JP2018013586A - 液晶配向剤、液晶配向膜及び液晶素子 - Google Patents

液晶配向剤、液晶配向膜及び液晶素子 Download PDF

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嘉崇 村上
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Abstract

【課題】耐熱性が良好な液晶配向膜を得ることができ、かつ得られる液晶素子の液晶配向性及び電圧保持率が良好な液晶配向剤を提供する。
【解決手段】オキセタン環及びオキシラン環の少なくともいずれかを有するポリエーテル[P]を液晶配向剤に含有させる。ポリエーテル[P]は、光配向性基、重合性基、プレチルト角発現部位等の官能基を有していてもよい。
【選択図】なし

Description

本発明は、液晶配向剤、液晶配向膜及び液晶素子に関する。
液晶素子としては、TN(Twisted Nematic)型、STN(Super Twisted Nematic)型などに代表される、正の誘電異方性を有するネマチック液晶を用いる水平配向モードの液晶素子や、負の誘電異方性を有するネマチック液晶を用いる垂直(ホメオトロピック)配向モードのVA(Vertical Alignment)型の液晶素子など、各種液晶素子が知られている。これら液晶素子は、液晶分子を一定の方向に配向させる機能を有する液晶配向膜を具備している。この液晶配向膜の作製に用いる材料としては、ポリアミック酸、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、ポリオルガノシロキサンなどが知られており、特にポリアミック酸及びポリイミドは、耐熱性、機械的強度、液晶分子との親和性に優れることなどから、古くから好ましく使用されている(特許文献1〜3参照)。液晶素子の製造に際し、液晶配向膜は、これら重合体成分が有機溶媒に溶解されてなる液晶配向剤を用いて形成される。
また、特許文献4には、3官能及び4官能の加水分解性シラン化合物の混合物をシュウ酸及びアルコールの存在下に反応させて得られたポリオルガノシロキサンを含有する液晶配向剤が開示されている。同特許文献4では、かかる液晶配向剤から形成された液晶配向膜が垂直配向性及び耐熱性に優れると説明されている。
特開平4−153622号公報 特開昭56−91277号公報 特開平11−258605号公報 特開平9−281502号公報
近年では、大画面で高精細な液晶テレビが主体となり、またスマートフォンやタブレットPC等といった小型の表示端末の普及が進み、液晶パネルに対する高品質化の要求は更に高まりつつある。例えば、液晶パネルの多用途化に伴い、屋外等の熱ストレスを受けやすい環境下で長時間使用されたり、長時間の駆動によりバックライトの照射時間が長くなったりする等の事情により、液晶素子は従来にも増して耐熱性に優れていることが求められている。また、耐熱性の向上だけでなく、表示品位を確保するために、液晶配向性や電圧保持率といった表示特性に優れていることも必要である。
液晶素子の品質をさらに改善するべく、複数種の重合体をブレンドして液晶配向剤を製造することがある。例えば、ポリオルガノシロキサンの場合には、ポリオルガノシロキサンと共に、ポリアミック酸やポリイミド等の有機材料を配合することがある。ポリオルガノシロキサンは、側鎖に官能基を導入しやすく、重合体に所望の機能を付与しやすい反面、無機系材料であるため、ポリアミック酸やポリイミド等の有機材料とのブレンドとした場合に相分離しやすく、液晶素子の表示品位に影響を及ぼすことが考えられる。こうした観点からも、液晶配向膜においては、側鎖への官能基の導入により重合体に所望の機能を付与しやすく、しかも高品質な液晶素子を得ることができる新たな材料を開発することが求められている。
本開示は上記事情に鑑みてなされたものであり、その一つの目的は、耐熱性が良好な液晶配向膜を得ることができ、かつ得られる液晶素子の液晶配向性及び電圧保持率が良好な液晶配向剤を提供することにある。
本開示によれば、以下の手段が提供される。
<1> オキセタン環及びオキシラン環の少なくともいずれかを有するポリエーテル[P]を含有する液晶配向剤。
<2> 上記<1>の液晶配向剤を用いて形成された液晶配向膜。
<3> 上記<2>の液晶配向膜を具備する液晶素子。
本開示の液晶配向剤によれば、耐熱性が良好な液晶配向膜を得ることができ、しかも、得られる液晶素子の液晶配向性及び電圧保持率を良好にすることができる。
≪液晶配向剤≫
本開示の液晶配向剤は、オキセタン環及びオキシラン環の少なくともいずれかを有するポリエーテル[P]を含有する。以下に、本開示の液晶配向剤に含まれる各成分、及び必要に応じて任意に配合されるその他の成分について説明する。
<ポリエーテル[P]>
ポリエーテル[P]は、オキセタン環及びオキシラン環の少なくともいずれかを有する。ここで、本明細書において「ポリエーテル」とは、主鎖中にエーテル結合(−O−)を有する重合体をいう。重合体の「主鎖」とは、重合体のうち最も長い原子の連鎖からなる「幹」の部分をいう。なお、この「幹」の部分が環構造を含むことは許容される。ポリエーテル[P]中のオキセタン環及びオキシラン環は、主鎖の一部を構成していてもよく、側鎖に存在していてもよい。ここで、「側鎖に存在している」とは、下記式(2−1)及び式(2−2)のそれぞれで表される構造を含む意味である。ポリエーテル[P]は、重合体自体の耐熱性がより良好な点、及び液晶配向の熱安定性の改善効果が高い点で、オキセタン環を有するものが特に好ましい。
Figure 2018013586
(式(2−1)中、rは0又は1である。式(2−2)中、Xは主鎖中の原子であり、Bは、オキセタン環及びオキシラン環の少なくともいずれかを有する1価の基である。「*」は、主鎖中の原子に結合する結合手であることを示す。)
ポリエーテル[P]は、オキセタン環及びオキシラン環の少なくともいずれかを有していればその余の構造は特に限定されない。ポリエーテル[P]としては、例えば下記の単量体(a)と単量体(b)との反応生成物を用いることができる。
単量体(a);水酸基又はチオール基を複数個有する化合物。
単量体(b);オキセタン環及びオキシラン環の少なくともいずれかを1個以上と、ハロゲン原子を2個以上有する化合物。
(単量体(a))
単量体(a)は、2個以上の水酸基又はチオール基がそれぞれ同一又は異なる芳香環に結合した構造を有する化合物であることが好ましい。得られる液晶素子の電気特性の観点から、2個以上の水酸基を有する化合物であることが好ましく、例えば下記式(1)で表される化合物が挙げられる。
Figure 2018013586
(式(1)中、Aは、芳香環を有するm価の有機基であり、mは2以上の整数である。ただし、式中のm個の水酸基は、Aが有する同一又は異なる芳香環に結合している。)
上記式(1)において、Aが有する芳香環としては、例えばベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、ピリジン環等が挙げられる。当該芳香環は、例えば炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、フェニル基等の置換基を有していてもよい。
が有する芳香環の数は、1個でもよく複数個でもよい。Aが複数個の芳香環を有する場合、それら複数個の芳香環同士は、直接結合していてもよく、2価の連結基を介して結合していてもよい。当該2価の連結基としては、例えば−O−、−S−、−CO−、−COO−、−CO−NR−、−NR−、−N=N−、−SO−、炭素数1〜20の2価の炭化水素基、当該炭化水素基の炭素−炭素結合間に−O−等のヘテロ原子含有基を有する2価の基等が挙げられる。なお、本明細書において「炭化水素基」とは、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基を含む意味である。mは、重合体のゲル化を抑制する観点から、好ましくは2〜4の整数であり、より好ましくは2である。
