本発明の理解を容易にする目的のために、本発明において用いる技術、及び、本発明が解決しようとする課題を詳細に説明する。
心理的な負担(acute stress)を推定する技術の一例について説明する。以降、心理的負担の程度、または、心理的負担の有無を、まとめて、「心理的負担」と表す。
測定対象(たとえば、被験者、以降、単に、「対象」とも表す)における心理的負担は、たとえば、該測定対象の姿勢に関する特徴を表す特徴量の値に基づき推定される。姿勢に関する特徴を表す特徴量は、たとえば、測定対象の姿勢に応じて生じる圧力分布における圧力の中心(以降、圧力の中心を「圧力中心」と表す)が、時間的にばらついている程度を表すばらつき具合(たとえば、標準偏差SD、式10等を参照しながら後述する)である。測定対象における心理的負担は、たとえば、該圧力中心のばらつき具合(程度)に関する時間的な推移を表す数値に自己組織化マップ等の機械学習技術を適用することにより、推定される。
測定対象における心理的負担は、たとえば、該測定対象の心拍における特定の周波数帯に関する特徴量の値に基づき、判定される。該特定の周波数帯の比に基づき測定対象における心理的負担が判定される場合には、測定対象間における個人差が解消されつつ、心理的負担を推定することができる。心拍を測定する方法には、たとえば、心拍センサを用いて測定対象の脈波を直接的に測定する方法や、測定対象が座っている椅子に設置された圧力センサを用いて測定対象の心拍を測定する方法等がある。
測定対象における心理的負担(ストレス)は、該測定対象から測定される電気的な皮膚反応(GSR)、脳波、表情、視線の動き、瞳孔径、瞬きの回数、声のトーン、話し方、加速度センサを用いて測定された測定対象の身体の動き、ジェスチャ、行動等の特徴を表す特徴量の値に基づき推定することができる。
測定対象におけるストレスは、該測定対象における交感神経の活動と、該測定対象における副交感神経の活動との間のバランスに関係している。交感神経の活動と、副交感神経の活動との間のバランスは、測定対象から測定される脈波における低周波成分(LF)と、高周波成分(HF)との比に関係している。
脈波に関して検知されるMayer波は、収縮期血圧が約10秒周期(すなわち、0.1ヘルツ程度の低周波成分)にて変動する現象を表す。Mayer波により生じる刺激は、頸動脈洞等の圧受容体を介して心血管中枢に到達し、その後、遠心路(心臓迷走神経系または、交感神経系)を介して洞結節を抑制する。したがって、Mayer波は、心臓迷走神経系(心臓副交感神経系)の活動と、心臓血管交感神経系の活動とを反映している。また、高周波成分は、心臓迷走神経系(心臓副交感神経系)の活動を反映している。この理由は、肺圧受容体の呼気時における伸展刺激が心血管中枢を介して心臓迷走神経を抑制し、毎分9回(すなわち、0.15ヘルツ)以上の周期の呼吸刺激が心臓迷走神経を介して洞結節に伝わるからである。
以上の事実から、交感神経の活動の程度は、心拍の低周波成分(0.05ヘルツから0.15ヘルツ)のパワースペクトル密度の積分値を、高周波成分(0.15ヘルツから0.45ヘルツ)のパワースペクトル密度の積分値で割った値(すなわち、LF/HFとの比)を用いて表される。また、副交感神経の活動の程度は、高周波成分(0.15ヘルツから0.45ヘルツ)のパワースペクトル密度の積分値を用いて表される。
また、測定対象の心拍数の揺らぎ(SDNN)も、該測定対象の心理的負担が増大した場合には低下し、心理的負担の特徴量となり得る。
測定対象における心理的負担は、該測定対象から測定される脈波、電気的な皮膚反応(GSR)、脳波、表情、視線の動き、瞳孔径、瞬きの回数、声のトーン、話し方、加速度センサを用いて測定された測定対象の身体の動き、ジェスチャ、行動等の特徴を表す特徴量の値に基づき推定することができる。
次に、慢性ストレス(chronic stress)を推定する技術の一例について説明する。
測定対象における慢性的なストレス(以降、「慢性ストレス」と表す)は、継続的に該測定対象に対して実施されるアンケート調査等によって測定される。しかし、アンケート調査は、該測定対象にとって余分な作業であるので、該測定対象に対して心理的負担、または、慢性ストレスを与える一因である可能性がある。
測定対象に対してアンケート調査を実施することなく、たとえば、該測定対象の心拍を表す時系列データに関する相関次元D2(式9等を参照しながら後述する)の値に基づき、該測定対象における慢性ストレスを推定することもできる。言い換えると、相関次元D2は、測定対象に対する心理的負担、慢性ストレスを軽減しつつ、該測定対象における慢性ストレスを測定できる可能性がある特徴量の一例である。測定対象の心拍を測定する方法には、たとえば、心拍センサを用いて脈波を直接的に測定する方法や、測定対象が座っている椅子に設置された圧力センサを用いて測定対象の心拍を間接的に測定する方法等がある。しかし、測定対象の外部から与えられた心理的負担と、測定対象に関する慢性ストレスに該心理的負担が与える影響とには、各測定対象間の個人差がある。
まとめると、圧力分布センサを用いて測定される圧力分布から推定される測定対象の体動データ、生体情報センサを用いて測定される測定対象の生体情報データ等の測定情報に基づき、該測定対象に関する慢性ストレス、または、心理的負担の蓄積を推定することができる。しかし、心理的負担の蓄積と慢性ストレスとの関係性には個人差がある。したがって、心理的負担の蓄積に基づき慢性ストレスを正確に予測する目的のためには、該個人差を加味しつつ慢性ストレスを予測する必要がある。
測定対象の一例である被験者において、慢性ストレスは、心理的負担が蓄積された結果生じる。しかし、心理的負担が慢性ストレスを引き起こす否かに関しては、個人差(個体差)がある結果、慢性ストレスが測定対象に精神的な疾患を引き起こす程度にも個人差がある。
測定対象における慢性ストレスに基づき、該測定対象に休暇・休息を催促することは可能である。該測定対象における慢性ストレスがある程度まで高くなった場合に、休暇(または、休息)を催促する等のストレスを軽減することが該測定対象に催促される。しかし、測定対象は、休息を催促されたとしても、必ずしも、休息を催促されたタイミングにて休息を取ることができるとは限らない。測定対象は、休息を取ることができない場合に、慢性ストレスを感じ続ける。この場合に、休息を催促されつつも催促された休息を取ることができないこと自体が、測定対象にとって慢性ストレスの原因となる可能性がある。
また、慢性ストレスを常時モニタリングしておき、慢性ストレスの増大の程度を推定し、これによって測定対象が経験した各スケジュールが慢性ストレスの増大にどのような影響を及ぼすのかを記録し、心理的負荷を測定することなく、この各スケジュールと、慢性ストレスの増大の程度との関係性を用いてスケジュールを調整することは困難である。なぜなら、慢性ストレスは、測定対象に与えられている仕事に起因する心理的負荷だけでなく、測定対象が想起する過去の記憶等を含むあらゆる心理的負荷に由来するからである。このため、心理的負荷とスケジュールの内容との間において、及び、慢性ストレスと心理的負荷と間においては、それぞれ、統計的な処理(慢性ストレスと心理的負荷との関係性ならば線形回帰等)によって関係性を明らかにする必要があり、スケジュールの内容と慢性ストレスとの関係性を統計的な処理によって明らかにしようとすれば正確性が失われてしまう。
心理的負担に基づき、測定対象に休息を催促することは可能である。しかし、該測定対象においては、心理的負担をある程度経験しても、慢性ストレスが非常に低い程度にとどまっている可能性が有るので、心理的負担に基づき休息を催促する場合には、該催促が測定対象にとって早すぎる可能性がある。同様に、心理的負担に基づき休息を催促されるタイミングは、慢性ストレスが精神疾患を引き起こす程度にまで増大しており、測定対象にとって遅すぎる可能性がある。したがって、測定対象における慢性ストレスを軽減するためには、適切なタイミングにストレスを軽減することを該測定対象に催促することが必要である。
たとえば、仕事によって心理的負担が蓄積された結果、慢性ストレスにつながるリスクがある測定対象に関して、心理的負担の蓄積に基づき慢性ストレスを予測する技術によれば、計画的な休暇(または、休息)に関する助言ができる。しかし、上述したように、測定対象に対する心理的負担の蓄積が慢性ストレスにつながるか否かに関しては、測定対象間の個人差が存在している。たとえば、該個人差は、ストレスに対する各測定対象の耐性の違い、慢性ストレスを軽減する習慣を測定対象が有しているか否かの違い、該習慣に応じて軽減される慢性ストレスの程度の違い等によって生じる。さらに、慢性ストレスを軽減する習慣は、1つの測定対象に関しても変化する。
