JP2018012774A - 熱硬化性樹脂組成物、層間絶縁用樹脂フィルム、複合フィルム、プリント配線板及びその製造方法 - Google Patents

熱硬化性樹脂組成物、層間絶縁用樹脂フィルム、複合フィルム、プリント配線板及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】誘電正接が低く、低熱膨張であり、配線の埋め込み性及び平坦性に優れる熱硬化性樹脂組成物、これを用いたフィルム取り扱い性に優れる層間絶縁用樹脂フィルム、フィルム取り扱い性に優れる複合フィルム、プリント配線板及びその製造方法を提供する。【解決手段】本発明の熱硬化性樹脂組成物はナノフィラーを含む無機充填材、熱硬化性樹脂及びエラストマを含有する。本発明の層間絶縁用樹脂フィルムは本発明の熱硬化性樹脂組成物を含む。本発明の複合フィルムは本発明の熱硬化性樹脂組成物を含む第一の樹脂層と第二の樹脂層とを含む。本発明のプリント配線板は本発明の層間絶縁用樹脂フィルムの硬化物又は本発明の複合フィルムの硬化物を含む。本発明のプリント配線板の製造方法は本発明の層間絶縁用樹脂フィルム又は本発明の複合フィルムを基材の片面又は両面にラミネートする工程を備える。【選択図】なし

Description

本発明は、熱硬化性樹脂組成物、層間絶縁用樹脂フィルム、複合フィルム、プリント配線板及びその製造方法に関する。
近年、電子機器の小型化、軽量化、多機能化等が一段と進み、これに伴って、LSI(Large Scale Integration)、チップ部品等の高集積化が進み、その形態も多ピン化及び小型化へと急速に変化している。このため、電子部品の実装密度を向上するために、多層プリント配線板の微細配線化の開発が進められている。これらの要求に合致する多層プリント配線板としては、ガラスクロスを含まない絶縁樹脂フィルムを、プリプレグの代わりに絶縁層(以下、「ビルドアップ層」ともいう)として用いるビルドアップ構造の多層プリント配線板が、軽量化、小型化及び微細化に適したプリント配線板として主流になりつつある。
また、コンピュータ、情報通信機器等は近年ますます高性能化及び高機能化し、大量のデータを高速で処理するために、扱う信号が高周波化する傾向にある。特に携帯電話及び衛星放送に使用される電波の周波数領域はGHz帯の高周波領域のものが使用されており、高周波化による伝送損失の抑制が要求される。そのため、高周波領域で使用する有機材料としては、比誘電率及び誘電正接が低い材料が望まれている。
このような要求に応えるため、ビルドアップ層に対しても様々な取り組みがなされてきた。例えば、特許文献1には、シアネート樹脂を含有する樹脂組成物が開示されている。
一方で、ビルドアップ層は加工寸法安定性の向上及び半導体実装後の反り量の低減のために、低熱膨張化が求められている。ビルドアップ層を低熱膨張化する方法の一つとして、フィラーを高充填する方法が挙げられる。例えば、ビルドアップ層の40質量%以上をシリカフィラーとすることによって、ビルドアップ層の低熱膨張化が図られている(例えば、特許文献2〜4参照)。
特開2014−136779号公報 特開2007−87982号公報 特開2009−280758号公報 特開2005−39247号公報
しかしながら、次世代の材料として、特許文献1に開示される樹脂組成物よりも更に高周波領域での誘電正接が低い材料の需要が高まりつつある。また、次世代の材料として、特許文献2〜4に開示される樹脂組成物よりも更に低熱膨張である材料の需要が高まりつつある。
本発明は、このような状況に鑑みなされたものであり、誘電正接が低く、低熱膨張であり、配線の埋め込み性及び平坦性に優れる熱硬化性樹脂組成物、これを用いたフィルム取り扱い性に優れる層間絶縁用樹脂フィルム、フィルム取り扱い性に優れる複合フィルム、プリント配線板及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の課題を解決すべく検討を進めた結果、ナノフィラー(a)を含む無機充填材(A)、熱硬化性樹脂(B)及びエラストマ(C)を含有する熱硬化性樹脂組成物が当該課題を解決できることを見出した。
すなわち、本発明は、次の[1]〜[11]を提供する。
[1]ナノフィラー(a)を含む無機充填材(A)、熱硬化性樹脂(B)及びエラストマ(C)を含有する熱硬化性樹脂組成物。
[2]ナノフィラーの含有量が無機充填材(A)の全量に対して0.1〜1.0質量%である上記[1]に記載の熱硬化性樹脂組成物。
[3]熱硬化性樹脂(B)が、少なくとも2個のN−置換マレイミド基を有するマレイミド化合物(b1)由来の構造単位とジアミン化合物(b2)由来の構造単位とを有するポリイミド化合物である上記[1]又は[2]に記載の熱硬化性樹脂組成物。
[4]上記[1]〜[3]のいずれか1つに記載の熱硬化性樹脂組成物を含む、層間絶縁用樹脂フィルム。
[5]上記[1]〜[3]のいずれか1つに記載の熱硬化性樹脂組成物を含む第一の樹脂層と、第二の樹脂層とを含む、複合フィルム。
[6]第二の樹脂層が、多官能エポキシ樹脂(D)、活性エステル硬化剤(E)及びフェノール性水酸基含有ポリブタジエン変性ポリアミド樹脂(F)を含有する第二の熱硬化性樹脂組成物を含む、上記[5]に記載の複合フィルム。
[7]第二の熱硬化性樹脂組成物中の多官能エポキシ樹脂(D)のエポキシ基に対する、活性エステル硬化剤(E)のエステル基の当量比(エステル基/エポキシ基)が0.05〜1.5である、上記[6]に記載の複合フィルム。
[8]第二の熱硬化性樹脂組成物が、更にリン系硬化促進剤(G)を含有する、上記[6]又は[7]に記載の複合フィルム。
[9]硬化物の5GHzの誘電正接が0.005以下である、上記[5]〜[8]のいずれか1つに記載の複合フィルム。
[10]上記[4]に記載の層間絶縁用樹脂フィルムの硬化物、又は上記[5]〜[9]のいずれか1つに記載の複合フィルムの硬化物を含む、プリント配線板。
[11]上記[4]に記載の層間絶縁用樹脂フィルム、又は上記[5]〜[9]のいずれか1つに記載の複合フィルムを、基材の片面又は両面にラミネートする工程を備える、プリント配線板の製造方法。
本発明によれば、誘電正接が低く、低熱膨張であり、配線の埋め込み性及び平坦性に優れる熱硬化性樹脂組成物、これを用いたフィルム取り扱い性に優れる層間絶縁用樹脂フィルム、フィルム取り扱い性に優れる複合フィルム、プリント配線板及びその製造方法を提供することができる。
本実施形態の複合フィルムを模式的に示した図である。
以下、本実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書においてはX以上でありY以下である数値範囲(X、Yは実数)を「X〜Y」と表すことがある。例えば、「0.1〜2」という記載は0.1以上であり2以下である数値範囲を示し、当該数値範囲には0.1、0.34、1.03、2等が含まれる。また、本実施形態は、本発明の一つの実施形態に過ぎず、本発明を限定しない。
また、本明細書において「樹脂組成物」とは、後述する各成分の混合物、当該混合物を半硬化させた(いわゆるBステージ状とした)物を含む。
また、本明細書において「層間絶縁層」とは、2層の導体層の間に位置し、当該導体層を絶縁するための層である。本明細書の「層間絶縁層」は、例えば、層間絶縁用樹脂フィルムの硬化物、複合フィルムの硬化物等が挙げられる。なお、本明細書において「層」とは、一部が欠けているもの、ビア又はパターンが形成されているものも含む。
[熱硬化性樹脂組成物]
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物は、ナノフィラー(a)を含む無機充填材(A)、熱硬化性樹脂(B)及びエラストマ(C)を含有する。
<ナノフィラー(a)>
ナノフィラー(a)とは、平均粒径300nm以下である無機充填剤を指す。ナノフィラー(a)は特に限定されないが、例えば、シリカのナノフィラー、アルミナのナノフィラー、酸化チタンのナノフィラー等が挙げられ、より熱膨張係数を低減させる点からは、シリカのナノフィラーが好ましい。シリカのナノフィラーとしては、例えば、球状シリカのナノフィラー、無定形シリカのナノフィラー、溶融シリカのナノフィラー、結晶シリカのナノフィラー、合成シリカのナノフィラー等が挙げられる。ナノフィラー(a)は、樹脂組成物中における分散性向上、有機溶剤に樹脂組成物を溶解又は分散させた樹脂ワニス中における分散性向上、樹脂ワニスの粘度低減による流動性向上、樹脂組成物から形成される絶縁層の表面粗度の増大抑制等の観点から、球状であることが好ましい。
ナノフィラー(a)の平均粒径は200nm以下が好ましく、100nm以下がより好ましい。平均粒径が200nm以下である場合、ナノフィラー(a)を含む無機充填材(A)の流動性が良好となり、配線埋め込み性及び表面平坦性が優れる傾向がある。また、ナノフィラー(a)の平均粒径は10nm以上が好ましく、30nm以上がより好ましい。無機充填材(A)の流動性を最も向上させ、配線埋め込み性及び表面平坦性が良好となる点で、無機充填材(A)の全体の平均粒径が0.5μmのとき、ナノフィラー(a)として平均粒径が50nmのナノシリカを使用することが最も好ましい。
ナノフィラー(a)の含有量は無機充填材(A)の全量を基準として0.1〜1.0質量%であることが好ましい。樹脂組成物を樹脂ワニスとした場合におけるワニス粘度の上昇を抑制し、取り扱い性が良好となることから、ナノフィラー(a)の含有量は5.0質量%以下が好ましく、3.0質量%以下がより好ましく、1.0質量%以下がさらに好ましい。ナノフィラー(a)の含有量が0.1質量%以上であると無機充填材(A)の流動性が良好となり、配線埋め込み性及び表面平坦性が向上する傾向にある。
ナノフィラー(a)の熱硬化性樹脂組成物への分散性を高める観点から、必要に応じ、ナノフィラー(a)を予め有機溶媒中に分散させたスラリーとして用いることが好ましい。ナノフィラー(a)をスラリー化する際に使用される有機溶媒は特に限定されないが、例えば、後述する熱硬化性樹脂(B)の製造工程で例示する有機溶媒が適用できる。これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用して用いてもよい。また、これらの有機溶媒の中でも、より高い分散性の観点から、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンが好ましい。
また、ナノフィラー(a)のスラリーの固形分濃度は特に限定されないが、例えば、ナノフィラー(a)の沈降性及び分散性の観点から、30〜80質量%が好ましく、40〜80質量%がより好ましい。
<無機充填材(A)>
無機充填材(A)としては、特に限定されず、例えば、シリカ、アルミナ、硫酸バリウム、タルク、クレー、雲母粉、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、ホウ酸アルミニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム等が挙げられる。これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用して用いてもよい。これらの中でも、熱膨張係数をより低減させる観点から、無機充填材(A)としてシリカを含有することが好ましい。シリカとしては、例えば、球状シリカ、無定形シリカ、溶融シリカ、結晶シリカ、合成シリカ等が挙げられる。
無機充填材(A)の形状は、球状、破砕状、針状又は板状のいずれであってもよいが、樹脂組成物中における分散性向上、有機溶媒に樹脂組成物を溶解又は分散させた樹脂ワニス中における分散性向上、樹脂ワニスの粘度低減による流動性向上、樹脂組成物から形成される絶縁層の表面粗度の増大抑制等の観点から、球状であることが好ましい。
無機充填材(A)の平均粒径は、1μm以下が好ましく、0.7μm以下がより好ましい。無機充填材(A)の平均粒径が1μm以下であれば、樹脂組成物から形成された絶縁層のめっき銅との接着性に優れる傾向にある。また、無機充填材(A)を含有する樹脂組成物を樹脂ワニスとした場合の粘度上昇を抑制し、取り扱い性を良好にする観点から、無機充填材(A)の平均粒径は0.01μm以上が好ましく、0.05μm以上がより好ましく、0.1μm以上がさらに好ましい。なお、平均粒径とは、粒子の全体積を100%として、粒子径による累積度数分布曲線を求めたときの体積50%に相当する点の粒径のことであり、レーザー回折散乱法を用いた粒度分布測定装置等で測定することができる。本実施形態においては、上記の方法により粒度分布を測定した場合、無機充填剤(A)の平均粒径は、ナノフィラー(a)、及びナノフィラー(a)以外の無機充填剤、を合計した粒子群の平均粒径として算出されることがある。この場合、粒度分布のナノフィラー(a)に相当する部分にピークを持つことをもって、ナノフィラー(a)を含有している、とみなす。