単量体(a)は、更に重合性基を有していることが好ましい。こうした化合物を用いることにより、塗膜形成時の加熱処理によって分子間の架橋をさらに促進させることができ、得られる液晶素子の液晶配向性を更に向上させることが可能となる。重合性基は、重合性不飽和基であることが好ましく、具体例としては、例えば(メタ)アクリロイル基、アルケニル基(ビニル基、アリル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基等)、スチリル基、エチニル基等が挙げられる。ここで、(メタ)アクリロイル基は、アクリロイル基及びメタクリロイル基を含む意味である。単量体(a)中の重合性基の数は、液晶配向性の改善と重合体のゲル化の抑制とのバランスの観点から、1〜4個が好ましく、2〜4個がより好ましい。単量体(a)が重合性基を有する場合、上記式(1)中のAの構造中に、重合性基が直接又は連結基を介して結合した構造を有することが好ましく、例えば、A中の芳香環に、重合性基が直接又は連結基を介して結合した構造が挙げられる。
単量体(a)の好ましい具体例としては、例えば1,3−ベンゼンジオール、1,4−ベンゼンジオール、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシアゾベンゼン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルアミン、4−ヒドロキシフェニル−4’−ヒドロキシベンゾエート、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジメチル−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−イソプロピルフェニル)プロパン、1,3−ビス(2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル)ベンゼン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、1,4−ビス(2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル)ベンゼン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、4,4’−(1−メチルエチリデン)ビス(2−アリルフェノール)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン等が挙げられる。
なお、使用する単量体(a)は、耐熱性及び機械的特性が十分に高いポリエーテル[P]を得る観点から、反応生成物のガラス転移温度が高くなるように選択するとよい。単量体(a)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
(単量体(b))
単量体(b)は、オキセタン環を有する化合物であることが好ましい。単量体(b)が有するハロゲン原子は、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子が好ましい。ハロゲン原子の数は、2〜4個が好ましく、2個がより好ましい。単量体(b)の具体例としては、例えば3,3−ビス(クロロメチル)オキセタン、3,3−ビス(ブロモメチル)オキセタン等が挙げられる。なお、単量体(b)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
(ポリエーテル[P]の合成)
ポリエーテル[P]は、上記の如き単量体(a)及び単量体(b)を、好ましくは塩基の存在下、有機溶媒中で反応させることにより得ることができる。合成反応に供する単量体(a)と単量体(b)との使用割合は、単量体(a)の水酸基1当量に対して、単量体(b)のハロゲン原子が0.2〜2当量となる割合が好ましく、0.8〜1.2当量となる割合がより好ましい。
有機溶媒としては、例えばテトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエン、塩化メチレン、クロロホルム、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドンなどを好ましく使用することができる。有機溶媒の使用量は、モノマーの合計量100重量部に対して、400〜900重量部とすることが好ましく、500〜700重量部とすることがより好ましい。
塩基としては、例えばピリジン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、N−エチル−N,N−ジイソプロピルアミン、ジアザビシクロウンデセン等の3級アミン;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム、リチウムビス(トリメチルシリル)アミド、ナトリウムビス(トリメチルシリル)アミド、カリウムビス(トリメチルシリル)アミド、リチウムジイソプロピルアミド、ナトリウムジイソプロピルアミド、カリウムジイソプロピルアミド、t−ブチルリチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属類;を好ましく使用することができる。塩基の使用量は、単量体(a)1モルに対して、2〜4モルとすることが好ましく、2〜3モルとすることがより好ましい。
上記反応に際し、反応温度は−20℃〜150℃が好ましく、反応時間は0.1〜24時間が好ましい。ポリエーテル[P]を溶解してなる反応溶液は、例えば反応溶液を大量の貧溶媒中に注いで得られる析出物を減圧下乾燥する方法、反応溶液をエバポレーターで減圧留去する方法等の公知の単離方法を用いて、反応溶液中に含まれるポリエーテル[P]を単離したうえで液晶配向剤の調製に供するとよい。
ポリエーテル[P]は、適用する液晶素子の駆動モードに応じて、重合体に所望の機能を付与する官能基(以下、「機能性基」ともいう。)を側鎖に有することが好ましい。例えば、液晶配向剤を垂直配向型又は水平配向型の液晶素子の製造に用いる場合、ポリエーテル[P]は、機能性基としてプレチルト角発現部位を有していることが好ましく、液晶配向剤により形成した高分子薄膜に対して光配向法により液晶配向能を付与する場合には、機能性基として光配向性基を有していることが好ましい。また、液晶セルの構築後に液晶セルの外側から光照射することによって液晶分子の配向規制力を高める場合には、ポリエーテル[P]は、機能性基として重合性基を有していることが好ましい。
[プレチルト角発現部位]
プレチルト角発現部位は、液晶配向剤を用いて形成した高分子薄膜にプレチルト角を付与可能な基である。プレチルト角発現部位の具体例としては、例えば下記式(3)で表される基等が挙げられる。
Figure 2018013586
(式(3)中、Rは炭素数1〜40のアルキル基、炭素数1〜40のフルオロアルキル基、シアノ基、ニトロ基、若しくはフッ素原子であるか、又はステロイド骨格を有する炭素数17〜51の炭化水素基である。Zは、単結合、−O−、−COO−又は−OCO−(ただし、「*」を付した結合手がR側である。)である。RIIは、シクロへキシレン基又はフェニレン基であり、環に結合する水素原子がシアノ基、ニトロ基、フッ素原子、トリフルオロメチル基又は炭素数1〜3のアルキル基によって置換されていてもよい。n1は1又は2であり、n1が2であるとき、2個のRIIは互いに同一であっても異なっていてもよい。n2は0又は1である。ZIIは、単結合、−O−、−COO−又は−OCO−(ただし、「*」を付した結合手がRII側である。)である。n3は0〜2の整数であり、n4は0又は1である。)