しかし、特許文献1、及び、特許文献2に開示された技術は、測定時における慢性ストレスを推定することはできるが、慢性ストレスが測定時以降にどのように変化するのかを推定することはできない。
発明者は、上述したような課題を見出すとともに、係る課題を解決する手段を導出するに至った。以降、このような課題を解決可能な、本発明を実施する実施形態に係るシステムについて、図面を参照しながら詳細に説明する。
<第1の実施形態>
図1を参照しながら、本発明の第1の実施形態に係るストレス推定(判定)システム101が有する構成について詳細に説明する。図1は、本発明の第1の実施形態に係るストレス推定システム101が有する構成を示すブロック図である。
本発明の第1の実施形態に係るストレス推定システム101は、ストレス推定(判定)装置102と、測定部103と、出力装置104とを有する。
第1の実施形態に係るストレス推定装置102は、入力部105と、第1慢性ストレス推定部106と、心理的負担推定部107と、心理的負担累積部108と、第2慢性ストレス推定部109と、慢性ストレス判定部110と、第1慢性ストレス学習部111と、心理的負担学習部112と、第2慢性ストレス学習部113とを有する。ストレス推定装置102は、さらに、第1慢性ストレス情報記憶部114と、心理的負担情報記憶部115と、第2慢性ストレス情報記憶部116とを有してもよい。
測定部103は、被験者等の測定対象に関する情報(以降、「測定情報」と表す)を測定する。測定部103は、たとえば、圧力分布センサ(図4を参照しながら後述する)、加速度センサ、肌表面導電センサ、脈波センサ、生体情報センサである。測定部103は、脈波センサ、加速度センサ、肌表面導電センサ、及び、心拍センサ等のうち、少なくとも1つのセンサを有しているリストバンド状のウェアラブル機器(図5を参照しながら後述する)であってもよい。また、測定部103は、測定対象に関する情報を測定可能なセンサを少なくとも1つ有していればよく、上述した例に限定されない。測定部103が測定する測定情報は、測定対象に関する心理的負担、または、慢性ストレスに関係している可能性がある情報である。ここで、測定部103の一例であるセンサについて説明する。
図4を参照しながら、圧力分布センサについて説明する。図4は、圧力分布センサが有する構造の一例、及び、該圧力分布センサが設置される場所の一例を表す図である。
圧力分布センサ(圧力分布センサ125乃至圧力分布センサ127)は、所定の領域における複数の測定箇所にて、該所定の領域に関する圧力を測定する圧力検知セル(たとえば、圧力検知セル121、圧力検知セル122)を有する。圧力分布センサは、測定した圧力の変化に基づき、たとえば、測定対象である測定対象の心拍、または、該測定対象の動きを推定してもよい。
説明の便宜上、所定の領域における複数の測定箇所にて測定された圧力を「圧力分布」と表す。また、所定の領域における複数の測定箇所にて圧力を測定することを、「圧力分布を測定する」と表す。すなわち、圧力分布センサは、圧力分布を測定する。
圧力分布センサは、たとえば、測定対象が座る椅子の座面124(該椅子の背もたれ123、または、該椅子の前方等に設置される。椅子の前方に設置された圧力分布センサ127は、たとえば、椅子に座っている測定対象の足の裏における圧力分布を測定する。椅子の座面124に設置された圧力分布センサ126は、たとえば、座位にて作業することが多い測定対象の臀部における圧力分布を正確に測定することができる。椅子の背もたれ123に設置された圧力分布センサ125は、たとえば、測定対象の背中における圧力を測定することができる。
圧力分布センサによって、心拍を測定することもできる。この場合、後述のPPG方式の他、特に手首等の脈波による血管の動きに起因する微小な肌表面での圧力変化に基づき心拍を推定する方法もある。こうしたセンサは、図5に例示されているように、測定対象の手首等に装着されるリストバンド状の心拍センサ131であってもよい。図5は、リストバンド状の心拍センサ131が有する構造の一例を表す図である。
圧力分布センサが、椅子の座面124に設置された圧力分布センサ126、及び、リストバンド状の心拍センサ131である場合に、心拍センサ131によれば、測定対象の動きをより正確に測定することができる。
加速度センサは、測定対象の動きに関する加速度を測定する。加速度センサは、たとえば、動くことが多い測定対象の手首に装着され、該測定対象の動きにおける加速度を測定する。加速度は、測定対象における心理的負担や慢性ストレスに関係している可能性がある情報を表す。
肌表面導電センサは、測定対象の肌の表面上に装着され、装着された箇所にて導電性を測定する。導電性は、測定対象における心理的負担や慢性ストレスに関係している可能性がある情報を表す。
心拍を測定するには、手足等の身体末端に取り付けたセンサ(PPG方式、上述したような肌表面での圧力変化に基づき心拍を推定する方式、または、脈波に由来する加速度を検知する方式等)から測定した脈波から推定する方法、測定対象が座る椅子等の座面124、背もたれ等に設置された座面圧力分布センサから、被検者の身体の心拍に由来する微細な振動を検知して心拍を推定する方法、同じく測定対象が座る椅子等の座面124、背もたれ等に設置された座面圧力分布センサから、被検者の身体末端における脈波による振動を推定し、更に心拍を推定する方法、測定対象の胸部(心臓付近)に装着した筋電計により心筋の筋電図(いわゆる「心電図」)を直接取得する方法、両手の手指等から同時に取得する電気信号により前述の心筋の筋電の挙動を推定する方法等が挙げられるが、これらに限らない。
測定部103が有する構成は、測定対象に関する状況に応じて決定されてもよい。測定対象がウェアラブル機器を身に着けることに不慣れな場合に、該測定対象は、リストバンド状のセンサ(図5に例示された圧力分布センサによるリストバンドや、その他加速度センサ、肌表面導電センサ、PPG方式の脈波センサ等のリストバンド)を装着することを、心理的負担に感じる可能性がある。該測定対象が、さらに、コンピュータの操作や自動車の運転等、座位にて作業を行うことが多い場合に、測定部103は、たとえば、測定対象が座る椅子の座面124に設置された圧力分布センサ126(図4に例示)を有する。また、測定対象が動くことが多く、さらに、ウェアラブル機器を装着することに慣れている場合に、測定部103は、たとえば、リストバンド状のウェアラブル機器(図5に例示された圧力分布センサによるリストバンドや、その他加速度センサ、肌表面導電センサ、PPG方式の脈波センサ等のリストバンド)を有し、さらに、椅子の座面124に設置された圧力分布センサ126(図4に例示)を有してもよい。測定部103が、複数の場所に設置されたセンサを有している場合には、該測定部103によれば、たとえば、一部の情報を測定できない場合であっても、測定できた測定情報に基づき、測定できない情報を推定することができる。
測定部103は、測定対象における慢性ストレスに関係している可能性がある情報、または、測定対象における心理的負担に関係している可能性がある情報を取得できればよく、上述した例に限定されない。
ストレス推定装置102は、上述したようなセンサを有している測定部103によって測定対象に関して測定された測定情報に基づき、該測定対象における慢性ストレスの程度と、該測定対象に関する休息(または、休暇)のタイミングとを推定する。ストレス推定装置102は、測定部103が測定した測定情報を入力できればよく、たとえば、汎用の情報処理装置、専用の装置、または、携帯端末等が有する機能を用いて実現することができる。ストレス推定装置102は、たとえば、測定対象が使用するコンピュータ、または、携帯端末等に格納されているソフトウェア等を用いて実現することができる。
出力装置104は、ストレス推定装置102が算出した休息のタイミング、ストレスの程度等を出力する。出力装置104は、たとえば、ディスプレー、スピーカー等の装置である。出力装置104は、上述した例に限定されない。