無機充填材(A)の分散性及び無機充填材(A)と熱硬化性樹脂組成物中の有機成分との接着性を向上させる目的で、必要に応じ、カップリング剤を使用してもよい。カップリング剤としては特に限定されず、例えば、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤等が挙げられる。これらの中でも、シランカップリング剤が好ましい。シランカップリング剤としては、アミノシラン系カップリング剤、エポキシシラン系カップリング剤、フェニルシラン系カップリング剤、アルキルシラン系カップリング剤、アルケニルシラン系カップリング剤、メルカプトシラン系カップリング剤等が挙げられる。これらの中でも、無機充填材(A)の分散性向上の観点、及び無機充填材(A)と有機成分との接着性向上の観点から、アミノシラン系カップリング剤が好ましい。これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用して用いてもよい。
カップリング剤を使用する場合、その使用量は特に限定されず、例えば、使用する無機充填材(A)に対して、0.1〜5質量%が好ましく、0.5〜3質量%がより好ましい。この範囲であれば、無機充填材(A)の使用による特長をより効果的に発揮できる。
カップリング剤を使用する場合、その添加方式は、樹脂組成物中に無機充填材(A)を配合した後、カップリング剤を添加する、いわゆるインテグラルブレンド処理方式であってもよいが、より効果的に無機充填材(A)の特長を発現させる観点から、配合前の無機充填材に対して予めカップリング剤を乾式又は湿式で表面処理する方式が好ましい。
無機充填材(A)は、熱硬化性樹脂組成物への分散性を高める観点から、予め有機溶媒中に分散させたスラリーの状態で用いることが好ましい。無機充填材(A)のスラリーに使用される有機溶媒としては、特に限定されないが、例えば、後述するポリイミド化合物(B1)の製造工程で例示する有機溶媒が適用できる。これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用して用いてもよい。これらの有機溶媒の中でも、より高い分散性の観点から、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンが好ましい。
無機充填材(A)のスラリーの固形分濃度は特に限定されないが、例えば、無機充填材(A)の沈降性及び分散性の観点から、50〜80質量%が好ましく、60〜75質量%がより好ましい。
無機充填材(A)の含有量は、本実施形態の熱硬化性樹脂組成物に求める特性及び機能によって適宜選択できるが、熱硬化性樹脂組成物の固形分中、40〜90質量%が好ましく、60〜85質量%がより好ましく、65〜80質量%がさらに好ましい。無機充填材(A)の含有量をこのような範囲にすることで、低い熱膨張率を有することができる。
なお、本明細書において、樹脂組成物に含まれる固形分とは、樹脂組成物を構成する成分から揮発性の成分を除外した残分を意味する。
<熱硬化性樹脂(B)>
熱硬化性樹脂(B)は特に限定されるものではなく、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、シアネート樹脂、マレイミド樹脂等を用いることができる。これらの中でも、マレイミド樹脂が好ましく、低熱膨張を示す観点から、少なくとも2個のN−置換マレイミド基を有するマレイミド化合物(b1)由来の構造単位とジアミン化合物(b2)由来の構造単位とを有するポリイミド化合物(以下、「ポリイミド化合物(B1)」ともいう)がより好ましい。少なくとも2個のN−置換マレイミド基を有するマレイミド化合物(b1)、ジアミン化合物(b2)は、特に限定されるものではない。
少なくとも2個のN−置換マレイミド基を有するマレイミド化合物(b1)(以下、「成分(b1)」ともいう)は、N−置換マレイミド基を2個以上有するマレイミド化合物であれば、特に限定されるものではない。
成分(b1)としては、特に限定されないが、例えば、ビス(4−マレイミドフェニル)メタン、ポリフェニルメタンマレイミド、ビス(4−マレイミドフェニル)エーテル、ビス(4−マレイミドフェニル)スルホン、3,3’−ジメチル−5,5’−ジエチル−4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド、4−メチル−1,3−フェニレンビスマレイミド、m−フェニレンビスマレイミド、2,2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、1,6−ビスマレイミド−(2,2,4−トリメチル)ヘキサン等が挙げられる。これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用して用いてもよい。これらの中でも、安価である点から、ビス(4−マレイミドフェニル)メタンが好ましく、誘電特性に優れ、低吸水性である点から、3,3’−ジメチル−5,5’−ジエチル−4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミドが好ましく、導体との高接着性、硬化物の伸び、破断強度、弾性率等の機械特性、誘電特性に優れる点から、2,2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、1,6−ビスマレイミド−(2,2,4−トリメチル)ヘキサンが好ましい。
成分(b1)由来の構造単位としては、例えば、下記一般式(1−1)で表される基、下記一般式(1−2)で表される基等が挙げられる。
一般式(1−1)及び(1−2)中、Aは成分(b1)の残基を示し、*は結合部を示す。
なお、残基とは、原料成分から結合に供された官能基(成分(b1)においてはマレイミド基)を除いた部分の構造をいう。
が示す残基としては、下記一般式(2)、(3)、(4)又は(5)で表される2価の基であることが好ましい。

(式中、Rは各々独立に、水素原子、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基、又はハロゲン原子を示す。)

(式中、R及びRは各々独立に、水素原子、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子を示し、Aは炭素数1〜5のアルキレン基若しくはアルキリデン基、エーテル基、スルフィド基、スルフォニル基、カルボオキシ基、ケトン基、単結合又は下記一般式(3−1)で表される基である。)

(式中、R及びRは各々独立に、水素原子、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子を示し、Aは炭素数1〜5のアルキレン基、イソプロピリデン基、エーテル基、スルフィド基、スルフォニル基、カルボオキシ基、ケトン基又は単結合である。)

(式中、iは1〜10の整数である。)

(式中、R及びRは各々独立に、水素原子又は炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基を示し、jは1〜8の整数である。)
一般式(2)中のR、一般式(3)中のR及びR、一般式(3−1)中のR及びR、一般式(5)中のR及びRが示す炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基等が挙げられる。該脂肪族炭化水素基としては、炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基であってもよく、メチル基であってもよい。
一般式(3)中のA及び一般式(3−1)中のAが示す炭素数1〜5のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基等が挙げられる。
一般式(3)中のAが示す炭素数1〜5のアルキリデン基としては、エチリデン基、プロピリデン基、イソプロピリデン基、ブチリデン基、イソブチリデン基、ペンチリデン基等が挙げられる。
ジアミン化合物(b2)(以下、「成分(b2)」ともいう)は、アミノ基を2個有する化合物であれば、特に限定されるものではない。
成分(b2)としては、例えば、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジエチルジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルケトン、4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジヒドロキシベンジジン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、3,3’−ジメチル−5,5’−ジエチル−4,4’−ジフェニルメタンジアミン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、1,3−ビス{1−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1−メチルエチル}ベンゼン、1,4−ビス{1−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1−メチルエチル}ベンゼン、4,4’−[1,3−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスアニリン、4,4’−[1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスアニリン、3,3’−[1,3−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスアニリン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン等が挙げられる。これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用して用いてもよい。
これらの中でも、有機溶媒への溶解性が高く、合成時の反応率が高く、且つ耐熱性を高くできる点からは、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジエチルジフェニルメタン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、4,4’−[1,3−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスアニリン、4,4’−[1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスアニリンが好ましく、誘電特性に優れ、低吸水性である点からは、3,3’−ジメチル−5,5’−ジエチル−4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミドが好ましく、導体との高接着性、硬化物の伸び、破断強度等の機械特性に優れる点から、2,2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパンが好ましい。更に、上記の溶解性、反応率、耐熱性、導体との高接着性に優れる点に加えて、優れた高周波特性と低吸湿性を発現できる点からは、4,4’−[1,3−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスアニリン、4,4’−[1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスアニリンがより好ましい。
成分(b2)由来の構造単位としては、例えば、下記一般式(6−1)で表される基、下記一般式(6−2)で表される基等が挙げられる。
一般式(6−1)及び(6−2)中、Aは成分(b2)の残基を示し、*は結合部を示す。
が示す残基としては、下記一般式(7)で表される2価の基であることが好ましい。

(式中、R及びRは各々独立に、水素原子、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基、炭素数1〜5のアルコキシ基、水酸基又はハロゲン原子を示し、Aは炭素数1〜5のアルキレン基若しくはアルキリデン基、エーテル基、スルフィド基、スルフォニル基、カルボオキシ基、ケトン基、フルオレニレン基、単結合、下記一般式(7−1)又は下記一般式(7−2)で表される基である。)

(式中、R10及びR11は各々独立に、水素原子、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子を示し、Aは炭素数1〜5のアルキレン基、イソプロピリデン基、m−又はp−フェニレンジイソプロピリデン基、エーテル基、スルフィド基、スルフォニル基、カルボオキシ基、ケトン基又は単結合である。)

