数で展開したフーリェ級数展開周波数成分で表わしたときに、フーリェ級数展開周波数成分に対し周波数が2倍で振幅が所定比である第1倍周波数成分を定義することができる。さらに、第1倍周波数成分に対し、位相を位相変更定数θで変更した第2倍周波数成分を定義することができる。
第2倍周波数成分の例は、後述の(式1a)のζ*sin(2t−π/2)、(式1b)のζ*sin(2t+π/2)、及び(式3a)のζ*[・・・]である。第1倍周波数成分の例は、(式1a)、(式1b)及び(式3a)における第2倍周波数成分としての各正弦波成分から位相変更定数θとしての±π/2を取り除いたものとなる。
なお、本実施形態でsin(t)及びsin(2t)等において使用しているtは、時間そのものではなく、時間をt'(t'の単位は秒)とし、周期振動電圧Vpeの周波数を60Hzとしたときに、t=120πt'を意味するものとする。すなわち、tは、120πt'を簡略表記したものとして定義する。
また、(式1a)のζ*sin(2t−π/2)は、θ(=−π/2)<0の例であり、第1倍周波数成分に対する第2倍周波数成分位相を遅らせた例である。(式1b)のζ*sin(2t+π/2)は、θ(=π/2)>0の例であり、第1倍周波数成分に対する第2倍周波数成分位相を進ませた例である。
線形性補正電圧Vliは、駆動電圧Vinと回動角Aroとの線形性を向上させるための補正電圧として、第2倍周波数成分に基づいて設定される。また、周知のように、π/2の位相変更により余弦波を正弦波に置き換えることができる。したがって、余弦波成分のみの倍周波数成分又は余弦波成分と正弦波成分とが混在する倍周波数成分は、第2倍周波数正弦波成分のみで表わすことができる。
周期振動電圧Vpeが、図4のように、単一の正弦波(=20sin(t))から成るときは、該周期振動電圧Vpeをフーリェ級数展開しても、フーリェ級数展開周波数成分は、該単一の正弦波(=20sin(t))のみとなる。二次高調波電圧Vksとは、該単一の正弦波(=20sin(t))に対して、周波数が2倍で振幅が所定比となる第1倍周波数成分に対し、該第1倍周波数成分の位相をπ/2遅らせた第2倍周波数成分に相当する。周期振動電圧Vpeが単一の正弦波であるときは、第2倍周波数成分は、1つしか存在せず、第2倍周波数成分としての二次高調波電圧Vksは1つしか存在しない。
図9の例では、周期振動電圧Vpeとしての単一の正弦波としての20sin(t)に対し、二次高調波電圧Vksは、Vks=2sin(2t−π/2)と定義される。二次高調波電圧Vksは、一般的に表すと、Vks=ζ*20sin(2t+θ)であり、Vks=ζ*20sin(2t−π/2)は、θ=−π/2の例である。「*」は乗算を意味する。振幅比ζは、ζ=Vksの振幅/Vpeの振幅で定義され、図9の例では、ζ=0.1である。周期振動電圧Vpeの振幅は20Vであるので、二次高調波電圧Vksの振幅は2Vになる。
図10は、二次高調波電圧Vksを含めた駆動電圧Vinで外側アクチュエータ7のカンチレバー15の圧電膜を駆動したときの二次高調波電圧Vksの振幅比と全高調波歪率との関係を示したグラフである。なお、図10の例において使用した周期振動電圧Vpeは、Vpe=20sin(t)であり、振幅が20V、周波数が60Hzの正弦波である。
図10の縦軸の全高調波歪率とは、光偏向器1の外側アクチュエータ7のカンチレバー15を駆動電圧Vin(=Vpe−Vks+Vb)で駆動したときに定義される。このとき、第2軸線の回りのミラー部2の実際の往復回動をフーリェ級数展開し、このフーリェ級数展開したものから二次以上の正弦波成分(高調波成分)を抽出し、抽出した高調波成分のエネルギ量が、実際の往復回動全体のエネルギに占める割合が全高調波歪率である。なお、フーリェ級数展開したものに含まれている一次の正弦波成分は、第2軸線の回りのミラー部2の歪んでいない振動成分である。