次に、本発明の第1の実施形態に係るストレス推定システム101における処理について詳細に説明する。ストレス推定システム101における処理は、大別して、慢性ストレスを推定する推定処理と、該推定処理の基である情報(訓練情報、推定モデル等)を作成する学習処理とを含む。図2を参照しながら、第1の実施形態に係るストレス推定システム101における学習処理について説明し、その後、図3を参照しながら、第1の実施形態に係るストレス推定システム101における推定処理について説明する。図2は、第1の実施形態に係るストレス推定システム101における学習処理の流れを示すフローチャートである。図3は、第1の実施形態に係るストレス推定システム101における推定処理の流れを示すフローチャートである。
説明の便宜上、推定処理と、学習処理とに分けて説明するが、ストレス推定システム101は、並行して、または、擬似的に並行して、推定処理と、学習処理とを実行してもよい。
図2に示された学習処理において、入力部105は、測定部103によって測定された測定情報を入力する(ステップS101)。測定情報は、測定対象に関する情報を表す。入力部105は、入力した測定情報を測定情報記憶部(不図示)に格納してもよい。入力部105は、さらに、測定対象に対するアンケート調査等を介して取得された慢性ストレスの程度、または、心理的負担の程度を入力する(ステップS102)。
心理的負担学習部112は、入力部105によって入力された測定情報に関して、該測定情報の特徴を表す特徴量の値を、所定の特徴量算出手順に従い算出する。該所定の特徴量算出手順に従い算出される特徴量は、心理的負担に関係している可能性がある情報(たとえば、式10等を参照しながら後述する「標準偏差SD」)を表す。心理的負担学習部112は、算出した特徴量の値と、入力した心理的負担とが関連付けされた心理的負担訓練情報(図6を参照しながら後述する)を作成し(ステップS103)、作成した心理的負担訓練情報を心理的負担情報記憶部115に格納する。
心理的負担学習部112は、作成した心理的負担訓練情報(心理的負担教師データ)を機械学習技術に関する手順に従って演算処理することによって、該特徴量と、該心理的負担との関係性を表す心理的負担推定モデルを作成する(ステップS104)。機械学習技術は、たとえば、サポートベクターマシンや、回帰木等の方法である。心理的負担推定モデルを、所定の特徴量算出手順に従い算出された特徴量の値に対して適用することによって、該特徴量の値は算出される。
測定対象の人数が多いほど(または、該測定対象に対する測定期間が長いほど、該測定対象に対するアンケートにて調査される項目が多いほど)、推定精度がより高い心理的負担推定モデルを作成することができる。心理的負担訓練情報は、たとえば、特定の測定対象のみに依存しない測定対象非依存(subject−independent)な手法に従い作成されてもよい。
第1慢性ストレス学習部111は、入力部105によって入力された測定情報に関して、該測定情報の特徴を表す特徴量の値を、所定の特徴量算出手順に従い算出する。該所定の特徴量算出手順に従い算出される特徴量は、慢性ストレスに関係している可能性がある情報(たとえば、式6等を参照しながら後述する「相関次元D2」)を表す。第1慢性ストレス学習部111は、作成した特徴量の値と、入力した慢性ストレスの程度とが関連付けされた第1慢性ストレス訓練情報(図7を参照しながら後述する)を作成し(ステップS105)、作成した第1慢性ストレス訓練情報を第1慢性ストレス情報記憶部114に格納する。
第1慢性ストレス学習部111は、作成した第1慢性ストレス訓練情報(第1慢性ストレス教師データ)を機械学習技術に関する手順に従って演算処理することによって、該特徴量の値と、該心理的負担との関係性を表す第1慢性ストレス推定モデルを作成する(ステップS106)。機械学習技術は、たとえば、サポートベクターマシンや、回帰木等の方法である。第1慢性ストレス推定モデルを、所定の特徴量算出手順に従い算出された特徴量(たとえば、「相関次元D2」)に対して適用することによって、該特徴量の値に関する慢性ストレスの程度は算出される。
測定対象における慢性ストレスに関しても、心理的負担を推定する手順と同様な手順に従い推定することができる。慢性ストレスを推定する基である測定情報は、慢性ストレスに関係している可能性がある情報をセンサによって測定することによって取得される。また、測定対象の人数が多いほど(または、該測定対象に対する測定期間が長いほど、該測定対象に対するアンケートにて調査される項目が多いほど)、推定精度がより高いモデルを作成することができる。すなわち、第1慢性ストレス訓練情報は、特定の測定対象のみに依存しない測定対象非依存(subject−independent)な手法に従い作成される。
次に、第2慢性ストレス学習部113は、入力された慢性ストレスの程度と、入力された心理的負担の程度との関係性を表す第2慢性ストレス推定モデル(図8を参照しながら後述する)を作成する(ステップS107)。
説明の便宜上、ある期間における心理的負担の程度をP(ただしP≧0)と表し、該ある期間における慢性ストレスの程度をS(ただしS≧0)と表すとする。この場合に、第2慢性ストレス学習部113は、SとPとの関係性を表す第2慢性ストレス推定モデル「S=F(P)」を、たとえば、Pと、Sとに関する回帰分析を実行する手順に従い算出する。回帰分析は、たとえば、「S=F(P)」が線形である線形回帰分析を表す。すなわち、第2慢性ストレス学習部113は、心理的負担の程度に基づき、慢性ストレスの程度を予測可能な第2慢性ストレス推定モデルを算出する。第2慢性ストレス学習部113は、入力部105に情報が入力されるのに応じて、入力された慢性ストレスの程度、及び、入力された心理的負担の程度に基づき、第2慢性ストレス推定モデルを更新してもよい。この場合に、第2慢性ストレス学習部113は、新たに入力された心理的負担の程度、及び、ストレスの程度に基づき、新たに追加された程度に対して適合している第2慢性ストレス推定モデル「S=F(P)」を算出する。
説明の便宜上、圧力中心に関する標準偏差SDが心理的負担の程度を表していると仮定する。この場合、標準偏差SDは、厳密に時間軸上のある一点における値というわけではなく、ある程度の幅を持った時間区間(たとえば10秒、1分等)の中での、測定対象の身体の動きに基づく圧力分布中心の変動によるばらつきから算出される。この場合、SD(t)の「t」とは、前記時間区間内の代表点(始点、終点、中央点その他)である。また、測定対象の心拍に関する相関次元D2が慢性ストレスの程度を表していると仮定する。D2(t)におけるtも、前述のSD(t)における「t」と同様のものとする。さらに、心理的負担の程度と、慢性ストレスの程度との関係性は、線形な相関関係を用いて表されていると仮定する。
ある期間(説明の便宜上、タイミングTiからタイミングTfまでの期間であるとする)に蓄積された心理的負担は、該期間内の各タイミングにおける心理的負担が、該ある期間に関して累積された情報である。したがって、上述した仮定に従えば、ある期間に蓄積された心理的負担は、たとえば、標準偏差SDが、ある期間にて積分された値として算出することができる。
上述した仮定の下では、標準偏差SDと、相関次元D2との間には、式1に示すように、線形な相関関係がある。
ただし、A、Bは、定数を表す。
ここで、式2に示すような複数の期間に関して、標準偏差SD、及び、相関次元D2が算出されるとする。
ただし、ti_1、tf_1、tf_2、・・・、tf_Nは、タイミングを表す。f、i、及び、Nは、自然数を表す。
定数A、及び、Bは、式3乃至式5に示すように、上述したような複数の期間に含まれている期間に関する誤差を最小にする値として算出することができる。
ただし、jは、自然数を表す。
たとえば、第2慢性ストレス学習部113は、最小二乗法における処理手順に従い、定数A、及び、定数Bを算出することができる。
図8においては、第2慢性ストレス推定モデル「S=F(P)」は、1次関数であるが、2次以上の高次関数、指数関数等の関数、または、複数の関数の重みつき和であってもよい。すなわち、第2慢性ストレス推定モデルは、上述した例、または、図1に示された例に限定されない。
図2のステップS103乃至ステップS106に示された処理は、必ずしも、図2に示された順序に従い実行される必要はなく、異なる順序にて実行されてもよいし、並行して(または、擬似的に並行して)実行されてもよい。すなわち、学習処理における処理順序は、図2に示された例に限定されない。また、第1慢性ストレス学習部111と、心理的負担学習部112とは、必ずしも、同じ機械学習技術に従い処理を実行する必要はない。また、第2慢性ストレス学習部113は、入力された心理的負担の程度に基づき、第2慢性ストレス推定モデルを作成したが、心理的負担累積部108(または、心理的負担推定部107)によって算出される心理的負担の程度に基づき、第2慢性ストレス推定モデルを作成してもよい。