(式中、R12は各々独立に、水素原子、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子を示し、A及びAは炭素数1〜5のアルキレン基、イソプロピリデン基、エーテル基、スルフィド基、スルフォニル基、カルボオキシ基、ケトン基又は単結合である。)
一般式(7)中のR及びR、一般式(7−1)中のR10及びR11、一般式(7−2)中のR12が示す炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基は、前記一般式(2)中のRが示す炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基と同様に説明される。
一般式(7)中のA、一般式(7−1)中のA、一般式(7−2)中のA及びAが示す炭素数1〜5のアルキレン基としては、前記一般式(3)中のAが示す炭素数1〜5のアルキレン基と同様に説明される。
一般式(7)中のAが示す炭素数1〜5のアルキリデン基としては、前記一般式(3)中のAが示す炭素数1〜5のアルキリデン基と同様に説明される。
熱硬化性樹脂(B)は、有機溶媒への溶解性、高周波特性、導体との高接着性及びフィルムの成形性等の点から、下記一般式(8)で表されるポリアミノビスマレイミド化合物を含有することが好ましい。

(式中、Aは前記一般式(1−1)のAと同様に説明され、A10は前記一般式(6−1)のAと同様に説明される。)
ポリイミド化合物(B1)は、例えば、成分(b1)と成分(b2)とを反応させることで製造することができる。
成分(b1)と成分(b2)との反応は、有機溶媒中で行うことが好ましい。有機溶媒としては、特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、ブタノール、ブチルセロソルブ、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素類;メトキシエチルアセテート、エトキシエチルアセテート、ブトキシエチルアセテート、酢酸エチル等のエステル類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等の含窒素類などが挙げられる。これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用して用いてもよい。これらの有機溶媒の中でも、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドが溶解性の観点から好ましい。
ポリイミド化合物(B1)を製造する際の、成分(b1)のマレイミド基当量(Ta1)と成分(b2)の−NH2基当量(Ta2)の当量比(Ta2/Ta1)は、0.05〜1.0が好ましく、0.1〜0.8がより好ましい。上記範囲内で成分(b1)と成分(b2)とを反応させることにより、本実施形態の熱硬化性樹脂組成物において、良好な高周波特性、耐熱性、難燃性及びガラス転移温度が得られる。
成分(b1)と成分(b2)とを反応させる際には、必要に応じて反応触媒を使用することができる。反応触媒としては、特に限定されるものではないが、例えば、p−トルエンスルホン酸等の酸性触媒;トリエチルアミン、ピリジン、トリブチルアミン等のアミン類;メチルイミダゾール、フェニルイミダゾール等のイミダゾール類;トリフェニルホスフィン等のリン系触媒などが挙げられる。これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用して用いてもよい。反応触媒を使用する場合、その使用量は、特に限定されないが、例えば、成分(b1)と成分(b2)に対して、0.01〜5.0質量%の範囲で使用することができる。
成分(b1)、成分(b2)、有機溶媒及び必要により反応触媒等を合成釜に所定量仕込み、マイケル付加反応させることによりポリイミド化合物(B1)が得られる。この工程での反応条件としては、特に限定されるものではないが、例えば、反応温度は50〜160℃、反応時間は1〜10時間の範囲で行うことが反応速度等の作業性及びゲル化抑制等の観点から好ましい。
また、この工程では前述の有機溶媒を追加又は濃縮して、反応原料の固形分濃度、溶液粘度を調整することができる。反応原料の固形分濃度は、特に限定されないが、例えば、10〜90質量%であることが好ましく、20〜80質量%であることがより好ましい。反応原料の固形分濃度が10質量%以上の場合、反応速度が遅くなりすぎず、製造コストの面で有利である。また、反応原料の固形分濃度が90質量%以下の場合、良好な溶解性が得られ、攪拌効率が良く、ゲル化することも少ない。
なお、ポリイミド化合物(B1)の製造後に、目的に合せて有機溶媒の一部又は全部を除去して濃縮してもよく、有機溶媒を追加して希釈することができる。追加で使用される有機溶媒としては、熱硬化性樹脂(B)の製造工程で例示する有機溶媒が適用できる。これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用して用いてもよい。これらの中でも、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドが、溶解性の観点から好ましい。
ポリイミド化合物(B1)の重量平均分子量は、特に限定されるものではないが、例えば、500〜6,000が好ましく、1,000〜5,000がより好ましく、1,500〜4,000がさらに好ましい。ポリイミド化合物(B1)の重量平均分子量は、実施例に記載の測定方法が適用できる。
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物中の熱硬化性樹脂(B)の含有量は、本実施形態の熱硬化性樹脂組成物中に含まれる全樹脂成分の合計質量中、20〜95質量%が好ましく、40〜90質量%がより好ましく、65〜85質量%がさらに好ましい。
<エラストマ(C)>
エラストマ(C)としては、特に限定されないが、例えば、ポリブタジエン系エラストマ、スチレン系エラストマ、オレフィン系エラストマ、ウレタン系エラストマ、ポリエステル系エラストマ、ポリアミド系エラストマ、アクリル系エラストマ、シリコーン系エラストマ、これらのエラストマの誘導体等が挙げられる。これらは1種類を単独で用いることができ、2種類以上を併用して用いることもできる。
エラストマ(C)としては、分子末端又は分子鎖中に反応性官能基を有するものを用いることができる。反応性官能基としては、例えば、無水マレイン酸基、エポキシ基、水酸基、カルボキシ基、アミノ基、アミド基、イソシアナト基、アクリル基、メタクリル基及びビニル基からなる群より選択される1種類以上であることが好ましく、金属箔との密着性の点から、無水マレイン酸基、エポキシ基、水酸基、カルボキシ基、アミノ基及びアミド基からなる群より選択される1種類以上であることがより好ましく、誘電特性の点から、無水マレイン酸基がさらに好ましい。これらの反応性官能基を有することにより、樹脂への相溶性が向上し、層間絶縁層を形成した際の無機充填材(A)と樹脂成分との分離が抑制される傾向にある。同様の観点から、エラストマ(C)は無水マレイン酸によって変性されたエラストマであることが好ましい。
ポリブタジエン系エラストマは、1,2−ビニル基を含む、1,4−トランス体と1,4−シス体との構造体からなるものが好適に挙げられる。
ポリブタジエン系エラストマとしては、樹脂への相溶性が向上し、層間絶縁層を形成した際の無機充填材(A)と樹脂成分との分離が抑制される観点から、反応性官能基を有するものが好ましく、特に酸無水物で変性されているポリブタジエン系エラストマが好ましい。酸無水物としては、特に限定されないが、例えば、無水フタル酸、無水マレイン酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、無水ナジック酸、無水グルタル酸、無水ジメチルグルタル酸、無水ジエチルグルタル酸、無水コハク酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸等が挙げられ、これらの中でも、無水マレイン酸が好ましい。
エラストマ(C)が酸無水物で変性されている場合、エラストマ(C)1分子中に含まれる酸無水物由来の基(以下、「酸無水物基」ともいう)の数は、1〜10が好ましく、1〜6がより好ましく、2〜5がさらに好ましい。酸無水物基の数が1分子中に1以上であると、層間絶縁層を形成した際の無機充填材(A)と樹脂成分との分離がより抑制される傾向にある。また、酸無水物基の数が1分子中に10以下であると、熱硬化性樹脂組成物の誘電正接がより低くなる傾向にある。エラストマ(C)が無水マレイン酸で変性されている場合、上記と同様の観点から、エラストマ(C)1分子中に含まれる無水マレイン酸由来の基(以下、「無水マレイン酸基」ともいう)の数は、1〜10が好ましく、1〜6がより好ましく、2〜5がさらに好ましい。
ポリブタジエン系エラストマは、市販品として入手可能であり、その具体例としては、例えば、「POLYVEST(登録商標)MA75」、「POLYVEST(登録商標)EP MA120」(以上、エボニック社製、商品名)、「Ricon(登録商標)130MA8」、「Ricon(登録商標)131MA5」、「Ricon(登録商標)184MA6」(以上、クレイバレー社製、商品名)等が挙げられる。
スチレン系エラストマとしては、例えば、スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマー、スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロックコポリマー、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロックコポリマー等が好適に挙げられる。スチレン系エラストマを構成する成分としては、スチレンの他に、α−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−プロピルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン等のスチレン誘導体が挙げられる。スチレン系エラストマは、市販品として入手可能であり、その具体例としては、「タフプレン(登録商標)」、「アサプレン(登録商標)T」、「タフテック(登録商標)H」、「タフテック(登録商標)MP10」、「タフテック(登録商標)M1911」、「タフテック(登録商標)M1913」(以上、旭化成ケミカルズ株式会社製)、「エポフレンド(登録商標)AT501」、「エポフレンド(登録商標)CT310」(以上、株式会社ダイセル製)等が挙げられる。
オレフィン系エラストマとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−ペンテン等の炭素数2〜20のα−オレフィンの共重合体が挙げられ、例えば、エチレン−プロピレン共重合体(EPR)、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)等が好適に挙げられる。また、前記α−オレフィンと、ジシクロペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、シクロオクタジエン、メチレンノルボルネン、エチリデンノルボルネン、ブタジエン、イソプレン等の炭素数2〜20の非共役ジエンとの共重合体が挙げられる。さらには、ブタジエン−アクニロニトリル共重合体にメタクリル酸を共重合したカルボキシ変性NBR等が挙げられる。オレフィン系エラストマは、市販品として入手可能であり、その具体例としては、「PB3600」、「PB4700」(以上、株式会社ダイセル製)、「G−1000」、「G−2000」、「G−3000」、「JP−100」、「JP−200」、「BN−1015」、「TP−1001」、「TEA−1000」、「EA−3000」、「TE−2000」、「EMA−3000」(以上、日本曹達株式会社製)、「デナレックス(登録商標)R45」(ナガセケムテックス株式会社製)等が挙げられる。
ウレタン系エラストマは、例えば、短鎖ジオールとジイソシアネートとからなるハードセグメントと、高分子(長鎖)ジオールとジイソシアネートとからなるソフトセグメントとを含有するものが好適に挙げられる。
高分子(長鎖)ジオールとしては、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンオキサイド、ポリ(1,4−ブチレンアジペート)、ポリ(エチレン−1,4−ブチレンアジペート)、ポリカプロラクトン、ポリ(1,6−ヘキシレンカーボネート)、ポリ(1,6−へキシレン・ネオペンチレンアジペート)等が挙げられる。高分子(長鎖)ジオールの数平均分子量は、500〜10,000が好ましい。
短鎖ジオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ビスフェノールA等が挙げられる。短鎖ジオールの数平均分子量は、48〜500が好ましい。