上記式(3)において「−(RIIn1−」で表される2価の基としては、例えば1,4−フェニレン基、1,4−シクロへキシレン基、4,4’−ビフェニレン基、4,4’−ビシクロへキシレン基 、下記式
Figure 2018013586
(式中、「*」を付した結合手がZに結合する。)
のそれぞれで表される基などを好ましいものとして挙げることができる。
[重合性基]
ポリエーテル[P]が有する重合性基としては、例えば下記式(4)で表される基等が挙げられる。
Figure 2018013586
(式(4)中、Rは、水素原子又はメチル基であり、X及びXIIは、それぞれ、1,4−フェニレン基、炭素数1〜8のアルカンジイル基であり、Zは、酸素原子、−COO−又は−OCO−(ただし、「*」を付した結合手がXIIに結合する。)であり、a、b、c及びdは、それぞれ0又は1である。ただし、cが0であってdが1であるとき、XIIは1,4−フェニレン基であり、bが0であるときdは0である。)
上記式(4)で表される基の具体例としては、例えばビニル基、アリル基、p−スチリル基、(メタ)アクリロキシアルキル基、4−((メタ)アクリロキシ)アルキル)フェニル基、((メタ)アクリロキシ)フェニル)アルキル基、4−((メタ)アクリロキシアルコキシ)フェニル基、(メタ)アクリロキシアルコキシアルキル基、6−{[6−(アクリロイルオキシ)ヘキサノイル]オキシ}ヘキシル基等が挙げられる。
[光配向性基]
光配向性基は、光照射による光異性化反応、光二量化反応又は光分解反応によって膜に異方性を付与する官能基である。光配向性基の具体例としては、例えばアゾベンゼン又はその誘導体を基本骨格として含むアゾベンゼン含有基、桂皮酸又はその誘導体(桂皮酸構造)を基本骨格として含む桂皮酸構造含有基、カルコン又はその誘導体を基本骨格として含むカルコン含有基、ベンゾフェノン又はその誘導体を基本骨格として含むベンゾフェノン含有基、クマリン又はその誘導体を基本骨格として含むクマリン含有基、ポリイミド又はその誘導体を基本骨格として含むポリイミド含有構造等が挙げられる。光に対する感度が高い点や、重合体側鎖に導入しやすい点で、中でも、下記式(5)で表される桂皮酸構造含有基を有することが好ましい。ポリエーテル[P]は、下記式(5)で表される構造とともにプレチルト角発現部位を有することにより、得られる液晶素子の高速応答性を高めることができる点で好ましい。
Figure 2018013586
(式(5)中、Rはフッ素原子又はシアノ基である。a’は0〜4の整数である。a’が2以上の場合、複数のRは同一でも異なっていてもよい。「*」は結合手を示す。)
ポリエーテル[P]が、機能性基を側鎖に有する重合体である場合、当該重合体は、機能性基を有するモノマーを用いた重合により合成する方法、上記重合により得られたポリエーテル[P]が有するオキセタン環又はオキシラン環を利用して側鎖に導入する方法、等が挙げられる。これらのうち、簡便であって、しかも機能性基の導入率を調整しやすい点で後者が好ましい。具体的には、上記重合により得られたポリエーテル[P]と、オキセタン環又はオキシラン環と反応して結合を形成し得る官能基X及び機能性基を有する化合物(以下、「側鎖前駆体[C]」ともいう。)と、を反応させることにより製造することが好ましい。側鎖前駆体[C]が有する官能基Xは、オキセタン環又はオキシラン環と反応可能であれば特に限定されないが、カルボキシル基であることが特に好ましい。
(側鎖前駆体[C]との反応)
ポリエーテル[P]が有するオキセタン環又はオキシラン環と、側鎖前駆体[C]との反応は、好ましくは適当な触媒の存在下、有機溶媒中で行われる。ポリエーテル[P]と側鎖前駆体[C]との反応において、側鎖前駆体[C]の使用割合は、ポリエーテル[P]が有するオキセタン環又はオキシラン環に対して、30〜90モル%とすることが好ましく、40〜80モル%とすることがより好ましい。
上記反応に際し、触媒としては、例えばエポキシ基の硬化促進剤として一般に用いられているものを使用することができる。触媒としては、例えば3級アミン、イミダゾール誘導体、有機リン化合物、4級ホスフォニウム塩、ジアザビシクロアルケン、有機金属化合物、ハロゲン化4級アンモニウム、金属ハロゲン化合物、潜在性硬化促進剤等が挙げられる。触媒の使用割合は、ポリエーテル[P]の100質量部に対して、好ましくは0.01〜100質量部であり、より好ましくは0.1〜20質量部である。
上記反応に使用する有機溶媒としては、例えばケトン、エーテル、エステル、アミド、アルコール等が挙げられる。これらの具体例としては、ケトンとして、例えばメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン等を;エーテルとして、例えばエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等を;エステルとして、例えば酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸iso−アミル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート等を;アミドとして、例えばホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等を;アルコールとして、例えば1−ヘキサノール、4−メチル−2−ペンタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル等を、それぞれ挙げることができ、これらのうちから選択される1種以上を用いることができる。有機溶媒の使用割合は、反応溶液中の有機溶媒以外の成分の合計質量が反応溶液の全量に占める割合として、0.1〜50質量%となる割合とすることが好ましく、5〜50重質量%となる割合とすることがより好ましい。
上記反応において、反応温度は、−20℃〜200℃が好ましく、0℃〜160℃がより好ましい。反応時間は、1時間〜48時間が好ましく、2時間〜12時間がより好ましい。得られる反応溶液は、公知の単離方法を用いて、反応溶液中に含まれるポリエーテル[P]を単離したうえで液晶配向剤の調製に供するとよい。
なお、ポリエーテル[P]は、機能性基としてプレチルト角発現部位、光配向性基及び重合性基のうちの1種のみを有していてもよいし、複数種を有していてもよい。ポリエーテル[P]が、上記の機能性基のうちの複数種を有している場合、一の機能性基と、他の機能性基とが同一の側鎖中に存在していてもよく、別個の側鎖中に存在していてもよい。また、各機能性基のすべてが単一種の重合体に含有されていてもよく、所望の機能性基のうちの一部を有する重合体と、残りの機能性基を有する重合体との混合物として使用してもよい。もちろん、ポリエーテル[P]として3種類以上の重合体を混合して使用してもよいし、同じ機能性基を有する2種類以上の重合体を混合して使用してもよい。どのような態様であってもよいから、ポリエーテル[P]は、単一物又は混合物が、全体として各機能性基を有していればよい。
ポリエーテル[P]のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1,000〜300,000であり、より好ましくは2,000〜100,000である。ただし、ポリエーテル[P]が、機能性基を有する化合物を用いて変性した変性重合体である場合には、その変性前の重合体の重量平均分子量が上記範囲であることが好ましい。Mwと、GPCにより測定したポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)との比で表される分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは5以下であり、より好ましくは4以下である。なお、液晶配向剤の調製に使用するポリエーテル[P]は、1種のみでもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