さらに、心理的負担学習部112は、測定対象ごとに、第2慢性ストレス推定モデルを作成してもよい。または、心理的負担学習部112は、測定対象に類似している生物に関して測定された測定情報に関して算出された心理的負担の程度に基づき、該測定対象に関する第2慢性ストレス推定モデルを作成してもよい。この場合には、第2慢性ストレス推定モデルが、個人差を反映したモデルであるので、本実施形態に係るストレス推定装置102によれば、個人差によらず、高精度に慢性ストレスを推定することができる。
本実施形態に係るストレス推定装置102において、特徴量の値が算出される手順を表す所定の特徴量算出手順について説明する。
測定情報が測定対象等の測定対象の心拍である場合に、所定の特徴量算出手順に従い算出される特徴量は、たとえば、該心拍に関して算出される相関次元D2である。以降、相関次元D2の値等の慢性ストレスの程度に関係している可能性がある特徴量を算出する手順を算出する手順を「所定の第2特徴量算出手順」と表すこともある。相関次元D2は、該測定対象に関する慢性ストレスに関係している可能性がある情報の一例を表す。該心拍は、たとえば、生体情報センサ、または、圧力分布センサ等を用いて測定される。
相関次元D2は、ある期間において測定された心拍等の時系列データが有している特徴が、該時系列データが有しているフラクタル性(フラクタル構造)の程度として表された特徴量である。時系列データが心拍を表す場合の例を参照しながら、相関次元D2について説明する。
ξ(t)は、時刻tにおける心拍を表すとする。また、τは、2つの時刻の間の間隔を表すタイムラグを表すとする。また、ある時刻tから時刻(t+τ×(M−1))までの期間(すなわち、ある時刻からM回分のタイムラグを経過するまでの期間)をタイムウィンドウと表すとする。ただし、t≧0、τ≧0、M≧1である。
上記のように仮定した場合に、時刻iを基点とするタイムウィンドウにおける心拍は、式6に示すような、埋め込みベクトルv
iとして表すことができる。
ここで、タイムラグτは、式7に示すような、複数の異なる埋め込みベクトル間における自己相関関数Rが時間に関して微分された関数が極小である場合の時刻tのうち、最初に現れる時刻であるとする。
埋め込みベクトルv
i間の組み合わせの個数をN
pと表すとする。この場合に、v
iを中心とする半径r(ただし、r>0)の球を考え、該球の中にv
jが入る確率の対数と、半径rの対数との比の微分によって、D2(M;r)は、式8に示すように定義される。
ただし、Θ(z)は、階段関数(z≧0にて1、z<0にて0である関数)を表す。
相関次元D2は、Mが十分に大きく、半径rが十分に0に近い場合の極限値として定義される。
特徴量は、慢性ストレスに関係している可能性がある情報であればよく、式9に示された相関次元D2に限定されない。
次に、心理的負担に関係している可能性がある特徴量の値を算出する手順を表す所定の特徴量算出手順について説明する。
心理的負担に関係している可能性がある特徴量は、たとえば、圧力分布センサによって測定された圧力分布のうち、該圧力分布の中心位置(以降、「圧力中心」と表す)が時間的にばらつく程度を表す標準偏差SDである。圧力中心に関する標準偏差SDを算出する手順の一例について説明する。以降、標準偏差SDの値等の心理的負担の程度に関係している可能性がある特徴量を算出する手順を「所定の第1特徴量算出手順」と表すこともある。
圧力分布センサは、たとえば、所定の領域において格子状に配置された複数の圧力検知セル(図4、たとえば、圧力検知セル121、圧力検知セル122)を有する。説明の便宜上、該圧力分布センサにおいては、縦方向にY(ただし、Yは自然数)個、横方向にX(ただし、Xは自然数)個の圧力検知セルが配置されているとする。また、圧力検知セルが、圧力を測定する位置を位置(x,y)と表すとする。さらに、位置(x,y)(ただし、x、yは実数)にて時刻t(ただし、tは実数)に測定された圧力をP(x,y,t)と表し、圧力分布センサによって測定された圧力分布に関して、時刻tにおける圧力中心を表すx座標をCoP_x(t)と表し、該中心を表すy座標をCoP_y(t)と表すとする。
式10に従い、圧力中心のx座標CoP_x(t)は算出される。すなわち、
式11に従い、圧力中心のy座標CoP_y(t)は算出される。すなわち、
圧力中心のx座標CoP_x(t)に関して、式12に従い、タイミング1からタイミングTまでの期間における平均は算出される。すなわち、
圧力中心のy座標CoP_y(t)に関して、式13に従い、タイミング1からタイミングTまでの期間における平均は算出される。すなわち、
圧力中心のx座標CoP_x(t)に関して、式14に従い、タイミング1からタイミングTまでの期間における標準偏差(すなわち、該圧力中心のx座標がばらつく程度)は算出される。すなわち、
圧力中心のy座標CoP_y(t)に関して、式15に従い、タイミング1からタイミングTまでの期間における標準偏差(すなわち、該圧力中心のy座標がばらつく程度)は算出される。すなわち、
式14、及び、式15に従い算出されるばらつきは、心理的負担に関係している可能性がある特徴量を表す。圧力中心のx座標の値がばらつく程度、及び、圧力中心のy座標の値がばらつく程度を表す特徴量は、たとえば、式16に従い算出されてもよい。すなわち、
したがって、特徴量は、心理的負担に関係している可能性がある指標を表す。心理的負担に関係している可能性がある特徴量は、上述した圧力中心の標準偏差に限定されない。
図6を参照しながら、心理的負担訓練情報について説明する。図6は、心理的負担情報記憶部115に格納されている心理的負担訓練情報の一例を概念的に表す図である。
心理的負担訓練情報においては、心理的負担の程度に関係している可能性がある情報(たとえば、式16に従い算出される特徴量)と、心理的負担の程度とが関連付けされている。心理的負担訓練情報においては、さらに、測定部103によって測定された測定情報、または、該測定情報に基づき算出された特徴量に関連付けされていてもよい。
たとえば、図6に例示された心理的負担訓練情報においては、項目1乃至項目8が関連付けされている。すなわち、
○(項目1)圧力中心のx軸方向のばらつき「2.5」(たとえば、式14に従い算出される)、
○(項目2)圧力中心のy軸方向のばらつき「3.8」(たとえば、式15に従い算出される)、
○(項目3)標準偏差SD「6.3」(たとえば、式16に従い算出される)、
○(項目4)加速度「1.3」、(ただし、図6の「g」は、gravityの略称を表す)、
○(項目5)皮膚導電性「5.0」、(ただし、図6の「μS」は、マイクロ秒を表す)、
○(項目6)心拍数「60」、
○(項目7)皮膚の温度「35.5」、(ただし、図6の「℃」は、セルシウス度(セ氏)を表す)、
○(項目8)心理的負担「3.4」。
これは、心理的負担に関係している可能性がある情報が項目1乃至項目7に示された情報であり、項目1乃至項目7である場合の心理的負担が「3.4」であることを表す。また、項目1乃至項目3、及び、項目6に示された情報は、測定情報に基づき算出された特徴量を表す。項目4、項目5、及び、項目7に示された情報は、測定部103によって測定された測定情報を表す。
心理的負担訓練情報は、項目1乃至項目7に示された情報を、必ずしも、すべて含んでいる必要はない。心理的負担訓練情報は、心理的負担の程度に関係している可能性がある情報であれば、他の項目を含んでいてもよい。すなわち、心理的負担訓練情報は、図6に示された例に限定されない。
図7を参照しながら、第1慢性ストレス訓練情報について説明する。図7は、第1慢性ストレス情報記憶部114に格納されている、第1慢性ストレス訓練情報の一例を概念的に表す図である。
第1慢性ストレス訓練情報においては、慢性ストレスの程度に関係している可能性がある情報(たとえば、式9に従い算出される特徴量)と、慢性ストレスの程度とが関連付けされている。第1慢性ストレス訓練情報においては、さらに、測定部103によって測定された測定情報、または、該測定情報に基づき算出された特徴量に関連付けされていてもよい。
たとえば、図7に例示された第1慢性ストレス訓練情報においては、相関次元「4.2」と、慢性ストレス「3.1」とが関連付けされている。これは、式9に従い算出された相関次元が4.2であった場合の慢性ストレスの程度が3.1であったことを表す。