ウレタン系エラストマは、市販品として入手可能であり、その具体例としては、「PANDEX(登録商標)T−2185」、「PANDEX(登録商標)T−2983N」(以上、DIC株式会社製)等が挙げられる。
ポリエステル系エラストマとしては、例えば、ジカルボン酸又はその誘導体とジオール化合物又はその誘導体とを重縮合して得られるものが挙げられる。
ジカルボン酸の具体例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸及びこれらの芳香核の水素原子がメチル基、エチル基、フェニル基等で置換された芳香族ジカルボン酸;アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等の炭素数2〜20の脂肪族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸などが挙げられる。これらの化合物は1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用して用いてもよい。
ジオール化合物の具体例としては、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,10−デカンジオール等の脂肪族ジオール;1,4−シクロヘキサンジオール等の脂環式ジオール;ビスフェノールA、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、レゾルシン等の芳香族ジオールなどが挙げられる。これらの化合物は1種類を単独で用いることができ、2種類以上を併用して用いることもできる。
また、ポリエステル系エラストマとして、芳香族ポリエステル(例えば、ポリブチレンテレフタレート)部分をハードセグメント成分に、脂肪族ポリエステル(例えば、ポリテトラメチレングリコール)部分をソフトセグメント成分にしたマルチブロック共重合体が好適に挙げられる。マルチブロック共重合体は、ハードセグメントとソフトセグメントの種類、比率、分子量の違いにより様々なグレードのものがある。その具体例としては、「ハイトレル(登録商標)」(デュポン・東レ株式会社製)、「ペルプレン(登録商標)」(東洋紡績株式会社製)、「エスペル(登録商標)」(日立化成株式会社製)等が挙げられる。
ポリアミド系エラストマとしては、例えば、ポリアミドをハードセグメント成分、ポリブタジエン、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリイソプレン、エチレンプロピレン共重合体、ポリエーテル、ポリエステル、ポリブタジエン、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリウレタン、シリコーンゴム等をソフトセグメント成分としたブロック共重合体が挙げられる。
ポリアミド系エラストマは、市販品として入手可能であり、その具体例としては、「UBEポリアミドエラストマ」(宇部興産株式会社製)、「ダイアミド(登録商標)」(ダイセル・エボニック株式会社製)、「PEBAX(登録商標)」(東レ株式会社製)、「グリロン(登録商標)ELY」(エムスケミー・ジャパン株式会社製)、「ノバミッド(登録商標)」(三菱化学株式会社製)、「グリラックス(登録商標)」(DIC株式会社製)、「KAYAFLEX BPAM−01」、「KAYAFLEX BPAM−155」(以上、日本化薬株式会社製)等が挙げられる。
アクリル系エラストマとしては、例えば、アクリル酸エステルを主成分とする原料モノマーの重合体が挙げられる。アクリル酸エステルとしては、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、メトキシエチルアクリレート、エトキシエチルアクリレート等が好適に挙げられる。また、架橋点モノマーとして、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル等を共重合させたものであってもよく、さらに、アクリロニトリル、エチレン等を共重合させたものであってもよい。具体的には、アクリロニトリル−ブチルアクリレート共重合体、アクリロニトリル−ブチルアクリレート−エチルアクリレート共重合体、アクリロニトリル−ブチルアクリレート−グリシジルメタクリレート共重合体等が挙げられる。
シリコーン系エラストマは、オルガノポリシロキサンを主成分とするエラストマであり、例えば、ポリジメチルシロキサン系、ポリメチルフェニルシロキサン系、ポリジフェニルシロキサン系等に分類される。シリコーン系エラストマは、市販品として入手可能であり、その具体例としては、「X−22−163B」、「X−22−163C」、「X−22−1821」、「X−22−162C」(以上、信越化学工業株式会社製)、コアシェル型シリコーンゴム「SYシリーズ」(旭化成ワッカーシリコーン株式会社製)、「SEシリーズ」、「CYシリーズ」、「SHシリーズ」(以上、東レ・ダウコーニング株式会社製)等が挙げられる。
これらのエラストマの中でも、耐熱性、絶縁信頼性の点から、スチレン系エラストマ、ポリブタジエン系エラストマ、オレフィン系エラストマ、ポリアミド系エラストマ、シリコーン系エラストマが好ましく、誘電特性の点から、ポリブタジエン系エラストマ、スチレン系エラストマがより好ましい。
また、エラストマ(C)の重量平均分子量は、500〜50,000であることが好ましく、1,000〜30,000であることがより好ましい。エラストマ(C)の重量平均分子量が500以上の場合、得られる熱硬化性樹脂組成物の硬化性及び硬化物の誘電特性がより良好となる傾向にある。また、エラストマ(C)の重量平均分子量が50,000以下である場合、得られる層間絶縁層を形成した際の無機充填材(A)と樹脂成分との分離が抑制される傾向にある。なお、エラストマ(C)の重量平均分子量は、実施例に記載のポリイミド化合物(B1)の重量平均分子量の測定方法が適用できる。
エラストマ(C)の含有量は、特に限定されないが、本実施形態の熱硬化性樹脂組成物中に含まれる全樹脂成分の合計質量中、1〜70質量%が好ましく、5〜50質量%がより好ましく、10〜30質量%がさらに好ましい。エラストマ(C)の含有量を上記範囲内とすることにより、誘電正接が低く、フィルムにした際の取り扱い性に優れ、且つ得られる層間絶縁層の樹脂分離が発生しない傾向にある。
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物中における熱硬化性樹脂(B)及びエラストマ(C)の合計含有量は、特に限定されないが、本実施形態の熱硬化性樹脂組成物中に含まれる全樹脂成分の合計質量中、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上がさらに好ましい。含有量の上限は特に限定されず、100%であってもよい。
<最低溶融粘度>
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物における最低溶融粘度は、積層プレスの工程で、熱硬化性樹脂組成物が溶融し固化して、適切に接着するという観点から、300〜1500Pa・sであることが好ましく、400〜1000Pa・sであることがより好ましい。
<難燃剤、硬化促進剤等>
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、難燃剤、硬化促進剤等を含有してもよい。
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物に難燃剤を含有させることで、より良好な難燃性を付与することができる。難燃剤としては特に限定されず、例えば、塩素系難燃剤、臭素系難燃剤、リン系難燃剤、金属水和物系難燃剤等が挙げられる。環境への適合性からは、リン系難燃剤又は金属水和物系難燃剤が好ましい。
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物に適切な硬化促進剤を含有させることで、熱硬化性樹脂組成物の硬化性を向上させ、層間絶縁層の誘電特性、耐熱性、高弾性率性、ガラス転移温度等をより向上させることができる。硬化促進剤としては、特に限定されず、例えば、各種イミダゾール化合物及びその誘導体;各種第3級アミン化合物;各種第4級アンモニウム化合物;トリフェニルホスフィン等の各種リン系化合物などが挙げられる。
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物には、その他にも酸化防止剤、流動調整剤等の添加剤を含有させてもよい。
[層間絶縁用樹脂フィルム]
本実施形態の層間絶縁用樹脂フィルムは、本実施形態の熱硬化性樹脂組成物を含むものである。
本実施形態の層間絶縁用樹脂フィルムは、そのいずれか一方の面に支持体が設けられたものであってもよい。
支持体としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等のポリオレフィンのフィルム;ポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」ともいう)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルのフィルム;ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム等の各種プラスチックフィルムなどが挙げられる。また、銅箔、アルミニウム箔等の金属箔、離型紙などを使用してもよい。支持体及び後述する保護フィルムには、マット処理、コロナ処理等の表面処理が施してあってもよい。また、支持体及び後述する保護フィルムには、シリコーン樹脂系離型剤、アルキッド樹脂系離型剤、フッ素樹脂系離型剤等による離型処理が施してあってもよい。
支持体の厚さは特に限定されないが、10〜150μmが好ましく、25〜50μmがより好ましい。
本実施形態の層間絶縁用樹脂フィルムの用途は、特に限定されないが、接着フィルム、プリプレグ等の絶縁樹脂シート、回路基板、ソルダーレジスト、アンダーフィル材、ダイボンディング材、半導体封止材、穴埋め樹脂、部品埋め込み樹脂などの層間絶縁層が必要とされる用途の広範囲に使用できる。中でも、プリント配線板の製造において層間絶縁層を形成するために好適に使用することができる。
次に、本実施形態の層間絶縁用樹脂フィルムの製造方法について説明する。
<層間絶縁用樹脂フィルムの製造方法>
本実施形態の層間絶縁用樹脂フィルムは、例えば、次のようにして製造することができる。
層間絶縁用樹脂フィルムを製造する際には、まず、無機充填材(A)、熱硬化性樹脂(B)及びエラストマ(C)及び必要に応じて使用されるその他の成分を有機溶媒に溶解又は分散して、樹脂ワニス(以下、「層間絶縁用樹脂フィルム用ワニス」ともいう)の状態にすることが好ましい。
層間絶縁用樹脂フィルム用ワニスの製造に用いられる有機溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル類;セロソルブ、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等の(ジ)エチレングリコールモノアルキルエーテル又はプロピレングリコールモノアルキルエーテル;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド系溶媒などが挙げられる。これらの有機溶媒は単独で又は2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
有機溶媒の配合量は、層間絶縁用樹脂フィルム用ワニスの全質量に対して、10〜60質量%が好ましく、10〜35質量%がより好ましい。
このようにして製造した層間絶縁用樹脂フィルム用ワニスを、上記支持体に塗工した後、加熱乾燥させることにより、層間絶縁用樹脂フィルムを得られる。
支持体に層間絶縁用樹脂フィルム用ワニスを塗工する方法としては、例えば、コンマコーター、バーコーター、キスコーター、ロールコーター、グラビアコーター、ダイコーター等の塗工装置を用いることができる。これらの塗工装置は、膜厚によって、適宜選択することが好ましい。
塗工後の乾燥条件は特に限定されないが、例えば、30〜60質量%の有機溶媒を含む層間絶縁用樹脂フィルム用ワニスの場合、50〜150℃で2〜10分程度乾燥させることにより、層間絶縁用樹脂フィルムを好適に形成することができる。乾燥後の層間絶縁用樹脂フィルム中の揮発成分(主に有機溶媒)の含有量が、10質量%以下となるように乾燥させることが好ましく、6質量%以下となるように乾燥させることがより好ましい。
本実施形態の層間絶縁用樹脂フィルムの厚さは、導体層上に配置して用いる場合、回路基板の導体層を埋め込む観点から、回路基板の導体層の厚さ以上であることが好ましい。具体的には、回路基板が有する導体層の厚さが、通常5〜70μmの範囲であるので、層間絶縁用樹脂フィルムの厚さは、5〜100μmであることが好ましい。