図10では、駆動電圧Vinは、Vin=Vpe−Vks+Vbとしているが、これは、Vin=Vpe+Vli+Vbにおいて、Vli=−Vksの例である。該Vksは、図9で説明したVksと同様に、Vks=ζ*20sin(2t−π/2)で表わされる。位相変更定数θについては、図10では、どのVinのVksにおいても一律に、θ=−π/2に設定している。θ=−π/2は、第1倍周波数成分から第2倍周波数成分への位相変更が位相を遅らせる変更であるので、Vli=−Vksとなる。なお、Vin=Vpe+Vks+Vbは、Vksを、その符号を反転しないで、線形性補正電圧Vli(=Vks)としている例である。
図10において、ζ=0は二次高調波電圧Vksの振幅=0を意味する。したがって、ζ=0の時の駆動電圧Vinは、従来の駆動電圧Vinと同じ、Vin=Vpe+Vbとなる。ζの増大に連れて、駆動電圧Vinに占める二次高調波電圧Vks(線形性補正電圧Vli)の割合の増大を意味する。
図10から、オフセットバイアス電圧Vbが増大するに連れて、全高調波歪率が低下することが分かる。また、二次高調波電圧Vks(=ζ*20sin(2t−π/2))のζを、ζ=0から徐々に増大するに連れて、全高調波歪率が徐々に低下し、全高調波歪率が、オフセットバイアス電圧Vbに応じて決まる所定値に達すると、それ以降の増大に対しては、全高調波歪率が下降から上昇に切り替わることが分かる。なお、全高調波歪率の低下は、駆動電圧Vinに対する回動角Aroの線形性が改善されていることを意味する。
図10から、オフセットバイアス電圧Vbを増大する代わりに、二次高調波電圧Vksを、その振幅比ζを調整して周期振動電圧Vpeに重畳することによって、駆動電圧Vinに対する回動角Aroの線形性を改善できることが分かる。
製品としての光偏向器1では、最大線形誤差は0.05〜0.1°以下にする必要がある。最大線形誤差=0.1°は、図10のグラフでは、全高調波歪率=2%に相当する。図10から、オフセットバイアス電圧Vb≧20Vにすれば、全高調波歪率≦2%がほぼ達成されることが分かる。さらに、オフセットバイアス電圧Vb=10Vであっても、ζ=4〜9%にすれば、全高調波歪率≦2%がほぼ達成されることが分かる。ただし、オフセットバイアス電圧Vb=3.5V以下である場合は、ζをいくら増大しても、全高調波歪率≦2%の達成は困難であることが分かる。
前述したように、オフセットバイアス電圧Vbを増大するほど、駆動電圧Vinに対する回動角Aroの線形性が改善されるが、駆動電圧Vinが外側アクチュエータ7のカンチレバー15の圧電膜の耐電圧を越えることは許されない。したがって、オフセットバイアス電圧Vbを増大した分、周期振動電圧Vpeの振幅を低減する必要がある。周期振動電圧Vpeの振幅の低減は、回動角の制御範囲の低減につながるので、好ましくない。
実施形態の光走査装置25では、オフセットバイアス電圧Vbを、Vb≧20Vにする代わりに、Vb=10Vにして、ζ=4〜9%にする。これにより、第2軸線の回りのミラー部2の回動角の制御範囲を十分に確保しつつ、駆動電圧Vinに対する第2軸線の回りのミラー部2の回動角の線形性を改善することができる。
図11は二次高調波電圧Vks(=ζ*20sin(2t−π/2))の位相変更定数θを−π/2にした理由についての説明図である。なお、θ=−π/2は、位相変更定数θが、ζ*20sin(2t)の位相を遅らせるものであることを意味する。なお、該二次高調波電圧Vksにおいて、ζ=0.1である。図11の破線は、駆動電圧Vin(実線)をカンチレバー15の圧電膜に印加して、ミラー部2を第2軸線の回りに実際に回動させたときに、実際の回動が線形関係からずれることを示している。該破線は、このずれを電圧に換算し、駆動電圧Vinに重畳して、図示したものになっている。