第1慢性ストレス訓練情報は、慢性ストレスの程度に関係している可能性がある情報であれば、他の項目を含んでいてもよい。すなわち、第1慢性ストレス訓練情報は、図7に示された例に限定されない。
図8を参照しながら、第2慢性ストレス推定モデルについて説明する。図8は、第2慢性ストレス情報記憶部116に格納されている第2慢性ストレス推定モデルの一例を概念的に表す図である。
第2慢性ストレス情報記憶部116には、式1乃至式5に従い算出された第2慢性ストレス推定モデル「S=F(P)」が、たとえば、測定対象ごとに格納されている。たとえば、図8に例示された第2慢性ストレス情報記憶部116においては、測定対象Cに関して算出された第2慢性ストレス推定モデルと、測定対象Dに関して算出された第2慢性ストレス推定モデルとが格納されている。
図8においては、横軸が心理的負担の程度を表し、縦軸が慢性ストレスの程度を表すグラフとして第2慢性ストレス推定モデルが、第2慢性ストレス情報記憶部116に格納されているが、必ずしも、グラフでなくともよく、該グラフを用いて表されている関数の係数、または、該関数を表す情報が格納されていてもよい。すなわち、第2慢性ストレス推定モデルは、上述した例に限定されない。
第2慢性ストレス学習部113は、測定情報が増えた場合に、増えた測定情報に基づき算出される特徴量の値、心理的負担の程度に対して、式3乃至式5に示された手順に従い、定数A、及び、定数Bを算出してもよい。すなわち、第2慢性ストレス学習部113は、増えた測定情報に関して算出される心理的負担に基づき、定数A、及び、定数Bを更新してもよい。第2慢性ストレス学習部113が第2慢性ストレス推定モデルを更新することによって、該第2慢性ストレス推定モデルには、より多くの測定情報に関する心理的負担の程度が反映される。この結果、該第2慢性ストレス推定モデルに基づく推定精度は、更新する処理を実行しない場合に比べて向上する。
次に、図3を参照しながら、第1の実施形態に係るストレス推定システム101における推定処理について説明する。
入力部105は、測定部103によって測定された測定情報を入力する(ステップS111)。測定情報は、測定対象に関する情報を表す。入力部105は、入力した測定情報を測定情報記憶部(不図示)に格納してもよい。
心理的負担推定部107は、入力部105が入力した測定情報を、所定の特徴量算出手順に従い演算することによって、心理的負担に関係している可能性がある特徴量の値を算出する(ステップS112)。心理的負担推定部107は、式6乃至式16を参照しながら上述したような処理に従い、測定情報に関する特徴量の値を算出する。心理的負担推定部107は、算出した特徴量の値と、入力した測定情報とのうち、少なくとも、いずれかを含む情報が、心理的負担訓練情報(図6に例示)における項目(たとえば、項目1乃至項目7)の順序にて並べられた情報を作成する。心理的負担推定部107は、上述した情報と、心理的負担との関係性を表す心理的負担推定モデルを、作成した情報に対して適用することによって、心理的負担の程度を表す負担推定情報を作成する(ステップS113)。心理的負担推定モデルは、図2を参照しながら説明したように、心理的負担学習部112によって作成される。心理的負担推定部107は、作成した該負担推定情報を、心理的負担情報記憶部115に格納する。
心理的負担累積部108は、所定の期間に測定された心理的負担の程度、または、所定の期間に測定された測定情報に基づき算出された心理的負担の程度を累積する(ステップS114)。心理的負担累積部108は、たとえば、式1に示されているような積分演算を、心理的負担の程度に関して実行することによって、心理的負担の程度を累積する。
尚、心理的負担累積部108が累積値を算出する対象である期間は、必ずしも、該累積値を算出するタイミング以前である必要はなく、累積値が算出される以降のタイミングであってもよい。この場合に、心理的負担累積部108は、累積値が算出される以降のタイミングを含む期間における心理的負担の程度の推定値に基づき、上述したような処理に従い、該心理的負担の程度に関する累積値を算出する。
心理的負担累積部108は、測定対象が心理的負担の要因にさらされる予定の時間(たとえば、勤務時間)における心理的負担の程度を推定してもよい。この場合に、勤務時間は、勤務した実績である時間を表している必要はなく、勤務する予定である時間を表す。勤務時間が勤務する予定である時間を表す予定時間である場合に、心理的負担累積部108は、該予定時間における心理的負担の程度として、たとえば、所定の心理的負担の程度に従い、該累積値を算出する。また、第2の実施形態に示すように、心理的負担累積部108は、測定対象が心理的負担の要因にさらされる予定の時間を含むスケジュール情報に基づき、心理的負担の程度の累積値を算出してもよい。
また、測定対象がストレスの要因にさらされる時間と、該測定対象に関する心理的負担の累積値とが線形な関係にある場合に、心理的負担累積部108は、該線形な関係に従い心理的負担の程度を算出してもよい。すなわち、すなわち、心理的負担累積部108における処理は、上述した例に限定されない。
第2慢性ストレス推定部109は、心理的負担累積部108が算出した累積値に、心理的負担の程度の累積値と、慢性ストレスの程度との関係性を表す第2慢性ストレス推定モデル(たとえば、式1を参照しながら説明したような線形な相関関係)を適用することによって慢性ストレスの程度の程度を算出する(ステップS115)。第2慢性ストレス推定部109は、算出した慢性ストレスの程度の程度を第2慢性ストレス情報記憶部116に格納してもよい。
慢性ストレス判定部110は、第2慢性ストレス推定部109によって算出された慢性ストレスの程度の程度が、所定の条件を満たしているか否かを算出する(ステップS116)。所定の条件は、たとえば、該慢性ストレスの程度が所定の閾値以上であるかという条件である。所定の閾値は、精神的な疾患を患うリスクがあるか否かを判定可能な閾値であってもよいし、該閾値よりも小さな値であってもよい。
慢性ストレスの程度が所定の条件を満たしている場合に、慢性ストレス判定部110は、ストレスが高いと判定する。慢性ストレスの程度が所定の条件を満たしている場合に(ステップS116にてYES)、慢性ストレス判定部110は、たとえば、ストレスを軽減することを助言するメッセージを作成し、作成したメッセージを出力装置104に出力する(ステップS117)。慢性ストレスの程度が所定の条件を満たしていない場合に(ステップS116にてNO)、ステップS117に示された処理は実行されない。
所定の閾値が精神的な疾患を患うリスクがあるか否かを判定可能な閾値よりも小さな値である場合に、慢性ストレス判定部110によれば、精神的な疾患を患うリスクが高くなる前に、あらかじめ、慢性ストレスが高いことを表すメッセージを測定対象に対して予告的に提示することができる。精神的な疾患を患うリスクに関する閾値は、たとえば、ホームページ(http://kokoro.mhlw.go.jp/check)等に示される心理学的にストレス測定効果が保証されたアンケート調査の結果において、該リスクが精神的な疾患を患うリスクがあると判定される水準(前述の具体例では、「要注意ゾーン」)に含まれる水準を表す。しかし、所定の閾値は、この例に限定されない。また、メッセージは、たとえば、慢性ストレスが高いことを表す内容であってもよい。
次に、第1の実施形態に係るストレス推定装置102に関する効果について説明する。
本発明の第1の実施形態に係るストレス推定装置102によれば、測定対象が測定された測定タイミングだけでなく、該測定タイミングと異なるタイミングに関しても、慢性ストレスの程度を高精度に推定することができる。この理由は、ストレス推定装置102が心理的負担の累積値に基づき慢性ストレスを推定することによって、慢性ストレスが推定される処理に時刻を表す値が導入されているからである。すなわち、ストレス推定装置102は、該時刻を表す値を変更することによって、測定対象が測定された測定タイミングだけでなく、該測定タイミングと異なるタイミングに関しても、慢性ストレスの程度を高精度に推定することができる。
また、本発明の第1の実施形態に係るストレス推定装置102によれば、将来の慢性ストレスの程度を推定することができる。この理由は、ストレス推定装置102が、将来受けると予測される心理的負担の程度に基づき、慢性ストレスの程度を算出するからである。たとえば、第1の実施形態に係るストレス推定装置102によれば、測定対象が精神的な疾患を患うリスクがある場合に、測定対象が、あらかじめ、該リスクを知ることができる。この理由は、将来受けると予測される心理的負担の程度に基づき推定された慢性ストレスの程度の大きさに応じて、ストレス推定装置102が、たとえば、慢性ストレスが高いことを表すメッセージを出力するからである。