支持体上に形成された層間絶縁用樹脂フィルムの、支持体とは反対側の面には、保護フィルムを設けてもよい。保護フィルムの厚さは、特に限定されないが、例えば、1〜40μmである。保護フィルムを積層することにより、層間絶縁用樹脂フィルムの表面へのゴミ等の付着及びキズ付きを防止することができる。層間絶縁用樹脂フィルムは、ロール状に巻き取って保管することができる。
[複合フィルム]
本実施形態の複合フィルムは、本実施形態の熱硬化性樹脂組成物を含む第一の樹脂層と、第二の樹脂層とを含む複合フィルムであってもよい。
本実施形態の複合フィルムの例を模式断面図として図1に示す。本実施形態に係る複合フィルムは、第一の樹脂層1及び第二の樹脂層2、並びに必要に応じて支持体3及び/又は保護フィルム4を備えている。
なお、第一の樹脂層1と第二の樹脂層2との間には、明確な界面が存在せず、例えば、第一の樹脂層1の構成成分の一部と、第二の樹脂層2の構成成分の一部とが、相溶及び/又は混合した状態であってもよい。
<第一の樹脂層>
第一の樹脂層1は、本実施形態の熱硬化性樹脂組成物を含むものである。第一の樹脂層1は、例えば、本実施形態の複合フィルムを用いて多層プリント配線板を製造する場合において、回路基板と接着補助層との間に設けられ、回路基板の導体層とその上の層とを絶縁するために用いられる。また、第一の樹脂層1は、回路基板にスルーホール、ビアホール等が存在する場合、それらの中に流動し、該ホール内を充填する役割も果たす。
<第二の樹脂層>
第二の樹脂層2は、後述する本実施形態のプリント配線板において、本実施形態の熱硬化性樹脂組成物を含む第一の樹脂層の硬化物と、導体層との間に位置し、導体層との接着性を向上させることを目的として設けられるものである。第二の樹脂層を設けることにより、平滑な表面が得られ、且つ、めっきにて形成される導体層ともより良好な接着強度が得られる。したがって、微細配線を形成する観点から、第二の樹脂層2を設けることが好ましい。
第二の樹脂層2としては、導体層との接着性を向上させるものであれば、特に限定されないが、例えば、表面粗さが小さくてもめっき銅との接着性に優れ、且つ誘電正接が低い層間絶縁層を得る観点から、多官能エポキシ樹脂(D)、活性エステル硬化剤(E)、及びフェノール性水酸基含有ポリブタジエン変性ポリアミド樹脂(F)(以下、「成分(F)」ともいう)を含有する、第二の熱硬化性樹脂組成物を含むことが好ましい。
<多官能エポキシ樹脂(D)>
多官能エポキシ樹脂(D)は、エポキシ基を2個以上有する樹脂であれば、特に限定されないが、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、アラルキルノボラック型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、キサンテン型エポキシ樹脂等が挙げられる。めっき銅との接着性の観点から、ビフェニル構造を有することが好ましく、ビフェニル構造を有する多官能エポキシ樹脂又はビフェニル構造を有するアラルキルノボラック型エポキシ樹脂がより好ましい。
多官能エポキシ樹脂(D)としては、市販品を用いてもよい。市販されている多官能エポキシ樹脂(D)としては、ビフェニル構造を有するアラルキルノボラック型エポキシ樹脂である、日本化薬株式会社製「NC−3000−H」、「NC−3000−L」、「NC−3100」、「NC−3000」等が挙げられる。
多官能エポキシ樹脂(D)は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用して用いてもよい。
多官能エポキシ樹脂(D)のエポキシ当量としては、特に限定されないが、接着性の観点からは150〜450g/molが好ましく、200〜400g/molがより好ましく、250〜350g/molがさらに好ましい。
第二の熱硬化性樹脂組成物中の多官能エポキシ樹脂(D)の含有量は、特に限定されないが、第二の熱硬化性樹脂組成物に含まれる全樹脂成分の合計質量中、10〜90質量%が好ましく、20〜80質量%がより好ましく、30〜70質量%がさらに好ましい。多官能エポキシ樹脂(D)の含有量が、10質量%以上であれば、めっき銅とのより良好な接着強度が得られ、90質量%以下であれば、より低い誘電正接が得られる傾向にある。
<活性エステル硬化剤(E)>
活性エステル硬化剤(E)は、エステル基を1分子中に1個以上有し、エポキシ樹脂の硬化作用を有するものをいう。
活性エステル硬化剤(E)としては、特に限定されないが、例えば、脂肪族又は芳香族カルボン酸と脂肪族又は芳香族ヒドロキシ化合物とから得られるエステル化合物等が挙げられる。
これらの中でも、脂肪族カルボン酸、脂肪族ヒドロキシ化合物等から得られるエステル化合物は、脂肪族鎖を含むことにより有機溶媒への可溶性及びエポキシ樹脂との相溶性を高くできる傾向にある。
また、芳香族カルボン酸、芳香族ヒドロキシ化合物等から得られるエステル化合物は、芳香族環を有することで耐熱性を高められる傾向にある。
活性エステル硬化剤(E)としては、例えば、フェノールエステル化合物、チオフェノールエステル化合物、N−ヒドロキシアミンエステル化合物、複素環ヒドロキシ化合物のエステル化化合物等が挙げられる。
より具体的には、例えば、芳香族カルボン酸とフェノール性水酸基との縮合反応にて得られる芳香族エステルが挙げられ、ベンゼン、ナフタレン、ビフェニル、ジフェニルプロパン、ジフェニルメタン、ジフェニルエーテル、ジフェニルスルホン酸等の芳香環の水素原子の2〜4個をカルボキシ基で置換したものから選ばれる芳香族カルボン酸成分と、上述した芳香環の水素原子の1個を水酸基で置換した1価フェノールと芳香環の水素原子の2〜4個を水酸基で置換した多価フェノールとの混合物を原材料として、芳香族カルボン酸とフェノール性水酸基との縮合反応にて得られる芳香族エステル等が好ましい。すなわち、上記芳香族カルボン酸成分由来の構造単位と上記1価フェノール由来の構造単位と上記多価フェノール由来の構造単位とを有する芳香族エステルが好ましい。
活性エステル硬化剤(E)としては、市販品を用いてもよい。活性エステル硬化剤(E)の市販品としては、例えば、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物として、「EXB9451」、「EXB9460」、「EXB9460S」、「HPC−8000−65T」(DIC株式会社製)、ナフタレン構造を含む活性エステル化合物として「EXB9416−70BK」(DIC株式会社製)、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル化合物として「DC808」(三菱化学株式会社製)、フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル化合物として「YLH1026」(三菱化学株式会社製)等が挙げられる。
活性エステル硬化剤(E)は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用して用いてもよい。
活性エステル硬化剤(E)のエステル当量は、特に限定されないが、150〜400g/molが好ましく、170〜300g/molがより好ましく、200〜250g/molがさらに好ましい。
第二の熱硬化性樹脂組成物中の、多官能エポキシ樹脂(D)のエポキシ基に対する、活性エステル硬化剤(E)のエステル基の当量比(エステル基/エポキシ基)は、0.05〜1.5が好ましく、0.1〜1.3がより好ましく、0.2〜1.0がさらに好ましい。当量比(エステル基/エポキシ基)が上記範囲内であると、めっき銅との接着強度をより高め、且つより低い誘電正接と平滑な表面を得られるため、微細配線を形成する観点から好適である。
<フェノール性水酸基含有ポリブタジエン変性ポリアミド樹脂(F)>
成分(F)は、フェノール性水酸基を有するポリブタジエン変性されたポリアミド樹脂であれば、特に限定されないが、ジアミン由来の構造単位と、フェノール性水酸基を含有するジカルボン酸由来の構造単位と、フェノール性水酸基を含有しないジカルボン酸由来の構造単位と、両末端にカルボキシ基を有するポリブタジエン由来の構造単位とを有するものが好ましい。具体的には、下記一般式(i)で表される構造単位、下記一般式(ii)で表される構造単位、及び下記一般式(iii)で表される構造単位を有するものが好ましく挙げられる。
一般式(i)〜(iii)中、a、b、c、x、y及びzは、それぞれ平均重合度を示す整数であって、a=2〜10、b=0〜3、c=3〜30、x=1に対しy+z=2〜300((y+z)/x)を示し、さらにy=1に対しz≧20(z/y)である。
一般式(i)〜(iii)中、R’はそれぞれ独立に、芳香族ジアミン又は脂肪族ジアミンに由来する2価の基を示し、一般式(iii)中、R’’は芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸又は両末端にカルボキシ基を有するオリゴマーに由来する2価の基を示す。
一般式(i)〜(iii)中に含まれる複数のR’同士は同一であっても異なっていてもよい。また、zが2以上の整数のとき、複数のR’’同士は同一であっても異なっていてもよい。
なお、一般式(i)〜(iii)中、R’は、具体的には、後述する芳香族ジアミン又は脂肪族ジアミンに由来する2価の基であり、R’’は、後述する芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸又は両末端にカルボキシ基を有するオリゴマーに由来する2価の基であることが好ましい。
成分(F)にジアミン由来の構造単位を形成するために使用するジアミンとしては、例えば、芳香族ジアミン、脂肪族ジアミン等が挙げられる。
芳香族ジアミンとしては、例えば、ジアミノベンゼン、ジアミノトルエン、ジアミノフェノール、ジアミノジメチルベンゼン、ジアミノメシチレン、ジアミノニトロベンゼン、ジアミノジアゾベンゼン、ジアミノナフタレン、ジアミノビフェニル、ジアミノジメトキシビフェニル、ジアミノジフェニルエーテル、ジアミノジメチルジフェニルエーテル、メチレンジアミン、メチレンビス(ジメチルアニリン)、メチレンビス(メトキシアニリン)、メチレンビス(ジメトキシアニリン)、メチレンビス(エチルアニリン)、メチレンビス(ジエチルアニリン)、メチレンビス(エトキシアニリン)、メチレンビス(ジエトキシアニリン)、イソプロピリデンジアニリン、ジアミノベンゾフェノン、ジアミノジメチルベンゾフェノン、ジアミノアントラキノン、ジアミノジフェニルチオエーテル、ジアミノジメチルジフェニルチオエーテル、ジアミノジフェニルスルホン、ジアミノジフェニルスルホキシド、ジアミノフルオレン等が挙げられる。
脂肪族ジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、プロパンジアミン、ヒドロキシプロパンジアミン、ブタンジアミン、へプタンジアミン、ヘキサンジアミン、シクロペンタンジアミン、シクロヘキサンジアミン、アザペンタンジアミン、トリアザウンデカジアミン等が挙げられる。
成分(F)にフェノール性水酸基を含有するジカルボン酸由来の構造単位を形成するために使用するフェノール性水酸基を含有するジカルボン酸としては、例えば、ヒドロキシイソフタル酸、ヒドロキシフタル酸、ヒドロキシテレフタル酸、ジヒドロキシイソフタル酸、ジヒドロキシテレフタル酸等が挙げられる。
成分(F)にフェノール性水酸基を含有しないジカルボン酸由来の構造単位を形成するために使用するフェノール性水酸基を含有しないジカルボン酸としては、例えば、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、両末端にカルボキシ基を有するオリゴマー等が挙げられる。
芳香族ジカルボン酸としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ビフェニルジカルボン酸、メチレン二安息香酸、チオ二安息香酸、カルボニル二安息香酸、スルホニル安息香酸、ナフタレンジカルボン酸等が挙げられる。
脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、メチルマロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸、りんご酸、酒石酸、(メタ)アクリロイルオキシコハク酸、ジ(メタ)アクリロイルオキシコハク酸、(メタ)アクリロイルオキシりんご酸、(メタ)アクリルアミドコハク酸、(メタ)アクリルアミドりんご酸等が挙げられる。
成分(F)に両末端にカルボキシ基を有するポリブタジエン由来の構造単位を形成するために使用する両末端にカルボキシ基を有するポリブタジエンとしては、例えば、数平均分子量が200〜10,000であることが好ましく、数平均分子量が500〜5,000のオリゴマーであることがより好ましい。