前述の図5の特性(理想応答特性から下方にずれている実際の特性)から分かるように、駆動電圧Vinの単位変化量に対する回動角Aroの単位変化量は、駆動電圧Vinの低いときは小さく、駆動電圧Vinが上昇するに連れて、増大していく。また、図10で説明したように、オフセットバイアス電圧Vbを増大するほど、線形性が改善される。したがって、図11の破線は、駆動電圧Vinの極大値側ではなく、極小値側において十分に下降しない特性として現れる。
これに対処するためには、駆動電圧Vinが極小値になるのに合わせて、駆動電圧Vinが十分に下降するように、線形性補正電圧Vliを周期振動電圧Vpeに重畳すればよいことが容易に理解できる。こうして、位相変更定数θが−π/2である場合、すなわち位相変更定数θが位相を遅らせるものであるときは、符号反転した二次高調波電圧Vksに基づいて線形性補正電圧Vliが設定される(Vli=−Vks)。
図12は、駆動電圧Vinに対して位相変更しない二次高調波電圧Vksを線形性補正電圧Vliにするときの問題点を説明する図である。図12において、駆動電圧Vin=Vpe+Vbである。ただし、Vpe=20sin(t)である。また、二次高調波電圧Vksaは、Vksa=ζ*20sin(2t−π/2)であり、二次高調波電圧Vksbは、Vksb=ζ*20sin(2t)である。ただし、ζ=0.1である。
駆動電圧Vinは、t=3π/2+2nπ(ただし、nは正の整数)の時に、極小値になるのに対し、二次高調波電圧Vksaは、t=3π/2+2nπの時に、最大値のζになる。したがって、二次高調波電圧Vksaを符号反転した−Vksaを線形性補正電圧Vliとすれば、すなわち、Vli=−Vksaとすれば、t=3π/2+2nπの時に、駆動電圧Vinを押し下げることができる。この結果、駆動電圧Vinに対する回動角Aroの線形性の悪化を防止することができる。
これに対し、二次高調波電圧Vksbは、t=3π/2+2nπの時に、0になってしまうので、周期振動電圧Vpeに二次高調波電圧Vksbを符号反転無し及び符号反転のどちらで重畳しても、駆動電圧Vinを押し下げることができない。したがって、周期振動電圧Vpeに二次高調波電圧Vksbを重畳しても、線形性を改善することはできない。
次に、位相変更定数θをπ/2にした第2倍周波数成分としての二次高調波電圧Vks(=ζ*20sin(2t+π/2))について考察する。Vks=ζ*20sin(2t+π/2)は、第1倍周波数成分としてのζ*20sin(2t)の位相を進ませたものとなっている。ζ*20sin(2t+π/2)は、t=3π/2+2nπの時に、最小値の−ζになる。この結果、ζ*20sin(2t+π/2)は、前述のζ*20sin(2t−π/2)とは逆に符号反転することなく、符号を維持したVksを線形性補正電圧Vliとすれば、すなわち、Vli=+Vksaとすれば、t=3π/2+2nπの時に、駆動電圧Vinを押し下げることができる。この結果、駆動電圧Vinに対する回動角Aroの線形性の悪化を防止することができる。
位相変更定数θは、±π/2に限定されない。位相変更定数θは−π<θ<π(ただし、θ≠0)の範囲であればよい。この範囲であれば、t=3π/2+2nπ(ただし、nは正の整数)の時に二次高調波電圧Vksの絶対値としての|Vks|>0であるので、二次高調波電圧Vksを+(加算)又は−(減算)で周期振動電圧Vpeに重畳すれば、t=3π/2+2nπの時に、二次高調波電圧Vksにより駆動電圧Vinを押し下げることができるからである。
光走査装置25において、駆動電圧Vinを具体的な式で表現すると、次の(式1a)〜(式1c)になる。なお、(式1a)〜(式1c)及びその他の式では、周期振動電圧Vpeの振幅は、正規化され、1に統一される。実際には、振幅が20Vであれば、20等が(式1a)等に係数として付加される。
(式1a)の二次高調波電圧Vksは、周期振動電圧Vpeをフーリェ級数展開することによって表されるフーリェ級数展開周波数成分に対して周波数が2倍で振幅が所定比である第1倍周波数成分の位相を−π/2、変更した第2倍周波数成分を符号反転したものに相当する。なお、この場合、周期振動電圧Vpeは単一の正弦波であるので、周期振動電圧Vpeをフーリェ級数展開することによって表されるフーリェ級数展開周波数成分も単一の正弦波成分になる。また、振幅の所定比は具体的には0.1である。