液晶配向剤中におけるポリエーテル[P]の含有割合は、形成される塗膜の耐熱性及び液晶配向性を良好にする観点からすると、液晶配向剤に含まれる全重合体100質量部に対して、0.1質量部以上であることが好ましく、0.5質量部以上であることがより好ましく、1質量部以上であることがさらに好ましい。また、他の重合体により液晶素子の電気特性を改善する場合には、ポリエーテル[P]の含有割合は、液晶配向剤に含まれる全重合体100質量部に対して、50質量部以下であることが好ましく、25質量部以下であることがより好ましく、20質量部以下であることがさらに好ましい。
<その他の成分>
本開示の液晶配向剤は、上記の如きポリエーテル[P]を含有するが、必要に応じて、以下に示すその他の成分を含有していてもよい。
(化合物[Q])
本開示の液晶配向剤は、オキセタン環、オキシラン環及び水酸基の少なくともいずれかと反応する官能基(以下、「特定官能基」ともいう。)を分子内に合計2個以上有する化合物[Q]を更に含有していてもよい。こうした化合物[Q]をポリエーテル[P]と共に液晶配向剤中に含有させることにより、膜中において主鎖が安定し、液晶素子の液晶配向性を更に良好にすることができる。特定官能基としては、例えばカルボキシル基、イソシアネート基、保護されたイソシアネート基(以下、「保護イソシアネート基」ともいう。)、水酸基、アミノ基、アルコキシメチル基等が挙げられる。
化合物[Q]は、特定官能基を有していればその余の構造は特に限定されず、低分子化合物であってもよく、重合体であってもよい。化合物[Q]が低分子化合物である場合、分子量は、例えば1500以下であり、1000以下であることが好ましい。
化合物[Q]が低分子化合物である場合の好ましい例としては、例えば多価カルボン酸、多価アルコール、多価フェノール、保護イソシアネート化合物等が挙げられる。これらの具体例としては、多価カルボン酸として、例えばマレイン酸、イタコン酸、トリメリット酸、テトラカルボン酸、シス−1,2,3,4−テトラヒドロフタル酸、エチレングリコールビストリメート、プロピレングリコールビストリメート、4,4’−オキシジフタル酸等を、
多価アルコール及び多価フェノールとして、例えば1,2−エタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ビスフェノール類、トリスヒドロキシエチルイソシアヌレート、ポリカーボネートジオール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、下記式(6−1)〜式(6−4)
Figure 2018013586
のそれぞれで表される化合物等を、
保護イソシアネート基を2個以上有する化合物として、例えばトリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメチレンジイソシアネート等の多価イソシアネートを保護基で保護した化合物;下記式(7−1)〜式(7−11)
Figure 2018013586
のそれぞれで表される化合物等を、
アルコキシメチル基を2個以上有する化合物として、例えば上記式(6−1)〜式(6−4)のそれぞれで表される化合物等を、それぞれ挙げることができる。
また、化合物[Q]が重合体である場合、特定官能基を構造単位中に含む重合体を好ましく使用でき、その主鎖は特に限定されない。好ましい具体例としては、(メタ)アクリレート、ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル、ポリイミド等が挙げられる。なお、化合物[Q]としてのポリアミック酸エステル及びポリイミドは、エステル化率及びイミド化率が100%未満であり、90%以下であることが好ましい。化合物[Q]は、上記のうちの1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
液晶配向剤中における化合物[Q]の含有割合は、液晶配向性の改善効果を十分に得る観点から、液晶配向剤の調製に使用するポリエーテル[P]の100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3〜40質量部、さらに好ましくは5〜30質量部である。なお、化合物[Q]は1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
(その他の重合体)
本開示の液晶配向剤は、電気特性の改善やコスト低減等を目的として、ポリエーテル[P]以外のその他の重合体を含有していてもよい。その他の重合体の主骨格は特に限定されず、例えばポリアミック酸、ポリイミド、ポリアミック酸エステル、ポリアミド、ポリオルガノシロキサン、ポリエステル、セルロース誘導体、ポリアセタール、ポリスチレン誘導体、ポリ(スチレン−フェニルマレイミド)誘導体、ポリ(メタ)アクリレート等を主骨格とする重合体が挙げられる。なお、本明細書において「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及びメタクリレートを含む意味である。
その他の重合体は、電気特性や液晶との親和性、機械的強度、ポリエーテル[P]との親和性等の観点から、上記の中でも、ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル及びポリイミドよりなる群から選択される少なくとも一種であることが好ましい。なお、その他の重合体としてのポリアミック酸、ポリアミック酸エステル及びポリイミドは、化合物[Q]にも該当する。その他の重合体の配合割合は、液晶配向剤の調製に使用するポリエーテル[P]100質量部に対して、100質量部以上とすることが好ましく、100〜2000質量部とすることがより好ましく、200〜1500質量部とすることがさらに好ましい。
(ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル及びポリイミド)
液晶配向剤に含有させるポリアミック酸、ポリアミック酸エステル及びポリイミドは、従来公知の方法に従って合成することができる。例えば、ポリアミック酸は、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを反応させることにより得ることができる。ポリアミック酸エステルは、例えばポリアミック酸とエステル化剤(例えばメタノールやエタノール、N,N−ジメチルホルムアミドジエチルアセタール等)とを反応させる方法等により得ることができる。ポリイミドは、例えばポリアミック酸を脱水閉環してイミド化することにより得ることができる。なお、ポリイミドは、そのイミド化率が20〜95%であることが好ましく、30〜90%であることがより好ましい。このイミド化率は、ポリイミドのアミック酸構造の数とイミド環構造の数との合計に対するイミド環構造の数の占める割合を百分率で表したものである。