成分(F)の重量平均分子量は、特に限定されないが、例えば、60,000〜250,000であることが好ましく、80,000〜200,000であることがより好ましい。成分(F)の重量平均分子量は、ポリイミド化合物(B1)の重量平均分子量と同様の方法により求めることができる。
成分(F)の活性水酸基当量は、特に限定されないが、1,500〜7,000g/molが好ましく、2,000〜6,000g/molがより好ましく、3,000〜5,000g/molがさらに好ましい。
成分(F)は、例えば、ジアミンと、フェノール性水酸基を含有するジカルボン酸と、フェノール性水酸基を含有しないジカルボン酸と、両末端にカルボキシ基を有するポリブタジエンとを、ジメチルアセトアミド等の有機溶媒中で、触媒として亜リン酸エステルとピリジン誘導体の存在下で反応性させて、カルボキシ基とアミノ基とを重縮合させることにより合成される。製造に使用できる各化合物は、上記したものを例示できる。
成分(F)としては、市販品を使用することができ、市販品の成分(F)としては、例えば、日本化薬株式会社製の「KAYAFLEX BPAM−155」等が挙げられる。
第二の熱硬化性樹脂組成物中の成分(F)の含有量は、特に限定されないが、第二の熱硬化性樹脂組成物に含まれる全樹脂成分の合計質量中、1〜20質量%が好ましく、2〜15質量%がより好ましく、3〜10質量%がさらに好ましい。成分(F)の含有量が、1質量%以上であれば、樹脂組成物の強靭性を高くすることができ、緻密な粗化形状が得られ、めっき銅との接着強度を高めることができる。また、20質量%以下であれば、耐熱性の低下がなく、粗化工程時の薬液に対する耐性の低下も防ぐことができる。また、めっき銅との十分な接着性を確保できる。
<リン系硬化促進剤(G)>
第二の熱硬化性樹脂組成物は、更にリン系硬化促進剤(G)を含有することが好ましい。
リン系硬化促進剤(G)としては、リン原子を含有し、多官能エポキシ樹脂(D)と活性エステル硬化剤(E)との反応を促進させる硬化促進剤であれば特に限定なく使用することができる。
第二の熱硬化性樹脂組成物は、リン系硬化促進剤(G)を含有することによって、硬化反応をより一層十分に進めることができる。この理由は、リン系硬化促進剤(G)を用いることによって、活性エステル硬化剤(E)中のカルボニル基の電子求引性を高めることができ、これにより活性エステル硬化剤(E)と多官能エポキシ樹脂(D)との反応が促進されるためと推察される。
このように第二の熱硬化性樹脂組成物は、リン系硬化促進剤(G)を含有することにより、他の硬化促進剤を用いた場合より、多官能エポキシ樹脂(D)と活性エステル硬化剤(E)との硬化反応がより一層十分に進行するため、第一の樹脂層と組み合わせた際に、低い誘電正接が得られると考えられる。
リン系硬化促進剤(G)としては、例えば、トリフェニルホスフィン、ジフェニル(アルキルフェニル)ホスフィン、トリス(アルキルフェニル)ホスフィン、トリス(アルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(アルキルアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(ジアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(トリアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(テトラアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(ジアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(トリアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(テトラアルコキシフェニル)ホスフィン、トリアルキルホスフィン、ジアルキルアリールホスフィン、アルキルジアリールホスフィン等の有機ホスフィン類;有機ホスフィン類と有機ボロン類との錯体;及び第三ホスフィンとキノン類との付加物などが挙げられる。硬化反応がより十分に進み、高いめっき銅との接着性を発揮できる観点から、第三ホスフィンとキノン類との付加物が好ましい。
第三ホスフィンとしては、特に限定されないが、例えば、トリ−n−ブチルホスフィン、ジブチルフェニルホスフィン、ブチルジフェニルホスフィン、エチルジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリス(4−メチルフェニル)ホスフィン、トリス(4−メトキシフェニル)ホスフィン等が挙げられる。また、キノン類としては、例えば、o−ベンゾキノン、p−ベンゾキノン、ジフェノキノン、1,4−ナフトキノン、アントラキノン等が挙げられる。めっき銅との接着性、耐熱性、及び平滑な表面が得られる点から、トリ−n−ブチルホスフィンとp−ベンゾキノンとの付加物がより好ましい。
第三ホスフィンとキノン類との付加物の製造方法としては、例えば、原料となる第三ホスフィンとキノン類がともに溶解する溶媒中で両者を撹拌混合し、付加反応させた後、単離する方法等が挙げられる。この場合の製造条件としては、例えば、第三ホスフィンとキノン類とを、20〜80℃の範囲で、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、アセトン等のケトン類などの溶媒中で、1〜12時間撹拌し、付加反応させることが好ましい。
リン系硬化促進剤(G)は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用して用いてもよい。また、リン系硬化促進剤(G)以外の硬化促進剤の1種類以上を併用してもよい。
第二の熱硬化性樹脂組成物中のリン系硬化促進剤(G)の含有量は、特に限定されないが、第二の熱硬化性樹脂組成物に含まれる全樹脂成分の合計質量中、0.1〜20質量%が好ましく、0.2〜15質量%がより好ましく、0.4〜10質量%がさらに好ましい。リン系硬化促進剤(G)の含有量が、0.1質量%以上であれば、硬化反応を十分進めることができ、20質量%以下であれば、硬化物の均質性を保つことができる。
<充填材(H)>
第二の熱硬化性樹脂組成物は、充填材(H)を含有していてもよい。充填材(H)としては、無機充填材、有機充填材等が挙げられる。
充填材(H)を含有することで、第二の樹脂層をレーザー加工する際に樹脂の飛散をより低減できる。
無機充填材としては特に限定されないが、例えば、無機充填材(A)として例示したものと同様のものを使用できる。
無機充填材の比表面積は、第二の樹脂層上に微細配線を形成する観点から、20m/g以上が好ましく、50m/g以上がより好ましい。比表面積の上限に特に限定されないが、入手容易性の観点からは、500m/g以下が好ましく、200m/g以下がより好ましい。
比表面積は、不活性気体の低温低湿物理吸着によるBET法で求めることができる。具体的には、粉体粒子表面に、窒素等の吸着占有面積が既知の分子を液体窒素温度で吸着させ、その吸着量から粉体粒子の比表面積を求めることができる。
比表面積が20m/g以上の無機充填材としては、市販品を用いてもよい。市販品としては、例えば、ヒュームドシリカである「AEROSIL(登録商標) R972」(日本アエロジル株式会社製、商品名、比表面積110±20m/g)、及び「AEROSIL(登録商標) R202」(日本アエロジル株式会社製、商品名、比表面積100±20m/g)、コロイダルシリカである「PL−1」(扶桑化学工業株式会社製、商品名、比表面積181m/g)、「PL−7」(扶桑化学工業株式会社製、商品名、比表面積36m/g)等が挙げられる。また、耐湿性を向上させる観点からは、シランカップリング剤等の表面処理剤で表面処理された無機充填材であることが好ましい。
第二の熱硬化性樹脂組成物中の無機充填材の含有量は、第二の熱硬化性樹脂組成物の固形分中、1〜30質量%が好ましく、2〜25質量%がより好ましく、3〜20質量%がさらに好ましく、5〜20質量%が特に好ましい。無機充填材の含有量が、1質量%以上であれば、より良好なレーザー加工性が得られる傾向にあり、30質量%以下であれば、第二の樹脂層と導体層とのより向上する傾向にある。
有機充填材としては、特に限定されないが、例えば、アクリロニトリルブタジエンの共重合物として、アクリロニトリルとブタジエンとを共重合した架橋NBR粒子、アクリロニトリルとブタジエンとアクリル酸等のカルボン酸とを共重合したもの、ポリブタジエン、NBR、シリコーンゴムをコアとし、アクリル酸誘導体をシェルとした、いわゆるコア−シェルゴム粒子等が挙げられる。有機充填材を含有することで、樹脂層の伸び性がより向上する。
<その他の成分>
第二の熱硬化性樹脂組成物は、上記各成分の他に、本発明の効果を阻害しない範囲で、必要に応じて他の熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、並びに難燃剤、酸化防止剤、流動調整剤、硬化促進剤等の添加剤などを含有することができる。
<支持体>
本実施形態の複合フィルムは、更に、上記第二の樹脂層において第一の樹脂層とは反対側の面に、支持体が設けられていてもよい。
支持体としては、上記本実施形態の層間絶縁用樹脂フィルムに用いることができる支持体と同様のものが挙げられる。
<複合フィルムの製造方法>
本実施形態の複合フィルムは、例えば、上記支持体の上に第二の樹脂層を形成し、その上に第一の樹脂層を形成する方法により製造することができる。
第一の樹脂層の形成には、前述の層間絶縁用樹脂フィルム用ワニス(ここでは、「第一の樹脂層用ワニス」ともいう)を用いることができる。
第二の樹脂層の形成には、第二の熱硬化性樹脂組成物を有機溶媒に溶解又は分散した樹脂ワニス(以下、「第二の樹脂層用ワニス」ともいう)の状態にすることが好ましい。
第二の樹脂層用ワニスの製造方法、第二の樹脂層用ワニスの製造に用いる有機溶媒は、上記層間絶縁用樹脂フィルム用ワニスと同様である。
有機溶媒の配合量は、第二の樹脂層用ワニスの全質量に対して、70〜95質量%が好ましく、80〜90質量%がさらに好ましい。
このようにして製造された第二の樹脂層用ワニスを、支持体に塗工した後、加熱乾燥させ、更にその上に第一の樹脂層用ワニスを塗工した後、加熱乾燥させることにより、複合フィルムを形成することができる。
第二の樹脂層用ワニス又は第一の樹脂層用ワニスの塗工方法、及びこれらを塗工した後の乾燥条件は、本実施形態の層間絶縁用樹脂フィルムの製造方法における塗工方法及び乾燥条件と同様である。
本実施形態の複合フィルムにおいて形成される第一の樹脂層の厚さは、求める性能に応じて適宜決定すればよいが、回路基板の導体層を埋め込む観点から、回路基板の導体層の厚さ以上であることが好ましい。具体的には、回路基板が有する導体層の厚さが通常5〜70μmの範囲であるので、第一の樹脂層の厚さは、10〜100μmであることが好ましい。また、第二の樹脂層の厚さは、1〜15μmであることが好ましい。
第一の樹脂層の第二の樹脂層が設けられていない面には、保護フィルムを設けてもよい。保護フィルムの厚さは、特に限定されないが、例えば、1〜40μmであってもよい。保護フィルムを設けることにより、第一の樹脂層の表面へのゴミ等の付着及びキズ付きを防止することができる。複合フィルムは、ロール状に巻き取って貯蔵することもできる。
本実施形態の複合フィルムは、硬化物の5GHzの誘電正接が0.010以下であることが好ましく、0.008以下であることがより好ましく、0.006以下であることがさらに好ましく、0.005以下であることが特に好ましい。本実施形態の複合フィルムの硬化物の誘電正接は、実施例に記載の方法により求めることができる。
[プリント配線板及びその製造方法]
本実施形態のプリント配線板は、本実施形態の層間絶縁用樹脂フィルムの硬化物、又は本実施形態の複合フィルムの硬化物を含む。言い換えれば、本実施形態のプリント配線板は、層間絶縁層を有し、当該層間絶縁層のうち少なくとも一層が本実施形態の熱硬化性樹脂組成物の硬化物を含む。
以下では、本実施形態の層間絶縁用樹脂フィルム又は複合フィルムを回路基板にラミネートし、多層プリント配線板を製造する方法について説明する。
本実施形態に係る多層プリント配線板の製造方法は、次の工程(1)〜(5)の工程を含み、工程(1)、工程(2)又は工程(3)の後で、支持体を剥離又は除去してもよい。
工程(1):本実施形態の層間絶縁用樹脂フィルム又は複合フィルムを、回路基板の片面又は両面にラミネートする工程
工程(2):層間絶縁用樹脂フィルム又は複合フィルムを熱硬化し、層間絶縁層を形成する工程
工程(3):層間絶縁層を形成した回路基板に穴あけする工程
工程(4):層間絶縁層の表面を粗化処理する工程
工程(5):粗化された層間絶縁層の表面にめっきする工程
<工程(1)>