また、本発明の第1の実施形態に係るストレス推定装置102によれば、各測定対象に対し、慢性ストレスの程度を高精度に推定することができる。この理由は、第2ストレス推定モデルを、たとえば、各測定対象に関して作成することができるからである。したがって、ストレス推定装置102によって作成された第2ストレス推定モデルは、個人差が反映されたモデルである。
また、本発明の第1の実施形態に係るストレス推定装置102によれば、短期間に、慢性ストレスを推定することができる。この理由は、推定処理において、ストレス推定装置102が、測定情報、及び、各モデルを作成する基である訓練情報(たとえば、心理的負担訓練情報、及び、第1慢性ストレス訓練情報)を参照することなく慢性ストレスを推定することができるからである。一般に、モデルを作成する処理が、該モデルに基づき推定する処理より、処理量が多いので、ストレス推定装置102は、短期間に予測処理を実行することができる。
<第2の実施形態>
次に、上述した第1の実施形態を基本とする本発明の第2の実施形態に係るストレス推定(判定)システム201について説明する。
以降の説明においては、本実施形態に係る特徴的な部分を中心に説明すると共に、上述した第1の実施形態と同様な構成については、同一の参照番号を付すことにより、重複する説明を省略する。
図9を参照しながら、本発明の第2の実施形態に係るストレス推定システム201が有する構成について詳細に説明する。図9は、本発明の第2の実施形態に係るストレス推定システム201が有する構成を示すブロック図である。
本発明の第2の実施形態に係るストレス推定システム201は、ストレス推定(判定)装置202と、測定部103と、出力装置104とを有する。
第2の実施形態に係るストレス推定装置202は、入力部105と、第1慢性ストレス推定部106と、心理的負担推定部107と、スケジュール情報処理部208と、第2慢性ストレス推定部109と、慢性ストレス判定部110と、第1慢性ストレス学習部111と、心理的負担学習部112と、第2慢性ストレス学習部113とを有する。ストレス推定装置202は、さらに、第1慢性ストレス情報記憶部114と、心理的負担情報記憶部115と、第2慢性ストレス情報記憶部116と、項目負担情報記憶部217(図12を参照しながら後述する)と、負担情報算出部222とを有してもよい。
ストレス推定装置202は、あるタイミングにおけるストレスの程度を算出可能な慢性ストレス算出部221に、通信接続されていてもよい。
まず、図11を参照しながら、ストレス推定装置202が慢性ストレスを予測する対象であるスケジュール情報について説明する。図11は、スケジュール情報の一例を概念的に表す図である。
スケジュール情報は、測定対象が実行する処理、または、測定対象に関して実行される処理を表す項目名と、該処理の日時とが関連付けされた情報である。言い換えると、スケジュール情報は、ストレスを受ける測定対象に生じるイベントを表す対象イベントが生じる期間を表すイベント期間を含む情報である。
以降、説明の便宜上、イベント、及び、上述した処理を「処理」を表す。また、イベント期間を、該処理に関する日時を用いて表す。
スケジュール情報は、たとえば、該項目名が表す処理の日時(たとえば、開始日時、終了日時)、曜日、処理の種類を表す種類情報、該処理が定期的に実行されるか否か、該処理が重要である程度を表す重要度等を含んでいてもよい。重要度が大きな値であるほど、重要度は高いことを表す。
図11に例示されたスケジュール情報においては、項目名「A」、開始日時「15:10」、終了日時「15:50」、曜日「月」、種類「会議」、定期性「非定期」、及び、重要度「3」が関連付けされている。これは、たとえば、項目名「A」が表す処理が、月曜日の開始日時「15:10」から終了日時「15:50」までの実行時間(実行期間)に、非定期的に実行されることを表す。また、項目名「A」が表す処理は、会議の一例であり、重要度が3であることを表す。
スケジュール情報は、必ずしも、上述した項目のすべてを含んでいる必要はなく、また、上述した項目と異なる項目を含んでいてもよい。すなわち、スケジュール情報は、上述した例に限定されない。
次に、ストレス推定装置202において、スケジュール情報処理部208が心理的負担の程度を算出する基となる項目負担情報について、図12を参照しながら説明する。図12は、項目負担情報記憶部217に格納されている項目負担情報の一例を概念的に表す図である。
項目負担情報においては、測定対象が実行する(または、測定対象に対して実行される)処理を表す項目名と、該測定対象が該処理に起因して受ける心理的負担の程度とが関連付けされている。項目負担情報においては、さらに、測定対象を表す情報と、該処理が実行される曜日と、該処理の種類と、該処理に重要度とが関連付けされていてもよい。重要度が大きな値であるほど、重要度は高いことを表す。
項目負担情報において、心理的負担は、入力部105に入力された情報であってもよいし、心理的負担推定部107によって算出された情報であってもよい。また、心理的負担は、該処理全体に起因する心理的負担であってもよいし、該心理的負担に関する単位時間あたりの情報であってもよい。
以降の説明においては、説明の便宜上、項目負担情報において、心理的負担は、単位時間あたりの情報を表しているとする。
図12を参照すると、項目名「E」と、測定対象「Q」と、曜日「月」と、種類「外出」と、重要度「7」と、心理的負担「2.1」とが関連付けされている。これは、たとえば、測定対象「Q」が、項目名「E」が表す処理を、月曜日に実行した場合に、測定対象「Q」に対する心理的負担が2.1であったことを表す。また、これは、項目名「E」が表す処理が、「外出」なる処理の一例であり、重要度が7であることを表す。
項目負担情報においては、ある特定の曜日(たとえば、月曜日)に関する心理的負担の程度が、他の曜日に関する心理的負担の程度よりも大きな値であってもよい。この場合には、ストレス推定装置202は、月曜日が他の曜日よりも心理的負担が高いという経験則に基づき、図10を参照しながら後述するような処理に従って処理を行うことによって、正確に慢性ストレスの程度を予測することができる。
次に、図10を参照しながら、第2の実施形態に係るストレス推定システム201における処理について説明する。図10は、第2の実施形態に係るストレス推定システム201における処理の流れを示すフローチャートである。
入力部105は、スケジュール情報(図11に例示)を入力する(ステップS201)。
スケジュール情報処理部208は、入力されたスケジュール情報に含まれている項目名が表す処理に関する心理的負担の累積値を算出する(ステップS202)。言い換えると、スケジュール情報処理部208は、入力されたスケジュール情報に含まれている対象イベントから受ける心理的負担の累積値を算出する。ステップS202に示された処理を、より具体的に説明する。
スケジュール情報処理部208は、入力されたスケジュール情報(図11に例示)に含まれている項目名を読み取り、読み取った項目名に関する心理的負担を、項目負担情報(図12に例示)に基づき特定する。たとえば、スケジュール情報処理部208は、項目負担情報(図12に例示)において、スケジュール情報(図11に例示)に含まれている項目名に関連付けされた心理的負担を読み取る。スケジュール情報処理部208は、スケジュール情報に含まれている各項目に関して、該項目に関する開始日時と、該項目に関する終了日時とを読み取り、特定した心理的負担を表す数値と、開始日時から終了日時までの時間を掛け算し、その結果の総和を算出することによって、心理的負担の累積値を算出する。
スケジュール情報(図11に例示)における項目名が項目負担情報(図12に例示)に含まれていない場合に、スケジュール情報処理部208は、所定の値に基づき、心理的負担の累積値を算出してもよい。この場合に、入力部105は、たとえば、アンケート調査等によって取得された、該項目名に関する心理的負担の程度を表す情報を入力するのに応じて、入力した情報を含む項目負担情報(図12に例示)を作成する。または、心理的負担推定部107が該項目名に関する心理的負担の程度を表す情報を算出するのに応じて、算出した情報を含む項目負担情報(図12に例示)を作成する。項目負担情報が作成されることによって、該項目名が表す処理に関する心理的負担情報が正確になるので、第2の実施形態に係るストレス推定装置202は、スケジュール情報に基づき、より正しく、慢性ストレスの程度を算出することができる。