重合に使用するテトラカルボン酸としては、例えば、ブタンテトラカルボン酸二無水物、エチレンジアミン四酢酸二無水物等の脂肪族テトラカルボン酸二無水物;1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)−3a,4,5,9b−テトラヒドロナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)−8−メチル−3a,4,5,9b−テトラヒドロナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、2,4,6,8−テトラカルボキシビシクロ[3.3.0]オクタン−2:4,6:8−二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物等の脂環式テトラカルボン酸二無水物;ピロメリット酸二無水物、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル無水物)、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、1,3−プロピレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)等の芳香族テトラカルボン酸二無水物、等を挙げることができるほか、特開2010−97188号公報に記載のテトラカルボン酸二無水物を用いることができる。なお、テトラカルボン酸二無水物は1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
また、上記重合に使用するジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン;p−シクロヘキサンジアミン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)等の脂環式ジアミン;ヘキサデカノキシジアミノベンゼン、コレスタニルオキシジアミノベンゼン、ジアミノ安息香酸コレスタニル、ジアミノ安息香酸コレステリル、ジアミノ安息香酸ラノスタニル、3,6−ビス(4−アミノベンゾイルオキシ)コレスタン、3,6−ビス(4−アミノフェノキシ)コレスタン、1,1−ビス(4−((アミノフェニル)メチル)フェニル)−4−ブチルシクロヘキサン、2,5−ジアミノ−N,N−ジアリルアニリン、下記式(8−1)〜式(8−3)
Figure 2018013586
のそれぞれで表される化合物等の側鎖型の芳香族ジアミン;p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルアミン、4−アミノフェニル−4’−アミノベンゾエート、4,4’−ジアミノアゾベンゼン、3,5−ジアミノ安息香酸、1,5−ビス(4−アミノフェノキシ)ペンタン、ビス[2−(4−アミノフェニル)エチル]ヘキサン二酸、ビス(4−アミノフェニル)アミン、N,N−ビス(4−アミノフェニル)メチルアミン、N,N’−ビス(4−アミノフェニル)−ベンジジン、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、4,4’−(フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4−(4−アミノフェノキシカルボニル)−1−(4−アミノフェニル)ピペリジン、4,4’−[4,4’−プロパン−1,3−ジイルビス(ピペリジン−1,4−ジイル)]ジアニリン等の非側鎖型の芳香族ジアミン;1,3−ビス(3−アミノプロピル)−テトラメチルジシロキサン等のジアミノオルガノシロキサン、等を挙げることができるほか、特開2010−97188号公報に記載のジアミンを用いることができる。なお、ジアミンは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
液晶配向剤に含有させるポリアミック酸、ポリアミック酸エステル及びポリイミドにつき、GPCにより測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1,000〜500,000であり、より好ましくは2,000〜300,000である。分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは7以下であり、より好ましくは5以下である。なお、液晶配向剤に含有させるポリアミック酸、ポリアミック酸エステル及びポリイミドは、1種のみでもよく、又は2種以上を組み合わせてもよい。
その他の成分としては、上記のほか、例えば分子内に少なくとも一つのエポキシ基を有する分子量1000以下の低分子化合物、官能性シラン化合物、酸化防止剤、金属キレート化合物、硬化促進剤、界面活性剤、充填剤、分散剤、光増感剤等が挙げられる。その他の成分の配合割合は、本開示の効果を損なわない範囲で、各化合物に応じて適宜選択することができる。
<溶剤>
本開示の液晶配向剤は、重合体成分及び必要に応じて任意に配合されるその他の成分が、好ましくは有機溶媒に溶解又は分散された溶液状の組成物として調製される。使用する有機溶媒としては、例えばN−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、1,2−ジメチル−2−イミダゾリジノン、γ−ブチロラクトン、γ−ブチロラクタム、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、エチレングリコールモノメチルエーテル、乳酸ブチル、酢酸ブチル、メチルメトキシプロピオネ−ト、エチルエトキシプロピオネ−ト、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコール−n−プロピルエーテル、エチレングリコール−i−プロピルエーテル、エチレングリコール−n−ブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジイソブチルケトン、イソアミルプロピオネート、イソアミルイソブチレート、ジイソペンチルエーテル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等を挙げることができる。これらは、1種を単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
液晶配向剤における固形分濃度(液晶配向剤の溶媒以外の成分の合計質量が液晶配向剤の全質量に占める割合)は、粘性、揮発性などを考慮して適宜に選択されるが、好ましくは1〜10質量%の範囲である。固形分濃度が1質量%未満である場合には、塗膜の膜厚が過小となって良好な液晶配向膜が得にくくなる。一方、固形分濃度が10質量%を超える場合には、塗膜の膜厚が過大となって良好な液晶配向膜が得にくく、また、液晶配向剤の粘性が増大して塗布性が低下する傾向にある。
≪液晶配向膜及び液晶素子≫
本開示の液晶配向膜は、上記のように調製された液晶配向剤により形成される。また、本開示の液晶素子は、上記で説明した液晶配向剤を用いて形成された液晶配向膜を具備する。液晶素子における液晶の動作モードは特に限定されず、例えばTN型、STN型、VA型(VA−MVA型、VA−PVA型などを含む。)、IPS(In-Plane Switching)型、FFS(Fringe Field Switching)型、OCB(Optically Compensated Bend)型、PSA型(Polymer Sustained Alignment)など種々のモードに適用することができる。液晶素子は、例えば以下の工程1〜工程3を含む方法により製造することができる。工程1は、所望の動作モードによって使用基板が異なる。工程2及び工程3は各動作モード共通である。
<工程1:塗膜の形成>
先ず基板上に液晶配向剤を塗布し、好ましくは塗布面を加熱することにより基板上に塗膜を形成する。基板としては、例えばフロートガラス、ソーダガラスなどのガラス;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリ(脂環式オレフィン)などのプラスチックからなる透明基板を用いることができる。基板の一面に設けられる透明導電膜としては、酸化スズ(SnO)からなるNESA膜(米国PPG社登録商標)、酸化インジウム−酸化スズ(In−SnO)からなるITO膜などを用いることができる。TN型、STN型又はVA型の液晶素子を製造する場合には、パターニングされた透明導電膜が設けられている基板二枚を用いる。一方、IPS型又はFFS型の液晶素子を製造する場合には、櫛歯型にパターニングされた電極が設けられている基板と、電極が設けられていない対向基板とを用いる。基板への液晶配向剤の塗布は、電極形成面上に、好ましくはオフセット印刷法、スピンコート法、ロールコーター法又はインクジェット印刷法により行う。