工程(1)は、本実施形態の層間絶縁用樹脂フィルム又は複合フィルムを、回路基板の片面又は両面にラミネートする工程である。層間絶縁用樹脂フィルム又は複合フィルムをラミネートする装置としては、例えば、真空ラミネーターが挙げられる。真空ラミネーターとしては市販品を用いることができ、市販品の真空ラミネーターとしては、例えば、ニチゴー・モートン株式会社製のバキュームアップリケーター、株式会社名機製作所製の真空加圧式ラミネーター、日立インダストリーズ株式会社製のロール式ドライコーター、日立エーアイシー株式会社製の真空ラミネーター等が挙げられる。
ラミネートにおいて、層間絶縁用樹脂フィルム又は複合フィルムが保護フィルムを有している場合には、保護フィルムを除去した後、層間絶縁用樹脂フィルム又は複合フィルムを加圧及び/又は加熱しながら回路基板に圧着する。
複合フィルムを用いる場合、第一の樹脂層が、回路基板の回路が形成されている面に対向するように配置する。
ラミネートの条件は、層間絶縁用樹脂フィルム又は複合フィルム、及び回路基板を必要に応じてプレヒートし、圧着温度(ラミネート温度)を60〜140℃、圧着圧力を0.1〜1.1MPa(9.8×10〜107.9×10N/m)、空気圧20mmHg(26.7hPa)以下の減圧下でラミネートしてもよい。また、ラミネートの方法は、バッチ式であっても、ロールでの連続式であってもよい。
<工程(2)>
工程(2)は、層間絶縁用樹脂フィルム又は複合フィルムを熱硬化し、層間絶縁層を形成する工程である。加熱硬化の条件は特に限定されないが、例えば、170〜220℃で20〜80分の範囲で選択することができる。熱硬化させた後に、支持体を剥離してもよい。
<工程(3)>
工程(3)は、層間絶縁層を形成した回路基板に穴あけする工程である。本工程では、層間絶縁層及び回路基板にドリル、レーザー、プラズマ、又はこれらの組み合わせ等の方法により、穴あけを行い、ビアホール、スルーホール等を形成する。レーザーとしては、炭酸ガスレーザー、YAGレーザー、UVレーザー、エキシマレーザー等が一般的に用いられる。
<工程(4)>
工程(4)は、層間絶縁層の表面を粗化処理する工程である。本工程では、工程(2)で形成した層間絶縁層の表面を酸化剤により粗化処理を行うと同時に、ビアホール、スルーホール等が形成されている場合には、これらを形成する際に発生する「スミア」の除去を行うこともできる。
酸化剤としては、特に限定されないが、例えば、過マンガン酸塩(過マンガン酸カリウム、過マンガン酸ナトリウム)、重クロム酸塩、オゾン、過酸化水素、硫酸、硝酸等が挙げられる。これらの中でも、ビルドアップ工法による多層プリント配線板の製造における層間絶縁層の粗化に汎用されている酸化剤であるアルカリ性過マンガン酸溶液(例えば、過マンガン酸カリウム、過マンガン酸ナトリウム溶液)を用いて粗化、及びスミアの除去を行ってもよい。
<工程(5)>
工程(5)は、粗化された層間絶縁層の表面にめっきする工程である。本工程では、層間絶縁層の表面に無電解めっきにて給電層を形成し、次いで導体層とは逆パターンのめっきレジストを形成し、電解めっきにより導体層(回路)を形成する、セミアディティブ法を用いることができる。なお、導体層形成後、例えば、150〜200℃で20〜120分間アニール処理を施すことにより、層間絶縁層と導体層との接着強度を向上及び安定化させることができる。
更に、このようにして作製された導体層の表面を粗化する工程を有していてもよい。導体層の表面の粗化は、導体層に接する樹脂との接着性を高める効果を有する。導体層を粗化する処理剤としては、特に限定されないが、例えば、有機酸系マイクロエッチング剤である、「メックエッチボンド(登録商標)CZ−8100」、「メックエッチボンド(登録商標)CZ−8101」、「メックエッチボンド(登録商標)CZ−5480」(以上、メック株式会社製、商品名)等が挙げられる。
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物、層間絶縁用樹脂フィルム、複合フィルム、及びプリント配線板は、1GHz以上の高周波信号を扱う電子機器に特に好適に用いることができ、特に5GHz以上の高周波信号、10GHz以上の高周波信号又は30GHz以上の高周波信号を扱う電子機器に好適に用いることができる。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されない。上記実施形態は例示であり、本発明の請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
製造例1
<ポリイミド化合物(B1)の製造>
温度計、還流冷却管、撹拌装置を備えた加熱及び冷却可能な容積1リットルのガラス製フラスコ容器に、1,6−ビスマレイミド−(2,2,4−トリメチル)ヘキサン(大和化成工業株式会社製、商品名:BMI−TMH)385.377g、2,2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン(大和化成工業株式会社製、商品名:BMI−4000)1611.619g、4,4’−[1,3−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスアニリン(三井化学ファイン株式会社製、商品名:ビスアニリンM)278.004g及びプロピレングリコールモノメチルエーテル3500gを投入し、液温120℃で還流させながら撹拌下で3時間反応させた。その後、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、反応物の重量平均分子量が3,000であることを確認し、冷却及び200メッシュ濾過してポリイミド化合物(B1)(固形分濃度65質量%)を製造した。
<重量平均分子量の測定方法>
得られたポリイミド化合物(B1)の重量平均分子量は、GPCにより、標準ポリスチレンを用いた検量線から換算した。検量線は、標準ポリスチレン:TSKstandard POLYSTYRENE(Type;A−2500、A−5000、F−1、F−2、F−4、F−10、F−20、F−40)(東ソー株式会社製、商品名)を用いて3次式で近似した。GPCの条件は、以下に示す。
装置:ポンプ:L−6200型(株式会社日立ハイテクノロジーズ製)
検出器:L−3300型RI(株式会社日立ハイテクノロジーズ製)
カラムオーブン:L−655A−52(株式会社日立ハイテクノロジーズ製)
カラム:ガードカラム;TSK Guardcolumn HHR−L + カラム;TSK gel−G4000HHR+TSK gel−G2000HHR(すべて東ソー株式会社製、商品名)
カラムサイズ:6.0×40mm(ガードカラム)、7.8×300mm(カラム)
溶離液:テトラヒドロフラン
試料濃度:30mg/5mL
注入量:20μL
流量:1.00mL/分
測定温度:40℃
<第一の樹脂層用ワニス(ワニスA)の製造方法>
ナノフィラ(a)としてアミノシランカップリング剤処理を施したシリカ(株式会社アドマテックス製、固形分濃度51質量%のメチルイソブチルケトン分散液、平均粒径50nm)を、ナノフィラ(a)以外の無機充填材(A)として、アミノシランカップリング剤処理を施したシリカ(株式会社アドマテックス製、商品名:SC−2050−KNK、固形分濃度70質量%のメチルイソブチルケトン分散液、平均粒径0.5μm)を、エラストマ(C)としてポリブタジエン系エラストマ(エボニック社製、商品名:POLYVEST 75MA)を使用し、ナノフィラ(a)の含有量が、樹脂組成物に含まれる固形分100質量%に対して、0.4質量%、ナノフィラ(a)以外の無機充填材(A)の含有量が、樹脂組成物に含まれる固形分100質量%に対して、76.9質量%、エラストマ(C)の含有量が、樹脂組成物に含まれる固形分100質量%に対して、4.3質量%となる配合比率で、混合した。
そこに製造例1で製造したポリイミド化合物(B)を、ポリイミド化合物(B)の含有量が、樹脂組成物に含まれる固形分100質量%に対して、17質量%となる比率で混合し、高速回転ミキサーにより室温で溶解させた。
ポリイミド化合物(B)が溶解したことを目視で確認した後、難燃剤として1,3−フェニレンビス(ジ2,6−キシレニルホスフェート)(大八化学工業株式会社製、商品名:PX−200)を、樹脂組成物に含まれる固形分100質量%に対して、1.0質量%、酸化防止剤として4,4’−ブチリデンビス−(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)(フェノール系酸化防止剤)(三菱化学株式会社製、商品名:ヨシノックス(登録商標)BB)(以下、「ヨシノックスBB」ともいう)を、樹脂組成物に含まれる固形分100質量%に対して、0.1質量%、流動調整剤として「BYK310」(ビックケミー・ジャパン株式会社製、商品名、固形分濃度25質量%のキシレン溶液)を、樹脂組成物に含まれる固形分100質量%に対して、0.1質量%(固形分)を混合した。その後、硬化促進剤として、有機過酸化物(日油株式会社製、商品名:パーブチルP)を、ポリイミド化合物(B1)の仕込み量から換算される原料成分(b1)とポリブタジエン系エラストマ(C)の総量に対して1.0phr、イソシアネートマスクイミダゾール(第一工業製薬株式会社製、商品名:G8009L)を、ポリイミド化合物(B1)の仕込み量から換算される原料成分(b1)に対して0.5phr混合した。次いで、ナノマイザー処理によって分散してワニスAを得た。
各成分及びその配合量を表1に示す配合に変更した以外はワニスAと同様にして、ワニスB〜Fを得た。
<第二の樹脂層用ワニスの製造方法>
樹脂組成物に含まれる固形分100質量%に対して、6.4質量%のフェノール性水酸基含有ポリブタジエン変性ポリアミド樹脂(日本化薬株式会社製、商品名:KAYAFLEX BPAM−155)を、質量%が1.6%となるように、ジメチルアセトアミド、シクロヘキサノンの混合溶媒(ジメチルアセトアミド:シクロヘキサノンの質量比率が7:3の混合溶媒)に溶解させた。溶解後、アラルキルノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬株式会社製、商品名:NC−3000−H、エポキシ当量289g/mol)を樹脂組成物に含まれる固形分100質量%に対して、57.2質量%、無機充填材(日本アエロジル株式会社製、商品名:アエロジル(登録商標)R972、比表面積110±20m/g)を樹脂組成物に含まれる固形分100質量%に対して8.8質量%、酸化防止剤(株式会社エーピーアイコーポレーション製、商品名:ヨシノックス(登録商標)BB)を樹脂組成物に含まれる固形分100質量%に対して、0.4質量%、フェノキシ樹脂(三菱化学株式会社製、商品名:YX7200、メチルエチルケトン希釈品(35質量%))を樹脂組成物に含まれる固形分100質量%に対して、固形分換算で9.1質量%、活性エステル硬化剤(DIC株式会社製、商品名:HPC−8000−65T(トルエン希釈品(65質量%))を樹脂組成物に含まれる固形分100質量%に対して、固形分換算で14.6質量%、流動調整剤(ビックケミー・ジャパン株式会社製、商品名:BYK−310(ワニスA製造時に用いたものと同じ))を樹脂組成物に含まれる固形分100質量%に対して、固形分換算で0.1質量%、リン系硬化促進剤(トリ−n−ブチルホスフィンとp−ベンゾキノンとの付加物)を樹脂組成物に含まれる固形分100質量%に対して、3.4質量%配合し溶解させ、固形分濃度が18質量%になるようメチルエチルケトンでワニスを希釈した。その後、ナノマイザー処理によって分散し、第二の樹脂層用ワニスを得た。
<複合フィルムの製造>
実施例1
上記で得た第二の樹脂層用ワニスを、離型処理された支持体(PETフィルム、東レフィルム加工株式会社製、商品名:セラピール(登録商標)SY(RX)(厚さ38μm))に、乾燥後の厚さが2.7μmとなるようにコンマコーターを用いて塗布し、140℃で3分間乾燥して、支持体上に第二の樹脂層を形成した。次いで、該第二の樹脂層の上に、第一の樹脂層用ワニスAを、乾燥後の第一の樹脂層の厚さが27.3μmとなるようにコンマコーターを用いて塗布し、90℃で2分間乾燥した。次いで、第一の樹脂層の表面に、保護フィルムとして厚さ15μmのポリプロピレンフィルムを貼り合わせながらロール状に巻き取り、支持体及び保護フィルムを有する複合フィルム1を得た。
実施例2〜3、比較例1
第一の樹脂層用ワニスB〜Dを用い、実施例1と同様にして、複合フィルム2〜4を得た。
[樹脂板の作製]
誘電正接の測定に用いた樹脂板は、以下の手順により作製した。
(I)実施例1〜3、及び比較例1で得られた支持体及び保護フィルムを有する複合フィルムから保護フィルムを剥離した後、120℃で3分間乾燥した。
次に、乾燥後の支持体を有する複合フィルムを、真空加圧式ラミネーター(株式会社名機製作所製、商品名:MVLP−500/600−II)を用いて、銅箔(電界銅箔、厚さ35μm)の光沢面上に、複合フィルムと銅箔とが当接するようにラミネートして、銅箔、複合フィルム、支持体がこの順に積層された積層体(P)を得た。上記ラミネートは、30秒間減圧して層間のエア抜きをした後、圧力を0.5MPaとし、その後、120℃、30秒間、圧着圧力0.5MPaでプレスする方法により行った。その後、積層体(P)から支持体を剥離した。