(式1c)のζ*cos(2t)は、(式1a)のζ*sin(2t−π/2)を、周波数と振幅比ζとを維持したまま、余弦波に置き換え可能であることを示している。すなわち、単独の正弦波としての周期振動電圧Vpeに対して、位相をπ/2遅らせた倍周波数電圧について符号反転したものを線形性補正電圧Vliにすることは、単独の正弦波としての周期振動電圧Vpeに対して、位相を変更せずに倍周波数余弦波成分を線形性補正電圧Vliにすることと同じことを意味する。したがって、両者は、発明の構成としては同一である。
図13は周期振動電圧Vpeの一例としてのこぎり波電圧Vrampを示している。横軸の位相において2πの長さは、こぎり波電圧Vrampの1周期に相当する。
理想的なのこぎり波電圧Vrampは、瞬間的に上昇し、その後、所定の下降速度で徐々に下降することを繰り返す。光走査装置25は、のこぎり波電圧Vrampの上昇時は、上昇は瞬間的なので点灯していてもよいが、原則的にはレーザ光源14を消灯し、のこぎり波電圧Vrampの下降期間に、レーザ光源14を点灯するとともに、レーザ光源14への通電電流値の制御により走査光Lbの走査点の輝度を制御する。これにより、走査光Lbの照射領域に、モノクロ画像が生成される。なお、カラー画像を生成したいときは、光の三原色に合わせて3種のレーザ光源14を用意し、各レーザ光源14ごとに輝度を制御する。
次の(式2)は、のこぎり波電圧Vrampのフーリェ級数展開したときの周波数成分を示している。(式3a)は(式2)を使って、駆動電圧Vinを式で表現したものである。(式3b)は(式3a)の線形性補正電圧Vliの各倍周波数正弦波成分を倍周波数余弦波成分に置き換えている。
(式2)、(式3a)及び(式3b)について詳説する。(式3a)の右辺では、線形性補正電圧Vliを周期振動電圧Vpeとオフセットバイアス電圧Vbとの間に配置している。(式3a)の右辺のVliは、“ζ*”の後ろの大括弧で括られた範囲であり、(式2)におけるフーリェ級数展開したときの各周波数成分に対し、周波数を2倍にした倍周波数成分から成る。周期振動電圧Vpeとしてののこぎり波電圧Vrampは、奇関数であるので、フーリェ変換級数に展開すると、(式2)の右辺のように、各成分は正弦波成分のみとなる。したがって、(式3a)の右辺の線形性補正電圧Vliの相当範囲の倍周波数成分は、倍周波数正弦波成分となる。
(式3b)は、(式3a)を変形したものであり、(式3a)の周期振動電圧Vpeの倍周波数正弦波成分を倍周波数余弦波成分に置き換えるとともに、駆動電圧Vin及び線形性補正電圧Vliの同一周波数の成分同士が隣り同士になるように、整理している。(式3a)と(式3b)とは、発明の構成としては同一であることを意味する。
図14は周期振動電圧Vpeの別の例としての三角波電圧Vtriを示している。横軸の位相において2πの長さは、三角波電圧Vtriの1周期に相当する。
三角波電圧Vtriは、電圧の上昇速度と下降速度とが等しいので、制御装置27は、三角波電圧Vtriの電圧上昇期間及び電圧下降期間共に、レーザ光源14を点灯状態に維持して、照射領域に画像を生成することができる。ただし、縦方向の走査方向が電圧上昇期間と電圧下降期間とで逆転するので、光走査装置25が画像生成装置として使用されるときには、レーザ光源14の通電制御による照射領域の輝度制御を電圧上昇期間用制御と電圧下降期間用制御とに使い分ける必要がある。
駆動電圧Vinとしての三角波Vtriは、奇関数及び偶関数のいずれでもフーリェ級数展開が可能である。次の(式4a)は三角波Vtriを奇関数としたときのフーリェ級数展開式である。(式4b)は三角波Vtriを偶関数としたときのフーリェ級数展開式である。(式5)は余弦波を、π/2の位相変更すれば、(式4b)における余弦波を正弦波に置き換え可能であることを示している。