また、項目負担情報(図12に例示)において、ある項目名に関する心理的負担の程度を表す数値が複数ある場合に、スケジュール情報処理部208は、該複数の数値の平均値を、該ある項目名が表す処理に関する心理的負担の程度を表す情報として算出してもよい。この場合に、スケジュール情報処理部208は、ある項目名に関する複数の数値の平均値を算出し、算出した平均値と、該ある項目名とが関連付けされた項目負担情報を作成し、項目負担情報記憶部217に格納されている項目負担情報を、作成した項目負担情報を用いて更新してもよい。この場合に、平均値を算出する基である数値の個数が多いほど、該平均値が正確な値であるので、第2の実施形態に係るストレス推定装置202によれば、さらに正確に、慢性ストレスの程度を算出することができる。
たとえば、スケジュール情報処理部208は、スケジュール情報に含まれている種類を表す種類情報に基づき、心理的負担の累積値を算出してもよい。この場合に、スケジュール情報処理部208は、項目名に関して上述した処理と同様な処理を、種類情報に関して実行することによって、心理的負担の累積値を算出する。スケジュール情報処理部208は、項目負担情報(図12に例示)において、該種類情報に関連付けされた心理的負担を表す数値が複数ある場合に、複数の該数値の平均値を算出することによって、心理的負担の累積値を算出してもよい。この場合に、スケジュール情報(図11に例示)に含まれている項目名が、項目負担情報(図12に例示)に含まれていない場合であっても、スケジュール情報処理部208は、該種類情報に基づき心理的負担の累積値を算出することができる。したがって、第2の実施形態に係るストレス推定装置202によれば、正確に、慢性ストレスの程度を算出することができる。
図10におけるステップS202の処理の後に、第2慢性ストレス推定部109は、スケジュール情報処理部208が算出した累積値に対して、第2慢性ストレス推定モデルを適用することにより、慢性ストレスの程度を算出する(ステップS115)。言い換えると、第2慢性ストレス推定部109は、スケジュール情報処理部208が算出した累積値に対して、第2慢性ストレス推定モデルを適用することにより、対象イベントから受ける慢性ストレスの程度を算出する。
また、慢性ストレス判定部110は、慢性ストレスの程度が所定の条件を満たした場合に(ステップS116にてYES)、スケジュール情報(図11に例示)における項目名のうち、該項目名に関連付けされた重要度が低い(たとえば、図12において、重要度の値が小さい)処理を選択してもよい。たとえば、慢性ストレス判定部110は、該スケジュール情報(図11に例示)に含まれている項目のうち、重要度が最低(または、略最低)の項目を選択する。この場合に、慢性ストレス判定部110は、選択した項目に関する処理が実行されている期間中にストレスを軽減することを催促するメッセージを出力してもよい(ステップS117)。重要度が低い処理を慢性ストレス判定部110が選択することによって、ストレス推定装置202は、測定対象が休息できる適切なタイミングを出力することができる。
ストレス推定装置202は、測定部103によって測定情報が測定されるのに応じて、図10に示された処理を実行してもよい。この場合に、測定情報が測定されるのに応じて、第1慢性ストレス推定モデル、心理的負担推定モデル、または、第2慢性ストレス推定モデルを作成する基となる測定情報は増える。これらの推定モデルに関しては、測定情報が増えるのに応じて、推定精度が高くなるので、ストレス推定装置202によれば、より正確に慢性ストレスの程度を、より正確に推定することができる。
次に、第2の実施形態に係るストレス推定装置202に関する効果について説明する。将来の慢性ストレスの程度を推定することができる。この理由は、第2の実施形態に係るストレス推定装置202が有する構成は、第1の実施形態に係るストレス推定装置102が有する構成を含むからである。
さらに、第2の実施形態に係るストレス推定装置202によれば、より正確に、将来の慢性ストレスの程度を推定することができる。この理由は、ストレス推定装置202が、測定対象に関するスケジュールを表すスケジュール情報に含まれている各項目名ごとに、心理的負担の程度を推定するからである。
尚、上述した例においては、心理的負担推定部107が心理的負担を推定するとしたが、心理的負担は、たとえば、慢性ストレス算出部221によって算出される、あるタイミングに関するストレスの程度に基づき算出することができる。
説明の便宜上、測定対象に関する第1処理が実行される期間が第1タイミングから第2タイミングまでの第1期間であると仮定する。
慢性ストレス算出部221、測定対象の第1タイミングにおけるストレスの程度(以降、「第1算出ストレスの程度」と表す)と、該測定対象の第2タイミングにおけるストレスの程度(以降、「第2算出ストレスの程度」と表す)とを算出する。負担情報算出部222は、該第1算出ストレスの程度、及び、該第2算出ストレスとの程度の差分と、該第1期間の長さに基づき、該第1処理に関する心理的負担を算出する。負担情報算出部222は、たとえば、測定対象に関する処理に関して心理的負担を算出し、算出した心理的負担と、該第1処理を表す項も項目名とが関連付けされた項目負担情報(図12に例示)を作成する。すなわち、あるタイミングに関するストレスの程度を算出可能な慢性ストレス算出部221を用いて、項目負担情報(図12に例示)を算出することができる。この場合に、ストレス推定装置202によれば、上述した効果と同様な効果を奏する。
<第3の実施形態>
次に、本発明の第3の実施形態に係るストレス推定(判定)装置301について説明する。
図13を参照しながら、本発明の第3の実施形態に係るストレス推定装置301が有する構成について詳細に説明する。図13は、本発明の第3の実施形態に係るストレス推定装置301が有する構成を示すブロック図である。
本発明の第3の実施形態に係るストレス推定装置301は、スケジュール情報処理部302と、慢性ストレス推定部303とを有する。ストレス推定装置301は、さらに、慢性ストレス情報記憶部304を有してもよい。
慢性ストレス情報記憶部304には、図8に例示されているように、心理的負担の程度と、慢性ストレスの程度との関係性を表す第2慢性ストレス推定モデルが格納されている。
説明の便宜上、ストレス推定装置301が参照する項目負担情報(図12に例示)は、項目名が表す処理から受ける単位時間当たりの心理的負担の程度を含む情報であるとする。しかし、項目負担情報における心理的負担の程度は、単位時間当たりの程度でなくともよい。
次に、図14を参照しながら、本発明の第3の実施形態に係るストレス推定装置301における処理について詳細に説明する。図14は、第3の実施形態に係るストレス推定装置301における処理の流れを示すフローチャートである。
スケジュール情報処理部302は、スケジュール情報(図11に例示)に含まれている項目名に関して、項目負担情報(図12に例示)に基づき、該項目名が表す処理に関する心理的負担の程度を特定する(ステップS301)。たとえば、スケジュール情報処理部302は、図11に例示されたスケジュール情報のうち項目名「A」が表す処理に関して、項目負担情報(図12に例示)に基づき、該項目名「A」に関連付けされた心理的負担「4.5」を特定する。スケジュール情報処理部302は、項目負担情報(図12に例示)において、ある項目名に関連付けされた心理的負担を表す数値が複数ある場合に、複数の数値を特定してもよい。スケジュール情報処理部302は、複数の数値を特定した場合には、たとえば、特定した複数の数値の平均値を求めることによって、該項目名が表す処理に関する心理的負担の程度を算出する。
慢性ストレス推定部303は、スケジュール情報(図11に例示)に含まれている項目名に関して特定された心理的負担の程度が、該スケジュール情報に含まれている項目名に関して累積された累積値を算出する(ステップS302)。この処理によって、慢性ストレス推定部303は、該スケジュール情報(図11に例示)に関する慢性ストレスの程度を算出する。または、慢性ストレス推定部303は、慢性ストレス情報記憶部304に格納されている第2慢性ストレス推定モデルを読み取り、読み取った第2慢性ストレス推定モデルを、スケジュール情報処理部302によって算出された累積値に適用することによって、慢性ストレスの程度を算出してもよい。