(II)次に、別の支持体及び保護フィルムを有する複合フィルムを準備し、保護フィルムを剥離した後、110℃で3分間の乾燥を行った。
(III)次に、上記(I)で得られた支持体を剥離した積層体(P)と、上記(II)で得られた乾燥後の支持体を有する複合フィルムとを、複合フィルム同士が当接するように、上記(I)と同様の条件でラミネートして、銅箔、複合フィルム2層からなる層、支持体がこの順に積層された積層体(Q)を得た。その後、積層体(Q)から支持体を剥離した。
(IV)次に、上記(III)で得られた支持体を剥離した積層体(Q)と、上記(II)と同様の方法により得られた乾燥後の支持体を有する複合フィルムとを、複合フィルム同士が当接するように、上記(I)と同様の条件でラミネートして、銅箔、複合フィルム3層からなる層、支持体がこの順に積層された積層体(R)を得た。
(V)上記(I)〜(III)と同様の方法により、積層体(Q)を作製した。
(VI)上記(V)で得られた積層体(Q)と、上記(I)〜(IV)で得られた積層体(R)の支持体をそれぞれ剥離し、積層体(Q)と積層体(R)の複合フィルム同士を貼り合わせ、圧着圧力3.0MPaで190℃、60分間、真空プレスを用いてプレス成型を行った。得られた両面銅箔付き樹脂板を、190℃で2時間硬化させた後、過硫酸アンモニウムで銅箔をエッチングすることで、樹脂板を得た。
[誘電正接の測定方法]
上記で作製された樹脂板を幅2mm、長さ70mmの試験片に切り出し、ネットワークアナライザー(アジレント・テクノロジー株式会社製、商品名:E8364B)と5GHz対応空洞共振器(株式会社関東電子応用開発製)を用いて、誘電正接を測定した。測定温度は25℃とした。評価結果を表1に示す。誘電正接が低いほど、誘電特性に優れることを示す。
[フィルムの取り扱い性の評価方法]
実施例1〜3、比較例1で得られた支持体及び保護フィルムを有する複合フィルムの取り扱い性は、以下に示す方法で評価した。
(1)カッターでの切断による評価
上記で作製した支持体及び保護フィルムを有する複合フィルムをカッターで切断した際の粉落ちの有無を評価した。粉落ちの有無は、目視で確認し、粉落ちしないものを取り扱い性良好とした。
(2)折り曲げによる評価
上記で作製した支持体及び保護フィルムを有する複合フィルムの保護フィルムを剥離し、支持体から樹脂塗工面に向かって180°折り曲げたときの、フィルムの割れの有無を評価した。フィルムの割れの有無は、目視で確認し、割れが発生しないものを取り扱い性良好とした。
上記(1)及び(2)の評価において、どちらも取り扱い性良好となったものを「A」、それ以外を「B」とした。評価結果を表1に示す。
[最低溶融粘度の測定方法]
作製した複合フィルムを1.0mmになるように重ね、φ20mmに打ち抜いたサンプルを用い、最低溶融粘度を測定した。粘度はレオメータ(商品名:ARESG2、ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製)を用い、昇温速度:5℃/分、φ20mm冶具、周波数1.0Hzで測定した。なお、最低溶融粘度とは、硬化開始前に熱硬化性樹脂組成物が溶融したときの粘度である。
[表面粗さ測定用基板の作製方法]
表面粗さ測定用基板を以下の手順により基板を作製した。
実施例1〜3、比較例1で得られた支持体及び保護フィルムを有する複合フィルムを、240mm×240mmのサイズに切断した後、保護フィルムを剥離した。
得られた支持体を有する複合フィルムを、CZ処理が施されたプリント配線板(日立化成株式会社製、商品名:E−700GR)上に、第一の樹脂層とプリント配線板とが当接するようにラミネートした。ラミネートは、120℃、30秒間減圧して第一の樹脂層とプリント配線板との間のエア抜きをした後、圧力を0.5MPaとし、その後、120℃、30秒間、圧着圧力0.5MPaでプレスする方法により行った。
その後、室温に冷却し、複合フィルムを配したプリント配線板を得た。次に、複合フィルムを配したプリント配線板を支持体を付けたまま第一段階目の硬化として130℃で20分間60分間防爆乾燥機中で硬化を行い、その後第二段階目の硬化として190℃で40分間防爆乾燥機中で硬化を行った。硬化後、支持体を剥離して、層間絶縁層が形成されたプリント配線板を得た。
[粗化処理方法]
上記で得られたプリント配線板を、60℃に加温した膨潤液(ローム・アンド・ハース電子材料株式会社製、商品名:CIRCUPOSITMLB CONDITIONER211)に10分間浸漬処理した。次に、80℃に加温した粗化液(ローム・アンド・ハース電子材料株式会社製、商品名:CIRCUPOSITMLB PROMOTER213)に10分間浸漬処理した。引き続き、45℃に加温した中和液(ローム・アンド・ハース電子材料株式会社製、商品名:CIRCUPOSITMLB NEUTRALIZER MLB216)に5分間浸漬処理して中和した。このようにして、上記プリント配線板の層間絶縁層の表面を粗化処理したものを、表面粗さ測定用基板として用いた。
[表面粗さ測定方法]
上記で得られた表面粗さ測定用基板の表面粗さを、比接触式表面粗さ計(ブルカーエイエックスエス株式会社製、商品名:wykoNT9100)を用い、内部レンズ1倍、外部レンズ50倍を用いて測定し、算術平均粗さ(Ra)を得た。評価結果を表1に示す。Raは本発明の主旨から、小さいほうが好ましく、200nm未満であると微細配線形成に好適である。
[めっき銅との接着強度(めっきピール強度)作製方法]
めっき銅との接着強度評価とリフロー耐熱性評価を実施するにあたり、以下の手順により評価基板を作製した。
まず、上記と同様の方法で作製した複合フィルム付きプリント配線板を、40mm×60mmに切り出し、試験片とした。
該試験片を、上記の表面粗さ測定用基板と同様の条件で粗化処理した後、60℃のアルカリクリーナー(アトテックジャパン株式会社製、商品名:クリーナーセキュリガント(登録商標)902)で5分間処理し、脱脂洗浄した。洗浄後、23℃のプリディップ液(アトテックジャパン株式会社製、商品名:プリディップネオガント(登録商標)B)で2分間処理した。その後、40℃のアクチベーター液(アトテックジャパン株式会社製、商品名:アクチベーターネオガント(登録商標)834)で5分間処理を施し、パラジウム触媒を付着させた。次に、30℃の還元液(アトテックジャパン株式会社製、商品名:リデューサーネオガント(登録商標)WA)で5分間処理した。
上記の処理を行った試験片を、化学銅液(アトテックジャパン株式会社製、商品名:ベーシックプリントガント(登録商標)MSK−DK)に入れ、層間絶縁層上のめっき厚さが0.5μmになるまで、無電解めっきを行った。無電解めっき後に、めっき皮膜中に残存している応力を緩和し、残留している水素ガスを除去するために、120℃で15分間ベーク処理を施した。
次に、無電解めっき処理された試験片に対して、さらに層間絶縁層上のめっき厚さが35μmになるまで、電解めっきを行い、導体層として銅層を形成した。電解めっき後、190℃で120分間加熱アニール処理して、硬化させて接着強度測定部作製前の測定基板を得た。
得られた測定基板の銅層に10mm幅のレジストを形成し、過硫酸アンモニウムで銅層をエッチングすることにより、接着強度測定部として10mm幅の銅層を有する、めっき銅との接着強度測定用基板を得た。
[めっき銅との接着強度の測定方法]
上記により得られた接着強度測定用基板を用いて、層間絶縁層と銅層との接着強度の測定を以下の方法により行った。
接着強度測定部の銅層の一端を、銅層と層間絶縁層との界面で剥がしてつかみ具でつかみ、小型卓上試験機(株式会社島津製作所製、商品名:EZTTest)を用いて、垂直方向に引っ張り速度50mm/分、室温中で引き剥がしたときの荷重を測定した。評価結果を表1に示す。
[配線の埋め込み性及び平坦性の評価方法]
実施例1〜3及び比較例1で得られた支持体及び保護フィルムを有する複合フィルムを、240mm×240mmのサイズに切断した後、保護フィルムを剥離した。
得られた支持体を有する複合フィルムを、厚みが18μm、幅が5mmである銅配線と厚みが18μm、幅が100μmである銅配線とが形成されているプリント配線板(日立化成株式会社製、商品名:E−700GR)上に、第一の樹脂層とプリント配線板とが当接するように第一の樹脂層をラミネートした。ラミネートは、第一ステージとして100℃、15秒間真空し、その後0.5MPaで45秒間加圧し、さらに、第二ステージとして120℃、60秒間、圧着圧力0.5MPaでプレスする方法により行った。その後、室温に冷却し、複合フィルムを配したプリント配線板を得た。次に、複合フィルムを配したプリント配線板を、支持体を付けたまま第一段階目の硬化として130℃で20分間防爆乾燥機中で硬化を行い、その後第二段階目の硬化として190℃で40分間防爆乾燥機中で硬化を行い、層間絶縁層が形成されたプリント配線板を得た。その後支持体を剥離しプリント配線板を得た。このプリント配線板の銅配線の部分を目視により観察し、5mm幅の銅配線と100μm幅の銅配線の埋め込み性及び平坦性が良好ものを「very good」、5mm幅の銅配線と100μm幅の銅配線のどちらか一方の配線の埋め込み性及び平坦性が良好なものを「good」、どちらの配線の埋め込み性及び平坦性も悪いものを「bad」とした。
表1より、本実施形態の熱硬化性樹脂組成物を用いた複合フィルムのフィルム取り扱い性が優れていることがわかる。また、表1より、本実施形態の熱硬化性樹脂組成物を用いた実施例1〜3のプリント配線板は、誘電正接が小さく、最低溶融粘度が低く、配線の埋め込み性及び平坦性が良好である。また、接着層を設けることで平滑な表面(低表面粗さ(Ra))を有しながらも、めっき銅との接着強度に優れる層間絶縁層を有しており、微細配線の形成に好適であることが分かる。
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、誘電正接が低く、低熱膨張であり、本発明の熱硬化性樹脂組成物を用いた層間絶縁用樹脂フィルム及び複合フィルムは、配線の埋め込み性及び平坦性に優れる。したがって、本発明の熱硬化性樹脂組成物、層間絶縁用樹脂フィルム、複合フィルム、及びプリント配線板は、コンピュータ、携帯電話、デジタルカメラ、テレビ等の電気製品;自動二輪車、自動車、電車、船舶、航空機等の乗り物などに有用である。
1 第一の樹脂層
2 第二の樹脂層
3 支持体
4 保護フィルム

Claims (11)

  1. ナノフィラー(a)を含む無機充填材(A)、熱硬化性樹脂(B)及びエラストマ(C)を含有する熱硬化性樹脂組成物。
  2. 前記ナノフィラー(a)の含有量が無機充填材(A)の全量に対して0.1〜1.0質量%である請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  3. 前記熱硬化性樹脂(B)が、少なくとも2個のN−置換マレイミド基を有するマレイミド化合物(b1)由来の構造単位とジアミン化合物(b2)由来の構造単位とを有するポリイミド化合物である請求項1又は2に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物を含む、層間絶縁用樹脂フィルム。
  5. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物を含む第一の樹脂層と、第二の樹脂層とを含む、複合フィルム。
  6. 前記第二の樹脂層が、多官能エポキシ樹脂(D)、活性エステル硬化剤(E)及びフェノール性水酸基含有ポリブタジエン変性ポリアミド樹脂(F)を含有する第二の熱硬化性樹脂組成物を含む、請求項5に記載の複合フィルム。
  7. 前記第二の熱硬化性樹脂組成物中の前記多官能エポキシ樹脂(D)のエポキシ基に対する、前記活性エステル硬化剤(E)のエステル基の当量比(エステル基/エポキシ基)が0.05〜1.5である、請求項6に記載の複合フィルム。
  8. 前記第二の熱硬化性樹脂組成物が、更にリン系硬化促進剤(G)を含有する、請求項6又は7に記載の複合フィルム。
  9. 硬化物の5GHzの誘電正接が0.005以下である、請求項5〜8のいずれか1項に記載の複合フィルム。
  10. 請求項4に記載の層間絶縁用樹脂フィルムの硬化物、又は請求項5〜9のいずれか1項に記載の複合フィルムの硬化物を含む、プリント配線板。
  11. 請求項4に記載の層間絶縁用樹脂フィルム、又は請求項5〜9のいずれか1項に記載の複合フィルムを、基材の片面又は両面にラミネートする工程を備える、プリント配線板の製造方法。
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