液晶配向剤を塗布した後、塗布した液晶配向剤の液垂れ防止などの目的で、好ましくは予備加熱(プレベーク)が実施される。プレベーク温度は、好ましくは30〜200℃であり、プレベーク時間は、好ましくは0.25〜10分である。その後、溶剤を完全に除去し、必要に応じて、重合体に存在するアミック酸構造を熱イミド化することを目的として焼成(ポストベーク)工程が実施される。このときの焼成温度(ポストベーク温度)は、好ましくは80〜300℃であり、ポストベーク時間は、好ましくは5〜200分である。このようにして形成される膜の膜厚は、好ましくは0.001〜1μmである。
<工程2:配向処理>
TN型、STN型、IPS型又はFFS型の液晶素子を製造する場合、上記工程1で形成した塗膜に液晶配向能を付与する処理(配向処理)を実施する。これにより、液晶分子の配向能が塗膜に付与されて液晶配向膜となる。配向処理としては、塗膜を例えばナイロン、レーヨン、コットンなどの繊維からなる布を巻き付けたロールで一定方向に擦ることによって塗膜に液晶配向能を付与するラビング処理、基板上に形成した塗膜に光照射を行って塗膜に液晶配向能を付与する光配向処理等が挙げられる。一方、垂直配向型の液晶素子を製造する場合には、上記工程1で形成した塗膜をそのまま液晶配向膜として使用することができるが、該塗膜に対し配向処理を施してもよい。
光配向のための光照射は、ポストベーク工程後の塗膜に対して照射する方法、プレベーク工程後であってポストベーク工程前の塗膜に対して照射する方法、プレベーク工程及びポストベーク工程の少なくともいずれかにおいて塗膜の加熱中に塗膜に対して照射する方法、等により行うことができる。塗膜に照射する放射線としては、例えば150〜800nmの波長の光を含む紫外線及び可視光線を用いることができる。好ましくは、200〜400nmの波長の光を含む紫外線である。放射線が偏光である場合、直線偏光であっても部分偏光であってもよい。用いる放射線が直線偏光又は部分偏光である場合には、照射は基板面に垂直の方向から行ってもよく、斜め方向から行ってもよく、又はこれらを組み合わせて行ってもよい。非偏光の放射線の場合の照射方向は斜め方向とする。
使用する光源としては、例えば低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、重水素ランプ、メタルハライドランプ、アルゴン共鳴ランプ、キセノンランプ、エキシマーレーザー等が挙げられる。放射線の照射量は、好ましくは400〜50,000J/mであり、より好ましくは1,000〜20,000J/mである。配向能付与のための光照射後において、基板表面を例えば水、有機溶媒(例えば、メタノール、イソプロピルアルコール、1−メトキシ−2−プロパノールアセテート、ブチルセロソルブ、乳酸エチル等)又はこれらの混合物を用いて洗浄する処理や、基板を加熱する処理を行ってもよい。
<工程3:液晶セルの構築>
上記のようにして液晶配向膜が形成された基板を2枚準備し、対向配置した2枚の基板間に液晶を配置することにより液晶セルを製造する。液晶セルを製造するには、例えば、液晶配向膜が対向するように間隙を介して2枚の基板を対向配置し、2枚の基板の周辺部をシール剤を用いて貼り合わせ、基板表面とシール剤で囲まれたセルギャップ内に液晶を注入充填し注入孔を封止する方法、ODF方式による方法等が挙げられる。シール剤としては、例えば硬化剤及びスペーサーとしての酸化アルミニウム球を含有するエポキシ樹脂等を用いることができる。液晶としては、ネマチック液晶及びスメクチック液晶を挙げることができ、その中でもネマチック液晶が好ましい。PSAモード(液晶配向膜中に重合性基を有する化合物(低分子又は重合体)を含有させる場合を含む。)では、液晶セルの構築後に、一対の基板の有する導電膜間に電圧を印加した状態で液晶セルに光照射する処理を行う。
続いて、必要に応じて液晶セルの外側表面に偏光板を貼り合わせ、液晶素子とする。偏光板としては、ポリビニルアルコールを延伸配向させながらヨウ素を吸収させた「H膜」と称される偏光フィルムを酢酸セルロース保護膜で挟んだ偏光板又はH膜そのものからなる偏光板が挙げられる。
本開示の液晶素子は種々の用途に有効に適用することができ、例えば、時計、携帯型ゲーム、ワープロ、ノート型パソコン、カーナビゲーションシステム、カムコーダー、PDA、デジタルカメラ、携帯電話、スマートフォン、各種モニター、液晶テレビ、インフォメーションディスプレイなどの各種表示装置や、調光フィルム等に用いることができる。また、本開示の液晶配向剤を用いて形成された液晶素子は位相差フィルムに適用することもできる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
本実施例において重合体の重量平均分子量Mw、数平均分子量(Mn)及び分子量分布(Mw/Mn)は以下の方法により測定した。
<重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)及び分子量分布(Mw/Mn)>
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、下記条件でMwおよびMnを測定した。また、分子量分布(Mw/Mn)は得られたMwおよびMnより算出した。
装置:昭和電工(株)の「GPC−101」
GPCカラム:(株)島津ジーエルシー製の「GPC−KF−801」、「GPC−KF−802」、「GPC−KF−803」及び「GPC−KF−804」を結合
移動相:テトラヒドロフラン(THF)
カラム温度:40℃
流速:1.0mL/分
試料濃度:1.0質量%
試料注入量:100μL
検出器:示差屈折計
標準物質:単分散ポリスチレン
<ポリエーテル[P]の合成>
[合成例1]
下記スキーム1に従って重合体(P−1)を合成した。
Figure 2018013586
窒素下、100mL二口フラスコに、単量体(a)として4、4’−ジヒドロキシビフェニル5.67g(30.4mmol)及びビスフェノールA6.95g(30.4mmol)、並びに、塩基として水酸化ナトリウム7.06g(177mmol)及び溶剤としてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)50mlを加え、30分間撹拌し、単量体を完全に溶解させた。その後、単量体(b)として3、3−ビス(クロロメチル)オキセタン10.0g(64.5mmol)をNMP50mlに溶解した溶液を加え、85℃に加熱し重合を開始した。6時間後、室温まで冷却した後、メタノールで再沈殿した。沈殿物を濾過し、60℃で8時間真空乾燥することで目的の重合体(P−1)を得た。GPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは18600、分子量分布Mw/Mnは2.19であった。
[合成例2〜4]
単量体(a)を下記表1に示す種類及び量とした以外は、合成例1と同様に重合を行い、重合体(P−2)〜(P−4)の各共重合体を得た。
Figure 2018013586
表1中、化合物の略号は以下の意味である。
a−1;4,4’−ジヒドロキシビフェニル
a−2;ビスフェノールA
a−3;レゾルシノール
a−4;4,4’−(1−メチルエチリデン)ビス(2−アリルフェノール)