(式4a)、(式4b)及び(式5)について詳説する。(式4a)の右辺は、正弦波成分のみから成る。したがって、周期振動電圧Vpeを三角波Vtriとするとき、のこぎり波電圧Vrampと同様の方式で線形性補正電圧Vliを生成することができる。すなわち、三角波Vtriのフーリェ級数展開正弦波成分に対して周波数が2倍で振幅が所定の振幅比ζである第1倍周波数成分を得る。該第1倍周波数成分は、正弦波周波数成分のみから構成される。そして、第1倍周波数成分に対して位相を進ませるか遅らせる位相変更定数θが付加されている第2倍周波数正弦波成分を得る。該第2倍周波数正弦波成分は、正弦波周波数成分のみから構成される。最後に、該第2倍周波数正弦波成分に基づいて設定されている線形性補正電圧Vliを生成する。
(式4b)では、三角波Vtriを偶関数としてフーリェ級数展開しているので、右辺のフーリェ級数展開周波数成分はすべて余弦波成分となる。しかしながら、(式5)で示すように、余弦波は、π/2の位相変更により、同一周波数の正弦波に変換できる。したがって、(式4b)の偶関数のフーリェ級数展開余弦波成分を正弦波成分に置き換えて、(式4a)と同じように、倍周波数波成分を倍周波数正弦波成分のみから構成して、生成した倍周波数正弦波成分に基づいて線形性補正電圧Vliを生成することができる。
一般的な周期関数は、奇関数のフーリェ級数展開正弦波成分と偶関数のフーリェ級数展開余弦波成分との重ね合わせで表現される。偶関数のフーリェ級数展開余弦波成分は、式(5)の置き換えより、フーリェ級数展開正弦波成分に置き換えることができる。こうして、任意の周期関数は、フーリェ級数展開正弦波成分で表現できる。
本発明は、変形例として次の構成を有する。
実施形態では、光偏向器1の外側アクチュエータ7のカンチレバー15に供給されるユニポーラの駆動電圧は正として説明している(例:図5〜図14)。本発明では、光偏向器の圧電アクチュエータの圧電膜のユニポーラの駆動電圧は負であってもよい。実施形態において、ユニポーラの駆動電圧を負で使用する場合には、カンチレバー15の圧電膜の下側電極層にはアース電圧が印加され、圧電膜の上側電極層には負の駆動電圧が供給される。ユニポーラの駆動電圧を負で使用する場合の光偏向器1の作用は、ユニポーラの駆動電圧の絶対値に置き換えて、置き換えた絶対値を正の駆動電圧とみなせば、ユニポーラの駆動電圧を正で使用する場合で説明した前述の実施形態の作用をそのまま適用できる。
実施形態では、駆動電圧Vinとして単独の正弦波、のこぎり波電圧Vramp又は三角波Vtriが使用されたが、本発明の駆動電圧Vinは、その他の周期振動電圧を採用することができる。
実施形態では、第2軸線の回りのミラー部2の往復回動の周波数は60Hzとなっている。本発明では、ミラー部を軸線の回りに往復回動させる一定の周波数として、60Hz以外の周波数であってもよい。
実施形態の(式2)では、周期振動電圧Vpeの一例としてのこぎり波電圧Vrampを無限の次数までフーリェ級数展開している。しかしながら、本発明では、第2倍周波数成分を所定次数以下の倍周波数成分に制限して、所定次数以下の第2倍周波数成分のみに基づいて線形性補正電圧Vliを設定することもできる。その場合、第2倍周波数成分の個数が減少するので、線形性補正電圧Vliの生成処理が簡単化される。また、周波数の異なる複数の第2倍周波数成分を合成(加算)をシンセサイザにより行うときは、シンセサイザの構造の複雑化及び大型化を回避することができる。
実施形態では、外側アクチュエータ7の駆動電圧Vinに線形性補正電圧Vliを付加して、外側アクチュエータ7の線形性を改善している。しかしながら、本発明は、内側アクチュエータ6の線形性を改善するために、内側アクチュエータ6の駆動電圧に対して線形性補正電圧を適用することも可能である。