スケジュール情報処理部302は、第1の実施形態に示された心理的負担累積部108、または、第2の実施形態に示されたスケジュール情報処理部208等が有する機能と同様な機能によって実現することができる。慢性ストレス推定部303は、第1の実施形態に示された第2慢性ストレス推定部109、または、第2の実施形態に示された第2慢性ストレス推定部109等が有する機能と同様な機能によって実現することができる。慢性ストレス情報記憶部304は、第1の実施形態に示された第2慢性ストレス情報記憶部116、または、第2の実施形態に示された第2慢性ストレス情報記憶部116等が有する機能と同様な機能によって実現することができる。したがって、第3の実施形態に係るストレス推定装置301は、第1の実施形態に係るストレス推定装置102が有する機能、または、第2の実施形態に係るストレス推定装置202が有する機能と同様な機能によって実現することができる。
次に、第3の実施形態に係るストレス推定装置301に関する効果について説明する。
第3の実施形態に係るストレス推定装置301によれば、将来の慢性ストレスの程度を推定することができる。この理由は、ストレス推定装置301が、測定対象に関するスケジュールを表すスケジュール情報に含まれている各項目名ごとに、心理的負担の程度を特定し、特定された心理的負担の累積値を、慢性ストレスの程度として推定するからである。
<第4の実施形態>
次に、本発明の第4の実施形態に係るストレス推定(判定)装置401について説明する。
図15を参照しながら、本発明の第4の実施形態に係るストレス推定装置401が有する構成について詳細に説明する。図15は、本発明の第4の実施形態に係るストレス推定装置401が有する構成を示すブロック図である。
本発明の第4の実施形態に係るストレス推定装置401は、心理的負担推定部402と、心理的負担累積部403と、慢性ストレス推定部404とを有する。ストレス推定装置401は、さらに、心理的負担情報記憶部405と、慢性ストレス情報記憶部406とを有する。
心理的負担情報記憶部405には、測定情報(または、測定情報の特徴を表す特徴量)と、心理的負担の程度を表す情報との関係性を表す心理的負担推定モデルが格納されている。慢性ストレス情報記憶部406には、心理的負担の累積値と、慢性ストレスの程度との関係性を表す第2慢性ストレス推定モデルが格納されている。
次に、図16を参照しながら、本発明の第4の実施形態に係るストレス推定装置401における処理について詳細に説明する。図16は、第4の実施形態に係るストレス推定装置401における処理の流れを示すフローチャートである。
心理的負担推定部402は、測定対象を測定するセンサ等によって作成された測定情報に関して、所定の特徴量算出手順に従い処理を実行することによって、該測定情報の特徴を表す特徴量の値を算出する(ステップS401)。心理的負担推定部402は、たとえば、式6乃至式16を参照しながら説明したような処理に従い、測定情報に関する特徴量を算出する。心理的負担推定部402は、算出した特徴量の値に心理的負担推定モデルを適用することによって、該測定情報に関する心理的負担の程度を表す数値情報を算出する(ステップS402)。
心理的負担累積部403は、ある期間に測定された測定情報に関して算出された心理的負担の程度を表す数値情報の累積値を算出する(ステップS403)。心理的負担累積部403は、たとえば、式1に示された処理と同様な処理に従い、心理的負担の程度の累積値を算出する。
慢性ストレス推定部404は、心理的負担累積部403によって算出された累積値に第2慢性ストレス推定モデルを適用することによって(ステップS404)、該測定情報に関する慢性ストレスの程度を算出する。
心理的負担推定部402は、第1の実施形態に示された心理的負担推定部107、または、第2の実施形態に示された心理的負担推定部107等が有する機能と同様な機能を用いて実現することができる。心理的負担累積部403は、第1の実施形態に示された心理的負担累積部108、または、第2の実施形態に示されたスケジュール情報処理部208が有する機能と同様な機能を用いて実現することができる。慢性ストレス推定部404は、第1の実施形態に示された第2慢性ストレス推定部109、または、第2の実施形態に示された第2慢性ストレス推定部109等が有する機能と同様な機能を用いて実現することができる。すなわち、第4の実施形態に係るストレス推定装置401は、第1の実施形態に係るストレス推定装置102が有する機能、または、第2の実施形態に係るストレス推定装置202が有する機能と同様な機能を用いて実現することができる。
次に、第4の実施形態に係るストレス推定装置401に関する効果について説明する。
第4の実施形態に係るストレス推定装置401によれば、測定対象が測定された測定タイミングだけでなく、該測定タイミングと異なるタイミングに関しても、慢性ストレスの程度を高精度に推定することができる。この理由は、ストレス推定装置401が心理的負担の累積値に基づき慢性ストレスを推定することによって、慢性ストレスが推定される処理に時刻を表す値が導入されているからである。すなわち、ストレス推定装置401は、該時刻を表す値を変更することによって、測定対象が測定された測定タイミングだけでなく、該測定タイミングと異なるタイミングに関しても、慢性ストレスの程度を高精度に推定することができる。
(ハードウェア構成例)
上述した本発明の各実施形態におけるストレス推定(判定)装置を、1つの計算処理装置(情報処理装置、コンピュータ)を用いて実現するハードウェア資源の構成例について説明する。ただし、係るストレス推定装置は、物理的または、機能的に少なくとも2つの計算処理装置を用いて実現されてもよい。また、係るストレス推定装置は、専用の装置として実現されてもよい。
図17は、第1の実施形態乃至第4の実施形態に係るストレス推定(判定)装置を実現可能な計算処理装置のハードウェア構成例を概略的に示すブロック図である。計算処理装置20は、中央処理演算装置(Central_Processing_Unit、以降「CPU」と表す)21、メモリ22、ディスク23、不揮発性記録媒体24、及び、通信インターフェース(以降、「通信IF」と表す)27を有する。計算処理装置20は、入力装置25、出力装置26に接続可能、または、通信可能である。計算処理装置20は、通信IF27を介して、他の計算処理装置、及び、通信装置と情報を送受信することができる。入力装置25は、脈波センサ、加速度センサ、肌表面導電センサ、心拍センサ、または、ウェアラブル機器等を表す。
不揮発性記録媒体24は、コンピュータが読み取り可能な、たとえば、コンパクトディスク(Compact_Disc)、デジタルバーサタイルディスク(Digital_Versatile_Disc)である。また、不揮発性記録媒体24は、ユニバーサルシリアルバスメモリ(USBメモリ)、ソリッドステートドライブ(Solid_State_Drive)等であってもよい。不揮発性記録媒体24は、電源を供給しなくても係るプログラムを保持し、持ち運びを可能にする。不揮発性記録媒体24は、上述した媒体に限定されない。また、不揮発性記録媒体24の代わりに、通信IF27、及び、通信ネットワークを介して係るプログラムを持ち運びしてもよい。
すなわち、CPU21は、ディスク23に格納されているソフトウェア・プログラム(コンピュータ・プログラム:以下、単に「プログラム」と称する)を、実行する際にメモリ22にコピーし、演算処理を実行する。CPU21は、プログラム実行に必要なデータをメモリ22から読み取る。外部への出力が必要な場合に、CPU21は、出力装置26に出力結果を出力する。外部からプログラムを入力する場合に、CPU21は、入力装置25からプログラムを読み取る。CPU21は、上述した図1、図9、図13、または、図15に示す各部が表す機能(処理)に対応するところのメモリ22にあるストレス推定(判定)プログラム(図2、図3、図10、図14、または、図16)を解釈し実行する。CPU21は、上述した本発明の各実施形態において説明した処理を順次実行する。
すなわち、このような場合に、本発明は、係るストレス推定プログラムによっても成し得ると捉えることができる。さらに係るストレス推定(判定)プログラムが記録されたコンピュータが読み取り可能な不揮発性の記録媒体によっても、本発明は成し得ると捉えることができる。
以上、上述した実施形態を模範的な例として本発明を説明した。しかし、本発明は、上述した実施形態には限定されない。すなわち、本発明は、本発明のスコープ内において、当業者が理解し得る様々な態様を適用することができる。