a−5;1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン
b−1;3,3−ビス(クロロメチル)オキセタン
[合成例5]
下記スキーム2に従って重合体(P−5)を合成した。
Figure 2018013586
窒素下、100mL二口フラスコに、重合体(P−1)2.00g、側鎖前駆体[C]として化合物(C−1)1.64g(4.2mmol)、並びに、テトラフェニルホスホニウムブロミド1.45g(3.5mmol)及びシクロペンタノン20mlを加え、140℃で8時間反応した。室温まで冷却した後、分液ロートに移し、純水で洗浄操作を10回繰り返した。その後、メタノールに再沈殿した後、沈殿物を濾過し、60℃で8時間真空乾燥することで目的の重合体(P−5)を得た。GPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは39000、分子量分布Mw/Mnは2.33であった。
Figure 2018013586
[合成例6〜16]
重合体(P−1)及び化合物(C−1)に代えて、下記表2に示す種類及び量のポリエーテル[P]及び側鎖前駆体[C]を用いた以外は合成例5と同様に合成を行い、重合体(P−6)〜(P−16)の各重合体を得た。なお、合成例10、12及び13では、2種類の側鎖前駆体[C]を使用した。
Figure 2018013586
表2中、側鎖前駆体[C]の略号は以下の意味である。
C−2〜C−7;下記式(C−2)〜式(C−7)のそれぞれで表される化合物
C−8;アクリル酸
C−9;4−ニトロ安息香酸
Figure 2018013586
<その他の重合体の合成>
[比較合成例1]
下記スキーム3に従って重合体(A−1)を合成した。
Figure 2018013586
窒素下、200mL二口フラスコに、グリシジルメタクリレート10g(70.3mmol)、メチルメタクリレート10g(99.9mmol)、アゾビスイソブチロニトリル2g(12.2mmol)及びテトラヒドロフラン50mlを加え、60℃で24時間重合した。メタノールに再沈殿した後、沈殿物を濾過し、60℃で8時間真空乾燥することで目的の重合体(A−1)を得た。GPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは21000、分子量分布Mw/Mnは2.54であった。
[比較合成例2]
窒素下、100mL二口フラスコに、重合体(A−1)2g、化合物(C−1)1.95g(4.9mmol)、テトラブチルアンモニウムブロミド0.13g(0.4mmol)及びシクロペンタノン20mlを加え、110℃で8時間反応を行った。室温まで冷却した後、分液ロートに移し、純水で洗浄操作を10回繰り返した。その後、メタノールに再沈殿した後、沈殿物を濾過し、60℃で8時間真空乾燥することで目的の重合体(A−2)を得た(上記表2参照)。GPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは42000、分子量分布Mw/Mnは3.11であった。
[比較合成例3]
比較合成例2において、側鎖前駆体[C]として化合物(C−1)1.95g(4.9mmol)に代えて化合物(C−2)1.88g(4.9mmol)を用いた以外は比較合成例2と同様に反応を行うことで重合体(A−3)を得た(上記表2参照)。
[合成例17]
テトラカルボン酸二無水物として1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物13.8g(70.0mmol)、ジアミンとして2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル16.3g(76.9mmol)をNMP170gに溶解し、25℃で3時間反応を行うことにより、ポリアミック酸を10質量%含有する溶液を得た。次いで、このポリアミック酸溶液を大過剰のメタノール中に注ぎ、反応生成物を沈殿させた。この沈殿物をメタノールで洗浄し、減圧下40℃で15時間乾燥させることにより、ポリアミック酸(PAA)を得た。
<液晶表示素子(1)>
[実施例1]
1.液晶配向剤(AL−1)の調製
ポリエーテル[P]として上記合成例5で得た重合体(P−5)100質量部に、その他の重合体として上記合成例17で得たポリアミック酸500質量部、並びに溶剤としてNMP及びブチルセロソルブ(BC)を加え、溶媒組成がNMP/BC=50/50(質量比)、固形分濃度が4.0質量%の溶液とした。この溶液を孔径1μmのフィルターで濾過することにより、液晶配向剤(AL−1)を調製した。
2.液晶配向膜の耐熱性評価
シリコーン基板上にスピンナーを用いて液晶配向剤(AL−1)を塗布した後、90℃にて2分間ホットプレート上でプレベークして膜厚3.0μmの塗膜を形成した。得られた塗膜をホットプレート上で200℃、30分間加熱した。得られた膜の5%熱重量減少温度をエスアイアイ・ナノテクノロジー社の「TG/DTA220U」を用いて空気下で測定した。5%重量減少温度が300℃以上の場合に膜の耐熱性は「A」、300℃以下の場合に「B」であると評価した。その結果、この実施例では、膜の耐熱性は「A」であった。
3.光垂直型液晶表示素子の製造
ITO膜からなる透明電極付きガラス基板の透明電極面上に、上記で調製した液晶配向剤(AL−1)を、スピンナーを用いて塗布し、80℃のホットプレートで1分間プレベークを行った。その後、庫内を窒素置換したオーブン中、230℃で1時間加熱して膜厚0.1μmの塗膜を形成した。次いで、この塗膜表面に、Hg−Xeランプ及びグランテーラープリズムを用いて313nmの輝線を含む偏光紫外線1,000J/mを、基板法線から40°傾いた方向から照射して液晶配向膜とした。同じ操作を繰り返して、液晶配向膜を有する基板を一対(2枚)作成した。
上記基板のうちの1枚の液晶配向膜を有する面の外周に直径3.5μmの酸化アルミニウム球入りエポキシ樹脂接着剤をスクリーン印刷により塗布した後、一対の基板の液晶配向膜面を対向させ、各基板の紫外線の光軸の基板面への投影方向が逆平行となるように圧着し、150℃で1時間かけて接着剤を熱硬化させた。次いで、液晶注入口より基板間の間隙にネガ型液晶(メルク社製、MLC−6608)を充填した後、エポキシ系接着剤で液晶注入口を封止した。さらに、液晶注入時の流動配向を除くために、これを130℃で加熱してから室温まで徐冷した。次に、基板の外側両面に、偏光板を、その偏光方向が互いに直交し、かつ、液晶配向膜の紫外線の光軸の基板面への射影方向と45°の角度をなすように貼り合わせることにより液晶表示素子を製造した。
4.液晶配向性の評価
上記で製造した液晶表示素子につき、5Vの電圧をON・OFF(印加・解除)したときの明暗の変化における異常ドメインの有無を光学顕微鏡により観察し、異常ドメインがない場合を「A」、一部に異常ドメインがある場合を「B」、全体的に異常ドメインがある場合を「C」として液晶配向性を評価した。その結果、この実施例では液晶配向性は「A」であった。
5.電圧保持率(VHR)の評価
上記で製造した液晶表示素子につき、5Vの電圧を60マイクロ秒の印加時間、167ミリ秒のスパンで印加した後、印加解除から167ミリ秒後の電圧保持率を測定した。測定装置は(株)東陽テクニカ製VHR−1を使用した。このとき、電圧保持率が90%以上の場合を「A」、80%以上90%未満の場合に「B」、50%以上80%未満の場合に「C」、50%未満の場合に「D」とした。その結果、この実施例では電圧保持率は「A」の評価であった。
[実施例5,6,9〜12,25,26,29及び比較例1〜3]
配合組成を下記表3に示す通り変更した以外は実施例1と同じ溶媒組成及び固形分濃度で調製を行い、液晶配向剤をそれぞれ得た。また、それぞれの液晶配向剤を用いて実施例1と同様にして光垂直型液晶表示素子を製造するとともに、得られた液晶表示素子を用いて各種評価を行った。その結果を下記表4に示した。
<液晶表示素子(2)>
[実施例2]
1.液晶配向剤(AL−2)の調製
使用するポリエーテル[P]を上記合成例6で得た重合体(P−6)に変更した以外は上記実施例1と同じ溶媒組成及び固形分濃度で液晶配向剤(AL−2)を調製した。
2.液晶配向膜の耐熱性評価
液晶配向剤を(AL−1)に代えて(AL−2)を用いた以外は上記実施例1と同様にして液晶配向膜の耐熱性評価を行った。その結果、この実施例では、膜の耐熱性は「A」であった。
3.光水平型液晶表示素子の製造
ITO膜からなる透明電極付きガラス基板の透明電極面上に、上記で調製した液晶配向剤(AL−2)を、スピンナーを用いて塗布し、80℃のホットプレートで1分間プレベークを行った。その後、庫内を窒素置換したオーブン中、230℃で1時間加熱して膜厚0.1μmの塗膜を形成した。次いで、この塗膜表面に、Hg−Xeランプ及びグランテーラープリズムを用いて313nmの輝線を含む偏光紫外線1,000J/mを、基板法線から90°傾いた方向から照射して液晶配向膜とした。同じ操作を繰り返して、液晶配向膜を有する基板を一対(2枚)作成した。
上記基板のうちの1枚の液晶配向膜を有する面の外周に直径3.5μmの酸化アルミニウム球入りエポキシ樹脂接着剤をスクリーン印刷により塗布した後、一対の基板の液晶配向膜面を対向させ、各基板の紫外線の光軸の基板面への投影方向が水平となるように圧着し、150℃で1時間かけて接着剤を熱硬化させた。次いで、液晶注入口より基板間の間隙にポジ型液晶(メルク社製、MLC−7028−100)を充填した後、エポキシ系接着剤で液晶注入口を封止した。さらに、液晶注入時の流動配向を除くために、これを130℃で加熱してから室温まで徐冷した。次に、基板の外側両面に、偏光板を、その偏光方向が互いに直交し、かつ、液晶配向膜の紫外線の光軸の基板面への射影方向と90°の角度をなすように貼り合わせることにより液晶表示素子を製造した。
4.液晶配向性の評価
上記で製造した光水平型液晶表示素子につき、上記実施例1と同様にして液晶配向性を評価した。その結果、この実施例では液晶配向性は「B」であった。
5.電圧保持率(VHR)の評価
上記で製造した光水平型液晶表示素子につき、上記実施例1と同様にして電圧保持率の評価を行った。その結果、この実施例では電圧保持率は「A」の評価であった。
[実施例3,4,7,8,13〜21,27,28及び比較例4,5]
配合組成を下記表3に示す通り変更した以外は実施例1と同じ溶媒組成及び固形分濃度で調製を行い、液晶配向剤をそれぞれ得た。また、それぞれの液晶配向剤を用いて実施例2と同様にして光水平型液晶表示素子を製造するとともに、得られた液晶表示素子を用いて各種評価を行った。その結果を下記表3に示した。なお、実施例4では、偏光紫外線を照射した後に、150℃で10分間、ホットプレートにて加熱処理を行ってから液晶セルを構築した。
<液晶表示素子(3)>
[実施例22]
1.液晶配向剤(AL−22)の調製
使用する重合体を、重合体(P−5)と重合体(PAA)との混合物に代えて、上記合成例14で得た重合体(P−14)を用いた以外は、上記実施例1と同じ溶媒組成及び固形分濃度で液晶配向剤(AL−22)を調製した。
2.液晶配向膜の耐熱性評価
液晶配向剤を(AL−1)に代えて(AL−22)を用いた以外は上記実施例1と同様にして液晶配向膜の耐熱性評価を行った。その結果、この実施例では、膜の耐熱性は「A」であった。
3.PSA型液晶表示素子の製造
ITO膜からなる透明電極付きガラス基板の透明電極面上に、上記で調製した液晶配向剤(AL−22)を、スピンナーを用いて塗布し、80℃のホットプレートで1分間プレベークを行った。その後、庫内を窒素置換したオーブン中で、230℃で1時間加熱して膜厚0.1μmの塗膜を形成した。同じ操作を繰り返して、液晶配向膜を有する基板を1対(2枚)作成した。
上記基板のうちの1枚の液晶配向膜を有する面の外周に直径3.5μmの酸化アルミニウム球入りエポキシ樹脂接着剤をスクリーン印刷により塗布した後、1対の基板の液晶配向膜面を対向させ、150℃で1時間かけて接着剤を熱硬化させた。次いで、液晶注入口より基板間の間隙に、ネガ型液晶(メルク社製、MLC−6608)を充填した後、エポキシ系接着剤で液晶注入口を封止した。さらに、液晶注入時の流動配向を除くために、これを130℃で加熱してから室温まで徐冷した。
次に、一対の電極間に周波数60Hzの交流10Vを印加し、液晶が駆動している状態で、光源にメタルハライドランプを使用した紫外線照射装置を用いて、100,000J/mの照射量にて紫外線を照射した。なお、この照射量は、波長365nm基準で計測される光量計を用いて計測した値である。その後、基板の外側両面に、偏光板を、その偏光方向が互いに直交し、かつ、液晶配向膜の紫外線の光軸の基板面への射影方向と45°の角度をなすように貼り合わせることにより液晶表示素子を製造した。
4.液晶配向性の評価
上記で製造した液晶表示素子につき、上記実施例1と同様にして液晶配向性を評価した。その結果、この実施例では液晶配向性は「B」であった。
5.電圧保持率(VHR)の評価
上記で製造した液晶表示素子につき、上記実施例1と同様にして電圧保持率の評価を行った。その結果、この実施例では電圧保持率は「B」の評価であった。
[実施例23,24]
配合組成を下記表3に示す通り変更した以外は実施例1と同じ溶媒組成及び固形分濃度で調製を行い、液晶配向剤をそれぞれ得た。また、それぞれの液晶配向剤を用いて実施例22と同様にして液晶表示素子を製造するとともに、得られた液晶表示素子を用いて各種評価を行った。その結果を下記表4に示した。
Figure 2018013586
表3中、添加剤の略号は以下の意味である。
q−1、q−2、q−4、q−5;下記式(q−1)、式(q−2)、式(q−4)及び式(q−5)のそれぞれで表される化合物
q−3;ポリアクリル酸
なお、化合物(q−1)〜(q−5)は化合物[Q]に相当する。
Figure 2018013586
Figure 2018013586
以上の実施例の結果から分かるように、ポリエーテル[P]を含む液晶配向剤を用いて製造した液晶表示素子は、ポリエーテル[P]の代わりにアクリル系重合体を含む比較例のものと比べて、耐熱性、液晶配向性及び電圧保持特性のバランスが取れていた。

Claims (8)

  1. オキセタン環及びオキシラン環の少なくともいずれかを有するポリエーテル[P]を含有する液晶配向剤。
  2. オキセタン環、オキシラン環及び水酸基の少なくともいずれかと反応する官能基を合計2個以上有する化合物[Q]を更に含有する、請求項1に記載の液晶配向剤。
  3. ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル及びポリイミドよりなる群から選ばれる少なくとも一種を含有する、請求項1又は2に記載の液晶配向剤。
  4. 前記ポリエーテル[P]は光配向性基を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の液晶配向剤。
  5. 前記ポリエーテル[P]は重合性基を有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の液晶配向剤。
  6. 前記ポリエーテル[P]はプレチルト角発現部位を有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の液晶配向剤。
  7. 請求項1〜6のいずれか一項に記載の液晶配向剤から形成された液晶配向膜。
  8. 請求項7に記載の液晶配向膜を具備する液晶素子。
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